ゲスト
(ka0000)
【陶曲】百年旅~チェスゲーム
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/06 22:00
- 完成日
- 2017/10/20 01:02
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●アルゼアの話
ベンドさんよ、取引だ。
今日は盗品……おっと、いわく付きの宝石なんかは少なめだがよ、目玉があるぜ?
あん?
情報だよ、情報。
俺ら「セラータ・スパーダ(宵闇の剣)」が盗賊扱いじゃなく、ならず者集団扱いなのは知ってるよな?
へへ。まあ、闇の商人「ベンド商会」と役割は似てるな。闇から闇に葬られがちなことをお上やら金持ちにそれとなく知らせ庶民の助けにしてもらう。それで俺らはうまい酒を飲む。ま、あざといこともさせてもらってるけどね。
おっと、すまね。情報だな。
同盟領の人里から離れたとある砕石場一つが歪虚に潰されてな。
いや、まだ表立ってないハズだ。
あ?
死人に口なし。作業員が全滅したんだから情報が流れるはずないだろ。
全員死んだのに何で知ってるかって?
へへ。
山奥の砕石場は人目がないからね。
下手すりゃ盗賊に目を付けられかねない。自警団なんかいるが、トラブルはないに越したこたぁない。
盗賊対策に俺らを雇うのさ。自警団なんかじゃ分からないところを手広く警戒できるのと……。
俺らが盗賊と少なからず繋がりがあるから、俺らにちょいと弾んでくれりゃその分そこを狙いそうな盗賊の懐に入ってまあ誰もが幸せになるって寸法だ。
つーわけで、潜伏してたわけよ。その砕石場付近に。
おそらく、もうすぐ明るみに出るはずだ。
取引業者から納入がないってことで調査が入るかしてな。
ハンターオフィスにも依頼が出るだろうから情報を売ればいい。
じゃ、話すぜ?
●フラ・キャンディの日常
「うわっ、何これ? おもしろ~い!」
風に髪を躍らせフラ・キャンディ(kz0121)の笑顔が輝く。
引き絞る右腕にひねる腰。左の太腿を内股にして体重を残し右脚を外に逃がす。
――ぎゃる……。
「わ、すっごーい。きびきび動くよ!」
フラ、ユニットの魔導アーマー「プラヴァー」に試乗していた。足のローラーで滑走し華麗にターンを決めて止まった。そしてまた滑走。
ここはハンターオフィスの訓練場。
ショップのシルキー・アークライト(kz0013)からユニット貸与してもらおうとしたところ、これを勧められた。
「しかし、フラの前には装甲もないし危険じゃの……」
試乗を見守っていたフラの後見人、ジル・コバルト老人が不安そうにこぼす。へそ出しの踊り子衣装に包まれた小さな体をそのまま晒しているのだがらまあ、心配も分かる。
「機動力重視ですからね。それと、ずっと山奥に隠れ住んでたそうですから機械に馴染みはないでしょう? 機械系ならCAMなんかよりこっちのほうが受け入れやすいと思いますよ」
整備員の言葉。うむ、と頷くジル。
フラ、「百年目のエルフとして出されたんだから、いろんな文化に触れないと」と一念発起し機械系のユニットに挑戦したいと言い出した。ジルとしては戦いに出したくはないが、ハンターではあるし故郷を滅ぼした歪虚「ルモーレ」との戦いで岩人形と戦い結構やられた経緯もある。より巨大なCAMを使うとなればより大きな戦いに身を投じる可能性もあるという打算も頭をかすめる。
「すっごいね」
ここでフラが戻ってきた。
「これ、百年前にはなかったんでしょう?」
「ああ。最近の技術で、プラヴァーはさらに最新機種だ」
整備員の言葉にフラ、にっこりしてジルに向き直った。
「ジルさん。ボク、分かったよ。……百年目のエルフって、世界の情勢に取り残されないよう、定期的に次代を担う子供を旅に出すんじゃないかって。戻ってきちゃいけないのは、怖気づいて里帰りしないため」
「おお、なるほどの。しかし、それじゃと元の里は世界に取り残されたままじゃの」
「だから、誰かに託したり、新たな住処を見つけて子供ができたら百年目のエルフとして旅に出すんじゃないかな?」
「どういうことじゃ?」
「実はボク、『どうしても困ったら今から教えるエルフの隠れ里を目指せ』って言われてたんだ」
ジル、そこがフラの故郷のさらに故郷か、と理解した。
ここで横から整備員。
「で、どうする?」
「うん、これがいい」
聞かれて大きく頷くフラ。
「識別マークはどんなのがいい?」
「キャンディ。棒付きがいいな!」
「分かった。じゃ、リボンで飾って可愛くしとくな?」
「うんっ♪」
というわけでフラ、自分の魔導アーマーに「ロリポップ」の名を付けた。
「あ、フラさん」
オフィスに戻ったところで案内係に呼び止められた。
「今、ユニット依頼が寄せられたところですが……どうします?」
「敵の強さは?」
ジルの方が先にかじりついた。
「砕石場が全滅の憂き目に遭ったようです。自衛だけなので敵は大戦力ではないはず。戦略的にも意味がない場所なので組織的な侵略ではないと思われます」
最初の見立てである。
のち、ベンド商会から購入した情報が入った。
チェスの駒のような3メートルほどの石像が八体空から降って来て出入口を中心に包囲。石像はその後、人型に変形すると左前腕の単発石礫砲と右手の剣で暴れ作業員を皆殺しにしたという。意外と軽快らしい。
ここ数日、作業音はすれども音が変わったという。変わったあたりで襲われたのではと見られている。
依頼者たる取引業者が現場で発見した時には、チェスのポーン駒のような石像が砕石場中央に8体、円形に並んでいたという。唯一の入り口、南入り口から入り近寄ると変形して襲ってくるという。
「もちろん、やるよ!」
というわけで、フラと一緒に石像ポーン8体を倒してくれる人、求ム。
ベンドさんよ、取引だ。
今日は盗品……おっと、いわく付きの宝石なんかは少なめだがよ、目玉があるぜ?
あん?
情報だよ、情報。
俺ら「セラータ・スパーダ(宵闇の剣)」が盗賊扱いじゃなく、ならず者集団扱いなのは知ってるよな?
へへ。まあ、闇の商人「ベンド商会」と役割は似てるな。闇から闇に葬られがちなことをお上やら金持ちにそれとなく知らせ庶民の助けにしてもらう。それで俺らはうまい酒を飲む。ま、あざといこともさせてもらってるけどね。
おっと、すまね。情報だな。
同盟領の人里から離れたとある砕石場一つが歪虚に潰されてな。
いや、まだ表立ってないハズだ。
あ?
死人に口なし。作業員が全滅したんだから情報が流れるはずないだろ。
全員死んだのに何で知ってるかって?
へへ。
山奥の砕石場は人目がないからね。
下手すりゃ盗賊に目を付けられかねない。自警団なんかいるが、トラブルはないに越したこたぁない。
盗賊対策に俺らを雇うのさ。自警団なんかじゃ分からないところを手広く警戒できるのと……。
俺らが盗賊と少なからず繋がりがあるから、俺らにちょいと弾んでくれりゃその分そこを狙いそうな盗賊の懐に入ってまあ誰もが幸せになるって寸法だ。
つーわけで、潜伏してたわけよ。その砕石場付近に。
おそらく、もうすぐ明るみに出るはずだ。
取引業者から納入がないってことで調査が入るかしてな。
ハンターオフィスにも依頼が出るだろうから情報を売ればいい。
じゃ、話すぜ?
