ゲスト
(ka0000)
マゴイの夏休み
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2017/09/05 19:00
- 完成日
- 2017/09/11 01:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●マゴイさん、悩む。
南海に浮かぶ孤島。
地下に隠された巨大建造物――市民生産機関――の一室にある会議室でマゴイは、『自分は生きているのか死んでいるのか』という議題で一人会議をやっている。これでもう30回目だ。
A:自分は事故により亜空間に転送されたが、不安定な空間ゆえ肉体の再結合が妨げられ、なし崩しにエレメント化した。
B:自分は事故により肉体と精神が一時消失した。その後エレメントとして再構成され亜空間に転送された。
さて、真相はどちらなのか。
自分としては死んでいるとも思えないのだが、もしかしてあの事故の後、ユニオンの記録において死亡者としてカウントされているのかもしれない。それなら間違いなく死んだということだ。
しかしそれを直に確認することは出来ない。ユニオンはもう存在していないから。
遺物に含まれているデータを探してみても、あの事故に関する記録を見つけることは出来なかった。それも自分が事故に遭う前に、この世界へ転送されてきたものであるらしい。
とすると参考に出来るのは事故の現場にいた人間すなわち現在スペットとなっているβの記憶である。
だが残念なことに彼はさまざまな記憶を欠落させている。その上で過去に起きたことを誤認識している部分がある。証言にいまいち信憑性が持てない。
θにしても同様に記憶が怪しい。もっとも彼女は事故の現場にいなかったわけだから、最初から証言者たり得ないわけであるが。
それにしても両者、成人再訓練所に送られることになった時よりずっと、共同体社会への不適合化が進んでいるように見えてならない。『理性の声』を受け感情的に不安定化するとはどういうことだろうか。本来逆なのに。少なくともユニオンにいた間彼らは、ああいう反応を見せることはなかった。
未発達な社会は未発達な精神を助長するものなのであろうか……。
……ところで話は元に戻るが現段階において私は自分が死んでいるか生きているかを決めることが出来ない。
もし私が死んでいたとすれば既に市民ではない。市民でないものが市民生産機関に関わることはしてはならないことである。
とはいえ『死者にはユニオン法が適用出来ない』とするその根拠は、精神も肉体もない者には法を実行する能力がないから、ではなかっただろうか。
私は死者であるとはいえ法を実行する能力がある。それなのにワーカーの保護を放棄することもやはり、ユニオン法に反するにことではないだろうか。
……そもそも、こういう場面で可か不可か応か否かの裁定を下すのはマゴイではなくステーツマンの仕事ではなかろうか。
やっぱりステーツマンが必要だ。
以上のことを専門用語を交え様々な法的根拠を引用し形而下形而上くだくだしく述べ尽くしたマゴイは、『この議題は自分一人の手には余るのではないだろうか』ということにぼんやり思い至った。
『……私……二人に分裂出来ないかしら……』
ボソボソ呟きつつ席を立った彼女は手の一振りで照明を消し、会議室を出る。
濃い緑の間に四角い建物が規則正しく並んでいる。
中程にある低い山のてっぺん、四面に穴が空いた大きな角柱が立っている。
穴からは、地下深くから組み上げられた水が絶え間無く噴き出していた。その水は島中に巡らされた水路を規則正しく通り、海に落ちて行く。
マゴイが地下から出てきたのを見つけコボルドたちは、うれしげに寄っていく(彼らとマゴイはコボルド語で会話しているのだがそのまま書くと煩瑣になるので、以下、訳して表記する)。
「まごーい、みずがひけたー」
「まごーい」
『……ご苦労様……これで環境整備の仕事は一区切りなので……長期休暇を取らないと……』
「ちょうききゅうってなにー」
「なにー」
『……いつもより長く仕事をお休みして……遊びに行くことよ……』
「あそびにいくってどこにー」
「どこにー」
どこってそれは各地に整備されているユニオンの公営保養所――と言おうとしてマゴイは気づいた。そんなものはこの世界に一つとしてないことに。
かわいそうなワーカー。いずれそういったものも作ってあげなければなるまい。
