ゲスト
(ka0000)
焦熱
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/29 07:30
- 完成日
- 2017/09/20 06:20
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境某所。牙城・焔(kz0191)の拠点――。
とある日、焔宛てに一通の文が届いた。
「ほう、コーリアス殿からか」
焔は封を切り、手紙の内容に目を通す……。
「……やっとか。ありがたい」
ニヤリと笑みを浮かべる焔。――そして焔はしばし思案した後に部下三名を招集した。
「お呼びですか、焔様」
部下筆頭の白川・桜が跪き、尋ねる。
「うむ。これから出陣するぞ。目標は――」
***
某辺境部族の村。そこでは悲鳴と怒号と、そして火の手が上がっていた。
――そう、焔が目標としたのは何の変哲もない村。戦略上の要所でも無い。だが、焔は部下を伴ってそこを襲撃した。
襲撃当初こそ逃げ惑う人々と、抵抗しようとする自警団などで大騒ぎであったが……それは程無く鎮静化した。
「焔様、村の制圧が完了しました」
「うむ。自警団の連中は?」
「抵抗は無意味と理解したらしく武装解除しました」
「うむ。村人らは?」
「一か所に集めております。焔様の命令通り村の周囲には多数の火蜥蜴を配置し、封鎖を完了しております」
「ご苦労。それでは参るか」
***
村人達が集められている広場――そこに焔がやって来た。焔が見渡すと……村人は皆怯えた表情を浮かべている。
当初は抵抗する姿勢を見せた自警団も、今は武装を解かれ拘束されている。
焔の業火でテキトーな家屋を消し炭にし、自警団は彼らが持つ剣や槍……武器だけを焼き尽くした途端、大人しくなった。
……つまり今のところ村人には(自警団にも)死者や怪我人は一人も出ていない。
焔とその部下は圧倒的な力の差を見せ付けることであっという間に村一つを制圧したのだ。
焔は後ろ手に縛られている自警団の男達の前で足を止める。
「お前が団長か」
「そ、そうだが……お前達……一体何が目的でこんなことをする……? 人一人殺さず、怪我もさせずに……」
震える声で団長が言う。この異常事態、下手に歪虚を怒らせて被害を出すよりも~との判断で早々に抵抗を諦めたが……歪虚の目的がさっぱり判らない。
「お前には関係のない話だな。それよりもお前に頼みごと……ふむ? これでは威厳が足らぬか。……言い直そう、お前に命令だ。この件をハンターズソサエティに依頼として持ち込め」
「HSに依頼? 一体どういう――」
「貴様に質問する権利は無い。黙って焔様のお話を聞け」
白川・桜が団長へ紅蓮の弓矢を向ける。団長は「ひぃ!」と小さく声を上げた後に押し黙った。
「依頼内容は言うまでもないだろう。この状況をそのまま伝えれば良い。そしてハンター達に向けてこう付け加えよ。『我らと戦え。さもなくば村を焼き尽くす』。とな」
「――!?」
「ようやく自分達の立場を理解したか? そう、お前達は『人質』だ」
縛られ、跪き、カタカタと震える団長を見下ろし、焔は黒い笑みを浮かべるのだった。
***
辺境のハンターズソサエティ。受付嬢のクラヴィーア・キルシェ(kz0038)が集まったハンター達に向けて深刻そうな表情で話し始めた。
「辺境部族の村が牙城・焔一派の襲撃を受けました。現在は村が丸ごと人質になっています。……幸い、今のところ被害は出ていないようですが……」
一人のハンターが「向こう側の要求は?」と尋ねると、クラヴィーアは答える。
「『あなた方、ハンター達と戦うこと』です。目的は不明ですが……ここに依頼を持ち込んだ、村の自警団の団長がそう言うように牙城・焔本人から命令されたそうです」
一呼吸おいてクラヴィーアは続ける。
「村の周囲は牙城・焔配下の火蜥蜴に包囲されていて逃げ出すことは出来ません。色々と不可解な点がありますが、村人のことを考えると戦っていただくしかありません……。非常に危険な依頼になりますが、よろしくお願いします」
とある日、焔宛てに一通の文が届いた。
「ほう、コーリアス殿からか」
焔は封を切り、手紙の内容に目を通す……。
「……やっとか。ありがたい」
ニヤリと笑みを浮かべる焔。――そして焔はしばし思案した後に部下三名を招集した。
「お呼びですか、焔様」
部下筆頭の白川・桜が跪き、尋ねる。
「うむ。これから出陣するぞ。目標は――」
***
某辺境部族の村。そこでは悲鳴と怒号と、そして火の手が上がっていた。
――そう、焔が目標としたのは何の変哲もない村。戦略上の要所でも無い。だが、焔は部下を伴ってそこを襲撃した。
襲撃当初こそ逃げ惑う人々と、抵抗しようとする自警団などで大騒ぎであったが……それは程無く鎮静化した。
「焔様、村の制圧が完了しました」
「うむ。自警団の連中は?」
「抵抗は無意味と理解したらしく武装解除しました」
「うむ。村人らは?」
「一か所に集めております。焔様の命令通り村の周囲には多数の火蜥蜴を配置し、封鎖を完了しております」
「ご苦労。それでは参るか」
***
村人達が集められている広場――そこに焔がやって来た。焔が見渡すと……村人は皆怯えた表情を浮かべている。
