ゲスト
(ka0000)
巨大生物出現の原因は……
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/12 22:00
- 完成日
- 2017/10/17 15:00
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町「ガンナ・エントラータ」。
グラズヘイム王国における、流通の要となる町だ。
東から陸路で運ばれていくこともあるが、やはり海路で運ぶことが出来る物量は非常に多い。
自由同盟から大量の物資がこの地を通過し、王都イルダーナを中心に王国内の都市、町へと運ばれていく。
物が集まる場所には人も集まる。港町は沢山の人が集まり、活気に満ち溢れている。
そんな町だからこそ、トラブルが発生することも少なくない。
街道から大きく外れた町の外れ。
そこには、1人の偏屈な老人が住んでいた。
彼……レリオは研究を生活の糧としており、その分野は化学と生物学、薬学と幅広い。
サルヴァトーレ・ロッソが停泊していたリゼリオならば、さらに高い技術を入手できるのかもしれないが、レリオは独学での研究に固執していた。
まだ、クリムゾンウェストでは非常に珍しい工業製品の原料なども研究している。いわゆる、化学繊維、溶剤といった物の研究。塗料、インクなど、実際に彼は自作の製品を町で販売して生活の糧としていたようだ。
「もう少しじゃな」
最近は、レリオの研究は化学薬品の方にも、研究の矛先が向いている。
この薬品を生物に投与してみたらどんな反応が見られるのか、などだ。
ある程度はレリオも自身の飼っている実験用モルモットなどに投与するなどして実証するのだが、人知れず街の周囲に住む生物にまで試すのが彼の悪い癖。
大抵は実害がないのだが、まれに大変なことになる場合もある。この間は、異常繁殖した虫の大群に襲われたし、少し前は誤って自分で飲んで、思いっきり腹を下してしまったことも……。
そして、彼は知らない。その結果として自分の知らないところで、生物が巨大化する騒ぎを引き起こしていることを。
「さて、これをこうして……」
再び、レリオは実験用のモルモットに投薬する。自身の作った怪しげな薬を……。
●
この地で何度か発生している巨大生物騒ぎ。
平原でカマキリ、砂浜でイカ、磯でザリガニ、そして、下水道でスライム……。
場所も生物もバラバラだが、この町の周辺で起こったことは共通しており、ハンター達もその原因を探る為、幾人かが動いていた。
「間違いなさそうですね……」
その中には、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)の姿もある。この地に派遣された聖堂戦士団の一員として、巨大生物騒ぎに思うことがあって動き出していたのだ。
一足早く動いていたハンター達が原因となりそうな場所を一つずつ洗い出していたこともあり、ファリーナはその手伝いをする形で立ち回っていた。
巨大生物は平原や海岸、そして、町の下水道など広い範囲で現れている。
ただ、この町の周囲でのみ起こっている事実から、町やその周囲の住民に当たりをつけて調査を行っていた。
その中で浮上してきたのは、自称学者のレリオという初老の男性。20年以上前、妻に子供共々出て行かれ、1人で研究を続けているらしい。
彼が様々な場所で、自身の作った薬の成果を試す姿が街の周囲で目撃されている。
「投薬された全ての生物が巨大化している、というわけではないようですね」
おそらく、投薬は一つの要因であり、巨大化に至るにはマテリアル異常などいくつかの原因が重なっているのだろう。投薬を行った生物全てが雑魔にならなかったのは幸いといえた。
レリオは巨大化生物の事件に関しては把握していないと思われる。
彼に害意などないだろうという話は、関係者の話からうかがい知れる。普段、日常において役立つ製品、薬を作っていて、非常に人の良い爺さんなのだという。とてもでないが、自ら事件を起こす人物ではないとのこと。
ともあれ、一度レリオに事情を聞きに行かねばならない。
事情聴取だけならさほど人数は要らないだろうが、周辺の調査も含めた人手が必要だということで、人数を集めてレリオ宅に向かうことになる。ファリーナも状況を直接確認する為に同行するようだ。
「……何でしょうね、少しだけ嫌な予感がします」
それが的中しないことを願いつつ、ファリーナはハンター達についていくのである。
港町「ガンナ・エントラータ」。
グラズヘイム王国における、流通の要となる町だ。
東から陸路で運ばれていくこともあるが、やはり海路で運ぶことが出来る物量は非常に多い。
自由同盟から大量の物資がこの地を通過し、王都イルダーナを中心に王国内の都市、町へと運ばれていく。
物が集まる場所には人も集まる。港町は沢山の人が集まり、活気に満ち溢れている。
そんな町だからこそ、トラブルが発生することも少なくない。
街道から大きく外れた町の外れ。
そこには、1人の偏屈な老人が住んでいた。
彼……レリオは研究を生活の糧としており、その分野は化学と生物学、薬学と幅広い。
サルヴァトーレ・ロッソが停泊していたリゼリオならば、さらに高い技術を入手できるのかもしれないが、レリオは独学での研究に固執していた。
まだ、クリムゾンウェストでは非常に珍しい工業製品の原料なども研究している。いわゆる、化学繊維、溶剤といった物の研究。塗料、インクなど、実際に彼は自作の製品を町で販売して生活の糧としていたようだ。
「もう少しじゃな」
最近は、レリオの研究は化学薬品の方にも、研究の矛先が向いている。
この薬品を生物に投与してみたらどんな反応が見られるのか、などだ。
ある程度はレリオも自身の飼っている実験用モルモットなどに投与するなどして実証するのだが、人知れず街の周囲に住む生物にまで試すのが彼の悪い癖。
大抵は実害がないのだが、まれに大変なことになる場合もある。この間は、異常繁殖した虫の大群に襲われたし、少し前は誤って自分で飲んで、思いっきり腹を下してしまったことも……。
そして、彼は知らない。その結果として自分の知らないところで、生物が巨大化する騒ぎを引き起こしていることを。
「さて、これをこうして……」
再び、レリオは実験用のモルモットに投薬する。自身の作った怪しげな薬を……。
●
この地で何度か発生している巨大生物騒ぎ。
平原でカマキリ、砂浜でイカ、磯でザリガニ、そして、下水道でスライム……。
場所も生物もバラバラだが、この町の周辺で起こったことは共通しており、ハンター達もその原因を探る為、幾人かが動いていた。
「間違いなさそうですね……」
