ゲスト
(ka0000)
狼と旅人と、その道程
マスター:ゆくなが

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/09/30 19:00
- 完成日
- 2017/10/05 23:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「では、今回の依頼内容を確認いたします」
ハンターオフィスの職員が言う。
「ある街道に現れた狼の雑魔12体の討伐。依頼主は近隣の村。現場の周辺に障害物はなし。近隣住民も怖がって誰も近づいていません。さほど難しい依頼ではないでしょう。それでは、依頼達成の報告を待っています」
こうして、ある依頼についての契約がなされた。
しかし、その数日後……
「へえ、旅人でございますか?」
ある村の酒場である。この村一番の酒場で、店内は柔らかい色のランプと、人々の笑い声、そして赤い顔をした奏者が楽器を愉快に、でも会話の邪魔にならないような奥ゆかしい音で奏でている。
そこに、暗緑色のマントを纏った若者がいた。よく日に焼けた肌に精悍な顔だちの男で、ひとりで席に着き、店の女将と話している。
「はい。私、旅人といえば多少風情があるかもわかりませんが、なに、定住地を持てなかった根無し草なだけですよ。こうして諸方を渡り歩いて手に入れた品物を売りさばくやくざな商売で活計をたてているのです」
「いやいや、お客さん。そうは言いますけどね。あたしはこうして代々の酒場を守っていかなければならない身の上なんでございます。ですから、あなたさまのような気軽な生活というのは、なんとも羨ましく存じます。ところで、この村にはなにをしにいらっしゃったんです? あまり見ていて楽しい村でもないでしょうに」
女将は注文された酒と料理をテーブルにおいた。
「いえ、ご謙遜を。こうした人々の集まりをみるのも、私の、しがない根無し草の楽しみですから。しかし、正直に申しますと、隣の村へ満月の日に届け物をしなくてはならないのです」
「へえ、そうなんでございますか。どのような形であれ、こうして縁が結ばれるのはありがたいことでございます。ところでお客さん、その村というのはどちらの方角です?」
「ここから東へ行った村です」
それを聞いて、女将はちょっと顔をしかめた。それから、遠慮がちにいうのだった。
「悪いことは申しません。それはやめた方がよろしいと存じます」
旅人は、目を釣り上げて反論する。
「女将さん。きっとあなたは親切でいっているのでしょう。どうぞ、ことの真相を遠慮なくおっしゃってください。私、如何せん激情家ですから、少々厳しい顔をしているかもわかりませんが、忠告をするというのなら是非包み隠さずおっしゃってください」
女将は、この旅人の剣幕に押されつつ、あることを話し始めた。
1週間前ほどから、この村の東の街道に狼の群れが出没しはじめた。それは不思議な狼でどんなに食料を運んでいても人間や動物だけを的確に狙ってくるのだという。狩猟に長けた村人が駆除しようとしたが、どうやらあれは雑魔であるらしく、ついにハンターオフィスに依頼することになった。この村こそ、冒頭の依頼を出した村なのである。
「諸々、手続きは済んでいるんでございます。あと5日もすれば、ハンターの方々がいらっしゃって狼を駆除してくださることでしょう。お客さん、どうかそれまでこの村に逗留していただくことはかないませんか」
「しかし、次の満月はもうすぐそこです。5日も待っていられやしません」
「重々承知しております。ですが、このままあなたさまを行かせて、もし死なれてしまったら、私共も寝覚めが悪うございます。どうかそれまで待っていただけませんか。もし満月にこだわるのでしたら、それは次の次の満月の機会までとっておいてくださいませんか」
旅人は、すっくと立ち上がった。
「女将さん、ご忠告痛み入ります。ですが、先ほども言ったでしょう。私は激情家なのです。やると決めたらやらずにはいられないのです。そのハンターオフィスにいまから私がいって決行日を早めてもらうよう直談判してきましょう」
旅人は、暗緑色のマントを翻し、颯爽と店を後にした。その威容は何人の制止も聞かないことがありありと伝わってきた。
しかし、その威容に上回るある事が女将の中にはあった。
「旅人さん。そういうことなら止めはしませんがね。お勘定だけは忘れず払ってくださいよ」
結局、この旅人の抗議により、雑魔の狼退治の決行日は早まった。旅人が報酬を上乗せして無理やり通したのである。
そして、依頼には、旅人の護衛も追加されたのだった。
ハンターオフィスの職員が言う。
「ある街道に現れた狼の雑魔12体の討伐。依頼主は近隣の村。現場の周辺に障害物はなし。近隣住民も怖がって誰も近づいていません。さほど難しい依頼ではないでしょう。それでは、依頼達成の報告を待っています」
