ゲスト
(ka0000)
流れ着いた宝箱
マスター:一蓮星

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/19 12:00
- 完成日
- 2014/11/26 23:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●岩場の金貨
「本当に大丈夫なのお兄ちゃん、子供だけで来ちゃいけないって言われてるのに」
早朝8時、岩場の多い海岸線には、3人の子供たちの姿しか見えない。
この小さな漁村では大人たちは皆、朝の魚市場のセリの準備で忙しい頃だ。
そんな時を狙って、子供たちは親の目を盗んで冒険に出る。
その中の最も小さな女の子が不安そうに一人の少年の袖を引っ張って言った。
「泳いじゃいけないってことだろ、岩場は波が荒いから。今なら引潮だし、バレなきゃなんとかなるって!」
袖を引かれた少年は、膨らんだポケットから古い金貨を一枚取り出し、指で弾いて妹に笑って答える。
「ねえ、カイ、ボクのためにそんな事しなくていいよ。宝箱なんて、あとで海賊にでも見つかったらみんな殺されちゃうかもしれないだろ!」
二人の後から申し訳なさそうについてきた少年は金貨を持つ少年に訴える。
「バカ、すげー古そうな宝箱なんだぜ、今更探してる海賊なんていねーよ。だいたいレン、金がなきゃ、お前は隣町の孤児院行きなんだぞ! ロゼだって、レンと離れんの、やだろ?」
ロゼと呼ばれた少女はコクコクと頷く。
今年の春、レンと呼ばれた少年の両親は、歪虚に殺された。
孤児となった彼は、いとこであるカイとロゼの兄妹の家に預けられた。
だが貧しい漁村で3人もの子供を育てるには、やはり限界があった。
聡明なレンのためにも、隣町の孤児院で暮らした方が幸せではないかとの話が村の大人たちから出始めたのだ。
「それは、ボクだって一緒にいたいけど……」
レンはうなだれる。
「だからさ、オレが宝箱を見つけたのもきっと、みんなで一緒にいられるように、神様がくれたプレゼントなんだよ。オレ一人じゃ無理だったけど、3人でならきっと村まで運べるって」
カイの案内で辿り着いた岩場は、かつて使われていたであろう朽ちかけた木造の小屋がある以外には、何もない所だった。
そこは、かねてからカイが秘密基地にしようと計画していた、古びた漁具などがしまわれている漁師小屋だ。
小屋から50mほど離れた場所にある黒く大きな岩山を登りきると、それは姿を現した。
窪んだ岩に抱えられている宝箱はカイの言うとおりとても古いものらしく、所々フジツボなどに覆われていた。
大きさは、40cm×60cmくらいだろうか。リンゴなら30個は入りそうだ。
周囲では、こぼれた金貨が波に洗われている。
「あれ、オレ、蓋はちゃんと閉じておいたと思うんだけど……」
カイが怪訝な顔をした。
蓋はガタガタと音を立て、不意に開いた。
中から飛び出してきたのは、甲殻類型の雑魔、歪虚だった。
●ハンターオフィスにて
「では事件の概要についてお話いたします」担当者は表情を引き締めた。
「ハンターオフィスに知らせがもたらされたのは、同日午前10時頃。
一人だけ逃げ延びた少年、レンから村の大人たちに訴えがありました。
カイとロゼの兄妹は近くの漁師小屋に避難。
妹のほうは、岩場を降りる時に足を負傷している様です。
兄は妹をかばいながら、レンに救助を呼んできてもらうために、大声を出したり、持っていたコインを歪虚に向って投げるなどのことをして、小屋の方へ引きつけた様子。
どうやら雑魔の視力はあまり良くなく、キラキラしたものや、大きな音のするもの、また鉄や金属、血の匂いには強く反応するようです。
現在小屋の扉は内側から漁具などで封鎖しているようですが、長い時間をかければ、板などを破壊し、小型の雑魔でも侵入可能になるかもしれません。
また、少女の怪我も深くはないようですが、傷の消毒もできない状態ですので、早急に手当が必要です。
なお、漁師小屋の中には古い漁具、銛や網、浮用のガラス玉などが入っているそうです。
海の近くの森から、小屋や岩場までは50メートルほど離れています。森の中では敵から姿を隠すことができそうです」
そして報告書から顔をあげて一言付け加えた。
「両親を亡くし、その上友人まで奪われては、少年の生きる希望が無くなってしまいます。どうか一刻も早く、彼らを救ってあげてください」
「本当に大丈夫なのお兄ちゃん、子供だけで来ちゃいけないって言われてるのに」
早朝8時、岩場の多い海岸線には、3人の子供たちの姿しか見えない。
この小さな漁村では大人たちは皆、朝の魚市場のセリの準備で忙しい頃だ。
