ゲスト
(ka0000)
街道の隊商護衛戦
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/18 09:00
- 完成日
- 2014/11/26 21:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「やれやれ……やっぱりこうなったか」
「護衛を雇っておいて正解でしたね」
帝国のとある街道。そこに3台の馬車とその乗員。そして、気絶して縛られている4名程の男たちの姿があった。
男たちはいわゆる野盗という奴だ。隊商が帝都へ向けて運んでいた荷物を奪い取りひと儲けしようと考えたのだろう。
「奪ったところで積荷は鉱石だから売りようもないだろうがな。運が悪かったな」
「まったく……野盗なんてやってるからこうなるんだ」
「……まぁ、何かしら事情があるって可能性もあるがな」
どこか軽蔑するかのような眼差しで野盗を見る御者に、リーダーはそう言った。
歪虚の影響で土地が痩せ作物を育てることが出来ない。あるいは、歪虚の攻撃で土地を焼かれ住むことができなくなった。軍事力の高い帝国でも、特に辺境地域ではそう言った事情で困窮している国民がいるのも事実だ。
「戦力ってのはどうしても中央に集中するもんだから、仕方ないんだろうがな」
「じゃあ、こいつらもそういう事情で……?」
「さぁな。起きたら聞いてみても良いかもしれんが、単に人から奪うのが手っ取り早いって考えてるクソ野郎ってこともあるからな。さて……」
不意にリーダーは、額に手をかざしながら空を見上げた。
「……大分傾いてきたな。急がないとまずいか?」
「ちょっと時間取られちゃいましたからね。まだ余裕はあると思いますが、連中は納品が遅れるとうるさいですから……」
今回の取引相手は帝都にある武器、鎧などの製作における最大手企業だ。今回運ぶ鉱物も武器の材料として使われることだろう。もっとも、隊商たちにとって荷物がどう使われるかはさしたる問題ではないが。
「まぁ、なんにせよ急ぐとしよう」
「了解しました……あ、リーダー。そう言えばこいつらはどうするんですか?」
そう言って、御者は野盗たちを指差す。
「そうか、こいつらをどうするか考えないと……」
再び腕を組み考え込む隊商のリーダー。
「リーダー! 東の方からなんか来ますぜ!」
「何!?」
別の馬車に乗っていた御者が新たな敵の襲来を告げたのは、そんな時だった。
リーダーは、慌てて御者の言った方角へ目を向ける。
視界に映ったのはゴブリンの姿だった。ただし通常のものとは違うようだ。その動きは非常に速く、見る間に馬車へと近づいてくる。
理由はすぐに分かった。ゴブリン達はどうやって手懐けたのかは知らないが、狼の背に乗って移動してきていた。
最高速度が馬より速いとは思わないが、積荷を抱えた状態で逃げ切れるかどうか……
「とにかく、出発準備だ! そこの連中も荷台に乗せろ!」
「連中って……野盗も連れてくんですか? 放っといて逃げましょうよ!」
「野盗だろうがなんだろうが、俺達が放置したせいであのゴブリンどもに殺されたんじゃ寝覚めが悪い! お前も手伝え!」
手綱を握っていた御者も、慌てて降りてきてリーダーを手伝い始める。
この時既に、ゴブリン達と接敵するまで10数秒の猶予もなかった。
「護衛を雇っておいて正解でしたね」
帝国のとある街道。そこに3台の馬車とその乗員。そして、気絶して縛られている4名程の男たちの姿があった。
男たちはいわゆる野盗という奴だ。隊商が帝都へ向けて運んでいた荷物を奪い取りひと儲けしようと考えたのだろう。
「奪ったところで積荷は鉱石だから売りようもないだろうがな。運が悪かったな」
「まったく……野盗なんてやってるからこうなるんだ」
