ゲスト
(ka0000)
【孤唱】三者の思い
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/03 22:00
- 完成日
- 2017/10/10 20:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●行動
憂悦孤唱プエルは拠点を確保しようと実家に戻った。
「ああああ、丘の真ん中の家がない」
叫んだ。
町を見下ろす丘に元々実家があったのだが、プエルが居座った事件もあり、ニコラス・クリシスが歪虚化しているということも表ざたになったため、速やかに家は壊され更地になったのだった。
「父上のところかな……」
ぶつぶつ言いながらエクラ教会に向かったところ、隠居もかねて一室借りていた父親は出て行ったようだった。町に新しい領主の館ができ、そちらに移ったらしい。
「……そこはなぁ」
領主の家となると、人の出入りも多くなる。必然、プエルがいることがばれやすくなる。大きい屋敷ならともかく、実家の性質を考えるとぎりぎりの大きさだろう。普段から掃除が行き届く大きさに違いない。
「あああ」
プエルは町の中をとぼとぼ歩く。
「川……はまずいかな」
「ああああああああああああああああああ」
川から甲高い声が聞こえ、反射的にプエルは振り返った。
「ウィンディ……」
マテリアルを感じごくりと喉を鳴らすが、川にいる彼女を相手にするのはリスクが大きいと判断した。
「……がーう! リーオー、カリ」
「……え? というか、しゃべれるんだ」
水の精霊リオ(仮)はコクンとうなずく。
「……んで……」
「……なんで?」
こくんと精霊はうなずく。プエルは何を聞かれているか想像する。
「うーん、楽しそうだったから」
「……」
「バイバイ」
プエルは手を振ると立ち去った。
リオ(仮)の範囲が及ばないあたりを見極めて、対岸に渡る。
そして、入り込めそうなところを発見した。すぐに見つからない、素敵なお部屋、逃げやすいという三拍子そろっていた。扉にはバリケードを作っておく。
「さて、僕の妹のイノア。よろしくね」
人形は立ち上がると、お辞儀をした。手には、プエルが渡した短刀が握られている。
「僕は探し物があるから……エクエス、以前、来ていたらしいし」
たぶん川を渡らないとならないが、渡れたのだからどうにかなると考えた。
●過去をつなぐ
マーク司祭は手紙を読み、すぐに友人たるマーナとアンジェ・ハウエルに連絡を取る。取るといってもどこにいるかわからないため、マーナの家に行き弟子のルゥルやアンジェの自宅に連絡を入れるにとどまる。
しばらくすると、二人が現れた。
「お久ぶりー」
「どうした、切羽詰まっていると聞いたぞ?」
マーナとアンジェはハンターとしてあちこち飛び回っている。ハンターの仕事でも戦うことではなく、旅を楽しみ、マーナは研究を楽しむといった風情ではある。
「クリシス領のことです」
「あー、坊ちゃん、とうとうあちこちに出没はしているらしいのお」
マーナはため息を漏らす。
「まさかって思っていたけど、あの領主さん……前領主さん、息子だと認めたから……」
「あの利発な坊ちゃんがねぇ」
マーナとアンジェは思い出して溜息を洩らした。
「関連の報告書は見たよ。あの当時、もし本当にレチタティーヴォの関与がわかっていたとして、何ができたのかって考えさせられた」
そのあと「たぶん、当時のわしらではどうしようもなかったのう」と続く。
「で、クリシス領で何かあったのかの?」
「の、隣でイノア様が殺人事件を起こしている、という話です」
「はあ?」
マーナとアンジェから素っ頓狂な声が上がった。
「そして、クリシス領の教会としてはことが大きくなる前にどうにかしたいそうですが隣の領地」
「……最悪じゃ」
「教会側としてはイノア様を信じているし、歪虚と契約しているという形跡もないはずだと考えています」
しかし、それ以外の行動もありえなくはない。
「第三者である私に相談を持ち掛けてきたわけです」
過去の事件を知り、信頼ができるという判断をしてきたという理由。
「……わかった。マークが行くのもアレじゃの。わしらが張り付くのが良いな」
「そうです」
「で、隣町での調査は?」
「そちらは現役のハンターに依頼出すよう、教会には返答します。ただ、隣の領地であり……そちらの領主が動いている可能性はあります」
「そうじゃの……手出しできぬか……ん?」
窓の外を見ると、ルゥルが覗き込んでいる影写っている。
マーナは静かに立ち上がると、窓を開け放った。
「みぎゃああ」
「立ち聞きは良くないぞ」
「みぎゃあああ、イノア様はかっこいいですうう」
首根っこ掴まれて部屋に入ってきたルゥルは第一声述べた。
「母上え」
「あらあら」
下されるとダッシュで近づきアンジェに抱き着く。
「ルゥルも行くですう」
アンジェはルゥルの頭を撫でる。
「そうね。でも、ほかにやることもあるでしょ? イノアさんのことはあたしたちに任せて、おうちで勉強しなさい」
「みぎゃああああ」
あしらわれてしがみついて泣いた。
●事件
ユリアン・メトーポンは町での事件に怒りを隠せない。
殺人事件が多発し始め、犯人の痕跡が見つからないからだ。
しかし、事件が増え、人々も警戒し、兵士も多く動き始めると、目撃情報が増え始めた。
少女のようだ、と。
身が軽い、とも聞こえる。これに関しては、捕まらないことを考えればその通りだ。
少女のようだというところに、髪の色や身長が伝わる。ただし、直接見ているわけではないため誤差は増える。
刺された場所、切られたところから推測も可能かもしれないが確証ではない。
「まさか、クリシスの娘が?」
もし、本当に彼女ならば?
