幻獣王の特別な服

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2017/09/18 15:00
完成日
2017/09/23 17:22

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 その日、リゼリオに現れたチューダはうきうきしていた。ガーディナのリーダーで白龍の巫女でもあるリムネラは、きょとんとした顔で尋ねる。
「チューダ、突然どうしたんでスカ? ひとりでリゼリオ、ナンテ」
 おっとりと尋ねてみると、チューダはいつものようにふんぞりかえ――らず、なにやら一冊の本を持ってむう、と唸っている。
「リムネラは、このリアルブルーの物語を知っているでありますか?」
 チューダがそう言ってリムネラに渡したのは、絵本だった。
 タイトルは「裸の王様」。
 リアルブルーの住人なら一度は読んだことがあるであろう、有名なおとぎ話である。
 『賢者にしか見ることのできない服』を自称一流仕立て屋に作って貰い、それを纏って出かける王。
 けれどその服というのはあくまで嘘っぱち、仕立て屋が上手く思い込ませただけで実際にはなにも作っていない――ゆえに、曇った瞳を持っていない子ども達にはだかの王様、と揶揄される。
 そんな物語だ。リムネラはざっとその絵本を読んで、まじまじとチューダの姿を確認する。
 幻獣は種類にもよるが、服を着ているものはそう多くない。チューダも豪奢なマントを羽織っているだけだ。
 しかし、チューダはこの物語を見て何か思うところがあったのだろう。
「我輩も、特別な服が欲しいのであります!」
「トクベツな、服?」
 チューダの言葉に、また首をかしげるリムネラ。
「そう! 特別でとっておきの時に着る、立派な服が欲しいのであります! もっとも我輩の手でそれを作るのは、とても難しいので、手助けがいるのでありますが……」
 チューダは己の小さくぷくぷくした手をじっと見つめた。確かに裁縫には不向きの手である。しかし、とチューダは頷いた。
「リゼリオには色んな人がいるであります。きっと素敵な服を作ってくれると、信じているであります!」
 なるほど。仕立て屋ではなく、ユニオンに来たのも、「いろんなひと」がいるからなのだろう。
「ツマリ、チューダはハンターの皆サンに服をこしらえて欲しいのデスか?」
「手っ取り早く言うと、そうでありますな」
 リムネラの問いに、是と答える幻獣王。リムネラも可愛いものは好きだ。めかし込んだチューダの姿は、きっと可愛らしいに違いない。
「わかりまシタ。依頼をお願いしましょうカ」
 リムネラも楽しそうに頷くと、チューダも嬉しそうに笑うのであった。

リプレイ本文


 チューダの出した提案。
 服を着たいという申し出。
(……そうですね、普段は服を着ていない……わけですし。王冠とマントは、今もうあるわけですから……それに合わせた、王衣っぽいものが、よい……ですかね? それこそ、中世ヨーロッパ風の)
 そう考えたのは、素直に「チューダの特別な日に着る服」を考える真面目な探求者・天央 観智(ka0896)である。今回の依頼には以前にもチューダと関わりを持ったハンターも参加しており、逆に噂の幻獣王(自称)を見てやろうというワクワクドキドキを抱えて参加している人もあり、で、なかなかにカオスの予感が既にしていた。
 会場になっている辺境ユニオン・ガーディナには、噂を聞きつけた野次馬達が興味深そうにチューダの登場を待っている。
 そもそもチューダは大幻獣という、本来ならめったに人前に出てくることもない存在であり、それがガーディナ付近をひょいひょい歩いたりしているものだから、噂にならないはずがない。
 中身はともかく、見た目は非常に愛くるしいチューダであるから、ハンターからの人気も上々なわけで、そうなると見た目にころっとだまされる一般人も多く、チューダはそんなわけで人気も上々、見物人もハンターばかりではないという状態になっていたのだった。
 そんなガーディナの盛況ぶりを見て、クスクスと笑うのはユニオンリーダーのリムネラである。
「ユニオンは普段、ナカナカ普通のヒトは来ないデス、から……これも、チューダの人気のオカゲ、デスね」
「当たり前なのであります! 我輩の愛くるしいポートレートの数々が一部で取引されているのも、我輩は知っているのでありますよ!」
 確かに、チューダのポートレートは人気がある、らしい。
 にしても、今回集まったハンターたちは、それぞれ個性抜群の服を用意してくれた。
 さあ、はじめよう。
 イッツ・ショウ・タイム!


