• 黒祀

【黒祀】鉄壁の騎士と称号を

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2014/11/12 07:30
完成日
2014/11/14 00:34

みんなの思い出

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オープニング

●ある保守派貴族の屋敷にて
「ハンターなんぞに頼りおって! あんな者共は、チンピラと変わらん!」
 怒号が響き渡った。
 声の主は、精悍な顔をした壮年の男性だった。初老近いはずなのだが、衰えを感じさせない。
 彼は、グラズヘイム王国の貴族だ。その中でも、保守派として有名でもある。
 襲来する歪虚の軍勢。
 それに対抗する為に、ハンター達や周辺各国への応援が決まった事なのだが、彼は凄く不満であった。
「同盟は我慢できるが、帝国やハンターなど!」
 あまりの怒りっぷりに、執事や給仕達は、自分達の仕事に没頭している振りをして逃げる。
 そこに、一人の女性が現れた。
「お父様。あまり大きい声は感心しませんわ」
 金髪金眼、整った顔立ちに、引き締まった身体。
 美しいとも、可愛いとも受け取れる表情を浮かべていた。
「おぉ。我が娘、ソルラよ」
 怒り狂っていたのが、急に静かになった。
 彼にとって、娘は世界で一番愛すべき存在なのだ。
「お父様。『娘』はやめて下さい。そんな歳ではありません」
「そう言うな。親からみれば、子はいつまで経っても子なのだ」
 彼の娘に対する愛情は過剰であった。
 例えば、彼の領地に今まで無かった孤児院や宅老所を建てたのは、娘の意見だったり、騎士でもある娘が戦場に行く時など、子飼いの傭兵を護衛につけるほどだ。
 護衛任務を行う娘を、更に護衛する為に、傭兵の一団をつけたという話もある。
「聞いたぞ。次の任務、ハンター共と一緒だと」
 彼が荒れている理由はそれだった。
「お父様。私はハンターと組むのは始めてで不安ですが、今は仕方ない事です」
「嫌ならいいのだぞ! お父さんがなにがなんでも他の者に交代させるから!」
「これは王命です。しっかりと務めてまいります」
 
 父にそうは言ったものの、多少不安であった。
 なにしろ、ハンターに対して強い偏見を持った家庭で育ったのだ。頭では理解しているが、不安は拭えない。
「いったい、どんな人達か想像もつかないのは、危惧すべき事かもしれない……」
 こんな時、どうすればいいのか、この女性は一つしか知らなかった。
「直接、行ってみるべきね!」
 こうして、最寄りのハンターオフィスの門を叩くのであった。

●懇親会へ
 ハンターへの偏見を持つ事で有名なある保守派貴族の娘がハンターオフィスに相談に来たという事は、相談された側も多少なり困惑した。
 しかし、これは王国内の保守派貴族からの印象を改善できる絶好の機会とも捉えられる。
 そういう事もあり、ハンターオフィスからの依頼でかつ、情報交換会という名目で、この女性との懇親会が行われる事になったのだ。


●称号話
 懇親会の会場は、ある屋敷の屋上庭園だった。
 色とりどりの花が咲き誇る花壇に囲まれた中央の広場に円卓が置かれている。
「本日はお集まり下さり、ありがとうございます」
 ソルラという名の女性が、集まったハンターに丁寧に頭を下げた。
「私の名はソルラと申します。普段は騎士として、貴族である父を補佐しています」
 彼女は真っ白なワンピースドレスに身を包んでいた。
 きっと、街を歩いていたら騎士には見えないだろう。
「今日は情報交換会という事で、私自身も含め、皆さんの色々な話が聞ければと思います」
 ニコッと笑った顔が愛らしい。
 父親が色々心配するのも納得だ。
「では、どんな話をすればいいかあると思いますので、まずは、私から皆さんに話したいと思います」
 目の前に並んだ料理を彼女が取り分けながら言った。
「私は『鉄壁の騎士』と同僚から呼ばれる事もあります。これは、5年前の歪虚との戦いにおいて……」
 そう切り出した話は、なかなか長かった。
 要約すると、撤退命令を無視して、ある村を救う為に、一歩も退かなかったという事らしかった。
「そして、私は……」

