ゲスト
(ka0000)
実りの秋に出くわすは、腹ペコな狼か?
マスター:一要・香織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/24 22:00
- 完成日
- 2017/10/30 22:08
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
山間にあるのどかな村は、今まさに収穫の時期を迎えていた。
果樹園には熟れた果実がなり、畑では茶色く枯れ始めた芋の蔓が収穫の合図を送っている。
日差しが降り注ぎまだ暑さの残る中、人々は額に汗を浮かべながら、収穫の喜びを噛みしめ体を動かした。
「今日は大収穫だな」
男は作物の入った籠を担ぎ、傾き始めた日の光を浴びながらにっこりと笑った。
「ああ、これで今年の冬は心配ない」
冬になれば、山間の村は雪の中に閉ざされる。だからこの時期は冬を越すまでの穀物を収穫し蓄えを作らなくてはならない。
今年は気候も良く豊作となった。
「おーーーい。そろそろ帰るぞ」
畑で作業をしていた者たちに、若い男が声をかけた。皆はそれぞれ鍬や鋤、作物の入った籠を抱え笑顔を交わしながら家路についた。
赤く色付く木々は夕日を受けて更に赤く燃え上がり、男たちの目を楽しませる。
『ワオーーーーン』
麓の方から、鋭い遠吠えが聞こえ男たちは立ち止った。
「なんだ? 狼か?」
「この辺に狼なんて居なかっただろ?」
男たちは顔を見合わせ眉を寄せる。
すると、再び……
『ワオーーン』
返事をするように遠吠えが響いた。
だが、それはひとつではなく……
『ワオーーーン・ワオーーーン・ワオーーン』
ひとつ、またひとつと、いくつもの声が重なり、徐々に男たちに近づいているようだった。
「急ごう」
男たちが荷物を担ぎ直し農道を踏みしめると、背後からガサガサッという音が鳴る。
皆がいっせいに振り返ると茂みの中から狼の型をした雑魔が現れた。
狼の雑魔は目を血の様に赤く光らせ、後尾にいた男を鋭く見据えると身を屈め、唸り声を上げながら飛びかかった。
「うわぁ!」
悲鳴を上げ倒れこんだ男の胸を鋭い爪が引き裂き、次いで腕に噛みつき肉を引きちぎろうと頭を振る。
「助けてくれーー!」
男が助けを求めると一緒にいた村の男たちは我に返り、肩に担いだ鍬を握ると狼目掛け振りおろした。
それは偶然にも狼に当たり、後ろ足に小さな傷を負った狼は牙を離して飛び退ると、再び姿勢を低くしギラリと目を光らせる。
襲われた男が助けられて立ち上がるのと同時に、ガサガサッという音がいくつも、狼の後ろから聞こえ始めた。
草が揺れるその光景を見た男たちは一瞬にして青ざめ、ゴクリと息を呑んだ。
「は……走れ! 村へ急げ!」
ひとつやふたつではない。
その数は10を超えるのではないか。
そんなに大勢の狼がのどかな村を……襲った。
村を襲った狼は11匹の群れであった。
何人も怪我を負って、このままでは畑や果樹園にも行くことが出来ない。
収穫ができなければ冬に食べる物が無くなり、生きていくことが出来なくなる。
「俺たちが持ってる武器と言えば、これくらいだしな……」
「たとえ武器があったって、俺たちみたいな農民じゃ倒せない……」
男たちは悔しげに唇を噛み締めた。
村長の家に集まった男たちは、髭を蓄えた老爺を見据える。
「ハンターに退治を頼んでください」
「お願いします」
そう言い募る男たちを見回し、年老いた男は静かに頷いた。
果樹園には熟れた果実がなり、畑では茶色く枯れ始めた芋の蔓が収穫の合図を送っている。
日差しが降り注ぎまだ暑さの残る中、人々は額に汗を浮かべながら、収穫の喜びを噛みしめ体を動かした。
「今日は大収穫だな」
男は作物の入った籠を担ぎ、傾き始めた日の光を浴びながらにっこりと笑った。
「ああ、これで今年の冬は心配ない」
冬になれば、山間の村は雪の中に閉ざされる。だからこの時期は冬を越すまでの穀物を収穫し蓄えを作らなくてはならない。
今年は気候も良く豊作となった。
「おーーーい。そろそろ帰るぞ」
畑で作業をしていた者たちに、若い男が声をかけた。皆はそれぞれ鍬や鋤、作物の入った籠を抱え笑顔を交わしながら家路についた。
