郷愁のかわりに

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/16 12:00
完成日
2017/09/23 16:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 即疾隊発足から一年が経過し、組織も大きくなった。
 厳しい規律を守り、無法者から民から頼られ、恐れられる守護部隊へとなっていった。
 中の組織も変わっており、即疾隊のかかりつけ医を志願する者が現れる。
 昨年、辻斬り犯の首謀者の一人であった亀田医師が開いていた診療所を受け継いだ初名が自ら志願した。
 意志はとても嬉しいが、覚醒者ではない年若い娘が荒くれ者どもの主治医は荷が重いのではと心配した幹部達に口添えしたのは一番隊隊長である壬生和彦。
 亀田医師の孫息子であるが、そのことは表には出せない。
 医の道を進んでいた祖父の志を継ぐ初名の想いに感銘した和彦は幹部達を説得し、彼女は主治医の座についた。
 現在の彼女は診療所、他の診療所で勉強、即疾隊主治医という多忙を極めている。
 即疾隊の主治医をすることに亀田診療所に訪れる人々は初名を心配したが、愛らしい容姿からは想像できないほど仕事になると活発になり、怪我をした隊士を恫喝したり、人手が足りない時は隊士に指示を飛ばし、雑用をやらせたりと、肝の据わりように認められている模様。
 何より隊士達に一歩引かれているのは、一番隊隊長の和彦とはきょうだいのように初名と仲が良いからだ。
 どっちが上かと聞けば、初名は和彦が兄だという。因みに、初名は二十歳であるが、女性に訂正を求めてはいけない。
 和彦は女性に年齢を正す行為は命とりだと賢明な答えを言ったそうだ。

 初名が幹部への面会を申し出たのは残暑の名残が隠れつつある頃。
「亀田医師の故郷へ?」
「ええ、郷里に祖先の墓があると生前聞いたことがありまして。そこに先生とその娘さまの形見を眠らせたいと思いまして」
 藪から棒に出てきた話に即疾隊局長が驚くと、初名は理由を述べる。
「夏も過ぎるころで落ち着いてきました。先生はやはり、郷愁にかられておりましたので、せめてと……」
 局長が悩んでいるのは主治医がいなくなるという意味ではなく、年頃の娘が一人で旅に出るのが心配という所だ。
「俺がついて行ってやりたいところですが、今は無理ですので」
 亀田医師の実の孫である和彦は即疾隊の隊士を束ねる人間の一人。
 簡単に街を離れることが出来ない。
「お前は仕方あるまい。初名殿、道中気を付けて。何かあれば、ハンターを頼るとよい」
 副局長の前澤に声をかけられた初名は安心した表情で感謝の言葉と共に幹部達へ一礼をした。

 初名は詩天から出たことがなかった。
 始めて見る光景に目を輝かせててしまう。
 もしかしたらこの旅が最後かもしれないと思えば、自然と目に映るものをしかと脳裏に焼き付けていった。
 旅の途中で年若い娘の一人旅を心配し、声をかける旅館の女将は向かう場所が治安の悪いところだと教えてくれた。
 今、初名は自身に課した大事な使命がある。
 亀田医師の遺品と、和彦より渡された亀田医師の娘にして、和彦の母の形見の品。
 これらを故郷に眠らせる為に彼女はここに居る。
 悪事に手を染める者達への恐怖はあれど、心を奮わせて初名は亀田医師の故郷を急ぐ。

 旅路の途中で教えてくれた悪い奴とは盗賊団が存在するということだった。
 数年前、強大な力を持つ歪虚がこの地方にも猛威を振るっていたこともあり、復興後仕事にありつけずに道を踏み外したものなどが集まった無法者で構成された。
 金品を強奪、盗品を売りさばくこともあるという。

 初名は山道を進んでいくと、山の方から響く悲鳴に気づく。
 恐る恐る顔を上げた初名が見たのは、艶やかな黒髪の女が血相を変えて山の斜面を滑り落ちてきた。
 女の更に後方より複数の男の怒号が聞こえていた。
 恐怖で足が竦んでしまう初名だが、女の手に赤いものが滲んでいたことに気づいた瞬間、彼女は斜面を駆けあがり、女の腕をとる。
「こちらです」
 切れ長の目を丸くる女はなすがまま、初名に誘導されて草むらの影に隠されてしまう。
「おい、いたか!」
「くっそ! 探せ!」
 怒号を交わし合い、男達が周囲を走っていく。
 足音が聞こえなくなるまで二人は茂みの中に隠れていた。
「もう……大丈夫みたいね」
 追われていた女がそっと声を上げる。
 少し低い声は蠱惑的な甘い声音だ。
「は、はい……」
 女は立ち上がって周囲を見回したが、男の声は聞こえてもいないし姿も見えない。
「奴等はもう行ったよ。どうしたの?」
 きょとんと初名を見つめる女は視線を合わせるように腰を屈ませる。
「……腰が抜けまして……」
 先程の行動でなけなしの勇気を使いきってしまったようであり、女は初名を連れて近くの街へ向かう。