その中には、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)の姿もある。この地に派遣された聖堂戦士団の一員として、巨大生物騒ぎに思うことがあって動き出していたのだ。
一足早く動いていたハンター達が原因となりそうな場所を一つずつ洗い出していたこともあり、ファリーナはその手伝いをする形で立ち回っていた。
巨大生物は平原や海岸、そして、町の下水道など広い範囲で現れている。
ただ、この町の周囲でのみ起こっている事実から、町やその周囲の住民に当たりをつけて調査を行っていた。
その中で浮上してきたのは、自称学者のレリオという初老の男性。20年以上前、妻に子供共々出て行かれ、1人で研究を続けているらしい。
彼が様々な場所で、自身の作った薬の成果を試す姿が街の周囲で目撃されている。
「投薬された全ての生物が巨大化している、というわけではないようですね」
おそらく、投薬は一つの要因であり、巨大化に至るにはマテリアル異常などいくつかの原因が重なっているのだろう。投薬を行った生物全てが雑魔にならなかったのは幸いといえた。
レリオは巨大化生物の事件に関しては把握していないと思われる。
彼に害意などないだろうという話は、関係者の話からうかがい知れる。普段、日常において役立つ製品、薬を作っていて、非常に人の良い爺さんなのだという。とてもでないが、自ら事件を起こす人物ではないとのこと。
ともあれ、一度レリオに事情を聞きに行かねばならない。
事情聴取だけならさほど人数は要らないだろうが、周辺の調査も含めた人手が必要だということで、人数を集めてレリオ宅に向かうことになる。ファリーナも状況を直接確認する為に同行するようだ。
「……何でしょうね、少しだけ嫌な予感がします」
それが的中しないことを願いつつ、ファリーナはハンター達についていくのである。
リプレイ本文
●
ガンナ・エントラータの郊外。
街道より大きく外れた場所を、ハンター達は行く。幾人かは魔導マイクや馬を駆っての移動だ。
「……やっと、連続巨大生物事件解決の為の糸口が掴めたか」
口元を髭で包む赤髪の男、アバルト・ジンツァー(ka0895)は少しばかり感慨深げに呟く。
現在、報告されている事件として、巨大生物騒ぎは4度発生している。アバルトはその内、2度その討伐に参加していた。
そして、彼は前回の事件の後に調査依頼の報告書を提出するなど、積極的にこの事件解決に当たっている。今回も、ハンターオフィスの協力を得て、これまでの巨大生物事件における損害について纏めた資料を作成していた。
なお、万一、巨大生物を放置していた場合の想定損害額も記載されているのだが、その額は街の一区画が壊滅する程度にまで膨らむらしい。
「これで、今後の発生を防ぐことが出来ればいいのだがな」
「そうですね……」
銀の髪に、銀の鎧に身を包んだ聖堂戦士団団員、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が相槌を打つ。この地の現状を視察していた彼女もやはり、見過ごせない事態だと考えていた様子だ。
「生物を巨大化させる化学薬品か……。こいつはかなり臭うぞ」
金髪をポニーテールにした長身の女性、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)はこの一件にきな臭さを感じていて。
この事件の原因の1つを作っているとされる初老の男性、レリオ。実験において使っていた化学薬品に関心の矛先を向けていた。
この薬品の効果を、レリオははっきりと知らなかったとコーネリアは見ている。
もしかしたら、その薬品は意図的に雑魔被害を起こす為、歪虚が人知れずその薬品を人間社会に浸透させたのではないか。コーネリアはそんな推論すら立てていた。
「だとすれば、事件は今回の一件だけで終わらないはずだ」
「バイオハザードという言葉が思い浮かびますね」
クオン・サガラ(ka0018)もまた、それに同意する。それは、生物災害を差す言葉だ。
ただでさえ、マテリアルの影響で変異が起こりやすいクリムゾンウェストという世界。その上で、隔離施設なしでの実験に、危うく人類が滅ぶ危険すらあったこと、クオンは難色を示す。
そして、早期にこれが対応できて良かったのかどうか……。現状だと、その判断も難しい。
「とにかく、『人工モンスター』は自重して貰いたいですね」
そんなクオンの話に、天真爛漫なエルフの少女、ネフィリア・レインフォード(ka0444)は「困ったお爺さんなのかな?」と首を傾げつつ移動する。
「歪虚が原因でないのが、不幸中の幸いであるが……」
現状、目に見える範囲では歪虚が原因と認められぬということだが、右目に眼帯をした金髪ドワーフ、ミグ・ロマイヤー(ka0665)は大きく首を振る。
「悪気のない一般人の仕業とは、はた迷惑なことこの上ない」
ミグもまた、巨大生物討伐にその都度借り出されてきた。それだけに、一般人が原因となれば複雑な心境を覚えてしまう。
老研究者に釘を刺すだけで、おそらくは事件は解決するだろうとミグは見ているが、どうやらこの老人に対する街の人の評価は決して悪くない。
「説得に応じてくれればよいが……」
変にこじれると、歪虚よりもタチが悪い。それだけに、ミグは頭を悩ましている。
「実験の結果暴走したモルモットの討伐……ですか」
巨大生物が現れる原因について考える仲間達を目にしていた、長い紅い髪を持つオートマトンのT-Sein(ka6936)。その実験を行っていた老人に対し、僅かに眉を顰めて。
(真面目な方なのでしょうが、命を弄る人は好きになれませんね)
基本、戦う為にハンターをしている彼女は、最初から老人の詰問を仲間に任せようと考える。もっとも、そういった実験は必要なのだと理解はしているのだが。
「まあ、とにもかくにも行くしかあるまいて」
あれこれ考え、語り合う仲間達へミグが呼びかける。もうじき、目的の老人の家が見えてくるはずだ。
「用心に越した事はない。注意を怠らない様」
愛馬であるゴースロンのファルケを駆る元王国騎士、ユナイテル・キングスコート(ka3458)が皆に促す。
巨大化生物発生の原因がこんな辺鄙な場所にあるとは。そう考えるユナイテルは、どうにも嫌な予感を感じていた。
そして、その予感は残念ながら、現実のものとなってしまう。
ドゴォォォォォォ……。
「「キュウウウウウウゥゥゥゥゥ!!」」
その目的地の方向から、何かが蹴破られる大きな音。さらに、獣の大きな鳴き声が聴こえていた。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。原因究明の為には突撃あるのみです」
瞳をコバルトブルーから鮮やかな赤に変化させたユナイテル。彼女に同意するハンター達は、急いで現場目指して走り出したのだった。
