ゲスト
(ka0000)
困惑、巨大三毛猫
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/02 07:30
- 完成日
- 2017/11/08 17:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町「ガンナ・エントラータ」。
グラズヘイム王国における、流通の要となる町だ。
東から陸路で運ばれていくこともあるが、やはり海路で運ぶことが出来る物量は非常に多い。
自由同盟から大量の物資がこの地を通過し、王都イルダーナを中心に王国内の都市、町へと運ばれていく。
物が集まる場所には人も集まる。港町は沢山の人が集まり、活気に満ち溢れている。
そんな町だからこそ、トラブルが発生することも少なくない。
ガンナ・エントラータ北の平原。
「…………にゃあ」
大きさのせいか、やや野太い声で鳴く1匹のメスの三毛猫。
平原を歩く猫はずしんずしんと音を立てて歩く。それに、小動物や羽虫は慌てて逃げ出してしまう。
さすがにこの体躯では他の猫と一緒に行動することも難しく、野良猫仲間にも見捨てられてしまった。
これだけ大きいと、餌を食べるのも大変だ。水場は確保できていたらしいので、そこで、魚を取って食べるなどして、なんとか生きてはいたようだったが……。
臆病な性格らしく、今は自分よりも小さな大型動物と対することもなく、率先して餌を探しに出向くこともほとんどないようだった。
1匹で寂しくてくてくと平原を歩く巨大猫へと、黒い影が目を光らせる。
ギャア、ギャアアァァァ……。
ギャア、ギャアアァァァ……。
それは、歪虚と化してしまったカラスの集団。
そいつらはいい餌を見つけたと、汚らしい声で鳴きながら巨大猫へと襲い掛かるのだった。
●
ガンナ・エントラータのハンターズソサエティ。
そこでは、糸目の受付女性、シェリーがハンター達の来訪を待っていた。
「いらっしゃいませー」
やや間延びした口調で、彼女はハンターに合いそうな依頼を選ぶ。
「皆さん、この近辺で発生していた巨大化生物騒ぎをご存知ですかー?」
ハンターの中には知っている者もいたようだが、王国以外の地域を中心に活動する者などは初耳だったようだ。
この地で何度か発生している巨大生物騒ぎ。どうやら、レリオという初老の男性研究者が作った薬品による投薬が一つの要因とされている。
ただ、その全てが巨大化していないこと、実際、回収した薬品を使用しても何も起こらなかったことから、マテリアル異常などの複数の要因が重なったことが原因と見られていた。
そのレリオは人の為と思って研究を続ける好々爺であり、今回の1件は本人の思惑と違った形で引き起こされている。
彼はハンターに諭され、泣く泣く生き甲斐ともなっている実験を止めたらしい。彼はその後、しばらくは自身の生活と迷惑をかけた人々に対する陳謝に回っているという話もある。
この為、レリオが新たな実験を行っていないのは間違いないが、それまでに彼が薬品を投与した生物はどうやらまだいたらしい。
「北の平原に最近、巨大猫の目撃があっているようですねー」
これまで、巨大化生物は人々の邪魔となり、さらに気概を加えてくるほどに凶暴になっていた生物もいた。
ところが、この巨大猫、元々の性格なのか、それとも巨大化の影響なのか、やや臆病な性格をしているらしく、近場を通る人を襲う素振りを見せない。
邪魔になるわけでもなく、放置しても良いのではという意見が出る中、ほぼ同じ場所で雑魔となったカラスの姿が目撃されている。こちらは確実に討伐しなければならない対象だが、巨大猫をどうするかも問題になっている。
「カラス雑魔は普通に討伐依頼が出されていますがー、同時にー、巨大猫についてもハンターズソサエティに一任されることとなっていますー」
うまく雑魔を倒した後は、巨大猫をどうするか結論を出したい。
放置するなら、放置で問題はない。ある意味で一番楽な選択肢だ。もっとも、また雑魔に襲われるなどする可能性はあるが……。
感情移入するのであれば、別の場所に巨大猫を移すのも手だ。誰も近寄らなさそうな場所へと輸送するだとか、いっそ、レリオに責任を取らせて彼に預けるという手もある。
また、港町の裏通りに猫カフェなる店が営業されているとのこと。店主がシビアな人間な為であること、裏通りがそれほど大きくないこともあり、こちらはこちらで問題が山積するのは必須ではある。
「雑魔の討伐と、ハンターの皆さんのご判断、お待ちしていますー」
この1件をハンター達に託し、シェリーは深く頭を下げるのだった。
港町「ガンナ・エントラータ」。
グラズヘイム王国における、流通の要となる町だ。
東から陸路で運ばれていくこともあるが、やはり海路で運ぶことが出来る物量は非常に多い。
自由同盟から大量の物資がこの地を通過し、王都イルダーナを中心に王国内の都市、町へと運ばれていく。
