覆墓のかわりに

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/10/16 19:00
完成日
2017/10/24 00:16

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 乾いた風が頬を撫でる秋空の頃、即疾隊に一通の手紙が届いた。
 一年前の頃は、手紙を届ける事すら恐怖だった飛脚は人懐っこく「お手紙です」と伝えられるようになっていた。
「壬生さーん」
 門番をしていた新人隊士は一番隊長である壬生和彦へその手紙を渡しに行く。
「ああ、ご苦労」
 和彦が手紙を受け取り、裏側を確認すると、自分の隊士からの手紙だった。
 中身を読めば、初名の依頼に応え盗賊退治をしていたという旨であり、その中に初名が旅先で出会った清という女性の事も記載している。
「とりあえず、初名殿は無事ということか」
 極論だけ出した和彦は局長の所へと向かった。

 局長と副局長に報告をすると、二人は初名を心配しつつも無事であることを喜んでいた。
「賊の件に関しては些か心配ですが」
 ぽつりと呟く和彦に副局長が同意してくれる。
「お前の心配もわかる。しかし、お前の隊士が初名殿を助けたのは嬉しいことだろう」
 そう言った副局長に和彦は「ウチの隊士ですから」と、どこか年齢相応の笑みを浮かべて胸を張る。

 一方、初名は清と別れて目的の刀匠の所に来ていた。
 工房と住居が隣り合う家であり、初名はどこから入ればよいのかまごついていた。
「お客さんだべか?」
 そう尋ねてきたのは初名より少し年上の男。服装からしてここの工房の者と思える。
「あの、こちらは白賀時光様のお宅でしょうか? 私は越乃初名と申します。亀田藤五郎の既知でして、白賀様にお会いしたいのですが……」
「ああ、亀田先生のぉ。どうぞ、中へ。おらは三吉、白賀は師匠になるだ」
 三吉と名乗った若い刀工は「ししょー!」と大きな声で叫び、初名はその後についていった。
 刀匠は亀田医師と変わらぬ年齢の刀匠。奥方だろう女性が初名に茶を出してを刀匠の傍に座ると、初名は自分の身分を告げた上で亀田医師が死亡した旨を伝える。
「……そうでしたか」
 驚きを隠せなかった白賀夫妻は残念そうに目を伏せてしまう。
「師はあまり故郷のお話をされませんでしたが、白賀様の昔話を何度か聞いたことがありました。その時の師の顔がとても嬉しそうで、伝えなくてはと思いました」
「わざわざ、知らせに来て頂いた事を感謝する」
 初名の言葉に白賀は頭を下げた。
「それで、師の先祖が眠るお墓があると伺ったのですが、ご存知でしょうか? せめて、遺品を共に眠らせたいと思いまして」
「良い提案ではあるが、これは私の一存では決められない。奴の親類に知人がおるゆえ、一筆書こう」
「長旅で疲れたでしょう? こんな騒がしい家でよければ、泊まっていって」
 白賀夫妻の厚意に初名は甘えることにした。

 翌日、弟子の三吉に案内してもらって親戚の家へ向かう。
 表札には亀田の文字ではなかった。親類は女性であり、嫁に行った亀田医師の従妹にあたるという。
「ウチは女系でね。男が生まれたのも藤五郎さんくらいだったんだよ」
 お茶を出してくれた女性は「久しぶりに名前をきいたよ」とすがすがしく笑う。
「あの藤五郎さんにこんな可愛いお弟子さんが出来るとはねぇ」
 妙に、『あの』という発音が強調されており、何をしていたんだと初名と三吉は思ってしまう。
「まぁ、あたしも伯父が死んでから、縁が遠くなってねぇ。藤五郎さんに娘さんが生まれても、養子は取らないと言ってたんだよ」
「そうでしたか……」
「そんなもんだから、あたしや他の親族がどうこう言える立場じゃない。あんたみたいないい子に慕われてるんだから、好きにしなよ。誰かに何か言われたら、あたしに言いな」
 自分の胸を叩いて笑いかける女性に初名は指をついてありがとうございますと返した。

