ゲスト
(ka0000)
【HW】愛はTVを救う
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2017/11/04 22:00
- 完成日
- 2017/11/12 23:52
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
さあ、皆様。クリムゾンTV恒例のチャリティー生放送企画が始まる季節がやって参りました。
今年の企画は三本立て。
その1・ハンターによるクリムゾン大陸縦断フルマラソン。
その2・ハンターによるこんな時期に南方大陸征服するなんて。
その3・匠集団による問題物件家屋のリフォーム。
合間合間にスタジオでのトークや歌など差し挟みながら、以上の内容をリアルタイム形式でお届け致します。
この生放送は皆様の愛と希望と寄付によって成り立っております。
●エトファリカ某所。
エトファリカ。宮殿前の広場。東方の紙と竹で出来た照明器具があちこちに吊り下げられ、周囲を明るく照らしている。
大陸縦断マラソンのスタート地点は、ここだ。そしてリグ・サンガマ→辺境→ゾンネンシュトラール帝国へ→グラズヘイム王国→自由都市同盟という流れ。
ルートの要所要所にショートカットのための転移門がある――コースを全走破となると、24時間内に収まり切らなくなるので。
……と言う旨をリポーターのマリー・スラーインは、カメラの向こうにいる視聴者に向けて説明した。
「ご覧ください、この沿道を埋め尽くす人、人、人。皆手に手にエトファリカ連邦の旗を振って、出場選手達を応援してくれています。感動的ですねー」
営業スマイルを浮かべる彼女は、このしち面倒臭い仕事早く終わらないかなとだけ考えている。これからみっちり24時間ランナーに密着し実況をしなければならないのかと思うと、鬱々たる気持ちになるのを抑えられない。
「会場から拍手、拍手が起きております。今年のテーマ『挑戦』に相応しい幕開けとなりそうです――では、いったんスタジオにお返し致しまーす♪」
●クリムゾン放送局・スタジオ
「はい、マリーさん現地リポートありがとうございました。いやあ、始まる前からすごい熱気でしたねコボちゃん」
「わし、わしわしわし。わしー」
「いやー、本当にそうですね。南方大陸探検隊の方は現在どうなっているでしょうか」
「わふー」
「リポーターのカチャさーん。そちらはどうですかー。カチャさーん」
●南方大陸。
昼なお暗く夜はなお暗い密林。茶色く濁った大河を進む数隻のモーターボート。それに積まれているのは撮影機材一式と撮影隊、現地案内人であるコボルド数匹。目を濁らせ船縁に寄りかかっているリポーターのカチャ。
彼女は今激しく後悔していた。クリムゾンTVから製作会社が受注してきたこの――未知の南方大陸に乗り込み影像を撮ってくるというだけの簡単な(とディレクターは言っていた)仕事に、参加するんじゃなかったと。沿岸地帯の砂漠を越えてこの奥地まで入ってきて以降ずっと、船の上。ずっと。安全に降りられるような場所が見当たらないのだ。用心のため持ってきていた酔い止め薬もたちまち尽きてしまって、彼女は今絶不調である。
『カチャさーん、カチャさーん』
しかし絶不調でもリポーターとして働かないわけにはいかない。吐き気を押さえつつ、スタジオからの声に答える。
「はーい……ただ今私たちクリムゾンTV特別取材班は南方大陸沿岸地帯の砂漠を越え、未開の密林へ分け入り、名もなき大河を溯っているところでー」
ごばあとボートの後方で大波が起きた。頭が2つある巨大なワニが姿を現した。
現地案内人がキャンキャン悲鳴を上げた。
対処するのは撮影隊――カチャと同じく全員ハンターである。
「くそ、また出やがったー!」
「頭頭、頭を叩き割れ!」
「この森どんだけ歪虚がいるんだよ!」
「撮影機材だけは死守しろー!」
大奮闘の光景はスタジオにも伝わっているに違いない。こんな言葉がイヤホンマイクから聞こえてきた。
『いやー、大自然の驚異ですねー』
ものすごく軽い調子のスタジオコメントに、カチャの眉間が狭まった。
「もう帰っていいですか」
『何言ってるんですか。頑張っていい画を取ってきてくださいよ。未発見の古代遺跡を見つけるとか珍獣をハントするとか』
「……そんなことする暇なんか全然ないんですけど。間断なく化け物が襲ってくる地獄ですよここは」
『そのくらいハンターなら軽いものじゃないですかー。今年のテーマは『挑戦』なんですよ。『挑戦』。それなのにやる前から諦めてどうするんです』
行く手の水面から、がばあと黒いものが顔を出した。
それは、巨大な電気ナマズであった。
ナマズは無感動な目で、モーターボートとそれに乗るもの全てを巻き込むほどの強力な電撃を発する。
「んぎゃー!!」
●クリムゾン放送局・スタジオ
「カチャさーん、カチャさーん?――えーと、現場は大変混乱しているようですね」
「わふ。わしわっふ。わふー」
「そうですね、取材班の皆さんハンターだから大丈夫ですね。えー、ではリフォームの方はどうなっているんでしょうか。現場のスペットさんを呼んでみましょう。スペットさんスペットさーん」
「わしー。ねこー。わこー」
●リゼリオ。住宅街。
「誰がネコやしばくぞコボ。つうかなんでお前、一番安全なスタジオにおんねん」
リゼリオ某所。リポーターのスペットは古アパートの前にいる。
番組にリフォームを頼んできただけあって、このアパートかなり傷んでいる。壁はヒビと剥げだらけ。ベランダを支える柱は錆びて穴が空いているし、家屋全体に傾きが見られる。雨の日には、屋根から水漏れもしているそうだ。
「しかしなー、ほんまにこれを24時間でリフォーム出来るんやろか」
『スペットさん、匠集団の方はもうそちらに到着されていますか?』
「いや、それがまだそれらしき姿が見えへんのやけど……」
夜に強い猫の目で周辺を見回すスペット。
そこに妙な歌が聞こえてきた。
♪ユニオン、ユニオン、いいところ みんなであそんでたのしいな、おべんきょうしてたのしいな ユニオン、ユニオン、いいところ みんなでおやすみたのしいな、おしごとをしてたのしいな♪
ヘルメットを被ったコボルドたちの大集団が列を組んで歩いてくる。先頭にいるのは詰め襟長袖の白いワンピースを着た女、マゴイ。
「おおおいいいいなんでお前らが湧いてくんねん!」
『……匠集団として呼ばれたのよ……』
「いえっ!? あ、アホちゃうかプロデューサー! こいつら匠でも何でもあらへんぞ今すぐ契約キャンセルせえ!」
『ではワーカの皆さん……労働基準法を順守して頑張りましょう……』
「「はーい」」
マゴイは鯉でも呼ぶように手を叩いた。するとあら不思議、何もないところから現れる大型土木工作機械の数々。
「……おい待て……お前何するつもりなんや……」
『この都市一帯を再開発し……エネルギー自給体制の確立を……ユニオンの安全で快適な生活を皆様にお届け……』
「そこまでせえとは誰も言うてへんやろ! あ、こら、やめ、やめれ-!」
今年の企画は三本立て。
その1・ハンターによるクリムゾン大陸縦断フルマラソン。
その2・ハンターによるこんな時期に南方大陸征服するなんて。
その3・匠集団による問題物件家屋のリフォーム。
合間合間にスタジオでのトークや歌など差し挟みながら、以上の内容をリアルタイム形式でお届け致します。
この生放送は皆様の愛と希望と寄付によって成り立っております。
●エトファリカ某所。
エトファリカ。宮殿前の広場。東方の紙と竹で出来た照明器具があちこちに吊り下げられ、周囲を明るく照らしている。
大陸縦断マラソンのスタート地点は、ここだ。そしてリグ・サンガマ→辺境→ゾンネンシュトラール帝国へ→グラズヘイム王国→自由都市同盟という流れ。
ルートの要所要所にショートカットのための転移門がある――コースを全走破となると、24時間内に収まり切らなくなるので。
……と言う旨をリポーターのマリー・スラーインは、カメラの向こうにいる視聴者に向けて説明した。
「ご覧ください、この沿道を埋め尽くす人、人、人。皆手に手にエトファリカ連邦の旗を振って、出場選手達を応援してくれています。感動的ですねー」
営業スマイルを浮かべる彼女は、このしち面倒臭い仕事早く終わらないかなとだけ考えている。これからみっちり24時間ランナーに密着し実況をしなければならないのかと思うと、鬱々たる気持ちになるのを抑えられない。
「会場から拍手、拍手が起きております。今年のテーマ『挑戦』に相応しい幕開けとなりそうです――では、いったんスタジオにお返し致しまーす♪」
●クリムゾン放送局・スタジオ
「はい、マリーさん現地リポートありがとうございました。いやあ、始まる前からすごい熱気でしたねコボちゃん」
「わし、わしわしわし。わしー」
「いやー、本当にそうですね。南方大陸探検隊の方は現在どうなっているでしょうか」
「わふー」
「リポーターのカチャさーん。そちらはどうですかー。カチャさーん」
●南方大陸。
昼なお暗く夜はなお暗い密林。茶色く濁った大河を進む数隻のモーターボート。それに積まれているのは撮影機材一式と撮影隊、現地案内人であるコボルド数匹。目を濁らせ船縁に寄りかかっているリポーターのカチャ。