物が集まる場所には人も集まる。港町は沢山の人が集まり、活気に満ち溢れている。
そんな町だからこそ、トラブルが発生することも少なくない。
ガンナ・エントラータ北の平原。
「…………にゃあ」
大きさのせいか、やや野太い声で鳴く1匹のメスの三毛猫。
平原を歩く猫はずしんずしんと音を立てて歩く。それに、小動物や羽虫は慌てて逃げ出してしまう。
さすがにこの体躯では他の猫と一緒に行動することも難しく、野良猫仲間にも見捨てられてしまった。
これだけ大きいと、餌を食べるのも大変だ。水場は確保できていたらしいので、そこで、魚を取って食べるなどして、なんとか生きてはいたようだったが……。
臆病な性格らしく、今は自分よりも小さな大型動物と対することもなく、率先して餌を探しに出向くこともほとんどないようだった。
1匹で寂しくてくてくと平原を歩く巨大猫へと、黒い影が目を光らせる。
ギャア、ギャアアァァァ……。
ギャア、ギャアアァァァ……。
それは、歪虚と化してしまったカラスの集団。
そいつらはいい餌を見つけたと、汚らしい声で鳴きながら巨大猫へと襲い掛かるのだった。
●
ガンナ・エントラータのハンターズソサエティ。
そこでは、糸目の受付女性、シェリーがハンター達の来訪を待っていた。
「いらっしゃいませー」
やや間延びした口調で、彼女はハンターに合いそうな依頼を選ぶ。
「皆さん、この近辺で発生していた巨大化生物騒ぎをご存知ですかー?」
ハンターの中には知っている者もいたようだが、王国以外の地域を中心に活動する者などは初耳だったようだ。
この地で何度か発生している巨大生物騒ぎ。どうやら、レリオという初老の男性研究者が作った薬品による投薬が一つの要因とされている。
ただ、その全てが巨大化していないこと、実際、回収した薬品を使用しても何も起こらなかったことから、マテリアル異常などの複数の要因が重なったことが原因と見られていた。
そのレリオは人の為と思って研究を続ける好々爺であり、今回の1件は本人の思惑と違った形で引き起こされている。
彼はハンターに諭され、泣く泣く生き甲斐ともなっている実験を止めたらしい。彼はその後、しばらくは自身の生活と迷惑をかけた人々に対する陳謝に回っているという話もある。
この為、レリオが新たな実験を行っていないのは間違いないが、それまでに彼が薬品を投与した生物はどうやらまだいたらしい。
「北の平原に最近、巨大猫の目撃があっているようですねー」
これまで、巨大化生物は人々の邪魔となり、さらに気概を加えてくるほどに凶暴になっていた生物もいた。
ところが、この巨大猫、元々の性格なのか、それとも巨大化の影響なのか、やや臆病な性格をしているらしく、近場を通る人を襲う素振りを見せない。
邪魔になるわけでもなく、放置しても良いのではという意見が出る中、ほぼ同じ場所で雑魔となったカラスの姿が目撃されている。こちらは確実に討伐しなければならない対象だが、巨大猫をどうするかも問題になっている。
「カラス雑魔は普通に討伐依頼が出されていますがー、同時にー、巨大猫についてもハンターズソサエティに一任されることとなっていますー」
うまく雑魔を倒した後は、巨大猫をどうするか結論を出したい。
放置するなら、放置で問題はない。ある意味で一番楽な選択肢だ。もっとも、また雑魔に襲われるなどする可能性はあるが……。
感情移入するのであれば、別の場所に巨大猫を移すのも手だ。誰も近寄らなさそうな場所へと輸送するだとか、いっそ、レリオに責任を取らせて彼に預けるという手もある。
また、港町の裏通りに猫カフェなる店が営業されているとのこと。店主がシビアな人間な為であること、裏通りがそれほど大きくないこともあり、こちらはこちらで問題が山積するのは必須ではある。
「雑魔の討伐と、ハンターの皆さんのご判断、お待ちしていますー」
この1件をハンター達に託し、シェリーは深く頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●
港町「ガンナ・エントラータ」の北、草原地帯。
数人のハンターが依頼の為、平原を歩いていく。
「猫かぁ、恵が猫になったし、猫も守らないとだよね」
兎を自称する白髪の少女、玉兎 小夜(ka6009)は視線を傾けた先には、玉兎・恵(ka3940)の姿があった。
2人は主人とメイドの関係であり、さらに先へと踏み込んだ仲でもある。
「猫さん、たったひとりで寂しい想いをしているよね」
今回は、青い鱗を持つワイバーンのクウに乗っての参加である、ドラグナーのユウ(ka6891)。クウはユウが生まれたときから見守ってくれている竜だ。
今回の救助対象である猫は、色々な要因が絡み合って巨大化してしまったという。それもあって、仲間にも見放されて1匹でいるらしい。
「またあのご老体のですか」