赤く色付く木々は夕日を受けて更に赤く燃え上がり、男たちの目を楽しませる。
『ワオーーーーン』
麓の方から、鋭い遠吠えが聞こえ男たちは立ち止った。
「なんだ? 狼か?」
「この辺に狼なんて居なかっただろ?」
男たちは顔を見合わせ眉を寄せる。
すると、再び……
『ワオーーン』
返事をするように遠吠えが響いた。
だが、それはひとつではなく……
『ワオーーーン・ワオーーーン・ワオーーン』
ひとつ、またひとつと、いくつもの声が重なり、徐々に男たちに近づいているようだった。
「急ごう」
男たちが荷物を担ぎ直し農道を踏みしめると、背後からガサガサッという音が鳴る。
皆がいっせいに振り返ると茂みの中から狼の型をした雑魔が現れた。
狼の雑魔は目を血の様に赤く光らせ、後尾にいた男を鋭く見据えると身を屈め、唸り声を上げながら飛びかかった。
「うわぁ!」
悲鳴を上げ倒れこんだ男の胸を鋭い爪が引き裂き、次いで腕に噛みつき肉を引きちぎろうと頭を振る。
「助けてくれーー!」
男が助けを求めると一緒にいた村の男たちは我に返り、肩に担いだ鍬を握ると狼目掛け振りおろした。
それは偶然にも狼に当たり、後ろ足に小さな傷を負った狼は牙を離して飛び退ると、再び姿勢を低くしギラリと目を光らせる。
襲われた男が助けられて立ち上がるのと同時に、ガサガサッという音がいくつも、狼の後ろから聞こえ始めた。
草が揺れるその光景を見た男たちは一瞬にして青ざめ、ゴクリと息を呑んだ。
「は……走れ! 村へ急げ!」
ひとつやふたつではない。
その数は10を超えるのではないか。
そんなに大勢の狼がのどかな村を……襲った。
村を襲った狼は11匹の群れであった。
何人も怪我を負って、このままでは畑や果樹園にも行くことが出来ない。
収穫ができなければ冬に食べる物が無くなり、生きていくことが出来なくなる。
「俺たちが持ってる武器と言えば、これくらいだしな……」
「たとえ武器があったって、俺たちみたいな農民じゃ倒せない……」
男たちは悔しげに唇を噛み締めた。
村長の家に集まった男たちは、髭を蓄えた老爺を見据える。
「ハンターに退治を頼んでください」
「お願いします」
そう言い募る男たちを見回し、年老いた男は静かに頷いた。
リプレイ本文
山間を走り抜ける風は、甘い果実の香りを纏いハンターの元に届いた。
依頼を受けて村の近くまで来たハンター達はその空気を胸に吸い込み、ホッと息を吐く。
「収穫の時期に襲ってくるなんざ迷惑な連中だな」
甘い匂いを辿るように果樹園に目を向けたジャック・エルギン(ka1522)は腹立たしげに呟いた。果樹園には熟れすぎた果実が収穫されないまま、いくつか地面に落ちてしまっている。
「……今は冬を越す為の大切な時期なのに……」
それに同調するようにファリス(ka2853)も眉を下げた。
「村の人が安心できるように皆で頑張ろうね!」
リューリ・ハルマ(ka0502)が気合を入れるように大きな声を出すと、ハンター達は顔を見合わせ頷いた。
「やあやあ、よく来て下さった」
皺の刻まれた顔に安堵を浮かべハンター達を歓迎した老爺は「村長のコギトです」と挨拶をすると早速状況を話し始めた。
「皆不安でな……畑仕事に出たがらんのですよ」
「そうだよな……」
話を聞きながらステラ・レッドキャップ(ka5434)が頷くと、女の子だと思っていたのか、村長は驚いたように目を見張った。
「戦場になっても大丈夫な開けた場所はありますか?」
ミオレスカ(ka3496)が尋ねると、村長はそうですなぁ、と漏らしながら考え始めた。
ハンター達が村長を見据えていると、その視線に気付いたのか少し緊張した様に口を開く。
「畑の隣に収穫が終わった麦畑があります。少し足場が悪いですが、そこでしたら周りを気にせず戦えるかと……」
「そうか、助かる」
ジャックの明るい声に村長は小さく頷いた。
「戦いが始まる前に、村人は一か所に集まって避難していてもらいたいのだが、出来るだろうか?」
黒髪を揺らしながら村長に一歩近づいた鞍馬 真(ka5819)がお願いすると、
「はい……わかりました」
と、村長は静かに答えた。
すぐにハンター達が来たことが村中に伝えられ、人々は避難のために村一番の大きな家である村長の家に集まりだした。