そんな時を狙って、子供たちは親の目を盗んで冒険に出る。
その中の最も小さな女の子が不安そうに一人の少年の袖を引っ張って言った。
「泳いじゃいけないってことだろ、岩場は波が荒いから。今なら引潮だし、バレなきゃなんとかなるって!」
袖を引かれた少年は、膨らんだポケットから古い金貨を一枚取り出し、指で弾いて妹に笑って答える。
「ねえ、カイ、ボクのためにそんな事しなくていいよ。宝箱なんて、あとで海賊にでも見つかったらみんな殺されちゃうかもしれないだろ!」
二人の後から申し訳なさそうについてきた少年は金貨を持つ少年に訴える。
「バカ、すげー古そうな宝箱なんだぜ、今更探してる海賊なんていねーよ。だいたいレン、金がなきゃ、お前は隣町の孤児院行きなんだぞ! ロゼだって、レンと離れんの、やだろ?」
ロゼと呼ばれた少女はコクコクと頷く。
今年の春、レンと呼ばれた少年の両親は、歪虚に殺された。
孤児となった彼は、いとこであるカイとロゼの兄妹の家に預けられた。
だが貧しい漁村で3人もの子供を育てるには、やはり限界があった。
聡明なレンのためにも、隣町の孤児院で暮らした方が幸せではないかとの話が村の大人たちから出始めたのだ。
「それは、ボクだって一緒にいたいけど……」
レンはうなだれる。
「だからさ、オレが宝箱を見つけたのもきっと、みんなで一緒にいられるように、神様がくれたプレゼントなんだよ。オレ一人じゃ無理だったけど、3人でならきっと村まで運べるって」
カイの案内で辿り着いた岩場は、かつて使われていたであろう朽ちかけた木造の小屋がある以外には、何もない所だった。
そこは、かねてからカイが秘密基地にしようと計画していた、古びた漁具などがしまわれている漁師小屋だ。
小屋から50mほど離れた場所にある黒く大きな岩山を登りきると、それは姿を現した。
窪んだ岩に抱えられている宝箱はカイの言うとおりとても古いものらしく、所々フジツボなどに覆われていた。
大きさは、40cm×60cmくらいだろうか。リンゴなら30個は入りそうだ。
周囲では、こぼれた金貨が波に洗われている。
「あれ、オレ、蓋はちゃんと閉じておいたと思うんだけど……」
カイが怪訝な顔をした。
蓋はガタガタと音を立て、不意に開いた。
中から飛び出してきたのは、甲殻類型の雑魔、歪虚だった。
●ハンターオフィスにて
「では事件の概要についてお話いたします」担当者は表情を引き締めた。
「ハンターオフィスに知らせがもたらされたのは、同日午前10時頃。
一人だけ逃げ延びた少年、レンから村の大人たちに訴えがありました。
カイとロゼの兄妹は近くの漁師小屋に避難。
妹のほうは、岩場を降りる時に足を負傷している様です。
兄は妹をかばいながら、レンに救助を呼んできてもらうために、大声を出したり、持っていたコインを歪虚に向って投げるなどのことをして、小屋の方へ引きつけた様子。
どうやら雑魔の視力はあまり良くなく、キラキラしたものや、大きな音のするもの、また鉄や金属、血の匂いには強く反応するようです。
現在小屋の扉は内側から漁具などで封鎖しているようですが、長い時間をかければ、板などを破壊し、小型の雑魔でも侵入可能になるかもしれません。
また、少女の怪我も深くはないようですが、傷の消毒もできない状態ですので、早急に手当が必要です。
なお、漁師小屋の中には古い漁具、銛や網、浮用のガラス玉などが入っているそうです。
海の近くの森から、小屋や岩場までは50メートルほど離れています。森の中では敵から姿を隠すことができそうです」
そして報告書から顔をあげて一言付け加えた。
「両親を亡くし、その上友人まで奪われては、少年の生きる希望が無くなってしまいます。どうか一刻も早く、彼らを救ってあげてください」
リプレイ本文
●漁火の村
ハンター達がその小さな漁村に到着したのは、残り僅かな夕日が辺り一面を紅く染め上げる頃だった。
村の中央、海へ真っ直ぐな道が通る広場には、すでに篝火が焚かれ、手に銛などの武器を手にした村の住人が溢れていた。
いずれも海、またはハンターが訪れるであろう街道の方を見つめている。
やがて砂煙が立ち上がり、疾走する馬の群れが街道に現れた。
「待たせたな! 俺様が来たからにはもう安心だぜ!」
馳せ音も高らかに愛馬で真っ先に広場中央に乗り付けた、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が雄叫びを上げる。
力強い来訪者の声に不安に色を無くしていた村人たちの顔に生気が戻る。
彼を皮切りに、8人の雄姿が次々に姿を現した。
華麗に馬から降りたエリシャ・カンナヴィ(ka0140)は、村の代表者らしき男性に目をつけると、
