• 転臨

【転臨】遺されし者達へ、先を征く者達へ

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
3~12人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/09/22 19:00
完成日
2017/10/11 09:36

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ふと、渺渺たる大海を思い出した。その向こうに、かつて男は確かに王都を見た。
 戦場以外の、最後の光景。決戦を前にした、何物でもない光景であった。

 憤怒の鎧巨人と化した元近衛騎士団長は、彼の王が座す神殿に立ち入ることが出来ない。だからこそ、彼にとっては"此処"こそが、決戦場である。記憶の蓋からかつての光景が溢れ出たのは、今が決戦前だからか……それとも、現在の騎士達と切り結んだから、だろうか。
 既に、傷は全て癒えた。切り落とされた裸腕もだ。万全の姿で、男は戦場に居る。
 ――当然だ。男は、そう在らんと欲したのだから。
 何物よりも疾く。勁く。硬く。鋭く――王の盾として、王の剣として、十全を果たさんと。

 ――そうで、なくては。あの時、王の"死体"を前に……………………。

「此処に居たか」
「我ガ、王……」
 いかにそれが小さかろうと。男がその声を聞き逃すことはない。すぐさま四足を折り、頭を垂れる。
 この身体を得た、数少ない不満が男の胸を染め上げた。アレクシウス・グラハム。彼の王を前にするには、男の身体は巨大に過ぎる。
「アーチボルト・ウェイスバーグ」
「ハ、っ……」
 この、不細工な声よ。化物の身に落ち、変容した口腔と喉で紡ぐ言葉を王に届けるのも、不敬ゆえに息が詰まる。
「喜べ、アーチボルト。我が盾、我が剣よ」
 ――決戦だ、と。王は告げた。
「…………」
 男の身体に、震えが走る。それは、男が誰にも話したことがない、核心を突く言葉だった。
「貴様は優れた騎士だった。あの戦場で、生き残る程度には」
「…………ソレ、は」
「その勇武、その生命。……此度こそ、余に捧げよ」
「………………ハ、ッ………………ッ!」
 頭を上げることができなかった。言葉を紡ぐことも、できなかった。
 ただ、男の胸の裡を染め上げるのは、歓喜だった。そして、それと同じだけの憤怒が、彼の心を焦がす。

 今度こそ、と。男は願う。
 今度こそ、己は、この生命の全てを賭して王の為に抗うのだ、と。




「アーチボルト・ウェイスバーグ前近衛隊隊長の攻略を、おまえらに任せろ、だと?」
「ああ」
 赤の隊の騎士、ジェフリー・ブラックバーン(kz0092)を前に、アカシラ(kz0146)は傲然と言い放つ。戦場で共に戦ったこともあり、知らぬ仲ではないが、思惑も聞かずに上役――ダンテ・バルカザール(kz0153)――に通すわけにもいかない。なにせ、ダンテはあの通りの為人である。その武勇と人格を快く思っているアカシラが彼にこう言えば、どう答えるだろうか。

『ウッシ、頼むぜ!』
 こうなる。これは、良くない。
 救いといえば、アカシラ自身もそれを理解していて、敢えて自分に話を持ってきているところであろう。空気が読める現場指揮官は得難いものだ。特に、赤の隊主導の戦場では。

「アカシラ隊だけですか? それとも黒の隊全員で――」
「アタシらと、ハンターだけでいい。アッチはアッチで仕事があるだろう?」
「……エリオット様は、なんと?」
「任せる、とさ」
 上役の話は通している、ということか。加えれば、エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)を納得させるに足る腹案――あるいは分析があるということだろう。
 騎士団、戦士団、それに王国貴族が揃った戦力を踏まえても――敵戦力の多くが詳細不明という巫山戯た戦場では――アーチボルトに過剰な戦力を充てる余裕はない。その点で言えば、歪虚アーチボルトの情報は唯一と言っていいほど精度が高い。さらに言えば、貴族たちの動向を踏まえればアーチボルトのような"前段"ではなく、本丸に殺到する可能性が高い。その意味でも、ジェフリーの心の天秤はすでに傾きつつあった。しかし、理性がそれを留めている。
「――聞かせてもらおう」
 と、そう言ったときのことだった。

「あ? ムズカシー顔して、何の話だ?」
 通りがかった、某バカ猿騎士のせいで、全ての目論見と体裁がご破産になった。



「やァ、相変わらず目立つナリだねえ」
「……姐御ォ、本当にやるンですかい」
「ったりまえじゃァないか。なんだい、アンタもそのナリで日和ってんのかい?」
 部下の鬼であるシシドの情けない声に対し、アカシラは剛毅な笑みを浮かべた。
「大一番んじゃあないか。笑いな。大手を振って戦場で立ち回れるんだ。そりゃ、東(アッチ)と西(コッチ)じゃァ勝手は違うけどねえ……」
 遠く、それを見た。盾を大地に突き立て、こちらを見下ろし戦端が開くのを待つ憤怒の巨人、アーチボルトの威容を。
「………………」
 暫くの間それを見つめていたアカシラは、何事かを小さく呟いて、振り返った。そこに居並ぶハンター達と、さらにその後方――ゴーレム達を眺め、頷く。
「……前回、アイツはビクともしなかった。大層立派なご略歴通りの戦闘上手に、見た目どおりのケダモノっぷりときた」
 けどね、と。アカシラは逆説で結んだ。
「どれだけ強くたって、彼処に居るのは哀れな亡霊さね。此処でキッチリ殺してやるのが人情ってやつさ。足掛かりはアンタたちのお仲間が掴んだモノ。だから、コイツだけは――」
 アーチボルトは何に怒り、憤怒に身を堕したのか。そのことが、前回の交戦からこちら、気になり続けていた。
 敵として現れた"自分たち"では、無い。それならば、憤怒の炎を顕にしたときの光景に、説明がつかない。あの時アーチボルトは、騎士を名乗ったハンターにも、そうでないハンターにも――アカシラにも、等しく攻撃の手を偏らせることはなかった。
 あの場にいた全ての敵が、アーチボルトの言う"王敵"にもかかわらず、それは彼の憤怒の対象ではなかった。
 では、歪虚か? 違うだろう。そうであったなら、衝動に任せてこの地に居たベリアルに襲いかかっていただろう。

 ――それが、意味することは。
 知らず、刀を掴む手に力が篭もる。何故なら――アカシラもまた、ああなっていたのかも知れないから。

「アンタ達の手で、ケリを付けてやろうじゃないか」








●目的
 【憤怒】の巨人、アーチボルトの撃破

●解説
 皆さんは黒羊神殿に至る戦場でアーチボルトへの対応を託されました。
 周囲の露払いは騎士/戦士団/貴族軍が行っており、原則アーチボルト単体との戦闘となります。
 開始地点は巨人から50Sq時点。同地点にゴーレムが配置されており、周囲の露払いといざという時の巨人への砲撃を担当。
 巨人周囲30Sq以上離れれば乱戦状態になっており身を隠すことを試みることは可能ですが、敵味方入り交じる戦場につき安全ではありません。
 アカシラからは二案、提示されています。

