天翔ける剣機

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/23 15:00
完成日
2017/10/05 20:48

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 最近、歪虚が増えている。とはハンターオフィスのある職員の言葉だ。
 元々帝国では魔法公害やらの影響で雑魔の数は多い方だった。加えて、歪虚勢力との戦いも激化しているということを考えると、別段不思議なことではないように思えた。
 ただ、帝国軍の方でも、歪虚が増えているというのは自覚していた。具体的には……空を飛ぶ歪虚。
 奴らは、何かを探すように空を飛び、村々を脅かしていた。
 こういった動きの原因として考えられることが一つある。
 それは……精霊だ。
 帝国が精霊を保護しようとしているのと同じように、歪虚も精霊を狙っているのではないか。
 事件が起きたのはそんなことを人々が考えていた時だった。


 ハンターオフィスに通報が入った。大型の歪虚が空を飛んでいくのを見た、と。
 帝国軍にももちろん連絡はいっているのだが、事は緊急を要する。
 そこで、オフィスにいるハンターが緊急で招集され、現地に派遣されることになった。
 空戦の用意を整えたハンターたちは、現地で情報を収集した。それによると、歪虚は何かを追いかけるように飛んでいったということだ。
 ただの鳥を歪虚がわざわざ追いかけるとは思えないし、恐らくは何らかの精霊なのだろう。
 ハンターたちは、すぐにその歪虚を追いかけ、やがて雲の切れ間にその姿を見た。
 剣を模した尾を持ち、腐食した首と、機械化された首。双頭を持つ竜。
 帝国に身を置く人間であれば目にする機会も多い歪虚……剣機リンドヴルムを捉えたハンターたちは、すぐさま攻撃に移った。このような歪虚を、帝国の空にはびこらせるわけにはいかなかったのだ。

リプレイ本文


 依頼を受けたハンターたちは飛行していく剣機を追撃。視界にその姿を捉えていた。
「ふふ、心が躍るな……!」
 呟く鞍馬 真(ka5819)。経験の浅い空戦だ。加えて相手は強敵。状況は決して易しいものではない。
 そんな状況でも愉しいと思えるのは、きっと飛ぶことが好きだから……そして、このワイバーン、カートゥルとの共闘も。
「ホムラ、頼りにしてるぜ」
 ヴァイス(ka0364)は騎乗するグリフォン、ホムラにそう言った。首から上の純白の羽毛。それに対し体毛は深紅の毛並みを持つのが特徴なホムラは、重装化されておりやや鈍重にも見えた。
(まぁそこは技術で補うとしよう)
 ホムラはフライングファイトにより一気に加速し、攻撃態勢に移行する。
 その先を進むのはサイドワインダーを使用したボルディア・コンフラムス(ka0796)。やるべきことは決まっている。だが、それなりの距離まで接近しないと使えない。
(何ができて、何ができないのか、試金石になってもらうぜ、剣機!)
「おっと、決め手となる術者を先に行かせるわけにもいかないな」
 真もサイドワインダーを使用して追従。追い越しさらにその先へと。
「初の空戦、風を司る巫女としては負けられませんね」
 やや遅れて夜桜 奏音(ka5754)とワイバーン、ボレアスが追う。奏音は風の精霊を信仰する部族の出身だ。そういった身の上からか、やはり空戦は特別なものなのかもしれない。
(そこそこ慣れてきたリンドヴルム戦とはいえ、空対空戦は初めてか……)
 だが、と藤堂研司(ka0569)は気を取り直す。ここで後れを取っていたら、大昔の先輩方に顔向けできないと、その戦意を高ぶらせる。
「行こうぜ、竜葵! 龍盟の戦士の戦いぶり、思い知らせてやろう!」
 研司にこたえるように蒼のワイバーン、竜葵は声を上げ飛ぶ。目指すのは敵下方。空中の高低差を活かしていく作戦だ。
 剣機は範囲攻撃が得意。これははっきりしている。ならば、被害を少なくするため、逃さないためにも包囲は妥当だ。
「この空で歪虚の好きにはさせやしない! 空の平和も精霊も、ざくろとJ9が護る!」
 そう意気込む時音 ざくろ(ka1250)はグリフォンの蒼海熱風『J9』とともにやや上を目指す。こちらは敵の上を取って戦うつもりのようだ。
「雲の影響はさして無し……日を遮ってくれる分目にも優しそうね……でもその分、切れ目から不意に出た日光には注意が必要、と」
 天候を肌で感じ取りながら、ドゥアル(ka3746)が呟く。こちらも研司の竜葵と同じく蒼のワイバーン、ソンノに乗っている。そんなドゥアルからは怒りのような感情が感じられる。それはもちろん歪虚に対してのものだ。
(わたくしの空中睡眠の邪魔をする刺客を送り込んでくるなんて……!)
 ……どうも、そのベクトルは他と違うような気がするが、とにかく倒そうというやる気はあるのだから良しとすべきだろう。
「なかなか重いわね……さすがオイリアンテ」
 マリィア・バルデス(ka5848)が呟いたのは銃の名前だ。大型魔導銃オイリアンテシリーズの一つ。その射程は非常に長い。これならかなりの距離から攻撃できる。尤も、最大射程からの攻撃であっても空戦では案外容易に詰められたりするのだから、その点警戒は必要だろう。
「行くわよ、asa tirano……貴方の働きに期待するわ」