●
「ひいいいぃぃぃっ!」
壊れた家壁から逃げ出てきた一人の男性。齢を重ね、白髪がかなり多くなったその男性こそ、レリオだろう。
「実験に失敗して、大惨事といったところでしょうか?」
エルバッハ・リオン(ka2434) がその惨状を分析すると、続いて家壁を壊した原因であろう紫と黄、2体の巨大なモルモットが爛々と両目を赤く光らせて、レリオらしき男性を追いかける。
「なんだ、あのでかい鼠は」
遠望したミグも、モルモットの姿を見て驚く。
リアルブルーにおいて、最大のげっ歯類のカピバラでさえ体長は1.5mを超えないというから、3mのモルモットがいかに大きいかは察するにあまりある。
「あや、誰かが大きいネズミさんに追いかけられてる? 急いで助けるのだ!」
それを見て叫んだネフィリアが猫耳、尻尾を生やして直ぐにダッシュし始めると、宝剣「カーテナ」を抜いたユナイテルも間髪入れずに手綱を振るってファルケで走り始める。
(「ざま見ろ」と言いたくなるのう。面倒な状況説明もはぶけたわい)
説明の手間が減った上、相手が大変な目に合っている様にミグは嗜虐心を覚える。
そんな自身に少々困惑するミグはやや足場の悪い丘を自らの機動術でカバーしながら、右目の眼帯より紅蓮の炎上のオーラを吹き上がらせ、オフロードバイクを疾走させて後を追う。
「原因は何であれ、レリオさんを保護した方が良さそうですね」
エルバッハに同意し、他のメンバー達も老人の元へと急ぐ。
ある程度近づいたところで、猟撃士のメンバーがモルモットに狙いを定めて銃を構える。
先に疾走していくメンバーを助けるべく、顔の左半面部分を青銅と化したアバルトはロングボウ「レピスパオ」にマテリアルを込めた矢を番え……、一気に射放つ。
冷気を纏ったその一矢はレリオの真横を飛び、後ろから彼を追う黄モルモットを貫いた。
「キュウウウウッ!!」
傷口を凍らせた黄モルモットが刹那、硬直する。
「ともあれ、今は仕事に集中……だな」
マテリアルを収束していたコーネリアは全身から稲妻のような黄色い閃光を走らせながら、ライフル「ルインズタワー」から銃弾を放って黄色のモルモットの足を狙う。
足を貫かれたモルモットは倒れこみ、その場でジタバタともがき始めていた。
「味方を巻き込まぬよう、注意しませんとね」
アサルトライフル「APC-M」を両手で構えていたクオン。覚醒しても自然体のままの彼もまた、モルモット目掛けて弾幕を張るようにして銃弾を撃ちこんで行く。
その援護射撃を受けながら、丘を駆けるミグ、ユナイテルの2人は老人との距離を詰める。
「ファルケ!」
騎馬の俊足を活かし、丘を駆け抜けたユナイテルが若干速い。彼女は老人よりも前方へと回り、向かい来る紫のモルモット目掛けて加速した勢いを活かして宝剣を突き出した。
「キュウウウウゥゥ!!」
「ご老人は傷付けさせない。我が剣の錆となりたくば、掛かって来るがいい」
甲高い声で叫ぶモルモットに、ユナイテルは毅然と言い放つ。
「ほっ、お前さんがたは……?」
駆けつけた若者達の姿にレリオは状況をつかめずにいたが、ミグがそこで彼を拾い上げて荷台に放り込む。
「ほおおおぉぉ……!?」
叫ぶレリオをそのままに彼女はスピードを出してその場を離脱、足場のしっかりした場所を探す。
仲間達がレリオの確保と敵の抑えに当たっていると、T-Seinがモルモットへと接近していて。
「殲滅執行」
褐色の肌を見せるT-Seinは、それまでの大人しげな性格から一変、荒々しさを見せる彼女は縮地でモルモットの間合いまで飛び込み、気を錬って自らの力を高めていく。
「悪く思うな」
T-Seinは正面から、機械手甲「ソルティエール」を纏った右の拳を強く突き出す。
しかし、その巨大な相手はそれがどうしたと言わんばかりにふんぞり返る。
仲間達が交戦を開始する中、エルバッハはレリオの家の中を気がけて近づく。
その胸元に薔薇の花を模した赤い紋様を現す彼女は、棘を模した紋様を四肢の先と両頬に浮かび上がらせている。
レリオの家の中を気に掛けていたエルバッハは結局、モルモットの背後に回る形となっていた。
1人で突出すれば危険は大きいと判断したこともあり、エルバッハは仲間の位置を気がけつつファリーナを伴っていた形だ。
「まだいるようですね……」
エルバッハが家の外から見たのは、寝息をかいていた水色のモルモットだ。
「攻撃すべきでしょうか?」
「とはいえ、ここからでは……」
皆、戦闘に集中していた為、確認を取って総意を聞くのも難しい。もう少し作戦を詰められていたなら、うまく連携もとれたのかもしれないが……。
「キュ……?」
「やるしか……、ありませんね」
しかも、そいつはゆっくりと起き上がってきたのではないか。ファリーナは刀に手をかけ、戦闘態勢に入る。
「下がって」
そこで、ひとまず置いておくのがベストと判断したエルバッハは、そいつを青白い雲上のガスで包み込んでいく。
またまどろみ始めた水色モルモットはぐったりして、その場に倒れこむ。巻き込まれぬよう下がっていたファリーナが両手をぽんと叩いた。
「上手く行きましたね」
「後は、あちらの援護に行きましょう」
そうして、エルバッハは彼女と共に丘で仲間が交戦するモルモットの元へと向かっていく。
ただの調査と思っていたこの1件、ハンター達は飛んだ面倒事に巻き込まれたと考えながらも、巨大モルモットの討伐に全力を尽くすのである。
●
先にこの場へと到着したユナイテルは、モルモット達をこの場から通さないようにと、立ち塞がる。
「一歩たりとも、近付けさせない」
敵はユナイテル目掛けて疾走し、食らい付いてきたりする。彼女はその攻撃をファルケの手綱を捌くことで、できるだけ愛馬に攻撃されないよう気を配っていた。
そこに、T-Seinが並び立つ形となる。
「させるか」
そっけなく言い放ったT-Seinは再度縮地を使って敵に飛び込み、敢えて家に近づくことで敵をレリオから離すよう誘導していく。丁度、こちらに向かってくるエルバッハ達と合流する形だ。
どうやら、人間を餌とでも勘違いしていたモルモット達は、T-Seinに気を取られていたようだ。
そして、後方に下がる形となったミグ。自分達が向かってきた方向にまで下がる。そこから、猟撃士勢がこぞって射撃を行っていた場所だ。
「た、助かったぞい」
レリオの礼もそこそこに、ミグもそこから過大集積魔導機塊「イノーマス」を媒体にして、背面から肩口に出現する超長砲身の機動砲を発射する。
マテリアルの高エネルギーが丘の上を直進し、狙った紫モルモットの身体を穿つ。
黄モルモットが動けぬうち、メンバー達は紫モルモットへと攻撃を集中させる。
「悪気がない分、逆に迷惑さんになっちゃった感じなのかな? かな?」
