ゲスト
(ka0000)
【東幕】知追う者、砦の跡にシを見出す
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/17 12:00
- 完成日
- 2017/10/23 18:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●その先に何があるのか?
エトファリカ連邦国、天ノ都で大江 紅葉は仕事をしていた。調べたいこともあったため、おとなしく積まれる書類書きをしている。
調べたいことはあの地域の武家の状況と大江が住んでいた里を守っていた砦の状況だった。
「武家は確実に雲隠れですね!」
口調は明るいが、表情は暗い。
「……公家では支配してはいけないのでしょうか?」
紅葉としては頂点に立つのは面倒だから嫌である。しかし、地域の安定を考えると上に立つ者は必要だ。
「適当な武家の人見つけて、傀儡……もとい、頑張って世の中を理解してやっていただく、というのが一番手っ取り早く気が楽なことですね」
独り言が相当毒まみれであった。
「別に武家の人に文句があるわけではありませんよ」
脳裏に松永 光頼の姿が浮かび、顔がボッと赤くなる。
「そうなんですよ……いい人です……私のことなんて面倒だからって切り殺してしまう人だっていたかもしれません」
以前「妖怪に与する」と噂が立ったことがあった。そこで見張りとして付いたのが光頼であり、むしろ支えてくれる素敵な人物であったのだ。
「まあ、松永殿の上司の見る目もあったわけです……ああ、ということは、上司さんもすごく素敵な武家の人ですね」
ふむふむとつぶやく。
「さて、武家問題はどうでもいいです。取り掛かれるのはこちらですね」
里の最後のかなめの砦の跡地は誰も行っていないのか記録がない。主要の道から外れることもあり、後回しなのは確実だ。
「その先、その先……と行くとキリはありませんが、里とその周辺のためには見ておいた方がいいですね」
南方という漠然とした状況であるため妖怪がでても当たり前とか言っている場合ではなかった。
「浄化……と言っても局所的にすればいいでしょうね……そもそも、私そっちできましたっけ……」
自分のふがいなさに頭を抱えそうになった。幼いころから知識を求めることに一直線で、符術師としての素質をのばすのをおろそかにしていた。
「書物読むのが楽しかったですものねぇ……あと、色々なものがあるのは本当楽しかったです」
やってきたころのことを思い出す。
確か、代々符術師を輩出する家柄の人に足を引っかけられて転ばされたのが10回。
チビやら女のくせにと言われたことは数えきれないほど……言葉以外で視線でも。
「あ、なんか、腹が立ってきました。でも、今の陰陽寮では不満はほぼないんですよねぇ」
時間は巡る、良い方に。
「さて……これを師匠に出してから、帰りましょう。その前に、依頼を出しに行きましょう」
紅葉はのそのそと動き始める。それから、上司であり、兄弟子兼師匠である吉備 灯世の元に向かう。
「ん? 終わったか」
「はい」
「じゃ、追加」
「明日です」
「まあ、かまわん」
灯世も帰る気満々のようだ。
「そうそう、魔導トラックとゴーレム借りようと思います!」
「何をするつもりだ!」
上司の脳裏にろくでもないことをするのではないかと言うのがよぎった。
「別に私、変なことしてきていませんよ? 刻令術の農具借りてきましたが、隣近所で共有して便利にしているだけですよ」
紅葉が説明をした。
「橋を作ったり、物資を運ぶのに便利ですよね? ゴーレムは里に置いておきます。掃除くらいは誰でもできるでしょうし……海風でさびたらちょっと悲しいですけれど」
「……いや、なんか、たくましくなってきたな」
紅葉が胸を張る。
「まあ、イメージはこの程度だけどな」
自分の胸の前あたりで水平に手を振る。
つまり、出会ったころのままだ、ということだった。
「反論の余地がありません!」
「嘘だろ、してくれ!」
紅葉と上司は笑う。
なんとなく、のどかな陰陽寮の一角だった。
●依頼を出す
いつものように戸をくぐると職員は笑顔で迎えてくれる。
「常連ですよね、色々と」
「いいのか悪いのかわかりませんけれどね」
紅葉は座ると依頼内容を告げた。
「うちの里の近辺は基本的に、一般的な安定は取り戻した状況です。しかし、先日妖怪が出てきた方向は手付かずです。そもそも、南方まで考え始めたら私の手からあふれます」
職員はうなずいた。幕府や武家がなすことでもあり、紅葉の立場が手を出す話ではない。
「先日、ライブラリで見たことも合わせると里を守る砦はいくつかありました。これは爺たちから証言は取っています」
里を捨てた直前の地域の情勢をつぶさに尋ねた。
「最後に捨てた砦は里の近く――民や私たちを逃すために全滅している状況です」
「歪虚化していると?」
「それはないと考えます。そこにとどまるならば、拠点を築いているでしょう。そういったものもありませんし、近くに里人が来ていて襲撃されていなかったということもあります。だから、自然発生的なものが力を持ってそこにいるか、南から流れてきた物だと思われます、いるなら……」