 一つは、真正面から打ち砕くか。
 もう一つは、正面を避けて打ち倒すか。(ゴーレムを移動させて側面から角度をつけて砲撃する、なども可能)
 どちらでも付き合うよ、とはアカシラの弁。

リプレイ本文


 こと戦場において、その道の正しさを保証してくれる者など、いない。

 必勝を期した上で気まぐれな天秤を僅かばかりでも傾けることができればと、ささやかなれども願いと祈りを捧げる者もいよう。得物に想いを込める者も、いよう。万全の準備として兵を、己を、武具を鍛え、万難を廃して戦場に臨む。それら全てが敵意の応酬の中で浪費され、すり潰されていき――その果てに残ったものの多寡が、勝利を定めるに足る唯一の指標だ。
 ヒトと、かつてヒトであったもの。その二つに横たわる奇妙な相似はそれを塗りつぶすほどの深い断絶によって無為となる。
 この場にたどり着くために支払われた金と鉄、血と屍に見合うものを求めて、兵は進む。

 ――決戦の時だった。



 遠く、凛然と佇む巨人を見据えて、レオン(ka5108)の瞳に強い光が篭った。
「……我、牙なき民の劔とならん!」
 不退転を示す決意の言葉に、後方に並び打ち合わせを進めていたアカシラの手勢たちが剛毅な笑みを零した。
 ――剣で語れというならば、そうしましょう。未熟でも、剣を持つ者として!
 胸中で炎の如く燃える戦意を隠すこともなく、開戦の時を待つ。
「とっても欲張りなんだわ」
 一同に随伴するゴーレムの、文字通りの岩肌を撫でていた雨音に微睡む玻璃草(ka4538)は、その機体の冷たさに心惹かれたか、頬を寄せ身体を預けながら、レオンと同じものを見て、そう言った。
「四つの脚は掠れる轍を踏みしめて。四つの腕は紡ぎ車の尻尾を掴み取ろうと大忙し」
 くすくすと、少女は嗤う。
「鱗仕立ての蜘蛛糸で編んだベッドに潜り込んでもはみ出ちゃうから、お腹いっぱい詰め込まれて、もう何処にも行けなくなっちゃったのね」
 彼女特有の言い回しを、努めて拾おうとするものはいない。開戦直前に、それだけの注意を払う精神的な余裕もないのもあるが――龍華 狼(ka4940)などはこれみよがしに盛大な溜め息を吐いた。前後左右、見渡す限り、狼の常識を置き去りにしている。彼がハンターになったころには、大型な機体と共に馬鹿げた巨躯を誇る武人と闘うことになろうなど考えもしなかった。加えて、ケレン味溢れる同道者にも思う所が無いでもない。
「はぁ……」
 奮い立つ、とは大凡逆の心の動きが、少年の胸の裡をしめていた。
「怪獣大戦争かよ……写真でも撮れば後で高値で売れるかな……」
 ともすれば刀以上に相棒とも言える懐のカメラに告げると、凍えきった心が少しだけ温まる心地がした。

 ―・―

「ったく、無茶を言うねぇ」
「そこは……悪ィとは思ってるよ」
「ハ。いいのさ。どのみち、ドコかで危ない橋を渡ることになるだろうしねぇ。それに……」
「あ?」
 作戦についての打ち合わせをしていたジャック・J・グリーヴ(ka1305)と、アカシラのやり取りである。この戦場を俯瞰すれば、大凡現実的ではない方策ではあった。だから、だろうか。何事かを言いかけたアカシラが、ジャックの予想よりも余裕を感じさせる口ぶりであったため、男は意表を突かれた。その為、ジャックはアカシラの言葉の続きを待っていたが。
「……や、なんでもないさね」
「オイ!」
「とにかく、この木偶たちはアタシらにとっちゃァ虎の子だ。それを残りッカスだけ返すような真似は、アタシらの"名"に関わる」
 アカシラは、その場にいるハンターたちを見回し――その中で、ひとりの少女に目を留めた。この場には柏木 千春(ka3061)も同席している。彼女自身はこの動きに直接関わるわけではないが、そのしわ寄せが有象無象の形でくることは自覚している。
 だから、彼女はただ、頷きを返すにとどめたが。
「承知の上って事さね。いいじゃあないか。アタシは、そーゆーのは嫌いじゃない」
「わっ……!」
 そのままアカシラは、千春の鎧を素手で殴りつける。加減はされていたとはいえ、鬼の怪力だ。小柄な千春はバランスを崩しかけるが、殴ったその手で千春の鎧を掴み直したアカシラは、そのまま拳を少女の眼前へと掲げた。
 千春が返したのは、僅かばかりの逡巡。
「キメてやろうじゃあないか」
「……はい」
 促すようなアカシラの言葉に微かな笑みを浮かべた少女は小さく、拳をあわせたのだった。


「……………………」
「どうした、ジャック」
 その光景を眺めて言葉を失っていたジャックに、クローディオ・シャール(ka0030)は言葉を投げた。自失するのは珍しくないが、唯一の友人に大禍が及ぶのは、見逃せない。
「ゆりも、わるくねえかもしれねえな……」
「百合?」
 クローディオは怪訝げに周りを見渡し、同じ視線の色のまま、ジャックを見やる。
「……流石に少しばかり季節が合わないだろう、それは」



 静かだ、と。レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は思った。戦場は、刻一刻とその熱を高めようとしている。厚く、広く伸びる戦力が前線を形成。呼応するように進みはじめた歪虚の陣営の中で一際目立つ巨人にも動きが見られた。盾を大地から抜き上げ、剣を構えて何事かを唱える。呼応するように、周囲から鬨の声が上がり、巨人から少しばかり距離を取るようにして騎士団たちへと突撃を開始。
 独り残った巨人は、孤独だった。すくなくともレイオスにはそう見えた。
「……へえ」
 しかし、だ。
 巨人は、"こちら"へと向かってきている。それが、わかった。だから。
「あんたを倒して示してやるさ。あんたと同じ――いや、あんたを超える王国の剣と盾だってな!」

 飛竜を駆るマッシュ・アクラシス(ka0771)は上空から戦線を俯瞰。高所からの情報量の多さは狙い通り。戦闘開始予想地点と敵の動きを見据えながら、ジャックたち別働隊に連絡を告げようとした、その時のことだった。
『事前情報どおり、大きくて硬くて逞しい……ですね……』
 届いたアシェ-ル(ka2983)からの無線に、ワイバーンが小さく喉を鳴らした。その首を撫でながら、孤兵と化した巨人を眺め、嘆息する。
「……はてさて、最早語るべくもなし。剣にも成れず、盾にも成れず。せめて無残であれば、と……」
 そこで、首を振った。胸に去来した何ものかを振り払うように。
「まあ、結構でしょう。オーダー通りに。絶えるのが宜しい。そういうものでしょう。我々は」