こうして、ある依頼についての契約がなされた。
しかし、その数日後……
「へえ、旅人でございますか?」
ある村の酒場である。この村一番の酒場で、店内は柔らかい色のランプと、人々の笑い声、そして赤い顔をした奏者が楽器を愉快に、でも会話の邪魔にならないような奥ゆかしい音で奏でている。
そこに、暗緑色のマントを纏った若者がいた。よく日に焼けた肌に精悍な顔だちの男で、ひとりで席に着き、店の女将と話している。
「はい。私、旅人といえば多少風情があるかもわかりませんが、なに、定住地を持てなかった根無し草なだけですよ。こうして諸方を渡り歩いて手に入れた品物を売りさばくやくざな商売で活計をたてているのです」
「いやいや、お客さん。そうは言いますけどね。あたしはこうして代々の酒場を守っていかなければならない身の上なんでございます。ですから、あなたさまのような気軽な生活というのは、なんとも羨ましく存じます。ところで、この村にはなにをしにいらっしゃったんです? あまり見ていて楽しい村でもないでしょうに」
女将は注文された酒と料理をテーブルにおいた。
「いえ、ご謙遜を。こうした人々の集まりをみるのも、私の、しがない根無し草の楽しみですから。しかし、正直に申しますと、隣の村へ満月の日に届け物をしなくてはならないのです」
「へえ、そうなんでございますか。どのような形であれ、こうして縁が結ばれるのはありがたいことでございます。ところでお客さん、その村というのはどちらの方角です?」
「ここから東へ行った村です」
それを聞いて、女将はちょっと顔をしかめた。それから、遠慮がちにいうのだった。
「悪いことは申しません。それはやめた方がよろしいと存じます」
旅人は、目を釣り上げて反論する。
「女将さん。きっとあなたは親切でいっているのでしょう。どうぞ、ことの真相を遠慮なくおっしゃってください。私、如何せん激情家ですから、少々厳しい顔をしているかもわかりませんが、忠告をするというのなら是非包み隠さずおっしゃってください」
女将は、この旅人の剣幕に押されつつ、あることを話し始めた。
1週間前ほどから、この村の東の街道に狼の群れが出没しはじめた。それは不思議な狼でどんなに食料を運んでいても人間や動物だけを的確に狙ってくるのだという。狩猟に長けた村人が駆除しようとしたが、どうやらあれは雑魔であるらしく、ついにハンターオフィスに依頼することになった。この村こそ、冒頭の依頼を出した村なのである。
「諸々、手続きは済んでいるんでございます。あと5日もすれば、ハンターの方々がいらっしゃって狼を駆除してくださることでしょう。お客さん、どうかそれまでこの村に逗留していただくことはかないませんか」
「しかし、次の満月はもうすぐそこです。5日も待っていられやしません」
「重々承知しております。ですが、このままあなたさまを行かせて、もし死なれてしまったら、私共も寝覚めが悪うございます。どうかそれまで待っていただけませんか。もし満月にこだわるのでしたら、それは次の次の満月の機会までとっておいてくださいませんか」
旅人は、すっくと立ち上がった。
「女将さん、ご忠告痛み入ります。ですが、先ほども言ったでしょう。私は激情家なのです。やると決めたらやらずにはいられないのです。そのハンターオフィスにいまから私がいって決行日を早めてもらうよう直談判してきましょう」
旅人は、暗緑色のマントを翻し、颯爽と店を後にした。その威容は何人の制止も聞かないことがありありと伝わってきた。
しかし、その威容に上回るある事が女将の中にはあった。
「旅人さん。そういうことなら止めはしませんがね。お勘定だけは忘れず払ってくださいよ」
結局、この旅人の抗議により、雑魔の狼退治の決行日は早まった。旅人が報酬を上乗せして無理やり通したのである。
そして、依頼には、旅人の護衛も追加されたのだった。
リプレイ本文
「この時間からって本気かよ……」
コウ(ka3233)たち、ハンター一行は依頼のあった村の東の門に向かっていた。
それを聞いて、朝の陽光に銀の髪を煌めかせてファリス(ka2853)が言う。
「街道にいつまでも雑魔がのさばっていたら安心して通ることも出来ないの。だから早めに退治するのに越したことはないの。ファリスも頑張るの」
「まあ、請け負った以上、必ず無事に届けてやるさ」
と、コウは思考を切り替えることにした。
そう、朝の陽光、である。時刻は朝7時ちょっと前。
「この手のことは早めに終わらせたほうがいいと思うし、村のためにもなると思うわ。それに、なかなか男気があるんじゃないかしら、例の旅人さん」
アティア・ディレン(ka6918)は旅人に肯定的であった。
「ふっ、来ましたね!」
東の門には、その依頼の決行日を無理やり変更させた例の旅人が、仁王立ちで大きな包みを抱えて待っていた。