当初は抵抗する姿勢を見せた自警団も、今は武装を解かれ拘束されている。
焔の業火でテキトーな家屋を消し炭にし、自警団は彼らが持つ剣や槍……武器だけを焼き尽くした途端、大人しくなった。
……つまり今のところ村人には(自警団にも)死者や怪我人は一人も出ていない。
焔とその部下は圧倒的な力の差を見せ付けることであっという間に村一つを制圧したのだ。
焔は後ろ手に縛られている自警団の男達の前で足を止める。
「お前が団長か」
「そ、そうだが……お前達……一体何が目的でこんなことをする……? 人一人殺さず、怪我もさせずに……」
震える声で団長が言う。この異常事態、下手に歪虚を怒らせて被害を出すよりも~との判断で早々に抵抗を諦めたが……歪虚の目的がさっぱり判らない。
「お前には関係のない話だな。それよりもお前に頼みごと……ふむ? これでは威厳が足らぬか。……言い直そう、お前に命令だ。この件をハンターズソサエティに依頼として持ち込め」
「HSに依頼? 一体どういう――」
「貴様に質問する権利は無い。黙って焔様のお話を聞け」
白川・桜が団長へ紅蓮の弓矢を向ける。団長は「ひぃ!」と小さく声を上げた後に押し黙った。
「依頼内容は言うまでもないだろう。この状況をそのまま伝えれば良い。そしてハンター達に向けてこう付け加えよ。『我らと戦え。さもなくば村を焼き尽くす』。とな」
「――!?」
「ようやく自分達の立場を理解したか? そう、お前達は『人質』だ」
縛られ、跪き、カタカタと震える団長を見下ろし、焔は黒い笑みを浮かべるのだった。
***
辺境のハンターズソサエティ。受付嬢のクラヴィーア・キルシェ(kz0038)が集まったハンター達に向けて深刻そうな表情で話し始めた。
「辺境部族の村が牙城・焔一派の襲撃を受けました。現在は村が丸ごと人質になっています。……幸い、今のところ被害は出ていないようですが……」
一人のハンターが「向こう側の要求は?」と尋ねると、クラヴィーアは答える。
「『あなた方、ハンター達と戦うこと』です。目的は不明ですが……ここに依頼を持ち込んだ、村の自警団の団長がそう言うように牙城・焔本人から命令されたそうです」
一呼吸おいてクラヴィーアは続ける。
「村の周囲は牙城・焔配下の火蜥蜴に包囲されていて逃げ出すことは出来ません。色々と不可解な点がありますが、村人のことを考えると戦っていただくしかありません……。非常に危険な依頼になりますが、よろしくお願いします」
リプレイ本文
●
ハンターズソサエティ(HS)にもたらされた『牙城・焔(kz0191)一派により辺境部族の村が襲撃を受け、占拠された』という情報。
そして焔は村人達を人質にしているという。その要求は『ハンター達と戦うこと』であった。
ゆえにその依頼を受けた十名のハンター達は現在、馬車や自前の馬にて問題の村へと急行中。
(前回不覚を取って約一年……厳密にいえば十一か月ちょいですか? あの時は此方が仕掛ける故の油断があった……のかも知れませんし、ただただ相手が上手だったのやも知れません)
米本 剛(ka0320)は『灼導兵器』をめぐる約一年前の戦いで舐めた辛酸の味を思い返す。だがその表情は落ち着いていた。
「しかし……実力が明確に解った以上、否……相手が優秀な部隊であるが故に毛程の油断も許されませんね」
言葉を口に出し、再確認。気合を入れる米本。
(実力的に牙城さんが危険なのは重々承知、自分が以前の経験で気になったのは白川さんの冷静な判断。自身の不利を見極め自身の有利で攻めるのは常道ですが……実行するのは中々に難しい)
米本はあごに手を当て、思案顔になる。聞くところによると、前回交戦した白川・桜は牙城・焔の部下筆頭であるらしい。それならばあの冷静な判断力も頷ける。
(故に自分は牙城さんと同格の危険性がある……という認識で考えておきます)
白川・桜の脅威度の位置付けが米本の中で定まった模様。
「う~~、考えてもよくわからないから考えるのはやめるのだ! とにかく倒せば問題なしなのだ♪」
今回、牙城・焔が引き起こした事件の裏にはハンターと戦う以外に……いや、『ハンターと戦うこと』それ自体では無く何か別の目的があるようなのだが――。
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は頭を捻っても焔の思惑がさっぱり分からなかったので思考を放棄。
「牙城・焔……一年と二か月ぶりといったところか。正直まだ生きていたとは少々意外だったな。なにを考えているかは知らぬが、今は叩くだけだ」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)も焔の『真の目的』とやらには興味を示さず、敵を叩くことのみに集中する。
「楽しみにしてたぜぇ焔……テメェとやり合える時をなァ!」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)はただ、牙城・焔と再び矛を交えることを心待ちにしていたらしい。
何度も敗北を喫した相手に「今度こそは一泡吹かせてやる」という気持ちが強いのだろう。
