• 界冥

【界冥】ヒーロー&ヒロイン

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
5~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/13 19:00
完成日
2017/09/19 00:34

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●龍尾城
 エトファリカ連邦国の首都である都。幕府の本拠地である龍尾城に東方の武将である鳴月 牡丹(kz0180)が姿を現した。
 といっても、何か特別な要件があった為ではなく、個人的な調べ物で書庫を漁っていたのだ。
「……珍しいですね、牡丹が書物とは」
 感心したように言ったのは、エトファリカ武家四十八家門、第一位立花院家当主にして「八代目征夷大将軍」立花院 紫草(kz0126)。
 武術一辺倒だった牡丹が文学に励むとは、成長しましたねと、あくまでも心の中で褒めた。
「ちょっと、歪虚の事で調べたいものがありまして」
 さすがに牡丹も相手が目上でしかも大将軍であれば丁寧になる。
 窮屈そうな言葉の言い回しに思わず舌を噛みそうになった。
「そうですか。次の出撃も近いと聞きました。よろしくお願いしますね」
「はい」
 微笑を浮かべ立ち去っていく紫草の後ろ姿を牡丹は見送ると、手に持っていた巻物に視線を戻した。
 七眷属……その中でも、リアルブルーは狂気(ワァーシン)に攻められている。
 クリムゾンウェストにおける目撃例はさほど多くはなく、龍尾城に残されている書物の中にも記述されているものは少ないだろう。
(敵を知り、己を知れば……って、昔の人は言ったらしいしね)
 今後もリアルブルーでの活動が予定されている。
 となると、敵の情報が欲しい所なのだ。
 幾つかの巻物や書物を確認していく牡丹が、“それ”を見つけたのは偶然だった。
(『歪虚になった人間』……)
 牡丹は王国での活動の際、傲慢歪虚から【強制】を受ける事があり、危うく堕落者になってしまう所だった。
 駆けつけたハンター達によって助けられたので九死に一生を得た。
(やっぱり……)
 ごくりと生唾を牡丹は飲み込んだ――。

●リゼリオ
 再びリアルブルーに転移する為にリゼリオに戻ってきた牡丹はハンターオフィスの受付嬢に呼び止められた。
「あぁ! 良かったです! 牡丹様ですよね!」
「ん? そうだけど。なんだい?」
 転移門をよく使う事になって顔なじみになった受付嬢はいつになく慌てた様子だった。
「じ、実は、狂気の歪虚が多数出現していまして」
「狂気の歪虚だって!」
「ハンター達に声を掛けて討伐をお願いしているのですが……」
 慌てて資料を並べる。
 港の一角のようだ。目玉のような形をした小型狂気の絵が描かれている。
「驚異度が少ないと思って新人ハンターを派遣したのですが……実は、岸壁裏に大型狂気の存在が確認できまして」
「それは、不味いね」
 駆け出しのハンターに大型狂気を相手させるのは危険だろう。
 少しばかり実戦慣れしていたり、装備が整っていれば、また別かもしれないが。
「大型狂気の討伐と新人ハンター達の援護をお願いできるでしょうか」
「行ってもいいけど、ボクの傭兵団は既に転移済みだし……駆け出しのハンターを守りながら戦うのは、その人達の生命は保証できないよ」
 ハッキリ言って大型狂気ぐらいなら充分渡り合える自信はある。
 だが、それは守る対象が居ない事での場合だ。
「分かりました。他にも行ける人がいないかハンターに呼びかけます」
「それで頼むよ。それじゃ、ボクは準備してくるよ」
「はい! その間にハンターの皆様を集めておきます!」
 その声を聞きながら、牡丹は走り出した。