「さあ、それでは旅立ちといきましょう!」
「そう急ぎなさんな」
と、埜月 宗人(ka6994)が言った。
「ちゃんと聞いとかな後々困るし、自己紹介はきちんとやっとこ? 俺は埜月宗人。どうぞ、本日はよろしゅうな」
そうですね、と旅人はその提案をのんだ。目的の村までは日没までに十分間に合うのだ。
「……ファリスはファリスと言いますの。兄様のお名前は?」
「私はロスと申します。本日はみなさま、どうぞ宜しくお願いしますね」
旅人ロスは、落ち着いた態度で言うのだった。
「コウだ。宜しく頼むな」
そして、コウの側で黒い銃を背負ったイルミナ(ka5759)も、呟くように自分の名を告げた。
「私はイルミナ。コウがやるっていうなら良いわ……」
続いて、鋭い青い目の女性、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が冷徹に旅人へ宣告する。
「私はコーネリア・ミラ・スペンサー。ロス、といったか。その信念の強さだけは褒めてやる。だが無茶をして命を散らしては無様が過ぎるぞ」
「そうですね……この度はご迷惑おかけします。私としてもこの性質は如何ともし難く、宿命じみたものを感じなくもありません」
「私は軍人、戦闘のプロだ。死にたくなかったら私の傍を離れるなよ」
コーネリアが無茶な行動をするなと釘を刺す。
「……ちっちゃくてもファリスも荒事の経験は積んでいるの。だから、いざ雑魔が現れた時にはファリス達の指示に必ず従って欲しいの」
と、ファリスも言葉を重ねた。
「ええ、もちろんです。私が私の道を邪魔するものに容赦できないように、私もあなたたちの任務を邪魔しないよう努めます。どうぞ、宜しくお願いします、コーネリアさん、ファリスさん、そしてハンターのみなさん」
旅人は、今一度ハンターたちに頭を下げた。コーネリアは、
「存外、理性が働くじゃないか。その範囲でなら勝手にするがいい」
ほんの少し態度を緩めて言うのだった。
「最後かしら? 私はアティアよ。道中、できればあなたの話を聞かせてほしいわ、ロスさん」
こうして、今回の旅の仲間が集結し、ついに東の村へ向かって出発した。
この日は、青い空にいくつかの雲が浮かぶばかりの気持ちの良い秋晴れであった。
「ええ、あの村の酒場の女将さんはとても良い人でした。料理美味しかったですし。いろいろサービスしてくれましたし。しかし、狼の話を聞いてうっかり私はお勘定を払うのを忘れましたが……」
「ちゃんと払ったん?」
「あ、当たり前です! 私はかっとなって忘れることはあっても、誠意までは忘れ去ってはいないつもりです!」
「もっといろいろ聞かせてほしいわ、ロスさん」
アティアは旅人の話に興味が尽きないらしい。
「ふむ。それじゃあ、ある盗賊の宝の隠し場所を見つけてしまった時の話を……」
彼らはいろいろなことについて話していた。ことに、宗人はうまく会話をリードしていた。
一行は街道を、旅人を中心にいそぐともなく歩いている。コウは魁を、宗人は殿をつとめていた。
先を行くコウの背中を見つつ、イルミナはコウと離れるのを不安に思い、同時に彼が無茶をしないかと心配していた。
「あ、そろそろお昼ですね。少し休憩しませんか? 実は例の酒場の女将がハンターのみなさんにもとお弁当を作ってくださったのです」
ロスが抱えていた大きな包みを指して言った。
「女将さん良い人過ぎるやろ……」
宗人はちょっと呆れて言うのだった。
どこかで狼の遠吠えが聞こえた気がした。
休息を経て一行は進んでいく。いつの間にか空は曇り出していた。
「雨は降らないみたいだな」
コウが、空や風を観察して判断した。
「涼しくて歩きやすい、とも言えるのかしら」
アティアが頭上にたれ込める暗雲を見て言う。どこか不穏な灰色の雲だった。
「ちょっと、怖い感じがするの……」
「まだ、視界に支障をきたす暗さではないが−−−−」
と、コーネリアが言い終わるか終わらないかのうちに、
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
という森に谺する遠吠えが聞こえた、気がした。
「……遠吠え?」
イルミナが呟く。オフィスからの情報では、雑魔狼の一体はよく遠吠えを行い、その度に仲間の狼たちの凶暴性が増していたという。
「どっちの方角だ?」
コウが全神経を巡らせて、周囲を睨む。
背の高い木々に反響してか、正確な発信源は掴めなかった。
ハンターたちは歩みを止めた。
「もう一度言う。私のそばを離れるなよ?」
コーネリアが再度旅人に釘を刺す。
「ええ、もちろんですとも。私にも果たさねばならない約束があります。食らいついていきますよ、敵の狼にも負けず劣らずね!」
「あんま、上手ないなぁ」
宗人はこの少ない時間ですっかり旅人の人となりを理解したらしい。やんわりとつっこんで、
「でも、そういう余裕も大切やな」