「冒険団仲間で妻のアデリシア達と一緒に、焔一派を撃退し村人さん達を救出する冒険だよ!」
正義感の強い時音 ざくろ(ka1250)。
「ざくろ、罪もない村人を人質にするそのやり方、絶対に許せないもん!」
彼は焔の行いにご立腹の様子。彼的には人質になっている村人の救出が最優先のようだ。
……まあどの道、そのためには焔達と戦わなければならないので戦意は高い。
「牙城・焔。過去の記録によれば姿を現すのは一年ぶりくらいか」
出立の直前までHSにて牙城・焔に関する過去の記録を調べていたのは八原 篝(ka3104)。
「コーリアスとも繋がりがあるというし、今回の目的は新型の灼導兵器の実地試験? それとも今のハンターの能力、例えばサブクラスの力を測るため……?」
今回依頼を受けたハンターの中で唯一、彼女だけが焔の目的……『わざわざ村を襲い、占拠し、人質にしてまでハンターと戦おうとする理由』を探っていた。
「奴とは久し振りだな、お化けクルミの里の時以来、かな?」
ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)は圧倒的に不利な状況で焔との交渉に臨んだことを思い出していた。
(人質を取られてこちらが要求を飲んだ段階で、向こうの勝ちは確定か)
馬車に揺られながら眉根を寄せるのは門垣 源一郎(ka6320)。
表情にあまり変化はないが彼は内心『人質を取る』という焔のやり方に大分キレ気味である。
「歪虚が同じ名前(ほむら)を名乗り悪事を働くなんて絶対に許せない。この世から消えてもらう!!」
南護 炎(ka6651)は今回の事件の首謀者、牙城・焔が自分と同じ名前(読み)であることに激しい怒りを燃やしている様子。
「勝てば官軍って言うからなぁ……敵は格上、勝てれば何でもいいんじゃねぇの」
そのように言うのはトリプルJ(ka6653)。何を持って『勝ち』とするか、それが問題である。
HSからは焔一派を『撃退』出来れば良いと言われてはいるが……。もちろん、村人を全員無事救出した上での話だ。
●
村の近くまでやって来たハンター達。安全のため馬車は先に帰らせた。ここからは徒歩(騎乗)で村まで移動する。
***
しばらく歩き、村まであと1kmほどといったところまで来る。
だだっ広い平原――そこに、ハンター達を待ち構えるようにして牙城・焔とその部下三名が布陣していた……。
ハンター達を視界に入れると、焔は黒い笑みを浮かべ、口を開く。
「漸く来たか、ハンター共。待ちくたびれたぞ」
「約束通り来たぞ……何を企んでるか知らないけど、村人さん達は無事なんだなっ!?」
ざくろは喧嘩腰に焔へ問う。
「もちろん無事だとも。一人たりとも怪我一つ負わせてはいないぞ」
……焔は黒い笑みを崩さない……。
「個人的には意図を聞きたい所ではありますが……素直に話す道理も無し、でしょうな」
続いて米本。
「その通り。こちらの目的をお前達に話す道理は無い。お前達はただ我らと戦えば良い」
「あの時の礼を言うぜ、しがない男の口車に乗ってくれてな。それと……今回は『勝ち』を狙いに行かせて貰うぜ」
ゼクスも前に出て焔に対して言う。
「あの時のハンターか。約束通り腕は上げたのだろうな。我を失望させてくれるなよ?」
ふふふと焔は嗤う。
***
しばしの沈黙。ざぁーっと一陣の風が吹き、平原を覆う草を揺らす。
「……さて、では本題といこうか。――牙城・焔、推して参る!」
焔は両腰から二刀を抜き、ハンター達のほうへ向かって疾走。
それに呼応してハンター達もそれぞれの得物を構え、戦闘態勢に移行。
ハンター達が当初予定していた作戦では、まず焔を【ファントムハンド】で仲間から引き離し、孤立させる。という物だったのだが――
実際の焔は真っ先にハンター達に向かって突撃して来た。それに伴い対・焔に当たるネフィ、ボルディア、南護が前へ出る。
「南護 炎、行くぜ!!」
グレートソードを両手で構え、走る南護。
「いい加減俺の名前は覚えたか、焔ァ!」
焔と真っ先に打ち合ったのはボルディア。魔斧と焔の二刀が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「知らんなぁ、筋肉女」
「てめぇ!」
ボルディアは【砕火】を使用し、上段からの振り下ろしや回転して遠心力を乗せての打撃を次々に繰り出す。
出だしから猛烈な攻撃。焔は二刀を巧みに操り、捌く。
「はあああ!!」
横から【筋力充填】した南護の大振りな斬撃。焔は二刀に力を込め、一時的にボルディアを押し返した後にその攻撃を一歩後ろに下がって避けた。
――隙。
鋭い突きが南護を襲う――かに思えたが、ネフィが距離を詰めバンカーナックルによる攻撃を行った事で焔はまた回避行動を取った。
「固まったりずっと近くに居たりしないほうがいいのかな? かな?」
焔の範囲攻撃も警戒するネフィ。
ゼクスは焔に対し、【機導砲】を連続で放つ。だが焔は前衛三名との近接戦に集中しているようで、意に介さない様子だった。
【機導砲】で牽制しつつ、ゼクスは焔の部下三名の位置関係を把握。……遥・桜・緑は密集していた。