「……まぁ、何かしら事情があるって可能性もあるがな」
どこか軽蔑するかのような眼差しで野盗を見る御者に、リーダーはそう言った。
歪虚の影響で土地が痩せ作物を育てることが出来ない。あるいは、歪虚の攻撃で土地を焼かれ住むことができなくなった。軍事力の高い帝国でも、特に辺境地域ではそう言った事情で困窮している国民がいるのも事実だ。
「戦力ってのはどうしても中央に集中するもんだから、仕方ないんだろうがな」
「じゃあ、こいつらもそういう事情で……?」
「さぁな。起きたら聞いてみても良いかもしれんが、単に人から奪うのが手っ取り早いって考えてるクソ野郎ってこともあるからな。さて……」
不意にリーダーは、額に手をかざしながら空を見上げた。
「……大分傾いてきたな。急がないとまずいか?」
「ちょっと時間取られちゃいましたからね。まだ余裕はあると思いますが、連中は納品が遅れるとうるさいですから……」
今回の取引相手は帝都にある武器、鎧などの製作における最大手企業だ。今回運ぶ鉱物も武器の材料として使われることだろう。もっとも、隊商たちにとって荷物がどう使われるかはさしたる問題ではないが。
「まぁ、なんにせよ急ぐとしよう」
「了解しました……あ、リーダー。そう言えばこいつらはどうするんですか?」
そう言って、御者は野盗たちを指差す。
「そうか、こいつらをどうするか考えないと……」
再び腕を組み考え込む隊商のリーダー。
「リーダー! 東の方からなんか来ますぜ!」
「何!?」
別の馬車に乗っていた御者が新たな敵の襲来を告げたのは、そんな時だった。
リーダーは、慌てて御者の言った方角へ目を向ける。
視界に映ったのはゴブリンの姿だった。ただし通常のものとは違うようだ。その動きは非常に速く、見る間に馬車へと近づいてくる。
理由はすぐに分かった。ゴブリン達はどうやって手懐けたのかは知らないが、狼の背に乗って移動してきていた。
最高速度が馬より速いとは思わないが、積荷を抱えた状態で逃げ切れるかどうか……
「とにかく、出発準備だ! そこの連中も荷台に乗せろ!」
「連中って……野盗も連れてくんですか? 放っといて逃げましょうよ!」
「野盗だろうがなんだろうが、俺達が放置したせいであのゴブリンどもに殺されたんじゃ寝覚めが悪い! お前も手伝え!」
手綱を握っていた御者も、慌てて降りてきてリーダーを手伝い始める。
この時既に、ゴブリン達と接敵するまで10数秒の猶予もなかった。
リプレイ本文
●
「厄介事が無ければ……と、考えていたんだけどなぁ……」
「ホントに、これはまた良いタイミングで来たもんだな」
アルベルト・ラートリー(ka2135)とガルシア・ペレイロ(ka0213)が共にしまいかけた武器を再度構えながら言った。
「マンマミーア!? 盗賊の次は……狼? ゴブリン?」
超級まりお(ka0824)が額に手をかざしながら眺めると、その先にはゴブリンを乗せたゴブリンがすごい勢いで走ってきていた。
「野盗の次はゴブリンライダー、か……随分と千客万来ね。普通の客なら嬉しいところなんでしょうけど」
「あははっ、カモがネギをしょってくるんじゃなくて、狼さんがゴブリンをしょってきたね。これはお鍋の準備が必要かしら~♪」
やれやれと言った表情を浮かべるナル(ka3448)に対し、どこか嬉しそうな夢路 まよい(ka1328)はそんな怖いことを言いつつ馬車の上に登る。そこから敵を見渡し動きを見ようという事だろう。
その荷馬車の方では、隊商のリーダーが野盗を荷物の隙間に押し込んでいるところだった。
「で、絶賛気絶中の強盗らはとりあえず保護すんのねー」
「見殺しにするわけにもいかないからな……」
まりおの問いに、グライブ・エルケイル(ka1080)はそう答える。そして、そのままリーダーを手伝い、野盗を荷馬車に押し込んでいく。
