アマリリス~ゴブリンの竪穴再び

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/07 19:00
完成日
2017/09/20 01:46

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ここは同盟領の蒸気工業都市「フマーレ」近くにあるセル鉱山。
「おい。いつまであのヤバそうな竪穴に潜らせる気だ?」
 セル鉱山の管理棟内執務室に柄の悪そうな男たちが詰め掛け文句を垂れていた。
「もちろん、『ゴブリンの竪穴』の全貌が明らかになるまで」
 理路整然と答えたのは長身で美男子のメイスンという男。セル鉱山を買い取って運営しているアマリリス商会のアムとモータルの仲間である。舞台役者の家に育ったが親の厳しさと芸術的な仕事より計算された仕事を好むため早々に出奔し、石工に弟子入り。独立も視野に入れていた時にモータルたちと出会い、ついて行くことを決めた。
「はぁ? あそこがヤバいのと、こっちからちょっかい出さなきゃ何もないことは分かったんだからもういいだろ?」
 詰め掛けた男たちはすべて元盗賊である。
 セル鉱山はその初めから三つの盗賊団に狙われ作業員として工作員が紛れ込んでいたり流れの盗賊に襲われるなどしていた。そのいずれも撃退し、資産を奪い残党を作業員として取り込んでいた。
「なあ、メイスンさんよ。あんた、俺たちを粛正しようとしてないか?」
「それはない。もしもそうするなら、モータルの義勇隊に送り込んでポカラ駐屯地で歪虚と戦ってもらいます」
 メイスンの微笑にぞっとするならず者たち。メイスン自身、元石工だけに体が大きく肉付きがいい。加えて、覚醒者。喧嘩を売るなら相当の覚悟がいる。
「なあ、なんでそこまであそこにこだわるんだ?」
 というわけで泣きで落とそうとする。
「こだわるしかないでしょう?」
 そう言って手元の紙に視線を落とす。

【ゴブリンの竪穴】
 多数の横穴が開きそこを住居にしていたゴブリンのいる崖近くにある、大地の大きな穴。
 長くゴブリンの鉱山として考えられていたが鉱山採掘の痕跡はなかった。
 中にいた人狼歪虚によりゴブリンは大被害をこうむり撤退。
 ただ、これでは話の前後関係に整合性がないということで人狼歪虚退治後に調査すると、そこには祭壇のようなものがあり墓地である可能性が出て来た。
 第一階層には大広間と一本の通路がある。人狼歪虚退治の時はここのエリアを捜索した。
 その後、広間の隅にさらに竪穴を発見。
 第二階層には五つの通路があった。その奥には鉄製品や金貨など副葬品的なものがあった。ゴブリンがやっていたのは鉱山ではの発掘ではなく、盗掘だと判明した。ただし、副葬品のある広間では白い人型の幽霊のような存在が剣を手にして襲ってくる。
 さらに第一階層を調べた結果、大広間の奥に巧みに土で塗り隠した壁があることを発見。石板のある祭壇が出て来た。

 そしてメイスン、脇にあった手紙を持ち上げた。
「セル鉱山について調査していたアムから報告がありました。……ここは『セルリア』と呼ばれ最終的に滅んだ魔法一族のいた場所です。あの竪穴は王の『セル』が眠る墓所だと考えられます」
 つまり、先ほどまで彼が書いていた手元の紙の通り。

【セルリア】
 セル鉱山のあるこの場所はセルリアと呼ばれた魔法一族のいた場所。
 彼らは岩壁の横穴を住居にし生活を営んでいた。魔法については不明だが、「セル」と呼ばれる王の力が強大だっただけだと考えられる。吸血姫歪虚を閉じ込めていた伝説の巨人も関係していると思われ、のちの時代にグリス氏血族の統治していた付近の村で吸血姫歪虚が暴れ人質を差し出していたことから魔法は万能ではなかった様子。
 ゴブリンの竪穴は墓所と言うにふさわしい構造で、一族の「セル王」代々の墓と考えられる。
 現在の調査では第一階層通路奥の大広間の壁から
※五穴十列のくぼみと「きけよせる」の文字
 が刻まれた石板祭壇を発見している。