彼女は今激しく後悔していた。クリムゾンTVから製作会社が受注してきたこの――未知の南方大陸に乗り込み影像を撮ってくるというだけの簡単な(とディレクターは言っていた)仕事に、参加するんじゃなかったと。沿岸地帯の砂漠を越えてこの奥地まで入ってきて以降ずっと、船の上。ずっと。安全に降りられるような場所が見当たらないのだ。用心のため持ってきていた酔い止め薬もたちまち尽きてしまって、彼女は今絶不調である。
『カチャさーん、カチャさーん』
しかし絶不調でもリポーターとして働かないわけにはいかない。吐き気を押さえつつ、スタジオからの声に答える。
「はーい……ただ今私たちクリムゾンTV特別取材班は南方大陸沿岸地帯の砂漠を越え、未開の密林へ分け入り、名もなき大河を溯っているところでー」
ごばあとボートの後方で大波が起きた。頭が2つある巨大なワニが姿を現した。
現地案内人がキャンキャン悲鳴を上げた。
対処するのは撮影隊――カチャと同じく全員ハンターである。
「くそ、また出やがったー!」
「頭頭、頭を叩き割れ!」
「この森どんだけ歪虚がいるんだよ!」
「撮影機材だけは死守しろー!」
大奮闘の光景はスタジオにも伝わっているに違いない。こんな言葉がイヤホンマイクから聞こえてきた。
『いやー、大自然の驚異ですねー』
ものすごく軽い調子のスタジオコメントに、カチャの眉間が狭まった。
「もう帰っていいですか」
『何言ってるんですか。頑張っていい画を取ってきてくださいよ。未発見の古代遺跡を見つけるとか珍獣をハントするとか』
「……そんなことする暇なんか全然ないんですけど。間断なく化け物が襲ってくる地獄ですよここは」
『そのくらいハンターなら軽いものじゃないですかー。今年のテーマは『挑戦』なんですよ。『挑戦』。それなのにやる前から諦めてどうするんです』
行く手の水面から、がばあと黒いものが顔を出した。
それは、巨大な電気ナマズであった。
ナマズは無感動な目で、モーターボートとそれに乗るもの全てを巻き込むほどの強力な電撃を発する。
「んぎゃー!!」
●クリムゾン放送局・スタジオ
「カチャさーん、カチャさーん?――えーと、現場は大変混乱しているようですね」
「わふ。わしわっふ。わふー」
「そうですね、取材班の皆さんハンターだから大丈夫ですね。えー、ではリフォームの方はどうなっているんでしょうか。現場のスペットさんを呼んでみましょう。スペットさんスペットさーん」
「わしー。ねこー。わこー」
●リゼリオ。住宅街。
「誰がネコやしばくぞコボ。つうかなんでお前、一番安全なスタジオにおんねん」
リゼリオ某所。リポーターのスペットは古アパートの前にいる。
番組にリフォームを頼んできただけあって、このアパートかなり傷んでいる。壁はヒビと剥げだらけ。ベランダを支える柱は錆びて穴が空いているし、家屋全体に傾きが見られる。雨の日には、屋根から水漏れもしているそうだ。
「しかしなー、ほんまにこれを24時間でリフォーム出来るんやろか」
『スペットさん、匠集団の方はもうそちらに到着されていますか?』
「いや、それがまだそれらしき姿が見えへんのやけど……」
夜に強い猫の目で周辺を見回すスペット。
そこに妙な歌が聞こえてきた。
♪ユニオン、ユニオン、いいところ みんなであそんでたのしいな、おべんきょうしてたのしいな ユニオン、ユニオン、いいところ みんなでおやすみたのしいな、おしごとをしてたのしいな♪
ヘルメットを被ったコボルドたちの大集団が列を組んで歩いてくる。先頭にいるのは詰め襟長袖の白いワンピースを着た女、マゴイ。
「おおおいいいいなんでお前らが湧いてくんねん!」
『……匠集団として呼ばれたのよ……』
「いえっ!? あ、アホちゃうかプロデューサー! こいつら匠でも何でもあらへんぞ今すぐ契約キャンセルせえ!」
『ではワーカの皆さん……労働基準法を順守して頑張りましょう……』
「「はーい」」
マゴイは鯉でも呼ぶように手を叩いた。するとあら不思議、何もないところから現れる大型土木工作機械の数々。
「……おい待て……お前何するつもりなんや……」
『この都市一帯を再開発し……エネルギー自給体制の確立を……ユニオンの安全で快適な生活を皆様にお届け……』
「そこまでせえとは誰も言うてへんやろ! あ、こら、やめ、やめれ-!」
リプレイ本文
●リフォーム始まるよ
アパート住人ソラス(ka6581)は、リフォームに賛成の立場。
「まあまあ、スペットさん。考えようによってはいけますよ。私もしがないハンター生活。光熱費が0になればだいぶ助かります。同じ思いを抱かれている方は多いのではないでしょうか」
「だあほ、何言い出すんや。そんなこと言うたらこいつが」
『……人々は幸福を求めている……求めているなら……与えるのがユニオンの義務……』
「ほらな、いらんことやる気出すやろ……」
星野 ハナ(ka5852)は一足先に自分が担当する改装区域へと駆けて行く。ユニオンの権力を嵩に、違った崇高な理念を基に好き放題で出来るのは今しかない。
「全ての愛を満たす街、リゼリオ! あぁん、乗ってきましたぁ! 一軒なんてみみっちいこと言っちゃ駄目ですぅ、リゼリオを愛の街に大改造ですぅ!」
琴吹 琉那(ka6082)はリゼリオの地図を手に思案顔。
「どないすればええやろか……折角やし感動させなアカンしぃ。んーー」
藤堂小夏(ka5489)とレーヴェ・W・マルバス(ka0276)は顔を見合わせる。
「リゼリオ……解放感が足りないね! 安全で快適な生活のため、まずは解放感を充足させなければ!」
「まるっと同意じゃの。まずはこの計画性のない都市景観をリセットせねば。分かるの? 重機では骨の折れる建物にはな、この導火線のついた筒をな、建物の柱に埋め込んでな――」
熱のこもった話し合いを数分続けた後レーヴェは、手持ちのボタンを押す。
「ではいってみよう、ポチッとな」
ズズズズズゥウウンンン……。
轟音と共に崩れ落ちて行くハンターオフィス本部。
「ハシャギすぎたか」
小夏の前には花火師が使う操作盤。
「はいはい、解放感に邪魔な施設はどんどん爆破しちゃいましょね~」
ぱちぱちスイッチがONにされていく。町の目に付く建造物が次々に吹き飛ぶ。
スペットが掠れ声を出した。
「……お前ら……せめて重機使えや……」
「えー、だってそれじゃ解放感が表現できないでしょう!」
「解放感とかどうでもええわ! 完全に放送事故やんけ!」
そこで琉那が、ポンと手を打つ。
「そうだ、京都にしよう」
画面に以下の文が被さってきた。
『*爆破は演出上の表現です。一連の工事は専門家の指導の下、住民の安全に配慮して行っております。』
●マラソン覇道
トップを切って転移門を抜けてきたのは、ルベーノ・バルバライン(ka6752)だ。
「ふはははは、どけどけどけぃ! ここに我が覇道の第一歩を刻んでやるわ~~!」
勢いを止めず驀進して行く彼の前に現れる北の長城。
コースはそこを迂回する形で作られている。だが彼は規定路線に従うことを潔しとしなかった。青龍翔咬波で壁をぶち抜き、直進。
「優勝は我のものだ! ふははははは!」
その姿を天竜寺 詩(ka0396)は、休憩所の陰に隠れて見ていた。
「わー……ルベーノさん本気だぁ……」
魔導バイクを傍らにした彼女は、その身を頭からすっぽりコートで包んでいる。
そこに天竜寺 舞(ka0377)が駆け込んできた。着物に下駄、白粉に日本髪という格好。
「お待たせ、詩。ルベーノもう行っちゃった?」
「うん」
と言いながら詩はコートを脱ぐ。あらわになったその姿は、着物に下駄、白粉に日本髪――舞と一緒。
彼女たちは今回双子という強みを生かし、『入れ替わり完走作戦』を行っている。無論極秘にだ。主催側にばれたら即失格となるので。
詩は舞からゼッケンを受け取り、舞は詩からコートとバイクを受け取る。次の転移門まで役目の入れ替わりだ。
「じゃ、頑張って。あたし先に行ってるから!」
と言い残し脇道からバイクで先行して行く舞。
(チャリティーでズルは良くないんじゃないかなぁ」
思いつつ詩は、他の参加者たちに交じって走る。
その中にイメルサ・ファルズール(ka6259)の姿があった。
リアルブルーにおける体育祭祀の正装、丸襟半袖シャツと赤ブルマを着用。ゼッケンの表側には平仮名で『いめるさ』。
本人いわく南方大陸で行方不明となった娘に呼び掛ける為参加したそうだが、併走車のカメラマンはブルマの食い込んだむちむちな尻とはち切れんばかりの熟れた胸とシャツがその胸に阻まれていることにより露になっている臍の付近ばかり映していた。
続いて視点は番組サポーターとして併走している黒の夢(ka0187)に移る。
カメラの目線は豊満な肉体をスパッツと番組のTシャツに包んだ彼女の足元から腿→胸→顔と舐めるような動きで移動していく。後、ポニーテールを作ることで露になっているうなじにも。
「これは、らぶを集める番組ですっ! それもらぶ、これもらぶ、であるー」
それがさっとイメルサに戻る。何事かと思えばサイズが小さすぎるブルマの下から白いパンツがちらちらはみ出していた。
レポーター・マリーの怒鳴り声が聞こえてくる。
「ちょっと運営、もっとましなカメラマンに交替させてよ! ただのカメラ小僧じゃないのよこいつら!」
ランナーの皆さんが安心して全力を出せるよう先行していた白バイキャノンくん(中の人――キヅカ・リク(ka0038))が戻ってきて画面を塞ぐ。そして、カンペをめくる。