「非戦闘員はこっちに集まってくれ!」
声をかけながら、グライブはまりおに向き直る。
「……やはり不満だろうか」
「ううん、ボクも賛成。でも急いでー。商人さんたちは保護が済んだらすぐに荷馬車に入って隠れてねー」
グライブの呼びかけで他の商人も真ん中の荷馬車に集まってくる。また、ナルも接敵するまでの間に作業を手伝う。依頼主の意向を鑑みたうえでの判断だ。
「……正直野盗の命より積荷などの方が大切だと思うのだが」
その様子を見ながら、アバルト・ジンツァー(ka0895)は銃の弾を込める。
「確かに、ソレで護衛に障りが出る可能性も考えちゃいねぇ……やーれやれ」
ベレティウス・グレイバー(ka1723)はそんなアバルトの言葉に同意するかのように答える。
「まぁ依頼主の意向には従うこととしよう」
確かに、依頼外の防衛対象が増えることは護衛側としてはよろしくない。だが、彼らは雇われた傭兵。そして、野盗を守ろうとしているのは依頼主だ。従わざるをえない。
「そう言う事だな……取捨選択のできねぇご依頼主だと辛いが、これも依頼範囲だ」
呟きながら首をコキコキと鳴らし、ベレティウスは前方の荷馬車の護衛を行うために移動していく。
その背を見ながら、アバルトは中央……今まさに野盗たちが押し込まれている荷馬車の上に陣取る。
「まぁ、こちらもある程度の戦力は揃っているのだ。なんとか凌げるだろうさ」
そう言ってアバルトは、ライフルの照準を迫る敵に向けた。
●
「ではでは~、ボクらもお仕事始めないとー。ヒアウィーゴー!」
言うが速いか、まりおが瞬脚を使用して移動。荷馬車から少し離れて行動することで敵の注意を引きつける策だ。
その思惑通り、ゴブリンライダーの何体かはまりおにその銃口を向け……額から血を吹きだす。
ゴブリンの額には、手裏剣が刺さっている。まりおの攻撃だ。ノーモーションから投擲された手裏剣に、狼もゴブリンも、反応できなかったようだ。
「馬鹿ゴブリン、こっちこっち♪」
さらにまりおはゴブリン達を挑発する。無論ゴブリンもただでは済まさない。額の手裏剣を引き抜き、発砲。それをまりおは余裕を持って躱す。狼のお陰で速いは速いが、当てるのは苦手と見える。
「これぐらいなら、十分躱せちゃうね」
積極的に前に出るまりおとは打って変わって動かないのはベレティウス。先頭馬車の護衛をきっちり行うために、極力離れない方針のようだ。それに、ベレティウスの得物は銃だ。積極的に前に出ずとも十分戦闘が行える。これに関しては他のハンターも同じであり、しかもそのどれもがゴブリン達の持つ銃よりも射程が長いものだった。
「さて、特別手当が出たら嬉しいが……」
呟きながらも、近づいてくる様子を冷静に観察。
(数は8組……やはりそれ以上はいないみたいだな。統率してる者も……まぁいないだろうな)
統率者がいれば、若干前に出ているまりおを集中攻撃で倒す……なんてことをしてきそうだが、今のところそういう動きは見えない。
「あるいは、向こうがうまくやってくれてるからか?」
銃でまりおに向かおうとする敵を牽制しつつ、ベレティウスはちらりと向こう……中央の馬車を見る。
「機動力を使ってくる敵……少々厄介ではある。だが……」
中央の馬車の上では、アバルトが威嚇射撃を行っている。敵を近づけさせないように狼の足元を狙って撃たれた銃撃。それに反応した狼は、ついつい足を止めてしまう。これにより固まって前に出ていこうという動きを抑制できているようだ。それに、敵の足を止めることで味方の攻撃支援にもなる。攻撃と防御、どちらにも役に立つ動きだ。
アバルトの横ではまよいが伏せた状態で待機。敵が銃を持っている以上、棒立ちでは狙われるという判断だろう。そこから時たま立ち上がり、ウィンドスラッシュを使用していく。
「よし、これで全員詰め込んだな?」