 女の名前は清という。
 盗賊に盗られたものがあって、取り返したいとのこと。
「しかし、あの街道が近道なんだよね。他の道じゃ、遠回りになるし」
「そういえば、旅人が多いですね。往生しているということでしょうか」
 清が呟くと、初名は通りに溢れる旅人を思い出す。
「私には行かなくてはならないところがあるのに……」
 ため息をつく初名に清は首をかしげる。
「どこに行きたいんだい?」
「街道を越えた先にある村です。そこに私の師匠の故郷があるのです」
 そう言った初名に清は薄目で笑む。
「そうかい。なら、街道を越えた方が楽だね」
「はい。ですので、ハンターを雇おうと思います」
 ぐっと、手を握り締める初名の声に気づいた旅人達が眉をひそめる。
 噂に聞くハンター達がこのようなひなびたところに来てくれるのかと。
「私の知るハンターの皆様は弱き者の声あらば参上いたします。声を上げねばなりません!」
 小さな声で不満がる旅人達を無視して初名は自身が信頼を寄せるハンターへ依頼を求めた。

リプレイ本文

 賑やかとかいえ、片田舎の街に颯爽と現れたハンター達の姿に町の者も旅の者もざわめく。
 風の噂で聞くハンターの話となれば、強大な歪虚と戦ったという話とかが多い。
 最近では、どこかの国で暴れていた歪虚達を見事な連係で打ちのめしたという話が人々の口より流れてきている。
 屈強なハンターもいれば、美丈夫や美女、美少女が並んでいた。その容貌は幕劇の役者、どこかの令嬢なのかと思わせるほど。
「詩天が首都、若峰守護部隊即疾隊一番隊仮隊員、和音空よ」
 ぴんと背筋を伸ばして凛と告げた和音・空(ka6228)の名乗りに初名は少し安心したような表情を見せた。
「皆さま、来ていただいてありがとうございます」
 頭を下げる初名の丁寧さに感心しているのはセルゲン(ka6612)だ。
「お清殿も単身で賊を追うとは勇ましいな」
「頭に血が上ったんだけど、一人じゃなんとも……」
 たはは……と笑う清に鳳城 錬介(ka6053)がため息をつく。
「流石に複数の賊を相手にするのは無理でしょう……怪我などなさそうでなによりです。女性の一人旅というのはよくあるものなのですか?」
 錬介の問いに初名と清は顔を見合わせる。
「相当な用がない限りは女の一人旅はあまりないと思います。特に遊びに行くという意味では。それが出来るのは覚醒者くらいです」
「しかし、生け捕りかぁ……ぶっとばすのは得意なんだけど」
 面倒くさそうに呟くのは緋袮(ka5699)。
 歪虚は倒すべき存在であるので、思いっきり力を発揮することが出来る。
 しかし、ハンターオフィスへ転がる依頼は歪虚討伐から赤子の子守りまで多種多様。今回のような賊の生け捕りの依頼もあることはあるのだ。
「しかし、賊の生け捕りでよいのですか?」
 錬介の問いに空も同意している。
 アジトを叩かなくていいのかという意味が含まれていることに気づいている初名は頷いた。
「清様はここから離れたところに住んでおりますが、私は行きずりの人間です。盗賊団の塒を叩くかは、ここに住まう方々の意志に委ねるべきと考えました」
「あたしも初名さんの考えに同意だよ。あんた達はちゃんとここに来てくれた。後は、ここの連中が考えるでしょ?」
 初名は一抹の無責任さを感じているようだが、清はさっぱりとしていた。
「わかりました」
 二人の様子を見ていた木綿花(ka6927)が頷く。
「それでは、行きましょう」
 カティス・フィルム(ka2486)が促すと、ハンター達は行動へ移した。

