アスタロト急襲 ~騎士アーリア~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/10/12 09:00
完成日
2017/10/20 03:48

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国の南部に伯爵地【ニュー・ウォルター】は存在する。
 領主が住まう城塞都市の名は『マール』。自然の川を整備した十kmに渡る運河のおかげで内陸部にも関わらず帆船で『ニュー港』へ直接乗りつけることができた。
 升の目のように造成された都市内の水上航路は多くのゴンドラが行き来していて、とても賑やかだ。
 この地を治めるのはアーリア・エルブン伯爵。オリナニア騎士団長を兼任する十七歳になったばかりの銀髪の青年である。
 前領主ダリーア・エルブン伯爵が次男である彼に家督を譲ったのは十四歳のとき。すでに闘病の日々を送っていた前領主は、それからわずかな期間で亡くなっていた。
 妹のミリア・エルブンは幼い頃から政において秀才ぶりを発揮している。
 事故と発表された長男ドネア・エルブンの死因だが、実は謀反に失敗して命を落としていた。そのドネアが歪虚軍長アスタロトとして復活。謀反に関与していた元親衛隊の女性ロランナ・ベヒも歪虚の身となって現れた。
 兵器輸送のゴンドラの沈没事件、領地巡回アーリア一行襲撃事件、穀倉地帯における蝗雑魔大量発生等、アスタロト側が企んだ陰謀は、ことごとくハンター達の力添えによって打ち砕かれる。だがこれらの陰謀には搦め手が存在し、ネビロスは運河の湧水個所を狙っていた。歪虚アイテルカイトの尊厳をかなぐり捨てたネビロスだったが、騎士団とハンター達の前に敗北して最後の時を迎える。
 勝利に沸く城塞都市マールの民。アーリアが喜んでいたのも事実だが、振り払ったはずの兄への気持ちは心の奥底でかすかに残った。
 マール城にアスタロトから晩餐への招待状が届き、アーリアはその場へと赴く。そこでのアスタロトの発言はわずかな同情も引いたものの、傲慢に満ちあふれていた。
 不意に転移してきたTNT爆薬の処分についても、ハンター達の尽力によって解決へと導かれる。


 ある日、伯爵地ニュー・ウォルターの北東部に突如として大量の水が溢れだす。ハンター達の協力によって周辺住民の避難は完了。そして湖と化した大地の中央に、突如として城が浮きあがった。
 湖中央に聳える城の上空では、常に歪虚、雑魔が舞っていた。確証こそないものの、兵や民といった誰もが口々に噂する。あの城の主は歪虚軍長アスタロト。アスタロト城だと。
 湖出現からこれまで、領主アーリアは手をこまねいていただけではなかった。三度の戦端がひらかれたものの、一進一退の状況でアスタロト側の防御は厚い。
 陸路で船を湖へと持ち込んだものの、敵城の小島まで辿り着くことは叶わなかった。すべて湖に沈められてしまう。
 湖は歪ながら直径三km円といった広さ。水深は一番深いところで十メートル前後といったところ。アスタロト城は直径六百m円の小島に建てられていた。
 ハンターに協力してもらい、湖の調査が行われる。その結果、様々な事実が判明した。
 湖の底に沈んだ施設を休憩所として、数多くの水棲雑魔が哨戒任務をこなしていた。組織だっており、アスタロト城への連絡網が敷かれているとハンターが提出した報告書には記されている。上空も鳥雑魔によって見張られていた。
 艦隊の島上陸を妨害する投石機破壊計画が持ちあがる。ハンター達は任務を完遂。それによってアーリア率いる騎士と兵士の領地混合軍は、城聳える小島へと上陸を果たす。
 アスタロト城を攻めあぐむ状況が続いたものの、やがて東門の手薄さが判明した。好機ではあったが、アーリアは仕掛けられた罠を危惧する。それを払拭したのがハンター達。蜥蜴雑魔のキグルミ姿で潜入し、罠の存在を暴いたのだった。


 A城壁とB城壁の狭間にある広場へと領地混合軍を誘い込む。そこへ溶解の果実ジュースを放出し、まとめて屠るのがアスタロト側の狙いだった。