荷馬車の下では、丁度野盗を詰め込んだところのようだ。次いで商人たちにそこへ潜り込んで貰ったうえで、周囲を確認するグライブ。そのままペットのドーベルマンに周囲の警戒を行うように促す。
「それじゃ、私も前に出るわ」
「待て。その前に……」
前に出ようとするナルに、グライブは防性強化を使用する。遊撃として動く分被弾も多くなるだろうという考えだろう。
「これで良し。頼むぞ!」
「ええ、任せておいて」
そう言うと、ナルはまりおと同じく瞬脚を使用して、敵に接近していく。
「次は向こうか」
次いでグライブはベレティウスへ防性強化を使用。しっかりと味方の防御を固めていく。
変わって後方の荷馬車。荷物の上に位置するのはアルベルト。やや不安定ながら、自身の位置をその場に固定。シャープシューティングを使用。
「よし、射程内!」
高速で動く敵の姿を追いながら、移動先を予測し引き金を引く。
銃弾は過たず狼を撃ちぬき、その足を止める。
「……ぶれは問題ない。狙いはこのままで大丈夫そうだ」
先程の射撃、その弾道を確認しながら照準を微調整し、二射、三射と銃撃を繰りかえす。
「良い調子じゃないか……さて俺も……申し訳ないが、多少の損傷は我慢してもらうぞ?」
ガルシアはそう呟くと、魔導銃を構える。何しろ、敵が銃を持っていて、こちらは動かないのだ。荷馬車自体は的としては大きく、それが動かないとなれば銃撃は当たりやすい。それ故多少の被害はやむを得ないと考えていたからこそのガルシアの呟き。だが、実際のところはというと……
「……順調だな」
前に出て防衛に当たる者が優秀からか。銃撃がこちらに向くことは無い。
偶に思い出したかのようにこちらを向く敵もいるのだが……それらはアバルトが威嚇射撃で出鼻を挫いているためか、積極的にこちらに向かってこようとはしてこない。
もちろんアバルトの目を始め、高速で動く敵たちを常に視界に入れておくことは難しい。掻い潜り、近付いてくるものもいた。しかし……
「スリープクラウド!」
魔法を使うために立ち上がったまよいの声。ガスが広がり、そこに突っ込んでいったゴブリンライダーはそのまま眠りこける。
「あははっ、下手なてっぽ~も夢の中なら思い通り当てられるかもね?」
こうして、接近する敵もまよいの魔法で足止めすることが出来ている。
「眠ったやつを起こす必要はない、か……となれば次の敵を……!」
アルベルトはエイミングで敵を捉えながら狙撃。銃弾は正確に狼を撃ちぬき、態勢を崩させる。そこへガルシアが魔導銃で追撃し狼を倒す。
狼から落ちたゴブリンは、再度使用されたまよいのスリープクラウドに引っかかり、無力化される。
敵の数が減りだし余裕が出てきたのか、回避中心だったまりおも攻撃に転じる。
「いやっほぅ!」
瞬脚で移動力を底上げしつつ、声を上げながらゴブリンライダーの頭上にジャンプ。そのまま初動と同じくノーモーションで刀を抜き、ゴブリンの頭を切り裂く。
そこにタイミングを合わせグライブが機導砲を撃ち込み止めを刺した。
「まよいの魔法が利いている間に敵の数を減らしておかないと……」
ナルは馬車から離れすぎないように注意しつつ間合いを測る。そのナルへゴブリンが銃を撃つ。
「援護する、気を付けろ!」
マルチステップを利用して躱すナル。その後方からベレティウスの銃撃がゴブリンを襲う。弾は命中し、ゴブリンはそのまま狼から落とされる。このチャンスを逃さず、ナルはランアウトを使い至近に接近。
「止めよ……」
頭に銃弾を喰らったゴブリンはそれっきり動かなくなった。
「大勢は決した……かな?」
再度銃を撃ち、リロードを行ったガルシア。その言葉通り、ゴブリンライダーたちは銃撃や魔法を受けあるものは眠り、あるものは撃ち落とされ、斬られ……半数以上が戦闘できる状態ではなくなっていた。
●