●港の外れ
 駆け出しハンターである鈴木太郎は焦っていた。
 目玉の形をした狂気歪虚を倒す任務。数はそれほど、多くはないはずだった。だが、尽きる事なく狂気歪虚は次から次に現れるのだ。
 そのうち、スキルを使い果たした別のハンターが脱落。
 戦力が抜ける度に、その負担が他のハンターへと襲いかかる。
「しっかりしろ!」
 聖導士としての能力で仲間のハンターを回復させた。
 だが、明らかに傷が深い。
「も、もうダメだ。逃げるぞ!」
 前線を支えていたハンターが盾で歪虚を押し返すと、その隙に武具を捨てて走り出す。
「おいおい! こいつらはどうするんだよ!」
「捨てておけ! 構っているとお前も殺られるぞ!」
「見捨てるのかよ!」
 太郎の叫びを無視して、そのハンターは逃げ去った。
 周囲を目玉の形をした狂気歪虚が徐々に取り囲む。
 逃げていったハンターの悲鳴が響いた。逃げきれなかったのだろう。
「嫌だ。死にたくない!」
「くそっ! くそっ!」
 重傷を負ったハンターの一人が太郎の服を引っ張り、両足を負傷したハンターは弾切れした拳銃で地面を叩いた。
 逃がさないと囲みを徐々に厚くして迫る歪虚。
 絶体絶命だ。
「こんな所で終わってたまるか! 俺にはまだ、運命の女性を出逢うという目的があるんだぁ!」
 攻撃スキルは使い果たした。
 回復魔法もあと何回か使えばマテリアルは枯渇するだろう。
 それでも太郎は刀を構えた。
 ――生き残る為に。この世界で成すべき、己の使命を果たす為に。

リプレイ本文

●救援
 駆け出しハンターの断末魔が響く。
 間に合わなかった……というよりかは、救援が来るまで我慢できずに逃げ出した所を袋叩きにあったようだ。
「そんな、間に合わなかったなんて……」
 ショックを受けていたのはノノトト(ka0553)だった。
 ハンター達は可能な限り急いで現地へとやってきた。きっと、何度繰り返しても、この結果は変わらないだろう。
「間に合う人もいるんだ、まだ……あきらめられない!」
 奮起したノノトトが自転車を立ちこぎし、スピードを挙げると並走するように、歩夢(ka5975)は魔導トライクを運転する。
 生き残っているハンターの諦めない叫び声が耳に入ってきた。
 その理由――運命の人とかなにやら――が、何にせよ、生きる事を諦めない姿勢は良い事だ。
「いい気合いだぜ!」
 だから、歩夢は爽やかな笑顔を見せながら、全力で駆けつけるつもりでいた。
 先輩としても、人としても、義をみてせざるは勇なきなりというものだ。
「弱者を守ってこその騎士。その使命を全力で果たすまで」
 ラヴィーネ・セルシウス(ka3040)が青みがかった美しい銀髪を揺らしながら長杖を掲げた。
 生き残っている駆け出しのハンターは、まだ生きているのだ。支援魔法が届けば、囲まれていたとしても、もう少し、持つはずだ。
「緊急事態ってことで、これは急がないとね?」
 巨大なパイルバンカーを背負いながら走るのは葛音 水月(ka1895)だ。
 手には星の形をした黒い手裏剣を持った。太陽の光をキラリと反射する。
 依頼の目的は、『大型狂気VOIDの討伐』と『生存者の保護』の二つだ。大型狂気VOIDの討伐自体は、メンツを見渡せば問題ないだろう。
 なにせ、歴戦のハンター達と共に、東方の武将でもある鳴月 牡丹(kz0180)が居るのだ。問題なのは、討伐よりも、生存者の保護。それを第一に動いたハンター達の判断は正解だった。
「ちょっと距離があるけど……問題なさそうだね」
 牡丹が視線の先に見える小型VOIDを見つめながら龍崎・カズマ(ka0178)に言った。
 カズマは頷くと蒼機剣を形成するマテリアルの刃に意識を集中させる。
「ぎりぎり届くか……最速で行く」
「しっかりと見せて貰うよ。ストライダーとしてのカズマ君の力をね」
 ニヤリと笑った牡丹にカズマは残像だけを残し、一気に空間を“駆けた”。

●ヒーロー
 アクセルオーバーという疾影士のスキルがある。
 マテリアルを全身に纏い加速するその速さは並大抵のものではない。
 水月とカズマはその状態から、それぞれが投擲武器を道を塞ぐように浮遊する小型狂気VOIDに投げ付けた。
 ぐざりと刺さる手裏剣、あるいは剣の刃と共に、マテリアルに引き寄せられるように、二人の疾影士が距離を詰める――チェイシングスローというスキルの力だ。
「いくよー!」
 黒いマテリアルの刀身を出現させた剣で更に移動しつつ、小型狂気VOIDを斬りつけながら更に進む水月。
 並ぶように、カズマも同じ疾影士としての能力を発揮していた。
「突破する!」
 カズマが黒髪の残像を残して駆けた後、二人に切り刻まれた小型狂気VOIDの数体が塵となって消滅する。
 いきなりの先制攻撃に小型狂気VOIDの目が二人に向いたが、そこに残っているのは、またもや、残像だけだった。
「もう一度!」
「届け!」
 再び二人から投擲武器が投げられる。それは、駆け出しハンター達を囲んでいる小型狂気VOIDへと届いた。