無表情ながらも、T-Sein(ka6936) の顔にはなにやら威圧されるような雰囲気が纏っていて。原因の一つを作り出した研究者のレリオに対して、彼女は怒りを覚えていたのだ。
「猫の救助だけと思えば、その後もか。面倒な仕事になりそうだなぁ……」
やや目立つ服装をした茶髪の青年シェイス(ka5065) は、猫は懐かせるまでが面倒なことをその理由として挙げる。
「猫をおとなしくさせるために……またたびを借りてきたが……」
先ほど、シェイスは猫カフェに寄って来たらしい。これでうまく猫を引きつける事ができればよいが。
「エンリコさんを説得して仲間がいる猫カフェで生活してもらえればいいけど……、雑魔の情報も出ているし急いで探さないとだね」
時間はなかった為、猫カフェオーナー、エンリコにはまだ事情を説明していない。事情の説明は二の次で、まずは猫を探して保護するのが先だろう。
「なんともはや。ハンターになると面白いものに出会えて仕方がありませんねぇ……」
大道芸人として、各地を回るフーリィ・フラック(ka7040)。彼は今回もまた、面白いものに出会えそうだと目を光らせる。
「しかしながら、件のデカ猫ちゃんに罪はありませんし、助けるだけは助けましょう」
「……怒ってても仕方ありません。猫様には何も害がないのですから、さくっと助けましょう」
一旦怒りを抑えたT-Seinは仲間に同意し、足を速めて巨大猫の発見を急ぐのである。
●
平原を移動し、巨大猫の捜索に当たるハンター達。
ワイバーンのクウに乗ったユウが飛翔の翼で空中へと舞い上がり、空から捜索する。
探すは、3mもの大きさがある猫だ。広い平原とはいえ、その大きさは目に付く。
「北西の方向に、それらしき影が見えます」
それらしき影を発見したユウは、地上のメンバーへと伝えて誘導する。
地上でT-Seinがトランシーバーにてその指示を聞き取り、メンバーを引き連れて移動していく。
しばらくして、ユウは猫の周囲に何かが近づいているのに気づいた。
「猫が襲われています!」
ユウは仲間に改めて一言告げ、覚醒していく。頭に純白の龍角を現した彼女はクウを急加速させて巨大猫へと迫る。
メスの巨大猫に飛び掛っていたのは、4羽のカラス雑魔だ。
猫よりは一回り小さいものの、自然の摂理から外れた雑魔達はカラスとは思えぬほどに大きく膨らみ、高く飛ぶことができなくなっていた。
だが、その瞳は赤く輝き、餌を見定めている。それらに一層、巨大猫は怯えてしまう。
そいつら目掛けてクウは奇襲し、鋭い爪を振り下ろす。
さらに、ユウがクウから飛び降り、霊氷剣「コキュートス」を振りかざして強襲する。一太刀浴びせた彼女は着地した衝撃を気にせず、雑魔に対して身構えた。
しばし、カラスどもは巨大猫とユウに対して襲い掛かる。
鋭いくちばし、それに、周囲へと強風を巻き起こす羽ばたきは彼女の体力を削っていく。
「【殲滅執行】……、そこから失せろ鳥風情が!」
そのユウを義姉と慕うT-Seinは気を練りながら、雑魔達へと迫る。その間に、彼女の肌は褐色へと変化し、全身を包み込む気が銀色に煌き出していた。
飛び込んできたT-Seinもまた雑魔のターゲットとなり、クチバシでついばまれることとなる。
「恵、援護よろしく」
「はーい、了解ですよぅ!」
息の合った小夜と恵。
ダッシュする小夜の側頭部にはいつの間にか、白い垂れた耳が付いていた。彼女は古びた包帯を巻いたままの魔腕を振りかぶって。
「こんにちは、ヴォーパルバニーです! 今回は殴り失礼!」
前方へと踏み込みながら小夜は真っ直ぐに一撃を放ち、猫に気を取られていたカラス雑魔へと強く殴りつけた。
さらに、その後方から猫の耳と尻尾を生やした恵が七色に輝くロングボウを手にし、番えた矢を射放って追い討ちをかける。
「まずは安全確保ですか。猫ちゃんを驚かせてパニックにならないよう注意しないといけませんねぇ」
すでに、巨大猫は雑魔に襲われている。できる限り傷の浅いうちにと、フーリィはカラスからの攻撃はある程度覚悟の上で、仲間達と共に飛び込む。
「名前がわかればよかったのだが……」
研究者であるレリオがこの猫に名前をつけていなかったとの情報を、シェイスは思い出す。もし名前があったなら、名前を呼ぶことで落ち着かせられるかもしれないと考えたのだが……。
ともあれ、まずは戦場となる場所の足場を確認しておこうと、シェイスは周囲を見回し始めたのだった。
●
巨大猫を救う為、ハンター達は襲いかかるカラス雑魔の駆除を始める。
仲間達が仕掛けて行く中、シェイスは周囲を見回す。
ほぼ障害物すらない平原。しかし、所によっては動物などが開けたと思われる穴、窪みがあることもあり、彼は仲間や猫がそこで足を取られてしまわぬようにと警戒をしていたようだ。
着地の衝撃、雑魔の猛襲を堪えたユウは、頭上を飛ぶクウを見上げて。
「クウ、他の雑魔がいないか警戒をお願い!」