(……引き篭ってた昔の自分みたい……強固な殻に包み隠れて……)
 アシェールの呟きが、ほのかなため息とともに咲く。孤独な巨兵を見て、少しだけ心が翳る。スマートフォンをアカシラに渡した後、所定の位置に付いたアシェールは、相方のユグディラを魔導トライクの傍らに乗せて、その時を待っていた。
「……」
 ちら、と、視線を送った先で、堂々する叢雲 伊織(ka5091)が静かに、"敵"を見つめていた。冷え込んだ瞳が、やけに印象的で。
「……此処で、終わりにします」
 ――あなたは姉を、傷つけた。
 独語する伊織の声は、アシェールには聞こえるべくもない。けれどそれは、紛れもなく復讐者の瞳だった。



「参りましょうか!」
 米本 剛(ka0320)は愛機――アイゼンを駆り、往く。
 ハンター達のうち前線を構成するメンバーは、剛、クローディオ、レイオス、アイシュリング(ka2787)、アシェール、千春、狼、伊織、レオン。このうち、遊撃に回るのは狼のみ。加えて、アカシラ率いる鬼の手勢が露払いのためにこちらに同行している。残りはVolcanius側に付いた。
 こちらの面々は多くが機体、あるいは魔導バイクや馬に騎乗した結果、機動性は上乗せされているが、その中で、レオンだけは相方のピンク毛のユグディラと共に地上を進む。
「すみません、先にいってください……!」
 加えて、重装甲ゆえにレオンの歩みは並のハンターとくらべてもなお遅くなった。作戦全体に影響が及ぶことを危惧してレオンが先を促すと、それぞれに足並みを早め、剛機に速度を合わせる。
「前線にてお待ちしております!」
 ハンター界隈ではよくあることでもある。剛はそう言い、機体を進めた。
 ともあれ、だ。相対するのは自らの機体よりもなお巨大な、全身鎧の巨人。かつての、王の盾の姿を見やり、操縦する手に、力が篭もる。
「――かの方はかつて騎士であり我等の行く手を阻む強大な敵であり、壁」
 呟き、愛機に兵装を構えさせた。腹の底に、力がこもる。
「ならば我等は全力を以て此れに当たり……かの方を打ち破り押し通るのが『礼儀』であると自分は愚考します……行きますよ『アイゼン』っ!」

 詰まる距離。先手を取ったのはアーチボルト――のように思われた。四足が疾駆するなか、上体は安定した姿勢で弓を引く。
「……進め……っ!」
 レイオスはそれを見据えて、傲然と歯を剥いて嗤った。想定通りだ。後方から、砲音。レイオスが指示していたとおりに――既に後方において行かれている――愛機のVolcaniusが煙幕弾を連続発射。所定地点に落ちた砲弾から噴煙が上がり、忽ちレイオス達を呑み込んだ。Volcaniusには前進を指示している。戦闘をしている間に、命令可能な範囲まで追いつく筈だ。
 同時に、後方からクローディオのVolcanius、タスラムが炸裂弾を発射。距離200メートルの超長距離射撃をものともせず、砲弾がアーチボルトの巨体に的中。巨人は盾で受け流したが、衝撃――はたまた戸惑い故にか、足が鈍る。しかし、すぐに疾駆を再開した。
 見知らぬ兵器の存在に配慮してか、アーチボルトの動きに変化が見られる。直線に此方へと向かっていた機動が、ジグザグに不規則な様相を呈している。
「……ほう」
 それは、"煙幕から出たところで"目の当たりにしたクローディオにとっても、驚きだった。同機は初めての参戦であった。存外、器用に中てるものだ。使い出はありそうだが、足の遅さは如何ともしがたい。とまれ、一定の有効性を確認したうえで、愛馬を走らせる。
 ――そう。
 有効射程距離の都合上、ハンターたちは進まねばならない。すぐに煙幕の効果範囲から離れ、結果的に射線に身を晒すことになる。
『ぬ、っ……!』
 最初に狙われたのは、剛機。この戦場に最も巨大、かつアーチボルトにとっても不明な敵を"的"と定めたか。機動性に優れるアイゼンならばと、機体を加速させた剛であったが、
「――――っ、」
 アクティブスラスターを加えてもなお、矢はアイゼンの右腕に的中。想定以上の妙技――あるいは不運というべきか――に、コクピット内で剛は「見事!」と零した。
「剛! 矢を切り落とせ! オレたちからじゃ届かねえ!」
「応……!」
 剛は失念していたが、戦闘経験のあるレイオスの声に従って錬機剣を機動。マテリアルの光刃で機体に突き立ち、"今まさに自爆しようとしていた"歪虚の矢を焼き切った。二次被害は防げたが、的中となったことも相まって今の一撃だけで損害は中程度。かつては千春やアカシラ達が受けたという矢だと聞いていたが――そも、CAM以上の硬度を誇る彼女らであったが故、か。相応に痛手だ。
「治療はいりますか?」
「いえ、立ち位置でカバーできます。いざとなれば自分も回復しますので、今は温存を」
 足元から届いたリーリーに騎乗する千春の声に、剛は即座に応じた。千春にせよ、剛にせよ、治療を行えば足が遅くなる。このまま、一方的にアーチボルトの間合いで食いつぶされるのは下策だ。今は進軍を優先したい。
 届いた返事に、千春は側方へと視線を投げた。歪虚達に取り囲まれながら進む、金色の機体と、それに続く石造のゴーレム。
 先代の近衛隊長は"これ"を卑怯だと、罵るだろうか。
 ――少しでも、勝算の高い策をとる。それが、私の騎士としての覚悟。
 護るべきを、失わないために。冷酷でも、その手段を選ぶと、決めたのだ。
 いまの一撃で手応えを得たのか、アーチボルトは次々と剛機以外にも矢を放ちながら接近してくる。鬼たちの一団に届いた矢をアカシラが切り払い、アイシュリングに届きそうになる矢をユキウサギのマーニが防ぐ。
 距離、一〇〇。伊織が制圧射撃の矢を放つが、前回同様に正面からの攻撃はことごとくが盾に阻まれる。ダメージが通らなければ如何に覚醒者の矢といえどその異能を発揮するにはいたらず、アーチボルトの足と手は止まらなかった。とは言え、射手である伊織が現時点ですべきは側面への単騎駆けではなく、敵に"異変を察知させないこと"だ。他方、4本の手と武技を自在に操るアーチボルトは足を止めず、矢を放ちながら前進してくる。
 ――ここまでは、前回と似ている。けれど。
 負傷者がいないことを確認しながら、千春はアーチボルトの威容を見つめた。
「……その盾、切り崩してみせます」