家臣団の者や里の者が積極的に歪虚化しているかしていないかなどわからない。あくまで希望である。
不確かなことは省いても、歪虚支配地域の名残があれば、何か住み着くかもしれない。居心地がいいままでは良くないのだ。
「状況は把握すべきです。私の護衛と歪虚がいるならば討伐を」
「あれ、あなたも行くんですか?」
「行きますよ?」
紅葉はきっぱりと告げた。
エトファリカ連邦国、天ノ都で大江 紅葉は仕事をしていた。調べたいこともあったため、おとなしく積まれる書類書きをしている。
調べたいことはあの地域の武家の状況と大江が住んでいた里を守っていた砦の状況だった。
「武家は確実に雲隠れですね!」
口調は明るいが、表情は暗い。
「……公家では支配してはいけないのでしょうか?」
紅葉としては頂点に立つのは面倒だから嫌である。しかし、地域の安定を考えると上に立つ者は必要だ。
「適当な武家の人見つけて、傀儡……もとい、頑張って世の中を理解してやっていただく、というのが一番手っ取り早く気が楽なことですね」
独り言が相当毒まみれであった。
「別に武家の人に文句があるわけではありませんよ」
脳裏に松永 光頼の姿が浮かび、顔がボッと赤くなる。
「そうなんですよ……いい人です……私のことなんて面倒だからって切り殺してしまう人だっていたかもしれません」
以前「妖怪に与する」と噂が立ったことがあった。そこで見張りとして付いたのが光頼であり、むしろ支えてくれる素敵な人物であったのだ。
「まあ、松永殿の上司の見る目もあったわけです……ああ、ということは、上司さんもすごく素敵な武家の人ですね」
ふむふむとつぶやく。
「さて、武家問題はどうでもいいです。取り掛かれるのはこちらですね」
里の最後のかなめの砦の跡地は誰も行っていないのか記録がない。主要の道から外れることもあり、後回しなのは確実だ。
「その先、その先……と行くとキリはありませんが、里とその周辺のためには見ておいた方がいいですね」
南方という漠然とした状況であるため妖怪がでても当たり前とか言っている場合ではなかった。
「浄化……と言っても局所的にすればいいでしょうね……そもそも、私そっちできましたっけ……」
自分のふがいなさに頭を抱えそうになった。幼いころから知識を求めることに一直線で、符術師としての素質をのばすのをおろそかにしていた。
「書物読むのが楽しかったですものねぇ……あと、色々なものがあるのは本当楽しかったです」
やってきたころのことを思い出す。
確か、代々符術師を輩出する家柄の人に足を引っかけられて転ばされたのが10回。
チビやら女のくせにと言われたことは数えきれないほど……言葉以外で視線でも。
「あ、なんか、腹が立ってきました。でも、今の陰陽寮では不満はほぼないんですよねぇ」
時間は巡る、良い方に。
「さて……これを師匠に出してから、帰りましょう。その前に、依頼を出しに行きましょう」
紅葉はのそのそと動き始める。それから、上司であり、兄弟子兼師匠である吉備 灯世の元に向かう。
「ん? 終わったか」
「はい」
「じゃ、追加」
「明日です」
「まあ、かまわん」
灯世も帰る気満々のようだ。
「そうそう、魔導トラックとゴーレム借りようと思います!」
「何をするつもりだ!」
上司の脳裏にろくでもないことをするのではないかと言うのがよぎった。
「別に私、変なことしてきていませんよ? 刻令術の農具借りてきましたが、隣近所で共有して便利にしているだけですよ」
紅葉が説明をした。
「橋を作ったり、物資を運ぶのに便利ですよね? ゴーレムは里に置いておきます。掃除くらいは誰でもできるでしょうし……海風でさびたらちょっと悲しいですけれど」
「……いや、なんか、たくましくなってきたな」
紅葉が胸を張る。
「まあ、イメージはこの程度だけどな」
自分の胸の前あたりで水平に手を振る。
つまり、出会ったころのままだ、ということだった。
「反論の余地がありません!」
「嘘だろ、してくれ!」
紅葉と上司は笑う。
なんとなく、のどかな陰陽寮の一角だった。
●依頼を出す
いつものように戸をくぐると職員は笑顔で迎えてくれる。
「常連ですよね、色々と」
「いいのか悪いのかわかりませんけれどね」
紅葉は座ると依頼内容を告げた。
「うちの里の近辺は基本的に、一般的な安定は取り戻した状況です。しかし、先日妖怪が出てきた方向は手付かずです。そもそも、南方まで考え始めたら私の手からあふれます」
職員はうなずいた。幕府や武家がなすことでもあり、紅葉の立場が手を出す話ではない。
「先日、ライブラリで見たことも合わせると里を守る砦はいくつかありました。これは爺たちから証言は取っています」
里を捨てた直前の地域の情勢をつぶさに尋ねた。
「最後に捨てた砦は里の近く――民や私たちを逃すために全滅している状況です」
「歪虚化していると?」