いや、彼女が何もやっていなくとも犯人に仕立てあげることも可能である。
「いや、仕立て上げるにしても状況は調べないとならないな」
あまりにも荒唐無稽なことを言い出せば、自分の方が疑われることになる。
「身が軽いということはハンターや歪虚ということもありうるのか」
そして、ユリアンはハンターオフィスに依頼を出した。
町で起こる殺人事件を調査してほしい、と。
屋敷で起こっている珍事件はひとまず放置だった。猫かネズミでもいるのだろうと考えているため、犬を放てば終わるだろうと。
「領主様、真剣に取り合って下さらないわ」
「まあ、町の中の殺人事件の方が問題だものね」
「猫が皿毎持っていくかしら?」
「ユグディラだったら持っていくのじゃなくて?」
料理場ではそのような話で盛り上がっていた。
憂悦孤唱プエルは拠点を確保しようと実家に戻った。
「ああああ、丘の真ん中の家がない」
叫んだ。
町を見下ろす丘に元々実家があったのだが、プエルが居座った事件もあり、ニコラス・クリシスが歪虚化しているということも表ざたになったため、速やかに家は壊され更地になったのだった。
「父上のところかな……」
ぶつぶつ言いながらエクラ教会に向かったところ、隠居もかねて一室借りていた父親は出て行ったようだった。町に新しい領主の館ができ、そちらに移ったらしい。
「……そこはなぁ」
領主の家となると、人の出入りも多くなる。必然、プエルがいることがばれやすくなる。大きい屋敷ならともかく、実家の性質を考えるとぎりぎりの大きさだろう。普段から掃除が行き届く大きさに違いない。
「あああ」
プエルは町の中をとぼとぼ歩く。
「川……はまずいかな」
「ああああああああああああああああああ」
川から甲高い声が聞こえ、反射的にプエルは振り返った。
「ウィンディ……」
マテリアルを感じごくりと喉を鳴らすが、川にいる彼女を相手にするのはリスクが大きいと判断した。
「……がーう! リーオー、カリ」
「……え? というか、しゃべれるんだ」
水の精霊リオ(仮)はコクンとうなずく。
「……んで……」
「……なんで?」
こくんと精霊はうなずく。プエルは何を聞かれているか想像する。
「うーん、楽しそうだったから」
「……」
「バイバイ」
プエルは手を振ると立ち去った。
リオ(仮)の範囲が及ばないあたりを見極めて、対岸に渡る。
そして、入り込めそうなところを発見した。すぐに見つからない、素敵なお部屋、逃げやすいという三拍子そろっていた。扉にはバリケードを作っておく。
「さて、僕の妹のイノア。よろしくね」
人形は立ち上がると、お辞儀をした。手には、プエルが渡した短刀が握られている。
「僕は探し物があるから……エクエス、以前、来ていたらしいし」
たぶん川を渡らないとならないが、渡れたのだからどうにかなると考えた。
●過去をつなぐ
マーク司祭は手紙を読み、すぐに友人たるマーナとアンジェ・ハウエルに連絡を取る。取るといってもどこにいるかわからないため、マーナの家に行き弟子のルゥルやアンジェの自宅に連絡を入れるにとどまる。
しばらくすると、二人が現れた。
「お久ぶりー」
「どうした、切羽詰まっていると聞いたぞ?」
マーナとアンジェはハンターとしてあちこち飛び回っている。ハンターの仕事でも戦うことではなく、旅を楽しみ、マーナは研究を楽しむといった風情ではある。
「クリシス領のことです」
「あー、坊ちゃん、とうとうあちこちに出没はしているらしいのお」
マーナはため息を漏らす。
「まさかって思っていたけど、あの領主さん……前領主さん、息子だと認めたから……」
「あの利発な坊ちゃんがねぇ」
マーナとアンジェは思い出して溜息を洩らした。
「関連の報告書は見たよ。あの当時、もし本当にレチタティーヴォの関与がわかっていたとして、何ができたのかって考えさせられた」
そのあと「たぶん、当時のわしらではどうしようもなかったのう」と続く。
「で、クリシス領で何かあったのかの?」
「の、隣でイノア様が殺人事件を起こしている、という話です」
「はあ?」
マーナとアンジェから素っ頓狂な声が上がった。
「そして、クリシス領の教会としてはことが大きくなる前にどうにかしたいそうですが隣の領地」
「……最悪じゃ」
「教会側としてはイノア様を信じているし、歪虚と契約しているという形跡もないはずだと考えています」
しかし、それ以外の行動もありえなくはない。
「第三者である私に相談を持ち掛けてきたわけです」
過去の事件を知り、信頼ができるという判断をしてきたという理由。
「……わかった。マークが行くのもアレじゃの。わしらが張り付くのが良いな」
「そうです」
「で、隣町での調査は?」
「そちらは現役のハンターに依頼出すよう、教会には返答します。ただ、隣の領地であり……そちらの領主が動いている可能性はあります」
「そうじゃの……手出しできぬか……ん?」
窓の外を見ると、ルゥルが覗き込んでいる影写っている。
マーナは静かに立ち上がると、窓を開け放った。
「みぎゃああ」
「立ち聞きは良くないぞ」
「みぎゃあああ、イノア様はかっこいいですうう」
首根っこ掴まれて部屋に入ってきたルゥルは第一声述べた。
「母上え」
「あらあら」
下されるとダッシュで近づきアンジェに抱き着く。
「ルゥルも行くですう」
アンジェはルゥルの頭を撫でる。
「そうね。でも、ほかにやることもあるでしょ? イノアさんのことはあたしたちに任せて、おうちで勉強しなさい」
「みぎゃああああ」
あしらわれてしがみついて泣いた。
●事件
ユリアン・メトーポンは町での事件に怒りを隠せない。
殺人事件が多発し始め、犯人の痕跡が見つからないからだ。
しかし、事件が増え、人々も警戒し、兵士も多く動き始めると、目撃情報が増え始めた。
少女のようだ、と。
身が軽い、とも聞こえる。これに関しては、捕まらないことを考えればその通りだ。
少女のようだというところに、髪の色や身長が伝わる。ただし、直接見ているわけではないため誤差は増える。
刺された場所、切られたところから推測も可能かもしれないが確証ではない。
「まさか、クリシスの娘が?」
もし、本当に彼女ならば?