●雑魔襲来
 ソルラの言葉を遮る様に、突然、叫び声が響く。
 屋上庭園の上空を、カラスみたいな鳥が2羽合わさった様ななにかが飛んでいたからだ。
 叫び声は、そこから発せられている。
「あれは雑魔です……前にも見た事があります! 歪虚の斥候の類です」
 ソルラが指を指した。
 それが、合図になったかわからない。
 ともかく、その雑魔が急降下をしてきた。
 一斉に円卓から離れるハンター達。直後、円卓が爆風と共に吹き飛ぶ。
「ここは、避難民達を受け入れる予定の場所。この場所を歪虚に知られるわけには」
 丸腰だが、彼女は雑魔の正面に進み出る。戦うつもりだ。
 貴族が突き出してきた懇親会開催の条件で、彼女だけではなく、ハンターの面々も武装していない。
 武器防具の類は、屋敷に入る前に執事に預けてある。
 騒ぎを聞きつけて執事が、武具を屋上まで持ってくるだろうが、時間はかかるはずだ。
「ここは、私に任せて、皆さんは逃げて下さい!」
 彼女は台詞に、ハンター達は……。

リプレイ本文

●雑魔襲来
 カラスみたいな鳥が2羽合わさった様な雑魔が、円卓があった場所に降り立つ。
 料理や飲み物が辺り一面に散らかっている。
(せっかくの懇親会を……)
 ソルラは自身が丸腰なのは、気にもしなかった。
 ただ、せっかく来てもらったハンターの方々に申し訳なく思う。だから、雑魔に対峙した。
 これ以上、彼らに迷惑をかけるわけにはいかない。
「馬鹿野郎! 死んだらどうする!」
 結城綾斗(ka2092)の叫び声。
 次の瞬間、綾斗が雑魔の頭に酒瓶を叩きこんだ。
 そこへ、優雅な物腰で、ユージーン・L・ローランド(ka1810)もソルラより前に進み出る。
「皆さん、さがって下さい! 預けている武器を取りに」
 懇親会を始める前に、全員、執事に武器や一部の防具を預けていた。
「執事さん。聞こえるかしら? 雑魔が現れたから至急、武器を」
 結城 藤乃(ka1904)が武器を預ける際に、万が一の時の為にと渡したトランシーバーで伝える。
 そして、シルクドレスを巻くしあげ、内股に隠しておいた小型の拳銃を構えると、雑魔の行動を阻害する様に放つ。
(ったく、令嬢と楽しくお喋りする依頼っつーから参加したってのに雑魔が出るとは聞いてないぞ)
 新しい煙草を咥え直す、 トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)。
 とりあえず、魅惑的な白い太股が見えたから、よしとしよう。
(この程度なら命の危機って程でもないか)
 武器防具を身につけてはいないとはいえ、ソルラも含め全員が覚醒者だ。
 シエラ・ヒース(ka1543)は精霊の力を借りて、自身の力を高める。
「私は、この身一つが最大の武器よ。装備が届くまで時間稼ぎね」
 雑魔がシエラに向かって嘴で突いてきたが、ヒラリと避けた。
 そこに、光るエネルギーの矢が飛翔してくる。スターダスト(ka3497)が魔法を使ったのだ。
 どこから取り出したのか、手には短杖を持っている。
 ハンター達の素早い動作に、ソルラは驚いていた。
 武器を取りにいくかどうか迷う。だが、騒ぎを聞きつけて執事はすぐに来るだろう。ならば……。
「私も前に立ちます」
 だから、後退を勧めてきた綾斗の手を受け取らなかった。
「俺の父は、大切な物を守るために戦って死んだ。だが、死んだら意味がないんだ。だから俺はハンターになった。生きて大切な物を守り続けるために」
「私は、そんなに弱くはありません!」
 5年前の歪虚との戦いと比べれば、雑魔1体程、大した事はないと思い、彼女も前に出る。
「何も戦うなといってるわけじゃない。お前の命も、かけがえのないものなんだ。それを忘れないでくれ」
 そして、彼は下の階へと続く階段に向かって走り出した。武器を取りにいくつもりなのだろう。
「騎士様、協力の第一歩とゆきましょう」
 進み出て、シエラと並んだ所で、彼女が笑顔を向けてきた。
 頷く、ソルラ。
(確かに、気負いすぎたかもしれません……)
 足元に転がっていた椅子の脚を手に取った。