村長の家に向かう際、ハンターの手を握り激励する者、応援する者が大勢いた。
「必ず守る。だから安心して待っていてほしい」
真の真摯な声に頭を下げ家の中へと入っていく。
村人の誘導を、真、ファリス、ミオレスカに任せ、リューリ、ジャック、ステラは村の中、そして畑などの村の周りを探索し始めた。
「村の周りの道は結構広いね」
「戦闘には向かないが移動の際には使えそうだ」
リューリの言葉にステラが相槌を打つと、ジャックは道の先に視線を移す。
「この先に麦畑があるんだな」
3人の視線が道の先の空き地に向けられた。
秋の日の入りはなかなかに早い。
太陽が傾き始めたかと思えば、それは敵の襲来を予感させる。
村の外れに佇んだリューリが耳を澄ませ超聴覚で敵の場所を探った。
「―――あれ? 北と南……両方から音が聞こえる」
リューリが眉を寄せると、ハンター達は目配せし合った。
「二手に分かれて挟み込むつもりか?」
ステラが呟けば、
「生きていた頃の習性か、狩りに慣れてやがる」
ジャックが不敵に口の端を持ち上げた。
「じゃあ、私達も二手に分かれて、麦畑に誘い込むの!」
白銀の髪を風になびかせながらファリスが力強く手を握るのを合図に、北と南、ハンター達は二手に分かれて走り出した。
ジャックの腰に下がったトランシーバーから、リューリの声が聞こえてくる。
『そっち、敵が少し移動してるよ』
「わかったの」
リューリからの連絡にファリスが短く答えると、ミオレスカが辺りを窺った。
接触前の緊張感がゾワゾワと背筋を這う。
この感覚が昂揚感へと変わり、息を潜めた3人はそれぞれの手の中の武器を握りなおした。
『シャッシャッ』爪が地面を掻く音だろうか……、その音はいくつも重なり近づき始めた。
林の暗がりから赤い瞳をギラギラさせた狼たちが姿を現す。
ジャック、ミオレスカ、ファリスは目配せをすると狼の前に飛び出した。
ジャックが踏込で前に出たのと同時に、狼たちも姿勢を低くし唸り声を上げながら威嚇を始める。
全ての狼が細い道の真ん中に姿を現した事を確認したミオレスカとファリスは、先に走り出し、
「おらよっ! ワン公ども、追ってきやがれ!」
薙ぎ払いの一閃をお見舞いし、狼の敵意を自身に向けさせたジャックは口元に笑みを浮かべながら続いて狼の前から走り出した。
「ガルルル……」
唸りを上げながら走り近づく狼たちに、先を行くファリスが向き直る。
「……紫なる重き光りよ。敵を押し潰せ!」
普段のおっとりした声色とはまた違う凛とした声でグラビティフォールを唱えると、キラキラと紫に光る波動が収縮し目に見えぬ重力の一撃が襲った。
「こっちは移動を開始したよ」
ミオレスカがトランシーバーに向かって話すと、
『了解だ』
真の淡々とした声が返ってくる。
再び走り出したハンター達を、重力の拘束から逃れた狼たちが追い駆ける。
村の脇を駆け抜け、畑の脇を通り抜け、作戦通り麦畑へと狼たちを誘き寄せた。
村の南へと駆け付けたリューリ・ステラ・真は四方へと視線を送る。
「まだ敵影は見えないな」
ステラの落ち着いた声に頷き、リューリは再び超聴覚を使う。
「――んー、あれ? 向こうも動いてるね」
二手に分かれたもう一方に連絡を入れ、再度耳を澄ますと複数の足音は畑の向こうから聞こえてきた。
すぐさま行動に移った3人は畑の脇を足速に駆けた。
「畑に入る前に、こちらに意識を向けさせよう」
真が小声で呟くと同時に、畑の縁に狼が姿を現した……その数は、1、2、3、4、5、6……。
1匹が窺う様に地面の匂いを嗅ぎ、畑に足を踏み入れようとした刹那、ステラのヴァールハイトが爆発音を響かせた。
繰り出された弾丸は変則的な弾道を描きながら狼たちを貫いていく。
「ギャンッ」
悲鳴のような声を上げながら狼は地面へと伏せ、動かなくなるとボロボロと崩れだし四散した。
仲間が撃たれた事に腹を立てたのか、残りの狼は一度低く体を沈めると一瞬にして跳躍した。
それを煽るようにハンターたちは畑の外を走り麦畑へと移動し始める。
少し走ると、
『……こっちは移動を始めたよ……』
オープンにしてあるトランシーバーからミオレスカの声が流れてきた。
「了解だ」