そんなことを思いつつもそもそワーカーに尋ねる。
『……どこか……行きたいところはある?……アーキテクチャー使用の際のマテリアル消費量を鑑みて……一日くらいなら連れて行ってあげられるけど……』
コボルドたちは顔を見合わせ、いっせいに言った。
『こぼのとこ!』
●夏の終わりのジェオルジ
残暑の折、ジェオルジ支局はのどかだった。 オフィス内には冷房を目当てに、ハンターたちが遊びに来ていた。
ジュアンはマリーと入れ替わりに夏休みを取っているので、この場にいない。
カチャがそのマリーと話をしている。
「それでそれで。ナルシスさんと2人で夜の浜辺を散歩してその後どうなったんですかマリーさん。キスしたんですか」
「キッ……そんなことしないわよ! 手……手を繋いだのよ」
「え……それだけ……?」
「それだけって何よ」
「いえ、そこまで話を引っ張ったからには何か劇的な進展でもあったのかなと思ったんですけど……」
「わ、私には節操と言うものがあるのよ!」
ガラッ
会話の途中、マリーのデスクの引き出しが出し抜けに開いた。
腹に受けた衝撃で椅子ごと後方に倒れるマリー。
引き出しから長い黒髪の女――マゴイがのそのそ出てきた。
『……あら……失礼……』
一応相手との面識があるカチャも、これまでにない登場の仕方に度肝を抜かされる。
「ちょっ、何ですか何なんですか何事ですか!?」
しかし話はそこで終わりではない。マゴイの後ろからコボルドたちがわらわら出てきた。おそろいの白いスカーフをつけて。
仲間の声と匂いを嗅ぎ付けたコボちゃんが、外から駆け込んでくる。
「わし! わしわしわし!」
「うぉん!」
「わうわう!」
鼻をくっつけあって尻尾を振り再会を喜び合うコボルドたち。マゴイが改めて口を開く。
『……休暇中だから……連れてきたの……』
腹を抑えて起きてきたマリーが声を荒げる。
「じょ、冗談じゃないわよ! いきなり何なの! よそに行ってよ、よそに!」
『……そういうわけにはいかないのよ……彼らがここに来たいと言うのだから……ところであなた……好意を持つ相手と二人で海に行ったのに手を繋ぐだけで終わったっていうのは本当……?』
「あんたいつからこの机の中で話を聞いてたぁ!」
『……割と最初の方から……それで思うのだけど……あなた目的とする行為に至るまでの前置き期間が無駄に長すぎない……?』
「こっ、行為とか言うなー!」
リプレイ本文
●マゴイさんに聞いてみよ
「長期休暇ですか。その発想はなかったな。ところでマゴイさんは、今何をされているんです?」
『……市民生産機関の再稼働と……市民環境の整備……』
「そうですか。私は天体観測をしていましたよ。今年の夏はいつもより暑くて捗らずでしたが――皆様の夏は如何なもので?」
ソラス(ka6581)から話を振られたフルルカ(ka5839)は、意気揚々とこの夏の思い出を語る。
「わたしは菜園の家主から留守を預かり、自宅警備員をしていたのだ。24時間勤務の社畜みたいなものだ」
「自宅警備員はシャチクとはいわん……毎日が日曜日状態じゃろ」
「何を言うかディヤーよ。そなたを遊ばせてやったあのジオラマ迷宮、畑を改造して作るのにどれだけの手間と時間がかかったと思っておる。そもそもそなたこそ、今年の夏は何をしておったのだ? 聞くところによると姉弟子の家に入り浸って食っちゃ寝ばかりしておったそうだが?」
突っ込み返しを食らったディヤー・A・バトロス(ka5743)は、一瞬言葉に詰まる。
「そ――そんなことはない、ちゃんと仕事もしておる。そうそう、宇宙に行ってCAMに初めて乗ったわ。いやー、あれは実に痛快な体験じゃった!」
ジルボ(ka1732)は、ソファーにだれっと寄りかかりながら言った。
「俺は幽霊船を相手にしたり、ユニコーンを相手にしたり……後なんか妙な夢を見たな――そういやおねぇさん、夢を見ることある?」
『……あるわよ……亜空間に戻っているときは……睡眠に近い状態でいるから……』
「へぇー。どんな夢見るの?」
『……ユニオンにいた時のことね……』
言葉を切ってマゴイはコボルドたちに視線を移した。
『……保養所がなくて新しいワーカーたちは不幸せ……』
彼女は彼女なりにワーカーの待遇について、心を砕いているようだ。
この世界との共存についても同様に心を砕いてくれないだろうか。思いつつハンス・ラインフェルト(ka6750)は、助言した。