 スターダストが使ったエネルギーの矢が、雑魔に突き刺さる。
 怒り狂った雑魔が、酸をソルラに向かって撒き散らす。
 だが、彼女の周囲に光の防御壁が現れて、酸から防いだ。
「乙女の柔肌を傷つけさせる訳にはいかないからね」
 とトライフが口にする。
 執事が武具を持ってくるまでの間、持ちこたえればいいと思う。
「それをどうにかするのが僕の役目だ」
 続けて、マテリアルをソルラに流し込む。少しは防御力もあがるはずだ。
 それでも、傷を負った時は、ユージーンが回復させている。回復の必要がない時は、光の弾の魔法を使い、雑魔にダメージを与えていく。
 武器を持たずとも、十分な攻撃を重ねてきた彼らに、雑魔が戦意を喪失した様だ。
 飛びあがって逃げ出そうとする所を、藤乃が頭を狙って撃つ。
 地面に落下して暴れる雑魔に、シエラが円卓に敷いてあったテーブルクロスを被せて視界と行動を抑えた。
「あとで弁償するわ」
 引き裂かれていくテーブルクロスにそんな事を呟く。
 そこに、綾斗が現れた。長剣と日本刀を持っている。
「これを!」
 手渡しされた長剣を受け取り、スラリと音を立てて抜剣するソルラ。
 綾斗も刀を鞘から抜くと、2人はテーブルクロスの中で蠢く雑魔に向かって走り出す。
 2人の気合いの掛け声と共に、上段から振り下ろした一撃で、雑魔は崩れ去ったのであった。

●称号話
「先ほどはきつい言葉を言ってすまない」
 ハンター達の中で、最初に語る番が回って来た、綾斗がソルラに謝った。
「い、いえ、私も大声で、ごめんなさい」
「ハンターだって皆、色々な物を抱えながら命をかけて戦っている。それだけは忘れないでくれ」
 彼の台詞にソルラは頷いた。
「それでは、さっそく、綾斗さんからお願いしていいですか」
 円卓は吹き飛んで壊れてしまったので、一同は、思い思いの場所に座っている。
 これは、これで、堅苦しくなくて良いかもしれないが。
「称号の由来、正直、俺もよくわかってないんですよね……剣機との戦闘の際、味方が戦い易い様に、剣機の武装を破壊したのですが、その時にどうもついたみたいで……」
 苦笑を浮かべる綾斗。
「剣機と言えば、帝国に現れた、歪虚ですよね!」
 身を乗り出す様に質問する、ソルラ。胸元が色々危ない。
 やや高い場所に陣取ったトライフは、自分が良い位置にいたと思う。
 そんな視線には気がつきもせず、ソルラは、剣機との戦いを詳しく訊ねてくる。
 騎士として戦場に立つ事がある彼女にとっては興味をひく話なのだ。
「接続部分は脆いかもしれない……と、勉強になります」
 綾斗の話なのに、戦いの話を聞けて嬉しかったのか、ソルラはニッコリと微笑んだ。

 自身のマテリアルを活性化させ、傷をシエラは回復し終わる。
「大した怪我じゃあないわ」
 次の番はシエラなのだが、その様子を見てソルラが心配そうな表情を浮かべた。
「大丈夫なのですか?」
「えぇ、ハンターにとっても騎士様にとっても、ね? そうでしょ、ソルラ」
 肩をすくめて言ったシエラの台詞に、彼女は安堵する。
 そんな彼女に向かって、シエラは口を開く。
「私にとって、『ハンター』は、私の生き方に適していた職で、それはこれからもきっと同じ」
 執事に連れてこられた一頭の犬がシエラのすぐ横まで駆けてきた。
「私は旅暮らし。荒事の危険は、どの道避けれないし品行方正に仕事をこなしていけば、仕事を失うことはないわ」
「なぜ、旅を?」
 ソルラが首を傾げる。
 貴族の娘として、そして、王国に忠誠を誓う騎士として、彼女には旅を続けるという事が想像できなかった。
「新しいもの、古いもの、色々見て、体験して、自分の中の一つにしてそういう生き方が染みついているのよ」
「その生き方が好きなのですか?」
「旅をしていると楽しい事も辛い事も、いっぱいあるわ。そんな中、不意に切なくて苦しくて悲しくて、でも、嬉しくて、不意にそんな気持ちになることがあるの」
 旅の相棒でもある、老犬のグラッセの頭を撫でる。
「世界を愛おしく感じるの。その瞬間がたまらなく好きなのよ」