●フラ・キャンディの日常
「うわっ、何これ? おもしろ~い!」
風に髪を躍らせフラ・キャンディ(kz0121)の笑顔が輝く。
引き絞る右腕にひねる腰。左の太腿を内股にして体重を残し右脚を外に逃がす。
――ぎゃる……。
「わ、すっごーい。きびきび動くよ!」
フラ、ユニットの魔導アーマー「プラヴァー」に試乗していた。足のローラーで滑走し華麗にターンを決めて止まった。そしてまた滑走。
ここはハンターオフィスの訓練場。
ショップのシルキー・アークライト(kz0013)からユニット貸与してもらおうとしたところ、これを勧められた。
「しかし、フラの前には装甲もないし危険じゃの……」
試乗を見守っていたフラの後見人、ジル・コバルト老人が不安そうにこぼす。へそ出しの踊り子衣装に包まれた小さな体をそのまま晒しているのだがらまあ、心配も分かる。
「機動力重視ですからね。それと、ずっと山奥に隠れ住んでたそうですから機械に馴染みはないでしょう? 機械系ならCAMなんかよりこっちのほうが受け入れやすいと思いますよ」
整備員の言葉。うむ、と頷くジル。
フラ、「百年目のエルフとして出されたんだから、いろんな文化に触れないと」と一念発起し機械系のユニットに挑戦したいと言い出した。ジルとしては戦いに出したくはないが、ハンターではあるし故郷を滅ぼした歪虚「ルモーレ」との戦いで岩人形と戦い結構やられた経緯もある。より巨大なCAMを使うとなればより大きな戦いに身を投じる可能性もあるという打算も頭をかすめる。
「すっごいね」
ここでフラが戻ってきた。
「これ、百年前にはなかったんでしょう?」
「ああ。最近の技術で、プラヴァーはさらに最新機種だ」
整備員の言葉にフラ、にっこりしてジルに向き直った。
「ジルさん。ボク、分かったよ。……百年目のエルフって、世界の情勢に取り残されないよう、定期的に次代を担う子供を旅に出すんじゃないかって。戻ってきちゃいけないのは、怖気づいて里帰りしないため」
「おお、なるほどの。しかし、それじゃと元の里は世界に取り残されたままじゃの」
「だから、誰かに託したり、新たな住処を見つけて子供ができたら百年目のエルフとして旅に出すんじゃないかな?」
「どういうことじゃ?」
「実はボク、『どうしても困ったら今から教えるエルフの隠れ里を目指せ』って言われてたんだ」
ジル、そこがフラの故郷のさらに故郷か、と理解した。
ここで横から整備員。
「で、どうする?」
「うん、これがいい」
聞かれて大きく頷くフラ。
「識別マークはどんなのがいい?」
「キャンディ。棒付きがいいな!」
「分かった。じゃ、リボンで飾って可愛くしとくな?」
「うんっ♪」
というわけでフラ、自分の魔導アーマーに「ロリポップ」の名を付けた。
「あ、フラさん」
オフィスに戻ったところで案内係に呼び止められた。
「今、ユニット依頼が寄せられたところですが……どうします?」
「敵の強さは?」
ジルの方が先にかじりついた。
「砕石場が全滅の憂き目に遭ったようです。自衛だけなので敵は大戦力ではないはず。戦略的にも意味がない場所なので組織的な侵略ではないと思われます」
最初の見立てである。
のち、ベンド商会から購入した情報が入った。
チェスの駒のような3メートルほどの石像が八体空から降って来て出入口を中心に包囲。石像はその後、人型に変形すると左前腕の単発石礫砲と右手の剣で暴れ作業員を皆殺しにしたという。意外と軽快らしい。
ここ数日、作業音はすれども音が変わったという。変わったあたりで襲われたのではと見られている。
依頼者たる取引業者が現場で発見した時には、チェスのポーン駒のような石像が砕石場中央に8体、円形に並んでいたという。唯一の入り口、南入り口から入り近寄ると変形して襲ってくるという。
「もちろん、やるよ!」
というわけで、フラと一緒に石像ポーン8体を倒してくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「ところで、なんで自転車なのよ?」
森の中、振り返ったキーリ(ka4642)がジト目で言い放った。
「ゴーレムさんに乗れないってことを今頃知りましたから……あはは、あはははは」
視線を受けてごまかすように笑う穂積 智里(ka6819)。ゴーレムさんとは、智里の同行した刻令ゴーレム「Gnome」の「ゴーレムさん(ka6819unit001)」のことであり、自転車とは彼女が持参し森の中までうんしょうんしょと持ち込んで横に置いてある自転車のことだ。
つまり、ゴーレムに騎乗もしくは搭乗できないから自転車で伴走する、とのこと。
「乗ることはできなくても命令して運んでもらうことはできるんじゃない?」
メルクーア(ka4005)が解決策を話してみる。
「それだとほかの指令が出せないんですよ」
もう一つ指示することはできないし、と智里。ああ、確かにそうねー、とメルクーアも納得する。
「しがみつく手もあるかもだけど、負担は掛けたくないよね」
霧雨 悠月(ka4130)はこう言うが、きっと心の中じゃわざわざそんなことしなくてもねーとか思ってるはずよ。
「……ちょっとキーリさん。いま一瞬ナレーションみたいなしゃべり方して僕の心の中みたいな感じであることないこと言わなかった?」
「あら、ユッキー意外としっかりしてるのねー」
閑話休題。
「それより、メルクーアさんもプラヴァーなんだね。名前、決めてるの?」
フラ・キャンディ(kz0121)がユニットを残してきた方を振り返りつつ聞いた。
「『ギムレット』よん♪ 相変わらずお酒の名前」
メルクーア、気分良く告げる。振り返るギムレット(魔導アーマー「プラヴァー」)(ka4005unit002)はミリタリー色の強い、見た目はゴツイ機体である。
「そう言えば盾の装備はやめたのね?」
「うん。小太さんに相談して勧められたから。メルクーアさんも盾じゃなければ近接武器って言ってたでしょ?」
フラのプラヴァー「ロリポップ」には巨斧とクローが装着されていた。
「普段と近い装備の方が最初は戦いやすいかもですからねぇ」
にこにこ頷く弓月・小太(ka4679)。
その横からディヤー・A・バトロス(ka5743)が首を突っ込む。
「フラ殿も機体デビューした同士じゃの。初のユニット戦は心躍るじゃろう!」
「うんっ。わくわくするよね!」
きゃいきゃい盛り上がるディヤーとフラ。
「フラっちは凄いわね。私はきっと取説読んだら寝るわ。ストンと」
「キーリさんは……ゴーレム?」
「そう。よーく考えたら、私パイロット似合わない事に気付いたのよ。……というかガチャガチャ動かせる自信がないわ」
「えーっ、面白いのに~」
さらにキーリも加わって華やかに。
「そろそろ砕石場近く。油断せず、だね」
さすがに声が大きいと藤堂 小夏(ka5489)が飄々と注意する。
「そうだね。それに、こっちもわくわくするよ?」
先行する悠月が身を屈めた姿勢で前に注目するよう言う。
「確かにポーンですね」
「じゃの。……チェスなら姉弟子によく負かされたのー」
悠月に習い森に身を隠して砕石場の広い敷地を見渡す智里とディヤー。
確かに、広い敷地の真ん中に大きなポーン駒の石像が丸く固まっている。
「それにしても何で採掘場を占拠したのでしょうかぁ? 何かしらそこにあるとかでしょうかぁ…」
「うん。謎だよね」