いや、彼女が何もやっていなくとも犯人に仕立てあげることも可能である。
「いや、仕立て上げるにしても状況は調べないとならないな」
あまりにも荒唐無稽なことを言い出せば、自分の方が疑われることになる。
「身が軽いということはハンターや歪虚ということもありうるのか」
そして、ユリアンはハンターオフィスに依頼を出した。
町で起こる殺人事件を調査してほしい、と。
屋敷で起こっている珍事件はひとまず放置だった。猫かネズミでもいるのだろうと考えているため、犬を放てば終わるだろうと。
「領主様、真剣に取り合って下さらないわ」
「まあ、町の中の殺人事件の方が問題だものね」
「猫が皿毎持っていくかしら?」
「ユグディラだったら持っていくのじゃなくて?」
料理場ではそのような話で盛り上がっていた。
リプレイ本文
●情報
ユリアン・メトーポンから事件の概要を聞いて、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は心の中でつぶやく。
(イノアに似た歪虚に消える菓子か……まさかアイツがこの近くに戻ってきたのか?)
プエル(kz0127)は菓子類に興味を持っている様子がある。
食べ物が消えることはユリアン自身は町の事件という情報として与えたに過ぎない。
ミオレスカ(ka3496)はユリアンの説明を聞き内心首をかしげる。
「推定イノアさん? 心技体とも、そのようなお方ではなかったとは思いますが」
イノア・クリシスを知っている者は首をかしげざるを得ない。イノアの身に何かあったのか、それともたまたま似たような人物と言うだけか。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は眉を吊り上げ、ユリアンを見る。
「ご領主、そういう意図がある、と我々にすらわかるようににおわせるのは短慮の部類だと思うが。話を聞く限り少なくとも人間には無理な話だ。少女で大の男を殺すなら、相当な技術や違う何かが必要だと――武人ならわかるだろう?」
武術に対して関心があるユリアンへの挑戦ともとれたが、ルベーノの言葉は事実である。しかし、尊大な態度により苛立ちを覚えて声を上げかかった。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)はルベーノに同意しうなずきつつ、ユリアンの怒りをそらした。
「疑心暗鬼ってやつだなー。それを調べるためにあたしたちがいるんだよね」
ユリアンは鷹揚にうなずく。
小宮・千秋(ka6272)は元気よくこぶしをあげる。
「ほいほーい! 殺人事件は怖いですねー。町の平和のため、国の平穏のため、一刻も早く犯人さんを捕まえないといけませーん!」
メイム(ka2290)は仲間が言うことに同意を示すと同時に、時期的なことも考え「プエルだろうなぁ」と想像する。
「ねー、犯人に捜してもらいやすいように、夜間の出歩き禁止してほしいんだけど……戒厳令だと困るんだよね、犯人が警戒するから」
その件に関してはユリアンは協力すると告げる。領内の安定は重要だ。
ミリア・ラスティソード(ka1287)は眉間にしわを寄せつつ念のために問う。
「ここで食べ物が消えるのは調べなくていいんだな?」
ユリアンとしては二の次と考えている。一方でハンターたちは余力があるうちは調べるつもりはあった。
ロニ・カルディス(ka0551)は情報を整理し、ユリアンにハンターたちの方針を告げる。
「まずは情報収集からだな。それから、夜は我々がおとりを兼ね見回りをする」
「うむ、頼むぞ」
ユリアンの言葉をもらい、それぞれ調べるべきところに向かった。
●調査
行先を決めた結果、ミオレスカは領主館に留まり、もう一つ起こっている事件の聞き込みをした。
「おやつがなくなっている? 由々しき事態ですね」
台所にいる人たちは話を聞いてくれるミオレスカに口々に告げる。
何かいるのでは、と思うこと自体が不安であり精神衛生上よろしくない。そもそも領主の足元なのだから、特に問題なはずだ。
食べ物が消える時間帯は一定ではないが、朝の焼き立てパンや果物、お茶用の焼き菓子も消えた。夜は特に置いてないためか動きはない。
「では、試しにミラクルケーキを置いてみます」
愛らしいケーキを窓辺の見えるところに置き、夜の見回りまで見張りをする。
ピアレーチェは川の両方の渡し船乗り場で聞き込みをする。不審人物を見たかという問いかけに、誰もがいないと答えるが疑心暗鬼は感じた。
「ありがとう。ついでにリオちゃんにも聞き込みだよ」
彼女が名前を付けた水の精霊はこの川に住んでいる。違う視点で見ている可能性もある。