 その裏をかいた作戦がアーリアの配下によって練られる。作戦決行の前日、小島の橋頭堡にハンター一行が到着した。
「広場の罠を無効化し、そのままB城壁も突破、としたい気持ちにかられるのは無理からぬことだろう。しかし、それは愚策というもの。まずはA城壁とB城壁の狭間すべてを鎮圧することに全力を傾けるべきだ。そう判断した」
 非常に大きなテント内で、アーリア自らハンター達に作戦の概要を説明する。
 軍が広場を通過するためには、溶解の果実ジュースの阻止が不可欠。プール付近の制圧と、果実ジュースを流すための経路破壊が作戦の骨子だ。
 その事情を一番知り得ているのは、ハンターに他ならない。その任務を引き受ける心づもりの一行であったが、アーリアの口から伝えられたのは別の指示。本陣での待機であった。
「暗雲とした予感がするのだ。もしものときに備えて、後方に控えてくれないだろうか?」
 アーリアの判断に疑問を感じるハンターもいたが、最終的には了承する。小島外縁の橋頭堡にある本陣にて、待機の任務となった。
 翌朝、作戦は決行されて順調に事は運んだ。東門を突破。果実ジュースが貯められたプールの制圧に成功。経路四個所の破壊にも成功する。
 領地混合軍は広場を通過して、B城壁の直前まで進攻した。その後はA城壁とB城壁の狭間全体の敵一掃に取りかかる。
 そうした報告が次々と舞い込んでくる最中に一つの影が。本陣に招かざる客が訪れたのだった。

リプレイ本文


 領地混合軍による城壁攻めは順調に推移している。ハンター一行は小島外縁の橋頭堡に用意された本陣テント内にて、待機任務に着いていた。
「今が攻勢の時ではと思いますが、アーリアさんの直感に、従いましょう」
 ミオレスカ(ka3496)は仲間達に声をかけてから、本陣テントから外にでた。愛馬へと跨がり、「そろそろ名前も、考えてあげないと」と呟きながら周辺の哨戒を開始する。
「戦線が大忙しなのに、こっちは待つだけ。何かじれったいね………」
「どうなんだろうな。アーリアの予想は。当たるのか、そうではないかのか」
 弓月 幸子(ka1749)と鳳凰院ひりょ(ka3744)は本陣の窓から、アスタロト城を望んでいた。何本か上がっている青い狼煙は、要所制圧に成功したことを現している。失敗を示す赤い狼煙は見当たらない。
(暗雲かぁ、折角罠も見破ったんだし、その予感当たらないと良いけど……)
 時音 ざくろ(ka1250)は、本陣内の慌ただしい様子を傍観していた。アーリアは次々とあげられてくる報告を即時に判断して、次の指令をだしている。
 時音が自らに課していたのはアーリアの護衛。どのような状況でも盾になるべく、心構えを忘れない。
「アーリアの勘が当たったとして、どのような事態が考えられるのだろうか?」
「敵の反転攻勢が第一だろう。そうなれば応援に駆けつける指示がだされるはずだ。だがその可能性は――」
 ロニ・カルディス(ka0551)とヴァイス(ka0364)は今後の展開を予想しつつ、状況を見守っていた。本陣内にいる騎士達の士気は高く、誰もが精力的に指揮系統を支えている。作戦遂行に関して、一点の染みも見当たらなかった。
 ディーナ・フェルミ(ka5843)はアーリアの元へ、淹れたての紅茶を運ぶ。
「ありがとう。無理に待機を頼んだことといい、ハンターの皆さんには世話をかけるな」
「どう致しましてなの。貴方はニュー・ウォルターの領主で、領民の希望だから必ず守るの。でも、貴方の願いや貴方と共にある騎士団みんなの願いも、叶えたいと思っているの」
 いくらか言葉を交わしたディーナは、付かず離れずの距離でアーリアを見守る。
 危険とされた広場を通過し、B城壁の直前まで領地混合軍が進攻したとの無線連絡が入ってきた。本陣内で喜びの響めきが起こった直後、野外から銃撃音と雄叫びが聞こえてくる。
 待機中のハンター達の無線にミオレスカの声が届く。『あ、アスタロトが突然、屋根の上に現れたんです。ただ今交戦中!』彼女の焦りが口ぶりから如実に伝わってきた。
(突然現れたって。しかも、ただ者じゃない気配がする、これが暗雲の正体?)