小太とフラの疑問。
「変形して戦うのなら何で最初はポーンの形してるのかね? 最初っから人型の方が変形する手間ないし効率的じゃない?」
「うーん……いままでのみんなの話を聞いてたら、何となく分かる気がするよ?」
さらに続いた小夏の呟きに悠月が応じる。
「何か話したかしら?」
「指示に忠実。待機なら駒で戦闘なら人形、かな? ほら、小太さんも言った通り、ここを占拠することに意味があるなら、ね」
聞いたキーリに智里との話を思い返しつつ答える悠月。聞き役に徹していたのでそのくらい感じるかもしれない。
「なるほど。つまり駒」
小夏も妙に得心した。
「……背後で誰が操っているか」
「最近よく見つかる大きな腕があるかも、ですよぅ」
これ以上の偵察は無用、と引き返す小夏。小太も別の可能性を示唆しながら続く。
「どちらにせよ犠牲者のためにもチェックメイト、決めるわよー!」
皆が戦闘準備に戻る中、メルクーアが最後に現場を振り返り決意を新たにした。
●
――どうん……。
静かだった砕石場広場に炸裂音が轟く。
「はいヴォルちゃん、初陣なんだから頑張りなさいよ」
キーリが広場南側から刻令ゴーレム「Volcanius」(ka4642unit002)に砲撃指示を出している。
「後でちゃんと名前つけてあげるからね~」
その言葉を意気に感じているわけではないが68ポンド試作ゴーレム砲炸裂段をさらに撃ち込む。広場中央にたたずむポーンの石像たちは炸裂弾を食らい変形した。
「特別にデカイの担いできたんだし派手な方が素敵でしょ?」
「派手だね、キーリさん。……シグレと戦うのは久しぶり」
キーリとゴーレムの裏からはイジェドが姿を現した。
騎乗は、悠月。右に開いている。
「これが終わったら、いっぱい美味しいものを食べようよ……それっ!」
イェジドの「シグレ(ka4130unit001)」に優しくささやくと拍車を掛けポーンたちに突っ込んだ。大地を蹴るシグレの力強さが預けた体全体に広がる。一気に風になる感覚が体を駆け抜ける。
目指すは駒から人形になった敵六体。
「山なりの射撃は助かるわね」
シグレのさらに外からは、小夏のR7エクスシア(ka5489unit009)が現れた。アクティブスラスターで横に開き前への空間を開けると一気にスラスター全開。横に出た位置で一瞬滞空した直後、ブースターからのアフターバーナーで地面の小石など散らしまくってドンと前に出る。
一方、キーリのヴォルちゃん左側。
「フラさん、援護は任せてくださぃっ。射撃なら機体でもそうは変わらないはず……ですぅ」
「うんっ! カッコいいよ、小太さん。行ってくるね!」
小太の魔導型デュミナス(ka4679unit002)が長細い銃身のマシンガン「ラディーレン」をタタタンと放ちつつ前に出る。その裏から少し小さめのプラヴァー「ロリポップ」がローラー全開。ギャーン、と回転音を響かせ敵に突っ込んでいく。
「はわっ。さすがに速いですねぇ」
孤立させないよう、フラの後方に付けるべく微妙に前に出る。
この時、敵はこちらに接近していた。
遠方からの射撃に一瞬ひるんだようだが敵を視認できること、射撃が山なりなこともあり迷わず前に出たようだ。
その数、六体。しかも左前腕に突き出した小さな砲口から石つぶてを撃っている。
「向こうも数的優位を得たいのじゃろうが……」
これを見たディヤー、味方にウィンドガストを掛けていた作業が終了し本格参戦。
「そうはさせぬ!」
白地に金色の光るR7エクスシア「ジャウハラ(ka5743unit001)」がガトリングガン「エヴェクサブトスT7」を水平に構える。だらららら……と一気に多数の弾をばらまき撃ち合いに応じる。
この時、メルクーア。
「敵を何とか西の絶壁方面に追い詰めたいわね」
プラヴァー「ギムレット」は右の大外に回っていた。
手にする魔導銃を構え、突撃する悠月やフラを援護すべく射撃。そのまま東を取るべく移動する。
「ファルコン、だっけ? 射撃能力に特化した改造してるからねー」
距離感を大切にすべくマテリアルレーダーも使っていく。
このころ、最前線。
「敵、大きいね。足を狙っていくよ、シグレ?」
悠月、イジェドに身を伏せ突っ込むよう指示する。さすがに敵の射撃を食らっているので右に回り込みつつ身を伏せひとっ跳び。
低い下半身狙いのチャージ。体当たりして前肢で薙ぐ。そして離脱。
「ううん、硬い」
振り向き呟く悠月。テイクダウンもあるかと思ったが、敵は変形後頭の部分以外は原形をとどめていない。バランスは良さそうだ。
「受けるより回避の方がいいかな?」
「そうですね。と、そちらには行かせないのですよぉ!」
反対側ではフラがクロー左で受けて右のバルディッシュでガツン。そのまま左に逃げている。援護する小太からの射線が効き、無事に離脱するフラ。
そこに、小夏のエクスシアが突っ込む。
破山剣を豪快に振るい、後方に行かれないようここで壁になるつもりだ。
が、さすがに六対一は避けたい。
「ポーンは雑兵だけど群れるとちょっと厄介、逃げると更に厄介だね」
小夏、覚悟を決めた。
ラックに手を伸ばし螺旋槍「骨喰」をホールド。剣との二刀流でとにかく手数を出す構えだ。悠月とフラは移動しつつ戦って良さが出る。頼るわけにはいかない。ここで踏ん張って二人に後背を狙ってもらうのだ。ソウルトーチ、燃える!
「シグレ、今度は裏から!」
悠月が敵後背を狙う。今度は敵に膝を付かせることができた。削ることもできている。
ただ、密集戦だと結構な戦力を投じている射撃組からの射線が緩い。
苦しい戦いである。
「ん?」
そんな中、観察しつつ防御戦闘をしていた小夏があることに気付いた。
●
時は若干遡る。
「まさか戦闘の真ん中をくっついて歩くわけにはいかないですしぃ」
智里がきこきこと自転車をこいでいた。
目の前にはゴーレムさんの大きな背中。
「ゴーレムさん、敵を西に追い詰めたいので東から回り込んで下さい」
『ま゛っ』
声で指示を出すとひねった腰か動かした肩からか不明だが謎の音が返事のように聞こえた。
こうして東側に向かうゴーレムさんの後ろを自転車で追い掛ける。
「でも、いくら音声入力方式より機体性能が高くなるといっても有線の長さが十メートルってのはないですよぅ」
ひー、と泣き言こぼしつつもきこきこ。ゴーレム用有線コントローラー「堀魂」を付けているのだから仕方ない。
「これで性能アップしないなら詐欺ですよねぇ」
とかぶつくさも。もちろん期待の裏返しなのできこきこ自転車こぐのも苦にならない!
ここでメルクーアから無線連絡が入った。
「智里さん? 敵を何とか西側の壁に追い詰めたいんだけど、前の人数が足りないみたいなの。あたしもギムレットで突っ込むからお願いできないかしら?」
確かにメルクーアと智里の位置取りは東である。西に追い込むためにはこちらからの圧力が必要だ。
「突っ込むって、メルクーアさんのプラヴァーは射撃特化じゃ?」
「ギムレットはショートカクテル。じっくり飲むのがいいけど……」
智里の疑問に答えつつ前線で体を張る小夏へ援護射撃。
が、すぐに魔導銃の構えを解いて両脚のホイールを唸らせた。
「ラッシュで手っ取り早くくらくらに酔わせてあげるわ!」
少し近付いたところで敵もこちらに牽制射撃。
メルクーア、目の前にスペルウォールを展開しホイールフル回転。横に逸れてまた前進。乱戦に持ち込むつもりだ!