祠のところに行き、供え物としてパンを出そうしたとき「あああああああ」と声が響いた。
「び、びっくりした」
ピアレーチェが振り返ると、水の精霊のリオ(仮)がいた。
「いーて! いーこーがきた!」
「え?」
「でーもー」
どんどんと足踏みをする。言葉を発せるとはいえ、まだうまく操れず感情を表現できずにイライラしているようだ。
「落ち着いて。まずは元気してた? 挨拶から。で、実は情報を集めているんだよ。あっちで殺人事件が起こっているけど知ってる?」
「あーー、にーこーらーすが、きたー」
必死にしゃべり所々悲鳴状態になるリオ(仮)の話に耳を傾けることとなった。
レイオスとルベーノは領主のイノアに会いに行く。アポイントなくとも会えるか不明だが、事件が事件であるため、状況は知りたいところだった。
事件のことと告げると通してくれた。挨拶もそこそこに事件のことを切り出す。
「イノアを疑っちゃいないさ。ただ、歪虚をぶっ飛ばしたと思って、操られた本人でした、じゃすまないしな」
レイオスの言葉にイノアは礼を告げる。
「幸い、教会の方が気にしてくれたので、第三者であるハンターを護衛としてつけてくれました」
レイオスとルベーノは見知らぬエルフの女性が挨拶をするのを見てうなずいた。
「で、一つ気になるのが、ここの関係で情報を調べたら、プエルが最近『父上のところに行く』と言ったらしい」
ルベーノの言葉をレイオスは肯定した。
「プエルに対してのあんたたちのスタンスを決めたほうがいいだろう」
「それは一貫しています。兄は……いえ、歪虚のプエルは倒してかまいません」
イノアはきっぱりと言った。
「そうか。穏やかに暮らしたがる歪虚もごくわずかに存在するし……」
ルベーノはイノアの決心を考え「兄弟への情も否定できない」と言う言葉は飲み込んだ。揺らがせることもないのだから。
「その時は協力は惜しまん」
「ありがとうございます」
イノアは頭を下げた。
「異常があったら連絡をくれ。事件解決まで隣の町にいるから。あ、帰りがけに台所借りていいか?」
レイオスは告げる。良いというイノアに疑問符が浮かんでいる。
「あっちで、菓子やパンが消えるって事件があるらしいから、ちょっと細工した菓子でも置いてみようと思って」
イノアはうなずき、護衛の女性は苦笑していた。
メイムは情報収集をしつつ、新しい被害者とされている者の家に向かう。【深淵の声】を使うためであり、遺族が嫌がれば引き下がるしかない。
話を聞いた家の者たちは悲嘆にくれていた。メイムが事情を説明すると【深淵の声】を許可してくれる。犯人が分かれることを望む一途な思いを感じた。
「ありがと。ダメ元だけど、一つでも手がかりがほしいから」
遺体は喉を裂かれ、心臓を貫かれている。
「もし、思念があれば……手伝うよ……聞かせて」
意識を集中させ、祖霊の手を借りる。
真っ暗な中、真紅の血が舞い、伝わるのは恐怖――断片的な情報であるが色は鮮やかだ。
最後に見えたのはドレス姿の少女のような物。
「ぐっ……」
メイムは情報をかみ砕き記憶する。そして、落ち着いてから礼を述べて立ち去った。ユリアンの言葉を裏付けるとともに、人ではないものである可能性を感じさせるものだった。
ロニは事件があったところを回った。共通点を探し、事件発生を推測したい。そうすれば、夜に見回る場所の範囲も狭められる。
全くの裏路地もあるが、繁華街でも少し入ったところと言うのもある。人目に付かないということが重要であり、周囲に比較的高い建物があるという場所ばかりだ。
建物と建物の間は人が肩をぶつけずすれ違うのは難しそうだ。
「ならば……夜見回るのはおのずとそういったところか」
住宅街方面でも同じであった。
ミリアは領主の屋敷周りを見て回る。
出入りするモノがいれば痕跡もあるかもしれない。
「うーん、イノアね……うん、顔は分かっている」
ライブラリで見たのは幼い姿であったが、プエルに似ている部分もあるため、想像はできる。
「歪虚なら倒すだけだし」
壁や柵に土はついている。何かが上り下りに使ったようにも見えなくはない。内部を見てみるが、庭であり手がかりは薄かった。
千秋は屋敷近辺での情報収集をした。町の人たちの怯えは十分伝わる。
「一度二度どころでないんですからなおさらですよー」
千秋が同情しつつ話を聞くと相手はホッとするようだ。情報は入るが噂話に近い。しかし、人々の心を和らげる役割として重要だった。
「さて、わたくしの情報収集はこのくらいですね。夜の準備をしておきましょー」
投擲用の武器や魔導カメラにライトなど確認をしておいた。
ハンターたちは夜の前に情報を交換した。
情報収集の結果、見回りをする。
●夜見回ってみると?