 そこから問題が起きた。
 教えて貰った墓地へ行ったところ、敷地を管理している坊さんが頭を抱えていた。
 話を聞けば、その辺りには獣がうろちょろしているという。奥の方の墓は周囲にはぼうぼうと草が生えていることが多く、困り果てていた。
「では、ハンターを呼びましょうか。墓を綺麗にするのはこの世に生きる者の務めです」
 そう言うと、初名はハンターオフィスへ依頼を出した。

リプレイ本文

 再び東方のある地方の町に足を踏み入れた木綿花(ka6927)は野菜売りを呼び止める。
 そろそろ梨は終わりだろうか、柿やみかんが姿を見せていた。
「前に街道で盗賊がいたと聞いてましたが、最近如何ですか?」
 世間話を振ると、野菜売りは「そうですね」と思い出している。
「ああ、最近はなりを潜めてまさぁ……って、あの時のハンターのお嬢さんじゃねぇですか」
 思い出すのが遅かった野菜売りの青年はどうやら人の顔を覚えるのが苦手なようだった。木綿花は会った覚えがないが、きっと、前回来た時に見知ったのだろうと推察する。
「恐喝が行われてないようで何よりです」
 安堵する木綿花に野菜売りの青年は照れ隠しに笑う。
「番屋に連れていかれた連中もだんまりのようですが……ただ」
「ただ?」
 言いよどむ青年の様子に和音・空(ka6228)が反応する。
「別の場所で盗みを働いているのではと聞いてるんでさぁ」
「それは穏やかではないな」
 空の隣に立ったセルゲン(ka6612)も話に加わる。
「へぇ。こっち側ではなく、向こうの方です」
 その返しに三人は顔を顰めるしかなかった。
「獣が出るどころか、盗賊の手まで……」
 野菜売りが行ってしまった後、木綿花が静かに呟く。
「墓参りなのに、騒がしいことになるなぁ」
 ふぅと、息をついて空を見上げたのはトリプルJ(ka6653)。
「それを排除するのが澪達の仕事よね」
 澪(ka6002)が言えば、「その通りだ」とトリプルJが返す。
「では、行きましょ」
 空が言えば、依頼人がいる方向へとハンター達は歩いて行く。
「香墨、大丈夫?」
 澪が尋ねると、全身鎧を身に纏ったハンター……濡羽 香墨(ka6760)が頷いた。
 賊が出ていた街道も無事に通り抜ける。
「また一際、赤が深まりましたね」
 黄から赤への色合いを見つめる木綿花が呟くと、他のハンターたちも山沿いの景色を見た。
 人の目に触れないかのように奥まった木々に隠れる青の羽に香墨は気づく。
「カワセミ……?」
 香墨の視線を追った澪が呟くと、鳥は自由気ままに飛んで行った。
「風流とはこういうものか」
 秋空に溶けるように羽ばたくカワセミに目を細めたトリプルJはそう嘯く。
 途中、依頼人である初名、三吉と合流して、寺へと向かう。

 門の前を掃いていた小坊主がハンター達と初名を見つけると、慌てて住職へ伝えに走っていく。
「わざわざありがとうございます」
 住職もすぐに出てきてくれて、ハンター達を労う。
 休憩がてら、住職より周辺の話を聞いていた。獣はまだ墓地周辺をうろついているだけのようであり、住民に被害があったという話は聞いていない。
「被害がなくて何よりです」
 安堵したように呟くのは木綿花だ。
「お恥ずかしながら、獣がこちらに紛れ込むようなことはなかったので……」
 剃髪された頭を撫でる住職は言い訳もないと肩を落とす。
「現状では後手に回っておる故、柵を付けるのは討伐後に考慮してくだされ」
 セルゲンの言葉に住職は「そのようにします」と返した。ほとほと困っていたようで、終わったら着手を考えているようだった。
「なら……漢探知でも十分いける気がするがなぁ……」
 ぽつりと呟くトリプルJに初名が口を尖らせてじっと見やる。
「へいへい、ただの冗句だ。目くじらたてんなよ」
「覚醒者と分かってても心配です」
 降参と言わんばかりに両手を上げるトリプルJの言葉に初名がしれっと返す。
「お医者さんだから、心配じゃないのかな」
 澪が補足の言葉を足すと、トリプルJは「成程」と頷く。
「ちゃんと、お墓参りができるように退治しましょう」
 空がすっくと立ちあがると、ハンター達は墓地の方へと向かう。
「こちらでお待ちください」
 一緒に行こうとする初名に木綿花が留める。
「はい。皆さま、ご無事で」
 住職と一緒に並んで初名はハンター達を見送った。