と、武器を構えるのだった。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
さらに近くで、遠吠えが聞こえた。そして、その刹那、街道の左右から狼の群が飛び出して来た。その数、11体。生半可な狩人では瞬殺される数だ。
しかし、彼らは覚醒者たるハンターだ。その程度で怯みも引きもしない。
ハンターたちは狼の奇襲を避けつつ、敵の布陣を見極める。いくつかかすった攻撃もあったが、致命傷には程遠い。
「数ばかりで芸がない」
コーネリアは身を呈して旅人を守り、牙がかすったために額から血を流していた。
「見ていろ。格の違いというものをわからせてやる」
狼と旅人にそう宣言し、コーネリアは銃をぶっ放した。威嚇射撃で移動を阻止した隙に、敵を蜂の巣にする容赦のない攻撃だった。
旅人は、耳を弄する銃声も気にせずその勇ましくも精緻な射撃に見ほれていた。
「……万が一の為の保険なの」
ファリスはプロテクションを仲間と旅人に施す。
「ありがとうございます。ご武運を!」
旅人はファリスを激励して、送り出した。
ファリスは、味方を巻き込まない距離まで移動し、2体の狼と退治する。
「……爆炎よ。弾け、敵を焼き焦がせ!」
その体に6枚の羽を生やしたファリスは、可憐な外見とは裏腹に、躊躇なく魔法を浴びせる。
狼は白く輝く火球の炸裂を受けて、灰燼に帰した。
「にしても、数が多いな」
敵の出現を受けてコウは一旦後続のハンターたちと合流していた。コウはその動線を邪魔する敵を斬りつけて移動したので、その刃をうけた狼たちは恨めしそうにコウを睨み、唸っていた。むき出しの牙からはよだれが地面に伝う。
「……そういうの、気持ち悪い」
イルミナは、旅人のそばで、体を低くし射撃ポイントを定めて、狼へ弾丸を撃ち込む。それは、狼の口に命中し牙を砕いて体を穿った。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
また、遠吠えが聞こえた。狼たちは、ますます瞳をぎらつかせ、牙をこれでもかとむき出してハンターへ襲いかかる。
「遠吠えの発生源はどこだ!?」
「わからない! まずは、この狼たちを凌ぐことを考えましょう!」
アティアが盾を使い、狼の突進を防ぐ。敵がその衝撃に悶えているところへ、聖なる光の弾丸を撃ち込んだ。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
「狼さんとのお戯れーってな」
殿をつとめる宗人には、多くの狼が群がっていた。
宗人は剣を投擲し、確実に敵を仕留めていた。2つの刀創をうけた狼は、地面に倒れるより先に塵となって霧散していく。
「どこまでやれるかわからんけどせっかくやん? 一つ盛大に暴れてみよか。すり抜けてしもた奴はまかせるで」
「任せろ。殲滅してくれる」
宗人をすり抜けた2体の狼は、しかし旅人に近づく前にマテリアルの込められたコーネリアの連続射撃をまともに食い、勢いのままに前足から崩れ落ちて塵となった。
「これで、残り6体なの!」
ファリスがカウントする。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
無傷の狼はいないが、その闘志は遠吠えによって煽られていく。
「自身は隠れて指示など、小癪ね……!」
アティアが、盾で狼を弾きかえす。
「よっと! これで残り5体やで!」
宗人の放った刃が狼に着弾し、その体を霧散させる。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
その時、森の中に、灰色の影が見えた。遠吠えの主、この雑魔狼のリーダーだ。
気づいたハンターたちが対応するより早く、リーダーの狼は、ほかの個体よりも大きな体で、イルミナ目掛けて飛びかかった。
猛烈な体当たりは、射撃姿勢をとっていたイルミナを大きく吹き飛ばす。
「イルミナ!」
コウがうずくまるイルミナに呼びかける。
「……氷箭よ。敵を貫き凍らせ!」
一撃離脱を目論む狼へファリスのアイスボルトが殺到し、体の一部を凍てつかせた。
「ついに現れたな」
コーネリアが、まだ残っている平狼たちを撃ち据えながら横目でリーダー狼を確認する。
この集団を束ねる一際大きな狼は、ハンターたちを睨めつけ、その赤く汚れた乱杭歯をむき出して、今一度遠吠えを放った。
宗人は殿で相対していた狼を退治しおわった。巧みな回避で、負傷は少なかったようだ。
「取り巻きは任しとき。リーダーさんは頼むで」
「ええ、もちろん。ここまで来たら出し惜しみはなしよ!」
アティアは光弾を釣瓶打ちにする。リーダー狼はそれに体を削られつつも、機敏に戦場を駆け抜ける。
「……さっき、とても痛かったわ」
