• 初心

【初心】キミが先か、ワタシが先か

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
3~8人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/10/06 15:00
完成日
2017/10/12 00:55

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「コボルド、ですか?」
 カリッと揚げたきつね色のスティックパスタ。
 ポルトワール海産出の天然塩で優しく味付けしたスナックは、ここ最近の彼女の職中食の鉄板だ。
 それを手摘みでポリポリとかじりながら、ルミは回って来た仕事の内容に対して、眉ひとつ動かさずに聞き返した。
「ええ、コボルドです。ジェオルジ郊外に。それも沢山の」
「ふぅん」
 小さく頷きながら、ポリポリと次の1本に手を伸ばす。
 この手のスナックは、1回手を付けると全部なくなるまでなかなか手が止まないものだ。
 お腹に溜まるというわけでもないのに、ポリポリ、ポリポリと、口寂しいのを誤魔化すように次々と咥えてしまう。
「じゃあ、依頼で出しておきますね。ジェオルジ周辺って今は収穫の時期ですし、作物がやられないと良いですねぇ」
 から返事をしながら湿ったタオルで指先を拭い、机の脇に積まれた依頼掲載用の白紙書類をつまみ上げる。
 そして、ずいぶん扱いにも慣れた羽ペンの先に、ちょんと墨壺のインクを湿らせて、用紙の上に滑らせた。
「それで、数はどれくらいなんですか?」
「あの、それが……」
 随分と落ち着いた様子(というか、意にも介していない様子)のルミとは対照的に、依頼を持ってきた魔術師協会の使者は、ローブの陰から覗く目をあちこちに泳がせながらしどろもどろと答えた。
「ええと……なんと申してよいやら」
 そうして指折り数えて、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……途中から諦めたように全部の指をぐっと握りしめて、眉の端をいっそう低く下げた。
「そ、その……沢山です」
「“沢山”じゃわかりませんよぉ。大体で良いので、教えてください。今数えてた感じだと、4匹ですか? 5匹ですか?」
 余裕しゃくしゃくの笑みを浮かべながら、左の手でパスタをつまむ。ポリッ。
 コボルドは人里に降りて来れば立派な害獣となる亜人だが、それほど脅威となる相手ではない。
 駆け出しのハンターだって、十分に力を発揮すれば苦戦すらしないような相手だ。
 今まで沢山の依頼を扱ってきたからこその油断というか慢心が、ルミの認識を妨げていたのは、何を見るよりも明らかなことである。
「その……沢山です。数えきれないくらい。40、50……いや、もしかしたら3桁もくだらないかも……」
「さ、3桁ぁ!?」
 だからこそ、その報告を聞いてようやく事の重大さを理解して、目を白黒させてしまうのも無理のないことだった。
 その拍子に、咥えたままのスティックパスタが根本からポキリと折れて、乾いた音と共に床に転がった。
「そ、そんなに沢山なんて、聞いてないよ!?」
「す、すみませんっ!」
 ルミの勢いに、使者は思わず深く頭を下げる。
「え~、どうしよう!? 同盟の現状じゃ、対処できるくらいたくさんの有力なハンターさん集まるのかなぁ……?」
「あ、あの、それに関してなのですが、協会の方から1つ提案がありまして」
 ルミが焦りを見せたぶん、多少落ち着きを取り戻した使者が、協会からの書状を胸元で掲げて見せた。
「今回の依頼をソサエティのハンター育成プログラムとして、ユニオンから支援させて頂きたいとの意向をお預かりしております」
「え? あー、あの新人育成の……?」
 虚を突かれて目を丸くしたルミに、使者はコクリと小さく頷く。
「コボルドの大量発生に関しては、おそらく昨今の同盟領内の緊張の影響で、大規模な巣から追われて来たものと認識しています。現在、目標はジェオルジ近郊の村に迫っているというだけで、具体的な被害が出ている状態でもありません。人の生活区域へ向かうルートを外れて、村から遠い別の山なり森なりに移住してもらえればそれでよいのです。殲滅は、マストオーダーとするところではありません」
 調子を取り戻して流暢に語る使者の言葉に、ルミはう~んと小さく喉を鳴らす。
「なるほど……それなら、駆け出しのハンターさんでも何とかなるかもですね」
「協会からも、可能な限りの支援は行います。どうぞ、よろしくお願いします」
 そう言って頭を下げた使者に、ルミは人差し指と親指をくっつけて『OK』とジェスチャーで返事を返す。
 そのままその指でパスタをつまむと、ひょいと小さくすぼめた口先に放り込むのだった。