 初名と清の案内で街道の近くまで向かっている間、セルゲンが清に話しかける。
「お清殿は何を奪われた? 形状が分かれば取り戻す……」
 途中まで呟いたセルゲンが言葉が途切れてしまう。清はセルゲンの視線を辿ると、自身の襟の向こう……首に気づいたようだ。
「古傷だよ。気にしないでおくれ」
 手を振る清にセルゲンが失礼と詫びた。
「ああ、取られたのは簪だよ。飴色みたいな柘植に赤いトンボ玉が付いたやつ」
 清は手短に特徴を伝える。
「承知した」
 セルゲンの言葉に清は「頼んだよ」と返した。
「そいやさ、追っていた時に強そうなやつはいたか?」
 前を歩いていた緋袮が肩越しに清を見やり、言葉を投げる。
 清はうーんと、唸って記憶をめぐらすと、ああと声を上げて思い出したようだ。
「全員、武器を持っていたし、覚醒者はいたんだけど、なーんか、誰かを送っていったようだったね。それが一番よくなさそうだった。首に赤い羽根の飾りをつけてたねぇ。私に気づいても気にしないで行ってたし」
 どんどん低くなっていく清の表情がどこか思いつめたようなものへと変えていくが、木綿花が琥珀の瞳を向けると、「大丈夫」と返す。
「初名さんは見ましたか?」
 カティスが問うと、初名は首を横に振っていた。
「確か、賊は奪った盗品を売りさばくと聞きました」
「盗品を買った者の可能性でしょうか」
 ふむと、錬介が思案を口にすると、緋袮は口をへの字に曲げる。長い前髪で目は見えないが、どこか拗ねているような感覚は間違いないだろう。
「ちぇー、骨がありそうな奴と戦えると思ったんだがなぁ」
「私もあまり手加減したくはないんだけどね」
 空も賊に対しては思いっきりやってしまいたいとは考えている模様だが、少々訳ありなのも含め、まだ対処に考えあぐねているようだった。
「どうかしましたか?」
 木綿花の様子に気づいたカティスが訪ねる。彼女は背後を気にしていたようだ。
「正直なところ、旅人達に盗賊の仲間がいるのではと思っておりました。不安を口にすれば、他の方へと不安の種が残りますし」
「あり得る話だ。こちらも気を付ける」
 セルゲンも街に訪れた時の旅人の様子には気づいていた。
 物珍しいものを見ているというニュアンスも感じたが、用心することに変わりはない。そうこうしているうちに、街道沿いに入っていく。