 先制の一打を放ったのはマリィア。射程の優位性は大きい。
「asa tirano、貴方は常にあの剣機の右側を飛びなさい。私やオイリアンテが落ちないよう、常に戦闘中は左側を少し下げるの……」
 その指示に従いワイバーン、asa tiranoは飛び、その射線は剣機へと向いた。
「そう、それで上から撃ちおろせる。空戦の強みを捨てないために、貴方にも頑張ってもらうわ」
 そういってマリィアは目標へ向けて制圧射撃を使用。うまくいけば序盤から有利を取れる。とはいえ、最大射程からの攻撃、それも空戦だ。
「……効果は無し、か」
 攻撃は外れたようだ。敵は完全にこちらを向いている。
「さて、敵はどう動いてくるのかしら」
 敵の行動を見てから動くことで、敵からのダメージへの対処をしやすくする。そういう方針で動いていたドゥアルは、敵の行動を監視する。
「……口を開いて……これは!」
 すぐさま、ソンノに回避行動横指示。距離には余裕がある。
「着装、マテリアルアーマー!」
 ざくろも反応が早かった。マテリアルアーマーにより防御を固める。とはいえ、その効果はざくろだけのもので、J9には影響がない。射線からはきっちり外れるように進路を取る。
「撃ってくるぞ!」
 研司が注意を飛ばす。EEEで妨害することも出来なくはないが……
「大丈夫だ! 早くポジションにつけ!
 声をあげたのはヴァイス。下方に向かった研司は恐らく狙われていない。直進してくる集団を狙っての攻撃のはずだ。
 放たれる機導砲。光の奔流がハンターたちを襲う。
「さて、あれは貰えない! わかってるなホムラ!」
 ヴァイスの言葉にホムラは言われるまでも無いと翼を広げる。そのまま大きく羽ばたくことで位置をずらし、躱す。
「かわせ!」
 ボルディアも一直線に接近せず、まずは射線を離れるように指示。
「止まりません。このまま接近しますよ」
 奏音はボレアスの腹を通過していく光線の方に向けるように横転。そのまま軸をずらしながら一回転し、元の態勢へと移行する。いわゆるバレルロールというやつだ。
「さすがは風の巫女……だが、カートゥルも風の名を持つワイバーンだ」
 真。こちらもバレルロールを使用。カートゥルは鋭い軌道で機導砲を回避し、そのまま……こちらは機械首の方を狙うようだ。
(後衛、術者を狙わせるわけにはいかない。ゾンビ首を狙う人も多そうだし、私はこちらの注意を引くのが良いだろうな)
 接近するのは危険な行為ではあるが、それを臆せずできることに彼らの強さがあるだろう。付与されたソウルエッジにより、血色の魔導剣が淡く輝いたように見えた。