 手前に残った傷ついた小型狂気VOIDをラヴィーネが光の波動を発して、その衝撃で殲滅させた。
「……気持ち悪い目だ」
 彼女のクールなその言葉は、狂気VOIDを端的に言い表していた。
 狂気――ワァーシン――には、人の精神を蝕むと言われているからだ。
「試す価値はあるか……」
 自身は気合でマテリアルを意識し、集中させていた。
 試すとは、駆け出しハンターの事だ。なんとか踏ん張れているのは一人。残る二人は戦う意思が見えない。
 もしかして、狂気によって精神が侵されているかもしれない――と。
 駆け出しハンターの姿を見つめながらノノトトは全力で走る。
(僕もハンターになりたての頃は、みんなに助けられた。だから、今まで、がんばれるようになったんだ)
 恐らく、ここに居る歴戦のハンター全員が、最初から強かった訳ではないだろう。
 ハンター成り立ての時、先輩ハンターに助けて貰った者もいるだろう。ノノトトもそんな一人だった。
(あの頃のみんなみたいに、ヒーローみたいに……今、助けるから!)
 二人の疾影士が切り開いたスペースに強引にママチャリをねじ込んだ。
 魔導トライクに乗っていた歩夢も突っ込むと符を展開する。
「五方の理を持って、千里を束ね、東よ、西よ、南よ、北よ、ここに光と成れ! 五色光符陣!」
 輝かしい結界が現れると、幾つかの狂気VOIDを焼き尽くした。
 包囲の一角が崩れた事で駆け出しハンターの姿がハッキリと見える。
 石舗装された地面に転がりながらポカンと口を開けているハンターに歩夢は笑顔で呼び掛けた。
「必ず、助ける。だから暫くでいい、従ってくれ」
「わ、分かった。あり、ありがとうぅ」
 両足が怪我しているハンターはコクコクと頷きながら感謝の言葉を告げる。
 地獄で仏とはこういう事か。颯爽と現れたハンター達がヒーローのように見えたのに違いない。
「無理はするな」
「……私……こんなに……慌てて」
 ラヴィーネが錯乱気味だったハンターをキュアで回復させていた。
 仲間からしがみつかれていた鈴木太郎(キロウ タズス)が、ホッと安堵の表情を浮かべる。
「よし! これでいけるぜ」
「避難を任せる」
 まだ戦う様子を見せていたハンターにラヴィーネは退避を促す。
 折角、拾った命だ。大事にするべきだし、大事にしてほしいのもある。
 仲間のハンターらが周囲の狂気VOIDを排除している。脱出するなら今がチャンスだ。
「時間を稼ぐぜ!」
 ありったけの符を宙にバラマキながら歩夢が符術を行使する。
 符が不可思議な動きをみせ、寄あつまると、1体の式神となって現れた。
「よし……乗るんだ……」
 無事だったハンターが両足を負傷しているハンターを歩夢が乗る魔導トライクのサイドカーに乗せた。
「がんばります!」
 ノノトトが意識を集中させる。ぼんやりとした巨大な幻影が姿を現した。
 それは徐々に実体を持ち、ノノトトに纏った――霊闘士の奥義だ。
「っとー!」
 もう一人の身動きが取れないハンターを小脇に抱えた。
 同時に、狂気VOIDからのビーム攻撃に文字通り身体を張って受け止める。
 歩夢が創り出した式神も肉壁となって射線を塞いだ。
「よし! いくぜ」
 魔導トライクのスロットルを全開に回す歩夢。
 幻影を纏ったノノトトも、鈴木も全力で走る。
 逃すまいと狂気VOIDから幾本ものビームが流星群のように放たれた。
「ひゃえぇぇ!」
 駆け出しハンターの悲鳴が響く中、歩夢は冷静に符を取り出していた。
 式神が射線を塞いでいる間に守護の力を宿した符をサイドカーにも貼り付ける。
「安心しろ。すぐに止む」
 確かにビーム攻撃は激しいが、狂気VOIDと戦っている仲間達が居るのだ。
 歩夢が言った通り、式神が集中攻撃を受けて紙吹雪となって消滅するまでの間には、駆け出しハンターの救助は完了したのだった。

