ゲスト
(ka0000)
マゴイの夏休み
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 3~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2017/09/05 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/09/14 19:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
●マゴイさん、悩む。
南海に浮かぶ孤島。
地下に隠された巨大建造物――市民生産機関――の一室にある会議室でマゴイは、『自分は生きているのか死んでいるのか』という議題で一人会議をやっている。これでもう30回目だ。
A:自分は事故により亜空間に転送されたが、不安定な空間ゆえ肉体の再結合が妨げられ、なし崩しにエレメント化した。
B:自分は事故により肉体と精神が一時消失した。その後エレメントとして再構成され亜空間に転送された。
さて、真相はどちらなのか。
自分としては死んでいるとも思えないのだが、もしかしてあの事故の後、ユニオンの記録において死亡者としてカウントされているのかもしれない。それなら間違いなく死んだということだ。
しかしそれを直に確認することは出来ない。ユニオンはもう存在していないから。
遺物に含まれているデータを探してみても、あの事故に関する記録を見つけることは出来なかった。それも自分が事故に遭う前に、この世界へ転送されてきたものであるらしい。
とすると参考に出来るのは事故の現場にいた人間すなわち現在スペットとなっているβの記憶である。
だが残念なことに彼はさまざまな記憶を欠落させている。その上で過去に起きたことを誤認識している部分がある。証言にいまいち信憑性が持てない。
θにしても同様に記憶が怪しい。もっとも彼女は事故の現場にいなかったわけだから、最初から証言者たり得ないわけであるが。
それにしても両者、成人再訓練所に送られることになった時よりずっと、共同体社会への不適合化が進んでいるように見えてならない。『理性の声』を受け感情的に不安定化するとはどういうことだろうか。本来逆なのに。少なくともユニオンにいた間彼らは、ああいう反応を見せることはなかった。
未発達な社会は未発達な精神を助長するものなのであろうか……。
……ところで話は元に戻るが現段階において私は自分が死んでいるか生きているかを決めることが出来ない。
もし私が死んでいたとすれば既に市民ではない。市民でないものが市民生産機関に関わることはしてはならないことである。
とはいえ『死者にはユニオン法が適用出来ない』とするその根拠は、精神も肉体もない者には法を実行する能力がないから、ではなかっただろうか。
私は死者であるとはいえ法を実行する能力がある。それなのにワーカーの保護を放棄することもやはり、ユニオン法に反するにことではないだろうか。
……そもそも、こういう場面で可か不可か応か否かの裁定を下すのはマゴイではなくステーツマンの仕事ではなかろうか。
やっぱりステーツマンが必要だ。
以上のことを専門用語を交え様々な法的根拠を引用し形而下形而上くだくだしく述べ尽くしたマゴイは、『この議題は自分一人の手には余るのではないだろうか』ということにぼんやり思い至った。
『……私……二人に分裂出来ないかしら……』
ボソボソ呟きつつ席を立った彼女は手の一振りで照明を消し、会議室を出る。
濃い緑の間に四角い建物が規則正しく並んでいる。
中程にある低い山のてっぺん、四面に穴が空いた大きな角柱が立っている。
穴からは、地下深くから組み上げられた水が絶え間無く噴き出していた。その水は島中に巡らされた水路を規則正しく通り、海に落ちて行く。
マゴイが地下から出てきたのを見つけコボルドたちは、うれしげに寄っていく(彼らとマゴイはコボルド語で会話しているのだがそのまま書くと煩瑣になるので、以下、訳して表記する)。
「まごーい、みずがひけたー」
「まごーい」
『……ご苦労様……これで環境整備の仕事は一区切りなので……長期休暇を取らないと……』
「ちょうききゅうってなにー」
「なにー」
『……いつもより長く仕事をお休みして……遊びに行くことよ……』
「あそびにいくってどこにー」
「どこにー」
どこってそれは各地に整備されているユニオンの公営保養所――と言おうとしてマゴイは気づいた。そんなものはこの世界に一つとしてないことに。
かわいそうなワーカー。いずれそういったものも作ってあげなければなるまい。
そんなことを思いつつもそもそワーカーに尋ねる。
『……どこか……行きたいところはある?……アーキテクチャー使用の際のマテリアル消費量を鑑みて……一日くらいなら連れて行ってあげられるけど……』
コボルドたちは顔を見合わせ、いっせいに言った。
『こぼのとこ!』
●夏の終わりのジェオルジ