 囮役である木綿花が一人で歩き、他のハンターは離れて歩く。
 木綿花が賊と接触したら全員で排除に当たる手筈だ。
 覚醒者ゆえ、坂道を歩くのは苦ではないが、木や竹で覆われた道が昼間の太陽の陽射しを覆ってくれていることに気づく。
 初秋を伝えるからりとした風が彼女の頬を撫でていた。
 大事な役目を持っているが、東方の秋の便りを感じ、そっと息を吐く。
 その後ろから他のハンター達が離れて歩いている。
「今のところは大丈夫なようですね」
 錬介が呟くと、「そうね」と空が返す。
 街の出口で待機している初名と清に口伝符を持っていてもらいたかったのだが、覚醒者ではない為意味をなさないので持たせなかった。
「なんだか、まどろっこしいな」
 ため息をつく緋袮が呟き、街道の横道というか、斜面の上から葉擦れと足音が微かに聞こえてくる。
「来ましたか」
 固い声音のカティスは斜面の反対側にある草むらへ飛び込んだ。
 先の方を歩く木綿花の前に二人の賊が姿を見せている。
「なんだ? お嬢ちゃんがこんなところで」
 地味な色の着物に毛皮のような羽織を着た男達に木綿花は警戒の表情を見せる。
「何者ですか」
 震えるようにぎゅっと、胸元で両手を握りしめる手の動きに誘導された賊の視線は彼女の指に嵌められた指輪に気づく。
「随分と上物だな」
「飾り物だけじゃねぇよ。着物も随分立派だぜ。よく見ろ、別嬪じゃねぇか」
 べしりと、賊が頭を叩くと、「痛てぇ!」と騒ぎだす。
「あ、貴方達なんかには、差し上げるものはありません……っ」
 強がる振りをしてゆっくり後退りする木綿花に賊達はにやにやと笑う。
「じゃぁ、アニキ達ならいいって訳か」
 賊達は横の坂道の上へ視線を向けている。
 木綿花も身構えつつ、上を窺うと、複数の足音が生えている草を掻き分けるようにこちらへ近づいてきている事に気づく。
「お仲間……ですか」
 視線を戻した木綿花が言えば、賊達は嫌な笑みを浮かべているばかりで、もう片方の草を掻き分ける音に気づいている様子はなかった。
 坂道の上を歩く輩の姿が見えてくると、木綿花はもう一歩後退りをする。
「おう、見回りか」
 更に人が増え、五人となった。
「さっさと捕まえっちまえよ」
 あとから来た賊がそう言い放ち、木綿花へ手を伸ばした瞬間、光の防御壁が木綿花を守るように光る。
 横手の茂みからカティスが飛び出した。口の中で詠唱し、木綿花と賊の間に飛び込んだ彼女は素早く胸の前で両手を叩く。
 瞬間、壁が現れて賊を吹き飛ばした。
「な、なんなんだ!?」
 驚く賊が喚きだすと、茂み側の方からにゅっと、影が伸びて賊を覆う。
 道着姿の女は賊よりも背が高く女性的なラインがしっかり出つつも、筋肉もしっかりある。
「はぁ!」
 気合いを吐き出した緋袮がトンファーを振り回し、賊の顎へ攻撃を入れていった。
「ごぶぅ!」
 殴られた賊はどうやら非覚醒者で、軽々と飛ばされて地面を滑っていく。
「あんな道に隠れていたら、動きづらいし、痒くて仕方ない」
 身体が動かせることを喜ぶ緋袮がぐるぐると肩を回している。
「木綿花殿、怪我は」
 後から追ってきたセルゲンが武器を構えて木綿花を庇うように立つ。
「大丈夫です」
 先ほどの怯えた様子がすっかりなくなった木綿花に賊達が困惑し始める。彼女の身体に重なるように丸くなっている龍の幻影が姿を現していた。
「ま、まさか、ハンターか!」
 叫ぶ賊の一人が刀を抜く。
「その通りよ。歪虚じゃないんだから、とりあえず命は取らないわよ」
 ざっと纏めた呪画「山河社稷図」を片手に持ち、賊の方へと突きつけたのは空だ。
 賊の生殺与奪に関しては依頼人である初名の意向に沿っている。
「な、なんでこんなところに!」
 近くにいた賊が怯えだして後退ると、足が縺れて腰から転んでしまった。いつも走り慣れている場所である事も含め、恐慌状態になってしまう。
「落ち着け! 向こうの術が発動してるんだ!」
 武器を構えた賊が仲間を叱咤し、状況を伝える。
「ご明察ですが、これ以上の抵抗はしないようにして下さい」
 錬介が投降を告げるが、怯む賊がいれば、闘志を燃やしだす賊もいた。
「なんだ。やる気か」
 愉しそうに言う緋袮はトンファーの片方を脇に挟み、もう片方の腕を突き出す構えをとって相手を見やる。
「女だとて容赦しねぇぞ!」
 ぬかるんだ地面をものとせずに賊は緋袮との間合いを詰めようとしていた。
「あたしだって、あたしより弱ェ奴に興味はねえよ!」
 気合を声に出した二人が剣と拳を交える。
 一方、もう一人の闘狩人だろう剣使いは突きの構えでハンター達を見据えていた。
「ひ、ひぃいい」
 近くにいた賊が腰を引かせつつも逃げ出そうとしているが、それを見逃す気はなく、空が呪画をはためかせる。
 宙に悠久なる自然風景の幻影が浮かぶと、紫電が奔って逃げ出そうとしている賊へ命中すると、そのまま気絶してしまった。
「俺で良ければお相手します」
 マッスルトーチを発動させた錬介の身体が光る。
「他にいないか! 相手になるぞ!」
 更にセルゲンがブロウビートを発動させて叫ぶと、坂の上から矢が飛んできた。幸い、錬介がホーリーヴェールを発動していたため、怪我には至らなかった。
 散りゆく燐光の中、錬介は弓使いの方向を見る。
 矢が飛んできた方向は山の奥……斜面の上、竹藪の向こうに弓使いが潜んでいると判断した。
「私が行きます」
 そう告げたのは木綿花だ。マテリアルを足へ集中させてジェットブーツを発動させた。
 マテリアルを噴射させて人の身の丈より高く跳躍し、一度斜面の上に着地する。即座に防御障壁を展開し、周囲を窺う。
 矢が再び発射され、光の壁にぶつかると、崩れ落ちる壁と共に矢が落ちた。
 舌打ちを聞き逃すことなく、木綿花は仕込み傘をいつでも抜刀できるように構え、その方向へジェットブーツで高速追跡する。
 抜刀し、茂みに向かって一閃すると、弓を持った賊と対峙した。
「くそ!」
 諦めずに弓を向ける賊だが、木綿花は機導剣で弓を破壊する。勝ち目がないと悟った賊は矢を投げようとするが、それは突如現れた無数の手によって阻まれてしまう。
 木綿花が後ろを向けば、セルゲンが追ってきていた。