「ち、ィ……! 一筋縄ではいかねェか!」
『アンタのソレが目立ち過ぎなンじゃねェか、金ピカ!!』
 機体を駆るジャックの愚痴に、同道する青鬼、シシドが吠え立てながら、得物の金槌で殺到しようとする騎兵を薙ぎ払っている。
『横からくる! 騎兵、5!』
「ら、ァ……ッ!」
 Volcanius部隊の一機の肩に乗っている猟撃士の鬼の声に即応したジャックは機体を挟み込む。この戦場ではまだVolcanius部隊そのものは一発も砲弾を見舞っていないことが奏功したか、騎兵たちは目立つ大物――ジャック機、ヘクトルへと狙いを定めた。執拗に足部を狙う敵兵を何とか大壁盾で捌き、殴打する。ヘクトルの兵装には限りがある。出来ることなら温存したいが、鬼たちも乱戦状態の戦場から殺到する敵への対応で此方まで手がまわらない。
 抜くか。Mハルバートを振るわんとした、その時だ。ぬらり、と。機体を駆け下りる影を知覚。敵の遊撃か、とジャックが肝を冷やした直後。
「ぐ、ぁ……ッ!」
 苦悶の声とともに、騎兵たちが落馬した。どうやら、味方の手によるものだったらしい。しかし、誰が?
「…………ちんたらしてる暇はねぇか」
 思考を切り捨て、悪ぃな、と口元で零してトドメを刺す。絶命し、消失していく兵士の残響から無理やりに視線を引き剥がし、見渡した。
 高い視界から見渡す戦場は阿鼻叫喚。これは――かつては、王国の民だった兵士たちとの戦だった。
 ――俺は、俺の信念のため、あんたと戦うぜ、アーチボルト。
 そのために、この"策"を完遂する。鼓舞すべく、機体の中から無線機へと叩き込む。
「未だ半分にも届いてねえぞ! シシド! 気合入れろ!」
『だったらそのクソ目立つソレを何とかしてから来いよクソ貴族!!!』
 ごもっとも、である。ジャックはごまかすように、「ウォォォォォオオオ!!」と咆哮し、足元に押し寄せる歩兵を蹴り上げた。

 ―・―

「――楽しいわ」
 Volcaniusとヘクトルの間をいったりきたり。フィリアは絹糸の如き髪を流しながら、微笑し、傘剣を地面に向けたままVolcaniusの肩から飛び降りた。その足元に攻撃を加えようとしていた兵士の脳天から突き刺すと、声も無く兵士は絶命。返り血ごと消えてなくなっていく兵には目もくれず、跳ねるようにVolcaniusの突起のあちらこちらを足掛かりに駆け上がる。
 すう、と深呼吸。むせ返るほどの死の気配に包まれた絶叫と咆哮、大きなお人形の駆動音に、罵倒の声。
 酸鼻な光景も、少女にとっては夢のような小旅行だった。だって、こんなにも憐れで哀れで、こんなにも楽しくて愉しい。
 さあさあと響く、彼女にだけ聞こえる雨音に耳を澄ませながら、少女は傘剣を開き、肩に置く。たしかな予感があった。最後に響くであろうそれ。この場で一番の雨音が、楽しみで仕方がない。
「…………もっと、雨音を聞かせて」
 頬を染めたフィリアは、疾駆する巨人を眺めながら、くすくすと嗤うのだった。



 マッシュは高空から周囲の戦場の動きをジャック達に伝えはするが、現状だと焼け石に水か。"悪目立ち"している兵器達の移動を完遂できるかどうかは、既にあちらの地力に託されてしまっている。ゆえに、上空にて待機するマッシュとワイバーンは、刻々と迫るアーチボルトの威容をやや下方に眺めながら、その動きに警戒を厳にしていた。
「いやはや、これはこれで中々、堪えますが……」
 前進する過程で、敵の航空戦力は此処にはいないことは明らかだった。その点は僥倖だったが、問題なのは、アーチボルトの弓術の冴えだ。空を往く利点は数多いが、欠点はその生存性ということをマッシュは重々理解していた。それゆえにアーチボルトの動向には留意し、緊張を強いられることになっている。
 しかし。
「――出番です。参りましょう」
 ハンターとアーチボルトの火線が交差。剛機の機関銃と砲弾といった、これまで体感したことがないであろう重火にアーチボルトの守りが益々硬められる。
 それを、待っていた。押し上げられていく前線と共にアーチボルトの側方へと飛行していきながら、頃合いを図って一息に降下。幻獣砲にしても、獣機銃にしても射程は弓のそれよりも劣る。なればこそ、と兜で遮られている視線に好機を定め急転換した後に急勾配をもって突撃した。降下の浮遊感に身を委ねながら、砲射のタイミングを図る、と。

 ぐらり、と。アーチボルトの視線と上体が、こちらへと転じた。肩口の裸腕は弓を引き、滑らかな動きでその先をマッシュのワイバーンへと向けている。
「っ、…………」
 すぐに、後顧すべき点が幾重にも浮かんだ。眼前にあるのは、元々想定していたリスクそのものでもある。空には敵味方ともにおらず、空中を浮かぶ"敵"に、どの程度の優先順位を置くか。こちらが積んだ武装は見れば解る。そうなれば、こちらの動きと役割も絞られてくる。ただの知恵無き獣ならばいざしらず、それが兵士であるのならば、空の敵は偵察にせよ遊撃にせよ、見逃すことは大禍に至ると――元近衛隊長であるアーチボルトは識っていたのだろう。マッシュ自身の狙いを理解した上で、この時までその素振りを見せなかったのは、単に。
「――泳がされていましたか」
 思考が冷めていく。とはいえ、やることは変わらない。回避に全霊を込めること、それに尽きる。降下軌道を直ちにやめ、回避機動を取らせる。突然の方針転換でも、彼が駆る飛竜は能く応えた。
 矢が、放たれる。同じく矢を扱うものとしての直感が、マッシュを動かした。すぐさま飛竜を右側方へと転舵させ、重力と揚力を利用した複雑な回避機動を取る。
 そして。

 ――――衝撃。飛竜の絶叫と、揚力の消失。右下方へと回旋していくのは、左翼を貫かれたためかと理解する。
 ああ、その矢は、良くない。毒が飛竜を蝕むし、何より――。
 思考は積み上がっていくが、落下の過程で、身動きが取れない。どうにか突き立った矢を確認はできたが、そこまでだった。
 マッシュの眼前で、飛竜の翼に突き立った矢が爆炎へと転じる。同時に、大地へと叩きつけられる衝撃が全身を撃ち抜いた。