残暑の折、ジェオルジ支局はのどかだった。 オフィス内には冷房を目当てに、ハンターたちが遊びに来ていた。
ジュアンはマリーと入れ替わりに夏休みを取っているので、この場にいない。
カチャがそのマリーと話をしている。
「それでそれで。ナルシスさんと2人で夜の浜辺を散歩してその後どうなったんですかマリーさん。キスしたんですか」
「キッ……そんなことしないわよ! 手……手を繋いだのよ」
「え……それだけ……?」
「それだけって何よ」
「いえ、そこまで話を引っ張ったからには何か劇的な進展でもあったのかなと思ったんですけど……」
「わ、私には節操と言うものがあるのよ!」
ガラッ
会話の途中、マリーのデスクの引き出しが出し抜けに開いた。
腹に受けた衝撃で椅子ごと後方に倒れるマリー。
引き出しから長い黒髪の女――マゴイがのそのそ出てきた。
『……あら……失礼……』
一応相手との面識があるカチャも、これまでにない登場の仕方に度肝を抜かされる。
「ちょっ、何ですか何なんですか何事ですか!?」
しかし話はそこで終わりではない。マゴイの後ろからコボルドたちがわらわら出てきた。おそろいの白いスカーフをつけて。
仲間の声と匂いを嗅ぎ付けたコボちゃんが、外から駆け込んでくる。
「わし! わしわしわし!」
「うぉん!」
「わうわう!」
鼻をくっつけあって尻尾を振り再会を喜び合うコボルドたち。マゴイが改めて口を開く。
『……休暇中だから……連れてきたの……』
腹を抑えて起きてきたマリーが声を荒げる。
「じょ、冗談じゃないわよ! いきなり何なの! よそに行ってよ、よそに!」
『……そういうわけにはいかないのよ……彼らがここに来たいと言うのだから……ところであなた……好意を持つ相手と二人で海に行ったのに手を繋ぐだけで終わったっていうのは本当……?』
「あんたいつからこの机の中で話を聞いてたぁ!」
『……割と最初の方から……それで思うのだけど……あなた目的とする行為に至るまでの前置き期間が無駄に長すぎない……?』
「こっ、行為とか言うなー!」
●マゴイさん、悩む。
南海に浮かぶ孤島。
地下に隠された巨大建造物――市民生産機関――の一室にある会議室でマゴイは、『自分は生きているのか死んでいるのか』という議題で一人会議をやっている。これでもう30回目だ。
A:自分は事故により亜空間に転送されたが、不安定な空間ゆえ肉体の再結合が妨げられ、なし崩しにエレメント化した。
B:自分は事故により肉体と精神が一時消失した。その後エレメントとして再構成され亜空間に転送された。
さて、真相はどちらなのか。
自分としては死んでいるとも思えないのだが、もしかしてあの事故の後、ユニオンの記録において死亡者としてカウントされているのかもしれない。それなら間違いなく死んだということだ。
しかしそれを直に確認することは出来ない。ユニオンはもう存在していないから。
遺物に含まれているデータを探してみても、あの事故に関する記録を見つけることは出来なかった。それも自分が事故に遭う前に、この世界へ転送されてきたものであるらしい。
とすると参考に出来るのは事故の現場にいた人間すなわち現在スペットとなっているβの記憶である。
だが残念なことに彼はさまざまな記憶を欠落させている。その上で過去に起きたことを誤認識している部分がある。証言にいまいち信憑性が持てない。
θにしても同様に記憶が怪しい。もっとも彼女は事故の現場にいなかったわけだから、最初から証言者たり得ないわけであるが。
それにしても両者、成人再訓練所に送られることになった時よりずっと、共同体社会への不適合化が進んでいるように見えてならない。『理性の声』を受け感情的に不安定化するとはどういうことだろうか。本来逆なのに。少なくともユニオンにいた間彼らは、ああいう反応を見せることはなかった。
未発達な社会は未発達な精神を助長するものなのであろうか……。
……ところで話は元に戻るが現段階において私は自分が死んでいるか生きているかを決めることが出来ない。
もし私が死んでいたとすれば既に市民ではない。市民でないものが市民生産機関に関わることはしてはならないことである。
とはいえ『死者にはユニオン法が適用出来ない』とするその根拠は、精神も肉体もない者には法を実行する能力がないから、ではなかっただろうか。
私は死者であるとはいえ法を実行する能力がある。それなのにワーカーの保護を放棄することもやはり、ユニオン法に反するにことではないだろうか。
……そもそも、こういう場面で可か不可か応か否かの裁定を下すのはマゴイではなくステーツマンの仕事ではなかろうか。
やっぱりステーツマンが必要だ。
以上のことを専門用語を交え様々な法的根拠を引用し形而下形而上くだくだしく述べ尽くしたマゴイは、『この議題は自分一人の手には余るのではないだろうか』ということにぼんやり思い至った。
『……私……二人に分裂出来ないかしら……』
ボソボソ呟きつつ席を立った彼女は手の一振りで照明を消し、会議室を出る。
濃い緑の間に四角い建物が規則正しく並んでいる。