「魚の血や内臓があれば貰いたいのだけど。市場に廃棄されているわよね?」
と、足早に行動を起こした。
ラウリィ・ディバイン(ka0425)は、愛馬を気遣いながら降りるマルカ・アニチキン(ka2542)に手を貸すと、
「俺たちは、こいつらに手伝って貰おうか?」と相棒の馬の鼻面を撫ぜて微笑んだ。
マルカは可憐に頷くと、
「どなたか、荷車を貸していただけないでしょうか?」と近くにいた村人に話しかける。
ふと、村人たちが静まり返り、人垣が割れ始めた。
気配の変化をハンター達が視線で追うと、そこには、白い髪に青い目の、小さな少年がいた。レンだ。
両脇にはその少年を支えるように、大人の女性と男性が連れ添っている。カイとロゼの両親だろう。
仲間たちの馬を繋いで貰っていた、フューリ(ka0660)と上霧 鋭(ka3535)が顔を上げる。
両手を硬く握り締めるレンに、フューリがそっと近寄ってしゃがみ込む。
「大丈夫っすよ! ……僕らは、君たちを助けるために来たんすから!」
ポンポンと頭を撫ぜる。
それまでじっと涙を目にためていたレンは、
「ボク……父さんも母さんも、ボクをかばって死んだんだ……お願いだから……友達まで……」
震える声でようやくそこまで口にした。
「ガキが、頑張ってんじゃねーか」
鋭が、レンの頭をくしゃくしゃにした。
「もう、無理すんな」
そこでようやく、レンは大粒の涙をボロボロとこぼし、大声で泣き始めた。
カイとロゼの両親も、涙を堪えながら、何度も
「お願いします」と頭を下げた。
口に出す者こそいなかったが、ハンターたちの間に決意がみなぎる。
「釣りの準備をしなきゃな」イブリス・アリア(ka3359)が鋭い緑の目をさらに細め、小さく呟く。秘めた闘志を表すかのように、銀色の髪が夕日を紅く反射している。
關 湊文(ka2354)も頷いた。
「私も少しでも陽のあるうちに、現場の把握をしておきたいのよね」
長く美しい黒髪をかきあげ、その豊満な躰にライフルを背負い直す。
二人は目で合図しあうと、すでに光を失い始めた森の中に向った。
●森の中
「ここからだと、敵は一体しか確認できないのよ」
關がライフルのスコープを覗きながら言う。
「岩場のほうも視界に限界があるな。位置は把握できるが……」
イブリスも海の方を見つめながら答える。
それぞれの準備を終えたハンターたちは小屋から50mほど離れた森の中に集合していた。日は沈みかけ、夜の帳がおりようとしている。
「さっさと行って、さくっと片付けましょ」
エリシャが血袋を振るようにして言う。すでに敵が漁師小屋に侵入していないとも限らない。
「だな、さっさと終わらせようじゃんか!」
鋭がLEDライトを頭に結びつけ、気合と共に覚醒した。
黒と金の髪、そしてライトが見る見るうちに触角を持った黒い外骨格に覆われてゆく。背丈まで2m近く変化した彼女は、とても元が小柄な女性とは思えない。
「……なんという見事な黒……!! 鋭! この俺様、暗黒皇帝の臣下にならないか!?」
デスドクロが思わず叫ぶ。
「ばっ……バカなこと言ってんじゃねぇ! 今そんな場合か!!」
表情は見えないが、明らかに照れ隠しの声だ。
外見がダークアメコミヒーローのようなデスドクロとは、どこか通じるものがあるらしい。
「そうだよ! ふざけていいなら俺だってこんなにも可愛い女の子が4人もいるんだからもっとこう色々……特に關さんの溢れ出んばかりの、お……」
ラウリィがすべて言い終わらないうちに首筋に白いナイフの刃が突きつけられた。
「それ以上エルフの品位を貶める発言をしたら、私があなたを黙らせるけど、良いのよね?」
エリシャが目が笑っていない笑顔でラウリィの背後に立っていた。
「はいはい! おふざけは本当にここまでで! 行くっすよ!」
爪と犬歯が鋭くなり、フューリも覚醒の片鱗を見せる。
「はいっ……!」
仲間の微笑ましいやり取りに緊張を緩めることができたマルカは、二枚の毛布を抱きしめるようにして頷いた。
●海の魔物
海風に乗って、血生臭い匂いが運ばれてきた。
漁師小屋の周囲を旋回するようにふわふわと漂っていた雑魔は、ぴたりと動きを止めた。小屋の中には獲物がいる、だが新たな匂いも気にかかる。
「さーってと、鬼さんコチラっすよ~!」
闇の中に、細い月が浮かび上がる。
三日月は覚醒したフューリの腹に浮かび出る模様だ。それを腰に付けたライトの光が照らしたのだ。赤色の狼の耳と尾が彼の霊闘士としての属性を表している。
甲殻類型の雑魔は一瞬動きを止めると、彼に向って発射するかのように飛び込んできた。
「わわっと!」木刀で素早く甲羅を薙ぎ払うと、雑魔は海側の砂浜に転げ落ちた。だがすぐに触手で体制を立て直し、もう一度フューリに飛びかかろうとする。