「とにかく敵が西に逃げたくなるような攻撃、するわよ!」
「そ、そういうことでしたら……ゴーレムさん、だだっ子パンチです!」
智里、ゴーレムさんに優先コントローラーのボタンを押して突撃指令。腕をブンブン上下させながら突っ込む刻令ゴーレム。その巨体のすぐ後ろに智里。爆走ついて行くのはやっぱり有線がぴーんと張っちゃわないため。すごい勢いでこいでいるぞ。
「わ、何!」
「フラさん、そっちは空けてこっちに来て!」
援軍を喜ぶフラに新たな陣形を支持する悠月の声が交錯する。
――ががが……。
東からだだっ子パンチで突撃して来たゴーレムさんが西に走り抜けた。がしゃんざざざ、とジェットブーツで空中を飛びとばっちりを避けていた智里も無事に着地する。
ただひたすらの一直線の突破。
敵にあまり被害はないが、陣形を二つに割った。
それだけではない。
「ん? ……『R』?」
敵六体の入れ替わり立ち代わりの攻撃をいなし外側からフラと悠月、そして援護射撃の攻撃を誘っていた小夏が敵の特徴に気付いたのだ!
「フラ、このポーンたちにRの飾り文字に気付いた?」
「え?」
小夏に問われ一瞬固まるフラ。
「それ、もしかしたらルモーレのマークかもしれませんよぅ!」
答えたのは小太だ。フラを援護していたが、どうしてここを、などと敵の目的などを考えていた分、ピンときた。
「ほら、フラさんの故郷でも石人形が襲ってきましたぁ!」
「あー、そう言えばいたわねぇ」
小太の叫びに反応したのは、キーリ。前線の近接戦闘開始に伴いヴォルちゃんの砲撃は止めさせて東に移動していたところだ。
「なんと? 知り合いか、フラ殿?!」
「知ってるけど友達とかじゃないからねーっ!」
ディヤーの驚きの声に慌てて念を押すフラ。
「それよりディヤー、敵は二班に分かれてるよね?」
「おお! そうじゃ、コナツ殿。二班で必ずポーンチェーンの布陣を敷いておるの。前は囮で斜め後ろが指示を出しておるようじゃ」
「すごいね、ディヤーさん」
「……よく負かされたのじゃ、フラ殿」
少しへにょ、としたディヤーの通信。
「でもそういうことなら次の動きが分かるよね」
「回り込むのなら任せてーっ」
悠月、またも背後から足を狙う。その後方からはメルクーアが再び構えた魔導銃で別の後方一体に照準を合わせた。
「準備できたわ。一撃じゃ無理でしょ?」
キーリの合図が届く。
「じゃ、お願い」
小夏、マテリアルカーテンを展開して敵の攻撃に耐えていたがアクティブスラスター・オン。すっと外すように後ろに逃げた。
「シグレ、思いっきり遠吠えして!」
悠月の合図でシグレがウォォーン、とウォークライ。突然の咆哮に敵の動きが一瞬止まる。
「それでも動くそこな敵にはアイスボルトじゃ!」
ディヤーも氷の矢を放ち敵の動きを阻害!
「フラさん、敵の足元を狙い撃ちしますから後お願いしますよぉ!」
小太も敵の行動阻害を狙いマシンガンで弾をばらまく。
「ヴォルちゃん? 発射!」
ここでキーリの攻撃指令。
再びゴーレム砲が火を噴いた。
――どーん!
敵の密集地中心に着弾、炸裂。
これで敵はフラフラだ。
「追い込んでないけど勝負どころね!」
メルクーア、デルタレイで一気に決めるつもりだ。
「ノッてきたね……それっ!」
悠月は飛び降り刀を構えると、シグレとともに一体を左右から抜き去りつつ同時攻撃!
「もう一回だだっ子パンチです!」
智里も再突撃。
「そちらには行かせないのですよぉ!」
「小太さん、ありがとっ!」
小太の射撃と、近くの敵に気付いたフラの近接攻撃。
「ここから見るとダブルポーン……悪手じゃ、動きにくかろう?」
ディヤーはショルダーアーマーにマウントしたクイックライフル「ウッドペッカー」でマテリアルビーム。
完全包囲から一気に敵の殲滅を狙った!
●
どどん……がらがら……。
「どう? チェックメイト!」
崩れる敵に得意満面のメルクーア。
しかしッ!
「あれは?」
一歩引いていた小夏が最初に気付く。
「そういえば、でしたぁ」
小太の残念そうな声。
ポーン型のゴーレムを打ち砕いた後に、宙に浮く光体が残っていたのだ。
それが砕いた岩の残骸に落ちてしばらくすると……。
――ごごご……がきーん!
「そーいやルモーレのこれって、コアの光体を砕かないと再生するんだったわね」
「とにかく計画通り西の岩壁に追い込むのじゃ! 参るぞ!」
けだるそうなキーリの声に、慌てて突撃するディヤー。
「し、仕方ありません。僕も……」
「前に行くしかなさそうねー」
小太も前に。キーリ前に。
とにかく最後列を前に上げて圧力を高める必要がある。
そこに、すっと前に入る影が。
「皆遠慮なく盾にしてね。一応硬いつもりだから」
小夏である。マテリアルカーテンを展開し最終防衛ラインを押し上げた後衛組を守る。
一方、前衛組。
「んもう、こっち狙ってきた!」
「もしかして……フラさん、そのまま西に逃げてください!」
自転車乗ったまま振り返る智里の指示。援護に行かないのはちょうどいま、東側に友軍が固まっていい具合に壁ができているから。智里とゴーレムさんも敵の射撃にさらされているがその理由から大きく動かず我慢していたのだったり。
「うん。了解だよ、智里さん」
なおこの時、フラを気にしていた小太は機能していなかった。
「この装備でも近接戦出来るのですよぉ!」
小太のデュミナス、可変機銃「ポレモスSGS」の砲身下部機構をスライド操作する。
瞬く間に剣としても使えるようになると横合いから殴られたポーンにガツリとやり返す。
重量感ある格闘戦を見せるが、しかし。
「……あ、あまりしたくないですけどもぉ」
間合いを作るとアクティブスラスターで離脱。フラへの援護射撃へと切り替えた。
そこへ入れ替わるように小夏のエクスシアがアクティブスラスターで横滑り。体を入れて割り込んで来た。
「さてと。ここからが本番だよ」
ポジションチェンジでいきなり相手が変わり驚いた敵に、白く神々しい刀身を持つ中華風の大剣をぶちかます。新たに寄って来た敵にはカウンター。崩れた後の光体コアにすかさず薙ぎ払い。流れるような動きで戦う。
「よし、シグレ……歌おうか! あの敵を穿ち砕く意思を奮い立たせるために!」
もう一度攻勢のタイミングが来たと判断した悠月、シグレに咆哮させて隙を作ると、勇気を、リズムを、明るい見通しを引き出してくれる歌を口ずさみ始めた。
♪
ここは誰の地 君たちのじゃない
怒らせないでよ 後悔するよ
怒らせたいの? じゃあ遠慮なく
♪
乱戦に拍車を掛けるように駆け回り自らの歌で戦いのリズムを味方に浸透させていく。
「あー、私だって歌って踊れるんだけどねー。この子、一芸ちゃんだから」
遠くからそれをうらやましそうに眺めるキーリ。遠距離砲撃担当なので悠月のようにあの位置でアイドルするわけにはいかない。
「ま、でも巨大なゴーレムに指示して動かすって良いわね。本に出てくる魔術師っぽくて」
我慢できてる要因はそれのようで。
場面は再び、前線。
「ええい。倒しても復活したし、似たような敵を数えると眠くなるの~……おわっ!」
ディヤーのエクスシア、ちょっとした隙に敵からボディアタックを食らっていた。
「あー……宿舎をぺしゃんこにしたのはそれね」
周りをよく見ていたメルクーア、作業員棟の完全倒壊の原因がそれだと判断した。逃げ込んだ作業員を一網打尽にしたため生存者がいなかったのだろう。
「……倒れた後の俊敏性はなさそうじゃがの」
ディヤー、もつれた状態からいち早く起き上がり試作錬機剣「NOWBLADE」を叩き込む。崩れて現れた光体コアも返す刀でバッサリだ。
一方、メルクーア。
「確かに敵の残数確認は大切よね~」
マテリアルレーダーで確認して、瞳きらーん!