前面に遥、その後方に桜と緑。三角形の様な感じ。ゼクスは【ジェットブーツ】で一気に桜と緑へ接近出来る位置にゆっくりと移動する。
アデリシアはまず焔へ【ヴァルキリー・ジャベリン】を投げつけるも効果は確認できない。
「さて、壁役というのはいつも厄介なものだ。そうさせないためにも少し付き合ってもらおうか」
そのまま彼女は球磨・遥のほうへ移動。だが途中、白川・桜の弓矢による攻撃を受ける。更に菊池・緑からの魔法攻撃も飛んできた。
「くぅっ」
いずれも爆発を伴う攻撃。聖盾『コギト』を構え【ホーリーヴェール】で受けるがアデリシアはダメージを受けてしまう。
……攻撃を喰らいながらもなんとか遥に接近したアデリシアは明王剣にて遥の膝から下を狙って攻撃する。
盾で受け止められないように、としたこの攻撃だが遥が持つ両手の盾は予想以上に防御範囲が広いらしく、ほぼ受け止められてしまう。
どうやら盾の防御範囲を見た目以上に広げる技であるらしい。その上、アデリシアが行った攻撃を受け止めた際には衝撃波が発生し、逆にアデリシアを襲った。
それにアデリシアは吹き飛ばされてしまう。
「これは……厄介な……」
予想外のダメージを負ったアデリシアは離れた隙に【フルリカバリー】で自身の回復を行う。
トリプルJは愛馬ゴースロンに騎乗し全力移動。桜の斜め後方まで回り込む。
【ファントムハンド】を用いて桜を引き寄せようとするが失敗。超重刀で斬り掛かるつもりだったが間合いが遠い。
反撃の爆発する矢が彼の頭上に降り注ぐ。
「ぐっ……」
即座に【リジェネレーション】で回復を行うトリプルJ。
「自分は頭が回らない分愚直な位が良いのかも知れません」
米本は桜に向かって一気に突貫。
(見晴らしの良い平原で白川さんを自由にさせたらゾッとしますからね)
……やはり襲い来るのは桜の遠距離攻撃と緑の遠距離魔法。爆発を伴うそれはタフネスを誇る米本の身体をも揺さぶる。
「これは中々に熱烈な歓迎ですな……!」
強行突破! 距離を詰めるが、しかし待ち受けていたのは桜では無く遥であった。
桜を狙った、【神道之漆『剣輝』】を付加したハルバードによる攻撃は全て遥の盾によって防がれてしまう。
しかもそのダメージは緑がすぐさま魔法で回復してしまう。……既に陣形を組まれていたのが致命的だった。
その上遥の反撃のシールドブロウ(盾による叩き付け)により米本は弾かれる。
「折角の機会だ。一人ぐらいは討ち取らせてもらう」
源一郎は【アクセルオーバー】を使用して加速。
ルーンソードを投擲し【チェイシングスロー】により遥を迂回して緑に接敵。
【連撃】を用いて緑に斬撃を喰らわせ様とするが、それを阻む物があった。――それは緑を中心に、彼女を守る様に浮遊する結晶状の物体。
「なんだ、これは……?」
「甘いですね。私が全て遥任せで何の防御手段を持たないとお思いですか?」
「何だと?」
「ともあれ排除させて頂きます。【紅蓮魔球・放射】」
緑が唱えると彼女の持つ杖から魔球が飛び、源一郎の至近距離で破裂。強い光を放つ。
「ぐあああああっ!?」
源一郎は大ダメージを受けると共に、一時的に視界を奪われる事となった……。
ざくろは緑に接近する意図を読まれない様に移動……する事はつまり遥の防御範囲を通るという事。
「機導ルーレットON……降臨霊決定、顕現ハンターマンモスの力!」
進路上に立ち塞がる敵――遥に対し、ざくろはメイスでの【ノックバック】による攻撃を仕掛ける。
だが、アデリシアのときと同じように遥の盾から衝撃波が発生し、逆にざくろが弾き飛ばされてしまう。
転倒しそうになるが何とか踏み止まった。
「……今のは一体……?」
(こちらの【攻性防壁】みたいな物……?)
後方に位置する篝。
仲間の戦いぶりを見ていたが……状況は不利。
予想外だったのは焔が自ら突出して来た事、そして部下三名、特に遥と緑の未知の技……。
敵はチームであり、それぞれに役割を持っている。もっと警戒しておくべきだったのかもしれない。
その様に考えながら彼女は魔導機式複合弓を展開。
龍矢から形成した光の矢をつがえ、【ハウンドバレット】を使用する。
その矢は変則的な弾道を描きながらまず焔に命中し、続いて緑――の周囲に浮遊する結晶の一つを破壊した。
●
対・焔の三名は引き続き交戦中。
「オラオラ! 行くぜ! 行くぜ!!」
南護は叫びながら【倫理爆裂拳】を使用した剣を振るう。焔は回避行動。
「同じ名前の奴が悪事を働くなんて許せない! この世から消えろ!!」
「……随分とやかましいな。威勢だけは良い様だが、それだけでは我は倒せぬぞ」
そう言って焔は二刀を地面に叩き付け、【紅蓮爆刃】を発動。爆炎が巻き起こる。
「少し黙っていて貰おうか」
続いて南護の至近距離で【灼溶爆炎】。業火が立ち上った。
「く……は……貴様……」
爆炎が晴れた後には膝を突く南護。咄嗟に盾を構えた物の、【灼溶爆炎】を至近距離で喰らえば大ダメージは免れない。
「テメェの炎はこンなもんかぁ!? もっと俺を、熱くさせてみやがれェ!」
焔が放った二つの技は範囲攻撃であるので、当然ながらボルディアとネフィも巻き込んだ。
ボルディアは火属性の武器で受けると共に回復スキルをフル使用して耐え、焔に反撃を見舞う。