真が淡々と答えると、リューリは後ろを振り返り狼たちが追ってきているのを確認する。
すると先頭を走っていた狼が大きく踏込み飛びかかってきた。
リューリは『ダンッ』と地面を蹴り一瞬にして踵を返すと、飛び込んでくる狼目掛け、ワイルドラッシュで迎撃した。
その衝撃に狼は一度ビクリと体を揺らし地面に叩き付けられると同時に、粉々に散っていく。
それを見届けることもなく、リューリは先を走るステラと真の背を追った。
複数の足音は規則的に背後から響いてくる。
狭い農道を一気に走り抜けるとパッと視界が開け、金色の麦穂が刈り取られ茎だけが残る畑に躍り出た。
ステラ・真・リューリとほぼ同時に、別の道からミオレスカ・ファリス・ジャックが畑に辿り着いた。
もちろんその後には狼が。こちらは1、2、3、4……4匹だ。
「タイミング、バッチリだね」
リューリが横に並ぶとミオレスカは、
「本当ですね」
と笑みを浮かべ狼に向き直った。
「ガルルル……」
血走った様な赤い狼の瞳が、夕日を受け更にギラリと光る。
頭ひとつ前に出ていた2匹の狼が狙いを定めるように姿勢を低くしたかと思うと、大口を開けてジャックの間合いに飛び込んできた。
飛び掛かってきた1匹の狼に向けステラが高加速射撃で弾丸を放つと、それは体深くに潜り込んだ。着弾した瞬間に体が仰け反り、ジャックに届く前に狼は地面に落ちる。
ジャックを掠めて着地したもう1匹が再び大きな口を開けると、そこにジャックの盾が滑り込んだ。牙を幾つか折って口が裂けそうな程突っ込まれた盾に狼が喰らいつく。
「おらぁ!!」
ニヤリと笑ったジャックがそのまま盾を振り回すと、噛みついたままの狼も一緒に風を切る。
遠心力で牙が盾から離れた瞬間、飛んで来る狼に対し、真は待ち構えたように剣を振り抜いた。
「シャープシューティング」
ミオレスカが声を張り上げると、目の前の狼は飛び掛かろうとした態勢のまま、足が地面に縫い付けられたかのように動けなくなった。
その隙を逃さず一歩後ろに控えたファリスは素早くウインドスラッシュの呪文を唱える。
「……疾風よ。敵を切り裂け!」
途端、鋭利な刃物となった疾風が幾重にも狼を襲い、赤い飛沫の花を咲かせた。
疾風を飛びのいてかわした狼を見逃すことなく、リューリは一気に踏み込んで狼の腹を蹴り上げた。赤い液体を吐き出しながら吹っ飛んだ狼に真が剣を振り下ろす。
体にいくつもの傷を負いよろよろと立ち上がる3匹の狼が、一歩、また一歩と後退し始めた。
「へえ、少しは分かってるんだな。力の差ってやつを……」
ステラが銃を掲げながら鋭く狼を睨み付ける。
「1匹も逃しませんよ」
ミオレスカが呟きハンター達は狼を囲うように広がった。
「グルルル……」
狼は腹の底から響かせるような唸り声を上げたかと思うと、パッと尻尾を向け逃げだした。
「あっ!!」
ファリスが小さく叫んだ刹那、リューリのファントムハンドが2匹の狼を拘束した。
同時にステラの超加速射撃が拘束を免れた1匹の狼を貫き、ファリスが叫んだ瞬間に走り出していたジャックと真は狼に狙いを定めた。
ジャックは飛び込みながら剣を突き立て、真はすれ違い様、疾風剣を放ち、貫き斬った。
2人の剣を赤く染めた雫は滴り落ちる前に塵となり、風に攫われていった。
「生き残りが居たら大変なの。だからきちんと調べておくの」
戦闘を終え、息をついたハンター達は探索をしながら村へと帰った。
さわさわと木々の間を通り抜ける風はひんやりとしていて、走り回って火照ったハンターを心地よく涼やかにしてくれる。
「なんだかんだ、結構走ったな」
意外にも楽しかったと言いたげにジャック呟くと、
「スポーツの秋と言うしな」
同調するようにステラが言った。
「食欲の秋とも言うよね~!」
リューリが口を開いた途端、
「ぐぅ~~!」
お腹の音が響いた。
「……えへへ、お腹空いたね」
ぺろりと赤い舌を出しておどけたリューリに皆は微笑んだ。
村長の家のドアを叩くと心配そうに老爺は顔を覗かせた。
「討伐は完了した」
優しい笑顔を浮かべて真が言うと、村長の顔はみるみる笑顔を取り戻した。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