「……っ、マッシュさん!」
 アシェールの絶叫が響いた。その前方では、2本の腕――盾と大剣を前に、レイオスが相対している。そのやや後方に千春と、剛機アイゼン、クローディオが立つ。クローディオと千春の視線が交錯した。僅かな間を置いて、クローディオが頷く。
「此処は任せる」
 飛竜共々墜落したマッシュは、下手を打つと憤怒の炎や流れてきた敵兵に呑まれて戦死しかねない。それは、クローディオにとっては本意ではなかった。治療手は減る形になるが、余力があるうちに回りたかった。
 ゴースロンを走らせるクローディオから、後方。ユグディラを連れたアシェールに、同じくユキウサギに守られて立つアイシュリング。マッシュの安否を懸念するアシェールは、ついていこうとするユグディラを止める。敵が近いため、ミイラ取りがミイラになり得る。救出に向うクローディオに祈るような視線を送ったのち、アイシュリングを見た。
「いつでもどうぞ」
「……はい!」
 返ってきた言葉に、アシェールは呼吸を整え、周囲を把握。
 射撃を続けていた都合上、伊織の位置は彼女たちのその更に後方。他方、狼はアイゼンに隠れるように様子を伺っているが、高機動を売りにするアイゼンとつかず離れずの位置を維持することに苦労していることと、まだ安全が確立されていないためか、動く様子はない。
 遅れるレオンはまだ前線からは遥かに遠い。けれど。
「行きます!」
 これ以上を待つことは、出来ない。作戦は進んでいる。Volcaniusの砲撃を既に識ってしまっているアーチボルトの意識を、迂回する部隊から逸らさなくてはいけない。錬金杖を掲げ、魔術を編む。一つ――二つ。単色だった光芒はいつしか七色に至り、魔法陣を描く。
「――――っ!」
 気勢とともに、解き放った。アースバレットの轢弾が先行し、追うように風刃が走る。
「グ、ヌ……っ!」
 真正面から放った攻撃を盾で捌いた直後、アーチボルトの口元から罅割れた苦悶が溢れた。
「手応え、あり……!」
「にゃー!」
 アシェールとユグディラの喝采。前回阻まれた盾の攻略に、道筋が立ったことに対するものだ。
 次いで、アイシュリングが紡ぎあげた雷電が、巨人の盾ごと貫いて奔る。これも、的中だった。
「やはり、ね」
「はい! 絶対万能の盾なんて聞いた事ありません。歪虚といえども、世界の理からは逃れられないはずです!」
 前回堅牢を誇った盾。ハンターが引き出した特性を逆手にとった戦術は、図に当たっていた。
 正面からこの盾――六属性への耐性を獲得する大盾を攻略するための条件は、二つ。一つは、盾と鎧を超えるだけの威力を打ち込むこと。そして、そのうえで、立て続けに異なる属性を打ち込むこと。
 後衛火力を万全に振るった結果、芯まで届いた一撃だ。アーチボルトは盾の利点を捨てることはしないだろう。ならば、魔術の限りを打ち込んで、十二分にダメージを与えるのが、この場での二人の役目となる。
「コノ、身を、貫ク、カ……」
 矢と銃弾、魔術と刃を盾で受けながら溢れた言葉に、最前で剣圧に耐えるレイオスが声を張る。
「逃げたなんて言われたまま引けないんでね! このまま、突き破らせてもらうぜ……もちろん逃げないよな"元団長"!」
 そのまま、祢々切丸を振り上げ、マテリアルを練り上げる。魔腕から溢れたマテリアルが、祢々切丸に絡みついた。
「オォ…………っ!!」
 突き穿つ。盾で阻まれることを前提にそれごと貫かんと放たれた、渾身の刺突一閃――そのマテリアルの奔流は、アーチボルトの巨躯を揺らす。
「どうだ……!」
 守りを棄てたレイオスの渾身の一撃は、アーチボルトの身体に届いた筈。その手応えをもって見上げて声を張るレイオスを、アーチボルトは確かに見て。
「ク、カ……ッ!」
 そして――嗤った。
「ク、カ、カ、カ……ッ!!」
 それは不細工な、大笑だった。不器用な、感情の発露。それは確かに、愉快げな色を、孕んでいたのだ。



 クローディオがマッシュのもとにたどり着いた時、結論から言えば、マッシュは存命であった。闘狩人の頑健さに加え、高度を下げていたのも幸いしたらしい。深手ではあったが、何とか身動きくらいはとれるようだった。
「終わったぞ」
「ありがたい。高い買い物だったもので」
「"次はお前の治療"だ。さあ、気が付かれる前に終わらせよう」
「ええ……」
 剛弓をに晒され、翼どころか絶命寸前だった飛竜の治療を先に終えたクローディオは、頭を下げて謝意を告げているように見える飛竜を無視してマッシュの治療に移った。用意の甲斐もあり、治療手段には事欠かない。ただ、残る戦闘を思えば無駄遣いは避けたかった。
 ――"これ"を、無駄と呼ぶべきかは、置いておく。ただ、救えたのならば、それで良いと言えよう。
 ふと、怨々たる咆哮が響いた。低く、罅割れ、鈍いそれ。気づかれたかとクローディオは視線を遣るが、どうやら違うらしい。治療を受けている間、マッシュは飛竜の翼を検分していた。
「……いやはや、感謝します。それでは、私は頃合いを見て動きますので」
 治療が終わった後。長らく翼と、飛竜の様子を確かめていたマッシュの言葉に、クローディオは無感情に呟いた。
「まさかとは思うが……」
「騙し撃ちならば、あるいは、と」
「――――」
 救ったことを、後悔すべきだろうか。しかし、そんな逡巡はすぐに霧散した。
 マッシュの、眼。冷めた眸の奥に、大蛇の如くぬらりと動く感情の色が見えた気がした。クローディオのそれとは大きく異なる、彼の根源ともいうべきものか。
「これも、報復を求めているもので。……まったく、誰に似たのだか」
 マッシュの言葉通り、飛竜の双眸は爛々と輝き、首を伸ばして巨人を見据えている。
「…………好きにしろ。止める権利は私にはない」
 踵を返し、前線へと急ぐことにする。飛べる、というのならば、敵方の兵が囲もうとする動きがあればその時は逃げを打つだろう。
「感謝は、していますよ」
 届いた声に、返事は返さなかった。



 剛機の影から隙を伺っていた狼は、好機を待っていた。なぞるべきはかつてと同じ動き。
 現在、弓を棄て、かつてと同じように矢だけを投擲しはじめたアーチボルトの狙いは、レイオスとアシェール、アイシュリングに集中していた。アイゼンの重火器、伊織の矢よりも、明確な脅威と定めたからこそであろう。
 しかし、思わず、ぼやいてしまった。
「……度し難ぇなあ……」
 アイシュリングの方は、いい。よく分かる。ユキウサギの護衛という、端的かつ明瞭な対策。リーズナブルだ。紅水晶自体は、矢自体は届かずとも、自爆した際の爆炎ゆえに封殺とまではいっていないが、そこはユキウサギ自体が間に入る形でカバーしている。
 問題は、アシェールだった。
「つあ……っ!」
 掲げた聖盾「コギト」ごと、投擲された矢に撃ち抜かれて弾かれたアシェールだったが、すぐに立ち上がる。毒には蝕まれているようだが、負傷はごくごく軽度。「まだまだ……!」と活力溢れる様を見よ。あれで後衛魔術師なのだから、前衛刀使いとしては呆れるほかない。ユキウサギとアシェールの負傷は、飛び回る千春が回復してまわっている。そのお陰で、均衡を保ちながら痛打を与えることが出来ているとも言え――同時に、狼にとっては好機が巡ってきているとも言える。
 けれどまあ、良い。おかげで、アーチボルトの注意は固まっている。密やかに剛機から離れた狼は、刃を抜いた。
「――――ッ!」
 密やかに。そして、なるべく"下半身"は狙わぬように、バイク上から裸腕をめがけて次元斬を放つ。狙い通り、左の裸腕を切り落とす事に成功する。
 ぼどり、と粘質な音とともに落ちた巨大な腕の行末を見守ることなく、剛機の影へとバイクを走らせる。とはいえ、手柄は手柄だ。右手で小さく拳を握り、剛機の影に隠れてはじめて、成果確認のために巨人を見やる。
「ッシ、獲っ、た、ぜ……ァ……? ン?」
 そこで、狼が眼にしたのは、高速機動して離れていくアイゼンと、蹴飛ばされでもしたか、巨大な腕一本が高速で飛来するという悪夢のような光景だった。
「……うおおおおおおっ!?」
 そこから先は、知っている。とはいえ、逃げる場所も、時間も、ありはしない。
「くっそぉ!」
 必死に身を固めて、その時を待つ。
 直後に、裸腕だったものは爆炎に転じ、辺り一帯を業火で焼き払った。無論、狼少年も巻き込んで、である。