 最大レベルの危険度と想定した時音は、表情を引き締めてアーリアの側に立つ。
「って!!! 敵が一気にこっち来たって、アスタロト!!?」
「行こう」
 弓月幸子と鳳凰院が勢いよく座席から立ち上がった。
「まさか直接乗り込んでくるとは!」
「強襲!? しかし、戦線を突破されたとの報告は……まさか、転移か!」
 本陣から飛びだしたロニとヴァイスが、背中合わせに周囲を見渡す。銃撃音が聞こえる方角で土煙があがっていた。
 ディーナが剣を手に取ったアーリアに話しかける。
「安全のためには、アスタロトから距離を取ってほしいっていいたいの。でも、正しい事は必ずしも正解じゃないの。騎士が敵の首魁から無策に逃げ出したら、歪虚相手でも一般兵の士気は落ちるの」
 見あげて話すディーナの言葉を、アーリアが黙って聞いていた。
「それに……敵の軽挙だけど、アーリアがアスタロトに直接まみえる機会は、もしかしたらこれが最後かもしれないの。アーリアが私達と一緒に敵の玉座まで踏み込む計画を立てない限り。だから、アーリアに、貴方がどうしたいのか聞きたいの」
「……敵将の首が目の前にぶら下がっている状態で、退いたとあっては騎士の名折れ。先のことはどうであれ、ここで戦うのは必然なのだろう。死ぬつもりはない。生きてこそアスタロトに勝ったといえる」
 アーリアはディーナと周囲の者達に告げてから歩きだす。ハンターや騎士の一部を引き連れて、本陣から外にでた。
「生前のドネアは、戦士としての実力はどの程度のものだったんだ?」
 鳳凰院は走るアーリアに追いついて訊ねる。
「騎士団の猛者達よりも実力は抜きんでていた。だがむらのある性格だったので、簡単に負けるときもあった。本気になったときの勝負で、私が勝った記憶は……一度もないな」
 アーリアの瞳は普段以上に、真剣味を帯びていた。


 唐突なアスタロト来襲に、本陣周辺は混乱の最中にあった。兵士は銃撃等で応戦したが、アスタロトを前にして、為す術がないのに等しい。
(これの威力が通じるかどうか)
 大火弓を構えたミオレスカが、狙い定めて矢を放つ。高加速射撃で放たれたそれは、アスタロトの前腕に取りつけられた盾に亀裂を入れる。
 かなりの遠距離攻撃だったために、ミオレスカの正確な位置はアスタロトに掴まれてはいなかった。しかし勘に障ったようで、一般兵からの攻撃を無視して、矢が飛んできた方角を凝視していた。彼女が隠れてやり過ごしているうちに、仲間や味方が集まりだす。
 駆けつけたばかりのヴァイスとロニが、地上へおりたアスタロトを睨みつける。
「そこを退け」
 アスタロトの突きだした右手から風塵が発生し、巻き込まれたすべてが宙に浮かんでから地上へと叩きつけられた。
 即座に避けたヴァイスとロニが、アスタロトとの距離を保つ。ミオレスカはその隙に近場の櫓へと登って、射線を確保する。三人で仕掛けることはできたが、味方と合流するための時間稼ぎを優先した。
「ほう、俺が現れたと知って、尻尾を巻いて逃げだしていくと思っていたのだが」
 アスタロトが駆けつけたアーリアを見据えて、口元に笑みを浮かばせる。しかし眉間には皺を寄せていた。背負っていた巨大な剣を抜いて、アーリアを倒そうと一気に迫り来る。
「着装マテリアルアーマー……。狙いはアーリアか、だったらここから先は通さないよ」
 時音が聖盾を構えて割って入り、魔力が込められたアスタロトの剣戟を受けとめた。後ずさりながらも倒れることなく耐えきってみせる。
 時音が防御膜を形成し続けて、アスタロトの猛攻から耐えているうちに、残るハンター達も仕掛けていく。
 鳳凰院も盾となって動いた。
「いくら手薄な時とはいえ、どうやって? 警戒は万全だったはずだ!」