●VOID討伐
 小型の狂気VOIDを蹴散らしながら、カズマが敵の増援に視線を向ける。
 オフィスの受付嬢が言った通り、大型の狂気VOIDの姿が見えた。岸壁の下からのっそりと浮遊しながら現れると、小型狂気VOIDを次々に排出してくる。
 あれを放置しておくと、狂気VOIDが増えていくだけだ。
「どーするよ?」
 尋ねる必要は無いと思いつつ、カズマは牡丹に声を掛けた。
 この『女将軍』の事だ。大体、予想は付く。
「当然、殴りにいくよ!」
「……だよな」
 やっぱり、聞くだけ無駄だったかもしれない。
 立ち塞がる狂気VOIDを鮮やかに蹴り飛ばすと大型狂気VOIDに向かって跳躍する牡丹。その動きは相変わらず隙が無い。
 負けじとカズマも背負っていた魔剣を抜き打ちつつ、走る。銀髪の残像が流れた。
「僕が、牽制するよー」
 同じく残像を残して水月が大型狂気VOIDに迫る。カズマと牡丹を援護する為だ。
 ヒュンヒュンと音を立てて放たれる触手を軽いステップからの上肢を捻り、避け切ると、狂気VOIDの腹目掛けてパイルバンカーを当てた。
「これで!」
 豪快な爆発音と共に打ち込まれる巨大な杭。
 身を震わせながら、腹を突いた人間を驚異と感じたのか、残った触手をムチのようにしならせた。
 さすがの水月も、その全てを避けるのは無理があった。手や足に鋭い触手の先があたり、切り裂かれてしまう。
 だが、怪我した所が淡いマテリアルの輝きに癒されていく。仲間からの回復魔法だ。
「私が支援に入る」
 ラヴィーネが片手に杖、片手に剣を持ちながら触手がを払いつつ、魔法による援護を行っている。
 回復支援があると無いとでは、ダメージを気にしなくていい分、牽制の動きも自由度が増す。
 水月とラヴィーネのコンビが狂気VOIDの気を引いている間に、カズマと牡丹がVOIDの直下へと到達した。
 気合の掛け声と共に牡丹が連打。巨大な目玉がギロっと向いたと思ったら極太いレーザーを放つ。
 それを後方に倒れるようにして避けると叫んだ。
「カズマ君、上がって!」
 腕と背をついて足裏を天に向ける牡丹。
 その足に合わせるように、カズマが飛び乗ると同時に、反動をつけて牡丹が、膝を伸ばした。
(……スパッツ位は履くように言っておくか)
 そんな事を一瞬、思いながら、カズマは射出されたように高く飛んだ。
 VOIDの触手や身体を足場として、さらに上昇すると、魔剣を逆手に構える。慌てたようなVOIDの迎撃を気にせず、カズマは剣を深々とVOIDの巨大な目玉へと突き立てた。

●深淵の声
 全てのVOIDを消滅させた。
 怪我と疲労で身動きが取れない状態の駆け出しハンター達。その中の一人である鈴木太郎の肩をラヴィーネがポンと叩く。
「月並みな言葉だが……お前達は生き延びた。それを誇れ。生き延びるという事を為した自分達を」
「無様な生き残り方だったけどな」
「生き残るという事は決して、運だけで為せる事ではない。お前達はよく頑張ったよ」
 駆け出しハンター達の目には、先輩ハンター達の姿はどう映ったのだろうか。
 強さという目標を見たのか、あるいは、埋められない差に諦めるのか。
 もしかして、誰もが通る道なのかもしれない。その過程が違ったとしても。
 そこへ、水月と歩夢が長細い箱を引っ張ってやってきた。
「適当な箱しか無かったけど」
「そのまま引きずる訳にはいかないからな」
 港の一角にあった箱。
 命を落としたハンターの遺体を箱の中に移していたのだ。
 VOIDと戦う以上、死なないという保証はどこにもない。このハンターは死んだ。結果だけ見れば、それだけだ。
 生き残ったハンター達は、ついさっきまで仲間だった遺体を見つめる。
 そこへ、ノノトトが静かに呟いた。
「亡くなったハンターさんの声を聞くこと、できるんだ」
 霊闘士としての力で、遺体から思念や記憶を読み取るのだ。
 もっとも……状況的に、うらみつらみばっかり聞く事になるかもしれないのだが……。それでも、何かの踏ん切りにはなるかもしれない。
 駆け出しハンター達はお互いに顔を見合った。
 自分達を見捨てて逃げ出したハンターだ。たまたま依頼で一緒になっただけなのもあるので、情もない。
 首を振る二人のハンター。ノノトトは黙ったままの鈴木へと視線を向けた。
「……聞かせて欲しい。そいつが何で生きたかったのか、もし、知る事が出来るなら、俺は、知りたい」
 遺体から読み取れる思念や記憶は狙って知る事は出来ない。
 それでも、何か理由があるのではないか。仲間を見捨てた事は許されなくとも……。
 ノノトトは頷くと、スキルを行使する為に意識を集中させる。
 そして、優しく、遺体の額に手を触れるのであった。駆け出しハンターが、何かを得て、成長のする為に。