リプレイ本文

●迫りくる軍勢
 青々と生い茂る草原の向こうに、ドドドと小さな地鳴りをあげながら迫る黒い塊が見える。
 依頼内容として報告は聞いていたが、改めて膨大な数の敵を目の前にしてみると、ハンター達もおのずと生唾を飲み込んだ。
「お出まし、だね」
 じっと黙して待つ空気に耐えかねて、イヴ・フランボワーズ(ka6504)がぽつりと漏らす。
 それは誰に向けたものでもない、強いていえば自分に言い聞かせるかのように口にしたものだったが、フッとみんなが呑み込んだ緊張を代わりに吐き出すようにして、フィオナ・クラレント(ka4101)がそれに応えた。
「やれやれだな。あの数を相手に手間を惜しめば死ぬのは我等だというのは自明であろうに」
「十分な準備はできた、と思いたいな」
 カイン・シュミート(ka6967)は朱墨の書き込みで真っ赤になった地図を広げたまま、つい今の今まで8人総出で準備に取り掛かっていた戦場に目を走らせる。
 
 事前にフィオナが申請した集落への作業人員の要請は、時間があるといっても危険は伴うということで取り付けることはできなかった。
 その分、資材はユニオンの方で可能な限り融通してもらい作業を行った戦場は、さながら簡易的な砦といえる装いであった。

 敵の進行に対して横一文字に掘られた塹壕のような穴。
 その縁にはシール・ナイン(ka6945)が中心となって組み上げた柵が、この先への侵入を拒むかのように連なる。
 広大な戦場には掘り出された土や、刈られた草が積み上げられた山が点在し、その1つに隠れて敵勢の様子を伺うアイシャ(ka7015)が、ハンター本隊へ向かってにこやかに手を振っていた。
(この戦場で、私には何ができるんだろう……)
 初依頼で漠然とした不安を抱きながらも、彼女は義姉であるダリア(ka7016)の存在もあってこうして気丈を保てている。
(……ううん。何をするか、だよね)
 両親がそうであったように、自分もまた戦場に立っている。
 その想いに少しでも近づこうとする彼女の橙色の瞳には、踏みちぎった雑草を巻き上げながら殺到する、世界への脅威が映り込んでいた。
 
 やがて、地図上から敵が十分な距離に至った事を確認したカインは、傍らのダリアへ大きく視線を下げて首を縦に振る。
「頃合いだな、仕掛けよう」
「よ~し、ド派手に行くぜ!」
 ニッと不敵に笑いながら、敵前に向けて固定した円筒へマテリアルを注ぐダリア。
 数秒の後に勢いよく飛び出した光の玉が、甲高い笛の音と共に放物線を描いてコボルド達へと飛んでいく。
 そして、突然飛び込んで来た未確認物体を惚けた顔で見上げる彼らの頭上すれすれで、弾は色とりどりの光の花びらとなって爆音と共にはじけ飛んだ。
「こういう時は“たまや”って叫べばいいんですよね?」
「おうよ、もう1発行くぜー! たーまやー!!」
 キリン(ka6587)戦場の光で色とりどりに顔を染めるキリン(ka6587)の横で、ダリア(ka7016)は次の円筒にマテリアルを点火する。
 再び放たれたマテリアルの大花火がド派手な音と共に華々しく散ると、コボルド達はキャンキャン叫びながらそれとなく固まっていた列を大きく乱した。
「十分に揺動は取れているね。行くよ!」
 混乱に乗じて、イヴが自らの愛馬に鞭を打つ。
 ドカドカと敵の行進に負けない地鳴りを立てながら駆ける重装馬ごと敵陣の切っ先へと突っ込むと、そのまま懐から取り出した発煙手榴弾へ次々と点火し、道すがらにばらまいた。
 直後、榴弾から勢いよく噴き出した煙幕が、もくもくとコボルド達の姿を包み込んでいく。
「煙幕の展開を確認。私たちも、続きます」
 一番槍を担ったイヴに続いて駆け出したシールとカインが、それぞれ初弾煙幕の薄い場所を補うように同様の発煙手榴弾を投げ込む。
 風の穏やかな草原で、色とりどりの煙は瞬く間に敵軍勢の視界を遮っていた。