「―――――――――――ッ!」
 咆哮が響く中、剛は過ぎし場所に狼が一人遺されたところを目の当たりにした。
「あいや……失敬!」
 直撃は避けたものの炎に巻かれた自機の活動限界が近くなっていたため、剛は治療を施すことを優先。対応に動こうとした千春は、クローディオが向かってきていることに気づいてアシェール達のそばを離れないことにしたらしい。憤怒の炎に焼かれずに済んだが、動向が読めない以上、援護に回れない位置に動くのを厭うたのだろう。
 そうこうしているうちに、炎の中から飛び出して暴れる狼の元にクローディオがたどり着き、治療を開始していた。
「っ、不甲斐ない。お待たせしました!」
 そこに、声が響く。速度ゆえに遅れていたレオンが、追いついたらしい。そのまま最前――レイオスの隣へと進み、構える。
「アーチボルトさん……!」
「小、童、…………」
 軋む声には、理性が宿っている。愉快げに嗤ったと思えば、憤怒の咆哮を吐き、今は、困憊を含んだ声で応じる。不安定な感情の動きの由来は、レオンには解らない。けれども、返事はあった。それを相対に足る応答とみて、レオンは剣を掲げる。
「今度こそ、貴方を止めます! 私の後ろに立つ、数多の民のために……、ッ!」
 すぐに、斬撃が降ってきた。盾で受けとめ、堪える。
「正面は、ぼくが!」
「ああ!」
 先刻まで、最前に立ち続けていたレイオスが、予定どおりに側面へと移動を開始。レオンは、自身が遅れた分だけ、レイオスに負担を掛けたことを申し訳なく思う、が。
「僕は……倒れ、ません!」
 覚悟を、示す。遅れに見合う、働きをする意味でも。かつての相対に、報いる意味でも。
「―――――ハ」
 耐えていたところに、馬の足での膝蹴りで弾かれる。すぐに届いたなぎ払いの斬撃は――気付けば、焔を纏っていた。先程の斬撃に勝る重さに、膝が折れそうになるのを必死に堪える。
「キサマ、ガ、倒レ、ナク、トモ……ッ!」
 遥か頭上に、焔が見えた。残った右の裸腕が掲げる、歪虚の矢。それが、轟々と炎を纏っている。
「喪う、コト、は、アル、ノ、ダ、小童……!」
 自制を無くしたかのように、兜の向こう、暗がりの中の巨人の眸が、赤く燃え上がっていた。
「アロウ、コト、カ、遅レ、テ、コノ場ニ、立ツ、貴様、ガ……ソレ、ヲ、語る、ナド、……!」
「―――――ッ!」
 瞬後。幾重にも重なる斬撃と刺突が、レオンを貫いた。



 猛撃が、レオン一人に降り注ぐ。過大な殲撃を、それでも、前言を翻さないように、意地を通して必死に堪える。
「すみません、少し離れます……!」
 すぐに駆け寄る千春の向こうに、巨人の変容ぶりを見届けながら、アイシュリングは呟く。
「……自分自身が許せないのね。大切な存在を守れなかった己に対して憤っているのね」
 もはや、アーチボルトが何に起因する憤怒の歪虚であることは、明らかだった。
 怒りの矛先は、"アーチボルト"自身。けれど、それは矛盾を孕んでいる。憤怒の歪虚は、その対象を燃やし尽くすことを是とするモノだ。アーチボルトは本来、"自らの存在そのもの"を殺すことでしか、その憤怒を晴らすことが出来ない。
 ……そう。確かにこの日、アーチボルトは、嗤い、狂い、怒りを示した。
 それをもってアイシェリングは、その歪虚の在りようを――理解することが、出来た。
「……けれど、意味もなく死にたいわけでもない。貴方は、その道を選んだのね。大切な存在を、守るために」
 だから、巨人は自らの身体を矢と化し、武器とした。更には燃やし、"殺す"ことで――自らを保っているのだ。己への怒りと、主を護ることを両立させるため、狂った天秤で無理やりに均衡を作るために。
「……関係、ないですよ」
 昏い声が、落ちた。振り返るまでもない。伊織の声だった。矢をつがえた伊織は、凍てついた殺意と共に、告げる。
「隙だらけだ。殺しましょう」
 ――栄光なき、敗北を、アレに。
「伊織さん……」
 復讐者の声色に、アシェールは瞳を曇らせる。しかし。
「そうね」
 短く応じたアイシュリングは、魔術を編み始めた。レオンに集中する余り、盾の護りが疎かになっている。
「――――お互いの信じるもののために、戦うのよ」
 彼女にとっては、それだけで、十分だった。



 後方から魔術と矢が届き始めるのを、治療に専念している千春は知覚した。それでいい、と、千春の中の冷静な部分が肯定する。
 それでも、少しだけ胸の中で何かが疼くのは。
 ――あれが、護れなかったヒトの言葉だから……ですね。
 言葉には、少女の身に馴染んだ痛みと苦しみを含んでいた。絶命の縁に立つレオンを癒やし続けながら、自らの心の動きを理解する。それでも、踏み越えると決めた。この道を往くのだと。分身のような敗残者を、自分なりのやり方で、殺すのだと。
「――この、ひと、は」
 必死に耐えるレオンが、呻くように呟いた。
「武人、だったかもしれない。けれど……今はもう、違うん、です、ね……」
「……はい」
 なるほど、その武技の一つ一つは、見事というべきものだろう。その力も、硬さも、速さも。けれど、歪虚に成ってしまったことで、自らに翻弄されて闘うことになっている。冷静ならば、後衛のアシェール、アイシュリングに優先して接近し、彼女らを殺すことを是とした筈だ。
 結果から言えば、アーチボルトはそうしなかった。騎士として――おそらくは怒りと共に――相対したレイオスを無視できず、今もこうして、自らの逆鱗に触れたレオンに注視してしまう。
 歪虚故に生まれた感情の隙を、ヒトらしい冷酷さで突いて、殺す。上手く進めば――もうすぐ、それが、成る。
 問題は、それまで持つかどうかだ。当たりどころが悪ければ、レオンは治療の甲斐無く、その場で倒れるだろう。もしくは、千春の法術が尽きれば、それまでだ。
「……もう少しです」
 けれど、千春はあえて、そう言った。此処からでは、ジャックたちの動きは解らない。ただ。
『プラズマクラッカーを使います! 流れ弾に気をつけて……!!」
 側方へと回ったCAM――アイゼンが、手甲をアーチボルトへと向けていた。同じ側に、レイオスの姿もある。
「いっけぇ……!!!」
 剛機が手甲から発射したプラズマ弾に合わせて、レイオスは全力の刺突を繰り出す。剛は同士打ちを恐れて馬の胴体を狙い、レイオスは踏ん張る足へと。
「グ、ゥ……ッ」
 無防備な所に降り注いだ攻撃の雨に、アーチボルトの巨体がたしかに、揺らいだ。
「……今、だ!」
 防戦一方だったレオンは、生まれた隙に食らいつく。属性の上では好機とは言えなくとも、またとない機会。星剣「アルマス・ノヴァ」にマテリアルが宿る。放つは、レイオスと同じ、刺突の一撃。確かに、鎧に覆われた脚部を穿つことに成功した。
 巨体を思えば、痛打とは言えないことも解っていた。それでもいい。すぐに構えを取り、護りに備える。油断は、致死の毒だと解っていたから。
「…………っ、伏せて!」
「と、わ……!」
 少女の声と共に、聞きなれぬ音が響いてきた。そのままレオンは押し倒され、わけも分からぬうちに身を固める。
 そこで、気づいた。アーチボルトに集中するあまり、忘れていた。
「来、―――――」
 た、と続けようとしたところで、轟音が全てを飲み込み、大地を揺らした。