「保養所がないなら、ここで依頼を出してフェーリエンボーヌングを借りればいいじゃないですか。きっとマリーさんが素敵な場所を探してくださると思いますよ。ねえ、マリーさん?」
マリーは彼の言葉に反応を返すどころではなかった。リナリス・リーカノア(ka5126)が煽りに煽ってくるのだ。
「ナルシス君も、20歳、30歳と年を重ねていくわけでー、その時になって未成熟な少年の青い肢体にキスやら何やらしておきたかったと思っても出来ないんだよ?」
「そっそそそそっそんないやらしいこと考えてないわよ私は!」
「本当かなー? したい事は即やっておいた方がいい。後で後悔したくないならね♪……あたしはしたい事は全部その場でシてるよ♪ カチャとキスしたいと思ったら」
前フリなく急にキスされたカチャは、目をぱちくりさせる。
「えっ、と、どうしたんですか急に」
「だって、急にしたくなったんだもん♪ ……他にも――」
リナリスがマリーの耳に、なにやらごにょごにょ吹き込んだ。エルフの白い肌がたちどころに赤くなる。
「……あ、あんたたちそこまでやっちゃってるの……ウソでしょ……」
「ちょっちょっちょっと、今何をマリーさんに教えたんですかリナリスさん!」
「えー、カチャったら知ってるくせにぃ♪ あたしは後悔したくないんだよね。人生何があるかわからないし――」
穂積 智里(ka6819)は一連の会話を聞かないふりして、マゴイに質問をぶつける。
「今回は長期休暇でいらしたと伺いましたけど。マゴイさん達は長期休暇ってどのくらいのペースでとって、どんなことをなさっているんですか?」
『……年に三カ月ほど……その間は皆保養所に行く……』
「保養所というのは、何が出来るどんな場所でしょう?」
『……同様のものがこの世界にはないから……説明が難しいけど……宿泊施設と娯楽施設と静養施設を一緒にしたものと……考えてくれれば……』
「人によって使える期間や出来ることが違ったりしますか?」
『使える期間は一緒だけど……階級によって使う設備に差異はある……生まれ持った能力に差異があるのだから……当然の話……ソルジャーがワーカーの基準でスポーツをしても……難易度が低すぎて達成感が得られないでしょう……』
会話の途中でディヤーが、ひょいと割り込んできた。
「そういえば智里殿は今年の夏何か目ぼしいこと、あったかのう?」
「夏の思い出、ですか……」
智里は無意識のうちに視線をハンスに向けた。ほんのちらり、とだが。
「……おばあちゃんの国の人で、多分紹介したらおじいちゃんやおばあちゃんとは凄く友達になれる人で、そこそこ頼りがいはある気がしなくもなくて、何度かお祭りに行ってくれて、一緒に居ても全然緊張しなくて……でも1番思うのは「やっぱり変な人だなぁ」で――」
長々話してから我に返り、はたと口を閉じた。恥じ入るように、ほんのり目の縁を染めて。
「……ごめんなさい、依頼の話ですね」
丁度いいところでオフィスのドアが開いた。
コボルド里帰りパーティーのため買い出しに行っていた天竜寺 詩(ka0396)とコボちゃんが、戻ってきたのである。
「ただ今-!」
「わしわっしー!」
コボルドたちが喜んで、彼女らに飛びついて行く。
微笑ましくそれを眺めていたハンスは、急に背中を小突かれた。何事かと振り向けばジルボがニヤニヤしている。
「ハンスさんさあ、もうちっと側にいる人間に対して注意深くなったほうがいいんでない?」
「……何のことです?」
「さあねー」
●里帰りパーティー
詩とソラスの尽力により、宴の準備が整った。
焼肉とすき焼き。トンカツと冷しゃぶ。唐揚げと腹に香草を詰めた塩釜焼が、デザートのピーチパイ、酒類も含めた種々の飲み物と一緒にテーブルへ並べられる。
参加する人数に対し椅子が足りないので、ビュッフェスタイルを取ることにした。
コボルドたちはおおいに喜び出されたものをぱくぱく食べる。特にコボちゃんは大ハッスル。フルルカも。
「にく、にくぅ!」
「肉-っ!」
詩は肉ばかり取る2人の皿に、こんもりサラダを盛ってやる。
「コボちゃん、フルルカさん、ちゃんとお肉以外も食べないと駄目だよ」
ハンスは緑茶を手に、何も食べようとしないマゴイと話している。