 アスタロトの攻撃を受けとめながら、全力で反撃を仕掛ける。鳳凰院が振りおろした刃を腕甲で受けとめたアスタロトが「俺にとってその程度は容易いこと。いつでも寝首をかけるのだと思い知れ」と呟いた。
 アスタロトの言葉を聞いた誰しもが、『転移』や『瞬間移動』を想像する。
「少しでも足止めをしなければ。エア・スティーラー、頼みます」
 武器を魔導拳銃に切り替えたミオレスカが、威嚇射撃とレイターコールドショットを交互に撃つ。アスタロトがアーリアに近づかないよう、また味方の死角に回られないよう先読みしながら銃爪を絞った。
「自由に、やらせはしない。そこに根でも生やしてもらうおう」
「騎士は一旦退け! ここは俺達に任せるのだ!」
 ロニがジャッジメントによる光の杭をアスタロトへ打ち込んだとき、ヴァイスが七支槍を構えた。ライトニングボルトの雷撃が宙を駆け抜けて、アスタロトを貫き通す。
 ハンターによる連続攻撃は、留まることを知らなかった。
「超機導パワーオン、弾け飛べ!」
 時音が放った輝くデルタレイの光条が、アスタロトの背中に突き刺さる。
 弓月幸子は後方で戦いの場全体を把握しながら、仲間達にウィンドガストの、緑に輝く風を取り巻かせた。
「アーリアさん危ないんだよ!!」
 さらに弓月幸子はアーリアとは関係がない位置に、アースウォールの石壁を出現させる。アスタロトが裏側に回ると、「なんてね。はずれだよ~。この隙にアーリアさん逃げちゃったかもね~」とからかいの言葉を投げかけた。
 傲慢なアイテルカイトにとって、威厳を損なうのは何よりの屈辱に他ならない。わざとアスタロトを怒らせていく。
 アーリアが断固として退かなかったこともあるが、それでもアスタロトは距離を縮めていった。十数mまでの間合いになったとき、アーリアも戦いに身を投じた。
 交えた刃が激しい火花を散らす。互いに一所には留まらず、剣戟による攻防が続いた。
「回復は任せるの!」
 ディーナがアーリアに声をかけながら飛燕を使う。五芒星の投擲武器がアスタロトの脇を薙いでいく。アーリアにホーリーヴェールをかけて、アスタロトからの攻撃を軽減させた。
「アスタロト、ミリアが一人で隠れるように泣いていたのだ! お前が人だった頃の過去を知って、酷く傷ついてな!」
「だからどうした? 今更泣き落としか? アーリアよ。お前もそうだとでも、いいたいのか?」
「とうに兄殺しの汚名を被るのは、覚悟している。歪虚と化している相手だとしてもな。民のため、ニュー・ウォルターの未来のため、この刃をその胸に突き立てるのに、迷いなどありはしない。片寄った思想だったとはいえ、お前もそうだったはずだ。どうしてこうなった! こうなってしまったのだ!!」
「野望を持ち得なかった輩には、わからぬ道理さ」
 アスタロトの薙ぎ払いによって弾きとばされたアーリアを、ディーナが全身で受けとめる。弓月幸子が背後に石壁を出現させて、近場の崖から転げ落ちるのを防いだ。
(覚悟しているっていってたけど、きっとアーリアの心中は……)
 ディーナは大地に倒れたまま、アーリアを含める周囲にディヴァインウィルで不可視の領域を作りあげる。
(ここで仕留めれば、終止符を、うてます)
 ミオレスカがクイックリロードを駆使しつつ、冷気の銃弾を次々と叩き込んだ。
 絶対的な自信がアスタロトの力の源なのだと、ミオレスカは考えていた。この襲撃の意図はおそらく、アーリア側への心理的な揺さぶり。自ら出向いて、それをせざるを得なくなったとすれば、アルカテイトとしてのプライドの一部を捨てた行為だともいえる。
 アスタロトの攻めに隠された後ろ向きな動機を、ミオレスカは感じ取っていた。
(やはり一筋縄ではいかないか。しかし!)