●極彩色の戦場
 突然の煙幕の中で、コボルド達の最前線は騒がしく鳴き声をあげながら右往左往する。
 そんな中にゆらめく影が、存在に気付いていないコボルドの背後を素早く取る。
 そして煙がふっと斜めに揺れたかと思うと、真っ赤に燃え上がる短剣が狼狽する敵の足元を掬うように切り裂いた。
 コボルドは喚くように叫びながら、焼き切られた脚を抱えてごろごろと雑草の上を転がる。
「まずは勢いをつける」
 朧な姿でそうつぶやいたフィア(ka6940)は、次いで転がるコボルドの肩を貫き、そのまま地面に縫いとめるように覆いかぶさった。
 そのまま、オートマトンだからこそできる熱を感じさせない無機質な瞳が、ぐるりと傍に立ちすくむコボルドの瞳とかち合う。
 目の合ったコボルドは一瞬身震いをして後ずさるが、すぐに頭を振って覚悟を決めると、周りの個体と共にフィアへと一斉に飛び掛かる。
 しかし、彼女はバックステップでひらりと躱してみせると、そのままゆらりと煙幕の中へと姿を溶け込ませていく。
「きっかけは作った」
 ふっと影ごと消えた彼女と入れ違いに、凄まじい雄たけびを上げる影が煙の向こうからものすごい勢いで駆け入ってくる。
 そうして、その姿が見えるより先にぼっと煙幕の中から突き出した巨大な剣の厚い刃が、群がったコボルドのうちの1頭の脳天へ、ズドンと容赦なく叩きこまれた。
 渾身の力を乗せた一撃はコボルドの身体をいともたやすく叩きつぶし、砕け散った肉片が周りのコボルド達をびちゃびちゃと赤く濡らしていく。
「此れより先は人の領域。進んでの死か、退いての生か……選べ」
 振り下ろされた切っ先を地面に埋もれさせて、腹から唸るような言葉と共に、ゆったりとした足取りでその姿を赤い靄の中からさらけ出すフィオナ。
 毛並みをぐっしょりと血で濡らしたコボルド達は、その本能から危険を感じ取ったのか、顎を小さく震わせて、噛み合う犬歯をカチカチ鳴らす。
 しかし、仲間を討たれたのもまた事実であり、その共同体本能もまた彼らに備わった1つの行動理念だ。
 奥歯をぐっと噛み締めて顎の震えを無理やりに止めると、雑木から作ったらしい荒削りの棍棒を握り締めて、それぞれにフィオナに負けないくらいの雄たけびをあげながら力いっぱいに振り上げた。
「その意気やよし。ならば、真っ向から叩き伏せる」
 ズゾリと音を立てて、土片を滴らせながら大剣が大地から抜き放たれる。
 そうして対比するにはあまりにも差がありすぎる、武器を振り上げる姿の影が、向かい合って対峙していた。

「ううん、煙で何も見えないわね……」
 やや離れた位置から戦場を眺めるキリンは、口惜しそうに指先で符を弄ぶ。
 もくもくと煙る草原はコボルドの群れに確かな混乱を与えていたが、同時に後衛ハンターの射線も塞いでしまっていた。
「でも、威嚇する分には十分でしょう」
 シールは何を狙うでもなく、つがえた矢を煙幕へ向かって引き放つ。
 直撃させることはしなくても、存在を誇示するだけで敵にとっては十分な脅威になるはずだ。
「姉さん、そっちは大丈夫?」
『大丈夫も大丈夫! ちっせぇ奴らが相手なら、何十匹、何百匹でもかかってこいっつーの!! おっしゃぁぁぁぁ!!』
 慣れない手つきで操作するアイシャの魔導スマホのスピーカーからは、ダリアの景気の良い声と共にベキバキという生々しい戦闘音が響く。
「今のうちに、できるだけ大局を決めておきたいが――」
 カインは、懐から取り出したトランシーバーを通信状態にし、足元に転がす。
 そうしてリボルバーの撃鉄を起こすと、地面に向けて引き金を引いた。
 数発の発砲音と共に、コンマ数秒遅れて戦場からも同様の破裂音が響く。
 それに触発されるように、キャインと甲高い声が立ちのぼる。
 前線から不穏な報告は届いていないし、万事首尾よく進んでいるものと思いたい。
 順調なハズなのに、どこか忙しない焦燥感が胸の奥でざわついてカインは思わず苦い表情を浮かべる。
「――晴れて来たな」
 その胸騒ぎに答えるように、戦場を包んでいた極彩色のベールが剥がれようとしていた。
 