繁華街と住宅街から屋敷近辺を回る。
調査の結果、襲う場所は想定できているが、どこから来るかはわからない。
ユリアンが夜間外出控えるようにとお達しをしたのか、それとももともと人が恐れて出ないのか静かであった。
それは軽やかに動く、人からマテリアルを奪うために。
そうしないといけないのだからするだけ。
最初殺したときから、人間が減っているのがよくわかった。そんな中、人を見つけた!
ロニは繁華街の細い路地で町の人間を送り届けた。直後、視界端に動くものを見る。
建物の上を見上げたところに、人影が落ちてきた。元居たところに、黒いドレスをまとった少女がいた。
それは避けられたのが不本意と言うように首をかしげている。
ロニはトランシーバーで仲間に短く状況を告げ、そして、武器を構えた。
「かかってくれて助かった。で、おまえはなんだ?」
それは笑うしぐさをすると短刀を構え、ロニに向かう。
ロニは足止めのため【ジャッジメント】を放った。
繁華街と住宅街の間くらいにいたルベーノとメイムがいち早くたどり着く。
「やはり女?」
「考えるのは後だよっ!」
「ああ」
二人は武器を構えそのまま攻撃できる位置に向かう。
「人形か」
ルベーノは近づき、相手の様子がよくわかった。明らかに人形であり、通常ならば一人で動かない存在だ。
「やっぱり、嫉妬だよね」
メイムは誰がいるか正解が見えた気がした。
それは丁字路の開いているほうに向かって走り出す。
一旦繁華街に向かう。魔法を使われたし、追いかけるヒトが増えたのも気にせず逃げる。
しばらく追いかけっこが続くが、レイオスと千秋が立ちふさがった。
「なんか不思議ですねー」
「似てるっちゃー似ているが、プエルに似てるだろう」
「ですよねー」
「こいつで跡形もなく消えやがれっ!」
レイオスと千秋は攻撃を仕掛け、足止めをする。
そこにミオレスカとピアレーチェがやってきた。
「確かにイノアさんに似てるけど」
「どちらかというとプエルに似ています」
「そっち遭ったことがないけど、これ、人形だよね」
「それで十分です」
ミオレスカが攻撃を仕掛け、ピアレーチェは道の状態から【ジャッジメント】を使う。
「全く、これじゃあ、討伐依頼が出るに決まっているじゃないか!」
ミリアは怒りとともに人形に【神速刺突】を叩き込んだ。
取り囲まれた人形はハンターに刃を当てることができないまま、動けなくなった。
そして、ただの人形に戻る。
静寂が訪れた。
●終わったが
「やっぱり、イノアぽい雰囲気だな」
ミリアが覗き込み、人形の武器を回収する。クリシス家の紋が入っていることはなさそうだ。
「ってか! これって、状況的にプエルのだよね!」
メイムは怒っているが、ミリアは自分の怒りと違うような気がした。
「ああ」
ミリアがうなずく、人形師の家から出ていくプエルを見送っている。できれば、プエルには静かに穏やかに楽しく暮らしてもらいたかった。
「レチタ人形の単純所持なら100歩譲るにしても自分モデルの妹人形とか闇が深いな。嫉妬の手段としてアリだけど面倒が過ぎるよ!」
「ん?」
「大体さ、妹ってあり?――」
ミリアは目をぱちくりして「女の子の考えることが分からない」とつぶやいた。
ピアレーチェは屋敷の建物を見ることを提案した。壁や柵からの出入りの可能性があるとミリアが言っていたこともある。
夜に見れば明かりで不自然さが出る場合もある。光の反射が日中と異なるし、屋内で明かりを使う可能性だってある。
そして、一か所だけ不自然な窓があるのに気づいた。
「これは報告しないといけないよね」
「確かにな」
ロニが同意するとピアレーチェは「見てて、行ってくる」と動いた。
ピアレーチェは屋敷の使用人と踏み込むと、ソファーに躓く。バリケードとして使っていたのだろう。
「誰もいない」
窓の外のロニに尋ねる。
「見ていたが何もなかった。俺たちが戻る前に出て行ったんだろう」
ピアレーチェはうなずいた。
レイオスはチョコ餅がそのまま残っているのを見つけた。
「鼻が利くのか、危険を察知したのか? ユグディラなら匂いか……?」
ミオレスカが置いたケーキもそのままである。それが取られないのも不思議だ。
「相手が馬鹿ではないってことか」
「おいしそうなケーキですー。この餅はなんか危険な気がいたしますが?」
台の上に顔を出し、千秋が告げた。
「どこが?」
「なんとなく、色といい形といい……ますか……かすかに何か匂いが」
刺激物入りの持ちなのだから正しいとレイオスはため息を漏らした。
「ご領主、この通り人形だったわけだ。身が軽いと聞いたし、重量はそのまま敵への突撃力や打撃力となる。少女並みの体躯で身が軽くて、成人男性を殺害するのはよほどのスキルか別の能力がないと難しい」
ルベーノは隣への無意味な挑発はやめるように説く。
「歪虚がいるならば、人間同士がいがみ合っている場合ではありません。もし、プエルなら、普通の人たちは太刀打ちできません。それに、双方に争わせれば、騒ぎが大きくなり、人間同士の争いで王国がつぶれることも否定できませんよ?」
ミオレスカも告げるとルベーノが大きくうなずく。
「潜むことを覚えた……のは危険です」
さすがにユリアンも何も言わない。隣の優等生ぶった領主は嫌いだが、自分の領地をつぶすつもりはさらさらない。
プエルは人形を壊されたのを見て出ようとしたが、思いとどまった。
「せっかく作ってもらったのに……もっとマテリアルいるね……。それにしても、僕にとってレチタティーヴォ様はレチタティーヴォ様だけ。人形だなんて……無意味だ」
プエルはため息を漏らした後、実家の方に移動するのだった。
イノアは隣領のハンターから連絡を受け、川を見つめた。
「今のうちですね……兄を……止めるのは」
ユリアン・メトーポンから事件の概要を聞いて、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は心の中でつぶやく。
(イノアに似た歪虚に消える菓子か……まさかアイツがこの近くに戻ってきたのか?)