 ユージーンの番が来た。
 彼は立ち上がると、右足を引き、右手を体に添えた。そして、左手を横方向へ水平に差し出し、礼儀正しくお辞儀をする。
「改めまして、本日はお招き頂き有難う御座いますユージーン・レヴィ・ローランドと申します ジーン、とお呼び下さい」
「はい。ジーンさん」
 その優雅な物腰に、ソルラはなにか気がついた様子だったが、敢えて触れる事はなかった。
「ソルラさん、とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。この場において、身分は関係ないものだと思っていますので」
 ニッコリと笑顔のソルラ。
 もっとも、さん付けを希望した理由は、ユージーンの中では別の意味があったのだが。
「僕の称号は揺籃館の料理人を雑魔から守った際に頂いたものです」
 続けて、その時の料理の話になる。
「姫様も一緒に!?」
 話の中から思わぬ人物が出てきた事で、ソルラは驚く。
 姫様と一緒にお食事だなんて……羨ましいと思いながら。
「いえ……システィーナ様は、モニター越しでしたが、システィーナ様の細やかなお気遣いには感謝しております」
 さすが、姫様……遠く離れていた場所の方にも……とソルラがウンウンと、ユージーンの言葉に頷く。
 そんなソルラを見て、
(良い空気が、この場には満ちていますね。きっと主催者のお人柄がそうさせるのでしょうね)
 と、ユージーンは思うのであった。

「私がハンターになった理由が聞きたいの?」
 ソルラからの質問に、スターダストが答える。
「簡単な事よ、生きる為よ」
「生きる為……ですか」
「私がこちらの世界に落ちてきた時……」
 転移してきた時の事を思い出す。
「て、転移者は空から落ちてくるのですか!」
 と話とは関係のない所で、ソルラが驚いて、乗り出す様に姿勢を前に出す。
 トライフがピクっと動いたが、誰も気がつかなかった。
「勘違いしないでね、こちらの世界に来た時、落下感があったから、私が落ちてきたと言ってるだけだから」
「そうなんですね。転移の時の話を聞けるなんて、思わなかったので、つい」
 元の位置に戻るソルラ。
「いろいろ助けてくれた人がいたから、助けてくれた人の為に役に立つと思ってね」
「そういうのって、良いですよね」
 人の為にという事に、ソルラは深く共感した。
 ハンターも騎士も変わらないのだと。

(不味ったな、碌な話がないぞ……嘘を吐かずに煙に巻くか)
 順番が来たトライフがそんな事を思う。
「さて、次は僕だけど皆みたいな立派な通り名はなくてね……」
 なので、その様な出だしから始めた。
 子供の頃から体が弱かった事。それでついた仇名が足手纏の《役立たず》。
 今は名前も同然で、雑誌の取材で大口叩き法螺話をしてから広まった、口先だけの《役立たず》。
「それが僕さ。ところでソルラ嬢、僕は《役立たず》だったかな?」
「そんな事はありません! 先程の戦いでも、十分な援護を」
 雑魔の攻撃から、光の防御壁で守ってくれたのは、彼の力だ。
「火のない所に煙は立たない、だけど、噂が真実とも限らない。だから、誰かの言葉に惑わされず、君が見て感じた事を信じると良い」
「はい! 今日、十分に見て、感じる事ができました」
 真っ直ぐなソルラの瞳。
 穢れを知らないとはこの事かと、心の中で苦笑してしまう。
「とはいえ、無闇に信じるのも良くない。ハンターに荒くれ者やゴロツキも居るのも真実だ」
「それは、貴族や騎士でも言える事ですから」
「今だって大口叩きが煙に巻こうとしてるだけかもしれない……なんて、ね」
 そんな台詞を言いながら、紫煙を燻らせて悪戯っぽく表情を見せるトライフ。
「もう……ご冗談を」
 とびっきりの笑顔を見せるソルラ。
 今日は色々と眼福だなと思うトライフであった。