 寺の敷地内にある墓地へと向かうすがら、澪は最後尾を歩く香墨の隣にいた。
 香墨の様子に澪は薄々気づいているようであり、彼女の傍にいる。
 今は餌を求めているやもしれない獣であるが、何かの節に歪虚化する可能性だってあるのだ。
「……イヤでも。やらなきゃいけないから」
 香墨は澪の気遣いに気づいており、静かに心の内を口にする。
 歪虚だったら、よかったかもしれないと思いながら澪が空を見上げると、秋空は香墨の吐露に相反するように晴れやかな青が広がっていた。
 墓地の中は人がすれ違うことが出来る広さの道が奥へと一本続いており、一人が通れる道が左右に枝分かれをしている。
 亀田医師の先祖の墓は奥へと続いた道の奥だという。奥の区画に入ると、草木が気ままに伸びており、影の奥に亀田の名をセルゲンが見つけた。
「この奥のようだな」
 セルゲンの視線の奥……墓石の向こう側には山の斜面が見える。
 おもむろに呪画を取り出した空は生命感知を発動させていた。
 瞳を閉じて集中していると、山の斜面の奥から何かがいる事を感じ、空は黒曜の目をひらく。
「結構近いわね」
「とりあえずは、探索だな」
 空が呟くと、セルゲンとトリプルJが前に出る。彼らの背を見た木綿花には牡丹鍋にかける情熱を垣間見たのかもしれない。
 傾斜を上がっている間にも人とのものとは思えない足跡が目につく。後ろを振り向いたセルゲンの視界には墓地が入る。
 秋風が吹いており、木々が葉擦れの音を鳴らす。
 注意深くセルゲンが自分達の進行方向へと耳を澄ますと、超聴覚の効果で微かに足音が聞こえてきた。
「住職が見た話では、狼と猪が見えたことがあると仰ってましたね」
 木綿花の声を確認しながらセルゲンは奥へと進み、足音を確認していく。
「増えているみたい」
 再び生命感知を発動させた空が仲間に声をかける。
「音が近い。左からくるぞ、気をつけろ!」
 素早くセルゲンが警告を叫ぶと、ハンター達から向かって左側から猪が駆けてきた。
 一番近いのは香墨だった。彼女はもう臨戦態勢をとり、猪の強襲に備えて聖盾「コギト」を構える。
「真正面からも近づいているわ」
 空が言えば、木綿花が顔を上げる。この先には木が多く、俊敏な猿が近づいていたとすれば、枝を移動している可能性を考慮した。
 猪を引き受けた香墨は後続の獣がいないことを確認し、ジャッジメントを発動する。光の杭が猪の頭を貫通し、身体を捩り悶える。
 駆け出した澪が太刀の鯉口をきる。横たわって起き上がれない猪の右前足を斬り、すぐさま後足も斬り落とす。
 見上げて枝を確認している木綿花は木々の合間の影にいる猿の歪虚に気づき、投石される前に駆け出して飛び出した。
「上へ参ります」
 トリプルJの傍を通り、木綿花が駆け出した。強い踏み出しと同時にジェットブーツを発動し、一気に跳躍する。
 自分の方へと向かう木綿花に対し、猿は短い鳴き声を出して怯ませる為に威嚇した。
 跳躍が間に合わないと察した木綿花は即座に機導砲を展開し、投石をしようとする猿へと撃ち込んだ。
 猿の腕へ命中し、石を握っていた腕が中空に放りだされた猿は衝撃で枝より転落しようとした時、その背後から別の猿がいた事に木綿花は気づく。
 木綿花はゆっくり下降している状態に入っており、何とかダガーを構え、もう一匹の猿の攻撃に備える。
 威嚇の声を張り上げた猿が木綿花へ追撃しようとした瞬間、猿は木綿花へ投げようと握りしめていた石も、腕も、胴も、足も無数の手にしっかりと捕まえられていた。
 虚空より呼び出された腕達は自身の獲物だといわんばかりに猿を引きずり下ろしていく。
「大丈夫そうだな」
 無事に着地をした木綿花に声をかけたのはファントムハンドを呼び出したトリプルJだ。足元には片腕がない猿がとどめを刺されている。
「お礼を申したいのですが、まだいるようですね」
 木綿花が見据えたのは正面だ。
 向こうより顔を出しているのは狼二体がハンター達を見据えていた。短く吠えると、一気にハンター達へと駆けて行った。
 易々と接近を許すつもりなどはなく、呪画を靡かせて広げた空は即座に術を発動させる。ある地点に差し掛かった途端、白い光が狼を襲った。
 低く唸る鳴き声は苦しみに悶えており、動くこともままならないようだが、嗅覚を使ってハンターへ向かおうとしている。
「仏の眠りを妨げる罰当たりめ」
 静かに唸るセルゲンの声が狼の耳に届いたのかはわからないが、セルゲンは狼のに止めを刺そうと歩き出す。
 セルゲンを追って走り出すのは澪と香墨。
 香墨がジャッジメントを発動させて、セルゲンが向かおうとしていた狼の片割れへ光の杭を打ち付ける。
 悶えるように吠える狼は倒れたふりをし、セルゲンを引き付けてから飛びかかろうとしていたようだった。
 確実に澪が斬り倒すと、周囲は静かにはなる。
 最後の猪一体がまだ近くにいる事は空の生命探知で分かっている。
「肉! いや猪! 絶対ぇ逃がさん!!」
「勿論だ!」
 食べる気……否、やる気満々のセルゲンとトリプルJが超聴覚を駆使して猪の音を探っていた。
「……今日の、ごはん」
 全身鎧の中で香墨も警戒を向けている。
 騒ぎに気づき、出遅れた猪がハンター達の方へと向かうのはすぐ後の話。