プエル(kz0127)は菓子類に興味を持っている様子がある。
食べ物が消えることはユリアン自身は町の事件という情報として与えたに過ぎない。
ミオレスカ(ka3496)はユリアンの説明を聞き内心首をかしげる。
「推定イノアさん? 心技体とも、そのようなお方ではなかったとは思いますが」
イノア・クリシスを知っている者は首をかしげざるを得ない。イノアの身に何かあったのか、それともたまたま似たような人物と言うだけか。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は眉を吊り上げ、ユリアンを見る。
「ご領主、そういう意図がある、と我々にすらわかるようににおわせるのは短慮の部類だと思うが。話を聞く限り少なくとも人間には無理な話だ。少女で大の男を殺すなら、相当な技術や違う何かが必要だと――武人ならわかるだろう?」
武術に対して関心があるユリアンへの挑戦ともとれたが、ルベーノの言葉は事実である。しかし、尊大な態度により苛立ちを覚えて声を上げかかった。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)はルベーノに同意しうなずきつつ、ユリアンの怒りをそらした。
「疑心暗鬼ってやつだなー。それを調べるためにあたしたちがいるんだよね」
ユリアンは鷹揚にうなずく。
小宮・千秋(ka6272)は元気よくこぶしをあげる。
「ほいほーい! 殺人事件は怖いですねー。町の平和のため、国の平穏のため、一刻も早く犯人さんを捕まえないといけませーん!」
メイム(ka2290)は仲間が言うことに同意を示すと同時に、時期的なことも考え「プエルだろうなぁ」と想像する。
「ねー、犯人に捜してもらいやすいように、夜間の出歩き禁止してほしいんだけど……戒厳令だと困るんだよね、犯人が警戒するから」
その件に関してはユリアンは協力すると告げる。領内の安定は重要だ。
ミリア・ラスティソード(ka1287)は眉間にしわを寄せつつ念のために問う。
「ここで食べ物が消えるのは調べなくていいんだな?」
ユリアンとしては二の次と考えている。一方でハンターたちは余力があるうちは調べるつもりはあった。
ロニ・カルディス(ka0551)は情報を整理し、ユリアンにハンターたちの方針を告げる。
「まずは情報収集からだな。それから、夜は我々がおとりを兼ね見回りをする」
「うむ、頼むぞ」
ユリアンの言葉をもらい、それぞれ調べるべきところに向かった。
●調査
行先を決めた結果、ミオレスカは領主館に留まり、もう一つ起こっている事件の聞き込みをした。
「おやつがなくなっている? 由々しき事態ですね」
台所にいる人たちは話を聞いてくれるミオレスカに口々に告げる。
何かいるのでは、と思うこと自体が不安であり精神衛生上よろしくない。そもそも領主の足元なのだから、特に問題なはずだ。
食べ物が消える時間帯は一定ではないが、朝の焼き立てパンや果物、お茶用の焼き菓子も消えた。夜は特に置いてないためか動きはない。
「では、試しにミラクルケーキを置いてみます」
愛らしいケーキを窓辺の見えるところに置き、夜の見回りまで見張りをする。
ピアレーチェは川の両方の渡し船乗り場で聞き込みをする。不審人物を見たかという問いかけに、誰もがいないと答えるが疑心暗鬼は感じた。
「ありがとう。ついでにリオちゃんにも聞き込みだよ」
彼女が名前を付けた水の精霊はこの川に住んでいる。違う視点で見ている可能性もある。
祠のところに行き、供え物としてパンを出そうしたとき「あああああああ」と声が響いた。
「び、びっくりした」
ピアレーチェが振り返ると、水の精霊のリオ(仮)がいた。
「いーて! いーこーがきた!」
「え?」
「でーもー」
どんどんと足踏みをする。言葉を発せるとはいえ、まだうまく操れず感情を表現できずにイライラしているようだ。
「落ち着いて。まずは元気してた? 挨拶から。で、実は情報を集めているんだよ。あっちで殺人事件が起こっているけど知ってる?」
「あーー、にーこーらーすが、きたー」
必死にしゃべり所々悲鳴状態になるリオ(仮)の話に耳を傾けることとなった。
レイオスとルベーノは領主のイノアに会いに行く。アポイントなくとも会えるか不明だが、事件が事件であるため、状況は知りたいところだった。