「――ということであれば、生きているか死んでいるかは、結局は貴女が転移したときロストした記録があるかないかでしか決定されないということですね。貴女一人で記録を探し出せないなら、ここで技術者を求める依頼を出せばいいでしょう。機導師なら機導術があります。残った機械やデータから、記録のサルベージが出来るかもしれませんよ」
『……遺物を市民以外に任せることが……法的に出来たかしら……』
またぞろ考え込み始めるマゴイに、リナリスとジルボが言った。
「マゴイ、死は終わりではなく変化に過ぎないんだしどっちでもいいんじゃない?」
「俺もどっちでも良いと思うんだがね。こうして交流出来てるわけだし」
フルルカも彼らと同意見。生者でも死者でもどっちでもいいではないかという立場。
「マゴイよ。考えすぎは損なのだ。悩むのは大いに結構だが、今は皆もいる。楽しもうではないか!」
ソラスは冷しゃぶをゴマだれにつけながら、尋ねた。
「境界をどこに置くか。肉体の方こそ仮の宿とも言うそうですね。考え続けても渕に沈むだけですよ――ところで前々から気になっていたんですけど、ステーツマンってどうやって作るんです?」
『……人工受精機の中で適切な卵子と適切な精子を結合させて作るのよ……』
いや確かにそうなのだろうが聞きたいのはそういうことではないのだがどう言えば伝わるのか。
そんなふうにソラスが悩んでいる間にジルボと詩は、コボルドたちから情報を聞き出していた。コボちゃんを介して。
「ねえ、皆のいるところには、どんな動物や植物がいるのかな?」
「普段どんな仕事してんだ? 何食わして貰ってんだ?」
以下、コボちゃんの通訳による回答。
「ひがぎらぎら。しおからいおおきいいけ。どうぶつ、さかな、とり、ねずみ、とかげ。くさ、き、おおきくてみどり。しごと、いし、きって、つむ、おっきなもの、つくる。まごい、しかくい、おいしいもの、くれる」
通訳が不完全なこともあり今ひとつ要領を得ないが、どうやらコボルドたちは南方の海が近い場所におり、建設の仕事をしているようだ。
詩はついでなので、もう一つ質問をする。
「ね、コボルドって、好きな相手にどうやって気持ちを伝えるの?」
回答は以下。
「ほえる」
ところでリナリスは周囲の流れに関係なく、またぞろ暴露話をしている。
「あたしとカチャはこの夏一緒に遊びまくったよね~♪ エビサの山頂ホテルに費用全額あたし持ちで滞在したり♪ ね? 敢えて丸一日ベッd……部屋から出ないで楽しい事したよね♪ 費用全額あたし持ちで♪」
「……その通りです……」
「もー、カチャったらいじけちゃってかわいいなあ! 大丈夫、あたしより稼げなくても好きだから♪」
それを聞いたフルルカとディヤーが、マゴイにおねだりを始めた。
「ぬおお、マゴイよ、自宅警備員フルルカさんにも夏休みの思い出を寄越すのだー! わたしもリナリスたちみたいにリゾート行きたいー!」
「ワシも遊びに行ってみたいのう! マゴイのおるとこ見学とかできんのか? なんか色々作ってるのじゃろ?」
『……そう言われてもね……私も無限にアーキテクチャーを使えるわけじゃないし……ワーカーたちを連れて帰るので精一杯だし……大体あなたたち市民じゃないし……』
そこでコボルドたちがマゴイに寄ってきて、口々に鳴いた。
マゴイはしばし黙した後、床に顔を向ける。
『……ウオッチャー……』
マゴイの足元から黒い箱がせり上がってきた。ジルボは少々焦る。
「おねぇさん、コボは職員だから勝手にスキャンしたら駄目だって」
『……違うわよ……ワーカーたちがそこの仲間に、自分たちが作ったものを見せたいというから……向こうに設置してあるウォッチャー経由の映像を……脳内再生させようかと……それくらいならそんなに力も消費しないから……』
それを聞いたマリーは顔色を変え、ガタンと席を立つ。
「私は遠慮しておくから! 私には妙な術かけないでよ!」
『……じゃあ、あなたは対象から外すわね……』
直後ハンターたちとコボルドたちの意識は、ウォッチャーの作り出す世界に取り込まれた。
●ユニオンの欠片
高台に教会の鐘楼ほどある角柱がそびえ立っている。見た感じ石で作られているようだが表面はするりとして、継ぎ目はどこにも見当たらない。
角柱の四方に空いた穴から、勢いよく水が噴き出している。水は角柱の周囲に作られた階段状の水路に注がれ、規則正しく流れて行く。その先は……一面白いもやに包まれ見通しが利かない。どうやらマゴイは意図的に見せる対象を限定しているらしい。現在地を特定されたくないと思っているのかどうなのか。