「それはないと考えます。そこにとどまるならば、拠点を築いているでしょう。そういったものもありませんし、近くに里人が来ていて襲撃されていなかったということもあります。だから、自然発生的なものが力を持ってそこにいるか、南から流れてきた物だと思われます、いるなら……」
家臣団の者や里の者が積極的に歪虚化しているかしていないかなどわからない。あくまで希望である。
不確かなことは省いても、歪虚支配地域の名残があれば、何か住み着くかもしれない。居心地がいいままでは良くないのだ。
「状況は把握すべきです。私の護衛と歪虚がいるならば討伐を」
「あれ、あなたも行くんですか?」
「行きますよ?」
紅葉はきっぱりと告げた。
リプレイ本文
●現地へ
エルバッハ・リオン(ka2434)は丁寧にあいさつをした。
「紅葉さん、今回もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
大江 紅葉(kz0163)も挨拶を返し、依頼の確認を含めて工程を示す。
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は紅葉がある単語を何度か言い直した点に気づいた。
「歪虚をこちらでは妖怪……物の怪というんでしたか? さすが東方、参考になりますね」
「あー……歪虚の中でも『憤怒』に属するものについて我々は言っていただけです」
西方との往来が途絶え、エトファリカ連邦国となったところだけで戦っていたための現象。
ミオレスカ(ka3496)は先日、紅葉の畑の芋掘りに手伝いで来ていた。
「砦の掃除なのですね? 秋の農作物の収穫祭、のお手伝いに来られるようになるといいです」
紅葉はにっこりとうなずいた。
「今回行くところはライブラリで見た地域でもあるのですよね? 文献もあればいいのですが、砦の周辺の地図をきちんと作ってみたいですね」
アリア・セリウス(ka6424)がミオレスカの言葉に答えるようにマッピングセットを取り出す。
「以前、紅葉が出していた依頼や情報から必要かと思って用意しておいたのよ。砦周囲の地図を制作すれば、今後役に立つでしょう?」
紅葉は手渡されたマッピングセットに目を輝かせているため、初めから渡すと何か危険を感じた。そのため、アリアは必要になったら渡すことにし、一度引き取った。
榊 兵庫(ka0010)は連絡を取る手段のことについて仲間に告げる。
「基本はまとまって動くでいいな? 長く放置されていたならば、どのような有様になっているかわからない。その掃除にはできる限り俺も協力させてもらおう」
ハンターたちと考えの確認を行う。そして、紅葉が「それでお願いします」と改めて頭を下げたのだった。
里を経由して、その先を目指すことになる。
●荒涼とした土地
かつて来たことがある者は気づくだろう、里までの道のりは徐々に改善されていると。集落があるわけではないが、人の手が加わってきている。
里の手前に来ると復興作業をする人々がおり、ハンターたちを歓待する。そこで最近の状況を聞くこともできる。その先に向かう準備をした。
集落や大きな道から外れる為、復興から遠かった場所へ向かう。
その地に近づくにつれて肉眼でも鳥ではない何かが飛んでいるのが見える。
「あの、ある程度近づいたら、偵察に行ってみようと思うのですが」
エルバッハが符を取り出して告げる。
「その間、行動ができませんので、よろしくお願いしたいのです」
「構わない」
兵庫が告げると誰もがうなずく。
情報が少ないため、近づく前に一つでも多くの情報を得られる方が良かった。
符術の【式符】をエルバッハは用いる間、双眼鏡を借りた紅葉は遠くを眺める。
「何か変わった物は見えるの?」
アリアの問いかけに紅葉は「残念ながらありません」と返す。
「ここを守っていた人がいるとは聞いているよ。里から人が逃げる間の足止めの地……なのよね? そういえば、その前はどのような風景だったの?」
アリアの問いかけに紅葉が少し考える。
「私が生まれたときには歪虚との交戦状態でしたし、里から出ても海岸線にいるか、父について天ノ都に行ったくらいです。確かに、まだ草や木が生えていました」
「そうよね」
今は荒地であるが、草や木が生えていただろうことはアリアも想像できる。西方とは異なる植物、絵で見たような東方の世界が広がっていたのだろうかと考えた。
「海は近いのですね。そちらから歪虚が来るということはあるんでしょうか?」
ハンスは依頼を受けたとき、この辺りに出る妖怪のタイプはチェックしていた。その上で海から来るものはあまり表記がなかった。
「いなくはないのですが、あまり来ませんでしたね。来ていたら、里はもっと早く陥落していたでしょう」
「そういうことにつながるのですね」
ハンスは周囲を見渡した。
エルバッハが集中を解き、目を瞬く。
「かなりの数がいますが、大きさから雑魔の類と思います――」
「そちらはこの辺りによく出没するタイプです。強さは不明ですが、用心さえすれば皆さんが後れを取るとは思いません」
