ダウンタウンの猫探し

マスター:STANZA

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/06/18 19:00
完成日
2014/06/26 08:40

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ここは港町ポルトワール。
 王国と帝国に繋がる海の玄関口として、そしてまた世界中から様々な交易品が集まる貿易港として有名な町だ。
 そしてまた、ここは南国風の明るい陽射しが降り注ぐ風光明媚な観光地としても知られていた。

 しかし、そんな明るいイメージのポルトワールには、裏の顔がある。
 それがダウンタウン、大手を振って表通りを歩けない人々が幅を利かせる様な、治安の悪い下町だ。
 古い煉瓦の建物がひしめき、日当たりも風通しも悪く、狭い小路が複雑に入り組んでいる上に、段差や階段があちこちにある、まるで迷路の様な町。
 後ろ暗いところがある者達が隠れ住むには絶交の場所だ。

 もっとも、その治安の悪さも近頃では大幅に改善していた。


「それも全部、ヴァネッサの姉貴のお陰さ!」
 ダウンタウンにしては比較的明るく風通しの良い、住宅街の一角。
 狭い路地の両側に建つ家の窓からは互いに物干しのロープが渡され、シーツやタオルから女性物の下着までが遠慮なく陳列された、その下。
 今は空き家となっている住宅の玄関先にたむろする、少年達の姿があった。
 その中でひときわ目立つ一人、ツンツン尖った濃い金色の髪をした少年が胸を張る。
「姉貴はスゴイんだぜ!」
 13歳という年齢の割には背が低く、また顔立ちも幼いが、何故か人を惹き付ける不思議な魅力を持つ少年。

 その名を、アルド・サンテという。

 ヴァネッサがダウンタウンの大人社会におけるリーダーなら、このアルドは子供社会のリーダーと言って良いだろう。
 ダウンタウンに住む子供達の殆どはアルドの顔を知っていたし、頼れるリーダーとして慕ってもいた。
「このダウンタウンも、ちょっと前まではオレら子供が一人じゃ歩けない様な、すげー怖い所だったんだ」
 アルドは今、この町に越してきたばかりの子供に、町の歴史やら現状やら、この町で上手くやっていく為のコツやら……とにかく必要と思われるあれこれを伝授している最中だった。
「でも今じゃ、昼間ならそれほど危なくない。もちろん、昼間でも危ない所は危ないけど、そういう場所に行かなきゃ大丈夫だ」
 目下、このダウンタウンの犯罪発生率は奇跡的とも言えるレベルにまで低下していた。
 もっとも、以前のそれが極端に高すぎただけ、とも言えるのだが。
 何しろ以前は「ダウンタウンに足を踏み入れたが最後、その半数は命を落とす」という噂まであった程だ。
 今では「荷物や財布は落とす(盗られる)が、命まで落とす事はそれほどないから安心しろ」と言われるまでに改善した。
 それもこれも、ヴァネッサが断行した改革のお陰だ。

 そしてアルドは、そんなヴァネッサを「理想のリーダー」として尊敬し、心酔していた。
 どれくらい心酔しているかと言えば、少しでも彼女の役に立ちたい、近付きたいという思いで、子供だけの自警団の様なものを組織してしまう程に。
 自警団と言っても、実際の仕事は子供同士の喧嘩の仲裁だったり、ご近所のお悩み解決だったりという、可愛らしいものではあるが。
 要するに、便利な何でも屋だ。

 しかし、そんな子供の遊びと言っても良い組織の活動を、ヴァネッサは認めてくれた。
 そればかりか「カナイオ・スイーパー(直訳:騒動の掃除屋)」という立派な名前まで付けてくれた。
 そこでますます、アルドは「姉貴はやっぱりスゲエ!」と感銘の度を深める事になるのだが——それはともかく。

