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【幻視】【界冥】鳴かない白鳥

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
7日
締切
2017/10/23 09:00
完成日
2017/10/30 01:17

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 次作戦の為、打ち合わせ場所で待っていたのは一組の親子だった。
 鳴月 牡丹(kz0180)が少し驚いたような表情を浮かべる。
「……籃奈の子供?」
「そうだよ。今日は諸々、都合が合わなくてさ。ほら、孝純」
 爽やかな笑顔で星加籃奈(ほしか らんな)が答えた。
 年齢でいうと10歳位だろうか。分厚い本を持った少年が、緊張した様子で頭を下げる。
「こ、こんにちわ」
「こんにちわ。ボクは鳴月牡丹……そうだね、君のお母さんのお友達さ」
「鳴月さんは……異世界の人って……ほ、本当なんですか?」
 少年は母親から牡丹の話を聞いているようだ。
 率直な少年の質問に、牡丹は籃奈へと視線を向けた。
「興味があるみたいなんだよね。異世界に、さ」
「なるほどね」
 云々と頷くと視線を少年へと向けた。
「そうさ。ボクは異世界から来たのさ。歪虚を滅ぼす為にね」
「僕も異世界に行けるかな」
「う~ん。それは難しいかもだけど……そのうち、行けるよ」
 キラキラとした目が輝いているが、少年の瞳の奥に、なにか怒りにも似た心情を牡丹は感じた。
 気のせいかもしれないが……。
「さぁ、ちょっと仕事の話があるから、孝純は向こうで本でも探してきな」
「……はぁい」
 少し残念そうな返事をした少年に牡丹は呼び掛けた。
「今度、機会があったら、異世界の話をしてあげるよ。もっとも、戦いばかりだけどね」
「は、はい、鳴月さん!」
 年相応の元気良さを見せた少年は、礼儀正しく一礼すると、隣接する本屋へと歩き出した。
 その後ろ姿を見つめながら、ボソっと呟く牡丹。
「……あの子は、籃奈の仕事の事を知っているの?」
「軍に所属している……という程度はね」
 知らない事の方が幸せなのか、それとも知った方が良い事なのか。
 牡丹には判断が付かなかった。ただ、一つだけ分かる事があった。それは、少年がやがて、大きな壁に直面する事だと。
「まさか、ボクにあの子の面倒を見ろとかそういう事じゃないよね?」
「私が死ぬと、あの子には何も残らなくなるからね。私は死なないわ」
「安心したよ」
 微笑を浮かべる牡丹だった。


 次作戦は、富士山の麓の廃病院で行われる戦いの支援だった。
 詳しい作戦の経緯は籃奈は分からないという。ともかく、地球統一連合軍の大事な作戦らしい。
「『天命輪転』アレクサンドル……ふーん」
 資料の一文を見た時、牡丹は興味が無かった。
 ハンターズソサエティ内でブラックリストとして指定されている歪虚に、そんな名前の歪虚が居たと思う。
 疑問としては、クリムゾンウェストの歪虚が、どうして、リアルブルーに居るかという事なのだが、よくよく思えば、覚醒者だって転移できるのだ。歪虚が何らかの手段で転移していても可笑しくはないかと牡丹は思う事にした。
「それで、ボク達の任務というのは、あのカワイイ形をした船の撃破という事でいいって事だよね?」
 牡丹が指さした方角
 そこは、湖だった。波穏やかな湖面に浮かぶ、スワンの形をした遊覧船……だったもの。
「一昔前、景気が良かった時に作られた遊覧船さ。色々あって打ち捨てられてたみたいだけど」
 説明する籃奈は淡々としていた。
 人々を楽しませていた遊覧船は、今や、人を仇なす存在でしかない。
 捨てられた恨みで歪虚化した訳ではないだろうが……もし、遊覧船に心があったら、これは復讐なのだろうか。それとも、ちゃんと始末してくれという願いなのか。
「……で、これはなんだい?」
 足を挙げる牡丹。
 下駄……ではない。船体をイメージしたような特殊な靴のような物だ。
「まだ試作段階なんだけどね。私の研究所で開発中のもので、ある程度、水の上に立てるようになる」
「凄く動きにくいけど……というか、水の上に浮く魔法を持っているハンターも居るだろうし、役に立つの?」
 普通に歩く分には問題ないが、重いし、なによりバランスが悪い。
 これで戦えっていうのは覚醒者や強化人間でなければ難しいだろう。
「そのハンターが居れば、どうするかは任せるよ。私は実戦での実験だから装着は必須だからね」
「それで、敵の能力は?」
「まぁ、姿形はスワン型の遊覧船だけど、内容的には大型狂気と変わらないはずさ」
 スワンの目玉の所には、目玉型の狂気歪虚が取り憑いているようだ。
 胴体部分も触手のようなものに覆われながら、所々、目玉が蠢いている。狂気歪虚の集合体……というべきだろう。
「それじゃ、行こうか」
 籃奈がライフルを担いだ。