猫を怯えさせぬように、彼女はクウに上空の見張りを任せ、自らは龍騎士を称える歌を気高く、誇り高く響かせる。そして、彼女はそのまま高めたマテリアルをさらに練り上げてその効力を高めて行った。
T-Seinは高まる気にその身を包み、巨大猫を襲うカラス目掛けて素早く跳躍して距離を詰める。
そして、その腕の機械手甲「ソルティエール」で殴りかかりながら、体内のマテリアルを一気に送り込み、爆発的な衝撃を雑魔へと与える。
「グエエエエエエエェェッ!!」
汚らしい声を上げるカラスどもが散る中へと飛び込み、小夜は巨大猫と接触する。
「にゃんこ。安心しな。そのまま動かないで置けば……首は取らないよ」
怯えて身が竦んでいる猫に優しく呼びかけた小夜は、敵に視線を向けた。
カラスという生き物は元々警戒心の強い生き物だ。一旦距離を取って固まり、こちらの様子を窺ってくる。
その隙を小夜は突き、斬魔刀「祢々切丸」を手に気を練り上げて。
「これは喰らいつく顎。龍からは命を。勇士へは首を!」
気を高めたことで攻撃射程を広げ、カラスがいる空間に狙いを定めた小夜はその中にいる雑魔全ての身体を薙ぎ払う。
だが、相手も雑魔と成り果てた存在。マテリアル持つ者を執拗に狙い、飛び掛ってくる。その狙いは小夜だ。
敵陣に飛び込む形となっていたが、小夜は全く憂いなど感じていない。
なぜなら、愛しい存在である恵が自身を援護するように、鋭く矢を射掛けてくれていたからだ。
(兎さんの援護を)
恵はその一心で、マテリアルを視力と感覚に集中させ、カラスどもの殲滅をはかる。
飛び掛り、羽ばいてくる敵から猫を護る為にと、背後にいたフーリィは猫の手前に土の壁を構成し、少しでも雑魔どもの攻撃から護ろうと動いてくれていた。
これでしばらくは、猫も雑魔から身を隠すことができるはずだ。
そして、周囲の確認をしていたシェイスも攻撃に乗り出す。
覚醒しても見た目に全く変化の見られない彼は、足にマテリアルを込めて移動していく。
今度は身体へとそのマテリアルを潤滑させ、シェイスはカラス雑魔目掛けて左手で短刀「陽炎」を振るう。
黒曜石の如く漆黒に変貌した刃で、彼はその喉元をかき切った。
「グエエエェェェッ!」
気味悪く鳴くカラスはまだ戦意を失っておらず、大きくなったその身体でハンター達のマテリアルを奪いつくそうとしてくるのである。
カラス雑魔は餌をついばむくらいの気持ちでこの場に現れたのだろうが、ハンター達はそれをさせじと攻勢を強める。
恵は小夜の攻撃や回避に合わせるようにして、矢を射かけていく。それに怯むカラス雑魔だが、1体が汚らしい声を上げて飛び掛ってきた。
「これは引き掴む鉤爪。努、燻り狂える者の傍に寄るべからず!」
ここぞと飛び掛る小夜。またも恵の一矢による援護が飛び、雑魔が僅かに動きを止めて。
そこを目掛け、小夜はカラスへとぶち当たり、魔腕を巻いた右腕から鮮血色のマテリアルを発する。
後方の敵にまで及ぶ一撃。近場のカラスの体には風穴が穿たれており、そいつは次の瞬間、消えてなくなってしまった。
「ま、防ぐだけでもいけませんか」
猫の手前の防壁の耐久力を気に掛けつつ、フーリィは骨杖「カラベラ」を振り上げてカラスへと魔法の矢をぶつけて行く。
そこへ、シェイスが躍りこむ。カラスは首を突き出して彼を狙うが、シェイスは空中で旋回するようにしてその一撃を避けて見せる。
その勢いを殺すことなく、彼は黒く変色させた「陽炎」の刃でまたも敵の首を狙い、かき切っていく。
黒い血のようなものをぶちまけた雑魔は、声すら上げられずに消滅していった。
こちらでは、ユウ、T-Seinの2人が連携して雑魔と当たる。
果敢に攻め立てて猫から注意を逸らすユウ。響く彼女の歌は敵に絶大な効果を示し、明らかに敵の力を弱めていた。
「ザイン、狙って!」
踊りによるステップの最中、ユウはホバリングしていたはずの敵が地面に落下した隙に妹へと呼びかけると、銀色の気を纏うT-Seinが猛然と敵に迫って。
「消え失せろ!」
風を纏ったT-Seinの殴打。その衝撃を受けた敵の目から光が消え、この世から姿そのものを消してしまう。
残る1体。恵が矢を飛ばして牽制すると、危険を察したカラスは背を向けて逃げ出そうとする。
「さて、にゃんこ。危機は去った。安心するといい。……敵は全て滅ぼした」
猫へと振り返り、声をかけた小夜。
ただ、その背後で彼女が指定した空間を飛ぼうとしていたカラスが斬撃を浴び、断末魔の叫びを上げて霧散していった。
「首狩り兎が逃がすわけないじゃん?」
素っ気無く告げた小夜はそのまま恵へと駆け寄り、その身体を抱きしめる。
「恵、付き合ってくれてありがとぉ、楽だったよ!」
頬擦りする伴侶の姿に、恵は瞳を細めるのだった。
●
カラス雑魔を全て撃破したハンター一行。
怯える巨大猫はまだ硬直したまま。まずは猫が人に慣れられるようにと、シェイスは持ってきたツナ缶とマタタビを差し出す。