「もう一度行くわ。飛行距離の維持、忘れないでねasa tirano」
 クイックリロードにより全弾すぐさまリロードしたマリィアは、再度制圧射撃を使用。効果は……見られない。
 マリィアは心中で舌打ちをする。地上でなら間違いなく命中していたであろう攻撃も、空戦では絶対とはならないということだろう。
 ヴァイスは再度ホムラにフライングファイトを使用させて接近。
「周囲は俺が確認している。臆せず飛び込め」
 2頭を持つ敵の1頭に攻撃を仕掛ければ、おのずともう片方から攻撃される可能性が残る。だが、それをフォローしつつホムラに声をかける。
 その言葉に奮起したのかは分からないが、先ほどよりさらに鋭く、ホムラは突っ込む。そのまま、ヴァイスはライトニングボルトを使用して攻撃していく。
 奏音は剣機側面に位置。味方の攻撃により隙ができたところを見計らって進行方向を変更、ゾンビ頭を狙う。
 ボレアスの身体を横に倒しつつ、五色光符陣をゾンビ頭に使用。
「そのまま回って!」
 指示通りボレアスはらせん状の機動を取り離脱と上昇を同時に行う。見事な一撃離脱といえるだろう。
 研司はタイミングを計る。接近した味方に対し攻撃が集中するのは必然といえる。そのための位置取り、そのための自分だ。
「ここからは常時シャープシューティングで行く。移動は任せるぞ、竜葵!」
 そういって研司は射撃に集中する。
 研司とは逆、敵の上方を取っているのはざくろだ。
「J9、まずはゾンビ頭の方を狙っていくよ」
 ざくろの方もゾンビ頭狙い。毒のブレスにより与えられる毒が不安なのか……いや、やはり弱点がはっきりしているというのが大きいのかもしれない。
「二つの頭もろとも燃え上がれ……拡散ヒートレイだ!」
 ざくろの放つ拡散ヒートレイ。上方から、身体全体を巻き込むように放たれる。
 そのタイミングに合わせ、下方からも攻撃。研司の凍み矢弾だ。射角はギリギリだったが、なんとか命中。敵の行動阻害に特化した一射だ。だが……影響は見られない。
「効かなければ、何度でも打ち込めばいいさ」
「その調子……わたくし達も息があってきたものね」
 剣機へ攻撃を仕掛ける面々。その様子を離れた位置からドゥアルが見つめる。支援役がそうそうやられるわけにはいかない。そのためにもある程度の距離を取って戦うことが必要だった。もちろん、いざとなれば接近して回復に向かうつもりではあるが……
(今のところ、その必要はないかもしれないわね)
 ドゥアルが心中で呟いたように、戦況はハンターたち有利で推移していた。
「その攻撃……もう一度撃たせるわけにはいかない!」
 口を開き、先ほどの機導砲を撃とうとした機械首。それに対し、真は直上からカートゥルを降下させる。平時は穏やかで……しかし、戦時であれば果敢に戦う若きワイバーンは、真の指示に過たず従う。そのまま真は勢いに乗せてすれ違いざまに渾身撃を叩き込む。
 これは効いたようだ。悲鳴のような声を上げる剣機。
「よし、いい感じだな」
 味方が接近し、攻撃を仕掛けているお陰で、ボルディアへの注意はうまくそらされていた。この機を逃すわけにはいかない。
「さぁて……素敵な空の旅へと洒落込もうぜ?」
 再びサイドワインダーを使用。一気に間合いを詰める。
「エスコートは任せな!」
 射程に入ったところでボルディアは炎檻を使用。幾条もの炎鎖の幻影が、剣機を絡み取り……拘束する。
「よし、うまくはまったな」
 手ごたえはあった。炎檻は間違いなく成功しただろう。
 となると、敵は落ちてくる。そう考えボルディアは距離を取る。移動を阻害する効果のある炎檻ならば、飛行態勢を維持できず墜落を促すことができるはずだ。
 落ちてきたところを攻撃して撃破する考えのようだ。
「……」
 その様子を、遠距離からマリィアは無言で見つめている。集中しているのだ。
 再度制圧射撃を撃つこともできたが、それでは妨害射撃のために割く弾がなくなる。接近したボルディアを守るためには必要なことだった。
「いいぞ……そのまま距離を維持してくれ」
 研司も考えとしては同じ。EEEによる妨害で、万が一敵が反撃してきた場合それを防ぐ算段。
「あっちはうまくいったみたいだね。このまま上から攻撃して落としてやろう」
 墜落するのを待つ必要はない。拡散ヒートレイでの攻撃をざくろは継続していく。
 落ちようが落ちまいが、やることは変わらない。それは敵を倒すということだ。
「こちらはこのままゾンビ頭を狙っていく。支援頼むぞ」
 ヴァイスはホムラに接近を促しながら、継続してライトニングボルトを使用していく。巨体に対して貫通性のある魔法は高い効果を示している。
「動きが鈍くなったのは間違いない。ここで使う。ぶつからないように注意してくれ」
 真は剣心一如を使用。そのままカートゥルに接近を任せ、刺突一閃を使用。
 奏音は再度五色光符陣を使用。その後一度距離を取る。墜落した着地点を狙っての地縛符を考えていたため、墜落に巻き込まれないようにするためだ。
「……落ちるかと思ったのだけど、案外持つものね」
 だが、ドゥアルが呟いたように、剣機は意外と落ちない。どころか、多少高度が下がった程度で飛行状態を維持しているように見える。
「一生懸命翼をバタつかせていたみたいだけど、あれで飛行状態を無理やり保っているといったところみたいね」