リプレイ本文


 湖面は静かであった。秋の柔らかい陽の光と、ぞくりと身を締める冷たい風が、ハンター達を出迎える。
「あれ……今回も見事なまでに全員女性だね」
 準備運動を終えた鳴月 牡丹(kz0180)が全員を見渡した。
 それが何だという訳ではないのだが、「遠慮なくいいよね?」とアイビス・グラス(ka2477)に訊いた。
「だからって言って良いという訳ではないと思うけど……」
 その様に返事をしながら、アイビスは『試作品』を確かめる。
 船体を模した下駄のような、あるいはブーツのような物を装着している。これが『試作品』であった。
(リアルブルーには昔の軍艦を模したゲームがあるけど、それに似ているような作りよね)
 そんな事をふと、心の中で呟いた。
 とにかく、この『試作品』で水の上に浮かべるらしい。
「試作兵器といってたけど、どっちかというとスケートシューズみたいな印象ね」
「そう思って良いんじゃないかな」
 スイーと湖面を滑るイレーヌ(ka1372)。
 手には杖を手にしている。今日は殴りにいかず、魔法での支援の予定なのだろうか。
「今回は完全聖導士モードでいかせてもらうか」
「珍しく真面目だね、イレーヌ君」
 普段が非真面目という訳ではないか、メインクラスに集中するという事は相手がそれだけ油断ならないと理解しての事だろう。
 牡丹の脇を通り抜けるついでに尻を撫でる。
「相変わらず良い肉付きだな。よし、ヤル気補充完了だ」
「前言撤回だよ、イレーヌ君。倍返しだぁぁぁ!」
 水の上での追いかけっこが始まるのを白山 菊理(ka4305)は静かに見守る。
 そして、自身の身体を改めて確認した。
(牡丹に体を眺められたのは何故だろうか……)
 それは作戦室での打ち合わせの時だったのだが、「今度は赤飯の弁当を用意するよ!」などと牡丹の発言があったのを思い出す。
 まぁ、今はそれよりも、依頼だ。意識を足元に移す。
「水上に立てる装置か。これがあの時あれば、遠泳もせずに済んだろうにな……」
 菊理は以前、牡丹らと共に鎌倉の海を遠泳した事があった。
 あの時はかなりの距離を泳いだものだ。
「まだ、試作段階だから、安定性は欠けるけどね」
 『試作品』を作った強化人間の星加籃奈が苦笑を浮かべながら言う。
 波が大きい外洋では使いにくいという事……らしい。
 今回の舞台は静かな湖面。ここであれば、実戦テストにはもってこいだったのだろう。
 その湖面に浮かぶ巨大な遊覧船。それが標的であり、マーゴット(ka5022)とシェルミア・クリスティア(ka5955)の二人が敵の動きを見張っていた。
「あんなデカい船が歪虚になってるなんて……って、考えたら驚く事でもないのかな?」
 マーゴットが口元に指先を当てた。巨大な兵器ですら歪虚化するのだ。驚く事ではない。
「狂気の歪虚が、機械とか無機物に取り付く事があるのは知ってたけど……遊覧船にかぁ……」
 スワンの形をした遊覧船が歪虚化しているのだ。シェルミアはマーゴットの問いに、そう言って応えた。
「……もしかしたら、あの船に込められた想いが結果としてああなったのかもしれない」
 きっと、全盛期には多くの人々を楽しませただろう。それが、いつしか存在すらも忘れ去られていたのならば……。
「あんな姿になるのは、きっと、不本意だと思う。だから、元凶である歪虚を残らず殺そう……」
 マーゴットが感じた事は思い込みかもしれない。
 だが、見るも無残なスワンの遊覧船をこのままにしておけないという気持ちが彼女を動かしたのだ。
 湖面を滑り出したシェルミアが振り返って告げる。
「まぁ……経緯は兎も角、きちんと供養してあげないと、かな?」
 その台詞に深く頷き、マーゴットは刀を抜いた。