「猫ちゃん。お怪我はありませんか?」
傷はさほど大きくなかったこともあり、フーリィは用意していたミネラルウォーターだけを巨大猫へと与える。マタタビに惹かれた猫は、与えられた缶詰や水を口に入れていたようだ。
「玉兎・恵でっす。宜しくお願いしますねー」
恵は改めて猫へと挨拶し、その顔を見上げる。
「ネコさんですかー。おっきいですねー……」
すでに戦闘でも出してはいたが、霊闘士のサブクラスについたことで、覚醒すると猫耳に尻尾が出るようになったことで、恵は猫に親近感をばりばり抱いている。
「驚かせてしまってすまないな。私達はお前に危害をくわえたりはしない」
落ち着かせるよう声をかけながら、T-Seinは巨大猫の体を優しく撫でる。
「怖がらせて御免ね。もう大丈夫ですよ」
ユウも穏やかで静かな歌と共にステップを踏み、猫を優しく撫でて落ち着かせようとしていた。その際、T-Seinはミケと名づけて呼びかけると、巨大猫は反応を見せていたようだ。
ハンター達の気遣いもあって、猫の怯えは少しずつなくなり、慣れて行く。1匹で寂しさを覚えていた反動もあったのだろう。
そうなるに連れ、本題であるこの巨大猫をどうするかという議論になる。このままにしておくと、歪虚にまた狙われる危険もあるが……。
「ミケを猫カフェに引き取ってもらいたいと思うのですが……、どうでしょう?」
「やっぱり猫カフェですかねえ」
T-Seinの提案に、うずうずしながらミケをもふもふしていた恵も同意する。
「こんなもふもふできるネコさんがいるなら、人気でますよー」
「連れ戻るにしても、臆病だと難しいしな」
預けるにしても、直ぐに小屋や餌を用意するのは難しい。
そこで、シェイスはレリオ爺さんの家の一部を借り、依頼の合間に世話をしようと提案を持ちかける。
「それに、俺は猫好きだしな」
シェイスもそう主張し、ミケを少しずつ自分達に慣らす。
ユウはまたクウに怯えないよう顔合わせし、少しずつ距離を近づけていった。
最初は怯えたままだったミケがある程度慣れてきたところで、ハンター達はミケを従えて港町に連れて行くことになる。
道中にて、ばったりとレリオ爺さんと出くわした一行は、彼へと餌代などの費用を持つよう告げた。
「産んだんだから、責任とれ? そういうの兎は厳しいゾ?」
小夜の後ろから、T-Seinはイイ笑顔を浮かべて手の関節を鳴らす。現在、お詫び行脚の為に町を駆け回るレリオ爺さんは、とほほと肩を落として了承していたようだ。
ただ、家を空けることも多い彼は世話が難しいとあって、猫の世話に慣れているスタッフが多い猫カフェに連れて行くこととなった。
「お前達は……毎度毎度」
ミケの姿を見上げたオーナー、エンリコはただただ嘆息する。
「猫を飼育・調教できる場所があれば猫カフェに参加できませんか」
「といっても、な……」
ユウはT-Seinと共にそうエンリコへと掛け合うが、彼は難色を示す。ようやく回転しだした店に、新たな問題を持ち込むのを避けたいのが本音なのだ。
「怪しいものに手を出さないのは、商売の定石。しかし、そういうものに商機を見出すのは商人の才覚」
そんなエンリコへ、フーリィが進み出て話す。
「当面の費用はかの老人に一部負担として……、このデカ猫ちゃんを売れっ子にするかどうかはお任せします」
煽るようにして告げたフーリィに、エンリコは唸る。
実際、今表にいるミケはカフェの客はもちろんのこと、町の住人から注目の的となっていた。
「室内だと無理っぽいなら、店の裏手とかに庭とか作って、そこにいてもらう様にするとかできないでしょうか?」
晴れているとき限定で外にテーブルを置き、オープンテラスなどを恵みは提案してみせた。ユウもまた、餌代をレリオに頼る旨を伝える。
「……わかったわかった」
嘆息しつつ、エンリコはハンター達の提案に折れる。何だかんだ言って、うまく猫カフェの運営ができるようになったハンターの力を買っているのだろう。
「……餌、差し入れてやるかぁ」
外に出た小夜が猫を見上げて呟く。
巨大猫をどう受け入れるか、意見を出し合う仲間達の姿に、フーリィは思う。
「あとは、猫ちゃんの周囲の人次第でしょうねぇ」
臆病な猫の行く末に幸あらんことを。彼は傍からささやかに願うのである。
港町「ガンナ・エントラータ」の北、草原地帯。
数人のハンターが依頼の為、平原を歩いていく。
「猫かぁ、恵が猫になったし、猫も守らないとだよね」
兎を自称する白髪の少女、玉兎 小夜(ka6009)は視線を傾けた先には、玉兎・恵(ka3940)の姿があった。
2人は主人とメイドの関係であり、さらに先へと踏み込んだ仲でもある。
「猫さん、たったひとりで寂しい想いをしているよね」
今回は、青い鱗を持つワイバーンのクウに乗っての参加である、ドラグナーのユウ(ka6891)。クウはユウが生まれたときから見守ってくれている竜だ。