 小さな揉め事なら、カナイオ・スイーパーにお任せを。
 それは既に、ダウンタウンの住民達の間に広く深く浸透していた。

 そして今日も——


「おおい、小僧っ子どもー!」
 路地の向こうで誰かが呼ぶ声がする。
「事件だ、行くぞ!」
 走り出す少年達。
 新入りの子供も付いて来る。
 まだよく事情を呑み込めないながらも、何か面白そうだと思ったのだろう。
 そんな軽いノリでも一緒に行動できるのが、カナイオ・スイーパーだ。

「おじさん、どうかした? 何か困った事があったら、オレらが解決するぜ!」
 胸を張ったアルドに、彼等を呼んだ男は今にも泣き出しそうな顔で言った。
「探してくれ! 大変だ、大変なんだ!」
「落ち着けって、大の大人がみっともねーぜ? ほら、順を追って話してみなよ、ちゃんと聞いてやるからさ」
 どちらが大人かわからないやりとりの末に判明した事は、次の通り。

 おじさんの飼い猫(7匹!)が、ちょっと目を離した隙に外に出てしまった。
 名前を呼んでも帰って来ないし、もう心配で心配で死にそうだ。
 猫達も皆、箱入りで外の世界など全く知らない。
 野良猫にいじめられたらどうしよう。
 いや、それどころかヴォイドに襲われたら……!

 という次第だ。
「確かに、ここんとこダウンタウンにもヴォイドが出たって話はよく聞くな」
 アルドが神妙な顔つきで頷く。
 彼自身はハンターとしての訓練も多少は受けている。
 だが、他の子供達はヴォイドに対抗する力など持っていなかった。
「確かにオレら、ダウンタウンの事なら隅から隅まで知ってるけど……」
 猫達が行きそうな場所も、大体は見当が付く。
 しかし、その中のいくつかには、ヴォイドが出るという噂があった。
「おじさん、懐に余裕はあるかい?」
 アルドに訊かれ、男は猛烈な勢いで頷いた。
「あの子達を助ける為なら、例え借金してでも!」
「わかった、じゃあハンターオフィスに行って来てくれ」

 これは自分達の手に負える仕事ではない、アルドはそう判断した。
 ハンターに頼んだ方が安全だ。
「道案内が必要ならオレらも協力するからって、そう伝えてくれよ」

リプレイ本文

「ふふ、ちょっと懐かしい感じですね」
 ダウンタウンに足を踏み入れた瞬間、牧 渉(ka0033)はそう言って目を細めた。
「建物の感じは違いますけど……空気、と言いますか」
「うん、場所は違えど空気は似てるね」
 その声に、見れば羽片イカル(ka0558)もふんふんと鼻を鳴らしている。
「僕も、こういう場所で育ったんだ。此処よりもずっと治安が悪い場所だったけどね」
 その割には暗さを感じさせない真っ直ぐな瞳を向け、イカルは微笑んだ。
「だから出来れば案内は無しで歩きたいかな」
 だが、歪虚が出るなら何人かで纏まって動いた方が安心だ。
 それに空気が似ているとは言っても此処は此処、案内がなければ捜索対象が増える危険もある。
「出るって噂の辺りは先に手を回していきます?」
 先に安全確保ができれば少しは落ち着いて探せるし、猫探しの途中で歪虚が出る度に仲間と合流するのはちょっと面倒だ。
 渉の問いかけに、ユラン・S・ユーレアイト(ka0675)が頷く。
「先に安全確保するのは、良いと思う。出来ればきっちり退治しちゃいたいかな……」
「うん、追い払ってもまた出てきて、人や猫に被害があると困ると思うしね」
 イカルが言った。
「じゃあ、猫が居てヴォイドが出そうな所を皆で一緒に廻って、もしその時に猫も見付かったら保護しつつ……って感じかな?」
 リアリュール(ka2003)が纏めてみる。
「わかった、喜んで協力するぜ!」
 ウィアズ(ka1187)が言った。
 邪魔者はさっさと片付けて、心置きなく猫をもふるのだ。
「猫は天使! もふもふは神!!」
 てか動物全般大好きです。
 でも多分、一番は肩に留まったカラスのスクワーザーだけど。
「安全になるまで、小さい子達には飼い主さんのお家で待ってて貰えば良いかな?」
「そうですね、そこを拠点にすれば連絡の中継点としても活用できそうですし」
 リアリュールの提案に、渉が答える。
 場所の特定と先導は、アルドに頼めば良いだろう。