 最後の一体もあっさりと討伐したハンター達は住職と初名に依頼完了した旨を伝える。
「必ず、柵を作ります。檀家の方々も怖がって来てくれなくて、本当に助かりました……」
 住職が言えば、初名は「お疲れ様でした」と声をかけた。
 老夫婦と三吉と同じ格好をした青年が増えており、老夫婦は白賀と名乗り、弟子だろう青年は伝助と名乗った。弟子の三吉、初名を心配して来ていたようだ。
「無事に討伐完了した。猪が二体もとれた故、工房の方々もご一緒に」
 セルゲンが三吉に白賀夫妻も一緒に食べようと誘う。
「それは嬉しい、ウチを使ってくれ。些少ながら、酒も用意しよう。弟子の伝助が猪の解体が出来る使ってやってくれ」
 快く場所を提供してくれた白賀夫妻は弟子の伝助に声をかけて、手早く解体を行った。
 その間、お参りをする為に亀田家の墓周りの草刈りを始める。寺の方で手押し車や鎌を借りて草木を切りとっていく。
 皆でやれば早く終わるので、時光と弟子達も草刈りに参加してくれる。
 半刻で亀田家の周囲が終わり、墓石も形がしっかり見える状況だ。
「倒れてたりしなくてよかったですね」
「はい」
 木綿花が初名に声をかけると、彼女も嬉しそうに頷いた。
「綺麗に拭いて仕上げだな」
 桶に水を入れてきたトリプルJは桶を墓石の近くに置く。
 刈り取った草は手押し車に乗せて指示された場所へ運搬するように言われており、それは香墨と澪が一緒にやっていた。
「あ……」
 微かに聞こえる香墨の声に澪が反応する。彼女が向いている方向へ自分の視線も合わせると、木の実を持つリスが木の下にいることに気づく。
「食物連鎖という言葉はあれど、ああいった小動物は可愛いものね」
 空のカゴを持った空が言えば、「ええ」と澪が相槌を打つ。
 この世に生きるものは何かしらの『生命』を奪い、自身の糧とする。
 再び刈り取った草を運ぶために空がいなくなると、香墨が口を開いた。
「……ごはんは、大事だから」
「そうだね。たくさん食べよう」
 頷き合った二人はまた手押し車を押して運んでいく。
 刈り取った草もきれいに取り除くと、綺麗に区画されている亀田家の墓が現れた。
 初名が師匠の遺品を埋め、お供え物を置くと、住職がお経を読む。
 読経が終われば、料理をする女性陣は白賀の家へと行き、残った面々は枯れ木の処理を手伝ってから白賀の工房へと向かうことにした。
 白賀邸では肉の下処理が終わっており、伝助は必要のない臓物を山へと返すように持って行くと出て行く。
 野菜を切り、肉を煮込んで鍋の準備を整えていく。米も羽釜の中で炊かれており、出来上がればピカピカな新米がお目見えすることだろう。
 勝手口から出た木綿花は肌に刺さる風が冷たく、目を細めたが、すぐに目を見開いて立ち止まる。
 西の雲が赤い夕陽の色に染まる赤から東に残る空の青移ろう刹那の色が視界を埋め尽くす。
「凄い、夕日です……」
 空を見つめていると、男性陣が寺の方向より来た。
 手を洗って、膳を揃えたら皆で生命の恵みに感謝して晩御飯となる。
 味噌仕立ての牡丹鍋は肉の臭みもない。しっかり煮こんだ味噌の味は白いご飯によく合い、酒にも合う。
「はい、香墨」
「……ありがと」
 しっかり食べている香墨に澪が彼女へおかわりをよそう。白米も二杯目を用意している。
「そういえば、白賀殿は赤い羽根の首飾りをした男を見た覚えは?」