エルバッハの言葉を双眼鏡で雑魔を確認した紅葉が引き取った。
「そういってもらえると嬉しいがな。確かに用心を怠れば何でも危険であるのは事実だ」
兵庫は目視できる敵の数から考える。
「あと倒壊した建物といいますか、砦の跡が壁と屋根ががれきが残っています。そこに、人型の歪虚がいます」
「人型?」
「はい、鎧兜だけかもしれませんし、中身もしっかりあるかもしれません。刀を大量に持っています」
兵庫はその言葉に眉をしかめる。
「それ自体が妖怪ということは?」
「否定はできませんが、鎧の方は動いていましたが刀は動いていませんでした」
「用心はしたほうがいいな」
エルバッハはうなずく。
「紅葉、それらを討伐する、と言うことでいいな?」
兵庫の確認に紅葉が「お願いします」と告げ、彼女自身、戦闘態勢を整える。
「ならば、歪虚となった武芸者がいるならば、その妄念を断ってこの地と人の心に美しさを……願いおう」
アリアは佩いた大太刀を引き抜く。
「まさに……戦場に消える炎のはかなさの具現であり――おっと……これ以上はやめておきましょう」
ハンスはにんまりとほほ笑んだ。
「えと、紅葉さんは少し離れて所から援護してくださいね」
「距離短いですよ、符術?」
「……少し離れたところからお願いしますね?」
ミオレスカが念を押したところ、ハンター全員が首肯した。そのためか紅葉が唇を尖らせて弓の弦をはじきはじめたのだった。
●オモイ刃
ミオレスカが弓に矢をつがえ放つ。弓に込められている力も解き放ち、マテリアルが込められた矢は【フォールシュート】の通常の範囲以上に効果を出す。
「エソ・ニクラの名は伊達ではありません」
これを合図とみなし、エルバッハの魔法も続く。紅葉は範囲にいる人に対し【加護符】を使う。
兵庫、アリアそしてハンスが距離を詰める。
兵庫は一定距離つめて下馬し、馬を後ろに向けた。そして、自身は周囲に群がる雑魔たちの意識を拡散させるためにも【ソウルトーチ】を用いた。雑魔たちは馬よりも兵庫を意識する。
アリアはひらりと舞う。
「歌い祓え、邪妖と閉ざされた地――人の手に取り戻す、護るための刃とともに、響かせて」
歌い両の手に刀を握り、接敵した鎧武者に叩き込む。
それはカタリと音を立て刃で受け流す。
「どのような技を使うかはわかりませんが、まずは手合わせ願いましょう」
ハンスは用心ぶかく刃を振るう。空から来るものへの注意は怠れない。
敵の反撃が来る。
雑魔たちは兵庫に向かうものと後方向かうものに分かれた。集まった雑魔の攻撃を回避する兵庫だが、数が多いとよけきれない。鎧で攻撃は軽減されているが問題もなくはない。
鎧の歪虚はアリアとハンスを見ているようだった。顔を覆うもので目は明確にわからない。ただ、意識として二人は「見られている」と思ったに過ぎない。
それは刀を構えると無造作に一刀振った。風圧がアリアとハンスに襲い掛かる。
二人は間一髪で回避し難を逃れる。
「【次元斬】とは異なるようですね。離れても意味がないなら……前に出たほうがいいですね」
「【薙ぎ払い】に近いかもしれないね……いずれにしても用心しないとならいわね」
ハンスの言にアリアも推測を告げる。その間ともとれる技。
仲間が雑魔を攻撃しているのは分かっているため、二人は目の前の歪虚に集中した。
エルバッハは近づいてきた敵を見て【風雷陣】を使う。
銃に持ち替えたミオレスカが近づく敵に対して【制圧射撃】をする。
「少々数が多いですね」
「はい。慎重に行かないといけません」
二人は背後に紅葉をかばいつつ、戦況を見つめる。その後ろから申し訳程度に弓矢が飛んできて、プスッと足止めされた雑魔に刺さった。
兵庫は雑魔が群がってきたところに【薙ぎ払い】を用いて攻撃をする。運よく回避したもの以外、霧散した。
「長々と付き合うつもりはないが、掃除は丁寧にしないとならないからな」
後衛と歪虚に接敵した二人を視界に収めつつ、敵を見据えた。
アリアは歌い舞うように敵に切り込む。
「刃よ、奏でて、矜持の斬撃」
手ごたえはあるが、見た目の通り固かった。
彼女がひらりと避けたところにハンスが円を描くように位置取りする。
「雑魔も討伐対象ですよ。【次元斬】」
歪虚と近くに待機していた雑魔を巻き込み、技が叩き込まれる。
雑魔たちの攻撃は強くはないがまとまると痛い。
兵庫および、後衛は回避や受けなどで耐える。
鎧の歪虚から放たれる一撃は大変重かった。アリアとハンスも耐えた。ただ、それの攻撃の重さに刃が耐えられないのか、捨てると別の刀を引き抜いた。
歪虚からのうなり声、怒りを感じる。
気おされそうな声の大きさ。
「ここの砦の者ではなくとも、もともと人だったのでしょうか」
アリアは呟く。歪虚に成れば、もともとの志は関係ない。人類の敵となる。その悲しさを感じる。
「鬼気迫る、趣深い行動ではありますが、何度も攻撃を受けるのは避けないとまずいですね」
ハンスはかすり傷であっても、積み重なる危険を感じた。
敵の状況を見て、エルバッハは的確に魔法を選択する。
「炎よ【ファイアーボール】」