「しっかし、猫7匹か。なんて羨ましい……」
 皆の後をついて歩きながら、七神蒼(ka2115)がぽつりと零す。
「いやまぁ、実家に居られた頃は全部合わせりゃそんくらいは居たけど」
 あの子達は今頃どうしているだろう。
「元気でいると良いけどな……っと、あれ?」
 皆どっちに――ああ、いたいた。
 危ない危ない、ちょっと目を離しただけで、あっという間に迷子になりそうだ。
 路地を右に折れて階段を上がり、途中で脇道に逸れて今度は下って左でまた上って……ここはどこー?
 わからないけど、ここで一句。

「道案内 なければ迷子の フラグ立つ」 byウィアズ

「そう言えば、アルドさんはぼくと同い年なんですね」
 はぐれない様に必死について歩きながら、シグリッド=リンドベリ(ka0248)は自分よりも小さな背中に声をかけた。
 なりは小さいけれど、態度は大きい……と言うか、自信に満ち溢れている感じがする。
 自分よりもしっかりしていて、頼りになりそうだ。
「へぇ、そっか」
 アルドは振り向き、ニッと笑う。
「だったらさ、敬語なんか使わなくて良いぜ?」
「えっ、でもアルドさんは先輩ですし……」
 言いかけたところで、アルドが足を止めた。
「この先だ」
 声を潜め、注意を促す。
 それに応えて、皆が戦闘態勢に入った。


 路地の奥、昼間でも薄暗い一角に、それは集まっていた。
 ユランが暗がりに目を懲らす。
「猫は……いないみたいだ」
 流石にこんな物騒な場所には近寄らないか。
「安全の為になるべく退治しておきたいですね」
 シグリッドは肩に乗っていた子猫のシェーラさんを、服の中に押し込めた。
 レザーアーマーの隙間に入っていれば安全だろう。
 戦いは余り得意ではないけれど、街の安全と猫達の為ならば。
 彼等の接近に気付いたネズミ型ヴォイドは、キィキィと耳障りな鳴き声を上げながら近付いて来た。
 ランアウトで素早く飛び出し、剣を一閃。
 ネズミの形をしていたものは、黒い霧となって消えた。
「ヴォイド風情が……引っ込んでいやがれ」
 ぐしゃ!
 ウィアズは足元を横切ろうとした一匹を、思いきり踏み潰す。
 鞭を振るったユランがネズミの身体を弾き飛ばし、宙に浮いた所に渉が投げたナイフが突き刺さった。
「逃げられると面倒ですし、全力でいきましょう」
 渉はネズミが逃げ込みそうな隙間を見付けると、その前に回り込んで逃げ道を塞ぐ。
 全員で総攻撃を仕掛けると、ネズミ達はあっという間にその数を減らした。
 が、もう少しで全てが片付くと思われた、その時。
「ゥギャァォーゥ!」
 ものすごく切羽詰まった猫の鳴き声が聞こえた。
「別の路地……こっちだ」
 アルドの後について、何人かがそちらに向かう。
 路地の奥に、身体をハリネズミの様に膨らませた猫がいた。
 逆立つ毛に埋もれ、ちらりと見えた黒い首輪。
「そいつは俺の獲物だ、手ぇ出すんじゃねえぞ!」
 ウィアズは今にも猫に飛び掛かろうとしていたネズミに向けて、素早く矢を放った。
 それは見事、ネズミに命中。
 しかし、その瞬間。
「ギャッ!」
 驚いた猫は一声叫ぶと、保護しようと慌てて駆け寄った蒼の腕から肩へ駆け上がり、頭を踏み台にしてジャンプ、塀の向こうに姿を消してしまった。
「いって……っ!」
「ああ、俺のもふもふが……」
 頭を押さえて蹲る蒼と、呆然と見送るウィアズ。
 おのれ歪虚――!