「俺らに墓荒しをさせるつもりか?!」
「そんなことしなくても鉱山だけでがっぽり儲けてるんじゃないのか!」
 ならず者たちはいっせいに詰め寄る。
「墓荒しはむしろ得意だと思いますし……第二階層の白幽霊、だんだん行動範囲が広くなっているのでしたよね? 副葬品の持ち出し禁止のトラップだと思いますが、もしかしたらこれまでゴブリンが持ち出した副葬品が多くて防衛範囲が広がった――つまり、副葬品の存在する範囲が行動範囲に設定され、遠くのどこかにある副葬品の比率が高くなったため明らかに行動範囲が広がったと仮定するなら……」
「す、するなら?」
 ごくり、と生唾を飲み込むならず者たち。
「当然、その範囲にここも入ってくるでしょう。もし副葬品の奪還が目的ならここも疑われるはずです」
 つまり襲ってくるかも、と。
「ど、どうすりゃいいんだ?」
「すでにアムがハンターに依頼してます。……それと、鉱山の方はハミルさんがしっかり管理してます。あなたたちはがっちり、竪穴周辺の警備を頼みます」

 というわけで、ゴブリンの竪穴第二階層に行き五つの部屋にいる幽霊の撤去及び謎の解明をする人、求ム。

リプレイ本文


 ハンターたちは二人一組の五班に分かれゴブリンの竪穴第二階層に突入していた。

「何が出るかしら」
 仲間に借りたライトを手に、メルクーア(ka4005)が第二階層副葬品室の一つに向かっていた。
「宝探しとか面白いんだけど、謎の方はさっぱりだね」
 コンビを組むのは狐中・小鳥(ka5484)。苦笑している。
「あとはそこを白い幽霊が守ってる、か~」
「幽霊さん、私だとまともに攻撃できなさそうだしあまり好きじゃないんだけど…出ないでって言っても出るよね、やっぱり」
 やれやれねー、なメルクーアに汗たら~な小鳥。
 通路をしばらく歩くと目的地に到着した。
「いるいる。そんじゃ、あたしが引き付けるしかないかしらねー」
 メルクーア、室内に白く光る幽霊を発見。手には剣を持っている。
「じゃ、幽霊さんをよろしくなんだよっ。その間に調べちゃうからっ」
「それじゃ行くわよ」
 メルクーア、ふらりと部屋に入った。全くの無防備。
 いや、そうでもない!
「幽霊さん、一杯やらない?」
 いきなりうっふん♪な誘う目で手にしたブランデーを掲げたぞ。
 ある意味とっても攻撃的だ!
 この奇抜な行動の背後で小鳥がダッシュ。大回りして部屋奥に発見した石板祭壇に急ぐ。
 幽霊はメルクーアに剣を掲げて突撃。
 振るった一撃はぱりんとメルクーアの前の防御障壁で止まる。弾ける光の壁。
「ちょっと、あたしのお酒が飲めないっていうの?」
 一応解説するが、メルクーアは酔っているわけではない。
 幽霊、構わず二の太刀。これはムーバブルシールドで受ける。いや、逆の手で掴まれた。冷たいダメージが伝わって来る。
「おさわりは禁止!」
 一応以下略だが、飲んでいるわけではない。
 一方、小鳥。
「緑の宝玉と「せえか」の三文字、だね。他に何か……あっ♪」
 石板祭壇を確認し、宝玉を手にしていた。ついでにもう一品に手を伸ばす。
 その時。
「あっ! そっちに行かせないわよ」
 幽霊がぐるっと振り向き小鳥の背中に襲い掛かる。メルクーア、機導砲どーん!
「え? はわわっ!」
 発射の掛け声に気付いた小鳥、これは間に合わないと石板祭壇に足を掛けてムーンサルト。舞踊の心得を生かした。その下で幽霊が剣を振り、機導砲がすり抜け……いや、剣だけ吹っ飛ばして壁に着弾。
「と、とにかく逃げるんだよ」
 二人して脱出成功。