さく裂した炎により、雑魔たちが消える。兵庫の回りにいたモノも多く巻き込まれた。
ミオレスカが引き金を絞る。装填されている銃弾が不規則な動きをもって敵を貫く。
「紅葉さん、狙うなら、弱っているのをお願いします」
紅葉の状況だと当たるかはわからない。しかし、戦力だとみなしておくことも重要であった。
「はい、頑張ります」
元気のいい声がミオレスカとエルバッハの後ろからし、ヘロヘロと飛ぶ矢が地面に刺さった。
炎を感じ、兵庫は敵の状況を確認した。
前にいた雑魔を再び【薙ぎ払い】で多く巻き込む。そのあと、歪虚の方に足を向けた。
雑魔の数が減った今、鎧の歪虚に集中するべきであると判断した。
アリアとハンスの攻撃をそれはぎりぎりでかわした。
「簡単には落ちないということね」
「さすがに武芸者ということですね」
落ち着きを払い、次の攻撃に二人は備えた。
一進一退の戦いが続く。
雑魔たちはほぼ数を消え去った。
鎧の歪虚さえ倒せば、終わる。
それは状況を理解しているため、威嚇するように吠えた。
怨嗟であり、怒りであるように感じられた。
アリアとハンスは仲間の行動を感じつつ、敵から目を離さないように武器を構え直した。
エルバッハが距離を詰めて、歪虚に魔法を放つ。
「行動阻害を狙いますね。【アイスボルト】」
氷の塊が鎧の歪虚を包んだ。
「空を飛ぶのはこれで終わりですね」
ミオレスカがまだ残っていた雑魔を狙って、他の者が安心して戦えるようにした。
「全力でいくわね。土地を守って死したならば、安らかな眠りを」
アリアがマテリアルを込め、技を叩き込む。
「悪いが、長々と付き合ってやる気はない。俺の得意技で決めさせてもらう」
兵庫はマテリアル込め攻撃を叩き込んだ。
「散るのが本懐とも聞きます。さあ、これで終わりにしましょう」
ハンスの攻撃も加わった。
鎧の歪虚は耐えきれず、霧散し消えた。鎧も粉々に砕け、風に乗り消えた。
●道は途切れても道はある
歪虚がいたところをハンスは見つめる。それは歪虚となってどう考えていたのだろうかと思う。それは語らないためにわからなかった。
リアルブルーにいたころは東洋史を専攻し、普段から着流しを着るほど東方に憧れていた。クリムゾンウェストでも東方があり訪れると不思議な気もする。
リアルブルーの東方とは違う東方。
「不思議な符号ですね……」
依頼人である紅葉が来て【浄龍樹陣】を使う。場所を変え、念入りに行っていた。袖が舞う姿はエキゾチックである。
エルバッハとミオレスカは、紅葉の行動を見つつ、休息用の場所を調える。ミオレスカが起こした火でスープを煮る。
「本職ですね」
エルバッハは紅葉を見ながらも、敵の警戒をしていた。雑魔はいなくなったはずだが、用心しないのも危険だ。しばらくすると、紅葉がこちらにやってくる。
「終わったのですね」
紅葉が戻ってきたところにスープの入ったコップを渡した。
「ありがとうございます」
紅葉は倒木に座る。ぬくもりをしっかり手から吸収するようなしぐさ。
「そういえば、松永さんは同行してもらわなかったんですか?」
ミオレスカの不意の問いかけに紅葉は首をかしげる。
「最近、お二人で会ったりはしていますか?」
「ありますよ? 城内で会って、先日、世間話をしましたよ」
「……え、ええと、そうですか」
ミオレスカは「おかしい」と内心首をひねる。たぶん、互いに意識しているはずなのに、なぜか恋愛は進まない。気付いている第三者であるミオレスカの方がやきもきする。
様子を見ているエルバッハは二人の温度差と言うか認識の差に気づいて、微笑んで見ていた。
ミオレスカはため息をついて話題を変える。
「紅葉さん、ここの土地は広いです、いい眺めです。刻令術も発展してきましたし、安全が確保できれば農地として開発したり、建物を作って、昔以上の発展もできそうですね。」
紅葉はうなずいた。
馬の蹄の音が近づいてくる。砦跡地の歪虚と雑魔を討伐した後、少し離れたところを確認してきた兵庫だ。
「ひとまず周囲には何もいないようだ」
「良かったです」
「いずれまたここにも雑魔が集まることもあるだろうがな」
「そうなんですよね……」
「負のマテリアルがあれば雑魔が自然でも起こるからな。ここだけの問題じゃないから気長に戦うしかない」
兵庫の言葉に紅葉は「そうですよね」と告げた。
アリアがマッピングを終えて戻ってきた。
「終わったわ。砦自体は簡易的だったけれどそれなりに大きかったみたいね」
堀や柱の跡からの推測が多い。この砦が簡易的であってもそれなりに大きかったことはうかがえた。
「ここが生まれ変われば、命を散らした人たちも落ち着いて眠れるわよ。ああ、それと、こっちの方に道があったような形跡があったわ」
「なるほど……南方に向かうものか……別の建物があったかですね」
紅葉は地図を覗き込み暗記しようとしている。
道は途絶えているように見える。しかし、南方から歪虚が来たことを考えればどこかで道がつながっているのだろう。
「気をつけないといけないんですね」
昔のようなことはないとはいえ、危険はまだ多くあると痛感する事態だ。