「よしよし……よくやってくれた」
グライブはそう言いながら、ペットのドーベルマンを労うように撫でる。
ガルシアの呟きから1分もかからず、敵は殲滅された。生き残った狼はいずこかへ走り去り、ゴブリンに関しては全て始末されていた。
「絵本で子豚さんたちが作ってた狼鍋、いつか私も食べてみたいって思ってたの♪」
そう言って嬉しそうな声を上げるまよいは倒した狼を引きずり荷台に乗せる。
「……」
その荷台には、無言で俯く野盗の姿があった。戦闘中にはすでに気が付いていたようだが、今に至るまで非常に大人しくしていた。
「無論、逃げるつもりだったら撃つつもりだったが……」
「まぁあれだけ一方的な戦闘を見たら、逃げようなんて思わないだろうね」
アバルトやアルベルトの言う通り、ハンターたちはほぼ無傷であの数の敵を倒している。その戦闘力は疑いようがない。それに、眠ったゴブリン達を始末する際ベレティウスに言われた「理由があったら野盗して良いって理屈は分からんがねぇ。ソレ等もコレ等も俺にゃぁ一緒だ」という言葉が、野盗たちに逃げようという気を失わせたのかもしれない。
「後は着いた先の衛兵に盗賊を引き渡せば万事OK?」
「そう言うことになるな……あんたらすまなかった。俺の我儘でいらん手間をかけさせちまったな」
まりおに返答した隊商のリーダーは、そのままハンターたちに頭を下げる。
「気にしないで。依頼主の意向に従ったまでだしね」
「まぁその分報酬を上乗せしてくれればこっちは言うことないが……」
ナルに続いていったガルシアだったが、リーダーは「それはそれ。これはこれ」と言って首を横に振った。
「さて、売買の遅延は最悪だろ。とっとと行くか」
ベレティウスに促される形で、出発の準備が進められていく。
「ところで……この鉱石、いったいいくらで売るつもりなんだ?」
商人を自称するだけあって、そういうことは気にかかるのだろう。それに対しリーダーは、相場通りと答える。
「相場通りねぇ……まぁそう言うことにしておくか。それじゃ、売りに行く相手は?」
「相手? ウェルク社だよ」
ウェルク社。正確にはウェルクマイスター社という。
元は中堅の民間企業だった。だが現在の社長が革命に協力する代わりに、帝国お抱えのお墨付きをもらうという約束を取り付け、現在では最大手の工房へと上り詰めた。
ちなみに、作っているのは主に帝国軍向けの武器や鎧など。
「なんだっけ? 詳しくは知らねぇが、今回はリアルブルーからの兵器がどうこうで色々入用なんだと……で、こんなこと知ってどうするんだい」
「なに、俺も商人の端くれだからな。こういうことは知っておくに越したことはないのさ」
そう言って、ベレティウスも出発準備を行う。
「特別手当としては安いが……これで良しとするか」
そんなことを口中で呟きながら。
こうしてハンターたちは無事隊商を敵から守り通すことに成功したのだった。
「厄介事が無ければ……と、考えていたんだけどなぁ……」
「ホントに、これはまた良いタイミングで来たもんだな」
アルベルト・ラートリー(ka2135)とガルシア・ペレイロ(ka0213)が共にしまいかけた武器を再度構えながら言った。
「マンマミーア!? 盗賊の次は……狼? ゴブリン?」
超級まりお(ka0824)が額に手をかざしながら眺めると、その先にはゴブリンを乗せたゴブリンがすごい勢いで走ってきていた。
「野盗の次はゴブリンライダー、か……随分と千客万来ね。普通の客なら嬉しいところなんでしょうけど」
「あははっ、カモがネギをしょってくるんじゃなくて、狼さんがゴブリンをしょってきたね。これはお鍋の準備が必要かしら~♪」
やれやれと言った表情を浮かべるナル(ka3448)に対し、どこか嬉しそうな夢路 まよい(ka1328)はそんな怖いことを言いつつ馬車の上に登る。そこから敵を見渡し動きを見ようという事だろう。