 いよいよ、最後の番になった。
「私は、多分、射撃の腕を買われて貰った称号……かな?」
 藤乃が、床に転がっていた薬莢を拾いながら言う。
 昔を思い出した。歪虚と戦い散った同胞。生き延びてしまった自分。
 もぬけの殻に成っても、死ぬ事だけは選べなかった。同胞の分も生きる責務が在ると。
「この射撃の腕も、戦う為の知識も、私一人で得た物では無い……からさ」
 過去の事を、心に捻じ込みながら、言葉を紡ぐ。
 受け継いだ力を、次の世代へ贈る為に生き残ったのだ。
「だから、これからを作る人達が、前に進める様に、道を遺して上げるのが、私に出来る事」
 そんな人物が一人、藤乃の頭の中に思い描かれ、思わず笑みを浮かべる。
「これからを作る人……」
「貴方も、そういう相手を持ってみれば。護りたい人とか、逆に護られたい人とか」
 そう言われても、ピンと来ない表情のソルラ。
 少なくともソルラの身近にはいない。王国や領民という事もあるだろうが、そんな話ではないとは理解している様だが。
「例えば、好きな人とか、気になる人とか」
 それほど、深い意味はなかったであろう藤乃の言葉に、ソルラが顔を赤くした。
「わ、私には、そ、そんな、人いませんから……」
 初恋の少女かという程、慌てふためくソルラだった。

●帰り際
「本日は、ありがとうございました」
 屋敷の門でハンター達を見送るソルラ。
 懇親会の途中で雑魔の邪魔が入ったが、彼女は満足だった。
「また、今度、依頼ではなく、遊びに来て下さい。美味しいケーキと紅茶を用意しますね」
 雑魔のせいで、料理や飲み物が大無しになったのが心残りでもあった様だ。
「楽しみにしてるわよ」
 スターダストが色っぽい言葉と表情を向けた。
「逆に、家から旅に出たかったら、声かけてよね」
 シエラの相棒の犬も、誘う様にワンワンと鳴く。
 家出すらした事のないソルラには刺激すぎる言葉だ。
「それでは、また、いずこかで」
 ユージーンが、ソルラの手を取り、手の甲を唇で軽く触れる。
 真っ赤な顔して慌てて手を戻すソルラ。
「は、はい。ジーンさんも、い、家出の際は……」
 ちょっとした錯乱状態になっているソルラ。
 余程、男性慣れしていないのだろうか。
「そ、そうだ。綾斗さん」
 気持ちを切り替える様に、ソルラは綾斗に声をかけた。
「ほんとに、あの時、声を荒げてしまって御免なさい。私……あまり、その様に気を使われた事なくて……」
「大丈夫ですよ。むしろ、俺も悪かったですから」
 安心させる様に、にこやかな笑顔を見せる綾斗。
 次にソルラが、藤乃に視線を向ける。
「会ってみたいです。藤乃さんがそう思える程の人に」
「機会があればね」
 そんな機会があるかどうかわからないが。
 と藤乃は自身の雇い主を思いだしながら、答えた。
「それでは、ソルラ嬢。今度から困った時は、ハンターも頼ればいい」
 トライフが気障っぽく片手をあげて声をかける。
「は、はい! みなさん、また」
 ハンター達が去って行くのを見えなくなるまで、彼女は手を振り続けた。


 こうして、懇親会は無事に終わり、ハンター達は帰途についた。
 今回の事で、ソルラはハンターに対し心象がとても良くなったようだ。
 そして、それが、別の騒動を巻き起こす事になるが、それは、また、別の話である。


 おしまい。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァイン(ka0657
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 縁を紡ぐ者
    シエラ・ヒース(ka1543
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • はるかな理想を抱いて
    ユージーン・L・ローランド(ka1810
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 優しい兄貴?
    結城綾斗(ka2092
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

  • スターダスト(ka3497
    人間(蒼)|25才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談室
結城綾斗(ka2092
人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/11/12 00:56:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/08 22:09:48