徒歩の為、やや遅れて飛び込んだネフィリアは魔法で作り出した幻想の腕で、紫モルモットに掴みかかった。
「お爺さんを追いかけないで、僕と遊ぶのだ♪ ファントムハンド!」
そして、ネフィリアが相手の移動を封じつつ、殴りかかっていく。
「キュウウウウウウゥゥゥゥ!!」
ただ、足を封じられたところで、広範囲を引っかいてくるモルモット達。それに当たれば身体を引き裂かれそうな勢いだ。
それもあって、猟撃士陣はできるだけ敵から距離を取って敵に銃弾を撃ち込み続ける。
「……後方からの援護は任せておけ。おぬしらは前だけを見て存分に得物を振るうが良い」
クイックリロードを行いつつ、アバルトは矢を番えて仲間達に告げる。次の瞬間放たれた一矢は加速し、紫モルモットの体深くまで突き刺さった。
覚醒によって、凶悪な表情を敵に向けていたコーネリア。
彼女はライフル「ルインズタワー」から撃ち出す弾丸で容赦なく相手を蜂の巣にしていく。
さらに、コーネリアが弾丸に冷気に還元したマテリアルを集束させていき、それを撃ち出すことで敵の動きを止めようとする。再び動き出そうとしていた黄モルモットが撃ち込まれた銃弾によって、またも足を止めていたようだ。
仲間の攻撃が集中する紫モルモットへ、エルバッハも攻撃を開始していた。
丁度、黄モルモットも射程に捉えられる状況であった為、彼女は数枚の符を宙に投げ飛ばす。すると、それは稲妻へと変化し、モルモット達を射抜いていく。
「大人しくしてください……!」
さらに、ファリーナが断罪する光の杭を相手に打ち込もうとする。
その一撃を打ち込まれた紫モルモット。だが、動けると判断したそいつは駆け出し始め、距離を詰めてこようとして来る。
手前まで迫っていた紫モルモットは猟撃士陣のそばまで迫り、駆け回って体当たりを幾度を食らわせてくる。
近づいてくる紫モルモットが怪しく光らせる牙には、相手を弱らせる毒の成分が含まれていた。
コーネリアはオートマチック「エタンドルE66」で牽制していたが、射撃だけでは防げぬと判断したようだ。
「ただデカいだけのネズミではないようだな。ならば、それなりに対処しよう」
接近する敵に対し、戦籠手「炎獄」を装着した彼女は直接殴打し始めるのである。
●
巨大化したことで、モルモット達はかなり体力も持ち合わせていたらしい。
ハンター達は敵の移動阻害を繰り返しつつ攻め立てるが、なかなかにモルモット達は倒れない。
「チュウウウウゥゥゥ!!」
そうこうしているうちに、家の中の水色モルモットの目覚め、外へと飛び出して疾走してきた。
「起きてしまいましたか」
エルバッハ、T-Seinが新手のモルモットに気づくが、さすがに再び空間全ての相手を眠らせる雲を呼び出すわけにもいかない。
ネフィリアがそちらに視線を送ると、すでにそちらへと騎馬で疾走するユナイテルが向かっていた。
宝剣「カーテナ」に自身の生体マテリアルを伝達させて強化し、彼女はファルケを疾走させて相手にぶつかっていく。
さらに、クオンも新手の存在に気づいており、水色モルモット目掛けて加速させた弾丸を浴びせかけていた。
そうしている間にも、ハンター達の攻撃によって紫モルモットが目を回し始めている。
ネフィリアは3体目の対応を仲間に任せ、紫モルモットを優先して徹底的に迎撃をし、確実に数を減らすことを考えていた。
「はいはーい、逃げるのは禁止なのだ♪ こっちにちゃんといようねー」
後方の仲間目掛けて走っていった敵へと、ネフィリアは再び幻影の腕で掴みかかる。
仲間達による射撃の援護を受けながら、ネフィリアが紫モルモットへバンカーナックル「グラビティゼロ」を押し付け、一気に抉りこむ。
「下から抉りこむように打つのだ!」
「キュゥゥゥゥ……」
渾身の一撃をネフィリアが顎から抉りこむと、そいつは卒倒してしまい、二度と起き上がることはなかった。
黄モルモットもハンター達の足止めから時に逃れ、疾走してくる。
ミグはそれに危機を覚え、彼にマテリアルを光の防御壁として変成することで後方にいるレリオを護っていた。
その上で、自身は機動術によって聖盾「コギト」を高速で動かし、自分の身も護る。
黄モルモットは確かにミグも狙うが、それ以外のメンバーにも食らいつく。それぞれのモルモットが牙に持つ毒は体表に応じた成分があり、黄色は麻痺を発生させてくる。
それに気をつけながら、T-Seinは仲間と共に連携を強める。時に、噛み付いてくる一撃から仲間を庇い受け、彼女は身を硬直させてしまっていたようだ。
暴れる敵へ、アバルトは素早く矢を番え続けて幾度も射撃を行い、黄モルモットを牽制し続ける。時に矢を加速させてそいつの体深くまで矢を突き刺す。
コーネリアは近接攻撃に切り替えての対処を行っていた。敵の突進に合わせて彼女は敵の態勢を崩し、自身よりも大きな黄モルモットの体を投げ飛ばし、地面に叩きつける。
歴戦のハンターに負けじと、ファリーナも抜いた刀で斬りかかっていく。
刀はハンターから教えてもらったもの。聖堂戦士団では珍しいが、彼女は実践で剣術を磨き、今もモルモットの体を切り刻んでいた。
弱ってきた黄モルモットには、エルバッハが同時に2種の魔法を詠唱して仕掛けていた。回数は限られるが、それでも2つの魔法を仕掛けることができるのは大きい。
正面からは冷たい氷の矢が飛び、衝撃を与えた上で黄モルモットの体を凍りつかせる。
同時に、斜め前から鋭い風が吹き抜け、モルモットの体を切り裂いた。
「キュウウゥゥゥ……」
ついに、そいつは目から光を失ってぐったりとその場に崩れ落ちていったのである。
残るは、水色モルモットただ1体。ハンター達は、そいつへと攻勢を強める。
動きは比較的、仲間達が代わる代わる抑えつけることで封じていく。3体目となれば、その対処も早く進む。
ただ、動けずともそいつは近場のハンターを爪で薙ぎ払う。さらに、他のモルモット同様、水色モルモットの牙には一撃で相手を眠らせる成分がある。
T-Seinはこれを仲間に浴びせぬようにと仲間を護る。牙で噛まれた彼女は必死に眠気と戦っていたようだ。
敵を抑えに、クオンはライフルから発砲した瞬間、雷撃を放って相手の動きを止めてしまう。
その上で、仲間の攻撃の合間にリロードしつつ、クオンは砲身から扇状に炎のエネルギーを水色モルモットへと浴びせかけていた。
さすがに、残り1体の対処。ハンター達が相手を追い込むのも早い。
ユナイテルは敵の爪を盾で防御しながら、これまでのモルモット達と同様にマテリアルで強化した宝剣「カーテナ」の刃を鋭く突き出す。
「キュ……ウゥ……」
刃を受けて、真横に倒れていく最後のモルモット。
全ての巨大モルモットの討伐を確認したハンター達は、深く息をついたのだった。
●
ようやく静まり返った丘で、ハンター達はレリオの事情聴取を含めて調査を開始することになる。