「思ってたより素早いっすね!」
後ろ向きに跳ねるように2、3歩距離をとると、そのまま誘うように緩やかに走り出した。
「小屋から離れたね、行こうか?」
ラウリィの声に、鋭とマルカが頷く。
ラウリィはフューリが向かった岩場と小屋の間にゆっくりと歩を進める。
鋭は先陣を切り、小屋の出入り口の近い反対側に素早く移動した。マルカは毛布を抱え鋭に続く。
「おい、助けに来たぜ。開けろ!」
小屋に到着した鋭は、軽く扉をノックすると、できるだけ抑えた声でそう言った。中で何かが蠢く気配があり、扉をつっかえていた何かが外れる音がした。
「よし、良く我慢したな……」鋭が顔を覗かせると、古びた銛が衝き付けられた。
「ロゼに……触んなっ!」片手で軽く銛をいなされた少年は悔しそうに叫ぶ。
無理もない、黒い外骨格に覆われた姿は、子供には歪虚の親玉にも見えるだろう。
「落ち着け、静かにしろ! ……しょうがねぇな」鋭が顔だけ覚醒を解く。僅かに遅れてやってきたマルカも顔を覗かせ、
「大丈夫ですよ、私たちは、ハンターです」と微笑んだ。
ようやく事態が呑み込めたのか、少年カイはへなへなとその場に座り込む。
「ロゼを診てやって、こいつ足怪我したんだ……」
小屋の奥に、身を縮めるようにして荒い息をしている少女がいた。
鋭が素早く近づき、持ってきたミネラルウォーターで軽く傷を洗い、布で縛って応急処置を施した。そして少女の口に軽く水を含ませる。
傷は浅いようだが、感染症が心配だ。
マルカも毛布でロゼを包み込む。マテリアルヒーリングが他人に使えるならばどんなに良いだろうと唇を噛みながら。
「飲みな、お前も脱水症状起こすぞ」
カイに毛布を巻き付け、水の残りを手渡すと、鋭は言った。
「妹護って、頑張ったじゃねーか」
カイは疲れ切った顔に、にっと笑顔を浮かべ、
「ありがとう、ねーちゃん」と何時間かぶりに飲む水を味わった。
「子供たちは大丈夫?」小屋の反対側を警戒していたラウリィが入ってきて、小さく声をかける。
カイに予備のライトを渡し、「森までは、これでね」と人差し指でしーっという仕草をした。
「ああ、それほど深い傷じゃなさそうだ……歩けそうか?」
「大丈夫だと思います、立てるかな、ロゼちゃん……」
ふいに、少女の悲鳴が響いた。
「マルカさん、伏せて!」
ラウリィが小屋の上方に向けて矢を放った。
長い時間をかけて小屋の天井を破壊していた雑魔が侵入してきたのだ。砕けた屋根板が何枚か落下する。
行く手を阻まれた雑魔はクラゲのような動きで小屋の天井を動き回っている。狙いはまだ足に血の匂いの残る、少女らしい。
「チッ、こっちだ雑魚野郎!」
瞬時に判断した鋭が腕の覚醒を解き、自らの剣で斬り付けた。
鮮血が飛び散る。
「行け、マルカ!」
マルカは頷くと、子供たち二人を連れて小屋の外に走り出した。
狙いを変更した雑魔は噴射するように鋭に向って飛びかかる。
すんでの所でラウリィの矢がそれを弾き、壁に向かって叩き付けられた雑魔の腹に、闘心昂揚で高まった鋭の剣が突き立てられた。
「一丁上がり、だな」黒い霧のように蒸発した雑魔を見て鋭は安堵する。
「無茶するなぁ、鋭さんは!」ラウリィが半ば呆れたように駆け寄る。
「これぐらい自分で治せるからな。それよりみんなの援護を頼む」
癒しの光が鋭の腕を包んだ。
毛布を被った子供たちを庇うように、マルカは走っていた。
森までの距離は遠くはない。だが砂浜は足を取られやすく、走りにくい。
(それに、屋根の上にいたならば、死角にまだいる可能性も――)
その予感は的中した。
小屋の地面、地中から潜り込もうとしていた雑魔が、砂地から飛び出してきたのだ。
高く飛び上がった雑魔は、3体もの獲物に喜んだのか、毒を噴射した。
「伏せてっ!!」
倒れ込みそうな姿勢で、魔法を打ち込んだ。
「ウィンドガスト!!」緑に輝く風が毒霧を四散し、雑魔の腹をむき出しにした。
「視界良好」
森から狙撃の瞬間を狙っていた關のライフル弾が、雑魔を撃ち抜いた。
ふわりと落ち着きを取り戻した、關の髪に銀、瞳に赤の照準の残滓が残る。
緑の輝きが消えるとほぼ同時に、雑魔も消滅していた。
「ありがとうございます、關さん……」
子供達を連れ、森の中に辿り着いたマルカは礼を言う。
「マルカさんの魔法で、目標の捕捉が正確にできたのよ。お疲れ様」
柔らかく言いながら、目は海岸のほうに向けている。
「さ、森の入り口にお馬さんを待たせてあるんでしょ? 早く連れてってあげなさいな」
ペコリと礼をして、マルカはその場を後にした。
その退路を守りながら、關も少しずつ移動を始める。
「このデスドクロ様のインフェルノブレイザーを使えば2秒で終わる仕事だが……。