 ロニは鎮魂歌を唄うことで、アスタロトの動きをさらに鈍くさせる。
「まったく頑丈な奴だ!」
「本当なんだよ。薄くて軽そうだけど、あの鎧も特別製なのかも知れないんだよ!」
 ヴァイスと弓月幸子がそれぞれに放ったライトニングボルトが、アスタロトを中心にして交差する。表情を歪めたアスタロトだが、だからといって跪く様子は見受けられなかった。巨大な剣を横薙ぎにして、進む方向にあった柱を真っ二つにする。
 ゆっくりとだが、石壁に保たれるアーリアにアスタロトが一歩一歩近づいた。ジェットブーツで宙を舞った時音が、再び立ちはだかった。
「行かせないって言ったはずだ!」
 時音は残っていたマテリアルアーマーを駆使して、アスタロトの突きをそらす。「ならばこちらは、魔法剣だっ!」と叫んで、霊魔撃を見舞う。
「邪魔立てするな」
 半歩退いたアスタロトが背中の翼を広げて、地上十数mの高さからアーリアを狙おうとした。
「思う通りにさせるつもりはありませんよ」
 急降下しようとしたアスタロトの出鼻をくじいたのが、鳳凰院の衝撃波だ。軌道が変わってテントへと接触。姿勢を崩したところへ各人の中遠距離攻撃が炸裂する。
 ミオレスカが撃つ高加速射撃。ヴァイスと弓月幸子の輝くライトニングボルト。ロニの聖なるセイクリッドフラッシュ。鳳凰院の衝撃波二段目。時音が放ったデルタレイの光条。
 ディーナはホーリーヴェールとディヴァインウィルによって、アーリアの護りに徹する。
 アスタロトは背負っていたマントを翻して、防御の姿勢をとった。待機していた騎士達も銃器や大砲で加勢する。
 そのとき上空から巨大な鳥や昆虫型の歪虚が多数飛来した。歪虚の群れはアスタロトの盾となり、ハンター達の攻撃を阻んだ。
 高度をとったアスタロトは虚空で嘲笑う。「城壁一枚を破った程度でいい気になるな」と。生き残った飛行型歪虚と共に城へと撤退していき、本陣周辺に静けさが戻る。
「ようやくお帰り願えたか……招いてもいないのに来るのは勘弁してもらいたいな」
 ロニはそれまで掲げていた錬金杖を地面に突き立て、体重を預けた。
 弓月幸子は気が抜けて、その場にへたり込む。「ひりょさん、ありがとうなんだよ」彼女に近づいた鳳凰院が手を差し伸べる。
(今は深追いは禁物、か。待っていろよアスタロト、次こそは)
 鳳凰院は心の中で決意を固めた。
 ミオレスカはアスタロトが消えた城の方角を眺め続ける。「何に置いても、アーリアさんが上だと、思ってもらえれば、本当にすべてが解決するはずです」と呟く。
「ありがとう、ディーナさん。それにアスタロトとの戦いについても」
「アーリアを見てると、まだドネアさんと話したい確認したいことがあったのかなって気がしたの。叶えられる願いなら、叶える助力をしたかったの」
 生命力を回復させるために、ディーナはフルリカバリーの暖かな光でアーリアを包み込んだ。
「ちょっとだけ残念。逃げ足、速すぎだね」
 時音はジェットブーツでアスタロトを追いかけたが、途中で引き返してきた。
「アスタロトについて、気づいたことがあれば話してくれ」
 回復魔法や治療が終わった後で、ヴァイスは仲間達に話し合いを持ちかける。
 アスタロトが『転移』もしくは『瞬間移動』を使って、急襲してきたことはまず間違いのない事実。また帰還にそれを使わなかったのは、多くの者が感じた疑問だった。各自の考えをまとめると、短い間隔での連続使用はできないのだとの推測が成り立つ。
「アスタロトを逃がさないためには、一度、あの技を使わせる必要があるということか」
 ヴァイスがアーリアへとふり向く。
「瞬間移動は厄介だ。事前に使わせないと、どれだけ追い詰めても、逃げられてしまうだろう」
 アーリアもその考えに強く賛同するのであった。

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参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン アリーアを護れ!
ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/10/12 01:34:57
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/10 18:20:28