今回の救助対象である猫は、色々な要因が絡み合って巨大化してしまったという。それもあって、仲間にも見放されて1匹でいるらしい。
「またあのご老体のですか」
無表情ながらも、T-Sein(ka6936) の顔にはなにやら威圧されるような雰囲気が纏っていて。原因の一つを作り出した研究者のレリオに対して、彼女は怒りを覚えていたのだ。
「猫の救助だけと思えば、その後もか。面倒な仕事になりそうだなぁ……」
やや目立つ服装をした茶髪の青年シェイス(ka5065) は、猫は懐かせるまでが面倒なことをその理由として挙げる。
「猫をおとなしくさせるために……またたびを借りてきたが……」
先ほど、シェイスは猫カフェに寄って来たらしい。これでうまく猫を引きつける事ができればよいが。
「エンリコさんを説得して仲間がいる猫カフェで生活してもらえればいいけど……、雑魔の情報も出ているし急いで探さないとだね」
時間はなかった為、猫カフェオーナー、エンリコにはまだ事情を説明していない。事情の説明は二の次で、まずは猫を探して保護するのが先だろう。
「なんともはや。ハンターになると面白いものに出会えて仕方がありませんねぇ……」
大道芸人として、各地を回るフーリィ・フラック(ka7040)。彼は今回もまた、面白いものに出会えそうだと目を光らせる。
「しかしながら、件のデカ猫ちゃんに罪はありませんし、助けるだけは助けましょう」
「……怒ってても仕方ありません。猫様には何も害がないのですから、さくっと助けましょう」
一旦怒りを抑えたT-Seinは仲間に同意し、足を速めて巨大猫の発見を急ぐのである。
●
平原を移動し、巨大猫の捜索に当たるハンター達。
ワイバーンのクウに乗ったユウが飛翔の翼で空中へと舞い上がり、空から捜索する。
探すは、3mもの大きさがある猫だ。広い平原とはいえ、その大きさは目に付く。
「北西の方向に、それらしき影が見えます」
それらしき影を発見したユウは、地上のメンバーへと伝えて誘導する。
地上でT-Seinがトランシーバーにてその指示を聞き取り、メンバーを引き連れて移動していく。
しばらくして、ユウは猫の周囲に何かが近づいているのに気づいた。
「猫が襲われています!」
ユウは仲間に改めて一言告げ、覚醒していく。頭に純白の龍角を現した彼女はクウを急加速させて巨大猫へと迫る。
メスの巨大猫に飛び掛っていたのは、4羽のカラス雑魔だ。
猫よりは一回り小さいものの、自然の摂理から外れた雑魔達はカラスとは思えぬほどに大きく膨らみ、高く飛ぶことができなくなっていた。
だが、その瞳は赤く輝き、餌を見定めている。それらに一層、巨大猫は怯えてしまう。
そいつら目掛けてクウは奇襲し、鋭い爪を振り下ろす。
さらに、ユウがクウから飛び降り、霊氷剣「コキュートス」を振りかざして強襲する。一太刀浴びせた彼女は着地した衝撃を気にせず、雑魔に対して身構えた。
しばし、カラスどもは巨大猫とユウに対して襲い掛かる。
鋭いくちばし、それに、周囲へと強風を巻き起こす羽ばたきは彼女の体力を削っていく。
「【殲滅執行】……、そこから失せろ鳥風情が!」
そのユウを義姉と慕うT-Seinは気を練りながら、雑魔達へと迫る。その間に、彼女の肌は褐色へと変化し、全身を包み込む気が銀色に煌き出していた。
飛び込んできたT-Seinもまた雑魔のターゲットとなり、クチバシでついばまれることとなる。
「恵、援護よろしく」
「はーい、了解ですよぅ!」
息の合った小夜と恵。
ダッシュする小夜の側頭部にはいつの間にか、白い垂れた耳が付いていた。彼女は古びた包帯を巻いたままの魔腕を振りかぶって。
「こんにちは、ヴォーパルバニーです! 今回は殴り失礼!」
前方へと踏み込みながら小夜は真っ直ぐに一撃を放ち、猫に気を取られていたカラス雑魔へと強く殴りつけた。
さらに、その後方から猫の耳と尻尾を生やした恵が七色に輝くロングボウを手にし、番えた矢を射放って追い討ちをかける。
「まずは安全確保ですか。猫ちゃんを驚かせてパニックにならないよう注意しないといけませんねぇ」
すでに、巨大猫は雑魔に襲われている。できる限り傷の浅いうちにと、フーリィはカラスからの攻撃はある程度覚悟の上で、仲間達と共に飛び込む。
「名前がわかればよかったのだが……」
研究者であるレリオがこの猫に名前をつけていなかったとの情報を、シェイスは思い出す。もし名前があったなら、名前を呼ぶことで落ち着かせられるかもしれないと考えたのだが……。
ともあれ、まずは戦場となる場所の足場を確認しておこうと、シェイスは周囲を見回し始めたのだった。
●
巨大猫を救う為、ハンター達は襲いかかるカラス雑魔の駆除を始める。
仲間達が仕掛けて行く中、シェイスは周囲を見回す。
ほぼ障害物すらない平原。しかし、所によっては動物などが開けたと思われる穴、窪みがあることもあり、彼は仲間や猫がそこで足を取られてしまわぬようにと警戒をしていたようだ。