 セルゲンが思い出したように尋ねると、時光も弟子たちも首を振る。
「どこでその話を?」
「ここに来る前に初名殿が出会われた女性が、盗賊の被害に遭ってな」
 三吉の話にセルゲンが説明を続ける。
「そっだら話、聞いたことながったなぁ……」
「けんども、ウチもこの間、賊に入られたもんなぁ」
 更にセルゲンが付け足しの説明を入れたが、弟子たちが顔を見合わせるばかりで心当たりはなさそうだ。
「賊?」
 トリプルJが顔を顰めると、三吉は「んだ」と返す。
 初名が来る数日前に工房を荒らされたとのことだが、現在、工房には金目の物はほぼないという。
 盗られたとすれば、試作品の鈍ら刀をとられたほど。
 初名には伝えてなく、過ぎた話の恐怖を伝えるのもどうかと思ったとのこと。せめて、帰りは途中までは送ろうと決めていたと時光が告げて初名に謝罪した。
「確かに怖いですが、盗るものがなければ皆様の命も危なかったはずです。盗られたのは口惜しいですが、無事で何よりだと思います」
 初名が言えば、空は時光の顔が随分思いつめた顔をしていることに気づく。
「どうかした?」
 空が尋ねると、時光は居住まいを正す。
「誰も気づかれてなかったのだが……試し打ちの刀の他にある刀を奪われました」
「どんな刀?」
 澪が尋ねると、皆の声が鎮まり、囲炉裏の火で温まっている鍋の音が響く。
「……若い駆け出しの頃に作った刀です。使ってほしかった者は出来上がったと同時に医師の道に走ってしまった、我が親友亀田藤五郎の為に打ったものです」
 静かに告げた時光の言葉に弟子が黙っていた事を尋ねる。
「あの刀が奪われたのは二度目。一度目は運よく戻ってきたが、今回はもう、諦めかけていた……初名殿、貴方達が来て、やはり、取り戻したくなった……どうか、取り戻してほしい……」
 頭を下げる時光に口を開いたのは空だ。
「ハンターオフィスに依頼して頂戴」
「そうだな、依頼さえすれば、ハンターは動く」
 空の言葉にトリプルJも頷く。
「二人の言う通り。まずは、食べましょうぞ」
 気を使うセルゲンの言葉に時光は「そうですな」と
 再び食事を始める様子を見て木綿花は力をつけないとならないと思い、箸を進めた。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 比翼連理―瞳―
    澪(ka6002
    鬼|12才|女性|舞刀士
  • 即疾隊一番隊士
    和音・空(ka6228
    人間(紅)|19才|女性|符術師
  • 半折れ角
    セルゲン(ka6612
    鬼|24才|男性|霊闘士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 比翼連理―翼―
    濡羽 香墨(ka6760
    鬼|16才|女性|聖導士
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談場所
セルゲン(ka6612
鬼|24才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/10/15 21:32:11
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/14 21:38:30