とはいえ、この場に巨大生物がこの場に現れたことでレリオがこの一連の事件に関わっているとは間違いない。
一行はレリオを彼の家の居間まで移動させてから、巨大化したモルモットについて話を聞くことにする。
「いや、まさかうちの実験用モルモットがあんなにでっかくなるとはのう」
きっかけは思い出せないらしいが、何かの実験の最中、マテリアルの異常が研究室内に起きた為にモルモット達が檻を破って巨大化したとのこと。
モルモットへの投薬は3日前に済ませた状態だったらしい。研究記録は残されているので、ハンター達はしばらくそれを資料として眺めることとなる。
その傍らで、エルバッハが家の中の片づけを仲間と手分けして行う。
研究室はモルモットの巨大化によって、かなり荒らされてしまっていた。それもあって、エルバッハは事情聴取がしやすいように、また、レリオの心証を少しでも良くしたいという思惑があって動いていたようだ。
家の外では、T-Seinがモルモット達の簡易的なお墓を創り、黙祷を捧げていた。
(許せ、小さき生き物達よ。願わくばお前らに幸ある来世を)
内心でそう思いながら、彼女は覚醒状態を解いていく。
モルモットを埋める直前、クオンはそれらからサンプル回収を行っていた。容易に強大化してしまう生物というのは懸念材料でしかないと彼は考えていたのだ。
「レリオ殿」
話を終えたレリオへとユナイテルが呼びかける。
「貴殿の製品造りへの情熱は買いますが、ものには限度というものがあります」
聞いていた話のとおり、レリオは人の良い爺さんに違いない。それもあって、ユナイテルは温厚な彼を諭すようにして話す。
「先ほどのように、巨大化した生物の発生が、ガンナ・エントラータの回りで数件起こっています」
続けて、ファリーナもハンターがここに来た経緯を説明する。
カマキリ、イカ、ザリガニ、スライム……。港町に発生した巨大化生物の話、そして、その討伐と原因究明の為にハンターが動いていた話だ。
「ふむ、それはすまなんだ……」
研究者として、レリオは生物の巨大化に興味を持っていたようだったが、アバルトが纏めた資料に書かれていた具体的な被害についての数値を目にし、さすがにショックを覚えていたようだ。
「……おぬしの行為により、これだけの損害が出ていた可能性があるのだ。これだけのもの、おぬし一人で償いきれると思うのか?」
「むう、さすがにのう……」
「うむ、そなたもまたこうなりたくなければ、ほどほどにのぅ」
ミグもやんわりと釘を刺すが、レリオはかなりへコんでしまっていたようだ。
「あはは、僕はよくお説教されるけどするのは苦手なのだ」
ネフィリアは部屋の片づけをしつつ、苦笑して仲間の行うお説教を見ていた。
「むうぅ……」
とはいえ、レリオにとって、こうした研究は生涯の糧となる部分であり、生き甲斐なのだろう。それができなくなることにかなり難色を示す。
「……正しい生物実験をしたければ資金的に大変ですけど、それなりのレベルの隔離施設のついた生物実験棟を用意する事をお勧めします」
外でのサンプル回収を済ませたクオンがさらに、可能であれば、リアルブルーの実験施設の資料を提供すると言う話をする。もっとも、クリムゾンウェストの建築技術で作れるかどうかは怪しいが……。
「……こんなモノが増えたり、変異したら今度こそクリムソンウェストの危機ですから、考えてください」
本気で、バイオハザードについて考えるクオン。そんなハンターの話に、レリオは今後の研究について考え直すことになりそうだ。
そんな中、コーネリアは研究に使っていたという化学薬品について、詳細を聞いていた。
「こんな怪奇じみた薬を普通の人間の手で作れるとは思えん。やはり何か裏がある……」
入手ルートが分かれば、薬について懸念している部分の謎を払拭できる可能性があると彼女は考えていたのだ。
そんな仲間達のやり取りを背にし、簡単ではあるもののある程度補修の終わった研究所の外で、T-Seinは1人ぼんやりと空を眺めていたのだった。
ガンナ・エントラータの郊外。
街道より大きく外れた場所を、ハンター達は行く。幾人かは魔導マイクや馬を駆っての移動だ。
「……やっと、連続巨大生物事件解決の為の糸口が掴めたか」
口元を髭で包む赤髪の男、アバルト・ジンツァー(ka0895)は少しばかり感慨深げに呟く。
現在、報告されている事件として、巨大生物騒ぎは4度発生している。アバルトはその内、2度その討伐に参加していた。
そして、彼は前回の事件の後に調査依頼の報告書を提出するなど、積極的にこの事件解決に当たっている。今回も、ハンターオフィスの協力を得て、これまでの巨大生物事件における損害について纏めた資料を作成していた。
なお、万一、巨大生物を放置していた場合の想定損害額も記載されているのだが、その額は街の一区画が壊滅する程度にまで膨らむらしい。
「これで、今後の発生を防ぐことが出来ればいいのだがな」
「そうですね……」
銀の髪に、銀の鎧に身を包んだ聖堂戦士団団員、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)が相槌を打つ。この地の現状を視察していた彼女もやはり、見過ごせない事態だと考えていた様子だ。
「生物を巨大化させる化学薬品か……。こいつはかなり臭うぞ」
金髪をポニーテールにした長身の女性、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)はこの一件にきな臭さを感じていて。
この事件の原因の1つを作っているとされる初老の男性、レリオ。実験において使っていた化学薬品に関心の矛先を向けていた。
この薬品の効果を、レリオははっきりと知らなかったとコーネリアは見ている。
もしかしたら、その薬品は意図的に雑魔被害を起こす為、歪虚が人知れずその薬品を人間社会に浸透させたのではないか。コーネリアはそんな推論すら立てていた。
「だとすれば、事件は今回の一件だけで終わらないはずだ」
「バイオハザードという言葉が思い浮かびますね」
クオン・サガラ(ka0018)もまた、それに同意する。それは、生物災害を差す言葉だ。
ただでさえ、マテリアルの影響で変異が起こりやすいクリムゾンウェストという世界。その上で、隔離施設なしでの実験に、危うく人類が滅ぶ危険すらあったこと、クオンは難色を示す。
そして、早期にこれが対応できて良かったのかどうか……。現状だと、その判断も難しい。
「とにかく、『人工モンスター』は自重して貰いたいですね」
そんなクオンの話に、天真爛漫なエルフの少女、ネフィリア・レインフォード(ka0444)は「困ったお爺さんなのかな?」と首を傾げつつ移動する。