イルミナは、再び銃を構え、マテリアルを込めた弾丸をリーダー狼へ撃ち込むも、彼は飛び跳ねて回避する。しかし、その退路の先にはコウがいた。
リーダー狼は足を撓めてコウへ体当たりを敢行する。
コウはそれを、狼の進路上から動かずに、体を一層低く、地面すれすれになるまで体を仰け反らせることで避けきった。そして、跳ね起きざま、狼が未だ自身の上空にいるタイミングで、逆手に持ったナイフで敵の首を掻き切った。
狼は勢いを殺せずそのまま、顔面から地面に激突した。
コウは、そのまま前転、瞬時に体を反転させ狼を見据える。
「まだ生きてんのかよ。丈夫だな」
コウは、不敵に笑う。
「もってあと一撃くらいか? いいぜ、決着をつけよう」
「……コウ、援護は任せて」
イルミナはスコープを覗き込みその死闘に参加する。
「これで、あと3体なの!」
ファリスは平狼の掃討にあたっていた。
「おい、旅人、生きているな? 死なれては後味が悪い」
「ええ、もちろん生きていますよ! みなさんのおかげでなんとか無傷です!」
旅人ロスは、万が一のために護身用の短剣を構えながらも、ハンターたちの指示に従い立ち回っていた。無傷とはいえ、命の危機に瀕しているので、彼は多少ハイテンションな反応を示すのだった。
「そいつは重畳や。あとちょっと、がんばれそうか?」
「ファリスもがんばるから、ロス兄様もがんばって欲しいの!」
「私も伊達に旅人とかいう謎の職業やってませんからね! 体力と図々しさと逃げ足とトラブルメイキングには自信ありますよ!」
「最後のだけちょっと不安やな……。ま、それだけ喋れるってことは、元気の証明ってことにしとこか」
旅人を気遣いながらも宗人は武器を投擲し、狼を絶命させる。
「これで残り2体。リーダーさんを含めればあと3体やな」
「リーダーはあちらに任せるとしよう」
コーネリアは、コウと対峙する、首に傷のできたリーダー狼を見ていった。
「ファリスはファリスにできることをするの」
ファリスは手にした杖にマテリアルを集中させていく。可愛らしい口調とは裏腹に、凝縮していくマテリアルには一切の仮借がない。
「……火箭よ。敵を焼き貫け!」
その言葉とともに杖からはじき出された炎の矢は、狼の体を貫いた。
最後の力を振り絞ってか、リーダーの狼は、攻撃を巧みに回避していた。
「あんまり、手こずらせないでちょうだい」
アティアの断罪の杭が狼の四肢を地面へ縫いつけた。
「いまよ!」
イルミナはマテリアルの込められた弾丸を撃ち込んだ。
さらに、コウの刃が狼へ突き出される。
その2撃を浴びて、ついにリーダー狼は倒れ、その体は塵に還元されていった。
平狼は、あと1体だった。
彼は、リーダー狼が倒れるのを横目で見ていた。それを見て、きゅう、と悲しそうに鳴いた。
「お前で最後か」
コーネリアが冷たく言い放つ。照準を狼へ合わせる。
狼も、これで最後と確信したらしい。彼がコーネリアに飛びかかるとの、銃声が響き渡ったのは同時であった。
コーネリアの弾丸は狼の額を貫通し、葬り去った。
「これで戦闘は終了だ。無論、生きているな、旅人」
「お見事。やはり戦闘能力ではハンターの皆様には叶いませんね」
旅人は、ハンターたちの戦いぶりを讃えた。
いつしか、曇天は切り裂かれ、その合間から太陽が顔を覗かせていた。
一行は東の村へ無事にたどり着いた。
その後の道中はとても朗らかだった。大したトラブルもなく、他愛のない話に花を咲かせて歩いていた。
「この度はありがとうございました。皆様のおかげで、無事約束を果たせそうです」
「男気があるのは大変結構だけど、あんまり無茶はしないでね」
と、別れ際、アティアはやんわり忠告した。
「まあ、このタチと離別する時があるとは思えませんが、気をつけることにします」
旅人は恥ずかしそうに頭をかいた。
「終わりよければって言うやろ? 短いけど、いい旅やったわ」
「それじゃ、さよならなの。ロス兄様」
ファリスは手を振って別れの挨拶とした。
それぞれ、ハンターたちと旅人は別れを惜しんだり惜しまなかったり、すくなくとも旅人は別れを惜しんでいた。
こうしてハンターたちは帰り道についた。
すでに、空は晴れ渡り、麗しい日差しがその道を照らしていた。
コウ(ka3233)たち、ハンター一行は依頼のあった村の東の門に向かっていた。
それを聞いて、朝の陽光に銀の髪を煌めかせてファリス(ka2853)が言う。
「街道にいつまでも雑魔がのさばっていたら安心して通ることも出来ないの。だから早めに退治するのに越したことはないの。ファリスも頑張るの」
「まあ、請け負った以上、必ず無事に届けてやるさ」
と、コウは思考を切り替えることにした。
そう、朝の陽光、である。時刻は朝7時ちょっと前。
「この手のことは早めに終わらせたほうがいいと思うし、村のためにもなると思うわ。それに、なかなか男気があるんじゃないかしら、例の旅人さん」
アティア・ディレン(ka6918)は旅人に肯定的であった。