村長は嬉しそうに何度も頭を下げた。
それは家の中に避難していた村人たちにも伝わり、歓喜の声が家の奥から響きだした。
ぞろぞろと扉の近くに集まりだした村人に、ミオレスカは籠を差し出した。
「途中で拾ってきたんだけど、ちょっと傷付いちゃってて……すぐに食べれば大丈夫でしょ?」
籠の中にはいつぞや狼に荒らされて少し傷が付いた野菜や穀物が……。
それを手渡した途端、
「ぐぅ~!」
再びリューリの空腹の合図がなった。
それを見ていた村の女たちは嬉しそうに顔を見合わせ、いそいそと家から出て行く。
「狼討伐は終わったが、遅れた分の収穫とか男手が必要なら手を貸すぜ?」
赤い頭巾をふわりとなびかせながらステラが言うと男たちはびっくりした様に目を見開いたが、口元に大きな笑みを浮かべて、頼むよと応えた。
「手伝おう」
「俺も、豊作の様子を見学させてもらうぜ」
真とジャックも男たちと共に畑へと向かった。
ミオレスカ、ファリス、リューリは村長の奥さんにお茶を振る舞われたが、
「何かお手伝いできることありませんか?」
と申し出た。
「そう? じゃあお願いしようかしら」
奥さんは手際よく台の上に白い粉を撒くとそこにパン生地を置き、
「捏ねてもらえるかしら」
とお願いした。
3人は白いもちもちとした生地に手を伸ばし瞬きする。
「うわぁーー、ふかふか」
「きもちいい」
ミオレスカとリューリが楽しげに声を出す隣でファリスは、
「わぁ! ふわふわ! イリーナみたい!!」
と頬をピンクに染め歓声を上げていた。
夕日が落ち辺りが薄暗くなる頃収穫を終えた男たちが戻ってきた。
並んだ籠には零れ落ちるほどの野菜や果物、穀物が入っていた。
「農業も楽しいもんだな」
普段できない体験を十分に楽しんだステラは額の汗をぬぐった。
「さあさあ、どうぞ入って下さい」
十分すぎる手伝いに感謝し、村長はハンター達を家に招く。
扉を潜ったその瞬間、何とも香ばしい良い匂いが鼻をくすぐった。
「お帰りなさい! お疲れ様」
奥さんの笑顔に迎えられた男たちの目に飛び込んだのは、食卓に並べられた数々の料理。
「たくさん召し上がってくださいね」
村長夫婦のその言葉に、皆の口元が綻びる。
秋の実りに感謝し、収穫の喜びに感謝し、狼を退治してくれたハンターに感謝し、今日という日に感謝する小さな宴が始まった。
村中の家々から運び込まれる田舎料理は絶品で、ホカホカと湯気が上るスープに焼きたてのパン、取れたての野菜を使った煮込みなど舌ばかりでなく目も楽しませるそれらは、ハンター達の胃袋へと次々に納められていく。
やがて日が暮れ外は静けさに包まれた頃、宴はひっそりとお開きとなった。
村長と奥さんは食卓の上を見て目を見開いた。
あんなにたくさんの料理が乗っていた皿はどれも空っぽだ。
村人の感謝の気持ちを、ハンター達は残らず受け取ってくれたようだ。
「なかなかに、気持ちの良い連中じゃったの」
「そうですね」
村長と奥さんは顔を見合わせた後、再び食卓に目を戻し嬉しそうに微笑んだ。
依頼を受けて村の近くまで来たハンター達はその空気を胸に吸い込み、ホッと息を吐く。
「収穫の時期に襲ってくるなんざ迷惑な連中だな」
甘い匂いを辿るように果樹園に目を向けたジャック・エルギン(ka1522)は腹立たしげに呟いた。果樹園には熟れすぎた果実が収穫されないまま、いくつか地面に落ちてしまっている。
「……今は冬を越す為の大切な時期なのに……」
それに同調するようにファリス(ka2853)も眉を下げた。
「村の人が安心できるように皆で頑張ろうね!」
リューリ・ハルマ(ka0502)が気合を入れるように大きな声を出すと、ハンター達は顔を見合わせ頷いた。
「やあやあ、よく来て下さった」
皺の刻まれた顔に安堵を浮かべハンター達を歓迎した老爺は「村長のコギトです」と挨拶をすると早速状況を話し始めた。
「皆不安でな……畑仕事に出たがらんのですよ」
「そうだよな……」
話を聞きながらステラ・レッドキャップ(ka5434)が頷くと、女の子だと思っていたのか、村長は驚いたように目を見張った。
「戦場になっても大丈夫な開けた場所はありますか?」
ミオレスカ(ka3496)が尋ねると、村長はそうですなぁ、と漏らしながら考え始めた。