その荷馬車の方では、隊商のリーダーが野盗を荷物の隙間に押し込んでいるところだった。
「で、絶賛気絶中の強盗らはとりあえず保護すんのねー」
「見殺しにするわけにもいかないからな……」
まりおの問いに、グライブ・エルケイル(ka1080)はそう答える。そして、そのままリーダーを手伝い、野盗を荷馬車に押し込んでいく。
「非戦闘員はこっちに集まってくれ!」
声をかけながら、グライブはまりおに向き直る。
「……やはり不満だろうか」
「ううん、ボクも賛成。でも急いでー。商人さんたちは保護が済んだらすぐに荷馬車に入って隠れてねー」
グライブの呼びかけで他の商人も真ん中の荷馬車に集まってくる。また、ナルも接敵するまでの間に作業を手伝う。依頼主の意向を鑑みたうえでの判断だ。
「……正直野盗の命より積荷などの方が大切だと思うのだが」
その様子を見ながら、アバルト・ジンツァー(ka0895)は銃の弾を込める。
「確かに、ソレで護衛に障りが出る可能性も考えちゃいねぇ……やーれやれ」
ベレティウス・グレイバー(ka1723)はそんなアバルトの言葉に同意するかのように答える。
「まぁ依頼主の意向には従うこととしよう」
確かに、依頼外の防衛対象が増えることは護衛側としてはよろしくない。だが、彼らは雇われた傭兵。そして、野盗を守ろうとしているのは依頼主だ。従わざるをえない。
「そう言う事だな……取捨選択のできねぇご依頼主だと辛いが、これも依頼範囲だ」
呟きながら首をコキコキと鳴らし、ベレティウスは前方の荷馬車の護衛を行うために移動していく。
その背を見ながら、アバルトは中央……今まさに野盗たちが押し込まれている荷馬車の上に陣取る。
「まぁ、こちらもある程度の戦力は揃っているのだ。なんとか凌げるだろうさ」
そう言ってアバルトは、ライフルの照準を迫る敵に向けた。
●
「ではでは~、ボクらもお仕事始めないとー。ヒアウィーゴー!」
言うが速いか、まりおが瞬脚を使用して移動。荷馬車から少し離れて行動することで敵の注意を引きつける策だ。
その思惑通り、ゴブリンライダーの何体かはまりおにその銃口を向け……額から血を吹きだす。
ゴブリンの額には、手裏剣が刺さっている。まりおの攻撃だ。ノーモーションから投擲された手裏剣に、狼もゴブリンも、反応できなかったようだ。
「馬鹿ゴブリン、こっちこっち♪」
さらにまりおはゴブリン達を挑発する。無論ゴブリンもただでは済まさない。額の手裏剣を引き抜き、発砲。それをまりおは余裕を持って躱す。狼のお陰で速いは速いが、当てるのは苦手と見える。
「これぐらいなら、十分躱せちゃうね」
積極的に前に出るまりおとは打って変わって動かないのはベレティウス。先頭馬車の護衛をきっちり行うために、極力離れない方針のようだ。それに、ベレティウスの得物は銃だ。積極的に前に出ずとも十分戦闘が行える。これに関しては他のハンターも同じであり、しかもそのどれもがゴブリン達の持つ銃よりも射程が長いものだった。
「さて、特別手当が出たら嬉しいが……」
呟きながらも、近づいてくる様子を冷静に観察。
(数は8組……やはりそれ以上はいないみたいだな。統率してる者も……まぁいないだろうな)
統率者がいれば、若干前に出ているまりおを集中攻撃で倒す……なんてことをしてきそうだが、今のところそういう動きは見えない。
「あるいは、向こうがうまくやってくれてるからか?」
銃でまりおに向かおうとする敵を牽制しつつ、ベレティウスはちらりと向こう……中央の馬車を見る。
「機動力を使ってくる敵……少々厄介ではある。だが……」
中央の馬車の上では、アバルトが威嚇射撃を行っている。敵を近づけさせないように狼の足元を狙って撃たれた銃撃。それに反応した狼は、ついつい足を止めてしまう。これにより固まって前に出ていこうという動きを抑制できているようだ。それに、敵の足を止めることで味方の攻撃支援にもなる。攻撃と防御、どちらにも役に立つ動きだ。