威力がデカ過ぎて、海岸も宝箱もまとめて蒸発させちまう恐れがあるな……。宝箱の中身をバラバラ外に出しちまっても勿体ねぇ」
宝箱のある岩場にはデスドクロとイブリスが身を隠していた。
「ただの大ぼら吹きかと思ったら、意外と考えてるんだな、オッサン」
イブリスが多少感心したかのように呟く。
「誰がオッサンだ! 俺様は暗黒皇帝……」
と、立ち上がりかけてイブリスの(解ったから黙れ)のジェスチャーでそーっと座り込む。
「冗談はさておき、敵を引き離す案には賛成だ。蓋も閉めておきたいしな。さてどうするかだが……」
風向きのせいか、血袋の効果が薄いらしい。
ある程度、こちらからその方向へ誘導してやらなければならない。
「仕方ねぇ、俺が行くか。箱のほうは頼むぜ、デスドクロ!!」
瞬脚の発動とともに、岩の上に高く飛び上がり、手裏剣・八握剣を叩き込む。
宝箱内にいる他の物よりも一回り大きい雑魔は見た目も一味違い、鈍い金色に輝いていた。
狙いは正確だったが、金貨を吸収したその硬い甲羅には八握剣でも僅かな傷を付けることしかできなかった。
ボスへの攻撃に怒りを覚えたのか、周囲で零れた金貨を漁っていた二体の雑魔はふいに空中に舞いあがると、イブリスに触手を伸ばした。
彼は巧みにそれを避けながら誘導してゆく。
金色の雑魔は、ゆっくりとその後を追っていった。
キィンと、涼やかな音色が血に塗れた岩場に反響する。
一際高い岩の上に、白刃を煌めかせる少女の姿があった。
「やっと来た!」
エリシャは矢をつがえると、こちらに向かって飛んできた雑魔に放った。
フューリのクラッシュブロウで吹き飛ばされてきた雑魔だ。
矢は甲羅のど真ん中に正確にヒットし、雑魔の勢いを相殺した。
その腹にフューリの構えたメイル・ブレイカーが突き刺さる。
黒い霧が立ち上がり、雑魔は消滅した。
「後ろからも来てるっす!!」
宝箱側から来た二体の雑魔がエリシャの後ろに迫っていた。
即座に矢を放つと、一体の頭に命中し、それは岩の上を転げ落ちた。
腹を見せてもがく雑魔に影のように現れたイブリスがナイフを突き立てる。
エリシャは接近してきたもう一体に向って踊るようにステップを踏むと、弓をデリンジャーに持ち替えた。
腰に付けたライトと数本のナイフが輝きながら澄んだ音を発する。
その響きをかき消すように銃弾が天を貫いた。
二体ぶんの黒い霧が風に乗り流れる。
「私とまだ踊りたいやつはいる?」
その声に応ずるように金色の雑魔が現れた。
「こいつはちょと硬そうね……」その場にいた全員が身構える。
「これが俺様のインフェルノブレイザーだ!!」
デスドクロの機導砲の光が背後から金色の雑魔を包み込む。
「捕えたからにはもう、逃がさないから」
關のライフル弾がもがく雑魔にヒットし、顕になった腹にイブリスが手裏剣を、エリシャが弾丸を叩き込んだ。
金色の雑魔は、黒霧と化し消滅した。
●金貨の行方
マルカが海岸に着いた時にはみんなが海に入って金貨を拾っていた。
「こう見えて、イブリスが一番先に海に入ったのよ」關が笑顔を見せる。
「優しいんですね、イブリスさん」マルカも微笑む。
「これも依頼の内だからな。帰ったら、村で一番美味い酒でも奢らせる」
余計な事は言うな、という調子でイブリスが手を振る。
マルカも靴下を脱ぎ、海に足を入れる。
すると、すっと波が引いていった。もっとも波の引く時間帯に入ったのだろう。
岩場には点々と金の光が道を作っていた。
●大団円
荷車に宝箱と子供達を乗せ、村に帰った一同を、村人たちは歓喜の渦で飲み込んだ。
カイとロゼはレンと抱きしめあい、両親が包込む。
ラウリィの提案でハンカチで包まれた三つの贈り物が子供たちに手渡された。
贈り物をきゅっと握りしめると、3人はひそひそ話を始めた。
そして笑顔でこう叫んだ。
「大きくなったら、ハンターになる!!」
祝杯の声に沸く小さな村の灯りは、翌朝まで消えることはなかった。
それは金貨よりもまぶしく、温かい金色の光だった。
ハンター達がその小さな漁村に到着したのは、残り僅かな夕日が辺り一面を紅く染め上げる頃だった。
村の中央、海へ真っ直ぐな道が通る広場には、すでに篝火が焚かれ、手に銛などの武器を手にした村の住人が溢れていた。
いずれも海、またはハンターが訪れるであろう街道の方を見つめている。
やがて砂煙が立ち上がり、疾走する馬の群れが街道に現れた。
「待たせたな! 俺様が来たからにはもう安心だぜ!」
馳せ音も高らかに愛馬で真っ先に広場中央に乗り付けた、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が雄叫びを上げる。
力強い来訪者の声に不安に色を無くしていた村人たちの顔に生気が戻る。