【30秒後CM】
●ここでCMです
さわやかな清水が流れる情景(CGはめ込み画像)を背景にしたマルカ・アニチキン(ka2542)が、視聴者へ語りかける。
「お金というものは【水】と同じです。多すぎても少なすぎても毒となり、心と体を蝕みます。しかし、バランスよく循環させることが出来れば、命を与える恵みとなるのではないでしょうか……? 皆様、恵まれない人に愛の手を。世界は一つ、人類は皆兄弟……お金が問題を解決いたします。ぜひ募金にご協力を」
●南方行ってみよう
ディーナ・フェルミ(ka5843)の放った弓は電気ナマズの眉間を正確無比に打ち抜いた。
「やったの! 遥華さん、この魚毒がないかどうか聞いてほしいの!」
現地コーディネータ央崎 遥華(ka5644)は、ガイド役のコボルドたちに尋ねた。
「うー、わん、わん?」
「……わん?」
「ご安心ください、全く大丈夫だそうです!」
果たして本当にそうなのか。現地語が分かるのが彼女だけなので誰も確かめられない。
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は、ひとまず機材がやられていないか調べにかかる。
そこにバナナの皮が落ちてきた。一つだけではないいくつもである。
何だと思って見上げてみれば、川に突き出た枝の上、体中にペイントを施した男たちが鈴なりに腰掛けバナナを食い、ボートを見下ろしている。
ミア(ka7035)はサファリハットを押し上げ無邪気に言った。
「あ、お猿さんニャス」
「違うだろどう見ても原住民だろ」
ステラは威嚇のため、空へ向けた警告射撃を行った。
原住民が逃げ出す。
ミアが追う。ターザンのように。
「待つニャスー。あ~ああ~ニャス♪」
ところで電撃を受けカチャはボート上にぶっ倒れたままだ。
探検隊ルックの北谷王子 朝騎(ka5818)が彼女の傍らにかがみ込む。介抱でもするのかと思いきやジャージの下を引き下ろした。
露になるうさぐるみ模様のパンツ。
「ふぎゃあ!?」
跳び起きるカチャ。
「な、何なんですかいきなり!」
「いいでちゅか。テレビの前の視聴者は未知の光景……秘境を求めていまちゅ。決して朝騎の私利私欲でやっているわけでは無いんでちゅよ」
絶対嘘だ私欲だ。そう確信するに足る輝かしき朝騎の笑顔。
「カチャさん、そんなパンツで大丈夫でちゅか? サービスが足りなくないでちゅか?」
「余計なお世――おうえっ」
抗議の途中でよろよろっとボートの手摺りに寄りかかるカチャ。酔いは続行中なのである。
ニンジャ式サファリルックに身を包んだ『ルンルン広いし探検隊』隊長ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は彼女を気遣い、背を叩いた。
「ほらカチャさん元気出してください、ウォーターウォークで水面歩けば、船酔いも治るかも知れませんよ」
「あー、そーかも知れませんねー……」
ボートの手摺りを越え川に降りていくカチャ。
「がぼっ!?」
自分がウォータウォークを使えないことを思い出し慌てて戻ろうとしたところ、後方から顔を出す怪魚。
カチャはあっという間に水中へ引きずり込まれる。
「きゃあ! カチャさんがピラニア雑魔にぃ!!」
「何い! よっしゃ、ここは俺に任せろっ!」
ジルボ(ka1732)はアンカーショットで木に飛び移り、水柱が上がる場所目がけてポンコツ散弾銃で一斉掃射。
彼の頭上にいるパルムがスタジオへ送ってきた映像には、こんな文字が被さっていた。
<この後責任を持ってスタッフが助けました>
●嵐を呼ぶゲスト
「うーん、カチャさん大丈夫でしょうかねー」
気楽そうな男性司会者。
スタジオの一角に作られているキッチンスタジオでは、ミオレスカ(ka3496)が24時間ロールサンドイッチ作りに挑戦している真っ最中。他企画の人々へ差し入れする所存なのだ。
バナナ、ハム、たまごなどオーソドックスな具材の他、マラソンの中継地点にちなむ品――北方ならニシンの塩漬け、辺境なら野牛肉と豆、帝国ならソーセージといった物を挟んでいく。
助手はスペット。
「いつのまに俺こっちに回されてんねや。ちゅうかコボどこ行ったんや。いてへんやんけ」
キャノンくんが「南方直輸送」と書かれたクーラーボックスを持ってきた。開けてみれば巨大な電気ナマズの目玉。
そこでスタジオの照明が落ちた。ゲストの芸人と俳優たちが騒ぐ中流れ始めた、血沸き肉躍るBGM。
ステージに一条の光。
照らし出されたのは「漢」と書かれた褌一丁の南護 炎(ka6651)――超人レスラー『男色炎』。
「『挑戦』をさせて自分だけ高みの見物は許されるものではない……」
司会者は当惑と焦りの交じる質問をスタッフにぶつけた。
「あれ、ちょっと、え、この人の登場私聞いてないんですけど――」
「お前だけ『挑戦』しないのは許されない!」
炎が跳ぶ。司会者にラリアットを食らわし転がす。仰向けになった顔に尻落とし。
「ぶへえ!」
もがくところを引き起こし怒涛の勢いでその頭を自らが締めている漢と書かれた褌の中に突っ込んでパイルドライバー。
司会者は落ちた。
しかし炎は止まらない。次の獲物(男限定)に襲いかかっていく。
「オラオラお前も『挑戦』してもらおうか! 24時間耐久プロレスに!」
一部の視聴者以外誰も望んでいない地獄絵図が今幕を開ける。
しかしミオレスカは気に留めず己の作業に没頭する。
ひとまずナマズの目玉を丸茹でし、エキゾチックな薬草とマスタードを絡めロールサンド。
「はい、スペットさん。南方大河ロールサンドです」
「……お前……これを俺に食えちゅうんか……?」
「大丈夫です、火は通してますので」
スペットは渋々一口食べた。そして意識不明となった。
●視聴者の皆様
TVを見ていた穂積 智里(ka6819)は、至近距離にいるハンス・ラインフェルト(ka6750)に話しかけた。
「あの……これって、伝話でも寄付依頼できたんでしょうか。それとも、会場に行かなきゃ寄付できな……」
ハンスは彼女を片腕で引き寄せた。空いた手で、魔導スマホに触れる。
「そうですね……それじゃ試してみましょうか……ああ……まだTVやスマホの双方向は実現されていないようです。寄付をするなら会場まで行かなければなりませんね」
と言って細い首筋に顔を埋め、甘噛みする。
「どうせなら貴女が――」
その後どういう台詞が続いたかは聞き取れなかったが、不埒なものであったことは間違いない。智里の顔が内側から火を灯したようになったからには。
「――私の可愛いマウジー」
2、3の囁きが続いた後、こもるような乱れた息遣(以下略)
●探検続くよどこまでも
探検隊は岸辺に上陸し更なる奥地を目指していた。
格闘の末何とか這い上がってきたらしい。カチャは全身ずぶ濡れ。服があちこち裂け、破れている。
朝騎もずぶ濡れ。真っ白なシャツの下、ブラが透けて見えている。
「これで視聴率アップ、募金率アップ間違いなしでしゅ。スポンサーも大喜びでしゅよカチャさん」
「ああ、そうですか……」
先頭を行くのは先ほどの原住民たち。
あの後一応カチャを助けるのを手伝ってくれたので、悪い人達ではないらしい。バナナと交換したミアのおむすびを食べ、何か言っている。
通訳の遥華が神妙な顔で訳した。
「この先は現地の方でも近づきません――だそうです」
ルンルンがごくりとツバを飲む。
「もしやそこに、かの猫頭原人たちの遺跡が………!」
ジルボも拳を握り、真剣な表情。
「ついに……手掛かりが! さあ、行こうぜ皆!」
調理セットを背負うディーナも、やる気満々の様子だ。
「未知の味が私たちを待ってるの!」
ミアも先ほどトモダチになったホワイトタイガー(体長3メートル)の背に乗り、はしゃぐ。
「わーい、冒険ニャス冒険ニャス♪」
ステラは無言だ。気づいてしまったのである。原住民の腕に腕時計の日焼け跡があるということに。
そこにドンドロドロドロというあやしげな太鼓の音。
槍と盾を持った原住民の仲間が茂みから出てくる。
『ミナサン、イラサーイ』
『イラサーイ』
やけに友好的だ。
そこに声。
「あっ、カチャー!」
原住民が道を開ける中駆けてきたのは、リナリス・リーカノア(ka5126)。数ヶ月前当地で消息を絶っていた特殊部隊大佐。
グロッキー気味になっていたカチャはその姿を見て、元気を取り戻した。
「リナリスさん! 生きてるんじゃないかとは思ってまし」
台詞の途中で跳びつかれて、そのまま転倒。顔中にキスの嵐。
●マラソン続いてます
帝国市街地を抜け、ただ今エルフハイム。
1位はルベーノ。
「ふはははは! どうしたどうした、誰も我に追いついてこられんのか!」
森の中を縦横無尽に駆け抜けて行くその様はまさにネイチャーパルクール。
このまま彼の一人勝ちなのか――否、舞が追いすがろうとしている。立体軌道を駆使して。
だが、いかんせん和服は運動に不向きな構造。相手との距離が縮まらない。
「あー、衣装選び失敗したかな!」
愚痴りつつ枝を蹴り跳躍。双方猿のごとき身軽さ。もはや上空からのドローンカメラでもその姿を追い切れない。
このままでは視聴率が……いや、心配は無用。カメラはデッドヒートから離れた後方をばっちり捉えている。
そこではイメルサが己との戦いを始めていた。
(あそこに茂みが……いえ、駄目よ。何があろうと立ち止まってはいけない!)