アバルトの横ではまよいが伏せた状態で待機。敵が銃を持っている以上、棒立ちでは狙われるという判断だろう。そこから時たま立ち上がり、ウィンドスラッシュを使用していく。
「よし、これで全員詰め込んだな?」
荷馬車の下では、丁度野盗を詰め込んだところのようだ。次いで商人たちにそこへ潜り込んで貰ったうえで、周囲を確認するグライブ。そのままペットのドーベルマンに周囲の警戒を行うように促す。
「それじゃ、私も前に出るわ」
「待て。その前に……」
前に出ようとするナルに、グライブは防性強化を使用する。遊撃として動く分被弾も多くなるだろうという考えだろう。
「これで良し。頼むぞ!」
「ええ、任せておいて」
そう言うと、ナルはまりおと同じく瞬脚を使用して、敵に接近していく。
「次は向こうか」
次いでグライブはベレティウスへ防性強化を使用。しっかりと味方の防御を固めていく。
変わって後方の荷馬車。荷物の上に位置するのはアルベルト。やや不安定ながら、自身の位置をその場に固定。シャープシューティングを使用。
「よし、射程内!」
高速で動く敵の姿を追いながら、移動先を予測し引き金を引く。
銃弾は過たず狼を撃ちぬき、その足を止める。
「……ぶれは問題ない。狙いはこのままで大丈夫そうだ」
先程の射撃、その弾道を確認しながら照準を微調整し、二射、三射と銃撃を繰りかえす。
「良い調子じゃないか……さて俺も……申し訳ないが、多少の損傷は我慢してもらうぞ?」
ガルシアはそう呟くと、魔導銃を構える。何しろ、敵が銃を持っていて、こちらは動かないのだ。荷馬車自体は的としては大きく、それが動かないとなれば銃撃は当たりやすい。それ故多少の被害はやむを得ないと考えていたからこそのガルシアの呟き。だが、実際のところはというと……
「……順調だな」
前に出て防衛に当たる者が優秀からか。銃撃がこちらに向くことは無い。
偶に思い出したかのようにこちらを向く敵もいるのだが……それらはアバルトが威嚇射撃で出鼻を挫いているためか、積極的にこちらに向かってこようとはしてこない。
もちろんアバルトの目を始め、高速で動く敵たちを常に視界に入れておくことは難しい。掻い潜り、近付いてくるものもいた。しかし……
「スリープクラウド!」
魔法を使うために立ち上がったまよいの声。ガスが広がり、そこに突っ込んでいったゴブリンライダーはそのまま眠りこける。
「あははっ、下手なてっぽ~も夢の中なら思い通り当てられるかもね?」
こうして、接近する敵もまよいの魔法で足止めすることが出来ている。
「眠ったやつを起こす必要はない、か……となれば次の敵を……!」
アルベルトはエイミングで敵を捉えながら狙撃。銃弾は正確に狼を撃ちぬき、態勢を崩させる。そこへガルシアが魔導銃で追撃し狼を倒す。
狼から落ちたゴブリンは、再度使用されたまよいのスリープクラウドに引っかかり、無力化される。
敵の数が減りだし余裕が出てきたのか、回避中心だったまりおも攻撃に転じる。
「いやっほぅ!」
瞬脚で移動力を底上げしつつ、声を上げながらゴブリンライダーの頭上にジャンプ。そのまま初動と同じくノーモーションで刀を抜き、ゴブリンの頭を切り裂く。
そこにタイミングを合わせグライブが機導砲を撃ち込み止めを刺した。
「まよいの魔法が利いている間に敵の数を減らしておかないと……」
ナルは馬車から離れすぎないように注意しつつ間合いを測る。そのナルへゴブリンが銃を撃つ。
「援護する、気を付けろ!」
マルチステップを利用して躱すナル。その後方からベレティウスの銃撃がゴブリンを襲う。弾は命中し、ゴブリンはそのまま狼から落とされる。このチャンスを逃さず、ナルはランアウトを使い至近に接近。