「……どさくさに紛れてこういうところに逃げ込むのもいるから!」
ぎゃーん、とローラー移動。
広場に残っていた砂山の裏に逃げ込んだ敵をしっかりと把握し、回り込んだのだ。
「小型ミサイルランチャー発射! ここで一気に決めるわよ!」
六連装ミサイルを一気に放出。どどどんとの爆発音とともに行く手を塞がれ立ち往生していた敵を粉砕した。
「もちろん後始末も!」
デルタレイですかさず残った光体コアも殲滅するのだった。
「はい、発射~」
「あっ! 流れ、変わったよ!?」
フラの西への逃走で敵陣形が間延びしキーリの砲撃が再開されたとき、フラが声を挙げた。
「フラさんを追うのをやめたみたいですよぉ」
スラスターでフラを追っていた小太が着地。デュミナス身をひねり北へ逃走しようとする敵を狙撃。
「有線最後の指令です……」
ここで智里、これまで大切にしていた有線コントローラーをあきらめる覚悟をした!
「ゴーレムさん、弾き飛ばしてください!」
『ま゛っ』
智里のボタン操作は、マテリアルバースト。
一気に加速して進行経路上の敵を推力とマテリアル障壁の双方で弾き飛ばした!
この勢いは位置取り悪く伸び切っていたコントローラーのケーブル断線につながった。
「それでも追いますようっ」
智里、自転車で追う。
「光体コアは僕が壊しておきますよぉ」
止めは小太。智里はゴーレムさんに防壁建設の指示を出し敵逃走阻止に尽力するのだ。
「ユッキー、南に逃げるのがいるわよ?」
「了解、キーリさん」
最後尾からの連絡を受け、悠月がイジェドを急がせる。
さすがにスピードが違う。見る見る敵の背が近くなる。シグレのたくましさをその背に乗って感じる悠月。
「やっぱり、背中からの攻撃になるんだね」
戦いの初めのころもそうだったな、と思い出しくすり。
「シグレ」
その一言で、だっと跳びかかるシグレ。
押し倒して砕き、崩れたからだからコアが出てくる。
飛び降りつつそれを斬り、着地。背後で敵を潰していたシグレが立ち上がる。
「……一体も逃がさないよ?」
遠くではキーリの砲撃からフラがコアを潰しているのが分かった。
●
戦闘終了し、砕石広場の真ん中で輪になって座った。
「はい、珈琲入ったよ?」
「わわ。ありがとうございます、フラさん」
フラが珈琲を配って回る。受け取った小太、隣にぴとっと座ったフラに赤くなっている。
「メルクーア殿のレーダーにユヅキ殿の機動力、チサト殿の工兵作業もあったし、天、……いや、精霊の配剤に恵まれたの」
くいっと珈琲を飲んでディヤーが満足そうにまとめた。
「それにしてもポーンなコイツら何処から湧いて出たのかしら?」
「確か空から飛んで来た、って……」
キーリの疑問にフラが依頼を受けた時に聞いた話を告げる。
「飛んで逃げなかったわ」
「駒だから、放り込まれたのかもね」
小夏のさらなる疑問に何となく答える悠月。
「ああ、砲弾のように……。だから駒の形なのね」
「そういえばルモーレ、っていいましたよね?」
納得してふぅ、とため息をつく小夏。ここで智里が話に入って来た。
「はいですぅ。最初は盗賊の骸骨を部下にしてたんですけど、ちょっと前は土や岩の人型ゴーレムを使ってました。そして今度はそれが大型に……ですねぇ」
困ったものですよぅ、と小太。
「なるほど。なぜここを攻めたのかこれで分かった」
「ゴーレムにする岩を確保するためだったんでしょうかぁ……」
なぜこんなところを攻めたのか、と考えていた小夏と小太がその解答に至る。
「あー、だから砕石場の割りに崩した岩とか砕いた石とかが全くないのねー」
「それってつまり、もう必要なものは運び出した後、ってことでしょうか?」
地形確認をしっかりしていたメルクーアが不思議に思っていた事象の理由を理解した。確認した智里の言う通りである。
「こ、この後、ナイトとかクイーンとかキングとかも出て来たりするんですかねぇ?」
「間違いないのぅ」
小太の振りにディヤーの呟き。
「ま、考えたって仕方ないわ。それよりゴーレム使ってて何となく思ったんだけど、昇降機とかサーチライトとか舞台演出に使えそうよね」
「また大掛かりだね、派手に行けそうだけど……それより」
キーリの話に悠月が少し困った様子をした。
「早く戻ってシグレにも美味しい物、食べさせたいな」
自分だけ皆と楽しくコーヒー飲んでいるのをシグレがうらやましそうにしているに気付いたのだ。寄って行って撫でてやる。
とにかく、ルモーレがまた何か活動を始めたことをつかんだのだった。
「ところで、なんで自転車なのよ?」
森の中、振り返ったキーリ(ka4642)がジト目で言い放った。
「ゴーレムさんに乗れないってことを今頃知りましたから……あはは、あはははは」
視線を受けてごまかすように笑う穂積 智里(ka6819)。ゴーレムさんとは、智里の同行した刻令ゴーレム「Gnome」の「ゴーレムさん(ka6819unit001)」のことであり、自転車とは彼女が持参し森の中までうんしょうんしょと持ち込んで横に置いてある自転車のことだ。
つまり、ゴーレムに騎乗もしくは搭乗できないから自転車で伴走する、とのこと。
「乗ることはできなくても命令して運んでもらうことはできるんじゃない?」
メルクーア(ka4005)が解決策を話してみる。
「それだとほかの指令が出せないんですよ」
もう一つ指示することはできないし、と智里。ああ、確かにそうねー、とメルクーアも納得する。
「しがみつく手もあるかもだけど、負担は掛けたくないよね」
霧雨 悠月(ka4130)はこう言うが、きっと心の中じゃわざわざそんなことしなくてもねーとか思ってるはずよ。
「……ちょっとキーリさん。いま一瞬ナレーションみたいなしゃべり方して僕の心の中みたいな感じであることないこと言わなかった?」
「あら、ユッキー意外としっかりしてるのねー」
閑話休題。
「それより、メルクーアさんもプラヴァーなんだね。名前、決めてるの?」
フラ・キャンディ(kz0121)がユニットを残してきた方を振り返りつつ聞いた。
「『ギムレット』よん♪ 相変わらずお酒の名前」
メルクーア、気分良く告げる。振り返るギムレット(魔導アーマー「プラヴァー」)(ka4005unit002)はミリタリー色の強い、見た目はゴツイ機体である。
「そう言えば盾の装備はやめたのね?」
「うん。小太さんに相談して勧められたから。メルクーアさんも盾じゃなければ近接武器って言ってたでしょ?」
フラのプラヴァー「ロリポップ」には巨斧とクローが装着されていた。
「普段と近い装備の方が最初は戦いやすいかもですからねぇ」