「皆さん、ありがとうございました」
紅葉が頭を下げた。
「まだ終わっていませんよ。帰るまでがお仕事です」
エルバッハの指摘に紅葉はうなずいた。
エルバッハ・リオン(ka2434)は丁寧にあいさつをした。
「紅葉さん、今回もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
大江 紅葉(kz0163)も挨拶を返し、依頼の確認を含めて工程を示す。
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は紅葉がある単語を何度か言い直した点に気づいた。
「歪虚をこちらでは妖怪……物の怪というんでしたか? さすが東方、参考になりますね」
「あー……歪虚の中でも『憤怒』に属するものについて我々は言っていただけです」
西方との往来が途絶え、エトファリカ連邦国となったところだけで戦っていたための現象。
ミオレスカ(ka3496)は先日、紅葉の畑の芋掘りに手伝いで来ていた。
「砦の掃除なのですね? 秋の農作物の収穫祭、のお手伝いに来られるようになるといいです」
紅葉はにっこりとうなずいた。
「今回行くところはライブラリで見た地域でもあるのですよね? 文献もあればいいのですが、砦の周辺の地図をきちんと作ってみたいですね」
アリア・セリウス(ka6424)がミオレスカの言葉に答えるようにマッピングセットを取り出す。
「以前、紅葉が出していた依頼や情報から必要かと思って用意しておいたのよ。砦周囲の地図を制作すれば、今後役に立つでしょう?」
紅葉は手渡されたマッピングセットに目を輝かせているため、初めから渡すと何か危険を感じた。そのため、アリアは必要になったら渡すことにし、一度引き取った。
榊 兵庫(ka0010)は連絡を取る手段のことについて仲間に告げる。
「基本はまとまって動くでいいな? 長く放置されていたならば、どのような有様になっているかわからない。その掃除にはできる限り俺も協力させてもらおう」
ハンターたちと考えの確認を行う。そして、紅葉が「それでお願いします」と改めて頭を下げたのだった。
里を経由して、その先を目指すことになる。
●荒涼とした土地
かつて来たことがある者は気づくだろう、里までの道のりは徐々に改善されていると。集落があるわけではないが、人の手が加わってきている。
里の手前に来ると復興作業をする人々がおり、ハンターたちを歓待する。そこで最近の状況を聞くこともできる。その先に向かう準備をした。
集落や大きな道から外れる為、復興から遠かった場所へ向かう。
その地に近づくにつれて肉眼でも鳥ではない何かが飛んでいるのが見える。
「あの、ある程度近づいたら、偵察に行ってみようと思うのですが」
エルバッハが符を取り出して告げる。
「その間、行動ができませんので、よろしくお願いしたいのです」
「構わない」
兵庫が告げると誰もがうなずく。
情報が少ないため、近づく前に一つでも多くの情報を得られる方が良かった。
符術の【式符】をエルバッハは用いる間、双眼鏡を借りた紅葉は遠くを眺める。
「何か変わった物は見えるの?」
アリアの問いかけに紅葉は「残念ながらありません」と返す。
「ここを守っていた人がいるとは聞いているよ。里から人が逃げる間の足止めの地……なのよね? そういえば、その前はどのような風景だったの?」
アリアの問いかけに紅葉が少し考える。
「私が生まれたときには歪虚との交戦状態でしたし、里から出ても海岸線にいるか、父について天ノ都に行ったくらいです。確かに、まだ草や木が生えていました」
「そうよね」
今は荒地であるが、草や木が生えていただろうことはアリアも想像できる。西方とは異なる植物、絵で見たような東方の世界が広がっていたのだろうかと考えた。
「海は近いのですね。そちらから歪虚が来るということはあるんでしょうか?」
ハンスは依頼を受けたとき、この辺りに出る妖怪のタイプはチェックしていた。その上で海から来るものはあまり表記がなかった。
「いなくはないのですが、あまり来ませんでしたね。来ていたら、里はもっと早く陥落していたでしょう」
「そういうことにつながるのですね」
ハンスは周囲を見渡した。
エルバッハが集中を解き、目を瞬く。
「かなりの数がいますが、大きさから雑魔の類と思います――」
「そちらはこの辺りによく出没するタイプです。強さは不明ですが、用心さえすれば皆さんが後れを取るとは思いません」
エルバッハの言葉を双眼鏡で雑魔を確認した紅葉が引き取った。
「そういってもらえると嬉しいがな。確かに用心を怠れば何でも危険であるのは事実だ」
兵庫は目視できる敵の数から考える。
「あと倒壊した建物といいますか、砦の跡が壁と屋根ががれきが残っています。そこに、人型の歪虚がいます」
「人型?」
「はい、鎧兜だけかもしれませんし、中身もしっかりあるかもしれません。刀を大量に持っています」
兵庫はその言葉に眉をしかめる。
「それ自体が妖怪ということは?」