「ふっ、来ましたね!」
東の門には、その依頼の決行日を無理やり変更させた例の旅人が、仁王立ちで大きな包みを抱えて待っていた。
「さあ、それでは旅立ちといきましょう!」
「そう急ぎなさんな」
と、埜月 宗人(ka6994)が言った。
「ちゃんと聞いとかな後々困るし、自己紹介はきちんとやっとこ? 俺は埜月宗人。どうぞ、本日はよろしゅうな」
そうですね、と旅人はその提案をのんだ。目的の村までは日没までに十分間に合うのだ。
「……ファリスはファリスと言いますの。兄様のお名前は?」
「私はロスと申します。本日はみなさま、どうぞ宜しくお願いしますね」
旅人ロスは、落ち着いた態度で言うのだった。
「コウだ。宜しく頼むな」
そして、コウの側で黒い銃を背負ったイルミナ(ka5759)も、呟くように自分の名を告げた。
「私はイルミナ。コウがやるっていうなら良いわ……」
続いて、鋭い青い目の女性、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が冷徹に旅人へ宣告する。
「私はコーネリア・ミラ・スペンサー。ロス、といったか。その信念の強さだけは褒めてやる。だが無茶をして命を散らしては無様が過ぎるぞ」
「そうですね……この度はご迷惑おかけします。私としてもこの性質は如何ともし難く、宿命じみたものを感じなくもありません」
「私は軍人、戦闘のプロだ。死にたくなかったら私の傍を離れるなよ」
コーネリアが無茶な行動をするなと釘を刺す。
「……ちっちゃくてもファリスも荒事の経験は積んでいるの。だから、いざ雑魔が現れた時にはファリス達の指示に必ず従って欲しいの」
と、ファリスも言葉を重ねた。
「ええ、もちろんです。私が私の道を邪魔するものに容赦できないように、私もあなたたちの任務を邪魔しないよう努めます。どうぞ、宜しくお願いします、コーネリアさん、ファリスさん、そしてハンターのみなさん」
旅人は、今一度ハンターたちに頭を下げた。コーネリアは、
「存外、理性が働くじゃないか。その範囲でなら勝手にするがいい」
ほんの少し態度を緩めて言うのだった。
「最後かしら? 私はアティアよ。道中、できればあなたの話を聞かせてほしいわ、ロスさん」
こうして、今回の旅の仲間が集結し、ついに東の村へ向かって出発した。
この日は、青い空にいくつかの雲が浮かぶばかりの気持ちの良い秋晴れであった。
「ええ、あの村の酒場の女将さんはとても良い人でした。料理美味しかったですし。いろいろサービスしてくれましたし。しかし、狼の話を聞いてうっかり私はお勘定を払うのを忘れましたが……」
「ちゃんと払ったん?」
「あ、当たり前です! 私はかっとなって忘れることはあっても、誠意までは忘れ去ってはいないつもりです!」
「もっといろいろ聞かせてほしいわ、ロスさん」
アティアは旅人の話に興味が尽きないらしい。
「ふむ。それじゃあ、ある盗賊の宝の隠し場所を見つけてしまった時の話を……」
彼らはいろいろなことについて話していた。ことに、宗人はうまく会話をリードしていた。
一行は街道を、旅人を中心にいそぐともなく歩いている。コウは魁を、宗人は殿をつとめていた。
先を行くコウの背中を見つつ、イルミナはコウと離れるのを不安に思い、同時に彼が無茶をしないかと心配していた。
「あ、そろそろお昼ですね。少し休憩しませんか? 実は例の酒場の女将がハンターのみなさんにもとお弁当を作ってくださったのです」
ロスが抱えていた大きな包みを指して言った。
「女将さん良い人過ぎるやろ……」
宗人はちょっと呆れて言うのだった。
どこかで狼の遠吠えが聞こえた気がした。
休息を経て一行は進んでいく。いつの間にか空は曇り出していた。
「雨は降らないみたいだな」
コウが、空や風を観察して判断した。
「涼しくて歩きやすい、とも言えるのかしら」
アティアが頭上にたれ込める暗雲を見て言う。どこか不穏な灰色の雲だった。
「ちょっと、怖い感じがするの……」
「まだ、視界に支障をきたす暗さではないが−−−−」
と、コーネリアが言い終わるか終わらないかのうちに、
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
という森に谺する遠吠えが聞こえた、気がした。
「……遠吠え?」
イルミナが呟く。オフィスからの情報では、雑魔狼の一体はよく遠吠えを行い、その度に仲間の狼たちの凶暴性が増していたという。
「どっちの方角だ?」
コウが全神経を巡らせて、周囲を睨む。
背の高い木々に反響してか、正確な発信源は掴めなかった。
ハンターたちは歩みを止めた。
「もう一度言う。私のそばを離れるなよ?」
コーネリアが再度旅人に釘を刺す。
「ええ、もちろんですとも。私にも果たさねばならない約束があります。食らいついていきますよ、敵の狼にも負けず劣らずね!」