着地の衝撃、雑魔の猛襲を堪えたユウは、頭上を飛ぶクウを見上げて。
「クウ、他の雑魔がいないか警戒をお願い!」
猫を怯えさせぬように、彼女はクウに上空の見張りを任せ、自らは龍騎士を称える歌を気高く、誇り高く響かせる。そして、彼女はそのまま高めたマテリアルをさらに練り上げてその効力を高めて行った。
T-Seinは高まる気にその身を包み、巨大猫を襲うカラス目掛けて素早く跳躍して距離を詰める。
そして、その腕の機械手甲「ソルティエール」で殴りかかりながら、体内のマテリアルを一気に送り込み、爆発的な衝撃を雑魔へと与える。
「グエエエエエエエェェッ!!」
汚らしい声を上げるカラスどもが散る中へと飛び込み、小夜は巨大猫と接触する。
「にゃんこ。安心しな。そのまま動かないで置けば……首は取らないよ」
怯えて身が竦んでいる猫に優しく呼びかけた小夜は、敵に視線を向けた。
カラスという生き物は元々警戒心の強い生き物だ。一旦距離を取って固まり、こちらの様子を窺ってくる。
その隙を小夜は突き、斬魔刀「祢々切丸」を手に気を練り上げて。
「これは喰らいつく顎。龍からは命を。勇士へは首を!」
気を高めたことで攻撃射程を広げ、カラスがいる空間に狙いを定めた小夜はその中にいる雑魔全ての身体を薙ぎ払う。
だが、相手も雑魔と成り果てた存在。マテリアル持つ者を執拗に狙い、飛び掛ってくる。その狙いは小夜だ。
敵陣に飛び込む形となっていたが、小夜は全く憂いなど感じていない。
なぜなら、愛しい存在である恵が自身を援護するように、鋭く矢を射掛けてくれていたからだ。
(兎さんの援護を)
恵はその一心で、マテリアルを視力と感覚に集中させ、カラスどもの殲滅をはかる。
飛び掛り、羽ばいてくる敵から猫を護る為にと、背後にいたフーリィは猫の手前に土の壁を構成し、少しでも雑魔どもの攻撃から護ろうと動いてくれていた。
これでしばらくは、猫も雑魔から身を隠すことができるはずだ。
そして、周囲の確認をしていたシェイスも攻撃に乗り出す。
覚醒しても見た目に全く変化の見られない彼は、足にマテリアルを込めて移動していく。
今度は身体へとそのマテリアルを潤滑させ、シェイスはカラス雑魔目掛けて左手で短刀「陽炎」を振るう。
黒曜石の如く漆黒に変貌した刃で、彼はその喉元をかき切った。
「グエエエェェェッ!」
気味悪く鳴くカラスはまだ戦意を失っておらず、大きくなったその身体でハンター達のマテリアルを奪いつくそうとしてくるのである。
カラス雑魔は餌をついばむくらいの気持ちでこの場に現れたのだろうが、ハンター達はそれをさせじと攻勢を強める。
恵は小夜の攻撃や回避に合わせるようにして、矢を射かけていく。それに怯むカラス雑魔だが、1体が汚らしい声を上げて飛び掛ってきた。
「これは引き掴む鉤爪。努、燻り狂える者の傍に寄るべからず!」
ここぞと飛び掛る小夜。またも恵の一矢による援護が飛び、雑魔が僅かに動きを止めて。
そこを目掛け、小夜はカラスへとぶち当たり、魔腕を巻いた右腕から鮮血色のマテリアルを発する。
後方の敵にまで及ぶ一撃。近場のカラスの体には風穴が穿たれており、そいつは次の瞬間、消えてなくなってしまった。
「ま、防ぐだけでもいけませんか」
猫の手前の防壁の耐久力を気に掛けつつ、フーリィは骨杖「カラベラ」を振り上げてカラスへと魔法の矢をぶつけて行く。
そこへ、シェイスが躍りこむ。カラスは首を突き出して彼を狙うが、シェイスは空中で旋回するようにしてその一撃を避けて見せる。
その勢いを殺すことなく、彼は黒く変色させた「陽炎」の刃でまたも敵の首を狙い、かき切っていく。
黒い血のようなものをぶちまけた雑魔は、声すら上げられずに消滅していった。
こちらでは、ユウ、T-Seinの2人が連携して雑魔と当たる。
果敢に攻め立てて猫から注意を逸らすユウ。響く彼女の歌は敵に絶大な効果を示し、明らかに敵の力を弱めていた。
「ザイン、狙って!」
踊りによるステップの最中、ユウはホバリングしていたはずの敵が地面に落下した隙に妹へと呼びかけると、銀色の気を纏うT-Seinが猛然と敵に迫って。
「消え失せろ!」
風を纏ったT-Seinの殴打。その衝撃を受けた敵の目から光が消え、この世から姿そのものを消してしまう。
残る1体。恵が矢を飛ばして牽制すると、危険を察したカラスは背を向けて逃げ出そうとする。
「さて、にゃんこ。危機は去った。安心するといい。……敵は全て滅ぼした」
猫へと振り返り、声をかけた小夜。
ただ、その背後で彼女が指定した空間を飛ぼうとしていたカラスが斬撃を浴び、断末魔の叫びを上げて霧散していった。
「首狩り兎が逃がすわけないじゃん?」
素っ気無く告げた小夜はそのまま恵へと駆け寄り、その身体を抱きしめる。
「恵、付き合ってくれてありがとぉ、楽だったよ!」
頬擦りする伴侶の姿に、恵は瞳を細めるのだった。
●
カラス雑魔を全て撃破したハンター一行。