「なるほど。羽ばたくことで態勢を維持してるわけか。ふーん」
 ドゥアルの言葉はトランシーバーを通じボルディアにも届いた。だが、関係ないといった表情。
(実際、炎鎖の幻影は消えていない。まだ相手の移動を制限しているのに変わりはないからな)
 つまり、一時的に戦闘行動が可能な状態に復帰しても、また落下するだけだ。もちろん、そうなったら再び飛行状態を維持しようとするのだろうが、その状態ははっきり言ってただの的だ。
「落とすのは難しくな……っ!」
 不意に、強烈な叫びが響く。剣機を中心に発せられた咆哮は魔力が込められているようで、特に騎乗するワイバーンやグリフォンに影響を及ぼす。
「大丈夫か!?」
 ボルディアはすぐさまトランスキュアを使用。ワイバーンの感じた恐怖感がそのままその身にふりかかり、体をすくませる。
 そして、そのタイミングを剣機は見逃さなかった。剣の尾が振り下ろされる。
「まずい!」
 だが、その剣の尾の軌道が1発の銃弾でそれる。マリィアの妨害射撃だ。
「ここで外したら目も当てられなかったわね」
「いいタイミングの妨害射撃だ……よし、竜葵。態勢を維持してくれ」
 それを見ていた研司はゾンビ首の方へ狙いをつける。射撃中心だったため咆哮の影響は無い。竜葵は問題なく飛行してくれている。
(次はやらせない……)
 再度の咆哮を行わせないように、口を開くそぶりを見せた瞬間にEEEを使用し行動を妨害する。
 先の咆哮は他の仲間にも影響した。だが、対処はそれぞれ冷静に行われる。
「ちっ、面倒な……やれるなホムラ!」
 ヴァイスはホムラに姿勢制御をさせて状態を回復。
「……よし。落とし前はつけてやらないと……な!」
 そこから反撃のライトニングボルトを打ち込んでいく。この時、同時にヴァイスは次の攻撃を見据え灯火も使用。武器があたたかなオーラを纏う。
「堕ちなかったのは想定外だが、問題は無い」
「落ち着いて。姿勢を立て直すんだ」
 J9に姿勢制御をおこなわせながら、デルタレイをざくろは打ち込んでいく。ホバリングのお陰で落ちたりすることはない。
「っ! 持たせるのよボレアス!」
 咆哮による影響を最も受けたのは奏音のボレアスだっただろう。アクロバット飛行による空戦は確かに敵からの攻撃の的になりづらいが、その分制御がしづらい。
 真も同様だ。こちらは積極的に接近戦をしかけていたのが仇となる。
「……仕事ね。もう少し高度を落として、ヒールの範囲までは少し遠いわ」
 ドゥアルの指示に従いソンノが動く。この状態で攻撃を受けたら二人は危険だ。