●突っ走れ
 そよぐ風にかき消されるように、立ち上っていた煙幕が薄れていく。
 それにつれて、前線で身体を張っていた人もまた徐々に視界を取り戻していく。
 正直なところ、自分がどこでどの方角を向いて戦っていたのか分かったものではない。
 ただひたすらに動く影を捉えては、気づかれる前に叩く。
 
 そんな戦いを強いていた舞台の緞帳が一斉にひらける。
 その先にハンター達が見たのは――視界いっぱいを埋め尽くす、数多のコボルド達の姿であった。
「これは……!」
 その凄惨たる様子は、後方に控えていたカイン達の方がよりはっきりと捉えることができた。
 ハンター達が倒した数多のコボルドの屍が大地に転がる。
 だが、それ以上に大勢のコボルドの大軍が、晴れた帳の向こうで立ちつくしていたのだ。
 煙幕のせいで行くもできず、引くもできず、ただ指を咥えて見ているしかなかったその軍勢は、ひらけた戦場の中に佇む4人の姿を捉えると、これ好機と大気を震わせるほどの咆哮を上げた。
「ちぃ……流石に多勢に無勢かっ!」
「一度引いて、態勢を立て直そう! これは後方からの支援も受けないとまずい!」
 激しく舌打ちをしたフィオナのすぐ横を、イヴの戦馬が駆け抜ける。
 そして頭上でショートソードを振り回し、後衛へ援護要請のサインを送った。
 踵を返して撤退する前衛4人の後ろを、亜人の群れが文字通り波となって押し寄せる。
「これなら、見えないままの方が良かったかもしれませんね……!」
 キリンの放った火炎符が、群れから頭飛び出す個体を焼き焦がす。
 狙いは付けられるようになった……が、代わりに緊迫した状況を目にすることとなってしまったのもまた確かだ。
「恨みはありませんが……これも仕事ですからね」
 できる限り、害のないコボルド達を殺したくはない。
 そうは思っていても、必要性というものをシールもまた理解している。
 謝りはしない。
 しかし、僅かばかりの後ろめたさを抱きながら、狙いを定める。
 放たれた矢がフィアに飛び掛かった一匹の脳天を見事に貫いて、その勢いのまま後続のコボルド達の足元へと転がった。
「姉さん、右から来てるっ!」
 遠巻きにダリアへ迫る個体を見つけたアイシャは、スマホの通話口に向かって叫びながらも、自らの矢を引き絞る。
「邪魔だ! 吹っ飛びやがれー!!」
 その狙いの先で、軸足を大きく踏みしめたダリアは、駆ける勢いのまま身体を大きくひねって、その身にはあまりに長大すぎるハンマーを力いっぱい振り抜いた。
 どてっ腹に強烈な一撃を受けたコボルドは、そのままきりもみ回転をして後方へと吹き飛んでいく。
 その豪快な一撃に口をあんぐりと開けて凍り付いた周囲の個体を、アイシャとフィアの矢弾がそれぞれに打ち抜いた。
「目標地点、間もなくだ」
「見りゃ分かるぜ!」
 こんな状況でも無抑揚で口走ったフィアと共に、ダリアは眼前に迫る塹壕と柵を視界に収めた。
「飛び込めっ!」
 イヴの戦馬が1m半ほどの高さの柵を、遥か高く飛び越える。
 それに続くように、残る3人も次々に塹壕を飛び越え、柵の向こう側へと転がり込んだ。
「“山”は越えた、放てッ!!」
 全員の退避を確認して、フィオナが叫ぶ。
 同時にキリンの放った符が、敵軍の鼻先で強烈な光となって弾けた。
 その閃光に軍勢が一瞬足を止めた隙に、アイシャとシールの二人がつがえた火矢が、一斉に塹壕へ向けて放たれる。
 着弾した炎は溝の中に敷き詰められた油と藁に引火して、横一文字に一斉に火炎が走った。
 燃え盛る炎は瞬く間に柵も呑み込み、戦場には瞬く間に炎の壁ができあがっていた。
 閃光で視界を失っていた先頭のコボルド達は、訳も分からぬまま炎の中へと飛び込んでしまい、苦痛の断末魔を奏でる。
 後に続くコボルド達は、突如として立ちはだかった炎の壁を前に急ブレーキを掛ける。
 そして、燃え盛る仲間と壁とを交互に見比べ、おろおろと立ちすくみ始めた。
「追い込みだ。精いっぱい、ビビらせてやれ!」
 カインはありったけの爆竹を炎の中へと放り込んだ。
 灼熱の中で火薬はすぐに着火し、強烈な破裂音を戦場に響かせる。
 そして銃弾が、矢が、次々と足を止めたコボルドの波へと襲い掛かった。
 炎に、熱に、音に、攻撃に、敵軍は飛べや叫べの大混乱。
 あっちに跳ね、こっちに飛び、中には足を滑らせて炎の塹壕に飛び込んだり。
 だが1つだけ確実なのは既にコボルド達には戦えるような強固な意志はなく、我先にと武器を投げ捨て、走り去っていく姿が炎の先に照らされていることだった。
 