「おお、これをそなたらが作ったのか! よくわからんがすごいぞ!」
フルルカから大いに感心されたコボルドたちは、誇らしげに吠える。
透明な水の流れは詩に、つい最近参加したイベントを思いださせた。夜のしじまに聞こえるせせらぎ。乱詩する儚い光の群。
「そういえば私はこの夏蛍を見に行ったよ。島には蛍いるのかな?」
『……ホタルとは何かしら……?』
「小さな虫だよ。夜になるとね、お尻を光らせて飛ぶの。私の国ではね、蛍は死者の魂だって言われてるんだ――」
詩は話した。死別した生みの母のことを。彼女に対しての自分の気持ちを。
「たとえ魂だけでも、ママにもう一度会えたらって思うんだ」
『……すでに死んだ人には……会うことは出来ないけど……』
「うん。でも会いたいんだ。多分θさんへのスペットの思いも同じなんだと思う。例え自分の事を覚えていなくても。マゴイにはそう思ってくれる人はいないの?」
『……万一いたらその人は……いささか調整が必要な状態なのではないかと……死亡した人間とはいかなる関係も持つことは出来ない……それが分からない市民は……いないはず……』
「寂しいね」
何が寂しいのだろう、というように首を傾げるマゴイ。
ディヤーは彼女に聞いてみた。
「休暇が終わったら、今度は何をするんじゃ?」
『……エネルギー対策に取り組もうかと……人手が少ないから少しずつになるだろうけど……』
「人手か……リアルブルーのニホンというところには本物のシャチクが多いらしいから、そこに行って勧誘してみれば簡単にワーカー増員出来るかも知れんぞ?」
『……興味深い話ね……』
「おお、なんかワシ役に立つ提案をしたっぽい! ユニオンの適性あるかの?」
『……広報のワーカーに向いてるかもね……』
ディヤーに続けてリナリスも、提案をする。
「ね、ユニオンの技術力でクリムゾンウェストの理をエミュレートして死者を疑似的な英霊にして、死後も意識を存続させる事って出来ない?」
『……それは出来ない……というかやったら駄目……法的に……』
智里は彼らのやり取りに危うさを感じた。マゴイにはなるべく違うことを考えてもらいたいという気持ちから、会話に割り込む。
「私達は夏祭りで屋台のごはんを食べたり海に行ったりしました。もうすぐ秋祭り、保養所探しも兼ねてマゴイさんも観察に行ってみませんか」
『……そうね……次の休みが来るまでには……目星はつけておかないと……保養所はどうしても必要……』
ハンスが言った。
「ぴょこさまやスペットさんの所へ行くのはどうですか? この世界に生きるエレメントやユニオン市民の生き方は、今後の貴女の生き方の参考になると思いますよ」
『……参考に……なるかしら……』
「なると思いますよ。マゴイさん、私は貴女が英霊だと思っています。この世界は嘗ての貴女の世界のような、肉体をなくした精神体が存続出来る技術がない。つまり、肉体をロストすれば――」
●お休み終わって
マゴイはコボルドたちと島に戻ってきた。きっかり昨日と同じ時間に。
随分力を使ったなと思いながら、詩から貰った骨を噛むコボルドたちに言う。
『……持って帰った食べ物の残りは冷蔵して……時間通りに食べなさい……私はこれから亜空間に戻るから……何かあったらウォッチャーに言うのよ……』
コボルドたちは鼻をクンクン鳴らしながら頷いた。
それを見届けてからマゴイは、亜空間に戻る。ハンターたちから仕入れた情報について、あれこれ考えながら。
コボちゃんはコボちゃんハウスの壁に写真を張り付けた。仲間たちがマゴイと帰って行く前に撮った集合写真――ソラスが撮影して、ハンターたち全員と自分に配ったもの――を。
今度遊びにおいでと仲間たちは言った。自分も是非そうしたいと思うコボちゃんは、月に吠える。
「わっしっしー」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/03 13:42:00 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/09/05 17:44:59 |
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質問卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/09/02 18:22:34 |