 数多の砲弾が、降り注ぎ続ける。文字通り虎の子の砲戦部隊の、集中砲火だった。凄まじい運動エネルギーを有した爆撃が、アーチボルトの剥き出しの背面に突き刺さる。
「……死なねえか。死なねえよな」
 ジャックは、金色の機体のコクピット内で、呟いた。シシドたちは周囲で歪虚兵たちを押し返しながら、高精度の砲撃を続けている。
「此処は任せるぜ」
 打ち合わせ通り、ジャック機は前進した。目下の脅威として、Volcanius隊へとめがけて突撃してくるであろう、アーチボルトに対応するために。
 ――哀れじゃねえか、アーチボルト。
 独語し、加速した。己の、貴族としての本懐を、果たすために。



 誰しもが、その動きを待っていた。
 自らの足の速さを托むアーチボルトは、先に何処を狙うか。
「――撃て」
「ここで……!」
 クローディオは拡声器越しに機体へと命令を放ちつつ、砲弾に重ねて銃撃を放ち、剛はオファニムに備えられた高速演算をもとに、疾走の先を見据えて後脚をめがけて機銃を掃射。
 しかし、止まらない。
「――」
 剥き出しの背中を見たアシェールは、言葉をなくしていた。鎧が無い、という情報は識っていた。それは、アーチボルト自身への怒り、己への非を感じているからこその、無防備だと思っていた。
 違う、と直感するに足る背中だった。傷だらけの背中。無残な"穿痕"は、あれは、自らの"矢"を抜いた――。
「私は、撃つわ」
「……は、い!」
 アイシュリングの言葉に、引き戻される。この機を狙ったのは、自分自身。この戦場で、勝利をもぎ取るための最善手を選んだのだから。
 二人共に、二重に魔術を紡いだ。解き放たれた二色の魔術――轢弾と風刃、紫電と氷嵐が無防備な背中と馬体を抉ると、その脚が僅かに鈍った。
 そこに。
「俺に何の恨みがあんだよ……ッ!」
 怒声と共に、バイクにのった狼が猛追。クローディオの治療を受けたのち、隙を見計らっていたらしい。そのまま、刀を振り下ろす。
 次元斬。今回のほうが、これまでの何れの斬撃よりも容易だった。
 無防備な背中側から、残った左肩、その根本を切り落とす。
「うおぉぉぉお……っ!」
 狼は、苦悶と、怒りの滲んだ声が聞こえた気がして、すぐに踵を返してバイクを疾走らせる。二の舞いは御免だ。
 ――尤も、落ちた腕を蹴る脚も既に失われようとしているのだが。狼はそれには気づかないまま、身の安全を確保するために華麗なる逃走に邁進していた。
「…………」
 そんな光景を目の当たりにしながらも、伊織は何も言わずに、矢を放ち続ける。趨勢は、既に見えていた。伊織の直感視は、損壊していくアーチボルトの身体を捉えている。こちらの火力が、アーチボルトの防御を貫いた結果だ。
「精々、足掻けばいいさ」
 簡単に、矢はアーチボルトの身に突き立ち続ける。伊織はそれを、ただただ無感動に眺めていた。

「……これで、良かったんでしょうか」
 残された前衛たち。矢をつがえるレイオスに、レオンが呟いた。
「さあ、な」
 伊織につづいて、矢を放った。ソウルエッジを籠めた矢は、遠く、放物線を描いて――何もない地平に落ちて、消えた。



「気合入ってんじゃねえか……!」
 相対するジャック機から見ても、アーチボルトの身体は散々な有様だった。四本あった腕のうち二本の腕が落ち、身体の各所から炎を上げている。巨体全てを飲み込もうとしているかのような炎。それらの出本すべてが彼の傷口だとしたら、その背傷の在りようが窺い知れようものだ。
 ――機体が、少しばかり重たい気がした。
 振り切るように、アクティブスラスターを起動。さらに加速する。その間も、後方のVolcanius達が吐き出した砲弾が目の前のアーチボルトに着弾し続けている。それら全てを盾で受け止めてはいるが、炸薬全てを裁くことは出来ないためか、身を包む炎の勢いは増していく一方だ。
「オオオオオ……ッ!」
 スキルトレースを用いて、ジャックは機体の硬度を高める。壁となってアーチボルトの突進を止める腹積もりだ。彼我の距離が、零に至る――その時のことだった。
 接触した瞬間。アーチボルトの動きが、乱れた。
「……!?」
 訳は解らない。解らないが、Mハルバードを振り上げる。
「オオ……ッ!」
 此処で、確実に仕留める。それが、せめてもの手向けの筈だ。

 ―・―

「ばあっ!!」
 金色の"敵"の頭部、その影から駆け上がった少女の姿に、さしものアーチボルトも肝を抜かれた。憤怒の炎を上げる身体をするすると駆け上がった少女は、身を焼かれながらもアーチボルトの兜、その耳元に至ると、
「変なの、自分が嫌いだなんて。『へそ曲がりの喇叭銃』だってそんなに捻れてないのに」
 囁く。毒を、染み込ませるように。
「ねぇ、大きな騎士のおじさん、王様を守れなくて、王様を守りたくて……だから、王様がイるのね」
「――――」
 アーチボルトの眼前で、金色の巨兵が斧槍を振るい上げている。盾を、上げようとした。受けようと、した。
「ねぇ、おじさん、王様があんな風に成り果てたのはーー誰の所為? ……ねえ、『雨音』を聞か、せ、……きゃっ!?」
 衝動的に。左手で掲げた盾の縁で、兜の側頭部を叩いていた。殷々と響く鋼の音に、ぐちゃりと潰れた音。忽ち、片耳からの音が絶える。激痛と沈黙、吐き気を催すほどの酩酊感に、アーチボルトは満足を抱く。
 ああ、満身創痍じゃないか、と。