 スワンの嘴が、どういう原理か開いた……ように見える。
 正確には寄り集まっている狂気歪虚の仕業で遠目からはそのように見えるだけなのではあるが。
 開いた嘴から次々に射出されるのは、無数の小型狂気。目玉だけのような浮遊する歪虚である。
「やっぱり、出てきたわね」
 シェルミアが体幹で上手くバランスを取りながら符を何枚か、手に取った。
 大地の力を付与する符術を仲間に掛けていく。
「遊覧船の方は任せたわ」
「それなら、私も小型狂気に回ろう」
 ライフルを構えた籃奈がスゥーと展開した。
 強化人間から感じられる負のマテリアル。籃奈の認識では正負が分からないというが……。
 その時、光の筋が宙を駆けていった。菊理が放ったデルタレイだ。
「小型狂気を攻撃する」
 薔薇の花飾りが付いた杖を掲げながらも、やはり、足元を気を付ける。
 湖面が静かであれば、戦闘を阻害するような程の事はない。
 だが、警戒しておいて損はないはずだ。
「それじゃ、頼んだよ!」
 牡丹がそう言いながら仲間のハンターと共に迂回する。
 小型歪虚の群れが空を覆いながら、負のマテリアルのレーザーを放つ。
 幾つものどす黒い光の筋を籃奈は腕に装着している盾のようなもので防ぎつつ、前衛に躍り出た。
 自然と籃奈に攻撃が集中するが、彼女は問題なく耐えているようだ。
「五方の理を持って、千里を束ね、東よ、西よ、南よ、北よ、ここに光と成れ! 五色光符陣!」
 シェルミアが密集している小型歪虚の群れに対して符術を放った。
 輝く結界に焼かれた所で、菊理の魔法が追撃となり、小型狂気は撃墜されていく。
「特殊な攻撃はしてこないか……いや……」
 狂気歪虚が電撃などの攻撃手段を持っているか警戒しつつ、菊理は警戒を怠らない。
 放ってくるのは負のマテリアルをレーザー状に撃っている程度だが、その程度の攻撃では人間共を倒す事が出来ないと感じたのだろうか。
 突如として小型歪虚の1体が急降下してきた。
「特攻か! だが、その程度!」
 籃奈が急降下突撃を受け流した。
 至近弾となって湖面に激突した小型狂気は大爆発を起こす。
「な、に!?」
「籃奈さん!」
 シェルミアはフォトンバインダーを展開すると、急いで符を放った。
 スキルアシストで強化された符術が、湖面に転んだ籃奈を追撃するように迫る小型歪虚を撃破していく。
「掴まるんだ」
 その隙に菊理がカバーに入って、籃奈へと手を伸ばした。
 手に掴まって湖面から引きあがると、『試作品』を再起動して、姿勢を立て直す。
「ありがとう、助かったよ」
「やはり、一筋縄ではいかないようだ」
 自身のマテリアルを籃奈へと流し込んで防御力を強化させながら、菊理は冷静に言う。
 警戒していなかれば、危なかっただろう。
「どうやら、味をしめちゃったみたいだよ」
 やれやれと言った雰囲気のシェルミア。
 小型狂気は特攻による攻撃が有効だと思ったようだ。
 高い場所から急降下による体当たり。避けられたとしても、湖面を揺らせれば体勢を崩せると。
「ならば、範囲内に入れなければいいだけだ」
 籃奈がライフルを投げ捨てると、両手に装着している盾のようなものを掲げた。
 次々に急降下してくる小型狂気に対し、菊理とシェルミアが魔法を放って迎撃する。
 直後、籃奈を中心として不可思議な力場が出現した。
「ディヴァインウィル……に、似ているのか」
「そうみたいね」
 発生した力場に激突して弾かれる小型歪虚を見つめながら、菊理が呟き、シェルミアが同意した。
 覚醒者のスキルに似た能力を扱う事が出来るようだが、装備している盾の力なのかもしれない。
 一先ず、これで敵の特攻に対処する方法が出来た。力場が発生している間に、菊理とシェルミアが魔法で小型狂気を叩き落せばいいだけだ。