彼を皮切りに、8人の雄姿が次々に姿を現した。
華麗に馬から降りたエリシャ・カンナヴィ(ka0140)は、村の代表者らしき男性に目をつけると、
「魚の血や内臓があれば貰いたいのだけど。市場に廃棄されているわよね?」
と、足早に行動を起こした。
ラウリィ・ディバイン(ka0425)は、愛馬を気遣いながら降りるマルカ・アニチキン(ka2542)に手を貸すと、
「俺たちは、こいつらに手伝って貰おうか?」と相棒の馬の鼻面を撫ぜて微笑んだ。
マルカは可憐に頷くと、
「どなたか、荷車を貸していただけないでしょうか?」と近くにいた村人に話しかける。
ふと、村人たちが静まり返り、人垣が割れ始めた。
気配の変化をハンター達が視線で追うと、そこには、白い髪に青い目の、小さな少年がいた。レンだ。
両脇にはその少年を支えるように、大人の女性と男性が連れ添っている。カイとロゼの両親だろう。
仲間たちの馬を繋いで貰っていた、フューリ(ka0660)と上霧 鋭(ka3535)が顔を上げる。
両手を硬く握り締めるレンに、フューリがそっと近寄ってしゃがみ込む。
「大丈夫っすよ! ……僕らは、君たちを助けるために来たんすから!」
ポンポンと頭を撫ぜる。
それまでじっと涙を目にためていたレンは、
「ボク……父さんも母さんも、ボクをかばって死んだんだ……お願いだから……友達まで……」
震える声でようやくそこまで口にした。
「ガキが、頑張ってんじゃねーか」
鋭が、レンの頭をくしゃくしゃにした。
「もう、無理すんな」
そこでようやく、レンは大粒の涙をボロボロとこぼし、大声で泣き始めた。
カイとロゼの両親も、涙を堪えながら、何度も
「お願いします」と頭を下げた。
口に出す者こそいなかったが、ハンターたちの間に決意がみなぎる。
「釣りの準備をしなきゃな」イブリス・アリア(ka3359)が鋭い緑の目をさらに細め、小さく呟く。秘めた闘志を表すかのように、銀色の髪が夕日を紅く反射している。
關 湊文(ka2354)も頷いた。
「私も少しでも陽のあるうちに、現場の把握をしておきたいのよね」
長く美しい黒髪をかきあげ、その豊満な躰にライフルを背負い直す。
二人は目で合図しあうと、すでに光を失い始めた森の中に向った。
●森の中
「ここからだと、敵は一体しか確認できないのよ」
關がライフルのスコープを覗きながら言う。
「岩場のほうも視界に限界があるな。位置は把握できるが……」
イブリスも海の方を見つめながら答える。
それぞれの準備を終えたハンターたちは小屋から50mほど離れた森の中に集合していた。日は沈みかけ、夜の帳がおりようとしている。
「さっさと行って、さくっと片付けましょ」
エリシャが血袋を振るようにして言う。すでに敵が漁師小屋に侵入していないとも限らない。
「だな、さっさと終わらせようじゃんか!」
鋭がLEDライトを頭に結びつけ、気合と共に覚醒した。
黒と金の髪、そしてライトが見る見るうちに触角を持った黒い外骨格に覆われてゆく。背丈まで2m近く変化した彼女は、とても元が小柄な女性とは思えない。
「……なんという見事な黒……!! 鋭! この俺様、暗黒皇帝の臣下にならないか!?」
デスドクロが思わず叫ぶ。
「ばっ……バカなこと言ってんじゃねぇ! 今そんな場合か!!」
表情は見えないが、明らかに照れ隠しの声だ。
外見がダークアメコミヒーローのようなデスドクロとは、どこか通じるものがあるらしい。
「そうだよ! ふざけていいなら俺だってこんなにも可愛い女の子が4人もいるんだからもっとこう色々……特に關さんの溢れ出んばかりの、お……」
ラウリィがすべて言い終わらないうちに首筋に白いナイフの刃が突きつけられた。
「それ以上エルフの品位を貶める発言をしたら、私があなたを黙らせるけど、良いのよね?」
エリシャが目が笑っていない笑顔でラウリィの背後に立っていた。
「はいはい! おふざけは本当にここまでで! 行くっすよ!」
爪と犬歯が鋭くなり、フューリも覚醒の片鱗を見せる。
「はいっ……!」
仲間の微笑ましいやり取りに緊張を緩めることができたマルカは、二枚の毛布を抱きしめるようにして頷いた。
●海の魔物
海風に乗って、血生臭い匂いが運ばれてきた。
漁師小屋の周囲を旋回するようにふわふわと漂っていた雑魔は、ぴたりと動きを止めた。小屋の中には獲物がいる、だが新たな匂いも気にかかる。
「さーってと、鬼さんコチラっすよ~!」
闇の中に、細い月が浮かび上がる。
三日月は覚醒したフューリの腹に浮かび出る模様だ。それを腰に付けたライトの光が照らしたのだ。赤色の狼の耳と尾が彼の霊闘士としての属性を表している。