にこにこ頷く弓月・小太(ka4679)。
その横からディヤー・A・バトロス(ka5743)が首を突っ込む。
「フラ殿も機体デビューした同士じゃの。初のユニット戦は心躍るじゃろう!」
「うんっ。わくわくするよね!」
きゃいきゃい盛り上がるディヤーとフラ。
「フラっちは凄いわね。私はきっと取説読んだら寝るわ。ストンと」
「キーリさんは……ゴーレム?」
「そう。よーく考えたら、私パイロット似合わない事に気付いたのよ。……というかガチャガチャ動かせる自信がないわ」
「えーっ、面白いのに~」
さらにキーリも加わって華やかに。
「そろそろ砕石場近く。油断せず、だね」
さすがに声が大きいと藤堂 小夏(ka5489)が飄々と注意する。
「そうだね。それに、こっちもわくわくするよ?」
先行する悠月が身を屈めた姿勢で前に注目するよう言う。
「確かにポーンですね」
「じゃの。……チェスなら姉弟子によく負かされたのー」
悠月に習い森に身を隠して砕石場の広い敷地を見渡す智里とディヤー。
確かに、広い敷地の真ん中に大きなポーン駒の石像が丸く固まっている。
「それにしても何で採掘場を占拠したのでしょうかぁ? 何かしらそこにあるとかでしょうかぁ…」
「うん。謎だよね」
小太とフラの疑問。
「変形して戦うのなら何で最初はポーンの形してるのかね? 最初っから人型の方が変形する手間ないし効率的じゃない?」
「うーん……いままでのみんなの話を聞いてたら、何となく分かる気がするよ?」
さらに続いた小夏の呟きに悠月が応じる。
「何か話したかしら?」
「指示に忠実。待機なら駒で戦闘なら人形、かな? ほら、小太さんも言った通り、ここを占拠することに意味があるなら、ね」
聞いたキーリに智里との話を思い返しつつ答える悠月。聞き役に徹していたのでそのくらい感じるかもしれない。
「なるほど。つまり駒」
小夏も妙に得心した。
「……背後で誰が操っているか」
「最近よく見つかる大きな腕があるかも、ですよぅ」
これ以上の偵察は無用、と引き返す小夏。小太も別の可能性を示唆しながら続く。
「どちらにせよ犠牲者のためにもチェックメイト、決めるわよー!」
皆が戦闘準備に戻る中、メルクーアが最後に現場を振り返り決意を新たにした。
●
――どうん……。
静かだった砕石場広場に炸裂音が轟く。
「はいヴォルちゃん、初陣なんだから頑張りなさいよ」
キーリが広場南側から刻令ゴーレム「Volcanius」(ka4642unit002)に砲撃指示を出している。
「後でちゃんと名前つけてあげるからね~」
その言葉を意気に感じているわけではないが68ポンド試作ゴーレム砲炸裂段をさらに撃ち込む。広場中央にたたずむポーンの石像たちは炸裂弾を食らい変形した。
「特別にデカイの担いできたんだし派手な方が素敵でしょ?」
「派手だね、キーリさん。……シグレと戦うのは久しぶり」
キーリとゴーレムの裏からはイジェドが姿を現した。
騎乗は、悠月。右に開いている。
「これが終わったら、いっぱい美味しいものを食べようよ……それっ!」
イェジドの「シグレ(ka4130unit001)」に優しくささやくと拍車を掛けポーンたちに突っ込んだ。大地を蹴るシグレの力強さが預けた体全体に広がる。一気に風になる感覚が体を駆け抜ける。
目指すは駒から人形になった敵六体。
「山なりの射撃は助かるわね」
シグレのさらに外からは、小夏のR7エクスシア(ka5489unit009)が現れた。アクティブスラスターで横に開き前への空間を開けると一気にスラスター全開。横に出た位置で一瞬滞空した直後、ブースターからのアフターバーナーで地面の小石など散らしまくってドンと前に出る。
一方、キーリのヴォルちゃん左側。
「フラさん、援護は任せてくださぃっ。射撃なら機体でもそうは変わらないはず……ですぅ」
「うんっ! カッコいいよ、小太さん。行ってくるね!」
小太の魔導型デュミナス(ka4679unit002)が長細い銃身のマシンガン「ラディーレン」をタタタンと放ちつつ前に出る。その裏から少し小さめのプラヴァー「ロリポップ」がローラー全開。ギャーン、と回転音を響かせ敵に突っ込んでいく。
「はわっ。さすがに速いですねぇ」
孤立させないよう、フラの後方に付けるべく微妙に前に出る。
この時、敵はこちらに接近していた。
遠方からの射撃に一瞬ひるんだようだが敵を視認できること、射撃が山なりなこともあり迷わず前に出たようだ。
その数、六体。しかも左前腕に突き出した小さな砲口から石つぶてを撃っている。
「向こうも数的優位を得たいのじゃろうが……」
これを見たディヤー、味方にウィンドガストを掛けていた作業が終了し本格参戦。
「そうはさせぬ!」
白地に金色の光るR7エクスシア「ジャウハラ(ka5743unit001)」がガトリングガン「エヴェクサブトスT7」を水平に構える。だらららら……と一気に多数の弾をばらまき撃ち合いに応じる。
この時、メルクーア。
「敵を何とか西の絶壁方面に追い詰めたいわね」
プラヴァー「ギムレット」は右の大外に回っていた。
手にする魔導銃を構え、突撃する悠月やフラを援護すべく射撃。そのまま東を取るべく移動する。
「ファルコン、だっけ? 射撃能力に特化した改造してるからねー」
距離感を大切にすべくマテリアルレーダーも使っていく。
このころ、最前線。
「敵、大きいね。足を狙っていくよ、シグレ?」
悠月、イジェドに身を伏せ突っ込むよう指示する。さすがに敵の射撃を食らっているので右に回り込みつつ身を伏せひとっ跳び。
低い下半身狙いのチャージ。体当たりして前肢で薙ぐ。そして離脱。
「ううん、硬い」
振り向き呟く悠月。テイクダウンもあるかと思ったが、敵は変形後頭の部分以外は原形をとどめていない。バランスは良さそうだ。
「受けるより回避の方がいいかな?」
「そうですね。と、そちらには行かせないのですよぉ!」
反対側ではフラがクロー左で受けて右のバルディッシュでガツン。そのまま左に逃げている。援護する小太からの射線が効き、無事に離脱するフラ。
そこに、小夏のエクスシアが突っ込む。
破山剣を豪快に振るい、後方に行かれないようここで壁になるつもりだ。
が、さすがに六対一は避けたい。
「ポーンは雑兵だけど群れるとちょっと厄介、逃げると更に厄介だね」
小夏、覚悟を決めた。
ラックに手を伸ばし螺旋槍「骨喰」をホールド。剣との二刀流でとにかく手数を出す構えだ。悠月とフラは移動しつつ戦って良さが出る。頼るわけにはいかない。ここで踏ん張って二人に後背を狙ってもらうのだ。ソウルトーチ、燃える!