彼女はトイレ休憩を含む一切の休憩禁止を己に課していた。娘の無事を祈念するためだそうだ。果たしてゴールまで持つのかどうか。大精霊よ彼女を守りたまえ。
一方黒の夢は、きちんと休憩場所に立ち寄る。
「うなな、サッとシャワー浴びてくるのなっ! あと後半、頑張るのよっ」
と言い置き鼻歌交じりにシャワールームへ。
見えそで見えない絶妙な磨りガラス越しのシャワーシーン。
「あ、シャンプー切れてるのな」
と言って扉を開けるところで画面一杯に広がるキャノンくんの顔。
『一旦CM』
キャノンくんの公式アカウントは現在、スケベな男たちの怒りによって大炎上している。
●CM裏模様
「こちらに集められた全ての募金を、当番組は人々を生かすための水として使いたいのです。それこそが、愛と希望を実現させる挑戦になると存じますゆえ、皆様にご配慮頂きますようお願い致します。繰り返しますがお金が問題を解決いたします。ぜひ募金にご協力を」
「はい、カット! マルカ君、いい出来だよ!」
キャノンくんからOKが出るや否やマルカは控え室に戻り、TV視聴を始める。
「ジルボさん、ジルボさんはどうなったんですかー!」
●南方古代遺跡発動
【歓迎探検隊ご一行様】の垂れ幕がかかった現地集落。
原住民たちが客人へのご馳走を作っている。
ディーナは彼らのお手伝い。でかいナナフシの足をポキポキ折ってナマズの肉と芋が煮えている鍋に入れ、かき混ぜる。
「未知の食に挑戦なのいただきますなの」
ミアも大蛇の頭に杭を打ちさばき、串を打ってお手伝い。
「おいしい蒲焼、作るニャス♪」
ところで集落の中央には、樹木に覆い尽くされた遺跡があった。
「あたしが来たときからずっとあったんだけど、中身については分からないんだよね」
「調べなかったんですか?」
「そうしようとも思ったんだけど、王国を築くほうが先かなって。部下も全員食べられちゃったし」
「そうですか……魑魅魍魎だらけですからね、ここ」
「あ、違う違う。歪虚にじゃなくてここの集落の人たちに食べられちゃったの。どうも食人習慣があるらしくて。あ、もちろんあたしが女王になってからは止めさせたよ?」
カチャとリナリスの会話が聞こえたのだろうか、ディーナの鍋をかき混ぜる手が止まった。
ステラはこの企画に参加したことをそろそろ本気で後悔し始めている。
(実録B級映画かよこれ……)
ジルボはこの際なので、ルンルン、遥華と遺跡を探検することにした。そうでもしなければ尺が余ってしょうがない。
皆で絡むツタを引き千切っていくと、サムズアップした手の石像発見。台座に『イイネ』と書かれた出っ張りがある。
「うん、こりゃもう押せってことだよな」
というわけでイイネを押すジルボ。
その途端遺跡と集落一帯が地下に飲み込まれた。
●ネオリゼリオ
リフォーム方面に、ミオレスカから差し入れが来た。
まずは、琉那にツナサンド。彼女の担当区はリアルブルーの古都京都へと変貌を遂げていた。うだつを挟んで並ぶ瓦葺の切妻屋根、道路と直角になった細長い家並み。
琉那は鳶姿。屋根の上で和建築についての蘊蓄を、ひとしきり語る。
「これは町屋作りという作りや。間口が狭うて奥に長いのが特徴やねぇ。祇園際の宵店では、表から奥まで見えるように開け放して、屏風を飾ったり……あ、その竹を割って並べたんは、犬矢来言うんよ」
続いてハナのところへチーズサンド。
彼女の担当区はヴァリオスを凌ぐ歓楽街になっていた。
扇情的な音楽と映像。あっちでもこっちでもノーマルアブノーマル問わないカップルが人目もはばからずいちゃつきまくりお休み所に消えていく。
ハナはとめどなく流れる鼻血をティッシュで塞ぎながら熱い抱負を語る。
「全ての愛を内包するピンクな街リゼリオ! ユニオンの名の下に道徳革命を起こすのです!」
次は、レーヴェにソーセージサンド。
彼女の担当区域は広々とした公園になっていた。気持ちのいい芝生に手入れの行き届いた木々。丸太を利用したベンチ、テーブル。アウトドアルックの家族連れ、若者達……リア充たちの宴が始まっている。
そこに本人と小夏も混じり、肉を食っている。
「小夏よ、おぬしリフォームはせんのか?」
「いやー、一通り爆破したら解放感が充足しちゃってさ。後は皆に任せるよ」
最後にソラスのところへサーモンサンド。
タワーマンションはすでに地上20階を越えているが、螺旋を描いてまだ上に伸びるもよう。彼はクレーンのゴンドラに乗って、壁面に絵を描いている。
世界の融合と平和を願うその気持ちは、多彩な色の線が絡み合う姿となって表現されている。それはまるで、大樹の幹と枝。
そこへコボちゃん率いるコボルドたちが色とりどりの手形を押していく。
そうすると、木に花が咲いたようになった。
「ああ、これはいいですね。ありがとうございます、コボちゃん」
「わし、わし!」
●ダンジョン攻略
遥華、ルンルン、ジルボは走っていた。
落ちた後なぜかトランポリン。それに弾き飛ばされた先にシーソー。そしてつづら折りの坂道。後ろから転がってくる巨大なビー玉。
「ピタ●ラスイッチかよこれ!」
一行の殿を勤めているジルボは散弾銃を撃ちまくる。撃たれたビー玉は弾け消えるが、すぐ新手のビー玉が後から後からわいてくる。
「くそ、弾が切れた!」
焦り毒づいたところ横の壁が抜けた。ステラが顔を出す。
「最後の弾倉だ。大事に使え!」
「あんがとよ!」
投げられてきたものを片手で受け取るジルボ。鮮やかに装填し連射。最後のビー球が消えた。一行は危機を脱する。
ほっとしたところでチャリチャリ重そうな音が聞こえた。
何だと思って見れば、いつのまにかジルボのポケットが金目の盗掘品でパンパンになっていた。
ルンルンは驚きを隠さず言う。
「ジルボさん、いつのまにそんなに盗んだんですか!?」
「盗んだんじゃねえよ寄付のために回収したんだよ。ほら、これチャリティーだし、チャリティー」
●控え室では
「ジルボさん……かっこいい! かっこいいかっこいい~ご両親様彼をこの世に産み育んでくださってありがとうございますぅ!」
畳敷きの部屋でTVを前にじたばたするマルカ。そこにキャノンくんがやってきた。
「マルカ君、次のCM頼むよ」
「ええー……それ、後に回せませんかー?」
「回せないよ。ほら、早く動いてくれ」
●Kの災難
「いたた……どういうことなんですかもお……」
尻をさすりながらカチャは起き上がった。
LEDライトの乏しい光で見るに、自分が今いるところは人工的な通路ではあるようだが。
「みんなどこですかー、リナリスさーん」
足首に何かが絡み付く感触がした。引っぱられ、瞬く間に奥へ引きずり込まれる。
逆さ吊りにされ引っ繰り返る視界。見えたのは、艶めいた笑みを浮かべるエルフの少女。
「うれしいですよ。まだ生きていたんですね」
「え? あの、どなたで……」
少女の瞳は全然笑っていない。背中から毒々しい薔薇の花と、ぬめついた触手が生えている。
「じっくり時間をかけて狂わせてあげますからね」
この少女が古代文明が作り出した対邪神決戦用生体兵器エルバッハ・リオン(ka2434)であり、自分の顔が彼女を裏切った親友の顔に偶然似ていることなど、カチャは知るよしもない。
しかし相手が何をしようとしているのかはなんとなく分かった。
「ちっ、違う違う人違い……やめ、やめてー!」
触手はカチャの足を這い上がり(以下略)
●みたびCMです
「お金をください」
「ちょっと待てマルカ君、雑すぎるぞそれは!」
●遺跡の中心で愛を叫んだ獣
迷宮の中カチャを探していたリナリスは、第六感で何事かを感じ取った。
「カチャをおもちゃにしていいのはあたしだけだー!」
遺跡の復活により不安定化していた周辺のマテリアルが彼女の怒りによって一層乱れ、次元の撹乱を引き起こす。
空に黒々した亀裂が入った。
●ところでマラソン続いてます
詩は走っていた。引っ切りなしに前方から般若心経が聞こえてくる。イメルサが唱えているのである。シャツの背中は汗びっしょり。表情には明らかな苦悶。ひとごとながらハラハラせざるを得ない。
ルベーノの姿は見えないほどはるか遠く。
まあ、姉が交替すればたちどころに距離は縮めてくれるだろうがそれにしても。
「うな、頑張るのなー。王国を過ぎたら自由都市同盟領、後は一直線にゴールなのなー」
黒の夢さん、励ますよりトイレに行くことを勧めてあげる方がいいのではないかと思うのだが本当に大丈夫なのだろうか。
「イメルサさん、あのね、いいから休憩とっていいから! 色んな意味で危ないから本当!」
(あ、マリーさんも同じこと思ってるんだ……)
●困ったときにはおまじない
やっと外に出たかと思いきや断崖絶壁。森は遥か下。
いつのまにやら遺跡は天空の城と化していたのだ。
先に脱出していたとおぼしきミアも虎と一緒に困り顔。
「これじゃ降りられないニャス……」
そこで遥華が、急にこんなことを言い出した。