 そうして危険箇所を一通り巡った一行は、ひとまず依頼人の家に集まる事になった。
 そこで猫達の詳しい特徴を聞き、誘き寄せる為の餌やオモチャを預かって――
「やっぱり、さっきの猫はクロだったんだな」
 話を聞いて、ウィアズが悔しそうに拳を握る。
 だが、あの辺りにいる事はわかったのだ。
 安全も確保した事だし、後はスイーパー達の土地勘があれば大丈夫。
「頼りにしてます先輩方、道案内宜しくお願いしますね」
 シグリッドがぺこりと頭を下げる。

 ここから先は、各自で捜索だ。
 情報の取り纏め役としてアルドを依頼人宅に残し、ハンター達は子供達を相棒に街の各所へと散って行った。

「案内、頼りにさせて貰いますね」
 渉は少年と一緒に、見当を付けた辺りを探して歩く。
 塀の上や物陰、野良猫が集まっている場所…ついでに、出会った人々からも話を聞いていった。
 故郷で情報屋を営んでいただけあって、人から話を聞き出すのはお手の物だ。
「……ええ、ちょっと探しものをしてまして。首輪をした猫、見掛けませんでした?」
 緑の首輪をした、その名もミドリ。
「普段は外に出ない子達なんだそうですけど」
 え、向こうに見慣れない猫がいた?
「ありがとうございます」
 ああ、本当だ……あの綺麗な毛並みは恐らく飼い猫だ。
「ミドリさん?」
 声をかけてみると、振り向いた。
 身を屈め、ネズミのオモチャを振りながら待つ。
「美味しいササミもありますよ?」
 細かく裂いて匂いを立たせてみると、猫は恐る恐る近付いて来た。
 逃げてから何も食べていないのだろうか。
「はい、捕まえました」

 リアリュールの案内役は小さな女の子だ。
「初めての街だし、慣れてないから一緒に探してね」
 何かあった時には、他のメンバーとの繋ぎ役も。
「じゃ、行こうか。おじさまと猫ちゃんに笑顔や安心を取り戻してあげたいね」
 白い首輪、背中が黒くてお腹が白い短毛のシロちゃんは、マイペースのちゃっかりさん。
 人の手が届かない高い場所や、細い道に入り込んでいるのだろうか。
 ああ、でも……野良猫に追いかけられていたりして。
「箱入りにゃんこなら、普通は猫が行かない様な所に隠れてるんじゃない?」
 猫の気持ちになって考えてみる。
 首輪を見て誰かに保護されている可能性もあるし……ついでに色んな所を見て廻れると良いかな、なんて。
 狭い階段を上がって、どこかの家の平らな屋根に出る。
 屋根がそのまま道になったその場所からは、ポルトワールの港が一望できた。
 そしてまた別の場所から階段を下り、どこかの庭や家の中を通って、お茶に呼ばれて。
「あの、首輪をした猫を見ませんでしたか?」
 ついでに訊いてみると、「訊ね猫」の話はあっという間にご近所に伝わって、お茶を飲み終わる頃には――
「ほら、この子だろ?」
 どこかのオバチャンが連れて来てくれた。
 流石はちゃっかりさん、よその家に堂々と上がり込んでいたらしい。
「おじさま、心配してたよ~、シロちゃんも寂しかったでしょ?」
「うなー?」
 いや、これは外の世界を楽しんでいた顔だ。
 これに味をしめて、また脱走なんて事にならなければ良いけれど。