ネフィは距離を取っていたので大事には至らず、【自己治癒】で回復。武器の射程まで移動し、ロケットナックルで反撃。
「離れててもコレくらいの距離なら攻撃出来るのだ! 猫ロケットパンチ発射にゃー! なんちゃって?」
***
アデリシアの目的は『遥の足止め』であったが、焔が自ら突出したのと、既に敵が陣形を組んでいたためその意義は薄かった。
加えて遥の防御範囲は予想より広く、桜・緑に有効打を与えられずにいた……。
米本は継続して桜を狙うが、やはり遥に阻まれる。今回は機動力の無さが致命的か……。
トリプルJはパリィグローブによる【ワイルドラッシュ】を桜へ繰り出す。
それに対し桜は高速で後退し回避すると共に凄まじい速度で嵐のように弓を射る。
思わず怯むトリプルJ。どうやら距離を詰めたからと言って攻撃を封じられるほど甘い相手ではない様だ。
「人質を取るなんて許せない……村人さん達は、返してもらう」
遥の妨害に業を煮やしたざくろは【ジェットブーツ】で無理矢理飛び越え。
緑に対しメイスを振り被り、【霊魔撃】による攻撃を繰り出す。
「機導降霊陣展開、今宿れ霊魔の力……これを喰らえッ! ざくろクラッシュ!」
強烈な一撃! しかしそれは緑本体では無くその周囲に浮かぶ結晶が受け止め、その結晶は砕け散った。
――反撃の魔球が飛び、ざくろに命中して爆発。
「おのれ……目潰しなど……」
視界が戻った源一郎は続き【アクセルオーバー】を使用し、剣による攻撃を加えるが緑を守る浮遊結晶に防がれる。
「蛇の如く静かに這い寄り喉元を喰い千切る……ってな」
機を窺っていたゼクスも【ジェットブーツ】で地を滑る様に接近。【機導剣】を叩き込むが、やはり結晶に防がれてしまう。
「まさか一撃で倒せると?」
二人に対し【紅蓮魔球・放射】が飛ぶ。
篝は【ハウンドバレット】による射撃を継続。焔にはそれなりにダメージを与えていた。
だが緑には……あの結晶の所為でダメージを与えられなかった為、目標を桜に変更。
トリプルJの攻撃に合わせる事で多少はダメージを与える事が出来ていた。しかし、その時。
「【紅蓮魔矢・剛力】」
「――!?」
カウンタースナイプ。桜の瞳が篝を見据えると、次の瞬間凄まじく重い一撃が飛び、篝の腹を貫いた。
篝はその場に倒れ伏す……。
●
「むぅ、まだまだ負けてないのだ! ご先祖様の力を借りて全力でいくよー! うにゃおー!」
紅蓮爆刃・弐などの攻撃を受け、ダメージを負ったネフィは【現界せしもの】を使用。焔に決死の攻撃を仕掛ける。
「む、霊闘士の奥義か。厄介な」
焔は二刀で受け止めつつ、ネフィに密着。
「これならばどうだ?」
【灼溶爆炎】。またも業火が立ち上る。
「にゃあああ!!?」
ネフィに大ダメージ。元の姿に戻る。
焔は追撃を掛けようとするがそこにボルディアのカバーが入る。
「やらせねぇよぉ!」
「ふん、随分と硬くなったものだ。流石に対策をして来たか」
焔は武装コンテナから灼導兵器――ロケットランチャーを取り出し、即座に放つ。
ボルディアは咄嗟に受け止めて軌道を反らそうとしたが、弾頭は着弾の直前で大爆発。
煙が晴れても……ボルディアはまだ立っていた。
「ぐ、がはっ……まだだ、俺を焼き尽くしたいなら……この十倍は持ってこねえとなぁ!」
「全く、呆れるほどにタフな奴め……む?」
「焔様、例の品の回収を完了しました」
焔の前に忍び装束の女性――人型歪虚が姿を現す。
「ふむ。ご苦労。それでは退散するとしようか」
「承知致しました。桜様方にもお伝えします」
そう言って人型歪虚は姿を消す。
「待て! てめぇ、逃げる気か!?」
ボルディアが声を上げる。
「まあそういうことだ。目的は達成したからな。……ふふ、コーリアス殿謹製の新たな武器の回収。それが我の目的。本命は別に居たわけだ。ではさらば」
ふと、焔は振り返る。
「ああそうだ、我らの撤退を邪魔する様ならば村を焼き尽す。村の周囲は未だ我の火蜥蜴が包囲している事を忘れるでないぞ?」
黒い笑みで言い残し、焔はその場を悠々と去って行った。
焔達が去った後に村人は全員無事解放された。
しかし足止めされていた事実を知ったハンター達は一様に苦虫を噛み潰した様な表情をしていたという……。
ハンターズソサエティ(HS)にもたらされた『牙城・焔(kz0191)一派により辺境部族の村が襲撃を受け、占拠された』という情報。
そして焔は村人達を人質にしているという。その要求は『ハンター達と戦うこと』であった。
ゆえにその依頼を受けた十名のハンター達は現在、馬車や自前の馬にて問題の村へと急行中。
(前回不覚を取って約一年……厳密にいえば十一か月ちょいですか? あの時は此方が仕掛ける故の油断があった……のかも知れませんし、ただただ相手が上手だったのやも知れません)
米本 剛(ka0320)は『灼導兵器』をめぐる約一年前の戦いで舐めた辛酸の味を思い返す。だがその表情は落ち着いていた。
「しかし……実力が明確に解った以上、否……相手が優秀な部隊であるが故に毛程の油断も許されませんね」
言葉を口に出し、再確認。気合を入れる米本。
(実力的に牙城さんが危険なのは重々承知、自分が以前の経験で気になったのは白川さんの冷静な判断。自身の不利を見極め自身の有利で攻めるのは常道ですが……実行するのは中々に難しい)