事件のことと告げると通してくれた。挨拶もそこそこに事件のことを切り出す。
「イノアを疑っちゃいないさ。ただ、歪虚をぶっ飛ばしたと思って、操られた本人でした、じゃすまないしな」
レイオスの言葉にイノアは礼を告げる。
「幸い、教会の方が気にしてくれたので、第三者であるハンターを護衛としてつけてくれました」
レイオスとルベーノは見知らぬエルフの女性が挨拶をするのを見てうなずいた。
「で、一つ気になるのが、ここの関係で情報を調べたら、プエルが最近『父上のところに行く』と言ったらしい」
ルベーノの言葉をレイオスは肯定した。
「プエルに対してのあんたたちのスタンスを決めたほうがいいだろう」
「それは一貫しています。兄は……いえ、歪虚のプエルは倒してかまいません」
イノアはきっぱりと言った。
「そうか。穏やかに暮らしたがる歪虚もごくわずかに存在するし……」
ルベーノはイノアの決心を考え「兄弟への情も否定できない」と言う言葉は飲み込んだ。揺らがせることもないのだから。
「その時は協力は惜しまん」
「ありがとうございます」
イノアは頭を下げた。
「異常があったら連絡をくれ。事件解決まで隣の町にいるから。あ、帰りがけに台所借りていいか?」
レイオスは告げる。良いというイノアに疑問符が浮かんでいる。
「あっちで、菓子やパンが消えるって事件があるらしいから、ちょっと細工した菓子でも置いてみようと思って」
イノアはうなずき、護衛の女性は苦笑していた。
メイムは情報収集をしつつ、新しい被害者とされている者の家に向かう。【深淵の声】を使うためであり、遺族が嫌がれば引き下がるしかない。
話を聞いた家の者たちは悲嘆にくれていた。メイムが事情を説明すると【深淵の声】を許可してくれる。犯人が分かれることを望む一途な思いを感じた。
「ありがと。ダメ元だけど、一つでも手がかりがほしいから」
遺体は喉を裂かれ、心臓を貫かれている。
「もし、思念があれば……手伝うよ……聞かせて」
意識を集中させ、祖霊の手を借りる。
真っ暗な中、真紅の血が舞い、伝わるのは恐怖――断片的な情報であるが色は鮮やかだ。
最後に見えたのはドレス姿の少女のような物。
「ぐっ……」
メイムは情報をかみ砕き記憶する。そして、落ち着いてから礼を述べて立ち去った。ユリアンの言葉を裏付けるとともに、人ではないものである可能性を感じさせるものだった。
ロニは事件があったところを回った。共通点を探し、事件発生を推測したい。そうすれば、夜に見回る場所の範囲も狭められる。
全くの裏路地もあるが、繁華街でも少し入ったところと言うのもある。人目に付かないということが重要であり、周囲に比較的高い建物があるという場所ばかりだ。
建物と建物の間は人が肩をぶつけずすれ違うのは難しそうだ。
「ならば……夜見回るのはおのずとそういったところか」
住宅街方面でも同じであった。
ミリアは領主の屋敷周りを見て回る。
出入りするモノがいれば痕跡もあるかもしれない。
「うーん、イノアね……うん、顔は分かっている」
ライブラリで見たのは幼い姿であったが、プエルに似ている部分もあるため、想像はできる。
「歪虚なら倒すだけだし」
壁や柵に土はついている。何かが上り下りに使ったようにも見えなくはない。内部を見てみるが、庭であり手がかりは薄かった。
千秋は屋敷近辺での情報収集をした。町の人たちの怯えは十分伝わる。
「一度二度どころでないんですからなおさらですよー」
千秋が同情しつつ話を聞くと相手はホッとするようだ。情報は入るが噂話に近い。しかし、人々の心を和らげる役割として重要だった。
「さて、わたくしの情報収集はこのくらいですね。夜の準備をしておきましょー」
投擲用の武器や魔導カメラにライトなど確認をしておいた。
ハンターたちは夜の前に情報を交換した。
情報収集の結果、見回りをする。
●夜見回ってみると?
繁華街と住宅街から屋敷近辺を回る。
調査の結果、襲う場所は想定できているが、どこから来るかはわからない。
ユリアンが夜間外出控えるようにとお達しをしたのか、それとももともと人が恐れて出ないのか静かであった。
それは軽やかに動く、人からマテリアルを奪うために。
そうしないといけないのだからするだけ。
最初殺したときから、人間が減っているのがよくわかった。そんな中、人を見つけた!