中程にある低い山のてっぺん、四面に穴が空いた大きな角柱が立っている。
穴からは、地下深くから組み上げられた水が絶え間無く噴き出していた。その水は島中に巡らされた水路を規則正しく通り、海に落ちて行く。
マゴイが地下から出てきたのを見つけコボルドたちは、うれしげに寄っていく(彼らとマゴイはコボルド語で会話しているのだがそのまま書くと煩瑣になるので、以下、訳して表記する)。
「まごーい、みずがひけたー」
「まごーい」
『……ご苦労様……これで環境整備の仕事は一区切りなので……長期休暇を取らないと……』
「ちょうききゅうってなにー」
「なにー」
『……いつもより長く仕事をお休みして……遊びに行くことよ……』
「あそびにいくってどこにー」
「どこにー」
どこってそれは各地に整備されているユニオンの公営保養所――と言おうとしてマゴイは気づいた。そんなものはこの世界に一つとしてないことに。
かわいそうなワーカー。いずれそういったものも作ってあげなければなるまい。
そんなことを思いつつもそもそワーカーに尋ねる。
『……どこか……行きたいところはある?……アーキテクチャー使用の際のマテリアル消費量を鑑みて……一日くらいなら連れて行ってあげられるけど……』
コボルドたちは顔を見合わせ、いっせいに言った。
『こぼのとこ!』
●夏の終わりのジェオルジ
残暑の折、ジェオルジ支局はのどかだった。 オフィス内には冷房を目当てに、ハンターたちが遊びに来ていた。
ジュアンはマリーと入れ替わりに夏休みを取っているので、この場にいない。
カチャがそのマリーと話をしている。
「それでそれで。ナルシスさんと2人で夜の浜辺を散歩してその後どうなったんですかマリーさん。キスしたんですか」
「キッ……そんなことしないわよ! 手……手を繋いだのよ」
「え……それだけ……?」
「それだけって何よ」
「いえ、そこまで話を引っ張ったからには何か劇的な進展でもあったのかなと思ったんですけど……」
「わ、私には節操と言うものがあるのよ!」
ガラッ
会話の途中、マリーのデスクの引き出しが出し抜けに開いた。
腹に受けた衝撃で椅子ごと後方に倒れるマリー。
引き出しから長い黒髪の女――マゴイがのそのそ出てきた。
『……あら……失礼……』
一応相手との面識があるカチャも、これまでにない登場の仕方に度肝を抜かされる。
「ちょっ、何ですか何なんですか何事ですか!?」
しかし話はそこで終わりではない。マゴイの後ろからコボルドたちがわらわら出てきた。おそろいの白いスカーフをつけて。
仲間の声と匂いを嗅ぎ付けたコボちゃんが、外から駆け込んでくる。
「わし! わしわしわし!」
「うぉん!」
「わうわう!」
鼻をくっつけあって尻尾を振り再会を喜び合うコボルドたち。マゴイが改めて口を開く。
『……休暇中だから……連れてきたの……』
腹を抑えて起きてきたマリーが声を荒げる。
「じょ、冗談じゃないわよ! いきなり何なの! よそに行ってよ、よそに!」
『……そういうわけにはいかないのよ……彼らがここに来たいと言うのだから……ところであなた……好意を持つ相手と二人で海に行ったのに手を繋ぐだけで終わったっていうのは本当……?』
「あんたいつからこの机の中で話を聞いてたぁ!」
『……割と最初の方から……それで思うのだけど……あなた目的とする行為に至るまでの前置き期間が無駄に長すぎない……?』
「こっ、行為とか言うなー!」
解説
補足説明
これは夏も終わるに当たって、この夏の思い出を皆で語り合い時を過ごしてみようというシナリオです。
マゴイとコボルドたちは丸一日滞在します。その後また島に戻って行きます。
コボちゃんは人間語もちょっと分かるコボルドです。彼を通訳として島の様子を色々聞いてみるのも面白いかも知れません。
クリムゾン、並びにリアルブルー的な恋愛の概念を持たないマゴイには、マリーの純情物語も何のことやらな感じです。
とはいえ最近、この世界のことをもうちょっと細かく調査してみるべきかなと思っています。自分が生きてるのか死んでいるのかもまだ決着がついてませんし。考えることが山積みです。
マスターより
KINUTAです。
皆さん、今年の夏はいいことがありましたか?
当方は特に何もありませんでした。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/09/11 01:10
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/03 13:42:00 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/09/05 17:44:59 |
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質問卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/09/02 18:22:34 |