ハンター達が村長を見据えていると、その視線に気付いたのか少し緊張した様に口を開く。
「畑の隣に収穫が終わった麦畑があります。少し足場が悪いですが、そこでしたら周りを気にせず戦えるかと……」
「そうか、助かる」
ジャックの明るい声に村長は小さく頷いた。
「戦いが始まる前に、村人は一か所に集まって避難していてもらいたいのだが、出来るだろうか?」
黒髪を揺らしながら村長に一歩近づいた鞍馬 真(ka5819)がお願いすると、
「はい……わかりました」
と、村長は静かに答えた。
すぐにハンター達が来たことが村中に伝えられ、人々は避難のために村一番の大きな家である村長の家に集まりだした。
村長の家に向かう際、ハンターの手を握り激励する者、応援する者が大勢いた。
「必ず守る。だから安心して待っていてほしい」
真の真摯な声に頭を下げ家の中へと入っていく。
村人の誘導を、真、ファリス、ミオレスカに任せ、リューリ、ジャック、ステラは村の中、そして畑などの村の周りを探索し始めた。
「村の周りの道は結構広いね」
「戦闘には向かないが移動の際には使えそうだ」
リューリの言葉にステラが相槌を打つと、ジャックは道の先に視線を移す。
「この先に麦畑があるんだな」
3人の視線が道の先の空き地に向けられた。
秋の日の入りはなかなかに早い。
太陽が傾き始めたかと思えば、それは敵の襲来を予感させる。
村の外れに佇んだリューリが耳を澄ませ超聴覚で敵の場所を探った。
「―――あれ? 北と南……両方から音が聞こえる」
リューリが眉を寄せると、ハンター達は目配せし合った。
「二手に分かれて挟み込むつもりか?」
ステラが呟けば、
「生きていた頃の習性か、狩りに慣れてやがる」
ジャックが不敵に口の端を持ち上げた。
「じゃあ、私達も二手に分かれて、麦畑に誘い込むの!」
白銀の髪を風になびかせながらファリスが力強く手を握るのを合図に、北と南、ハンター達は二手に分かれて走り出した。
ジャックの腰に下がったトランシーバーから、リューリの声が聞こえてくる。
『そっち、敵が少し移動してるよ』
「わかったの」
リューリからの連絡にファリスが短く答えると、ミオレスカが辺りを窺った。
接触前の緊張感がゾワゾワと背筋を這う。
この感覚が昂揚感へと変わり、息を潜めた3人はそれぞれの手の中の武器を握りなおした。
『シャッシャッ』爪が地面を掻く音だろうか……、その音はいくつも重なり近づき始めた。
林の暗がりから赤い瞳をギラギラさせた狼たちが姿を現す。
ジャック、ミオレスカ、ファリスは目配せをすると狼の前に飛び出した。
ジャックが踏込で前に出たのと同時に、狼たちも姿勢を低くし唸り声を上げながら威嚇を始める。
全ての狼が細い道の真ん中に姿を現した事を確認したミオレスカとファリスは、先に走り出し、
「おらよっ! ワン公ども、追ってきやがれ!」
薙ぎ払いの一閃をお見舞いし、狼の敵意を自身に向けさせたジャックは口元に笑みを浮かべながら続いて狼の前から走り出した。
「ガルルル……」
唸りを上げながら走り近づく狼たちに、先を行くファリスが向き直る。
「……紫なる重き光りよ。敵を押し潰せ!」
普段のおっとりした声色とはまた違う凛とした声でグラビティフォールを唱えると、キラキラと紫に光る波動が収縮し目に見えぬ重力の一撃が襲った。
「こっちは移動を開始したよ」
ミオレスカがトランシーバーに向かって話すと、
『了解だ』
真の淡々とした声が返ってくる。
再び走り出したハンター達を、重力の拘束から逃れた狼たちが追い駆ける。
村の脇を駆け抜け、畑の脇を通り抜け、作戦通り麦畑へと狼たちを誘き寄せた。
村の南へと駆け付けたリューリ・ステラ・真は四方へと視線を送る。
「まだ敵影は見えないな」
ステラの落ち着いた声に頷き、リューリは再び超聴覚を使う。
「――んー、あれ? 向こうも動いてるね」
二手に分かれたもう一方に連絡を入れ、再度耳を澄ますと複数の足音は畑の向こうから聞こえてきた。
すぐさま行動に移った3人は畑の脇を足速に駆けた。
「畑に入る前に、こちらに意識を向けさせよう」
真が小声で呟くと同時に、畑の縁に狼が姿を現した……その数は、1、2、3、4、5、6……。