ロニは繁華街の細い路地で町の人間を送り届けた。直後、視界端に動くものを見る。
建物の上を見上げたところに、人影が落ちてきた。元居たところに、黒いドレスをまとった少女がいた。
それは避けられたのが不本意と言うように首をかしげている。
ロニはトランシーバーで仲間に短く状況を告げ、そして、武器を構えた。
「かかってくれて助かった。で、おまえはなんだ?」
それは笑うしぐさをすると短刀を構え、ロニに向かう。
ロニは足止めのため【ジャッジメント】を放った。
繁華街と住宅街の間くらいにいたルベーノとメイムがいち早くたどり着く。
「やはり女?」
「考えるのは後だよっ!」
「ああ」
二人は武器を構えそのまま攻撃できる位置に向かう。
「人形か」
ルベーノは近づき、相手の様子がよくわかった。明らかに人形であり、通常ならば一人で動かない存在だ。
「やっぱり、嫉妬だよね」
メイムは誰がいるか正解が見えた気がした。
それは丁字路の開いているほうに向かって走り出す。
一旦繁華街に向かう。魔法を使われたし、追いかけるヒトが増えたのも気にせず逃げる。
しばらく追いかけっこが続くが、レイオスと千秋が立ちふさがった。
「なんか不思議ですねー」
「似てるっちゃー似ているが、プエルに似てるだろう」
「ですよねー」
「こいつで跡形もなく消えやがれっ!」
レイオスと千秋は攻撃を仕掛け、足止めをする。
そこにミオレスカとピアレーチェがやってきた。
「確かにイノアさんに似てるけど」
「どちらかというとプエルに似ています」
「そっち遭ったことがないけど、これ、人形だよね」
「それで十分です」
ミオレスカが攻撃を仕掛け、ピアレーチェは道の状態から【ジャッジメント】を使う。
「全く、これじゃあ、討伐依頼が出るに決まっているじゃないか!」
ミリアは怒りとともに人形に【神速刺突】を叩き込んだ。
取り囲まれた人形はハンターに刃を当てることができないまま、動けなくなった。
そして、ただの人形に戻る。
静寂が訪れた。
●終わったが
「やっぱり、イノアぽい雰囲気だな」
ミリアが覗き込み、人形の武器を回収する。クリシス家の紋が入っていることはなさそうだ。
「ってか! これって、状況的にプエルのだよね!」
メイムは怒っているが、ミリアは自分の怒りと違うような気がした。
「ああ」
ミリアがうなずく、人形師の家から出ていくプエルを見送っている。できれば、プエルには静かに穏やかに楽しく暮らしてもらいたかった。
「レチタ人形の単純所持なら100歩譲るにしても自分モデルの妹人形とか闇が深いな。嫉妬の手段としてアリだけど面倒が過ぎるよ!」
「ん?」
「大体さ、妹ってあり?――」
ミリアは目をぱちくりして「女の子の考えることが分からない」とつぶやいた。
ピアレーチェは屋敷の建物を見ることを提案した。壁や柵からの出入りの可能性があるとミリアが言っていたこともある。
夜に見れば明かりで不自然さが出る場合もある。光の反射が日中と異なるし、屋内で明かりを使う可能性だってある。
そして、一か所だけ不自然な窓があるのに気づいた。
「これは報告しないといけないよね」
「確かにな」
ロニが同意するとピアレーチェは「見てて、行ってくる」と動いた。
ピアレーチェは屋敷の使用人と踏み込むと、ソファーに躓く。バリケードとして使っていたのだろう。
「誰もいない」
窓の外のロニに尋ねる。
「見ていたが何もなかった。俺たちが戻る前に出て行ったんだろう」
ピアレーチェはうなずいた。
レイオスはチョコ餅がそのまま残っているのを見つけた。
「鼻が利くのか、危険を察知したのか? ユグディラなら匂いか……?」
ミオレスカが置いたケーキもそのままである。それが取られないのも不思議だ。
「相手が馬鹿ではないってことか」
「おいしそうなケーキですー。この餅はなんか危険な気がいたしますが?」
台の上に顔を出し、千秋が告げた。
「どこが?」
「なんとなく、色といい形といい……ますか……かすかに何か匂いが」
刺激物入りの持ちなのだから正しいとレイオスはため息を漏らした。
「ご領主、この通り人形だったわけだ。身が軽いと聞いたし、重量はそのまま敵への突撃力や打撃力となる。少女並みの体躯で身が軽くて、成人男性を殺害するのはよほどのスキルか別の能力がないと難しい」
ルベーノは隣への無意味な挑発はやめるように説く。
「歪虚がいるならば、人間同士がいがみ合っている場合ではありません。もし、プエルなら、普通の人たちは太刀打ちできません。それに、双方に争わせれば、騒ぎが大きくなり、人間同士の争いで王国がつぶれることも否定できませんよ?」
ミオレスカも告げるとルベーノが大きくうなずく。
「潜むことを覚えた……のは危険です」
さすがにユリアンも何も言わない。隣の優等生ぶった領主は嫌いだが、自分の領地をつぶすつもりはさらさらない。
プエルは人形を壊されたのを見て出ようとしたが、思いとどまった。
「せっかく作ってもらったのに……もっとマテリアルいるね……。それにしても、僕にとってレチタティーヴォ様はレチタティーヴォ様だけ。人形だなんて……無意味だ」
プエルはため息を漏らした後、実家の方に移動するのだった。
イノアは隣領のハンターから連絡を受け、川を見つめた。
「今のうちですね……兄を……止めるのは」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談・宣言・提案卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/10/03 21:18:32 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/30 03:50:39 |