 別の通路では。
「やっぱこういう冒険はいいよな!」
「ニンジャとしても放っておけないんだからっ!」
 トリプルJ(ka6653)が王墓の秘密に迫るシチュエーションに生き生きし、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)も未知の冒険にわくわく。
 というわけで第二階層の副葬品室の一つにトライする。
 副葬品室入り口からランタンで中を照らすルンルンが見たものは!
「奥に石板祭壇がありますっ! ジュゲームリリカル…ルンルン忍法分身の術!」
 要接近確認とばかりに両手を組み合わせ式符投入。
「祭壇の上には白い宝玉と……『るてな』? はわっ!」
 そこまで確認したところで剣を手にした白い幽霊に斬られ消滅。
「例の幽霊か? よし」
 着火の指輪の火を灯し成り行きを見守っていたJ、火を消しファントムハンドを伸ばす。
 が、対象は物でもあり宝玉は引き寄せられない。
「それとも効かないようになってるのか?」
「だったらニンジャの備えをして強硬あるのみなんだからっ!」
 考えるJの横で、しゃきーんとキョンシーのように額に加護符を張ったルンルンが突入する。
 幽霊、これを許さず。ぐわっと迫って来た。
「トラップ設置!」
 屈んで逃げるルンルン。が、浮いてるせいか地縛符は不発。足止めならず振るわれた剣を食らう!
「こうしちゃいられねぇ!」
 J、迷わずルンルンの背後を回って石板祭壇到達。白い宝玉を手にすると幽霊がくわっとこちらに向かってきた。
「これなら効くだろ?」
 おっと。
 ここでファントムハンド。
 幽霊の持つ実物の剣を掴んで止めた。
 すぐに幽霊は剣を手放し迫るがJも剣にはこだわらず前にダイブして前転。幽霊の横をすり抜けた。
「念のためにパシャ! ……そしてついにニンジャのステイタス、のこの技を会得です。ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法どこでも畳返し!」
 ルンルンはこの隙に石板祭壇を撮影してから戻り、アースウォールで入口封鎖。
 無事に宝玉とキーワードらしきものをゲットした。

 別の副葬品室ではじゃりじゃりじゃり、と床の金貨を踏み散らす音が響いていた。
 ――がきぃ、ん……。
「ハナ、明かりだ!」
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)である。
 部屋に白い幽霊を確認すると突入し、踏み込み十分の姿勢で幽霊の構えた剣に打ち込んでいた。
 敵の剣を止め背中越しに叫ぶ。
「はいですよぅ、エメラルドさん~」 
 応じたのは星野 ハナ(ka5852)。
 部屋の中に入ると壁に燭台を確認。着火の指輪でまずは部屋の明かりをつけて回った。
 これで暗かった内部の全貌が判明。
 奥に石板祭壇を発見。赤い宝玉と何か文字が書かれていることに気付いた。
 この時、エメラルドは幽霊が剣を捨て抱き着いて来たのを食らっていた。ぞくっ、と身を震わしダメージを受けたことを自覚した。
「貴様、剣を持ったなら最後まで剣で戦わぬか!」
 離れつつ剣を大振りするが幽霊の身体はすり抜けダメージがあった風もない。
「エメラルドさん、幽霊にキレても仕方ないですよぅ」
「ええい、仕方ないだろう。それより何か重要そうなものは……」
「ありましたよぅ。うふふ、赤い宝玉に『よねは』の三文字が彫って……え? こっちきましたぁ?」
 ハナ、幽霊がいきなり向きを変えて猛然と組み付いて来たので焦った。いつもの通り五色光符陣でブッコロなのだが……。
「五色光符陣がノーダメですぅ?」
 派手に光るがむなしく幽霊に触れられダメージを食らう。
「相当大事なものらしいな……よし、こっちだ」
 エメラルド、ハナから宝玉をむしり取るとバックステップ。幽霊が猛然とやって来たことでハナが出口に動く。そこへ宝玉をパスして幽霊が振り向いたところ、軸をずらして追う。
「あっちに行ってくださいよぅ」
 ハナ、再びパスして離脱。
 幽霊、猛然と振り向いてエメラルドに向かうが……。
「もう相手にするつもりはない」
 キャッチしたエメラルド、幽霊の脇をダイブして前転。一気に差をつけて外に脱出する。