 剣使いの賊と対峙していた緋袮は意外とやるものだと思いながら交戦していた。
 振り下ろされた剣をナックルで受け止めた緋袮の膝へ賊が蹴りを入れ、その反動で間合いとる。
 体勢を整えた賊が上段に剣を構えると特攻宜しく駆け出した。
「決めてやるよ!」
 真っ向から受けることを決めた緋袮が構えなおす。
 賊の体勢が前のめりになると、後ろから何かが跳躍した。先ほど、カティスのアースウォールで吹き飛ばされた賊だった。
 前を走る仲間の後ろについて不意を狙っていたようだ。
「させません!」
 厳しい声で叫んだカティスがアイスボルトを発動させ、不意打ちを狙う賊へと氷の矢を飛ばした。
 先ほどのアースウォールでも顎をぶつけられた賊は再びアイスボルトでも顎に命中してしまう。
 前を走る賊は不意打ちが見破られてしまい、悔しそうであったが、そのまま緋袮へ斬りかかっていった。
「骨の二、三本持っていくかもな!」
 緋袮はスライディングするように身体を滑らせ、左手を地につけて賊の膝を回し蹴る。衝撃でがくりと膝を落とした賊へ青白い雲状のガスが降りてきた。
「大人しくして下さい」
「んじゃ、縛り上げるぞ」
 カティスが発動させたスリープクラウドで昏睡状態となった賊達を緋袮がロープで縛り上げていく。
 残る賊はあと一人、空と錬介が対峙している。
 鎧を着た大男と小柄な女。立ち姿からして双方、腕に覚えがあるハンターだと賊は判断した。戦うならば……と判断したのは女である空だ。
「やれるなら、やってみなさい」
 挑発ともとれる言葉だが、空は呪画を広げている。誰の動きが先かと言えば、錬介のホーリーヴェールが先だった。
 ホーリーヴェールが崩れて光の片鱗が輝く中、呪画より浮かび上がる幻影が幻想的な印象を持たせられる。そして、紫電が空より放たれた。
 静まった頃にその場にいた賊はハンターの手によって見事に捕縛された。
 空が周囲を歩いている頃、のびている賊を縄で縛っていた時、カティスが賊の腰に刺さっていた物に気づく。
「お清殿が奪われた物か……?」
 トンボ玉が付いた柘植の簪と清は言っていた。
 飴色の柘植の木に先端についていたトンボ玉は確かに赤く、中央に細い楕円の線が入っていた。まるで蛇の目のような飾りだ。

 麓で待っていた初名と清はハンター達の帰還に喜んだ。
 二人とも、無事だったようであり、セルゲン達は安堵していた。
「おお、やるねぇ。ありがとうよ」
 はしゃぐ清はカティスから簪を渡され、嬉しそうだ。
「皆さま、お疲れ様でした」
 ぐったりしている賊達は錬介、緋袮、セルゲンが担いでくれており、そのまま番屋へ持ち込みをする。
 町の者も、旅人もきちんと仕事をしたハンター達へ素直に感謝の言葉を述べた。
「ハンターにも色んな方がいらっしゃると聞いてます。人の口から口へ流れる噂は悪い話へ変える事もあると思います。
 故に、私はこの町の皆さんに伝えたかったのです。私の知る、ハンターの皆様は信じられると」
 初名の言葉を聞きながら、空は文を書いていた。
「そうね。私達は依頼を遂行するだけだから」
 手紙を書き終えた空は紙を綺麗に畳む。
「道中無事でありますように」
 錬介が初名と清に祈りを込めると、ハンター達は町を去った。
 彼らを見送った後、二人も街道を通っていくべき場所、帰る場所へと歩いて行く。

 旅人達は自身が向かう道を進み、その先々でハンターを誉めちぎり、町の住民は新たに迎え入れた旅人達にハンターの活躍を伝えていった。
 そして、盗賊団をどうするか町の者達で相談を始めたのは少し後の話。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • ティーマイスター
    カティス・フィルム(ka2486
    人間(紅)|12才|女性|魔術師

  • 緋袮(ka5699
    鬼|17才|女性|格闘士
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • 即疾隊一番隊士
    和音・空(ka6228
    人間(紅)|19才|女性|符術師
  • 半折れ角
    セルゲン(ka6612
    鬼|24才|男性|霊闘士
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師

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マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談場所
セルゲン(ka6612
鬼|24才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/09/16 10:57:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/11 23:38:43