「あんま、上手ないなぁ」
宗人はこの少ない時間ですっかり旅人の人となりを理解したらしい。やんわりとつっこんで、
「でも、そういう余裕も大切やな」
と、武器を構えるのだった。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
さらに近くで、遠吠えが聞こえた。そして、その刹那、街道の左右から狼の群が飛び出して来た。その数、11体。生半可な狩人では瞬殺される数だ。
しかし、彼らは覚醒者たるハンターだ。その程度で怯みも引きもしない。
ハンターたちは狼の奇襲を避けつつ、敵の布陣を見極める。いくつかかすった攻撃もあったが、致命傷には程遠い。
「数ばかりで芸がない」
コーネリアは身を呈して旅人を守り、牙がかすったために額から血を流していた。
「見ていろ。格の違いというものをわからせてやる」
狼と旅人にそう宣言し、コーネリアは銃をぶっ放した。威嚇射撃で移動を阻止した隙に、敵を蜂の巣にする容赦のない攻撃だった。
旅人は、耳を弄する銃声も気にせずその勇ましくも精緻な射撃に見ほれていた。
「……万が一の為の保険なの」
ファリスはプロテクションを仲間と旅人に施す。
「ありがとうございます。ご武運を!」
旅人はファリスを激励して、送り出した。
ファリスは、味方を巻き込まない距離まで移動し、2体の狼と退治する。
「……爆炎よ。弾け、敵を焼き焦がせ!」
その体に6枚の羽を生やしたファリスは、可憐な外見とは裏腹に、躊躇なく魔法を浴びせる。
狼は白く輝く火球の炸裂を受けて、灰燼に帰した。
「にしても、数が多いな」
敵の出現を受けてコウは一旦後続のハンターたちと合流していた。コウはその動線を邪魔する敵を斬りつけて移動したので、その刃をうけた狼たちは恨めしそうにコウを睨み、唸っていた。むき出しの牙からはよだれが地面に伝う。
「……そういうの、気持ち悪い」
イルミナは、旅人のそばで、体を低くし射撃ポイントを定めて、狼へ弾丸を撃ち込む。それは、狼の口に命中し牙を砕いて体を穿った。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
また、遠吠えが聞こえた。狼たちは、ますます瞳をぎらつかせ、牙をこれでもかとむき出してハンターへ襲いかかる。
「遠吠えの発生源はどこだ!?」
「わからない! まずは、この狼たちを凌ぐことを考えましょう!」
アティアが盾を使い、狼の突進を防ぐ。敵がその衝撃に悶えているところへ、聖なる光の弾丸を撃ち込んだ。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
「狼さんとのお戯れーってな」
殿をつとめる宗人には、多くの狼が群がっていた。
宗人は剣を投擲し、確実に敵を仕留めていた。2つの刀創をうけた狼は、地面に倒れるより先に塵となって霧散していく。
「どこまでやれるかわからんけどせっかくやん? 一つ盛大に暴れてみよか。すり抜けてしもた奴はまかせるで」
「任せろ。殲滅してくれる」
宗人をすり抜けた2体の狼は、しかし旅人に近づく前にマテリアルの込められたコーネリアの連続射撃をまともに食い、勢いのままに前足から崩れ落ちて塵となった。
「これで、残り6体なの!」
ファリスがカウントする。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
無傷の狼はいないが、その闘志は遠吠えによって煽られていく。
「自身は隠れて指示など、小癪ね……!」
アティアが、盾で狼を弾きかえす。
「よっと! これで残り5体やで!」
宗人の放った刃が狼に着弾し、その体を霧散させる。
ウォオ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ン
その時、森の中に、灰色の影が見えた。遠吠えの主、この雑魔狼のリーダーだ。
気づいたハンターたちが対応するより早く、リーダーの狼は、ほかの個体よりも大きな体で、イルミナ目掛けて飛びかかった。
猛烈な体当たりは、射撃姿勢をとっていたイルミナを大きく吹き飛ばす。
「イルミナ!」
コウがうずくまるイルミナに呼びかける。
「……氷箭よ。敵を貫き凍らせ!」
一撃離脱を目論む狼へファリスのアイスボルトが殺到し、体の一部を凍てつかせた。
「ついに現れたな」
コーネリアが、まだ残っている平狼たちを撃ち据えながら横目でリーダー狼を確認する。
この集団を束ねる一際大きな狼は、ハンターたちを睨めつけ、その赤く汚れた乱杭歯をむき出して、今一度遠吠えを放った。
宗人は殿で相対していた狼を退治しおわった。巧みな回避で、負傷は少なかったようだ。
「取り巻きは任しとき。リーダーさんは頼むで」
「ええ、もちろん。ここまで来たら出し惜しみはなしよ!」