「思い出しました。私、お婆さんにたくさんおまじないを教わったんです。物捜しや病気を治すのや……絶対に使っちゃいけない言葉もあるんです」
「いきなりどうしたんだお前」
まっとうに突っ込むステラ。しかし遥華はそれを無視し続ける。
「その中には禁断の呪文もあるんです」
ルンルンが、怯えた様な顔をする。
「まさかそれは、滅びのまじない……」
遥華が頷いた。
「それを唱えればあるいは、この状況を打破出来るかも……」
ジルボとミアが色めき立つ。
「本当か! よし、やってみようぜ!」
「うん、やるニャス!」
この中でまともなのはオレ一人なのか。
そう思うとステラは、なんだか寂しくなってきた。
●怪獣大決戦
ディーナは遺跡を覆う巨樹の根っこに捕まることで、謎の空間への落下を免れていた。
しかしだからといって落ちて行った人々よりマシな状況にあるとは言えない。浮かび上がっていく遺跡と一緒に空中へ連れて行かれることに変わりはなかったからだ。
空に出来た巨大な裂け目から目玉が覗いた。
戦慄するディーナ。
「あ、あれは邪神!?」
裂け目から腕が突き出――出――出ない。指しか。
朝騎がひょいと横から出てきて言った。
「どうやら通り道が狭すぎるようでちゅね」
そこにリオンが出てきた。邪神が現れたからにはそちらを第一の攻撃目標としなければならない。それが対邪神決戦用生体兵器の宿命。楽しい腹いせを中断させられ苛立ちつつ、身から生じた触手を増殖させ完全に身を覆い、鎧となして邪神に向かう。
その姿、巨大な花を頭部に持つ恐竜のよう。
指を噛まれた邪神は一旦引っ込んだ。ほどなくしてノズルが裂け目から出てくる。
そこから霧が噴き出す。リオンが激しく咳き込む。察するに防犯スプレー的なものらしい。
●ところでスタジオは
死屍累々。もはや誰も立ち上がれない状態である。
仕方ないので炎は自らが司会をすることにした。助手はミオレスカ、そしてキャノンくん。
「さあ、挑戦は残り一時間を切った! 各企画ともいよいよ佳境に入ってきたぜ!」
「――あっ、今、選手がリゼリオに戻ってきたとの報告が入ってきました!」
「トップは果たして……」
●古代遺跡猛る
リナリスはどうにか見つけ出したカチャを引きずり、遺跡の最奥へ向かっていた。
「もう、心配したんだからね」
カチャの意識がぐずぐずに蕩け落ちていることについてはさして心配していない。愛の力で何とかする。
とにかく今は邪神と対邪神決戦用生体兵器の始末が最優先である。特に後者。
「さあ、ソドムとゴモラを滅ぼした天の火を食らってもらおうかな?」
コントロールパネルに向かう彼女の顔は悪魔みたいだった。
遺跡のプラズマ砲が容赦なく邪神と対邪神兵器を襲う。
そのとき遥華たちにより滅びの呪文が解き放たれた。
「「ワロス」」
遺跡は第二形態に入った。
天空の城ではなく動く城として、邪神らと三つ巴の戦いを繰り広げることになる。
滅びの呪文とは遺跡の滅びではなくこの世の滅びを指していたのであった。
●勝者に祝福を
千本鳥居の間を駆け抜けて行くのは、ルベーノ。
「わははは、自由都市同盟よ、我は帰って来たぞ!」
その後ろにイメルサ。疲労とは違う意味で瀕死の状態だ。
舞も先程まで同一線上で争っていたのだが、鳥居の手前で入れ替わりがばれてしまった。マラソンにおいて女性の胸のみをチェックしているエロ視聴者のせいだ。
「違う、これはいつ間違いに気づくか、視聴者への挑戦だったんだー!」
と言いながら警備員に連れて行かれる姉の姿を、詩は物陰からそっと見送る。
(お姉ちゃん……私の方が胸が大きくてごめんね)
心の中で涙を流しつ、財布の中身を鳥居横の募金箱に入れる。
鳥居、参道、本道、手水屋、参拝、お堂の扉を開け観音像がずらりと並ぶスタジオの廊下。BGMは〇ライ。
ゴールのふすまを蹴破り飛び込んできたのは、ルベーノ。続いてのイメルサはそのままスタジオを通り抜けトイレに駆け込む。放送事故を起こさずすんだのだ。間に合ったのだ。大精霊のおかげである。
キャノンくんが早速ヒーローインタビューを始める。
「おめでとうございます、勝因はなんでしょうか!」
「覇道を目指す心だな! それしかあるまい! ふはははは!」
●新たなる脅威
夜空に花咲く大輪の花火。
地上100階のユニオンタワーマンション、堂々完成。祝賀会が屋上で開かれている。
『……万歳』
「「ばんざーい、ばんざーい」」
コボルドたちと万歳三唱するマゴイ。
壁画作成のため絵の具だらけになったソラスは感無量だ。
レーヴェ、小夏、ハナと琉那も祝いに来た。
屋上から見下ろせば新しく生まれ変わった町は、はるか下。分担して仕事をしたせいもあり、モザイクのような町並みだ。
小夏は首を傾げた。
「あれ? 解放感足りなくない?」
と言うや否やポケットからごそごそスイッチを取り出し、ぽちっと押す。
ドオオオオン。
一瞬にして吹き飛ぶハナ作成の桃色区画。
「あぁん……私の愛の町がぁ~……」
ガクリと膝をつき涙を流す彼女の肩に、マゴイがそっと手を置いた。
『……大丈夫……作り直せばいい……』
「マゴイさん……」
『……ユニオンは滅びない……何度でも蘇る……完全な共同体社会こそ人類の夢だから』
「え?」
屋上に巨大な黒い箱が競り上がってきた。それから発される声がリゼリオ中に響き渡る。
【ハロウ、市民。あなたは楽しく過ごせていますか? 幸福はあなたの権利です】
●全ては夢である。
智里は起きた。
大きく息を弾ませ両手を顔に押し当てる。
「わわ、わた、私、なんて破廉恥な夢をっ……は、恥ずかしすぎます」
布団の上で悶え転がり枕をバフバフ叩きまくる。
「どんな顔してハンスさんに会ったらいいのか……じゃなくて、当分ハンスさんに会えない~」
ハンスはカーテンの隙間から差し込む朝日を眺めながら、頭をがりがり掻いた。
「なるほど、これが咳をしても……の心境ですか」
アパート住人ソラス(ka6581)は、リフォームに賛成の立場。
「まあまあ、スペットさん。考えようによってはいけますよ。私もしがないハンター生活。光熱費が0になればだいぶ助かります。同じ思いを抱かれている方は多いのではないでしょうか」
「だあほ、何言い出すんや。そんなこと言うたらこいつが」
『……人々は幸福を求めている……求めているなら……与えるのがユニオンの義務……』
「ほらな、いらんことやる気出すやろ……」
星野 ハナ(ka5852)は一足先に自分が担当する改装区域へと駆けて行く。ユニオンの権力を嵩に、違った崇高な理念を基に好き放題で出来るのは今しかない。
「全ての愛を満たす街、リゼリオ! あぁん、乗ってきましたぁ! 一軒なんてみみっちいこと言っちゃ駄目ですぅ、リゼリオを愛の街に大改造ですぅ!」
琴吹 琉那(ka6082)はリゼリオの地図を手に思案顔。
「どないすればええやろか……折角やし感動させなアカンしぃ。んーー」
藤堂小夏(ka5489)とレーヴェ・W・マルバス(ka0276)は顔を見合わせる。
「リゼリオ……解放感が足りないね! 安全で快適な生活のため、まずは解放感を充足させなければ!」
「まるっと同意じゃの。まずはこの計画性のない都市景観をリセットせねば。分かるの? 重機では骨の折れる建物にはな、この導火線のついた筒をな、建物の柱に埋め込んでな――」
熱のこもった話し合いを数分続けた後レーヴェは、手持ちのボタンを押す。
「ではいってみよう、ポチッとな」
ズズズズズゥウウンンン……。
轟音と共に崩れ落ちて行くハンターオフィス本部。
「ハシャギすぎたか」
小夏の前には花火師が使う操作盤。
「はいはい、解放感に邪魔な施設はどんどん爆破しちゃいましょね~」
ぱちぱちスイッチがONにされていく。町の目に付く建造物が次々に吹き飛ぶ。
スペットが掠れ声を出した。
「……お前ら……せめて重機使えや……」
「えー、だってそれじゃ解放感が表現できないでしょう!」
「解放感とかどうでもええわ! 完全に放送事故やんけ!」
そこで琉那が、ポンと手を打つ。
「そうだ、京都にしよう」
画面に以下の文が被さってきた。
『*爆破は演出上の表現です。一連の工事は専門家の指導の下、住民の安全に配慮して行っております。』
●マラソン覇道
トップを切って転移門を抜けてきたのは、ルベーノ・バルバライン(ka6752)だ。
「ふはははは、どけどけどけぃ! ここに我が覇道の第一歩を刻んでやるわ~~!」
勢いを止めず驀進して行く彼の前に現れる北の長城。
コースはそこを迂回する形で作られている。だが彼は規定路線に従うことを潔しとしなかった。青龍翔咬波で壁をぶち抜き、直進。
「優勝は我のものだ! ふははははは!」
その姿を天竜寺 詩(ka0396)は、休憩所の陰に隠れて見ていた。
「わー……ルベーノさん本気だぁ……」
魔導バイクを傍らにした彼女は、その身を頭からすっぽりコートで包んでいる。
そこに天竜寺 舞(ka0377)が駆け込んできた。着物に下駄、白粉に日本髪という格好。