米本はあごに手を当て、思案顔になる。聞くところによると、前回交戦した白川・桜は牙城・焔の部下筆頭であるらしい。それならばあの冷静な判断力も頷ける。
(故に自分は牙城さんと同格の危険性がある……という認識で考えておきます)
白川・桜の脅威度の位置付けが米本の中で定まった模様。
「う~~、考えてもよくわからないから考えるのはやめるのだ! とにかく倒せば問題なしなのだ♪」
今回、牙城・焔が引き起こした事件の裏にはハンターと戦う以外に……いや、『ハンターと戦うこと』それ自体では無く何か別の目的があるようなのだが――。
ネフィリア・レインフォード(ka0444)は頭を捻っても焔の思惑がさっぱり分からなかったので思考を放棄。
「牙城・焔……一年と二か月ぶりといったところか。正直まだ生きていたとは少々意外だったな。なにを考えているかは知らぬが、今は叩くだけだ」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)も焔の『真の目的』とやらには興味を示さず、敵を叩くことのみに集中する。
「楽しみにしてたぜぇ焔……テメェとやり合える時をなァ!」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)はただ、牙城・焔と再び矛を交えることを心待ちにしていたらしい。
何度も敗北を喫した相手に「今度こそは一泡吹かせてやる」という気持ちが強いのだろう。
「冒険団仲間で妻のアデリシア達と一緒に、焔一派を撃退し村人さん達を救出する冒険だよ!」
正義感の強い時音 ざくろ(ka1250)。
「ざくろ、罪もない村人を人質にするそのやり方、絶対に許せないもん!」
彼は焔の行いにご立腹の様子。彼的には人質になっている村人の救出が最優先のようだ。
……まあどの道、そのためには焔達と戦わなければならないので戦意は高い。
「牙城・焔。過去の記録によれば姿を現すのは一年ぶりくらいか」
出立の直前までHSにて牙城・焔に関する過去の記録を調べていたのは八原 篝(ka3104)。
「コーリアスとも繋がりがあるというし、今回の目的は新型の灼導兵器の実地試験? それとも今のハンターの能力、例えばサブクラスの力を測るため……?」
今回依頼を受けたハンターの中で唯一、彼女だけが焔の目的……『わざわざ村を襲い、占拠し、人質にしてまでハンターと戦おうとする理由』を探っていた。
「奴とは久し振りだな、お化けクルミの里の時以来、かな?」
ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)は圧倒的に不利な状況で焔との交渉に臨んだことを思い出していた。
(人質を取られてこちらが要求を飲んだ段階で、向こうの勝ちは確定か)
馬車に揺られながら眉根を寄せるのは門垣 源一郎(ka6320)。
表情にあまり変化はないが彼は内心『人質を取る』という焔のやり方に大分キレ気味である。
「歪虚が同じ名前(ほむら)を名乗り悪事を働くなんて絶対に許せない。この世から消えてもらう!!」
南護 炎(ka6651)は今回の事件の首謀者、牙城・焔が自分と同じ名前(読み)であることに激しい怒りを燃やしている様子。
「勝てば官軍って言うからなぁ……敵は格上、勝てれば何でもいいんじゃねぇの」
そのように言うのはトリプルJ(ka6653)。何を持って『勝ち』とするか、それが問題である。
HSからは焔一派を『撃退』出来れば良いと言われてはいるが……。もちろん、村人を全員無事救出した上での話だ。
●
村の近くまでやって来たハンター達。安全のため馬車は先に帰らせた。ここからは徒歩(騎乗)で村まで移動する。
***
しばらく歩き、村まであと1kmほどといったところまで来る。
だだっ広い平原――そこに、ハンター達を待ち構えるようにして牙城・焔とその部下三名が布陣していた……。
ハンター達を視界に入れると、焔は黒い笑みを浮かべ、口を開く。
「漸く来たか、ハンター共。待ちくたびれたぞ」
「約束通り来たぞ……何を企んでるか知らないけど、村人さん達は無事なんだなっ!?」
ざくろは喧嘩腰に焔へ問う。
「もちろん無事だとも。一人たりとも怪我一つ負わせてはいないぞ」
……焔は黒い笑みを崩さない……。
「個人的には意図を聞きたい所ではありますが……素直に話す道理も無し、でしょうな」
続いて米本。
「その通り。こちらの目的をお前達に話す道理は無い。お前達はただ我らと戦えば良い」
「あの時の礼を言うぜ、しがない男の口車に乗ってくれてな。それと……今回は『勝ち』を狙いに行かせて貰うぜ」
ゼクスも前に出て焔に対して言う。
「あの時のハンターか。約束通り腕は上げたのだろうな。我を失望させてくれるなよ?」
ふふふと焔は嗤う。
***
しばしの沈黙。ざぁーっと一陣の風が吹き、平原を覆う草を揺らす。
「……さて、では本題といこうか。――牙城・焔、推して参る!」
焔は両腰から二刀を抜き、ハンター達のほうへ向かって疾走。
それに呼応してハンター達もそれぞれの得物を構え、戦闘態勢に移行。