 映像が浮かび上がったのは、少女の姿だった。魔導カメラで撮った写真を持っている。両親と思われるその写真をみつめ、少女は激しく咳き込んでいた。
(家族かな?)
 死の直前、きっと、この光景を思い浮かべたのだろう。
 恨み辛みではなくて良かったと思いながら、ノノトトは術を止めた。
 そして、読み取れた事を正直に伝える。
「……そういえば、病弱な妹が居るって言ってたか……」
「死ぬわけにはいかなかった……のね」
 駆け出しハンターが悲しい表情を浮かべてそう言った。
「知って良かった。人は色々な理由を抱えているんだな……」
 鈴木の言葉に水月と歩夢が頷いた。
「そういう事だねー」
「それが、ハンターというものだ」
 ハンターの数だけ、ハンターでいる理由が、戦う理由があるのだろう。
「死線に立って、俺は、気が付けたと思う。ありがとう」
 真剣な眼差しで鈴木はハンター達に言った。
 他人を知り、自分も知る――きっと、それが、ハンターの成長に必要な心構えのようなものかもしれない。


 リゼリオの港の一角に現れた狂気VOIDをハンター達は討伐。
 同時に、危機に陥っていた駆け出しハンター達を保護する事ができたのであった。


 おしまい。


●強化人間の影を追って
 弔いを終えて、カズマは横に並ぶ牡丹に声を掛けた。
「そういえば、牡丹は何をしにこちらに戻ってきたんだ?」
「……狂気VOIDの事でね。まぁ、それよりもね……カズマ君は強化人間と面識あるかい?」
 唐突な牡丹の返しの言葉。カズマは鎌倉で知り合った強化人間の事を思い出した。
 強化人間には謎が多い。特に、負のマテリアルが発せられる件について……。
 一先ず、カズマは頷いて答えた。牡丹は話が早いと言わんばかりに続ける。
「強化人間はなんで、その道を選んだのだろうかってね?」
「それは……案外、同じじゃないのか」
 棺桶に視線を向けながら、カズマは言った。
 生き残りたい、守りたい、歪虚を倒したい……色々な理由があるだろう。それは、ハンターも変わらない。取った手段が違っただけの事だ。
「そうだよね……なら、遠慮はしなくてもいいか」
 妙に納得している牡丹。何を遠慮しないというのか怖い所ではあるが。
 その表情は考え事をして悩んでいるというよりかは、吹っ切れているようにも見える。
「そうだ、牡丹。ちょっと付き合って貰えないか?」
 格闘士としての技を身に付けたいからだ。牡丹ほどの格闘士、ハンター達の中で探しても数える位しかいないかもしれないのだから。
「いいよ。マテリアルが枯渇するまで、覚悟するんだね!」
「お、おぅ……」
 後ほど、カズマが地獄を見たのはいうまでもない――。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 11
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマka0178
  • 銀と碧の聖導士
    ラヴィーネ・セルシウスka3040

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

  • ノノトト(ka0553
    ドワーフ|10才|男性|霊闘士
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 銀と碧の聖導士
    ラヴィーネ・セルシウス(ka3040
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 真実を照らし出す光
    歩夢(ka5975
    人間(紅)|20才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/09 22:37:11
アイコン 【確認用】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/09/09 07:37:48
アイコン 【相談版】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/09/13 18:17:37