「なるほど。次元斬で船底を狙うという事か。それは妙案だよ、マーゴット君」
 牡丹が感心した様子で言った。
 もう勝った気分のようにも見える。
「通じるかどうか……確証はないけど……」
 一方、当のマーゴットは自信は無いようだ。元が遊覧船だったとはいえ、狂気に侵されているのだ。
 沈んで終わるという常識が通用するとは限らない。
「いや、通じると思うよ。だからこそ、浮かんでいるのだろうからな」
 イレーヌが遊覧船を指さす。
 打ち捨てられていた船がまともに浮いていられるはずがない。
 湖面に浮かんでいるという事は、何かしらの理由があって浮いているのだろう。
「それなら、また敵の目を引き付けようかな」
 アイビスが拳を握った。
 次元斬で船底を狙うには距離を詰めなければいけない。それよりも接近して囮になるつもりなのだ。
 もっとも、殴る為にはどの道、接敵する必要があるのだが。
「ボクも前に出るよ」
「陸の次は、海でもなんて、ね」
 牡丹の宣言にアイビスはそう言い残して、一気に前へと躍り出る。
 鎌倉でも似たような事を牡丹と行った為だ。
 湖面の上を駆けるように滑り進むアイビスに向かって、遊覧船に取り付いている目玉からレーザーが薙ぎ払われた。
 跳躍して一回転すると、着水。それ以上の接近を防ぐかのように、負のマテリアルの弾幕が形成された。
 前後左右に高さも合わせて、悉く、避けるアイビス。
「良い動きだね」
 牡丹が思わず関心した。
 受けると反動でバランスを崩しかねない。それを避ける為に、アイビスは湖面の上で踊っているように駆けている。
「水上の攻撃ってなかなか難しいけど、感覚を掴むまでの辛抱かな、これは」
 それでもまだ、本気では無いといった所か。
 スピードを上げて歪虚を翻弄する。
「回復の準備はいつでも出来ているからね」
 アイビスと牡丹に攻撃が集中するが、後方でイレーヌが控えている以上、多少のダメージは大した事ではない。
 牡丹はアイビスのような華麗さは無いが、囮の役目を果たすには十分だろう。むしろ、アイビスとの共闘を楽しんでいる様子にも見える。
「予想外の行動を取られる可能性もあるからな……注意しろよ」
「分かってるって!」
 即答する牡丹。あれは絶対に分かっていない。
 次の瞬間だった。歪虚が不可思議な行動を取った。
「船体を持ち上げた? いや、反動で船首を挙げたのか」
 警戒していたイレーヌの言葉通り、歪虚は遊覧船をわざと揺らしたのだ。
 スワンの首がもげるのでは無いかという程の衝撃を湖面に叩き付けた。
 発生する巨大な波が牡丹とアイビスに襲い掛かる。
「うわぁっと!?」
 バランスを崩して湖面に転がる牡丹。
 そこへ負のマテリアルのレーザーが放たれた……が、レーザーの行く手を光り輝く防御壁が塞ぐ。
 衝撃音と共に燐光を残しながら消滅する壁は、イレーヌが創り出したものだ。
「助かったよ、イレーヌ君。ありがとう!」
「注意しろといったのに……」
 イレーヌは苦笑を浮かべた。
 もっとも、牡丹であれば、あの程度の攻撃、何という事ないかもしれないが。
 一方のアイビスはバランスを崩す事なく、大波に乗っていた。
「普段と違った戦闘だし、無理は禁物よね」
 弧を描きながら最接近すると、勢いそのままに船体を殴る。
 その強烈な衝撃にアイビスへと攻撃が集中する間、マーゴットが絶好の位置へと辿り着く。
「ここなら……」
 構えた刀にマテリアルを集中させる。
 マーゴットの存在に気が付いた目玉の幾つかからレーザーが放たれるが、それらを無視。
「ッ!!」
 不可思議なマテリアルの刃が、船体の中を切り裂いた。
 直接の視認は出来ないが、何かしらのダメージは与えたのは確実だろう。
 突如、遊覧船歪虚がガクンと揺れたが、まだ動きを止める気配はない。
「止めれる? ううん、止めてみせる。一撃でダメなら、何度でも叩き込めばいい……」
 再び意識を集中させるマーゴット。
 空間を切り裂く無数の刃が容赦なく遊覧船歪虚を刻んでいく。
「歪虚の動きが緩慢になってきたな」
 仲間を魔法で支援しつつ、イレーヌが言った。
 無理矢理、湖面に浮き上がろうと足掻いているようにも見える。奇怪な音の響きが、まるで、悲鳴にも苦痛にも聞こえた。
「……そう……分かった……」
 遊覧船はきっと沈みたいのだろう。役目を終えたはずなのに、歪虚によって無理矢理、使われているのだとしたら。
 だったら、彼女に出来る事は一つだ。
「水底に帰って……」
 鎮魂の想いを乗せた刃を立て続けに放つマーゴット。
 金属が断ち切れていく重い音を響かせながら、遊覧船は傾いていく。
 完全に足を止めた歪虚に全員が一斉に攻撃を重ね、歪虚は消滅していった。そして、残った船体は静かに――安らかに沈んでいったのだった。