「赤い首輪つけたニャンコ……見てないかな」
 ちょっと生意気そうな少年と一緒に歩きながら、ユランは街の大人達に猫の事を訊ねて歩く。
「やんちゃな子らしいから、上とかにいたりして……?」
 見上げた先には、一本の大木があった。
 しかし、そのねじ曲がった幹がどこから生えているのか、どう行けばそこへ辿り着けるのか、見当も付かない。
「こっちだよ」
 案内されるままについて歩き――
「……猫」
「あれは違うだろ」
 ただの野良猫だ。
「これ、どこに繋がってるんだろ……」
「そっちじゃないってば」
 あ、そうでした。
「凄い……迷路みたいな街だね。楽しそう」
 こっちに行くと広場に出て、こっちは何処まで続いてるのかな?
「何だか楽しそうな音楽が聞こえる……」
「だからフラフラすんなよにーちゃん!」
 服の裾をがしっと掴まれ、ユランは我に返る。
「あれ、ここどこ……?」
 迷子、一歩手前。
「君がいてくれて、よかった」
 本当は姉ちゃんだけど、そこは別に良いや(良いのか
 大木の下まで来ると、頭上から切羽詰まった様子の猫の声が降って来た。
「みゃーっ!」
 見上げた枝の上で、赤い首輪の猫が立ち往生している。
「あんな高い所に……」
 猫って上るのは上手いけど、下りるのは下手だよね。
「待ってて、今、降ろすから」

「迷子猫さんか……早く見つけてあげないとねー?」
 シグリッドは、シェーラさんをひょいと抱き上げて顔を突き合わせ、ついでに鼻をこっつんこ。
 青い首輪のアオは、青い瞳のサイベリアン。
「人懐っこくて賢い子なんだって」
 あ、勿論シェーラさんも賢くて、真白い毛並みに緑の目が素敵な美猫さんですよー?
「だから一緒に探してね?」
 そう言い聞かせて頭の上に乗せ、案内役の少年と一緒に街に出る。
「どこかの庭先で遊んでるかもしれませんねー」
 と、シェーラさんが肩から飛び降りて、勝手にトコトコ歩き始めた。
 それを追いかけてみると――
「おお、あんたらこの子の飼い主かね?」
 小さな庭で、お爺さんに遊んで貰っているもふもふ猫。
「アオさん、探しましたよー」
 お爺さんに礼を言って、シグリッドは猫を抱き上げる。
「飼い主さんが心配してましたよー? 一緒に帰りましょうねー」
 お手柄だったシェーラさんにも、はい、おやつ。

「さっきクロを見たのは、この辺だったな」
 ウィアズはスイーパーの少年と共に、先程の現場に戻ってみた。
 猫が消えた方角に向かって歩きながら、猫じゃらしを振ってみる。
 と、あちこちから猫の姿が。
 その中に――
「おー、クロ発見。おいでおいでー」
 ん? 一緒にいる、あの猫は?

「俺はモモの担当か」
 蒼はササミと猫じゃらしを手に、案内役の後をついて歩く。
「あー、臆病な子なのか……ってことは、どっかに隠れてるかな」
 暗くて狭い、静かな場所?
「モモー、モーモちゃん、どーこだー?」
 名前を呼ぶと、呼ばれてもいない野良猫達が擦り寄って来る。
「お前らはお呼びじゃないんだけどな」
 そう言いつつも、ササミを少し分けてやるのは猫好きだから仕方ない。
 と、そこにスイーパーの少年が飛び込んで来た。
「モモがいた、クロと一緒だ!」