「シグレ、今度は裏から!」
悠月が敵後背を狙う。今度は敵に膝を付かせることができた。削ることもできている。
ただ、密集戦だと結構な戦力を投じている射撃組からの射線が緩い。
苦しい戦いである。
「ん?」
そんな中、観察しつつ防御戦闘をしていた小夏があることに気付いた。
●
時は若干遡る。
「まさか戦闘の真ん中をくっついて歩くわけにはいかないですしぃ」
智里がきこきこと自転車をこいでいた。
目の前にはゴーレムさんの大きな背中。
「ゴーレムさん、敵を西に追い詰めたいので東から回り込んで下さい」
『ま゛っ』
声で指示を出すとひねった腰か動かした肩からか不明だが謎の音が返事のように聞こえた。
こうして東側に向かうゴーレムさんの後ろを自転車で追い掛ける。
「でも、いくら音声入力方式より機体性能が高くなるといっても有線の長さが十メートルってのはないですよぅ」
ひー、と泣き言こぼしつつもきこきこ。ゴーレム用有線コントローラー「堀魂」を付けているのだから仕方ない。
「これで性能アップしないなら詐欺ですよねぇ」
とかぶつくさも。もちろん期待の裏返しなのできこきこ自転車こぐのも苦にならない!
ここでメルクーアから無線連絡が入った。
「智里さん? 敵を何とか西側の壁に追い詰めたいんだけど、前の人数が足りないみたいなの。あたしもギムレットで突っ込むからお願いできないかしら?」
確かにメルクーアと智里の位置取りは東である。西に追い込むためにはこちらからの圧力が必要だ。
「突っ込むって、メルクーアさんのプラヴァーは射撃特化じゃ?」
「ギムレットはショートカクテル。じっくり飲むのがいいけど……」
智里の疑問に答えつつ前線で体を張る小夏へ援護射撃。
が、すぐに魔導銃の構えを解いて両脚のホイールを唸らせた。
「ラッシュで手っ取り早くくらくらに酔わせてあげるわ!」
少し近付いたところで敵もこちらに牽制射撃。
メルクーア、目の前にスペルウォールを展開しホイールフル回転。横に逸れてまた前進。乱戦に持ち込むつもりだ!
「とにかく敵が西に逃げたくなるような攻撃、するわよ!」
「そ、そういうことでしたら……ゴーレムさん、だだっ子パンチです!」
智里、ゴーレムさんに優先コントローラーのボタンを押して突撃指令。腕をブンブン上下させながら突っ込む刻令ゴーレム。その巨体のすぐ後ろに智里。爆走ついて行くのはやっぱり有線がぴーんと張っちゃわないため。すごい勢いでこいでいるぞ。
「わ、何!」
「フラさん、そっちは空けてこっちに来て!」
援軍を喜ぶフラに新たな陣形を支持する悠月の声が交錯する。
――ががが……。
東からだだっ子パンチで突撃して来たゴーレムさんが西に走り抜けた。がしゃんざざざ、とジェットブーツで空中を飛びとばっちりを避けていた智里も無事に着地する。
ただひたすらの一直線の突破。
敵にあまり被害はないが、陣形を二つに割った。
それだけではない。
「ん? ……『R』?」
敵六体の入れ替わり立ち代わりの攻撃をいなし外側からフラと悠月、そして援護射撃の攻撃を誘っていた小夏が敵の特徴に気付いたのだ!
「フラ、このポーンたちにRの飾り文字に気付いた?」
「え?」
小夏に問われ一瞬固まるフラ。
「それ、もしかしたらルモーレのマークかもしれませんよぅ!」
答えたのは小太だ。フラを援護していたが、どうしてここを、などと敵の目的などを考えていた分、ピンときた。
「ほら、フラさんの故郷でも石人形が襲ってきましたぁ!」
「あー、そう言えばいたわねぇ」
小太の叫びに反応したのは、キーリ。前線の近接戦闘開始に伴いヴォルちゃんの砲撃は止めさせて東に移動していたところだ。
「なんと? 知り合いか、フラ殿?!」
「知ってるけど友達とかじゃないからねーっ!」
ディヤーの驚きの声に慌てて念を押すフラ。
「それよりディヤー、敵は二班に分かれてるよね?」
「おお! そうじゃ、コナツ殿。二班で必ずポーンチェーンの布陣を敷いておるの。前は囮で斜め後ろが指示を出しておるようじゃ」
「すごいね、ディヤーさん」
「……よく負かされたのじゃ、フラ殿」
少しへにょ、としたディヤーの通信。
「でもそういうことなら次の動きが分かるよね」
「回り込むのなら任せてーっ」
悠月、またも背後から足を狙う。その後方からはメルクーアが再び構えた魔導銃で別の後方一体に照準を合わせた。
「準備できたわ。一撃じゃ無理でしょ?」
キーリの合図が届く。
「じゃ、お願い」
小夏、マテリアルカーテンを展開して敵の攻撃に耐えていたがアクティブスラスター・オン。すっと外すように後ろに逃げた。
「シグレ、思いっきり遠吠えして!」
悠月の合図でシグレがウォォーン、とウォークライ。突然の咆哮に敵の動きが一瞬止まる。
「それでも動くそこな敵にはアイスボルトじゃ!」
ディヤーも氷の矢を放ち敵の動きを阻害!
「フラさん、敵の足元を狙い撃ちしますから後お願いしますよぉ!」
小太も敵の行動阻害を狙いマシンガンで弾をばらまく。
「ヴォルちゃん? 発射!」
ここでキーリの攻撃指令。
再びゴーレム砲が火を噴いた。
――どーん!
敵の密集地中心に着弾、炸裂。
これで敵はフラフラだ。
「追い込んでないけど勝負どころね!」
メルクーア、デルタレイで一気に決めるつもりだ。
「ノッてきたね……それっ!」
悠月は飛び降り刀を構えると、シグレとともに一体を左右から抜き去りつつ同時攻撃!
「もう一回だだっ子パンチです!」
智里も再突撃。
「そちらには行かせないのですよぉ!」
「小太さん、ありがとっ!」
小太の射撃と、近くの敵に気付いたフラの近接攻撃。
「ここから見るとダブルポーン……悪手じゃ、動きにくかろう?」
ディヤーはショルダーアーマーにマウントしたクイックライフル「ウッドペッカー」でマテリアルビーム。
完全包囲から一気に敵の殲滅を狙った!
●
どどん……がらがら……。
「どう? チェックメイト!」
崩れる敵に得意満面のメルクーア。
しかしッ!
「あれは?」
一歩引いていた小夏が最初に気付く。
「そういえば、でしたぁ」
小太の残念そうな声。
ポーン型のゴーレムを打ち砕いた後に、宙に浮く光体が残っていたのだ。
それが砕いた岩の残骸に落ちてしばらくすると……。
――ごごご……がきーん!