 再度態勢を崩す剣機。だが、同時に剣機を縛っていた鎖も消える。
「態勢を崩したところを追撃されたら危険でしたね」
 飛翔の翼を使用して態勢を立て直した奏音。すぐに飛行速度を上げ、再度の五色光符陣を使用。この攻撃で、ゾンビ頭の方がだらりと力を無くす。同時に、腐肉がはがれていくように崩れ落ちしいく。
 だが、全体としての機能はもちろん生きている。首が一つ減ったことで軽くなり、飛行能力も高くなったように見える。
「さっきはよくもやってくれたな。お返しはさせてもらう!」
 サイドワインダーで加速したカートゥル。そこから再度真が渾身撃を使用する。そして、即時離脱。頭が一つ減った分、ここからの攻撃はさらにこの頭へと集中するだろう。その時、味方の攻撃を妨げてはならないという判断だ。
「ホムラ、突っ込むぞ!」
 ヴァイスも同じ考えを持ったか、狙いは敵胸部。機関砲を狙うつもりだ。
 纏うグレンのオーラは先ほどよりもその密度を増し、それは激しく燃え盛る炎のように。その炎はやがて灯火のように輝く武器へと伝播し、黒い炎へと変わる。烈火から、黒炎の合わせ技だ。
「喰らえぇぇっ!」
 これを、全力で狙いどころへ打ち込んだ。機関砲は破壊され、そのダメージはそのまま本体へと伝播する。
 接近したボルディアは、炎檻……ではなく、獣機銃で攻撃させる。決着は近い。となれば攻撃によるダメージを与えた方がいいという判断。
「……お前、俺より銃使うのがうまいってどうなんだよ……ちょっと凹むぞ」
 ダメージを受けたからか、がくんと態勢を崩す剣機。いや、ただダメージを受けたというわけではない。
 下方からは研司が攻撃している。
「さぁ、もう一発! 竜葵、追え!」
 凍み矢弾。その狙いは翼だ。翼を打ち抜く攻撃により飛行状態の維持が困難になり、結果動きが鈍くなっているようだ。
「また動きが鈍くなったね。このまま攻撃していこう。3WAYレーザーロックオン!」
 直感視を使用していたマリィアはこの状態なら味方も攻撃されないと判断。
(といっても、さすがにこの距離ではハウンドバレットは当たらない。制圧射撃も味方が攻勢をかけているこの状況じゃ却って邪魔になる、か……)
 結果、単発攻撃をマリィアは選択。しかも、狙いはあくまで胴体部。命中を重視する。
「墜落しているという感じじゃないけど、高度が落ちているのは間違いなさそうね」
 距離を維持しつつ全体を見るドゥアル。恐らく高度を維持する力がなくなってきているのだろう。
 ドゥアルは接近しつつ、最大距離からヒールを使用。黒炎により生命力を減らしたヴァイスを治療。そのまま距離を維持しつつ回復手として立ち回る。
 そのころ、ドゥアルと同じ感想を抱いていたマリィアは徐々に降下。
「このままだとポイントが大きくずれるわね。敵の上は維持しつつ、もっと距離を詰めるわよ」
「よし、今だね。J9、ここで止めをさすよ。正面に回って!」
 フライングファイトを使用して機動力を高めたJ9が敵正面、丁度機械頭の前に。だが、剣機も黙ってはいない。口を大きく開け、機導砲を撃ち込もうとする。
「させません……これで少しは当たりやすくなったはずです」
 再度接近をかけた奏音が桜幕符を使用。広がる桜吹雪がその視界をふさぎ、行動を抑制する。
「ここだ! 貫き通し芯まで凍てつけ! フリージングレイ!!」
 ざくろのフリージングレイが頭から体まで打ち抜く。
「少しは攻撃させてやらないとな。狼炎を使ってくれ」
 胴体部には真がカートゥルに狼炎で攻撃させる。
 同様にボルディアはファイアブレスを使用させ攻撃。
「畳み込んでいくぜ!」
 ヴァイスは剣機を見下ろしながらライトニングボルトを使用。高度が落ちつつある剣機に対し近接攻撃をしかけるよりは、射撃や魔法攻撃を行っていくのが高度調節の面から見ても適切だった。
「もういい、竜葵。ここまでだ」
 再度の凍み矢弾を使用すると、研司はそう指示を出した。力が抜け落下していく剣機に巻き込まれないように。