 こちらは天竜寺 舞(ka0377)。
「あれが噂の幽霊か」
 副葬品室入り口に身を隠し内部の敵を視認した。
「占いの結果もあまりよくありません。相手しない方がいいですね」
 夜桜 奏音(ka5754)がちょっとやってみた占術の結果を伝える。
「事前に分かってることは幽霊の護衛だけ。上の階には五穴十列の石板祭壇があるみたいだけど……」
 ハンディLEDライトで部屋を照らす舞。
「あの奥にあるの、石板祭壇じゃないです?」
「ああ。何か宝石みたいなのもあるね」
 奏音と舞がごにゃごにゃやってたが、ライトで室内を照らせばさすがに幽霊にばれる。襲ってきた。
「私が囮になりますので宝玉を取るのお願いしますね」
「オッケー」
 まず奏音が突入。片膝を付き幽霊が来る前に足元に地縛符をセット。背後では舞が大きく回り込んでいる。
 で、バックステップする奏音。
 しかし、浮いているせいか地縛符は通用しないようで。
「それならそれで戦い方があります!」
 剣を食らうが闘志は衰えず。
 目の高さに鞘入りの日月護身剣を水平に構える。
 きら、と刀身を抜きつつその奥で瞳を輝かし……。
「成敗」
 抜いて斬ると同時に迫る幽霊の脇をすり抜け一閃。片膝を付いて美しい軌道を見せた。
 ただ、やはり幽霊の身体をすり抜けただけ。
「くっ……え?」
 振り向き次の展開に備えたが、敵は想定外の動き。
 何と、奏音の脇を何もせずに通り抜けたのだ。
 慌てて振り向くと舞が石板祭壇を魔導カメラで撮影し黄の宝玉を手にしたところだった。
「舞さん!」
「え? 何……わっ!」
 呼ばれて振り向き事態に気付く舞。かろうじてマルチステップで剣をかわす。しかし、魔道カメラを落とし向こうに転がって行った。
「仕方ありません。少しの間、あなたには演舞に付き合ってもらいますよ」
 奏音が割って入り、剣に刀を合わせ押さえる。
「ありがと、夜桜さん」
 この隙に舞、ドッジダッシュ。
 二人が高速で入れ替わったためか奏音に攻撃してくる。兎歩で舞を隠す動きをしつつシャンシャンと攻撃を合わせる。
「よし、回収!」
「これにて閉演」
 舞の合図とともに桜幕符。
 桜吹雪を目くらましに脱出した。

「いたな、幽霊」
 榊 兵庫(ka0010)が入り口で懐中時計「星読」で副葬品室内を照らしうかがっている。
 白い幽霊がここにもいた。
「幽霊? 人工物に決まってるだろう」
 ペアを組む龍宮 アキノ(ka6831)が腕組みしたまま胸を張った。
「まあ、確かめてみるさ」
「では、こちらはじっくり調べさせてもらうよ」
 方針は決まった。
 兵庫、日本刀「白狼」を抜刀しつつ接近する。アキノはその陰に隠れるように大回り。
 幽霊、即座に気付く。
 兵庫の踏み込み、鋭い。これぞ榊流【狼牙一式】……いや、刺突ではない!
「まずそれが邪魔だ!」
 がきん、と幽霊の持つ剣を狙い弾いた。がら空きになる幽霊の胴。
「もらった!」
 そこへソウルエッジを掛けた二の太刀でバッサリ。
 が、手ごたえはない。幽霊、振り向いて掴みかかって来る。触れた場所にぞくっとしたダメージ。
「……幽霊だから魔剣化すれば少しはダメージを与えられると思ったんだが、な」
 俊脚で逃げようかと思ったが幽霊の方から離れていった。
「緑の宝玉と「せえか」ね……ん?」
 離れたのは、石板祭壇を調べていたアキノに襲い掛かったから。ぞくっとしたダメージで気付き、石板から離れつつ機導剣を振るう。
 が、すり抜ける。
「ふん、これがトリガーか?」
 アキノ、原因と思しき緑の宝玉を兵庫に投げ渡した。
 すると幽霊、兵庫の方へ。
「幽霊について正体が気になるけど、今は構ってる暇はないんでねぇ」
 この隙にジェットブーツで離脱する。
「長居は無用、だな」
 長いパスを受けた兵庫も俊脚で一気に逃げる。