「お待たせ、詩。ルベーノもう行っちゃった?」
「うん」
と言いながら詩はコートを脱ぐ。あらわになったその姿は、着物に下駄、白粉に日本髪――舞と一緒。
彼女たちは今回双子という強みを生かし、『入れ替わり完走作戦』を行っている。無論極秘にだ。主催側にばれたら即失格となるので。
詩は舞からゼッケンを受け取り、舞は詩からコートとバイクを受け取る。次の転移門まで役目の入れ替わりだ。
「じゃ、頑張って。あたし先に行ってるから!」
と言い残し脇道からバイクで先行して行く舞。
(チャリティーでズルは良くないんじゃないかなぁ」
思いつつ詩は、他の参加者たちに交じって走る。
その中にイメルサ・ファルズール(ka6259)の姿があった。
リアルブルーにおける体育祭祀の正装、丸襟半袖シャツと赤ブルマを着用。ゼッケンの表側には平仮名で『いめるさ』。
本人いわく南方大陸で行方不明となった娘に呼び掛ける為参加したそうだが、併走車のカメラマンはブルマの食い込んだむちむちな尻とはち切れんばかりの熟れた胸とシャツがその胸に阻まれていることにより露になっている臍の付近ばかり映していた。
続いて視点は番組サポーターとして併走している黒の夢(ka0187)に移る。
カメラの目線は豊満な肉体をスパッツと番組のTシャツに包んだ彼女の足元から腿→胸→顔と舐めるような動きで移動していく。後、ポニーテールを作ることで露になっているうなじにも。
「これは、らぶを集める番組ですっ! それもらぶ、これもらぶ、であるー」
それがさっとイメルサに戻る。何事かと思えばサイズが小さすぎるブルマの下から白いパンツがちらちらはみ出していた。
レポーター・マリーの怒鳴り声が聞こえてくる。
「ちょっと運営、もっとましなカメラマンに交替させてよ! ただのカメラ小僧じゃないのよこいつら!」
ランナーの皆さんが安心して全力を出せるよう先行していた白バイキャノンくん(中の人――キヅカ・リク(ka0038))が戻ってきて画面を塞ぐ。そして、カンペをめくる。
【30秒後CM】
●ここでCMです
さわやかな清水が流れる情景(CGはめ込み画像)を背景にしたマルカ・アニチキン(ka2542)が、視聴者へ語りかける。
「お金というものは【水】と同じです。多すぎても少なすぎても毒となり、心と体を蝕みます。しかし、バランスよく循環させることが出来れば、命を与える恵みとなるのではないでしょうか……? 皆様、恵まれない人に愛の手を。世界は一つ、人類は皆兄弟……お金が問題を解決いたします。ぜひ募金にご協力を」
●南方行ってみよう
ディーナ・フェルミ(ka5843)の放った弓は電気ナマズの眉間を正確無比に打ち抜いた。
「やったの! 遥華さん、この魚毒がないかどうか聞いてほしいの!」
現地コーディネータ央崎 遥華(ka5644)は、ガイド役のコボルドたちに尋ねた。
「うー、わん、わん?」
「……わん?」
「ご安心ください、全く大丈夫だそうです!」
果たして本当にそうなのか。現地語が分かるのが彼女だけなので誰も確かめられない。
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は、ひとまず機材がやられていないか調べにかかる。
そこにバナナの皮が落ちてきた。一つだけではないいくつもである。
何だと思って見上げてみれば、川に突き出た枝の上、体中にペイントを施した男たちが鈴なりに腰掛けバナナを食い、ボートを見下ろしている。
ミア(ka7035)はサファリハットを押し上げ無邪気に言った。
「あ、お猿さんニャス」
「違うだろどう見ても原住民だろ」
ステラは威嚇のため、空へ向けた警告射撃を行った。
原住民が逃げ出す。
ミアが追う。ターザンのように。
「待つニャスー。あ~ああ~ニャス♪」
ところで電撃を受けカチャはボート上にぶっ倒れたままだ。
探検隊ルックの北谷王子 朝騎(ka5818)が彼女の傍らにかがみ込む。介抱でもするのかと思いきやジャージの下を引き下ろした。
露になるうさぐるみ模様のパンツ。
「ふぎゃあ!?」
跳び起きるカチャ。
「な、何なんですかいきなり!」
「いいでちゅか。テレビの前の視聴者は未知の光景……秘境を求めていまちゅ。決して朝騎の私利私欲でやっているわけでは無いんでちゅよ」
絶対嘘だ私欲だ。そう確信するに足る輝かしき朝騎の笑顔。
「カチャさん、そんなパンツで大丈夫でちゅか? サービスが足りなくないでちゅか?」
「余計なお世――おうえっ」
抗議の途中でよろよろっとボートの手摺りに寄りかかるカチャ。酔いは続行中なのである。
ニンジャ式サファリルックに身を包んだ『ルンルン広いし探検隊』隊長ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は彼女を気遣い、背を叩いた。
「ほらカチャさん元気出してください、ウォーターウォークで水面歩けば、船酔いも治るかも知れませんよ」
「あー、そーかも知れませんねー……」
ボートの手摺りを越え川に降りていくカチャ。
「がぼっ!?」
自分がウォータウォークを使えないことを思い出し慌てて戻ろうとしたところ、後方から顔を出す怪魚。
カチャはあっという間に水中へ引きずり込まれる。
「きゃあ! カチャさんがピラニア雑魔にぃ!!」
「何い! よっしゃ、ここは俺に任せろっ!」
ジルボ(ka1732)はアンカーショットで木に飛び移り、水柱が上がる場所目がけてポンコツ散弾銃で一斉掃射。
彼の頭上にいるパルムがスタジオへ送ってきた映像には、こんな文字が被さっていた。
<この後責任を持ってスタッフが助けました>
●嵐を呼ぶゲスト
「うーん、カチャさん大丈夫でしょうかねー」
気楽そうな男性司会者。
スタジオの一角に作られているキッチンスタジオでは、ミオレスカ(ka3496)が24時間ロールサンドイッチ作りに挑戦している真っ最中。他企画の人々へ差し入れする所存なのだ。
バナナ、ハム、たまごなどオーソドックスな具材の他、マラソンの中継地点にちなむ品――北方ならニシンの塩漬け、辺境なら野牛肉と豆、帝国ならソーセージといった物を挟んでいく。
助手はスペット。
「いつのまに俺こっちに回されてんねや。ちゅうかコボどこ行ったんや。いてへんやんけ」
キャノンくんが「南方直輸送」と書かれたクーラーボックスを持ってきた。開けてみれば巨大な電気ナマズの目玉。
そこでスタジオの照明が落ちた。ゲストの芸人と俳優たちが騒ぐ中流れ始めた、血沸き肉躍るBGM。
ステージに一条の光。
照らし出されたのは「漢」と書かれた褌一丁の南護 炎(ka6651)――超人レスラー『男色炎』。
「『挑戦』をさせて自分だけ高みの見物は許されるものではない……」
司会者は当惑と焦りの交じる質問をスタッフにぶつけた。
「あれ、ちょっと、え、この人の登場私聞いてないんですけど――」
「お前だけ『挑戦』しないのは許されない!」
炎が跳ぶ。司会者にラリアットを食らわし転がす。仰向けになった顔に尻落とし。
「ぶへえ!」
もがくところを引き起こし怒涛の勢いでその頭を自らが締めている漢と書かれた褌の中に突っ込んでパイルドライバー。
司会者は落ちた。
しかし炎は止まらない。次の獲物(男限定)に襲いかかっていく。
「オラオラお前も『挑戦』してもらおうか! 24時間耐久プロレスに!」
一部の視聴者以外誰も望んでいない地獄絵図が今幕を開ける。
しかしミオレスカは気に留めず己の作業に没頭する。
ひとまずナマズの目玉を丸茹でし、エキゾチックな薬草とマスタードを絡めロールサンド。
「はい、スペットさん。南方大河ロールサンドです」
「……お前……これを俺に食えちゅうんか……?」
「大丈夫です、火は通してますので」
スペットは渋々一口食べた。そして意識不明となった。
●視聴者の皆様
TVを見ていた穂積 智里(ka6819)は、至近距離にいるハンス・ラインフェルト(ka6750)に話しかけた。
「あの……これって、伝話でも寄付依頼できたんでしょうか。それとも、会場に行かなきゃ寄付できな……」
ハンスは彼女を片腕で引き寄せた。空いた手で、魔導スマホに触れる。
「そうですね……それじゃ試してみましょうか……ああ……まだTVやスマホの双方向は実現されていないようです。寄付をするなら会場まで行かなければなりませんね」
と言って細い首筋に顔を埋め、甘噛みする。
「どうせなら貴女が――」
その後どういう台詞が続いたかは聞き取れなかったが、不埒なものであったことは間違いない。智里の顔が内側から火を灯したようになったからには。
「――私の可愛いマウジー」
2、3の囁きが続いた後、こもるような乱れた息遣(以下略)
●探検続くよどこまでも
探検隊は岸辺に上陸し更なる奥地を目指していた。
格闘の末何とか這い上がってきたらしい。カチャは全身ずぶ濡れ。服があちこち裂け、破れている。