「そーいやルモーレのこれって、コアの光体を砕かないと再生するんだったわね」
「とにかく計画通り西の岩壁に追い込むのじゃ! 参るぞ!」
けだるそうなキーリの声に、慌てて突撃するディヤー。
「し、仕方ありません。僕も……」
「前に行くしかなさそうねー」
小太も前に。キーリ前に。
とにかく最後列を前に上げて圧力を高める必要がある。
そこに、すっと前に入る影が。
「皆遠慮なく盾にしてね。一応硬いつもりだから」
小夏である。マテリアルカーテンを展開し最終防衛ラインを押し上げた後衛組を守る。
一方、前衛組。
「んもう、こっち狙ってきた!」
「もしかして……フラさん、そのまま西に逃げてください!」
自転車乗ったまま振り返る智里の指示。援護に行かないのはちょうどいま、東側に友軍が固まっていい具合に壁ができているから。智里とゴーレムさんも敵の射撃にさらされているがその理由から大きく動かず我慢していたのだったり。
「うん。了解だよ、智里さん」
なおこの時、フラを気にしていた小太は機能していなかった。
「この装備でも近接戦出来るのですよぉ!」
小太のデュミナス、可変機銃「ポレモスSGS」の砲身下部機構をスライド操作する。
瞬く間に剣としても使えるようになると横合いから殴られたポーンにガツリとやり返す。
重量感ある格闘戦を見せるが、しかし。
「……あ、あまりしたくないですけどもぉ」
間合いを作るとアクティブスラスターで離脱。フラへの援護射撃へと切り替えた。
そこへ入れ替わるように小夏のエクスシアがアクティブスラスターで横滑り。体を入れて割り込んで来た。
「さてと。ここからが本番だよ」
ポジションチェンジでいきなり相手が変わり驚いた敵に、白く神々しい刀身を持つ中華風の大剣をぶちかます。新たに寄って来た敵にはカウンター。崩れた後の光体コアにすかさず薙ぎ払い。流れるような動きで戦う。
「よし、シグレ……歌おうか! あの敵を穿ち砕く意思を奮い立たせるために!」
もう一度攻勢のタイミングが来たと判断した悠月、シグレに咆哮させて隙を作ると、勇気を、リズムを、明るい見通しを引き出してくれる歌を口ずさみ始めた。
♪
ここは誰の地 君たちのじゃない
怒らせないでよ 後悔するよ
怒らせたいの? じゃあ遠慮なく
♪
乱戦に拍車を掛けるように駆け回り自らの歌で戦いのリズムを味方に浸透させていく。
「あー、私だって歌って踊れるんだけどねー。この子、一芸ちゃんだから」
遠くからそれをうらやましそうに眺めるキーリ。遠距離砲撃担当なので悠月のようにあの位置でアイドルするわけにはいかない。
「ま、でも巨大なゴーレムに指示して動かすって良いわね。本に出てくる魔術師っぽくて」
我慢できてる要因はそれのようで。
場面は再び、前線。
「ええい。倒しても復活したし、似たような敵を数えると眠くなるの~……おわっ!」
ディヤーのエクスシア、ちょっとした隙に敵からボディアタックを食らっていた。
「あー……宿舎をぺしゃんこにしたのはそれね」
周りをよく見ていたメルクーア、作業員棟の完全倒壊の原因がそれだと判断した。逃げ込んだ作業員を一網打尽にしたため生存者がいなかったのだろう。
「……倒れた後の俊敏性はなさそうじゃがの」
ディヤー、もつれた状態からいち早く起き上がり試作錬機剣「NOWBLADE」を叩き込む。崩れて現れた光体コアも返す刀でバッサリだ。
一方、メルクーア。
「確かに敵の残数確認は大切よね~」
マテリアルレーダーで確認して、瞳きらーん!
「……どさくさに紛れてこういうところに逃げ込むのもいるから!」
ぎゃーん、とローラー移動。
広場に残っていた砂山の裏に逃げ込んだ敵をしっかりと把握し、回り込んだのだ。
「小型ミサイルランチャー発射! ここで一気に決めるわよ!」
六連装ミサイルを一気に放出。どどどんとの爆発音とともに行く手を塞がれ立ち往生していた敵を粉砕した。
「もちろん後始末も!」
デルタレイですかさず残った光体コアも殲滅するのだった。
「はい、発射~」
「あっ! 流れ、変わったよ!?」
フラの西への逃走で敵陣形が間延びしキーリの砲撃が再開されたとき、フラが声を挙げた。
「フラさんを追うのをやめたみたいですよぉ」
スラスターでフラを追っていた小太が着地。デュミナス身をひねり北へ逃走しようとする敵を狙撃。
「有線最後の指令です……」
ここで智里、これまで大切にしていた有線コントローラーをあきらめる覚悟をした!
「ゴーレムさん、弾き飛ばしてください!」
『ま゛っ』
智里のボタン操作は、マテリアルバースト。
一気に加速して進行経路上の敵を推力とマテリアル障壁の双方で弾き飛ばした!
この勢いは位置取り悪く伸び切っていたコントローラーのケーブル断線につながった。
「それでも追いますようっ」
智里、自転車で追う。
「光体コアは僕が壊しておきますよぉ」
止めは小太。智里はゴーレムさんに防壁建設の指示を出し敵逃走阻止に尽力するのだ。
「ユッキー、南に逃げるのがいるわよ?」
「了解、キーリさん」
最後尾からの連絡を受け、悠月がイジェドを急がせる。
さすがにスピードが違う。見る見る敵の背が近くなる。シグレのたくましさをその背に乗って感じる悠月。
「やっぱり、背中からの攻撃になるんだね」
戦いの初めのころもそうだったな、と思い出しくすり。
「シグレ」
その一言で、だっと跳びかかるシグレ。
押し倒して砕き、崩れたからだからコアが出てくる。
飛び降りつつそれを斬り、着地。背後で敵を潰していたシグレが立ち上がる。
「……一体も逃がさないよ?」
遠くではキーリの砲撃からフラがコアを潰しているのが分かった。
●
戦闘終了し、砕石広場の真ん中で輪になって座った。
「はい、珈琲入ったよ?」
「わわ。ありがとうございます、フラさん」
フラが珈琲を配って回る。受け取った小太、隣にぴとっと座ったフラに赤くなっている。
「メルクーア殿のレーダーにユヅキ殿の機動力、チサト殿の工兵作業もあったし、天、……いや、精霊の配剤に恵まれたの」
くいっと珈琲を飲んでディヤーが満足そうにまとめた。
「それにしてもポーンなコイツら何処から湧いて出たのかしら?」
「確か空から飛んで来た、って……」
キーリの疑問にフラが依頼を受けた時に聞いた話を告げる。
「飛んで逃げなかったわ」
「駒だから、放り込まれたのかもね」
小夏のさらなる疑問に何となく答える悠月。
「ああ、砲弾のように……。だから駒の形なのね」
「そういえばルモーレ、っていいましたよね?」
納得してふぅ、とため息をつく小夏。ここで智里が話に入って来た。
「はいですぅ。最初は盗賊の骸骨を部下にしてたんですけど、ちょっと前は土や岩の人型ゴーレムを使ってました。そして今度はそれが大型に……ですねぇ」
困ったものですよぅ、と小太。
「なるほど。なぜここを攻めたのかこれで分かった」
「ゴーレムにする岩を確保するためだったんでしょうかぁ……」
なぜこんなところを攻めたのか、と考えていた小夏と小太がその解答に至る。
「あー、だから砕石場の割りに崩した岩とか砕いた石とかが全くないのねー」
「それってつまり、もう必要なものは運び出した後、ってことでしょうか?」
地形確認をしっかりしていたメルクーアが不思議に思っていた事象の理由を理解した。確認した智里の言う通りである。
「こ、この後、ナイトとかクイーンとかキングとかも出て来たりするんですかねぇ?」
「間違いないのぅ」
小太の振りにディヤーの呟き。
「ま、考えたって仕方ないわ。それよりゴーレム使ってて何となく思ったんだけど、昇降機とかサーチライトとか舞台演出に使えそうよね」
「また大掛かりだね、派手に行けそうだけど……それより」
キーリの話に悠月が少し困った様子をした。
「早く戻ってシグレにも美味しい物、食べさせたいな」
自分だけ皆と楽しくコーヒー飲んでいるのをシグレがうらやましそうにしているに気付いたのだ。寄って行って撫でてやる。
とにかく、ルモーレがまた何か活動を始めたことをつかんだのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
相談ですよぉー 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/10/06 18:26:40 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/02 10:48:08 |