 まずチューダは、観智の提案した服を纏って出てくる。彼は裁縫が得意ではないので、資料を基に型紙をおこし、仕立て屋に頼んだのである。
(特別な一品というのなら、……やっぱり専門の人に頼むのが良いですしね)
 彼が提案したのはロングチュニックとダルマティカからなる、古代から中世ヨーロッパの、典型的な王様風衣装。腰にはベルトの代わりに、布帯を巻いている。
「これは、チューダさんのマントや王冠をイメージして、お願いしたんです。リアルブルーの古い時代の王様のコスチュームなんですよ」
 そうチューダに言ってやると、チューダは嬉しそうに眼を輝かせる。
「やはり我輩には王の品格が必要でありますからな!」
 ふんぞり返るチューダに、思わずくすくすと観智も微笑む。
「古い時代の衣装とはいっても、逆に絵本なんかではスタンダートですからね。ああ、ダルマティカって言うのはこの袖口の広いチュニック状の服で……オレンジ色がよく似合ってますね、刺繍も頼んで入れて貰ったんですが、豪華な感じに仕上がってます。ロングチュニックは下着でもあるんですよ、裾が足首くらいまである、長袖で……配色もいいですね。布帯にも刺繍を入れて貰ったんですけど、ダルマティカとよく合ってます」
 マントの赤を映えさせるような色合いの服装。チューダはマシンガンのようにまくし立てる観智の説明の意味を理解しきっているかも怪しいが、それでも考えてくれたからこその衣装なのがよく伝わってきて、思わず笑顔を浮かべた。


 『王様の服』で正統派なロングチュニックを持ち出した観智と似たような発想をしたのは鳳城 錬介(ka6053)。名前以外の全ての記憶を失っていた鬼の青年は、それでも今は前へ向かってゆっくりと、穏やかな一歩を踏み出している。
(チューダ様ならなにを着ても可愛い……いや、お似合いなのでしょうが、さて)
 彼の知識が導いた答えは、古代ローマ風の装束だった。
「これはリアルブルーにかつて存在したという国の皇帝の服装をイメージしてみたんです。少しの布の加工と縫い合わせ程度だったので、難しくはありませんでした……勿論、本職の方がやれば、更に素敵なできばえなのでしょうが」
 照れくさそうに微笑む錬介は、見ていてもなかなか微笑ましい。
 その服装はシンプルな白いチュニックの上に、赤紫の布に金色の縁取りをした一枚布――トガを巻き付けるという伝統的なスタイル。絢爛豪華というわけではないのだが、昔の王様が着ていたという服ならチューダにも似合うのではないかという発想からの服装だった。
「だって、チューダ様は幻獣王ですしね!」
 ほのぼのとそう言われると、チューダも僅かに照れてしまう。ひげをそよがせながら、
「そ、そうでありますか? そうでありましょうとも!」
 などと照れくさそうに、けれど嬉しそうに応じている。
「他の皆さんのも素敵ですね……やっぱり王様はなにを着ても似合うと思います。可愛らしいので」
 その言葉に一層、嬉しそうに頷くチューダなのだった。