アティアは光弾を釣瓶打ちにする。リーダー狼はそれに体を削られつつも、機敏に戦場を駆け抜ける。
「……さっき、とても痛かったわ」
イルミナは、再び銃を構え、マテリアルを込めた弾丸をリーダー狼へ撃ち込むも、彼は飛び跳ねて回避する。しかし、その退路の先にはコウがいた。
リーダー狼は足を撓めてコウへ体当たりを敢行する。
コウはそれを、狼の進路上から動かずに、体を一層低く、地面すれすれになるまで体を仰け反らせることで避けきった。そして、跳ね起きざま、狼が未だ自身の上空にいるタイミングで、逆手に持ったナイフで敵の首を掻き切った。
狼は勢いを殺せずそのまま、顔面から地面に激突した。
コウは、そのまま前転、瞬時に体を反転させ狼を見据える。
「まだ生きてんのかよ。丈夫だな」
コウは、不敵に笑う。
「もってあと一撃くらいか? いいぜ、決着をつけよう」
「……コウ、援護は任せて」
イルミナはスコープを覗き込みその死闘に参加する。
「これで、あと3体なの!」
ファリスは平狼の掃討にあたっていた。
「おい、旅人、生きているな? 死なれては後味が悪い」
「ええ、もちろん生きていますよ! みなさんのおかげでなんとか無傷です!」
旅人ロスは、万が一のために護身用の短剣を構えながらも、ハンターたちの指示に従い立ち回っていた。無傷とはいえ、命の危機に瀕しているので、彼は多少ハイテンションな反応を示すのだった。
「そいつは重畳や。あとちょっと、がんばれそうか?」
「ファリスもがんばるから、ロス兄様もがんばって欲しいの!」
「私も伊達に旅人とかいう謎の職業やってませんからね! 体力と図々しさと逃げ足とトラブルメイキングには自信ありますよ!」
「最後のだけちょっと不安やな……。ま、それだけ喋れるってことは、元気の証明ってことにしとこか」
旅人を気遣いながらも宗人は武器を投擲し、狼を絶命させる。
「これで残り2体。リーダーさんを含めればあと3体やな」
「リーダーはあちらに任せるとしよう」
コーネリアは、コウと対峙する、首に傷のできたリーダー狼を見ていった。
「ファリスはファリスにできることをするの」
ファリスは手にした杖にマテリアルを集中させていく。可愛らしい口調とは裏腹に、凝縮していくマテリアルには一切の仮借がない。
「……火箭よ。敵を焼き貫け!」
その言葉とともに杖からはじき出された炎の矢は、狼の体を貫いた。
最後の力を振り絞ってか、リーダーの狼は、攻撃を巧みに回避していた。
「あんまり、手こずらせないでちょうだい」
アティアの断罪の杭が狼の四肢を地面へ縫いつけた。
「いまよ!」
イルミナはマテリアルの込められた弾丸を撃ち込んだ。
さらに、コウの刃が狼へ突き出される。
その2撃を浴びて、ついにリーダー狼は倒れ、その体は塵に還元されていった。
平狼は、あと1体だった。
彼は、リーダー狼が倒れるのを横目で見ていた。それを見て、きゅう、と悲しそうに鳴いた。
「お前で最後か」
コーネリアが冷たく言い放つ。照準を狼へ合わせる。
狼も、これで最後と確信したらしい。彼がコーネリアに飛びかかるとの、銃声が響き渡ったのは同時であった。
コーネリアの弾丸は狼の額を貫通し、葬り去った。
「これで戦闘は終了だ。無論、生きているな、旅人」
「お見事。やはり戦闘能力ではハンターの皆様には叶いませんね」
旅人は、ハンターたちの戦いぶりを讃えた。
いつしか、曇天は切り裂かれ、その合間から太陽が顔を覗かせていた。
一行は東の村へ無事にたどり着いた。
その後の道中はとても朗らかだった。大したトラブルもなく、他愛のない話に花を咲かせて歩いていた。
「この度はありがとうございました。皆様のおかげで、無事約束を果たせそうです」
「男気があるのは大変結構だけど、あんまり無茶はしないでね」
と、別れ際、アティアはやんわり忠告した。
「まあ、このタチと離別する時があるとは思えませんが、気をつけることにします」
旅人は恥ずかしそうに頭をかいた。
「終わりよければって言うやろ? 短いけど、いい旅やったわ」
「それじゃ、さよならなの。ロス兄様」
ファリスは手を振って別れの挨拶とした。
それぞれ、ハンターたちと旅人は別れを惜しんだり惜しまなかったり、すくなくとも旅人は別れを惜しんでいた。
こうしてハンターたちは帰り道についた。
すでに、空は晴れ渡り、麗しい日差しがその道を照らしていた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/28 08:25:15 |
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作戦卓 アティア・ディレン(ka6918) ドラグーン|22才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/09/28 21:48:23 |