「これで分かったよね。空は歪虚のいて良い場所じゃないってことが!」
 落ちていく剣機にざくろがそう叫ぶ。それに合わせJ9も声を上げる。
 ただ墜落しているわけではない。体が崩れ消滅していく。
「終わったな」
 上に向けていた視線を下げていきながら、研司は呟いた。
「考えてた手の半分も実行せずじまいか。予想が多少外れたとはいえ……」
 炎檻による効果で墜落に持ち込めるかと思っていたが、そう上手くはいかなかった。だが、そうならなくとも剣機を圧倒出来ていたのは、やはり……
「こちらの能力が上だったということか。お疲れさま、竜葵」
 労うように、研司はそう竜葵に声をかけた。
「よくやったわ、asa tirano」
 その様子を遠くから確認したマリィアは、そう労いながらも戦いを思い返す。
(やはり最大距離から一方的に、というのは難しいのかもしれないわね)
 味方も強く、敵が一体であったからよかったのだが、姿勢安定のために武器を固定したのはやりすぎだったようにも思われる。仲間たちは縦横無尽に敵の周囲を飛び回り戦っていたが、それが逆になっていたら主火力の方向を固定したのは弱点に繋がっただろう。
「どうですか? 空で暴れた感想は」
 その問いに対しボレアスは雄たけびで答えた。
「そこまで時間はかからなかったわね」
 下方を双眼鏡で確認するドゥアル。ゾンビ体の部分はおそらく落下までに全て消えるだろうが、機械部分は残るものもあるかもしれない。
「人里がある感じじゃないけど、残骸の回収も兼ねてあとで落下地点に向かった方がいいかもしれないわね」
「了解したぜ。それじゃ、とりあえず報告も兼ねて町まで行くか」
「そうだな。受けたのはかすり傷程度だがちゃんと治療したいしな」
 ボルディアがそういって先導していき、真はじめハンター達も追従していく。
 こうして、戦いは終わった。巨大な剣機相手にハンターたちは一歩も引かず勝利を手にした。完勝と言っていいだろう。
 ただ……
「あれの目的は一体……」
 ヴァイスがふと呟いた。剣機が追っていたのは精霊だ。それを追って剣機……ひいては歪虚はなにをしようというのだろうか。
(今後も、空の動きには注意しないといけないわね)
 精霊について気をかけていたマリィアは心中で呟いた。

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  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ホムラ
    ホムラ(ka0364unit004
    ユニット|幻獣
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    リュウキ
    竜葵(ka0569unit003
    ユニット|幻獣
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    シャルラッハ(ka0796unit005
    ユニット|幻獣
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ソウカイネップウジェイナイン
    蒼海熱風『J9』(ka1250unit005
    ユニット|幻獣
  • 寝具は相棒
    ドゥアル(ka3746
    エルフ|27才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ソンノ
    ソンノ(ka3746unit001
    ユニット|幻獣
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    ボレアス
    ボレアス(ka5754unit002
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    カートゥル
    カートゥル(ka5819unit005
    ユニット|幻獣
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アーザ チラノ
    asa tirano(ka5848unit003
    ユニット|幻獣

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 空戦相談卓!
藤堂研司(ka0569
人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/09/23 10:34:16
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/18 22:34:33