ハンター達が当初予定していた作戦では、まず焔を【ファントムハンド】で仲間から引き離し、孤立させる。という物だったのだが――
実際の焔は真っ先にハンター達に向かって突撃して来た。それに伴い対・焔に当たるネフィ、ボルディア、南護が前へ出る。
「南護 炎、行くぜ!!」
グレートソードを両手で構え、走る南護。
「いい加減俺の名前は覚えたか、焔ァ!」
焔と真っ先に打ち合ったのはボルディア。魔斧と焔の二刀が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「知らんなぁ、筋肉女」
「てめぇ!」
ボルディアは【砕火】を使用し、上段からの振り下ろしや回転して遠心力を乗せての打撃を次々に繰り出す。
出だしから猛烈な攻撃。焔は二刀を巧みに操り、捌く。
「はあああ!!」
横から【筋力充填】した南護の大振りな斬撃。焔は二刀に力を込め、一時的にボルディアを押し返した後にその攻撃を一歩後ろに下がって避けた。
――隙。
鋭い突きが南護を襲う――かに思えたが、ネフィが距離を詰めバンカーナックルによる攻撃を行った事で焔はまた回避行動を取った。
「固まったりずっと近くに居たりしないほうがいいのかな? かな?」
焔の範囲攻撃も警戒するネフィ。
ゼクスは焔に対し、【機導砲】を連続で放つ。だが焔は前衛三名との近接戦に集中しているようで、意に介さない様子だった。
【機導砲】で牽制しつつ、ゼクスは焔の部下三名の位置関係を把握。……遥・桜・緑は密集していた。
前面に遥、その後方に桜と緑。三角形の様な感じ。ゼクスは【ジェットブーツ】で一気に桜と緑へ接近出来る位置にゆっくりと移動する。
アデリシアはまず焔へ【ヴァルキリー・ジャベリン】を投げつけるも効果は確認できない。
「さて、壁役というのはいつも厄介なものだ。そうさせないためにも少し付き合ってもらおうか」
そのまま彼女は球磨・遥のほうへ移動。だが途中、白川・桜の弓矢による攻撃を受ける。更に菊池・緑からの魔法攻撃も飛んできた。
「くぅっ」
いずれも爆発を伴う攻撃。聖盾『コギト』を構え【ホーリーヴェール】で受けるがアデリシアはダメージを受けてしまう。
……攻撃を喰らいながらもなんとか遥に接近したアデリシアは明王剣にて遥の膝から下を狙って攻撃する。
盾で受け止められないように、としたこの攻撃だが遥が持つ両手の盾は予想以上に防御範囲が広いらしく、ほぼ受け止められてしまう。
どうやら盾の防御範囲を見た目以上に広げる技であるらしい。その上、アデリシアが行った攻撃を受け止めた際には衝撃波が発生し、逆にアデリシアを襲った。
それにアデリシアは吹き飛ばされてしまう。
「これは……厄介な……」
予想外のダメージを負ったアデリシアは離れた隙に【フルリカバリー】で自身の回復を行う。
トリプルJは愛馬ゴースロンに騎乗し全力移動。桜の斜め後方まで回り込む。
【ファントムハンド】を用いて桜を引き寄せようとするが失敗。超重刀で斬り掛かるつもりだったが間合いが遠い。
反撃の爆発する矢が彼の頭上に降り注ぐ。
「ぐっ……」
即座に【リジェネレーション】で回復を行うトリプルJ。
「自分は頭が回らない分愚直な位が良いのかも知れません」
米本は桜に向かって一気に突貫。
(見晴らしの良い平原で白川さんを自由にさせたらゾッとしますからね)
……やはり襲い来るのは桜の遠距離攻撃と緑の遠距離魔法。爆発を伴うそれはタフネスを誇る米本の身体をも揺さぶる。
「これは中々に熱烈な歓迎ですな……!」
強行突破! 距離を詰めるが、しかし待ち受けていたのは桜では無く遥であった。
桜を狙った、【神道之漆『剣輝』】を付加したハルバードによる攻撃は全て遥の盾によって防がれてしまう。
しかもそのダメージは緑がすぐさま魔法で回復してしまう。……既に陣形を組まれていたのが致命的だった。
その上遥の反撃のシールドブロウ(盾による叩き付け)により米本は弾かれる。
「折角の機会だ。一人ぐらいは討ち取らせてもらう」
源一郎は【アクセルオーバー】を使用して加速。
ルーンソードを投擲し【チェイシングスロー】により遥を迂回して緑に接敵。
【連撃】を用いて緑に斬撃を喰らわせ様とするが、それを阻む物があった。――それは緑を中心に、彼女を守る様に浮遊する結晶状の物体。
「なんだ、これは……?」
「甘いですね。私が全て遥任せで何の防御手段を持たないとお思いですか?」
「何だと?」
「ともあれ排除させて頂きます。【紅蓮魔球・放射】」
緑が唱えると彼女の持つ杖から魔球が飛び、源一郎の至近距離で破裂。強い光を放つ。
「ぐあああああっ!?」
源一郎は大ダメージを受けると共に、一時的に視界を奪われる事となった……。
ざくろは緑に接近する意図を読まれない様に移動……する事はつまり遥の防御範囲を通るという事。
「機導ルーレットON……降臨霊決定、顕現ハンターマンモスの力!」
進路上に立ち塞がる敵――遥に対し、ざくろはメイスでの【ノックバック】による攻撃を仕掛ける。
だが、アデリシアのときと同じように遥の盾から衝撃波が発生し、逆にざくろが弾き飛ばされてしまう。
転倒しそうになるが何とか踏み止まった。
「……今のは一体……?」
(こちらの【攻性防壁】みたいな物……?)