甲殻類型の雑魔は一瞬動きを止めると、彼に向って発射するかのように飛び込んできた。
「わわっと!」木刀で素早く甲羅を薙ぎ払うと、雑魔は海側の砂浜に転げ落ちた。だがすぐに触手で体制を立て直し、もう一度フューリに飛びかかろうとする。
「思ってたより素早いっすね!」
後ろ向きに跳ねるように2、3歩距離をとると、そのまま誘うように緩やかに走り出した。
「小屋から離れたね、行こうか?」
ラウリィの声に、鋭とマルカが頷く。
ラウリィはフューリが向かった岩場と小屋の間にゆっくりと歩を進める。
鋭は先陣を切り、小屋の出入り口の近い反対側に素早く移動した。マルカは毛布を抱え鋭に続く。
「おい、助けに来たぜ。開けろ!」
小屋に到着した鋭は、軽く扉をノックすると、できるだけ抑えた声でそう言った。中で何かが蠢く気配があり、扉をつっかえていた何かが外れる音がした。
「よし、良く我慢したな……」鋭が顔を覗かせると、古びた銛が衝き付けられた。
「ロゼに……触んなっ!」片手で軽く銛をいなされた少年は悔しそうに叫ぶ。
無理もない、黒い外骨格に覆われた姿は、子供には歪虚の親玉にも見えるだろう。
「落ち着け、静かにしろ! ……しょうがねぇな」鋭が顔だけ覚醒を解く。僅かに遅れてやってきたマルカも顔を覗かせ、
「大丈夫ですよ、私たちは、ハンターです」と微笑んだ。
ようやく事態が呑み込めたのか、少年カイはへなへなとその場に座り込む。
「ロゼを診てやって、こいつ足怪我したんだ……」
小屋の奥に、身を縮めるようにして荒い息をしている少女がいた。
鋭が素早く近づき、持ってきたミネラルウォーターで軽く傷を洗い、布で縛って応急処置を施した。そして少女の口に軽く水を含ませる。
傷は浅いようだが、感染症が心配だ。
マルカも毛布でロゼを包み込む。マテリアルヒーリングが他人に使えるならばどんなに良いだろうと唇を噛みながら。
「飲みな、お前も脱水症状起こすぞ」
カイに毛布を巻き付け、水の残りを手渡すと、鋭は言った。
「妹護って、頑張ったじゃねーか」
カイは疲れ切った顔に、にっと笑顔を浮かべ、
「ありがとう、ねーちゃん」と何時間かぶりに飲む水を味わった。
「子供たちは大丈夫?」小屋の反対側を警戒していたラウリィが入ってきて、小さく声をかける。
カイに予備のライトを渡し、「森までは、これでね」と人差し指でしーっという仕草をした。
「ああ、それほど深い傷じゃなさそうだ……歩けそうか?」
「大丈夫だと思います、立てるかな、ロゼちゃん……」
ふいに、少女の悲鳴が響いた。
「マルカさん、伏せて!」
ラウリィが小屋の上方に向けて矢を放った。
長い時間をかけて小屋の天井を破壊していた雑魔が侵入してきたのだ。砕けた屋根板が何枚か落下する。
行く手を阻まれた雑魔はクラゲのような動きで小屋の天井を動き回っている。狙いはまだ足に血の匂いの残る、少女らしい。
「チッ、こっちだ雑魚野郎!」
瞬時に判断した鋭が腕の覚醒を解き、自らの剣で斬り付けた。
鮮血が飛び散る。
「行け、マルカ!」
マルカは頷くと、子供たち二人を連れて小屋の外に走り出した。
狙いを変更した雑魔は噴射するように鋭に向って飛びかかる。
すんでの所でラウリィの矢がそれを弾き、壁に向かって叩き付けられた雑魔の腹に、闘心昂揚で高まった鋭の剣が突き立てられた。
「一丁上がり、だな」黒い霧のように蒸発した雑魔を見て鋭は安堵する。
「無茶するなぁ、鋭さんは!」ラウリィが半ば呆れたように駆け寄る。
「これぐらい自分で治せるからな。それよりみんなの援護を頼む」
癒しの光が鋭の腕を包んだ。
毛布を被った子供たちを庇うように、マルカは走っていた。
森までの距離は遠くはない。だが砂浜は足を取られやすく、走りにくい。
(それに、屋根の上にいたならば、死角にまだいる可能性も――)
その予感は的中した。
小屋の地面、地中から潜り込もうとしていた雑魔が、砂地から飛び出してきたのだ。
高く飛び上がった雑魔は、3体もの獲物に喜んだのか、毒を噴射した。
「伏せてっ!!」
倒れ込みそうな姿勢で、魔法を打ち込んだ。
「ウィンドガスト!!」緑に輝く風が毒霧を四散し、雑魔の腹をむき出しにした。
「視界良好」
森から狙撃の瞬間を狙っていた關のライフル弾が、雑魔を撃ち抜いた。
ふわりと落ち着きを取り戻した、關の髪に銀、瞳に赤の照準の残滓が残る。
緑の輝きが消えるとほぼ同時に、雑魔も消滅していた。
「ありがとうございます、關さん……」
子供達を連れ、森の中に辿り着いたマルカは礼を言う。
「マルカさんの魔法で、目標の捕捉が正確にできたのよ。お疲れ様」
柔らかく言いながら、目は海岸のほうに向けている。
「さ、森の入り口にお馬さんを待たせてあるんでしょ? 早く連れてってあげなさいな」