 その後、第一階層最奥にある石板祭壇にて。
「遅くなったな」
「その分、楽しませてもらったが」
 兵庫とアキノが到着した。
「さて、情報が集まり始めたところでもう一度占ってみましょうか」
 奏音が札にマテリアルを込めて占術で占う。
「凶……何か不吉なことが……」
「あれ?」
 眉をひそめたその横で、舞が振り向いた。
 誰かがまた戻ってきたのだ。
「遅くなってごめんね」
 メルクーアだ。
 よろける小鳥に肩を貸している。
「小鳥、どうした?」
 エメラルドが駆け寄る。
「うう……ちょっと気分が悪いんだよ……」
「よし、ちょっと待ってろ」
 回復魔法をかけてみるエメラルドだが、小鳥の様子は良くならない。
「ちょっと座ってたら良くなるかもだよ」
 ぐったりしていた小鳥、そう言って石板祭壇近くに座る。この時、副葬品室からもう一品、埴輪のような鉄器も手放した。
「うん、やっぱりこうしてると落ち着くんだよ……」
 楽になった様子を見てメルクーアとエメラルドはほっとした。
 なお、ここで手放した鉄埴輪が呪いのアイテムだった模様。もし洞窟外に持ち出していたら重体だっただろう。
「ううう……」
 ちなみに石板祭壇ではハナが頭をひねっていた。

 ここで、改めてこの石板祭壇の特徴を示しておく。
・「きけよせる」と彫られた文字
・その下に、五穴十列に整然と並ぶ丸いくぼみ

「やってるな?」
「どう、ハナさん?」
 アキノとメルクーアが自分たちの持ってきた宝玉を渡して聞く。
 その時だった!
「謎をとく知力の足りないこの身が憎いですぅ~。もっと知力を! 頭脳を! わ~~ん」
 ハナ、爆発。
「あたしにはさっぱりだよ。「きけよせる」だからきとけを寄せる、のかな? 寄せてどうなるかは知らんけど」
 舞も寄って来ていろいろ推論を。
 が、ハナは思考停止。目が座った!
「全部の謎がとけたらこんな洞窟証拠隠滅ですぅ、ブッコワですぅ、わ~~ん」
 ジタバタジタバタと何やら可愛らしい。
「あー、通してくれ」
 ここでJが満を持して祭壇前に出て来た。
「これがミステリなら、「さて、お集りのみなさん」の流れなんだろーが」
 J、ちらと皆の顔を見る。
「50個の穴については、五十音表に対応するものに違いないが……お手並み拝見しよう」
 アキノに譲られた。期待の眼差しが自分に集中するのが分かる。
「あー……。きとけを寄せる…おうはかねがすき…きとけの文字を近づけておとうの段に、とか……」
 ごにょごにょとうわ言のように何かを言いはしたが、続かない。
「……すまん、さっぱり分からん」
 大体、ミステリ好きが名探偵になれるとは限らないんだよとか愚痴るがまあ、潔いJだったりする。
「くすん…分かりません~…」
 ハナは小鳥の横に体育座りしてめそめそ。
「よしよしなんだよー」
 小鳥、ハナを慰めていたり。
「宝玉は色分けされて五つ。しかも「きけよせる」の文字も五つ。対応しているとしか思えないが」
「私分かっちゃいました!」
 アキノが言ったところでルンルンがはいはいと得意そうに手を上げた。
「各部屋にあった三文字の言葉、その頭の文字を『きけよせる』の順番に並べ替えると、黄青赤緑白の宝玉順になります。つまりこれははめる順番を表してるに違いありません!」

 改めて、手に入れた宝玉の色と三文字単語をまとめておく。
・「きおき」と黄の宝玉
・「けぬの」と青い宝玉
・「よねは」と赤い宝玉
・「せえか」と緑の宝玉
・「るてな」と白の宝玉