●危機は去って
「――以上が、今回の依頼の顛末だ」
 フィオナの端的な報告を受けて、魔術師協会の使者は満足げな笑みを浮かべながらソサエティ向けの調査報告書にペンを走らせる。
 彼女の周りには、疲れ切って草原にどっかりと腰を下ろすハンター達が、協会職員から怪我の治療を受けていた。
 戦場跡では、同じく協会職員たちが消火を含めて事後処理に汗を流している。
 火を放つのは僅かに抵抗を覚えていたハンター達ではあったが、焼き畑の代わりになったから本格的に農地としての利用を考えてもいいかとかえって喜ばれ、特に咎められることはなかった。
「いや~、やっぱり思いっきり身体を動かせると気持ちいいな!」
 治療を受けながらも、うんと背伸びをして大きく息を吐くダリア。
 そんな彼女にアイシャはちょっと困ったような笑みを浮かべながらも、小さく相槌をうつ。
「上手くいったから良かったけれど、これが初めての依頼なんだからはしゃぎ過ぎちゃダメだよ」
「それでも、一仕事終えた後というのはやっぱり嬉しくなるものですよ」
「確かに。なんだか、ちょっとわかる気がします」
 おのずと助け舟を出すように口にしたキリンに、シールは追って頷いてみせた。
 仕事を終えられたあとはどこか心がほっとする。
 無意識に湧き起こっていたその感覚を、彼女は胸に手を当ててどこか愛おしむように噛みしめる。
「私には……よく分からないかもしれない」
「まあ、毎度毎度浮かれっぱなしってわけにもいかないだろうよ」
 フィアがどこか他人事のように口にすると、自制するように言葉を重ねるカイン。
 そんな彼らにイヴは小さな溜息を吐きながら、口元にうっすらと笑みを浮かべてみせた。
「何よりも、生きていたということだけでも儲けものだよ」
 その言葉はどこか浮ついたこの気持ちの正体を納得付けるようで、ハンター達は思い思いに整理をつける。
 過去を偲ぶ者、今を噛みしめる者、未来を想う者。
 どれが誰というわけでもなく、みな一様に自身の糧として心中に収める。
「さあ、帰るとしようか――」
 柔らかい風が吹き抜けた草原の先に広がる世界には、澄み渡る青空が広がっている。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 傲岸不遜
    フィオナ・クラレント(ka4101
    人間(蒼)|21才|女性|闘狩人
  • 一番槍
    イヴ・フランボワーズ(ka6504
    人間(紅)|19才|女性|舞刀士

  • キリン(ka6587
    エルフ|18才|女性|符術師

  • フィア(ka6940
    オートマトン|16才|女性|疾影士
  • Dual wield
    シール・ナイン(ka6945
    オートマトン|18才|女性|猟撃士
  • 離苦を越え、連なりし環
    カイン・シュミート(ka6967
    ドラグーン|22才|男性|機導師
  • 帰郷
    アイシャ(ka7015
    ドラグーン|18才|女性|猟撃士

  • ダリア(ka7016
    ドラグーン|14才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
カイン・シュミート(ka6967
ドラグーン|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/10/04 11:37:17
アイコン 相談卓
フィオナ・クラレント(ka4101
人間(リアルブルー)|21才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/10/05 22:42:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/06 01:54:36