1匹が窺う様に地面の匂いを嗅ぎ、畑に足を踏み入れようとした刹那、ステラのヴァールハイトが爆発音を響かせた。
繰り出された弾丸は変則的な弾道を描きながら狼たちを貫いていく。
「ギャンッ」
悲鳴のような声を上げながら狼は地面へと伏せ、動かなくなるとボロボロと崩れだし四散した。
仲間が撃たれた事に腹を立てたのか、残りの狼は一度低く体を沈めると一瞬にして跳躍した。
それを煽るようにハンターたちは畑の外を走り麦畑へと移動し始める。
少し走ると、
『……こっちは移動を始めたよ……』
オープンにしてあるトランシーバーからミオレスカの声が流れてきた。
「了解だ」
真が淡々と答えると、リューリは後ろを振り返り狼たちが追ってきているのを確認する。
すると先頭を走っていた狼が大きく踏込み飛びかかってきた。
リューリは『ダンッ』と地面を蹴り一瞬にして踵を返すと、飛び込んでくる狼目掛け、ワイルドラッシュで迎撃した。
その衝撃に狼は一度ビクリと体を揺らし地面に叩き付けられると同時に、粉々に散っていく。
それを見届けることもなく、リューリは先を走るステラと真の背を追った。
複数の足音は規則的に背後から響いてくる。
狭い農道を一気に走り抜けるとパッと視界が開け、金色の麦穂が刈り取られ茎だけが残る畑に躍り出た。
ステラ・真・リューリとほぼ同時に、別の道からミオレスカ・ファリス・ジャックが畑に辿り着いた。
もちろんその後には狼が。こちらは1、2、3、4……4匹だ。
「タイミング、バッチリだね」
リューリが横に並ぶとミオレスカは、
「本当ですね」
と笑みを浮かべ狼に向き直った。
「ガルルル……」
血走った様な赤い狼の瞳が、夕日を受け更にギラリと光る。
頭ひとつ前に出ていた2匹の狼が狙いを定めるように姿勢を低くしたかと思うと、大口を開けてジャックの間合いに飛び込んできた。
飛び掛かってきた1匹の狼に向けステラが高加速射撃で弾丸を放つと、それは体深くに潜り込んだ。着弾した瞬間に体が仰け反り、ジャックに届く前に狼は地面に落ちる。
ジャックを掠めて着地したもう1匹が再び大きな口を開けると、そこにジャックの盾が滑り込んだ。牙を幾つか折って口が裂けそうな程突っ込まれた盾に狼が喰らいつく。
「おらぁ!!」
ニヤリと笑ったジャックがそのまま盾を振り回すと、噛みついたままの狼も一緒に風を切る。
遠心力で牙が盾から離れた瞬間、飛んで来る狼に対し、真は待ち構えたように剣を振り抜いた。
「シャープシューティング」
ミオレスカが声を張り上げると、目の前の狼は飛び掛かろうとした態勢のまま、足が地面に縫い付けられたかのように動けなくなった。
その隙を逃さず一歩後ろに控えたファリスは素早くウインドスラッシュの呪文を唱える。
「……疾風よ。敵を切り裂け!」
途端、鋭利な刃物となった疾風が幾重にも狼を襲い、赤い飛沫の花を咲かせた。
疾風を飛びのいてかわした狼を見逃すことなく、リューリは一気に踏み込んで狼の腹を蹴り上げた。赤い液体を吐き出しながら吹っ飛んだ狼に真が剣を振り下ろす。
体にいくつもの傷を負いよろよろと立ち上がる3匹の狼が、一歩、また一歩と後退し始めた。
「へえ、少しは分かってるんだな。力の差ってやつを……」
ステラが銃を掲げながら鋭く狼を睨み付ける。
「1匹も逃しませんよ」
ミオレスカが呟きハンター達は狼を囲うように広がった。
「グルルル……」
狼は腹の底から響かせるような唸り声を上げたかと思うと、パッと尻尾を向け逃げだした。
「あっ!!」
ファリスが小さく叫んだ刹那、リューリのファントムハンドが2匹の狼を拘束した。
同時にステラの超加速射撃が拘束を免れた1匹の狼を貫き、ファリスが叫んだ瞬間に走り出していたジャックと真は狼に狙いを定めた。
ジャックは飛び込みながら剣を突き立て、真はすれ違い様、疾風剣を放ち、貫き斬った。
2人の剣を赤く染めた雫は滴り落ちる前に塵となり、風に攫われていった。
「生き残りが居たら大変なの。だからきちんと調べておくの」
戦闘を終え、息をついたハンター達は探索をしながら村へと帰った。
さわさわと木々の間を通り抜ける風はひんやりとしていて、走り回って火照ったハンターを心地よく涼やかにしてくれる。