「歪虚が原因でないのが、不幸中の幸いであるが……」
現状、目に見える範囲では歪虚が原因と認められぬということだが、右目に眼帯をした金髪ドワーフ、ミグ・ロマイヤー(ka0665)は大きく首を振る。
「悪気のない一般人の仕業とは、はた迷惑なことこの上ない」
ミグもまた、巨大生物討伐にその都度借り出されてきた。それだけに、一般人が原因となれば複雑な心境を覚えてしまう。
老研究者に釘を刺すだけで、おそらくは事件は解決するだろうとミグは見ているが、どうやらこの老人に対する街の人の評価は決して悪くない。
「説得に応じてくれればよいが……」
変にこじれると、歪虚よりもタチが悪い。それだけに、ミグは頭を悩ましている。
「実験の結果暴走したモルモットの討伐……ですか」
巨大生物が現れる原因について考える仲間達を目にしていた、長い紅い髪を持つオートマトンのT-Sein(ka6936)。その実験を行っていた老人に対し、僅かに眉を顰めて。
(真面目な方なのでしょうが、命を弄る人は好きになれませんね)
基本、戦う為にハンターをしている彼女は、最初から老人の詰問を仲間に任せようと考える。もっとも、そういった実験は必要なのだと理解はしているのだが。
「まあ、とにもかくにも行くしかあるまいて」
あれこれ考え、語り合う仲間達へミグが呼びかける。もうじき、目的の老人の家が見えてくるはずだ。
「用心に越した事はない。注意を怠らない様」
愛馬であるゴースロンのファルケを駆る元王国騎士、ユナイテル・キングスコート(ka3458)が皆に促す。
巨大化生物発生の原因がこんな辺鄙な場所にあるとは。そう考えるユナイテルは、どうにも嫌な予感を感じていた。
そして、その予感は残念ながら、現実のものとなってしまう。
ドゴォォォォォォ……。
「「キュウウウウウウゥゥゥゥゥ!!」」
その目的地の方向から、何かが蹴破られる大きな音。さらに、獣の大きな鳴き声が聴こえていた。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。原因究明の為には突撃あるのみです」
瞳をコバルトブルーから鮮やかな赤に変化させたユナイテル。彼女に同意するハンター達は、急いで現場目指して走り出したのだった。
●
「ひいいいぃぃぃっ!」
壊れた家壁から逃げ出てきた一人の男性。齢を重ね、白髪がかなり多くなったその男性こそ、レリオだろう。
「実験に失敗して、大惨事といったところでしょうか?」
エルバッハ・リオン(ka2434) がその惨状を分析すると、続いて家壁を壊した原因であろう紫と黄、2体の巨大なモルモットが爛々と両目を赤く光らせて、レリオらしき男性を追いかける。
「なんだ、あのでかい鼠は」
遠望したミグも、モルモットの姿を見て驚く。
リアルブルーにおいて、最大のげっ歯類のカピバラでさえ体長は1.5mを超えないというから、3mのモルモットがいかに大きいかは察するにあまりある。
「あや、誰かが大きいネズミさんに追いかけられてる? 急いで助けるのだ!」
それを見て叫んだネフィリアが猫耳、尻尾を生やして直ぐにダッシュし始めると、宝剣「カーテナ」を抜いたユナイテルも間髪入れずに手綱を振るってファルケで走り始める。
(「ざま見ろ」と言いたくなるのう。面倒な状況説明もはぶけたわい)
説明の手間が減った上、相手が大変な目に合っている様にミグは嗜虐心を覚える。
そんな自身に少々困惑するミグはやや足場の悪い丘を自らの機動術でカバーしながら、右目の眼帯より紅蓮の炎上のオーラを吹き上がらせ、オフロードバイクを疾走させて後を追う。
「原因は何であれ、レリオさんを保護した方が良さそうですね」
エルバッハに同意し、他のメンバー達も老人の元へと急ぐ。
ある程度近づいたところで、猟撃士のメンバーがモルモットに狙いを定めて銃を構える。
先に疾走していくメンバーを助けるべく、顔の左半面部分を青銅と化したアバルトはロングボウ「レピスパオ」にマテリアルを込めた矢を番え……、一気に射放つ。
冷気を纏ったその一矢はレリオの真横を飛び、後ろから彼を追う黄モルモットを貫いた。
「キュウウウウッ!!」
傷口を凍らせた黄モルモットが刹那、硬直する。
「ともあれ、今は仕事に集中……だな」
マテリアルを収束していたコーネリアは全身から稲妻のような黄色い閃光を走らせながら、ライフル「ルインズタワー」から銃弾を放って黄色のモルモットの足を狙う。
足を貫かれたモルモットは倒れこみ、その場でジタバタともがき始めていた。
「味方を巻き込まぬよう、注意しませんとね」
アサルトライフル「APC-M」を両手で構えていたクオン。覚醒しても自然体のままの彼もまた、モルモット目掛けて弾幕を張るようにして銃弾を撃ちこんで行く。
その援護射撃を受けながら、丘を駆けるミグ、ユナイテルの2人は老人との距離を詰める。
「ファルケ!」
騎馬の俊足を活かし、丘を駆け抜けたユナイテルが若干速い。彼女は老人よりも前方へと回り、向かい来る紫のモルモット目掛けて加速した勢いを活かして宝剣を突き出した。
「キュウウウウゥゥ!!」
「ご老人は傷付けさせない。我が剣の錆となりたくば、掛かって来るがいい」
甲高い声で叫ぶモルモットに、ユナイテルは毅然と言い放つ。
「ほっ、お前さんがたは……?」
駆けつけた若者達の姿にレリオは状況をつかめずにいたが、ミグがそこで彼を拾い上げて荷台に放り込む。
「ほおおおぉぉ……!?」
叫ぶレリオをそのままに彼女はスピードを出してその場を離脱、足場のしっかりした場所を探す。
仲間達がレリオの確保と敵の抑えに当たっていると、T-Seinがモルモットへと接近していて。
「殲滅執行」
褐色の肌を見せるT-Seinは、それまでの大人しげな性格から一変、荒々しさを見せる彼女は縮地でモルモットの間合いまで飛び込み、気を錬って自らの力を高めていく。
「悪く思うな」
T-Seinは正面から、機械手甲「ソルティエール」を纏った右の拳を強く突き出す。
しかし、その巨大な相手はそれがどうしたと言わんばかりにふんぞり返る。
仲間達が交戦を開始する中、エルバッハはレリオの家の中を気がけて近づく。
その胸元に薔薇の花を模した赤い紋様を現す彼女は、棘を模した紋様を四肢の先と両頬に浮かび上がらせている。
レリオの家の中を気に掛けていたエルバッハは結局、モルモットの背後に回る形となっていた。
1人で突出すれば危険は大きいと判断したこともあり、エルバッハは仲間の位置を気がけつつファリーナを伴っていた形だ。
「まだいるようですね……」
エルバッハが家の外から見たのは、寝息をかいていた水色のモルモットだ。
「攻撃すべきでしょうか?」
「とはいえ、ここからでは……」