 ――ああ、識っているとも。

 まともな造りでなくなった喉では、言葉を紡ぐのも一苦労だ。

 ――己は…………。

 腹部に、衝撃を感じた。踏ん張ろうとして、それを果たすための後脚が最早潰れていることに気づく。

 ――あ、あ……。

 アーチボルトは知らず、自らの本願に、身を委ねようとしていた。もう、良いだろう。もう――。


 ……否。
「、ダ、……」



「ちょ、おま……ッ!?」
 渾身の斬撃。鋭さよりも、質量をもってアーチボルトを弾き飛ばしたジャックは、一緒に弾かれていった少女の姿に気づいた。フィリアだ。
 そのせいで、気づくのが遅れてしまった。倒れ込みそうになったアーチボルトの双眸が、まっすぐにVolcanius隊を見据えていることに。
「ち、ィ……!」
 予感を覚えたジャックだったが、機動は間に合わない。アーチボルトの右腕が動く。歪虚からなる大剣。それを、投擲しようとしている。想定外の動きに、焦りが生まれた。
 後方の強兵たちが、訓練された機体と操り手が、損なわれてしまう。
 そこに。

「――――此処は、熱いですね」
 憤怒に燃えるアーチボルトの兜に覆いかぶさるように、何かが落ちてきた。ジャックはそのシルエットから、マッシュの駆る飛竜だと気づく。
 止める暇は無かった。
 自由落下にも似た速度のまま、飛竜は兜に激突。それが、深手を負っていた飛竜にとっては限界だったのだろう。だが、その瞬間に、マッシュは斧槍で一閃を浴びせていた。アーチボルトの兜の上から横一文字に双眸を抉ったマッシュは、激突の衝撃に飛竜と共に地に堕ちていく。意識を手放したか、受け身も取れずに転がる男にクソッタレと零しながら、ジャックは思考。
 燃え続ける剣は、"そこ"にある。
 ジャックの想定どおりなら、この剣は早晩自爆する。それに巻き込まれたとして、頑強な自機ならば兎も角、瀕死のマッシュと、おそらく近くにいるであろうフィリアは――。
「―――――、ダ、! まだ、だ、まだだマダだマだだマだ………」
「ち……っ!」
 目も見えないだろうに、呻きながら投擲をしようとするアーチボルトの執念に怖気が立つ。此処で止めて、仲間を見殺しにするか。はたまた、後方のシシドたちとVolcanius達を犠牲にするか。選択を、強いられる中――、

『大丈夫、です……!』
 届いた、少女の声。

「ち、ィ……!」
 反射的に、それに委ねていた。間違っても大剣にあたることの無いように、自機を傾ける。滅茶苦茶な制御に金色の機体が転倒する中、投擲された大剣の行く末を追う。

 その先に、リーリーと共に、少女が身を滑りこませていた。Volcaniusたちとジャック達のちょうど中央付近で、盾を掲げた少女と大剣が激突。瞬後。
 少女とリーリーを飲み込むように――爆炎が、広がっていった。




 不意に、目が覚めた。
「……己は、敗れたか」
「ええ」
 女の声。片耳からのみだが、煩わしさは無い。
「あのひとも、幸せね」
 ――どう、だろうか。
「……もはや、王ではないものを、王と呼ぶ不敬を侵した。アレクシウス様は、ただの一度も、王を名乗らなかった」
 それに縋ったのは、他ならぬ己自身だった。
「そう。でも、貴方にとっては王だったはずよ。……わたしにとっての王は、あの子なの」
 それは、女なりの餞の言葉と、知れた。頂く者の違いは、彼我の境目になる。
 けれども。けれども、だ。
「そう、か……」
 これが――今の王国が、掲げるに足るものならば、それは、良いことだ。
「――お主らは、喪うな、よ……。己は、目の前で、歪虚に堕ちていくあの方を……」
 音が、絶えていく。

「……あんたをブチのめせる奴等が王国にゃいんだ。安心して、笑って、逝ってくれや」

 ――最後に、そんな言葉を、聞いた。ああ。

「ああ――己は、敗れた、のだなぁ……」



 アーチボルトの巨体。最後に残った上半身を、近くにいた騎士たちと、ハンターたち、そしてアカシラたちが、見下ろしていた。
 つと、アカシラが口を開く。
「……アンタたち、少し、離れておきな」
「……?」
 怪訝げな視線に、アカシラは足元のアーチボルト"だったもの"を見下ろす。まだ"消えていない"、それを。

 ハンター達は勝利を掴んだ。鬼たちの協力のもと、危険を推して達成した単体への徹底した包囲火力。勝利の為の、非情の策を完遂したのだ。喝采を浴びて然るべき戦場には――それでも、一つだけ、見落としていたものがあった。

 残った身体。その心臓のあたりから、瞬く間に炎が湧き上がってくる。
「歪虚としてのアンタは、ただ殺されるだけじゃあ、足りない。それだけじゃあ片手落ちさね」
 そこまで聞いて、千春の顔つきが険しくなる。
「……憤怒の、権能」
 幾度となく見た、自滅の炎。今回は、その本体、高位歪虚であろうアーチボルト自身の最後の焔だ。
「――悪ィ。これは、アタシの我儘だ」
 アーチボルトの最前に至ったアカシラは、刀を抜いた。"魔刀"と呼ばれる、それを。
 かつてアカシラはハンターと騎士の前で一度だけ、魔刀の力を振るったことがある。憤怒に連なる砲撃を受け止めた、守護の術。
 アカシラの身から湧き上がったマテリアルが、魔刀に集う。同時に、その視線が伊織に届いた。釘を刺される形となった伊織は、矢に伸びた手を留めた。舌打ちをしそうになるのを、堪える。

 ――拮抗のなかで、その焔が弱まっていく。同時に、醜悪な巨体が、溶けるように消えていく。

「彼が見られなかった世界を、わたしたちが作らなければ、ね」
「……はい」
 アイシュリングの囁くような言葉に、アシェールは頷いた。




 終には、跡形もなく。
 ――こうして、アーチボルト前近衛隊隊長の討伐は、果たされた。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 38
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • 未来を想う
    アイシュリングka2787
  • 東方帝の正室
    アシェ-ルka2983
  • 光あれ
    柏木 千春ka3061

重体一覧

  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシスka0771

参加者一覧

  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    タスラム
    タスラム(ka0030unit002
    ユニット|ゴーレム
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    アイゼン
    アイゼン(ka0320unit003
    ユニット|CAM
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka0771unit002
    ユニット|幻獣
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ヘクトル
    ヘクトル(ka1305unit002
    ユニット|CAM
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ドラングレーヴェ
    ドラングレーヴェ(ka1990unit005
    ユニット|ゴーレム
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    マーニ
    マーニ(ka2787unit002
    ユニット|幻獣
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    カジディラ
    カジディラ(ka2983unit004
    ユニット|幻獣
  • 光あれ
    柏木 千春(ka3061
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    リリィ
    リリィ(ka3061unit001
    ユニット|幻獣
  • 囁くは雨音、紡ぐは物語
    雨音に微睡む玻璃草(ka4538
    人間(紅)|12才|女性|疾影士
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士
  • 双星の兆矢
    叢雲 伊織(ka5091
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • 死者へ捧ぐ楽しき祈り
    レオン(ka5108
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ミオ
    ミオ(ka5108unit002
    ユニット|幻獣

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アシェ-ル(ka2983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/09/22 18:55:06
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/21 19:02:40