「否定はできませんが、鎧の方は動いていましたが刀は動いていませんでした」
「用心はしたほうがいいな」
エルバッハはうなずく。
「紅葉、それらを討伐する、と言うことでいいな?」
兵庫の確認に紅葉が「お願いします」と告げ、彼女自身、戦闘態勢を整える。
「ならば、歪虚となった武芸者がいるならば、その妄念を断ってこの地と人の心に美しさを……願いおう」
アリアは佩いた大太刀を引き抜く。
「まさに……戦場に消える炎のはかなさの具現であり――おっと……これ以上はやめておきましょう」
ハンスはにんまりとほほ笑んだ。
「えと、紅葉さんは少し離れて所から援護してくださいね」
「距離短いですよ、符術?」
「……少し離れたところからお願いしますね?」
ミオレスカが念を押したところ、ハンター全員が首肯した。そのためか紅葉が唇を尖らせて弓の弦をはじきはじめたのだった。
●オモイ刃
ミオレスカが弓に矢をつがえ放つ。弓に込められている力も解き放ち、マテリアルが込められた矢は【フォールシュート】の通常の範囲以上に効果を出す。
「エソ・ニクラの名は伊達ではありません」
これを合図とみなし、エルバッハの魔法も続く。紅葉は範囲にいる人に対し【加護符】を使う。
兵庫、アリアそしてハンスが距離を詰める。
兵庫は一定距離つめて下馬し、馬を後ろに向けた。そして、自身は周囲に群がる雑魔たちの意識を拡散させるためにも【ソウルトーチ】を用いた。雑魔たちは馬よりも兵庫を意識する。
アリアはひらりと舞う。
「歌い祓え、邪妖と閉ざされた地――人の手に取り戻す、護るための刃とともに、響かせて」
歌い両の手に刀を握り、接敵した鎧武者に叩き込む。
それはカタリと音を立て刃で受け流す。
「どのような技を使うかはわかりませんが、まずは手合わせ願いましょう」
ハンスは用心ぶかく刃を振るう。空から来るものへの注意は怠れない。
敵の反撃が来る。
雑魔たちは兵庫に向かうものと後方向かうものに分かれた。集まった雑魔の攻撃を回避する兵庫だが、数が多いとよけきれない。鎧で攻撃は軽減されているが問題もなくはない。
鎧の歪虚はアリアとハンスを見ているようだった。顔を覆うもので目は明確にわからない。ただ、意識として二人は「見られている」と思ったに過ぎない。
それは刀を構えると無造作に一刀振った。風圧がアリアとハンスに襲い掛かる。
二人は間一髪で回避し難を逃れる。
「【次元斬】とは異なるようですね。離れても意味がないなら……前に出たほうがいいですね」
「【薙ぎ払い】に近いかもしれないね……いずれにしても用心しないとならいわね」
ハンスの言にアリアも推測を告げる。その間ともとれる技。
仲間が雑魔を攻撃しているのは分かっているため、二人は目の前の歪虚に集中した。
エルバッハは近づいてきた敵を見て【風雷陣】を使う。
銃に持ち替えたミオレスカが近づく敵に対して【制圧射撃】をする。
「少々数が多いですね」
「はい。慎重に行かないといけません」
二人は背後に紅葉をかばいつつ、戦況を見つめる。その後ろから申し訳程度に弓矢が飛んできて、プスッと足止めされた雑魔に刺さった。
兵庫は雑魔が群がってきたところに【薙ぎ払い】を用いて攻撃をする。運よく回避したもの以外、霧散した。
「長々と付き合うつもりはないが、掃除は丁寧にしないとならないからな」
後衛と歪虚に接敵した二人を視界に収めつつ、敵を見据えた。
アリアは歌い舞うように敵に切り込む。
「刃よ、奏でて、矜持の斬撃」
手ごたえはあるが、見た目の通り固かった。
彼女がひらりと避けたところにハンスが円を描くように位置取りする。
「雑魔も討伐対象ですよ。【次元斬】」
歪虚と近くに待機していた雑魔を巻き込み、技が叩き込まれる。
雑魔たちの攻撃は強くはないがまとまると痛い。
兵庫および、後衛は回避や受けなどで耐える。
鎧の歪虚から放たれる一撃は大変重かった。アリアとハンスも耐えた。ただ、それの攻撃の重さに刃が耐えられないのか、捨てると別の刀を引き抜いた。
歪虚からのうなり声、怒りを感じる。
気おされそうな声の大きさ。
「ここの砦の者ではなくとも、もともと人だったのでしょうか」
アリアは呟く。歪虚に成れば、もともとの志は関係ない。人類の敵となる。その悲しさを感じる。
「鬼気迫る、趣深い行動ではありますが、何度も攻撃を受けるのは避けないとまずいですね」
ハンスはかすり傷であっても、積み重なる危険を感じた。
敵の状況を見て、エルバッハは的確に魔法を選択する。
「炎よ【ファイアーボール】」
さく裂した炎により、雑魔たちが消える。兵庫の回りにいたモノも多く巻き込まれた。
ミオレスカが引き金を絞る。装填されている銃弾が不規則な動きをもって敵を貫く。
「紅葉さん、狙うなら、弱っているのをお願いします」
紅葉の状況だと当たるかはわからない。しかし、戦力だとみなしておくことも重要であった。
「はい、頑張ります」
元気のいい声がミオレスカとエルバッハの後ろからし、ヘロヘロと飛ぶ矢が地面に刺さった。
炎を感じ、兵庫は敵の状況を確認した。