後方に位置する篝。
仲間の戦いぶりを見ていたが……状況は不利。
予想外だったのは焔が自ら突出して来た事、そして部下三名、特に遥と緑の未知の技……。
敵はチームであり、それぞれに役割を持っている。もっと警戒しておくべきだったのかもしれない。
その様に考えながら彼女は魔導機式複合弓を展開。
龍矢から形成した光の矢をつがえ、【ハウンドバレット】を使用する。
その矢は変則的な弾道を描きながらまず焔に命中し、続いて緑――の周囲に浮遊する結晶の一つを破壊した。
●
対・焔の三名は引き続き交戦中。
「オラオラ! 行くぜ! 行くぜ!!」
南護は叫びながら【倫理爆裂拳】を使用した剣を振るう。焔は回避行動。
「同じ名前の奴が悪事を働くなんて許せない! この世から消えろ!!」
「……随分とやかましいな。威勢だけは良い様だが、それだけでは我は倒せぬぞ」
そう言って焔は二刀を地面に叩き付け、【紅蓮爆刃】を発動。爆炎が巻き起こる。
「少し黙っていて貰おうか」
続いて南護の至近距離で【灼溶爆炎】。業火が立ち上った。
「く……は……貴様……」
爆炎が晴れた後には膝を突く南護。咄嗟に盾を構えた物の、【灼溶爆炎】を至近距離で喰らえば大ダメージは免れない。
「テメェの炎はこンなもんかぁ!? もっと俺を、熱くさせてみやがれェ!」
焔が放った二つの技は範囲攻撃であるので、当然ながらボルディアとネフィも巻き込んだ。
ボルディアは火属性の武器で受けると共に回復スキルをフル使用して耐え、焔に反撃を見舞う。
ネフィは距離を取っていたので大事には至らず、【自己治癒】で回復。武器の射程まで移動し、ロケットナックルで反撃。
「離れててもコレくらいの距離なら攻撃出来るのだ! 猫ロケットパンチ発射にゃー! なんちゃって?」
***
アデリシアの目的は『遥の足止め』であったが、焔が自ら突出したのと、既に敵が陣形を組んでいたためその意義は薄かった。
加えて遥の防御範囲は予想より広く、桜・緑に有効打を与えられずにいた……。
米本は継続して桜を狙うが、やはり遥に阻まれる。今回は機動力の無さが致命的か……。
トリプルJはパリィグローブによる【ワイルドラッシュ】を桜へ繰り出す。
それに対し桜は高速で後退し回避すると共に凄まじい速度で嵐のように弓を射る。
思わず怯むトリプルJ。どうやら距離を詰めたからと言って攻撃を封じられるほど甘い相手ではない様だ。
「人質を取るなんて許せない……村人さん達は、返してもらう」
遥の妨害に業を煮やしたざくろは【ジェットブーツ】で無理矢理飛び越え。
緑に対しメイスを振り被り、【霊魔撃】による攻撃を繰り出す。
「機導降霊陣展開、今宿れ霊魔の力……これを喰らえッ! ざくろクラッシュ!」
強烈な一撃! しかしそれは緑本体では無くその周囲に浮かぶ結晶が受け止め、その結晶は砕け散った。
――反撃の魔球が飛び、ざくろに命中して爆発。
「おのれ……目潰しなど……」
視界が戻った源一郎は続き【アクセルオーバー】を使用し、剣による攻撃を加えるが緑を守る浮遊結晶に防がれる。
「蛇の如く静かに這い寄り喉元を喰い千切る……ってな」
機を窺っていたゼクスも【ジェットブーツ】で地を滑る様に接近。【機導剣】を叩き込むが、やはり結晶に防がれてしまう。
「まさか一撃で倒せると?」
二人に対し【紅蓮魔球・放射】が飛ぶ。
篝は【ハウンドバレット】による射撃を継続。焔にはそれなりにダメージを与えていた。
だが緑には……あの結晶の所為でダメージを与えられなかった為、目標を桜に変更。
トリプルJの攻撃に合わせる事で多少はダメージを与える事が出来ていた。しかし、その時。
「【紅蓮魔矢・剛力】」
「――!?」
カウンタースナイプ。桜の瞳が篝を見据えると、次の瞬間凄まじく重い一撃が飛び、篝の腹を貫いた。
篝はその場に倒れ伏す……。
●
「むぅ、まだまだ負けてないのだ! ご先祖様の力を借りて全力でいくよー! うにゃおー!」
紅蓮爆刃・弐などの攻撃を受け、ダメージを負ったネフィは【現界せしもの】を使用。焔に決死の攻撃を仕掛ける。
「む、霊闘士の奥義か。厄介な」
焔は二刀で受け止めつつ、ネフィに密着。
「これならばどうだ?」
【灼溶爆炎】。またも業火が立ち上る。
「にゃあああ!!?」
ネフィに大ダメージ。元の姿に戻る。
焔は追撃を掛けようとするがそこにボルディアのカバーが入る。
「やらせねぇよぉ!」
「ふん、随分と硬くなったものだ。流石に対策をして来たか」
焔は武装コンテナから灼導兵器――ロケットランチャーを取り出し、即座に放つ。
ボルディアは咄嗟に受け止めて軌道を反らそうとしたが、弾頭は着弾の直前で大爆発。
煙が晴れても……ボルディアはまだ立っていた。
「ぐ、がはっ……まだだ、俺を焼き尽くしたいなら……この十倍は持ってこねえとなぁ!」
「全く、呆れるほどにタフな奴め……む?」
「焔様、例の品の回収を完了しました」
焔の前に忍び装束の女性――人型歪虚が姿を現す。
「ふむ。ご苦労。それでは退散するとしようか」
「承知致しました。桜様方にもお伝えします」
そう言って人型歪虚は姿を消す。
「待て! てめぇ、逃げる気か!?」
ボルディアが声を上げる。
「まあそういうことだ。目的は達成したからな。……ふふ、コーリアス殿謹製の新たな武器の回収。それが我の目的。本命は別に居たわけだ。ではさらば」
ふと、焔は振り返る。
「ああそうだ、我らの撤退を邪魔する様ならば村を焼き尽す。村の周囲は未だ我の火蜥蜴が包囲している事を忘れるでないぞ?」
黒い笑みで言い残し、焔はその場を悠々と去って行った。
焔達が去った後に村人は全員無事解放された。
しかし足止めされていた事実を知ったハンター達は一様に苦虫を噛み潰した様な表情をしていたという……。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 7人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 八原 篝(ka3104) 人間(リアルブルー)|19才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/08/24 21:00:09 |
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相談卓 八原 篝(ka3104) 人間(リアルブルー)|19才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/08/29 04:03:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/25 12:18:24 |