「リムネラ、チューダ様、久しぶりです」
 丁寧な挨拶をしたのはエルバッハ・リオン(ka2434)。まずはふにふにとチューダの身体を触って確認するが、そこで冷たい一言。
「チューダ様、太りましたね?」
「そ、そんなことはないのであります! もしそうだとしたら、皆の幸せが我輩の幸せ、つまり幸せ太り――」
 しかしその言葉は遮られた。エルバッハによって。
「あまり太られますと、物理的にお肉をもぎ取りますよ?」
 その声はドスがきいていて、見た目通りの少女のものではとうていない。まあ、彼女からしてみれば、これはあくまで警告なのだが。
 そんな彼女がこしらえたのは――まさかの、チューダ着ぐるみである。見た目の愛らしさは勿論再現してあるが、それだけではない。
 気休め程度ではあるが、万が一チューダが戦闘に巻き込まれた時のことを想定しての、いわばボディスーツなのだ。
 皮の部分は出来る限り摩擦係数の高い革素材を。
 着ぐるみ内部の素材も、摩擦係数と弾力性の高い素材を選んでいる。
 摩擦係数は刃物が深く刺さらないように、弾力性の方は衝撃を吸収しやすいように。
 本人曰くそれなりの自腹も切っているが、そこまでしてこの衣装――というか全身鎧的なものを作ったのは、チューダに対する愛情のようなもの。
「自堕落なところこそどうかとは思いますが、それでも死んで欲しいとは思いませんし……それに、本当に戦死なんかしたら、皆さんの士気などにも影響は出るでしょう。それを防ぐ為の、身体を守る為の、特別な一品です。どうぞ大切にして下さい」
 普段冷静で感情を表に出すこともそれほど多くない(?)エルバッハの言葉に、チューダは感動で涙を流している。
「我輩のためを思ってくれたのでありますなあ……はっ、これが噂のつんでれ、と言う奴でありましょうか?」
 そう言うわけではなさそうだが、勝手に誤解するチューダはそれはそれで可愛いのだった。


 そんなエルバッハとは似て非なるコンセプトだったのは、穂積 智里(ka6819)、性格は一つことに集中すると寝食も忘れてしまうことがままあるというタイプ。普段はおおざっぱでおっとりしているように見えるのだが。
「特別な衣装……うーん、それってコスプレでしょうか?」
 リアルブルー出身で、異世界転生や恋愛ものの活字中毒者である智里にとって、『コスプレ』という単語はそう縁遠いものではない。ライトノベル一般がアニメーション化されやすいリアルブルーでは、小説のキャラクターを模したコスプレもはやっているのである。
 チューダの体型を一通り調べてから既製品の動物の服や人形の服をアレンジ出来ないか考えたり、とりあえず量を作ることを考えているようだ。
 とくに参考になるのは、ソサエティで販売している中に時々紛れている『まるごと』シリーズ。いわゆる着ぐるみである。と言っても作り方はシンプルで、チューダの身体に合うサイズのぬいぐるみの背中から中身を抜き、微調整で再度わた詰めしたりフェルトでデコレーションした上で、顔を出せる穴をつけたというものだ。背中にはファスナーをつけて脱着しやすくしているし、既製品に同様のものがある場合はあえて『チューダ専用』とつけ、商標利用を適度に誤魔化しているというあたり、頭がいいというかなんというか。
 たとえば、リスのぬいぐるみを使えば、『まるごとチューダ』。アメフトボールのようなぬいぐるみを作ってこしえらる『まるごとナッツ』。ほかにも『まるごと魔法少女』『まるごとぜんら-チューダ専用』『まるごとデュミナス-チューダ専用機』『まるごとリーリー』『まるごとイェジド』『まるごとユグディラ-チューダ専用』、『まるごとユキウサギ』等など。
 これらを見た、そして身につけたチューダはもう目をきらきらと輝かせる。
「これはすごいのであります! 大幻獣の我輩が他の幻獣の姿になったり、機械になったり出来るのでありますな!」
 もっとも着ぐるみだし、防御能力はほぼ皆無だけれど。
 それでも嬉しそうなチューダは、コスプレに興味を持ったのかも知れない。
「あと、こんなのもちゃんと用意したんですよ?」
 智里がさしだしたのは、人形の服に布を足しましてチューダでも着られるように工夫を凝らした燕尾服っぽい上下。レトロで可愛い、という感じである。こんなお人形があったらきっと大受けしそうだ。
「我輩、嬉しいのであります……!」
 感動しているチューダ。ワードローブが一気に増えて、本当に嬉しそうだった。