皆、戦闘に集中していた為、確認を取って総意を聞くのも難しい。もう少し作戦を詰められていたなら、うまく連携もとれたのかもしれないが……。
「キュ……?」
「やるしか……、ありませんね」
しかも、そいつはゆっくりと起き上がってきたのではないか。ファリーナは刀に手をかけ、戦闘態勢に入る。
「下がって」
そこで、ひとまず置いておくのがベストと判断したエルバッハは、そいつを青白い雲上のガスで包み込んでいく。
またまどろみ始めた水色モルモットはぐったりして、その場に倒れこむ。巻き込まれぬよう下がっていたファリーナが両手をぽんと叩いた。
「上手く行きましたね」
「後は、あちらの援護に行きましょう」
そうして、エルバッハは彼女と共に丘で仲間が交戦するモルモットの元へと向かっていく。
ただの調査と思っていたこの1件、ハンター達は飛んだ面倒事に巻き込まれたと考えながらも、巨大モルモットの討伐に全力を尽くすのである。
●
先にこの場へと到着したユナイテルは、モルモット達をこの場から通さないようにと、立ち塞がる。
「一歩たりとも、近付けさせない」
敵はユナイテル目掛けて疾走し、食らい付いてきたりする。彼女はその攻撃をファルケの手綱を捌くことで、できるだけ愛馬に攻撃されないよう気を配っていた。
そこに、T-Seinが並び立つ形となる。
「させるか」
そっけなく言い放ったT-Seinは再度縮地を使って敵に飛び込み、敢えて家に近づくことで敵をレリオから離すよう誘導していく。丁度、こちらに向かってくるエルバッハ達と合流する形だ。
どうやら、人間を餌とでも勘違いしていたモルモット達は、T-Seinに気を取られていたようだ。
そして、後方に下がる形となったミグ。自分達が向かってきた方向にまで下がる。そこから、猟撃士勢がこぞって射撃を行っていた場所だ。
「た、助かったぞい」
レリオの礼もそこそこに、ミグもそこから過大集積魔導機塊「イノーマス」を媒体にして、背面から肩口に出現する超長砲身の機動砲を発射する。
マテリアルの高エネルギーが丘の上を直進し、狙った紫モルモットの身体を穿つ。
黄モルモットが動けぬうち、メンバー達は紫モルモットへと攻撃を集中させる。
「悪気がない分、逆に迷惑さんになっちゃった感じなのかな? かな?」
徒歩の為、やや遅れて飛び込んだネフィリアは魔法で作り出した幻想の腕で、紫モルモットに掴みかかった。
「お爺さんを追いかけないで、僕と遊ぶのだ♪ ファントムハンド!」
そして、ネフィリアが相手の移動を封じつつ、殴りかかっていく。
「キュウウウウウウゥゥゥゥ!!」
ただ、足を封じられたところで、広範囲を引っかいてくるモルモット達。それに当たれば身体を引き裂かれそうな勢いだ。
それもあって、猟撃士陣はできるだけ敵から距離を取って敵に銃弾を撃ち込み続ける。
「……後方からの援護は任せておけ。おぬしらは前だけを見て存分に得物を振るうが良い」
クイックリロードを行いつつ、アバルトは矢を番えて仲間達に告げる。次の瞬間放たれた一矢は加速し、紫モルモットの体深くまで突き刺さった。
覚醒によって、凶悪な表情を敵に向けていたコーネリア。
彼女はライフル「ルインズタワー」から撃ち出す弾丸で容赦なく相手を蜂の巣にしていく。
さらに、コーネリアが弾丸に冷気に還元したマテリアルを集束させていき、それを撃ち出すことで敵の動きを止めようとする。再び動き出そうとしていた黄モルモットが撃ち込まれた銃弾によって、またも足を止めていたようだ。
仲間の攻撃が集中する紫モルモットへ、エルバッハも攻撃を開始していた。
丁度、黄モルモットも射程に捉えられる状況であった為、彼女は数枚の符を宙に投げ飛ばす。すると、それは稲妻へと変化し、モルモット達を射抜いていく。
「大人しくしてください……!」
さらに、ファリーナが断罪する光の杭を相手に打ち込もうとする。
その一撃を打ち込まれた紫モルモット。だが、動けると判断したそいつは駆け出し始め、距離を詰めてこようとして来る。
手前まで迫っていた紫モルモットは猟撃士陣のそばまで迫り、駆け回って体当たりを幾度を食らわせてくる。
近づいてくる紫モルモットが怪しく光らせる牙には、相手を弱らせる毒の成分が含まれていた。
コーネリアはオートマチック「エタンドルE66」で牽制していたが、射撃だけでは防げぬと判断したようだ。
「ただデカいだけのネズミではないようだな。ならば、それなりに対処しよう」
接近する敵に対し、戦籠手「炎獄」を装着した彼女は直接殴打し始めるのである。
●
巨大化したことで、モルモット達はかなり体力も持ち合わせていたらしい。
ハンター達は敵の移動阻害を繰り返しつつ攻め立てるが、なかなかにモルモット達は倒れない。
「チュウウウウゥゥゥ!!」
そうこうしているうちに、家の中の水色モルモットの目覚め、外へと飛び出して疾走してきた。
「起きてしまいましたか」
エルバッハ、T-Seinが新手のモルモットに気づくが、さすがに再び空間全ての相手を眠らせる雲を呼び出すわけにもいかない。
ネフィリアがそちらに視線を送ると、すでにそちらへと騎馬で疾走するユナイテルが向かっていた。
宝剣「カーテナ」に自身の生体マテリアルを伝達させて強化し、彼女はファルケを疾走させて相手にぶつかっていく。
さらに、クオンも新手の存在に気づいており、水色モルモット目掛けて加速させた弾丸を浴びせかけていた。
そうしている間にも、ハンター達の攻撃によって紫モルモットが目を回し始めている。
ネフィリアは3体目の対応を仲間に任せ、紫モルモットを優先して徹底的に迎撃をし、確実に数を減らすことを考えていた。
「はいはーい、逃げるのは禁止なのだ♪ こっちにちゃんといようねー」
後方の仲間目掛けて走っていった敵へと、ネフィリアは再び幻影の腕で掴みかかる。
仲間達による射撃の援護を受けながら、ネフィリアが紫モルモットへバンカーナックル「グラビティゼロ」を押し付け、一気に抉りこむ。
「下から抉りこむように打つのだ!」
「キュゥゥゥゥ……」
渾身の一撃をネフィリアが顎から抉りこむと、そいつは卒倒してしまい、二度と起き上がることはなかった。
黄モルモットもハンター達の足止めから時に逃れ、疾走してくる。
ミグはそれに危機を覚え、彼にマテリアルを光の防御壁として変成することで後方にいるレリオを護っていた。
その上で、自身は機動術によって聖盾「コギト」を高速で動かし、自分の身も護る。
黄モルモットは確かにミグも狙うが、それ以外のメンバーにも食らいつく。それぞれのモルモットが牙に持つ毒は体表に応じた成分があり、黄色は麻痺を発生させてくる。
それに気をつけながら、T-Seinは仲間と共に連携を強める。時に、噛み付いてくる一撃から仲間を庇い受け、彼女は身を硬直させてしまっていたようだ。