「なんだかんだ、結構走ったな」
意外にも楽しかったと言いたげにジャック呟くと、
「スポーツの秋と言うしな」
同調するようにステラが言った。
「食欲の秋とも言うよね~!」
リューリが口を開いた途端、
「ぐぅ~~!」
お腹の音が響いた。
「……えへへ、お腹空いたね」
ぺろりと赤い舌を出しておどけたリューリに皆は微笑んだ。
村長の家のドアを叩くと心配そうに老爺は顔を覗かせた。
「討伐は完了した」
優しい笑顔を浮かべて真が言うと、村長の顔はみるみる笑顔を取り戻した。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
村長は嬉しそうに何度も頭を下げた。
それは家の中に避難していた村人たちにも伝わり、歓喜の声が家の奥から響きだした。
ぞろぞろと扉の近くに集まりだした村人に、ミオレスカは籠を差し出した。
「途中で拾ってきたんだけど、ちょっと傷付いちゃってて……すぐに食べれば大丈夫でしょ?」
籠の中にはいつぞや狼に荒らされて少し傷が付いた野菜や穀物が……。
それを手渡した途端、
「ぐぅ~!」
再びリューリの空腹の合図がなった。
それを見ていた村の女たちは嬉しそうに顔を見合わせ、いそいそと家から出て行く。
「狼討伐は終わったが、遅れた分の収穫とか男手が必要なら手を貸すぜ?」
赤い頭巾をふわりとなびかせながらステラが言うと男たちはびっくりした様に目を見開いたが、口元に大きな笑みを浮かべて、頼むよと応えた。
「手伝おう」
「俺も、豊作の様子を見学させてもらうぜ」
真とジャックも男たちと共に畑へと向かった。
ミオレスカ、ファリス、リューリは村長の奥さんにお茶を振る舞われたが、
「何かお手伝いできることありませんか?」
と申し出た。
「そう? じゃあお願いしようかしら」
奥さんは手際よく台の上に白い粉を撒くとそこにパン生地を置き、
「捏ねてもらえるかしら」
とお願いした。
3人は白いもちもちとした生地に手を伸ばし瞬きする。
「うわぁーー、ふかふか」
「きもちいい」
ミオレスカとリューリが楽しげに声を出す隣でファリスは、
「わぁ! ふわふわ! イリーナみたい!!」
と頬をピンクに染め歓声を上げていた。
夕日が落ち辺りが薄暗くなる頃収穫を終えた男たちが戻ってきた。
並んだ籠には零れ落ちるほどの野菜や果物、穀物が入っていた。
「農業も楽しいもんだな」
普段できない体験を十分に楽しんだステラは額の汗をぬぐった。
「さあさあ、どうぞ入って下さい」
十分すぎる手伝いに感謝し、村長はハンター達を家に招く。
扉を潜ったその瞬間、何とも香ばしい良い匂いが鼻をくすぐった。
「お帰りなさい! お疲れ様」
奥さんの笑顔に迎えられた男たちの目に飛び込んだのは、食卓に並べられた数々の料理。
「たくさん召し上がってくださいね」
村長夫婦のその言葉に、皆の口元が綻びる。
秋の実りに感謝し、収穫の喜びに感謝し、狼を退治してくれたハンターに感謝し、今日という日に感謝する小さな宴が始まった。
村中の家々から運び込まれる田舎料理は絶品で、ホカホカと湯気が上るスープに焼きたてのパン、取れたての野菜を使った煮込みなど舌ばかりでなく目も楽しませるそれらは、ハンター達の胃袋へと次々に納められていく。
やがて日が暮れ外は静けさに包まれた頃、宴はひっそりとお開きとなった。
村長と奥さんは食卓の上を見て目を見開いた。
あんなにたくさんの料理が乗っていた皿はどれも空っぽだ。
村人の感謝の気持ちを、ハンター達は残らず受け取ってくれたようだ。
「なかなかに、気持ちの良い連中じゃったの」
「そうですね」
村長と奥さんは顔を見合わせた後、再び食卓に目を戻し嬉しそうに微笑んだ。
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相談卓 ファリス(ka2853) 人間(クリムゾンウェスト)|13才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/10/24 20:56:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/24 19:42:57 |