朝騎もずぶ濡れ。真っ白なシャツの下、ブラが透けて見えている。
「これで視聴率アップ、募金率アップ間違いなしでしゅ。スポンサーも大喜びでしゅよカチャさん」
「ああ、そうですか……」
先頭を行くのは先ほどの原住民たち。
あの後一応カチャを助けるのを手伝ってくれたので、悪い人達ではないらしい。バナナと交換したミアのおむすびを食べ、何か言っている。
通訳の遥華が神妙な顔で訳した。
「この先は現地の方でも近づきません――だそうです」
ルンルンがごくりとツバを飲む。
「もしやそこに、かの猫頭原人たちの遺跡が………!」
ジルボも拳を握り、真剣な表情。
「ついに……手掛かりが! さあ、行こうぜ皆!」
調理セットを背負うディーナも、やる気満々の様子だ。
「未知の味が私たちを待ってるの!」
ミアも先ほどトモダチになったホワイトタイガー(体長3メートル)の背に乗り、はしゃぐ。
「わーい、冒険ニャス冒険ニャス♪」
ステラは無言だ。気づいてしまったのである。原住民の腕に腕時計の日焼け跡があるということに。
そこにドンドロドロドロというあやしげな太鼓の音。
槍と盾を持った原住民の仲間が茂みから出てくる。
『ミナサン、イラサーイ』
『イラサーイ』
やけに友好的だ。
そこに声。
「あっ、カチャー!」
原住民が道を開ける中駆けてきたのは、リナリス・リーカノア(ka5126)。数ヶ月前当地で消息を絶っていた特殊部隊大佐。
グロッキー気味になっていたカチャはその姿を見て、元気を取り戻した。
「リナリスさん! 生きてるんじゃないかとは思ってまし」
台詞の途中で跳びつかれて、そのまま転倒。顔中にキスの嵐。
●マラソン続いてます
帝国市街地を抜け、ただ今エルフハイム。
1位はルベーノ。
「ふはははは! どうしたどうした、誰も我に追いついてこられんのか!」
森の中を縦横無尽に駆け抜けて行くその様はまさにネイチャーパルクール。
このまま彼の一人勝ちなのか――否、舞が追いすがろうとしている。立体軌道を駆使して。
だが、いかんせん和服は運動に不向きな構造。相手との距離が縮まらない。
「あー、衣装選び失敗したかな!」
愚痴りつつ枝を蹴り跳躍。双方猿のごとき身軽さ。もはや上空からのドローンカメラでもその姿を追い切れない。
このままでは視聴率が……いや、心配は無用。カメラはデッドヒートから離れた後方をばっちり捉えている。
そこではイメルサが己との戦いを始めていた。
(あそこに茂みが……いえ、駄目よ。何があろうと立ち止まってはいけない!)
彼女はトイレ休憩を含む一切の休憩禁止を己に課していた。娘の無事を祈念するためだそうだ。果たしてゴールまで持つのかどうか。大精霊よ彼女を守りたまえ。
一方黒の夢は、きちんと休憩場所に立ち寄る。
「うなな、サッとシャワー浴びてくるのなっ! あと後半、頑張るのよっ」
と言い置き鼻歌交じりにシャワールームへ。
見えそで見えない絶妙な磨りガラス越しのシャワーシーン。
「あ、シャンプー切れてるのな」
と言って扉を開けるところで画面一杯に広がるキャノンくんの顔。
『一旦CM』
キャノンくんの公式アカウントは現在、スケベな男たちの怒りによって大炎上している。
●CM裏模様
「こちらに集められた全ての募金を、当番組は人々を生かすための水として使いたいのです。それこそが、愛と希望を実現させる挑戦になると存じますゆえ、皆様にご配慮頂きますようお願い致します。繰り返しますがお金が問題を解決いたします。ぜひ募金にご協力を」
「はい、カット! マルカ君、いい出来だよ!」
キャノンくんからOKが出るや否やマルカは控え室に戻り、TV視聴を始める。
「ジルボさん、ジルボさんはどうなったんですかー!」
●南方古代遺跡発動
【歓迎探検隊ご一行様】の垂れ幕がかかった現地集落。
原住民たちが客人へのご馳走を作っている。
ディーナは彼らのお手伝い。でかいナナフシの足をポキポキ折ってナマズの肉と芋が煮えている鍋に入れ、かき混ぜる。
「未知の食に挑戦なのいただきますなの」
ミアも大蛇の頭に杭を打ちさばき、串を打ってお手伝い。
「おいしい蒲焼、作るニャス♪」
ところで集落の中央には、樹木に覆い尽くされた遺跡があった。
「あたしが来たときからずっとあったんだけど、中身については分からないんだよね」
「調べなかったんですか?」
「そうしようとも思ったんだけど、王国を築くほうが先かなって。部下も全員食べられちゃったし」
「そうですか……魑魅魍魎だらけですからね、ここ」
「あ、違う違う。歪虚にじゃなくてここの集落の人たちに食べられちゃったの。どうも食人習慣があるらしくて。あ、もちろんあたしが女王になってからは止めさせたよ?」
カチャとリナリスの会話が聞こえたのだろうか、ディーナの鍋をかき混ぜる手が止まった。
ステラはこの企画に参加したことをそろそろ本気で後悔し始めている。
(実録B級映画かよこれ……)
ジルボはこの際なので、ルンルン、遥華と遺跡を探検することにした。そうでもしなければ尺が余ってしょうがない。
皆で絡むツタを引き千切っていくと、サムズアップした手の石像発見。台座に『イイネ』と書かれた出っ張りがある。
「うん、こりゃもう押せってことだよな」
というわけでイイネを押すジルボ。
その途端遺跡と集落一帯が地下に飲み込まれた。
●ネオリゼリオ
リフォーム方面に、ミオレスカから差し入れが来た。
まずは、琉那にツナサンド。彼女の担当区はリアルブルーの古都京都へと変貌を遂げていた。うだつを挟んで並ぶ瓦葺の切妻屋根、道路と直角になった細長い家並み。
琉那は鳶姿。屋根の上で和建築についての蘊蓄を、ひとしきり語る。
「これは町屋作りという作りや。間口が狭うて奥に長いのが特徴やねぇ。祇園際の宵店では、表から奥まで見えるように開け放して、屏風を飾ったり……あ、その竹を割って並べたんは、犬矢来言うんよ」
続いてハナのところへチーズサンド。
彼女の担当区はヴァリオスを凌ぐ歓楽街になっていた。
扇情的な音楽と映像。あっちでもこっちでもノーマルアブノーマル問わないカップルが人目もはばからずいちゃつきまくりお休み所に消えていく。
ハナはとめどなく流れる鼻血をティッシュで塞ぎながら熱い抱負を語る。
「全ての愛を内包するピンクな街リゼリオ! ユニオンの名の下に道徳革命を起こすのです!」
次は、レーヴェにソーセージサンド。
彼女の担当区域は広々とした公園になっていた。気持ちのいい芝生に手入れの行き届いた木々。丸太を利用したベンチ、テーブル。アウトドアルックの家族連れ、若者達……リア充たちの宴が始まっている。
そこに本人と小夏も混じり、肉を食っている。
「小夏よ、おぬしリフォームはせんのか?」
「いやー、一通り爆破したら解放感が充足しちゃってさ。後は皆に任せるよ」
最後にソラスのところへサーモンサンド。
タワーマンションはすでに地上20階を越えているが、螺旋を描いてまだ上に伸びるもよう。彼はクレーンのゴンドラに乗って、壁面に絵を描いている。
世界の融合と平和を願うその気持ちは、多彩な色の線が絡み合う姿となって表現されている。それはまるで、大樹の幹と枝。
そこへコボちゃん率いるコボルドたちが色とりどりの手形を押していく。
そうすると、木に花が咲いたようになった。
「ああ、これはいいですね。ありがとうございます、コボちゃん」
「わし、わし!」
●ダンジョン攻略
遥華、ルンルン、ジルボは走っていた。
落ちた後なぜかトランポリン。それに弾き飛ばされた先にシーソー。そしてつづら折りの坂道。後ろから転がってくる巨大なビー玉。
「ピタ●ラスイッチかよこれ!」
一行の殿を勤めているジルボは散弾銃を撃ちまくる。撃たれたビー玉は弾け消えるが、すぐ新手のビー玉が後から後からわいてくる。
「くそ、弾が切れた!」
焦り毒づいたところ横の壁が抜けた。ステラが顔を出す。
「最後の弾倉だ。大事に使え!」
「あんがとよ!」
投げられてきたものを片手で受け取るジルボ。鮮やかに装填し連射。最後のビー球が消えた。一行は危機を脱する。
ほっとしたところでチャリチャリ重そうな音が聞こえた。
何だと思って見れば、いつのまにかジルボのポケットが金目の盗掘品でパンパンになっていた。
ルンルンは驚きを隠さず言う。
「ジルボさん、いつのまにそんなに盗んだんですか!?」
「盗んだんじゃねえよ寄付のために回収したんだよ。ほら、これチャリティーだし、チャリティー」
●控え室では
「ジルボさん……かっこいい! かっこいいかっこいい~ご両親様彼をこの世に産み育んでくださってありがとうございますぅ!」
畳敷きの部屋でTVを前にじたばたするマルカ。そこにキャノンくんがやってきた。
「マルカ君、次のCM頼むよ」
「ええー……それ、後に回せませんかー?」
「回せないよ。ほら、早く動いてくれ」
●Kの災難
「いたた……どういうことなんですかもお……」
尻をさすりながらカチャは起き上がった。