 戦い終わってみれば、作戦前の穏やかな湖面だ。
 誰もが水飛沫で全身が濡れている状態ではあり、イレーヌが杖をくるくると回しながら全員に言う。
「風呂でも入ってサッパリするか」
 この一帯はかつては保養地でもあったので、温泉があるかもしれない。
「それはいいかも。全員、女性だし、みんなで入れるだろうから」
 アイビスが頷きながら答える。
 もっとも、イレーヌはスキンシップという名のセクハラを楽しもうという魂胆もあるのだが。
「私は……」
 申し訳なさそうに何かを言おうとしたマーゴットを牡丹が背後から抱き着いた。
「ほら、今回の立役者なんだから、遠慮しない。遠慮しない」
「それじゃ、決定だな」
 妙に嬉しそうにイレーヌが言う。
 ちなみに、強制帰還でお風呂に入れなかったというオチが、この後、待っているのだが。

 一方、菊理は籃奈に『試作品』の良い点や悪い点を纏めて報告していた。
 この依頼の大事な所である為だ。
「……という事で、耐久性と波の影響を、やはり、小さく出来ればと思う」
「もう少し改良の余地がありそうだね」
 覚醒者からの意見は貴重だ。何故なら、現状は覚醒者であるハンター達の方が強化人間よりも様々な能力が上回っていると聞く。
 という事は、覚醒者にとって十分なレベルに達すれば、強化人間が扱う分には、ほぼ問題ないだろう。
「おかげで研究所に戻ったら、残業続きかな」
「忙しいのだな」
 それが研究員というものなのだろう。
 強化人間はリアルブルーで大切な戦力というのもある。
「また子供に呆れられてしまうな」
「星加さん、お子さんが居るんだね。早く、帰れると良いけど」
 シェルミアの心配に星加が空を見上げて答えた。
「最近は妙に大人になっちゃってね。ごめんねって思うんだけど」
「私も家族に軍人が居るから、星加さんの事もなんとなく他人事に思えないんだ」
「程々に頑張るさ」
 星加は優し気な笑顔を浮かべた。

 牡丹に抱き着かれたままのマーゴットは星加達の会話を聞いていた。
 盗み聞きしていた訳ではなく、普通に耳に入ってきてはいたのだが、マーゴットは呟く。
「親子か……」
「いやだな~。マーゴット君。ボクはお母さんというような年齢じゃないよ~」
 勘違いした牡丹がギュっと締めてきたのであった。


 廃病院付近の湖に出現した遊覧船歪虚をハンター達は牡丹や強化人間の星加と共に討伐。
 また、星加が作った『試作品』の実戦テストも充分な成果が得られたのであった。


 おしまい。

依頼結果

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MVP一覧

  • 黒髪の機導師
    白山 菊理ka4305
  • 元凶の白い悪魔
    マーゴットka5022

重体一覧

参加者一覧

  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 黒髪の機導師
    白山 菊理(ka4305
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • 元凶の白い悪魔
    マーゴット(ka5022
    人間(蒼)|18才|女性|舞刀士
  • 符術剣士
    シェルミア・クリスティア(ka5955
    人間(蒼)|18才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/10/16 11:06:39
アイコン 相談卓
イレーヌ(ka1372
ドワーフ|10才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/10/22 18:16:07
アイコン 質問卓
イレーヌ(ka1372
ドワーフ|10才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/10/19 00:08:12