「チューダを着せ替える? あたしが絶対楽しいじゃない、そんなの!」
 嬉しそうに服を用意してきたのは札抜 シロ(ka6328)、カードマジックを得意とする手品師である。そして、目立ちたがり屋だったりもするが、まあこれは普段は猫を被っているのであまり気付かれていない。
 それが、チューダを着せ替えるという依頼だけで飛びついてきたのも、チューダのプリティでキャッチィな感じが舞台映えしそうだという発想からだった。あわよくば手品のアシスタントにしたいと言うくらいだから、かなりのものである。
「やっぱりね、王様たるもの、紳士でもなければいけないの! その為には、やっぱり服装からなの!」
 普段のシロのアシスタントは彼女のユニットであるユキウサギだが、そのユキウサギにも着せているような紳士服一式が、シロの用意した服装だ。細々した部分も手先が器用なのだろう、綺麗に縫製されている。
 具体的に言えば、白いシャツの上から黒の燕尾服、首もとの蝶ネクタイ。頭にはシルクハットで、モノクルを添える。
「なるほど、先ほどの智里の衣装にも似ているでありますが、更に本格的なのでありますな!」
「何しろ特別な服だからね! どう特別かというと、晴れの舞台に立つための衣装でも在るわけなんだから、飛びっきりの特別なの!」
 そう言って嬉しそうに笑うシロは、チューダの手をそっととる。幻獣王をエスコートしながら、シロはにっこり笑って手を振って見せた。


「ところで、はだかの王様、というものを知らなかったので……童話を読んでみたのですが」
 そう言って首をかしげるのはオートマトンのフィロ(ka6966)。知識欲が旺盛――というか、最早強迫観念に近いレベルで存在し、はだかの王様という話を知らなかった彼女はまずその絵本を読んだらしい。そして彼女の導き出した結論は。
「見えない服、であればいいのでしょうか……?」
 非常に、非常に、斜め上であった。

 ご主人様――依頼人のことを彼女はこう呼ぶので、今回のご主人様はチューダである――の採寸を済ませ、用意したのは厚手のビニール。それを丁寧に切り、温度の加減を気をつけながら、はんだごてで接着していく。
 そうやって作り上げたのが、見えるけれど見えない服――ビニール製のシャツとズボン、そしてマントであった。
 ある意味近未来的とも言えるそのスタイルは、チューダも興奮させる。
「リアルブルーの物語に出てきそうなものでありますな! こちらはなにで作っているのでありますか?」
 チューダが尋ねたのはもう一つの衣装。同じようにシャツとズボンとマントなのだが、光の加減で見える色合いなどが変わってくる、不思議な質感だ。
「これは色つきのパラフィン紙を幾重にも重ねて、接着剤で止めて作成したものです。舞台衣装として、これなら透ける色も変わりますし、最後に破るなどのパフォーマンスも可能です。イベントなどに着ていくものとしてこういうものも如何かと思いましたが、どうでしょうか、ご主人様」
「光の加減で色合いが変わるのは、とても面白いでありますな! 確かに特別な感じがするのであります!」
 チューダも気に入った様子で、不思議な近未来的な服を興味深げに見つめているのだった。


 ――さて。
 これらの中でチューダが気に入ったものはどれかというと――
 智里のものと、エルバッハのものだった。二人ともベースは着ぐるみだが、可愛らしさを追求しまくった智里のものと、もしもの時のボディスーツ代わりになるエルバッハのものでは、やはりコンセプトはだいぶ異なる。しかしこの幻獣王、自分が可愛いのを自覚しているからだろうか、可愛さメインの着ぐるみを前面に押し出した二人を優秀賞として表彰したのだった。

 チューダがこれを身につけて公に登場するのは、一体いつだろう?
 それも含めて、楽しみが増えるハンター一同、そしてチューダなのだった。

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MVP一覧

  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオンka2434
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里ka6819

重体一覧

参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • イッツァショータイム!
    札抜 シロ(ka6328
    人間(蒼)|16才|女性|符術師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/18 14:02:30