暴れる敵へ、アバルトは素早く矢を番え続けて幾度も射撃を行い、黄モルモットを牽制し続ける。時に矢を加速させてそいつの体深くまで矢を突き刺す。
コーネリアは近接攻撃に切り替えての対処を行っていた。敵の突進に合わせて彼女は敵の態勢を崩し、自身よりも大きな黄モルモットの体を投げ飛ばし、地面に叩きつける。
歴戦のハンターに負けじと、ファリーナも抜いた刀で斬りかかっていく。
刀はハンターから教えてもらったもの。聖堂戦士団では珍しいが、彼女は実践で剣術を磨き、今もモルモットの体を切り刻んでいた。
弱ってきた黄モルモットには、エルバッハが同時に2種の魔法を詠唱して仕掛けていた。回数は限られるが、それでも2つの魔法を仕掛けることができるのは大きい。
正面からは冷たい氷の矢が飛び、衝撃を与えた上で黄モルモットの体を凍りつかせる。
同時に、斜め前から鋭い風が吹き抜け、モルモットの体を切り裂いた。
「キュウウゥゥゥ……」
ついに、そいつは目から光を失ってぐったりとその場に崩れ落ちていったのである。
残るは、水色モルモットただ1体。ハンター達は、そいつへと攻勢を強める。
動きは比較的、仲間達が代わる代わる抑えつけることで封じていく。3体目となれば、その対処も早く進む。
ただ、動けずともそいつは近場のハンターを爪で薙ぎ払う。さらに、他のモルモット同様、水色モルモットの牙には一撃で相手を眠らせる成分がある。
T-Seinはこれを仲間に浴びせぬようにと仲間を護る。牙で噛まれた彼女は必死に眠気と戦っていたようだ。
敵を抑えに、クオンはライフルから発砲した瞬間、雷撃を放って相手の動きを止めてしまう。
その上で、仲間の攻撃の合間にリロードしつつ、クオンは砲身から扇状に炎のエネルギーを水色モルモットへと浴びせかけていた。
さすがに、残り1体の対処。ハンター達が相手を追い込むのも早い。
ユナイテルは敵の爪を盾で防御しながら、これまでのモルモット達と同様にマテリアルで強化した宝剣「カーテナ」の刃を鋭く突き出す。
「キュ……ウゥ……」
刃を受けて、真横に倒れていく最後のモルモット。
全ての巨大モルモットの討伐を確認したハンター達は、深く息をついたのだった。
●
ようやく静まり返った丘で、ハンター達はレリオの事情聴取を含めて調査を開始することになる。
とはいえ、この場に巨大生物がこの場に現れたことでレリオがこの一連の事件に関わっているとは間違いない。
一行はレリオを彼の家の居間まで移動させてから、巨大化したモルモットについて話を聞くことにする。
「いや、まさかうちの実験用モルモットがあんなにでっかくなるとはのう」
きっかけは思い出せないらしいが、何かの実験の最中、マテリアルの異常が研究室内に起きた為にモルモット達が檻を破って巨大化したとのこと。
モルモットへの投薬は3日前に済ませた状態だったらしい。研究記録は残されているので、ハンター達はしばらくそれを資料として眺めることとなる。
その傍らで、エルバッハが家の中の片づけを仲間と手分けして行う。
研究室はモルモットの巨大化によって、かなり荒らされてしまっていた。それもあって、エルバッハは事情聴取がしやすいように、また、レリオの心証を少しでも良くしたいという思惑があって動いていたようだ。
家の外では、T-Seinがモルモット達の簡易的なお墓を創り、黙祷を捧げていた。
(許せ、小さき生き物達よ。願わくばお前らに幸ある来世を)
内心でそう思いながら、彼女は覚醒状態を解いていく。
モルモットを埋める直前、クオンはそれらからサンプル回収を行っていた。容易に強大化してしまう生物というのは懸念材料でしかないと彼は考えていたのだ。
「レリオ殿」
話を終えたレリオへとユナイテルが呼びかける。
「貴殿の製品造りへの情熱は買いますが、ものには限度というものがあります」
聞いていた話のとおり、レリオは人の良い爺さんに違いない。それもあって、ユナイテルは温厚な彼を諭すようにして話す。
「先ほどのように、巨大化した生物の発生が、ガンナ・エントラータの回りで数件起こっています」
続けて、ファリーナもハンターがここに来た経緯を説明する。
カマキリ、イカ、ザリガニ、スライム……。港町に発生した巨大化生物の話、そして、その討伐と原因究明の為にハンターが動いていた話だ。
「ふむ、それはすまなんだ……」
研究者として、レリオは生物の巨大化に興味を持っていたようだったが、アバルトが纏めた資料に書かれていた具体的な被害についての数値を目にし、さすがにショックを覚えていたようだ。
「……おぬしの行為により、これだけの損害が出ていた可能性があるのだ。これだけのもの、おぬし一人で償いきれると思うのか?」
「むう、さすがにのう……」
「うむ、そなたもまたこうなりたくなければ、ほどほどにのぅ」
ミグもやんわりと釘を刺すが、レリオはかなりへコんでしまっていたようだ。
「あはは、僕はよくお説教されるけどするのは苦手なのだ」
ネフィリアは部屋の片づけをしつつ、苦笑して仲間の行うお説教を見ていた。
「むうぅ……」
とはいえ、レリオにとって、こうした研究は生涯の糧となる部分であり、生き甲斐なのだろう。それができなくなることにかなり難色を示す。
「……正しい生物実験をしたければ資金的に大変ですけど、それなりのレベルの隔離施設のついた生物実験棟を用意する事をお勧めします」
外でのサンプル回収を済ませたクオンがさらに、可能であれば、リアルブルーの実験施設の資料を提供すると言う話をする。もっとも、クリムゾンウェストの建築技術で作れるかどうかは怪しいが……。
「……こんなモノが増えたり、変異したら今度こそクリムソンウェストの危機ですから、考えてください」
本気で、バイオハザードについて考えるクオン。そんなハンターの話に、レリオは今後の研究について考え直すことになりそうだ。
そんな中、コーネリアは研究に使っていたという化学薬品について、詳細を聞いていた。
「こんな怪奇じみた薬を普通の人間の手で作れるとは思えん。やはり何か裏がある……」
入手ルートが分かれば、薬について懸念している部分の謎を払拭できる可能性があると彼女は考えていたのだ。
そんな仲間達のやり取りを背にし、簡単ではあるもののある程度補修の終わった研究所の外で、T-Seinは1人ぼんやりと空を眺めていたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 ユナイテル・キングスコート(ka3458) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/10/12 21:09:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/11 21:15:03 |