「こんにちは。この辺で、黄色い毛並の猫を見ませんでした?」
 イカルは案内を付けずに、単独で街を廻っていた。
 自分の担当区域は皆に伝えてあるし、もし迷子になっても余り心配いらない気がする。
「あらあら、猫探し? 大変ねぇ」
 そう言ってお菓子を持たせてくれる人や、お茶に誘ってくれる人、頼んでもいないのに一緒に探してくれる人もいる。
「ここはとても良い場所だね」
 そして辿り着いたのは、猫の集会場。
「名前の通り、フォーンの毛並に、黄色の目をしてるって聞いてるけど」
 薄黄色の猫、薄黄色の猫……って、思ったより猫多くない?!
「さっきからチラホラ見かけてたはいたけど、どこにこんなに居たんだろう……」
 手にしたササミもあっという間に食べ尽くされて、さてどうしよう?
「この子……いや……ん、この子かな?」
 似た様な毛色の猫が二匹、仲良く寄り添っている。
 片方は黄色い首輪を付けているが――
「どうしよう……」


 で、結局……おじさんの家には新しい子が増えました。
 キイロとそっくりな、オレンジちゃんです!

「引き離すのも忍びなかったから」
「そうだよね、きっとこの子はキイロの生き別れの妹だ!」
 少し申し訳なさそうに二匹を連れて来たイカルに、おじさんは半分ヤケクソ、でも嬉しそうに言った。
 かくして8匹に増えた猫達は、恩人達の手でもふもふえんどれす。
「はぅあ~癒される~」
 猫は天使、もふもふは神。
 ウィアズは無心に、もふもふもふもふm(((
「今日は案内等々ありがとね♪ お蔭でおじさまも猫ちゃんもハッピーだね」
 リアリュールは街を案内してくれた子供達の事も、一緒にもふもふ。
「ね、ちょっとお姉さんだけど、よければ私も仲間に入れて?」
 街暮らしのこととか、人のこととか色々教えて欲しいし。
「あ、ぼくも……もしよければ仲間に入れていただけませんか?」
 ヤキモチを妬いたシェーラさんにぺしぺしされても浮気がやめられないシグリッドも、思いきって訊いてみた。
「まだ不慣れですし、色々勉強させて貰えると嬉しいです」
「俺も入団、してみたいかな」
 自分の髪を束ねた即席じゃらしで猫と遊びながら、ユランも頷く。
「ここで出会ったのも何かの縁だと思うから……あ、いたた」
 髪、絡まった。
 猫さんちょっとエキサイトしすぎでもふもふなでなで。
「僕も入団したいな」
 こういう場所で、誰かの役に立つために手伝いがしたいと、イカル。
「へへ、さんきゅ。誰でも大歓迎だぜ」
 彼等の申し出に、アルドは嬉しそうに鼻を擦る。
「活動は自分の都合で構わないからさ」
 勿論、入団しなくてもこうして一緒に活動できるし。
「なら、気が向いたらまた立ち寄らせて貰いますよ。居心地も悪くなさそうですし」
 渉が言った。
 加入は遠慮しておくが、色々と伝授して貰えるなら是非また。
「俺も出来る限りの手伝いはしたいと思うけど……」
 アオとモモを膝に乗せた蒼は、入団を迷っている様だが。

 慌てて決める事はない。
 カナイオ・スイーパーは自由な集団なのだから。

 とりあえず今の任務は、存分に猫をモフるべし!

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 16
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 探し物屋
    牧 渉(ka0033
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 優しさと懐かしさの揺籠
    シグリッド=リンドベリ(ka0248
    人間(蒼)|15才|男性|疾影士
  • カナイオ・スイーパー
    羽片イカル(ka0558
    人間(紅)|16才|男性|機導師
  • Emeral-D
    ユラン・S・ユーレアイト(ka0675
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 緋弾の射手
    ウィアズ(ka1187
    人間(紅)|17才|女性|猟撃士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士

  • 七神蒼(ka2115
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/13 22:55:58
アイコン 猫さんを探す相談卓
シグリッド=リンドベリ(ka0248
人間(リアルブルー)|15才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/17 23:03:38