「ま、そうだろうな」
 勢いの良いルンルンだが、アキノは知ってるとばかりにさらっと流した。
「よし、やってみよう」
 Jが宝玉五つを手にした。アキノ、実行は他人に任せるという慎重さを見せる。
 丸いくぼみには宝玉がぴったりと収まった。
 この手法自体はまず、間違いがない。
 しかし、何も起きなかった。
「順番も間違えてないしねぇ」
 メルクーアもおかしいな、と首をひねる。
「そういえば部屋の中には「おうはかねがすき」なんて文字もあったよ?」
 舞は魔導カメラを再生して確認。
「あ、私もバッチリ激写です!」
 ルンルンもカメラを出して再び元気よく。
「そういえばあったねー」
 小鳥もうんうん。
「ちょっと待ってくれ」
 ここで兵庫が場を落ち着かせた。
「そっちは文字数が違うし、三文字の二文字目と三文字目の意味がなくなるだろ?」
「それで?」
 アキノ、続きを促す。
「ダイヤルロック方式で三回続けて正解を出す必要がある、とするとどうだ?」
「おお!」
 兵庫の仮説にルンルンが瞳キラキラ。
「実際にやってみると、こうだ」
 でもって、色の順に五つの三文字分、宝玉を動かす。
「解けましたかぁ?」
 落ち着いたハナ、石板に手を付いき顎を乗せるようにして覗き込む。
 が、何も起こらない。
「……違うのか? だったら正直お手上げだな」
 兵庫、口調は穏やかだが明らかに納得していない。
 この時、誰かがぽそりとつぶやいたッ!
「一つの宝玉に三文字か…。三文字のちょうど真ん中に嵌めるとか……」
 エメラルドである。
 顎に手を添え首をひねっているので自信は全くなさそうではあるが――。
「真ん中?」
 Jが、おや、という感じになる。
「ええと……あれ?」
 五穴十列全体を見ていたメルクーアも何となくピンときた。
「もう一度やってみてくれないか? いや、一番わかりやすい青い宝玉だけでいい」
 アキノ、何かを確信したがまずは確認が先との姿勢。
「ああ、いいぜ」
 兵庫、青い宝玉をか行の「け」に入れ、続いてな行の「ぬ」に動かしてから二つ下の「の」に入れた。
「そこだ。真ん中はそこにある」
 鋭く観察していたアキノ、「ぬ」と「の」の間の「ね」の穴を指差した。
「行が変わるのが多くて気付きにくいが、二文字目と三文字目の手の動きは必ず一つ飛ばしだ」
「あっ!」
「なるほどなぁ」
「分かったの?」
 舞が感心しJがうなり、そして小鳥が起き上がった。
「つまり一文字目が順番を、二文字目と三文字目が穴の位置を示していたのですね」
 奏音、まるで呪文のよう、と感心する。

 まとめると、以下の通り。
・「き・お(か)き」
・「け・ぬ(ね)の」
・「よ・ね(の)は」
・「せ・え(お)か」
・「る・て(と)な」

「じゃあ、「おうはかねがすき」っていうのは!」
 ルンルン、声を弾ませる。
「セル王、のことでしょうかねぇ」
 ハナも高揚している。
「ああ、間違いない。「きけよせる」……」
 兵庫、改めて宝玉を順番にはめる。
 そして全員が口をそろえるのだ。
「かねのおと!」
 五つの宝玉が五つの穴にぴたりと収まった。
 刹那。
 ――ちゃり~ん!
 金貨の音が響いた。
 そして振動とともに目の前の壁が開き、地下への階段が姿を現した!
「それじゃ早速、ジュゲームジュゲム……」
 式符で人形型式鬼を送り込むルンルン。
「ダメです。凶の結果が気になります!」
「あっ、大きな腕と王様のような幽霊が……」
 奏音が石板の宝玉を解除したのと、ルンルンの共有視覚が切れたのがほぼ同時だった。
 扉は再び締まる。
 ルンルンの式符は大きな腕からの攻撃で消滅した様子。

 大きな成果とともにひとまず撤収した。

依頼結果

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MVP一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫ka0010
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユka4678

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • Pクレープ店員
    メルクーア(ka4005
    ドワーフ|10才|女性|機導師
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 好奇心の化物
    龍宮 アキノ(ka6831
    人間(蒼)|26才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
メルクーア(ka4005
ドワーフ|10才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/09/07 18:44:45
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/05 00:53:36