前にいた雑魔を再び【薙ぎ払い】で多く巻き込む。そのあと、歪虚の方に足を向けた。
雑魔の数が減った今、鎧の歪虚に集中するべきであると判断した。
アリアとハンスの攻撃をそれはぎりぎりでかわした。
「簡単には落ちないということね」
「さすがに武芸者ということですね」
落ち着きを払い、次の攻撃に二人は備えた。
一進一退の戦いが続く。
雑魔たちはほぼ数を消え去った。
鎧の歪虚さえ倒せば、終わる。
それは状況を理解しているため、威嚇するように吠えた。
怨嗟であり、怒りであるように感じられた。
アリアとハンスは仲間の行動を感じつつ、敵から目を離さないように武器を構え直した。
エルバッハが距離を詰めて、歪虚に魔法を放つ。
「行動阻害を狙いますね。【アイスボルト】」
氷の塊が鎧の歪虚を包んだ。
「空を飛ぶのはこれで終わりですね」
ミオレスカがまだ残っていた雑魔を狙って、他の者が安心して戦えるようにした。
「全力でいくわね。土地を守って死したならば、安らかな眠りを」
アリアがマテリアルを込め、技を叩き込む。
「悪いが、長々と付き合ってやる気はない。俺の得意技で決めさせてもらう」
兵庫はマテリアル込め攻撃を叩き込んだ。
「散るのが本懐とも聞きます。さあ、これで終わりにしましょう」
ハンスの攻撃も加わった。
鎧の歪虚は耐えきれず、霧散し消えた。鎧も粉々に砕け、風に乗り消えた。
●道は途切れても道はある
歪虚がいたところをハンスは見つめる。それは歪虚となってどう考えていたのだろうかと思う。それは語らないためにわからなかった。
リアルブルーにいたころは東洋史を専攻し、普段から着流しを着るほど東方に憧れていた。クリムゾンウェストでも東方があり訪れると不思議な気もする。
リアルブルーの東方とは違う東方。
「不思議な符号ですね……」
依頼人である紅葉が来て【浄龍樹陣】を使う。場所を変え、念入りに行っていた。袖が舞う姿はエキゾチックである。
エルバッハとミオレスカは、紅葉の行動を見つつ、休息用の場所を調える。ミオレスカが起こした火でスープを煮る。
「本職ですね」
エルバッハは紅葉を見ながらも、敵の警戒をしていた。雑魔はいなくなったはずだが、用心しないのも危険だ。しばらくすると、紅葉がこちらにやってくる。
「終わったのですね」
紅葉が戻ってきたところにスープの入ったコップを渡した。
「ありがとうございます」
紅葉は倒木に座る。ぬくもりをしっかり手から吸収するようなしぐさ。
「そういえば、松永さんは同行してもらわなかったんですか?」
ミオレスカの不意の問いかけに紅葉は首をかしげる。
「最近、お二人で会ったりはしていますか?」
「ありますよ? 城内で会って、先日、世間話をしましたよ」
「……え、ええと、そうですか」
ミオレスカは「おかしい」と内心首をひねる。たぶん、互いに意識しているはずなのに、なぜか恋愛は進まない。気付いている第三者であるミオレスカの方がやきもきする。
様子を見ているエルバッハは二人の温度差と言うか認識の差に気づいて、微笑んで見ていた。
ミオレスカはため息をついて話題を変える。
「紅葉さん、ここの土地は広いです、いい眺めです。刻令術も発展してきましたし、安全が確保できれば農地として開発したり、建物を作って、昔以上の発展もできそうですね。」
紅葉はうなずいた。
馬の蹄の音が近づいてくる。砦跡地の歪虚と雑魔を討伐した後、少し離れたところを確認してきた兵庫だ。
「ひとまず周囲には何もいないようだ」
「良かったです」
「いずれまたここにも雑魔が集まることもあるだろうがな」
「そうなんですよね……」
「負のマテリアルがあれば雑魔が自然でも起こるからな。ここだけの問題じゃないから気長に戦うしかない」
兵庫の言葉に紅葉は「そうですよね」と告げた。
アリアがマッピングを終えて戻ってきた。
「終わったわ。砦自体は簡易的だったけれどそれなりに大きかったみたいね」
堀や柱の跡からの推測が多い。この砦が簡易的であってもそれなりに大きかったことはうかがえた。
「ここが生まれ変われば、命を散らした人たちも落ち着いて眠れるわよ。ああ、それと、こっちの方に道があったような形跡があったわ」
「なるほど……南方に向かうものか……別の建物があったかですね」
紅葉は地図を覗き込み暗記しようとしている。
道は途絶えているように見える。しかし、南方から歪虚が来たことを考えればどこかで道がつながっているのだろう。
「気をつけないといけないんですね」
昔のようなことはないとはいえ、危険はまだ多くあると痛感する事態だ。
「皆さん、ありがとうございました」
紅葉が頭を下げた。
「まだ終わっていませんよ。帰るまでがお仕事です」
エルバッハの指摘に紅葉はうなずいた。
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/10/16 19:00:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/15 17:43:42 |