怯える巨大猫はまだ硬直したまま。まずは猫が人に慣れられるようにと、シェイスは持ってきたツナ缶とマタタビを差し出す。
「猫ちゃん。お怪我はありませんか?」
傷はさほど大きくなかったこともあり、フーリィは用意していたミネラルウォーターだけを巨大猫へと与える。マタタビに惹かれた猫は、与えられた缶詰や水を口に入れていたようだ。
「玉兎・恵でっす。宜しくお願いしますねー」
恵は改めて猫へと挨拶し、その顔を見上げる。
「ネコさんですかー。おっきいですねー……」
すでに戦闘でも出してはいたが、霊闘士のサブクラスについたことで、覚醒すると猫耳に尻尾が出るようになったことで、恵は猫に親近感をばりばり抱いている。
「驚かせてしまってすまないな。私達はお前に危害をくわえたりはしない」
落ち着かせるよう声をかけながら、T-Seinは巨大猫の体を優しく撫でる。
「怖がらせて御免ね。もう大丈夫ですよ」
ユウも穏やかで静かな歌と共にステップを踏み、猫を優しく撫でて落ち着かせようとしていた。その際、T-Seinはミケと名づけて呼びかけると、巨大猫は反応を見せていたようだ。
ハンター達の気遣いもあって、猫の怯えは少しずつなくなり、慣れて行く。1匹で寂しさを覚えていた反動もあったのだろう。
そうなるに連れ、本題であるこの巨大猫をどうするかという議論になる。このままにしておくと、歪虚にまた狙われる危険もあるが……。
「ミケを猫カフェに引き取ってもらいたいと思うのですが……、どうでしょう?」
「やっぱり猫カフェですかねえ」
T-Seinの提案に、うずうずしながらミケをもふもふしていた恵も同意する。
「こんなもふもふできるネコさんがいるなら、人気でますよー」
「連れ戻るにしても、臆病だと難しいしな」
預けるにしても、直ぐに小屋や餌を用意するのは難しい。
そこで、シェイスはレリオ爺さんの家の一部を借り、依頼の合間に世話をしようと提案を持ちかける。
「それに、俺は猫好きだしな」
シェイスもそう主張し、ミケを少しずつ自分達に慣らす。
ユウはまたクウに怯えないよう顔合わせし、少しずつ距離を近づけていった。
最初は怯えたままだったミケがある程度慣れてきたところで、ハンター達はミケを従えて港町に連れて行くことになる。
道中にて、ばったりとレリオ爺さんと出くわした一行は、彼へと餌代などの費用を持つよう告げた。
「産んだんだから、責任とれ? そういうの兎は厳しいゾ?」
小夜の後ろから、T-Seinはイイ笑顔を浮かべて手の関節を鳴らす。現在、お詫び行脚の為に町を駆け回るレリオ爺さんは、とほほと肩を落として了承していたようだ。
ただ、家を空けることも多い彼は世話が難しいとあって、猫の世話に慣れているスタッフが多い猫カフェに連れて行くこととなった。
「お前達は……毎度毎度」
ミケの姿を見上げたオーナー、エンリコはただただ嘆息する。
「猫を飼育・調教できる場所があれば猫カフェに参加できませんか」
「といっても、な……」
ユウはT-Seinと共にそうエンリコへと掛け合うが、彼は難色を示す。ようやく回転しだした店に、新たな問題を持ち込むのを避けたいのが本音なのだ。
「怪しいものに手を出さないのは、商売の定石。しかし、そういうものに商機を見出すのは商人の才覚」
そんなエンリコへ、フーリィが進み出て話す。
「当面の費用はかの老人に一部負担として……、このデカ猫ちゃんを売れっ子にするかどうかはお任せします」
煽るようにして告げたフーリィに、エンリコは唸る。
実際、今表にいるミケはカフェの客はもちろんのこと、町の住人から注目の的となっていた。
「室内だと無理っぽいなら、店の裏手とかに庭とか作って、そこにいてもらう様にするとかできないでしょうか?」
晴れているとき限定で外にテーブルを置き、オープンテラスなどを恵みは提案してみせた。ユウもまた、餌代をレリオに頼る旨を伝える。
「……わかったわかった」
嘆息しつつ、エンリコはハンター達の提案に折れる。何だかんだ言って、うまく猫カフェの運営ができるようになったハンターの力を買っているのだろう。
「……餌、差し入れてやるかぁ」
外に出た小夜が猫を見上げて呟く。
巨大猫をどう受け入れるか、意見を出し合う仲間達の姿に、フーリィは思う。
「あとは、猫ちゃんの周囲の人次第でしょうねぇ」
臆病な猫の行く末に幸あらんことを。彼は傍からささやかに願うのである。
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相談など フーリィ・フラック(ka7040) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/11/01 20:09:56 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/01 12:25:10 |