「止めよ……」
頭に銃弾を喰らったゴブリンはそれっきり動かなくなった。
「大勢は決した……かな?」
再度銃を撃ち、リロードを行ったガルシア。その言葉通り、ゴブリンライダーたちは銃撃や魔法を受けあるものは眠り、あるものは撃ち落とされ、斬られ……半数以上が戦闘できる状態ではなくなっていた。
●
「よしよし……よくやってくれた」
グライブはそう言いながら、ペットのドーベルマンを労うように撫でる。
ガルシアの呟きから1分もかからず、敵は殲滅された。生き残った狼はいずこかへ走り去り、ゴブリンに関しては全て始末されていた。
「絵本で子豚さんたちが作ってた狼鍋、いつか私も食べてみたいって思ってたの♪」
そう言って嬉しそうな声を上げるまよいは倒した狼を引きずり荷台に乗せる。
「……」
その荷台には、無言で俯く野盗の姿があった。戦闘中にはすでに気が付いていたようだが、今に至るまで非常に大人しくしていた。
「無論、逃げるつもりだったら撃つつもりだったが……」
「まぁあれだけ一方的な戦闘を見たら、逃げようなんて思わないだろうね」
アバルトやアルベルトの言う通り、ハンターたちはほぼ無傷であの数の敵を倒している。その戦闘力は疑いようがない。それに、眠ったゴブリン達を始末する際ベレティウスに言われた「理由があったら野盗して良いって理屈は分からんがねぇ。ソレ等もコレ等も俺にゃぁ一緒だ」という言葉が、野盗たちに逃げようという気を失わせたのかもしれない。
「後は着いた先の衛兵に盗賊を引き渡せば万事OK?」
「そう言うことになるな……あんたらすまなかった。俺の我儘でいらん手間をかけさせちまったな」
まりおに返答した隊商のリーダーは、そのままハンターたちに頭を下げる。
「気にしないで。依頼主の意向に従ったまでだしね」
「まぁその分報酬を上乗せしてくれればこっちは言うことないが……」
ナルに続いていったガルシアだったが、リーダーは「それはそれ。これはこれ」と言って首を横に振った。
「さて、売買の遅延は最悪だろ。とっとと行くか」
ベレティウスに促される形で、出発の準備が進められていく。
「ところで……この鉱石、いったいいくらで売るつもりなんだ?」
商人を自称するだけあって、そういうことは気にかかるのだろう。それに対しリーダーは、相場通りと答える。
「相場通りねぇ……まぁそう言うことにしておくか。それじゃ、売りに行く相手は?」
「相手? ウェルク社だよ」
ウェルク社。正確にはウェルクマイスター社という。
元は中堅の民間企業だった。だが現在の社長が革命に協力する代わりに、帝国お抱えのお墨付きをもらうという約束を取り付け、現在では最大手の工房へと上り詰めた。
ちなみに、作っているのは主に帝国軍向けの武器や鎧など。
「なんだっけ? 詳しくは知らねぇが、今回はリアルブルーからの兵器がどうこうで色々入用なんだと……で、こんなこと知ってどうするんだい」
「なに、俺も商人の端くれだからな。こういうことは知っておくに越したことはないのさ」
そう言って、ベレティウスも出発準備を行う。
「特別手当としては安いが……これで良しとするか」
そんなことを口中で呟きながら。
こうしてハンターたちは無事隊商を敵から守り通すことに成功したのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/14 07:00:35 |
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相談スレッド ナル(ka3448) エルフ|17才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/11/18 01:42:05 |