ペコリと礼をして、マルカはその場を後にした。
その退路を守りながら、關も少しずつ移動を始める。
「このデスドクロ様のインフェルノブレイザーを使えば2秒で終わる仕事だが……。
威力がデカ過ぎて、海岸も宝箱もまとめて蒸発させちまう恐れがあるな……。宝箱の中身をバラバラ外に出しちまっても勿体ねぇ」
宝箱のある岩場にはデスドクロとイブリスが身を隠していた。
「ただの大ぼら吹きかと思ったら、意外と考えてるんだな、オッサン」
イブリスが多少感心したかのように呟く。
「誰がオッサンだ! 俺様は暗黒皇帝……」
と、立ち上がりかけてイブリスの(解ったから黙れ)のジェスチャーでそーっと座り込む。
「冗談はさておき、敵を引き離す案には賛成だ。蓋も閉めておきたいしな。さてどうするかだが……」
風向きのせいか、血袋の効果が薄いらしい。
ある程度、こちらからその方向へ誘導してやらなければならない。
「仕方ねぇ、俺が行くか。箱のほうは頼むぜ、デスドクロ!!」
瞬脚の発動とともに、岩の上に高く飛び上がり、手裏剣・八握剣を叩き込む。
宝箱内にいる他の物よりも一回り大きい雑魔は見た目も一味違い、鈍い金色に輝いていた。
狙いは正確だったが、金貨を吸収したその硬い甲羅には八握剣でも僅かな傷を付けることしかできなかった。
ボスへの攻撃に怒りを覚えたのか、周囲で零れた金貨を漁っていた二体の雑魔はふいに空中に舞いあがると、イブリスに触手を伸ばした。
彼は巧みにそれを避けながら誘導してゆく。
金色の雑魔は、ゆっくりとその後を追っていった。
キィンと、涼やかな音色が血に塗れた岩場に反響する。
一際高い岩の上に、白刃を煌めかせる少女の姿があった。
「やっと来た!」
エリシャは矢をつがえると、こちらに向かって飛んできた雑魔に放った。
フューリのクラッシュブロウで吹き飛ばされてきた雑魔だ。
矢は甲羅のど真ん中に正確にヒットし、雑魔の勢いを相殺した。
その腹にフューリの構えたメイル・ブレイカーが突き刺さる。
黒い霧が立ち上がり、雑魔は消滅した。
「後ろからも来てるっす!!」
宝箱側から来た二体の雑魔がエリシャの後ろに迫っていた。
即座に矢を放つと、一体の頭に命中し、それは岩の上を転げ落ちた。
腹を見せてもがく雑魔に影のように現れたイブリスがナイフを突き立てる。
エリシャは接近してきたもう一体に向って踊るようにステップを踏むと、弓をデリンジャーに持ち替えた。
腰に付けたライトと数本のナイフが輝きながら澄んだ音を発する。
その響きをかき消すように銃弾が天を貫いた。
二体ぶんの黒い霧が風に乗り流れる。
「私とまだ踊りたいやつはいる?」
その声に応ずるように金色の雑魔が現れた。
「こいつはちょと硬そうね……」その場にいた全員が身構える。
「これが俺様のインフェルノブレイザーだ!!」
デスドクロの機導砲の光が背後から金色の雑魔を包み込む。
「捕えたからにはもう、逃がさないから」
關のライフル弾がもがく雑魔にヒットし、顕になった腹にイブリスが手裏剣を、エリシャが弾丸を叩き込んだ。
金色の雑魔は、黒霧と化し消滅した。
●金貨の行方
マルカが海岸に着いた時にはみんなが海に入って金貨を拾っていた。
「こう見えて、イブリスが一番先に海に入ったのよ」關が笑顔を見せる。
「優しいんですね、イブリスさん」マルカも微笑む。
「これも依頼の内だからな。帰ったら、村で一番美味い酒でも奢らせる」
余計な事は言うな、という調子でイブリスが手を振る。
マルカも靴下を脱ぎ、海に足を入れる。
すると、すっと波が引いていった。もっとも波の引く時間帯に入ったのだろう。
岩場には点々と金の光が道を作っていた。
●大団円
荷車に宝箱と子供達を乗せ、村に帰った一同を、村人たちは歓喜の渦で飲み込んだ。
カイとロゼはレンと抱きしめあい、両親が包込む。
ラウリィの提案でハンカチで包まれた三つの贈り物が子供たちに手渡された。
贈り物をきゅっと握りしめると、3人はひそひそ話を始めた。
そして笑顔でこう叫んだ。
「大きくなったら、ハンターになる!!」
祝杯の声に沸く小さな村の灯りは、翌朝まで消えることはなかった。
それは金貨よりもまぶしく、温かい金色の光だった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/14 20:30:00 |
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相談卓 エリシャ・カンナヴィ(ka0140) エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/11/18 21:59:35 |