LEDライトの乏しい光で見るに、自分が今いるところは人工的な通路ではあるようだが。
「みんなどこですかー、リナリスさーん」
足首に何かが絡み付く感触がした。引っぱられ、瞬く間に奥へ引きずり込まれる。
逆さ吊りにされ引っ繰り返る視界。見えたのは、艶めいた笑みを浮かべるエルフの少女。
「うれしいですよ。まだ生きていたんですね」
「え? あの、どなたで……」
少女の瞳は全然笑っていない。背中から毒々しい薔薇の花と、ぬめついた触手が生えている。
「じっくり時間をかけて狂わせてあげますからね」
この少女が古代文明が作り出した対邪神決戦用生体兵器エルバッハ・リオン(ka2434)であり、自分の顔が彼女を裏切った親友の顔に偶然似ていることなど、カチャは知るよしもない。
しかし相手が何をしようとしているのかはなんとなく分かった。
「ちっ、違う違う人違い……やめ、やめてー!」
触手はカチャの足を這い上がり(以下略)
●みたびCMです
「お金をください」
「ちょっと待てマルカ君、雑すぎるぞそれは!」
●遺跡の中心で愛を叫んだ獣
迷宮の中カチャを探していたリナリスは、第六感で何事かを感じ取った。
「カチャをおもちゃにしていいのはあたしだけだー!」
遺跡の復活により不安定化していた周辺のマテリアルが彼女の怒りによって一層乱れ、次元の撹乱を引き起こす。
空に黒々した亀裂が入った。
●ところでマラソン続いてます
詩は走っていた。引っ切りなしに前方から般若心経が聞こえてくる。イメルサが唱えているのである。シャツの背中は汗びっしょり。表情には明らかな苦悶。ひとごとながらハラハラせざるを得ない。
ルベーノの姿は見えないほどはるか遠く。
まあ、姉が交替すればたちどころに距離は縮めてくれるだろうがそれにしても。
「うな、頑張るのなー。王国を過ぎたら自由都市同盟領、後は一直線にゴールなのなー」
黒の夢さん、励ますよりトイレに行くことを勧めてあげる方がいいのではないかと思うのだが本当に大丈夫なのだろうか。
「イメルサさん、あのね、いいから休憩とっていいから! 色んな意味で危ないから本当!」
(あ、マリーさんも同じこと思ってるんだ……)
●困ったときにはおまじない
やっと外に出たかと思いきや断崖絶壁。森は遥か下。
いつのまにやら遺跡は天空の城と化していたのだ。
先に脱出していたとおぼしきミアも虎と一緒に困り顔。
「これじゃ降りられないニャス……」
そこで遥華が、急にこんなことを言い出した。
「思い出しました。私、お婆さんにたくさんおまじないを教わったんです。物捜しや病気を治すのや……絶対に使っちゃいけない言葉もあるんです」
「いきなりどうしたんだお前」
まっとうに突っ込むステラ。しかし遥華はそれを無視し続ける。
「その中には禁断の呪文もあるんです」
ルンルンが、怯えた様な顔をする。
「まさかそれは、滅びのまじない……」
遥華が頷いた。
「それを唱えればあるいは、この状況を打破出来るかも……」
ジルボとミアが色めき立つ。
「本当か! よし、やってみようぜ!」
「うん、やるニャス!」
この中でまともなのはオレ一人なのか。
そう思うとステラは、なんだか寂しくなってきた。
●怪獣大決戦
ディーナは遺跡を覆う巨樹の根っこに捕まることで、謎の空間への落下を免れていた。
しかしだからといって落ちて行った人々よりマシな状況にあるとは言えない。浮かび上がっていく遺跡と一緒に空中へ連れて行かれることに変わりはなかったからだ。
空に出来た巨大な裂け目から目玉が覗いた。
戦慄するディーナ。
「あ、あれは邪神!?」
裂け目から腕が突き出――出――出ない。指しか。
朝騎がひょいと横から出てきて言った。
「どうやら通り道が狭すぎるようでちゅね」
そこにリオンが出てきた。邪神が現れたからにはそちらを第一の攻撃目標としなければならない。それが対邪神決戦用生体兵器の宿命。楽しい腹いせを中断させられ苛立ちつつ、身から生じた触手を増殖させ完全に身を覆い、鎧となして邪神に向かう。
その姿、巨大な花を頭部に持つ恐竜のよう。
指を噛まれた邪神は一旦引っ込んだ。ほどなくしてノズルが裂け目から出てくる。
そこから霧が噴き出す。リオンが激しく咳き込む。察するに防犯スプレー的なものらしい。
●ところでスタジオは
死屍累々。もはや誰も立ち上がれない状態である。
仕方ないので炎は自らが司会をすることにした。助手はミオレスカ、そしてキャノンくん。
「さあ、挑戦は残り一時間を切った! 各企画ともいよいよ佳境に入ってきたぜ!」
「――あっ、今、選手がリゼリオに戻ってきたとの報告が入ってきました!」
「トップは果たして……」
●古代遺跡猛る
リナリスはどうにか見つけ出したカチャを引きずり、遺跡の最奥へ向かっていた。
「もう、心配したんだからね」
カチャの意識がぐずぐずに蕩け落ちていることについてはさして心配していない。愛の力で何とかする。
とにかく今は邪神と対邪神決戦用生体兵器の始末が最優先である。特に後者。
「さあ、ソドムとゴモラを滅ぼした天の火を食らってもらおうかな?」
コントロールパネルに向かう彼女の顔は悪魔みたいだった。
遺跡のプラズマ砲が容赦なく邪神と対邪神兵器を襲う。
そのとき遥華たちにより滅びの呪文が解き放たれた。
「「ワロス」」
遺跡は第二形態に入った。
天空の城ではなく動く城として、邪神らと三つ巴の戦いを繰り広げることになる。
滅びの呪文とは遺跡の滅びではなくこの世の滅びを指していたのであった。
●勝者に祝福を
千本鳥居の間を駆け抜けて行くのは、ルベーノ。
「わははは、自由都市同盟よ、我は帰って来たぞ!」
その後ろにイメルサ。疲労とは違う意味で瀕死の状態だ。
舞も先程まで同一線上で争っていたのだが、鳥居の手前で入れ替わりがばれてしまった。マラソンにおいて女性の胸のみをチェックしているエロ視聴者のせいだ。
「違う、これはいつ間違いに気づくか、視聴者への挑戦だったんだー!」
と言いながら警備員に連れて行かれる姉の姿を、詩は物陰からそっと見送る。
(お姉ちゃん……私の方が胸が大きくてごめんね)
心の中で涙を流しつ、財布の中身を鳥居横の募金箱に入れる。
鳥居、参道、本道、手水屋、参拝、お堂の扉を開け観音像がずらりと並ぶスタジオの廊下。BGMは〇ライ。
ゴールのふすまを蹴破り飛び込んできたのは、ルベーノ。続いてのイメルサはそのままスタジオを通り抜けトイレに駆け込む。放送事故を起こさずすんだのだ。間に合ったのだ。大精霊のおかげである。
キャノンくんが早速ヒーローインタビューを始める。
「おめでとうございます、勝因はなんでしょうか!」
「覇道を目指す心だな! それしかあるまい! ふはははは!」
●新たなる脅威
夜空に花咲く大輪の花火。
地上100階のユニオンタワーマンション、堂々完成。祝賀会が屋上で開かれている。
『……万歳』
「「ばんざーい、ばんざーい」」
コボルドたちと万歳三唱するマゴイ。
壁画作成のため絵の具だらけになったソラスは感無量だ。
レーヴェ、小夏、ハナと琉那も祝いに来た。
屋上から見下ろせば新しく生まれ変わった町は、はるか下。分担して仕事をしたせいもあり、モザイクのような町並みだ。
小夏は首を傾げた。
「あれ? 解放感足りなくない?」
と言うや否やポケットからごそごそスイッチを取り出し、ぽちっと押す。
ドオオオオン。
一瞬にして吹き飛ぶハナ作成の桃色区画。
「あぁん……私の愛の町がぁ~……」
ガクリと膝をつき涙を流す彼女の肩に、マゴイがそっと手を置いた。
『……大丈夫……作り直せばいい……』
「マゴイさん……」
『……ユニオンは滅びない……何度でも蘇る……完全な共同体社会こそ人類の夢だから』
「え?」
屋上に巨大な黒い箱が競り上がってきた。それから発される声がリゼリオ中に響き渡る。
【ハロウ、市民。あなたは楽しく過ごせていますか? 幸福はあなたの権利です】
●全ては夢である。
智里は起きた。
大きく息を弾ませ両手を顔に押し当てる。
「わわ、わた、私、なんて破廉恥な夢をっ……は、恥ずかしすぎます」
布団の上で悶え転がり枕をバフバフ叩きまくる。
「どんな顔してハンスさんに会ったらいいのか……じゃなくて、当分ハンスさんに会えない~」
ハンスはカーテンの隙間から差し込む朝日を眺めながら、頭をがりがり掻いた。
「なるほど、これが咳をしても……の心境ですか」
依頼結果
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TV制作相談所(相談卓) マルカ・アニチキン(ka2542) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/11/04 20:24:30 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/04 20:20:43 |