ゲスト
(ka0000)
【HW】軌道上に希望は灯る
マスター:近藤豊
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/01 12:00
- 完成日
- 2017/11/02 13:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
月面基地『崑崙』――陥落。
この事実は地球統一連合軍に大きすぎる衝撃を与えた。
狂気による火星基地への強奪に続き、崑崙の陥落。
それは、地球統一連合軍の宙域内での防衛ラインを失った事を意味している。
言うなれば、地球を守る鎧をすべて剥ぎ取られ丸裸の状態だ。
この事態に地球統一連合議会は混乱に見舞われた。
その影響で軍部内での指揮系統も一時機能不全に陥った。
議会では議長の責任論を追求。合わせて軍参謀軍部への批難が政治家から噴出し始めたのだ。
それは責任逃れにしか過ぎないのだが、地球へ敵が迫っている事を理解できない平和ぼけした政治家が足を引っ張っているとみるべきだろうか。
そのような状況下でも、狂気の軍は侵攻の手を緩めない。
崑崙陥落の間を置かず、狂気は地球降下作戦を開始していた。
「降伏勧告など行う必要は無い。すべて飲み込み、破壊する。それ以外の行動は不要だ」
火星で地球統一連合軍を陥落させた黙示騎士ウォーレン。
この者に人類との駆け引きをするつもりは一切無かった。
VOIDとして完全に地球圏を破壊する事を目標としていたからだ。
交渉など無駄。
すべてを破壊する事こそ、ウォーレンの目的であった。
その言葉を証明するかのように、今日も地球へ向けて狂気は地球へと舞い降りる――。
●
「しぶとくまだ抵抗するか。だが、それも時間の問題。希望などない事を徹底的に教えてやらねばなるまい」
ウォーレンは月と地球のラグランジュポイント付近にいた。
ウォーレンの傍らには巨大な三角錐のような物体が三つ存在。
その中身は狂気の群れ。この物体を地球に降下させて狂気の群れを大量に送り込もうというのだ。
つまり、この物体は地球へ狂気の群れを運ぶ大気圏突入用のコンテナだ。
「この中の者達に知能などない。ただ、見つけた者を襲うだけだ。だが、それでいい。その恐怖は必ず伝播する……ん?」
ウォーレンの視界に飛び込んできたのは一隻の軍艦。
スピードを揚げてこちらへ向かって来る。
その軍艦が味方でない事は一目瞭然であった。
「ここでも抵抗しようというのか。良かろう。その心を完全にへし折ってやる」
ウォーレンは腰のサーベルを引き抜いた。
●
地球統一連合軍所属艦『真実の旅人<トゥルー・トラベラー>』。
所属艦と格好良く聞こえるが、元は軍が臨時で徴発した輸送艦に過ぎない。
軍艦へと改修される中で付与された装備は、申し訳ない程度に付けられたビーム砲2門だけ。
艦長のヘンディ・シュールストロムも元々は輸送船の艦長。危険な航海を幾つも経験している。
だが、今回程危険に満ちた航海は無い。
人類を危機に追い込むVOIDを前に、トゥルー・トラベラー一隻で接近しようというのだから。
(戦争はいつも若者の命を奪う。愛する者を想いながら死んでいく者や不慮の事故で突然無くなる者。ワシはもう沢山だ)
ヘンディは心の中でそう呟いた。
この言葉を軍属が口にする事は許されない。口にすれば営倉送りとなるだろう。自分が営倉に行くのは構わないが、死んでいく若者を運ぶ者が変わるだけ。
言うなれば、冥府の川の渡し守が交代するだけだ。
(すまん。ワシにはお主等を止められん。死を覚悟して突き進むお主等を……)
トゥルー・トラベラーがラグランジュポイントまでやってきた理由はただ一つ。
命令違反を覚悟の上でCAMパイロット有志を戦地へ送り届ける為だ。
政治的混乱で軍部が動けない今、敵は兵力を地球へ送り込み放題。こうしている間にも市民が狂気に襲われて命を落としているのだ。
それを黙って見過ごせる程、腐ってない。
ヘンディは命令違反を熟知した上で、CAMパイロット有志をここまで運んできたのだ。
彼らが立たなければ、必ず市民に被害が出る。
それが分かっているからこそ、ヘンディは後悔しながらもここまでCAMパイロット達と共にやってきたのだ。
「艦を180度旋回。同時にハッチを開け。各パイロットに発進準備を急がせろ。失敗は……許されんぞ」
この事実は地球統一連合軍に大きすぎる衝撃を与えた。
狂気による火星基地への強奪に続き、崑崙の陥落。
それは、地球統一連合軍の宙域内での防衛ラインを失った事を意味している。
言うなれば、地球を守る鎧をすべて剥ぎ取られ丸裸の状態だ。
この事態に地球統一連合議会は混乱に見舞われた。
その影響で軍部内での指揮系統も一時機能不全に陥った。
議会では議長の責任論を追求。合わせて軍参謀軍部への批難が政治家から噴出し始めたのだ。
それは責任逃れにしか過ぎないのだが、地球へ敵が迫っている事を理解できない平和ぼけした政治家が足を引っ張っているとみるべきだろうか。
そのような状況下でも、狂気の軍は侵攻の手を緩めない。
崑崙陥落の間を置かず、狂気は地球降下作戦を開始していた。
「降伏勧告など行う必要は無い。すべて飲み込み、破壊する。それ以外の行動は不要だ」
火星で地球統一連合軍を陥落させた黙示騎士ウォーレン。
この者に人類との駆け引きをするつもりは一切無かった。
VOIDとして完全に地球圏を破壊する事を目標としていたからだ。
交渉など無駄。
すべてを破壊する事こそ、ウォーレンの目的であった。
その言葉を証明するかのように、今日も地球へ向けて狂気は地球へと舞い降りる――。
●
「しぶとくまだ抵抗するか。だが、それも時間の問題。希望などない事を徹底的に教えてやらねばなるまい」
ウォーレンは月と地球のラグランジュポイント付近にいた。
ウォーレンの傍らには巨大な三角錐のような物体が三つ存在。
その中身は狂気の群れ。この物体を地球に降下させて狂気の群れを大量に送り込もうというのだ。
つまり、この物体は地球へ狂気の群れを運ぶ大気圏突入用のコンテナだ。
「この中の者達に知能などない。ただ、見つけた者を襲うだけだ。だが、それでいい。その恐怖は必ず伝播する……ん?」
ウォーレンの視界に飛び込んできたのは一隻の軍艦。
スピードを揚げてこちらへ向かって来る。
その軍艦が味方でない事は一目瞭然であった。
「ここでも抵抗しようというのか。良かろう。その心を完全にへし折ってやる」
ウォーレンは腰のサーベルを引き抜いた。
●
地球統一連合軍所属艦『真実の旅人<トゥルー・トラベラー>』。
所属艦と格好良く聞こえるが、元は軍が臨時で徴発した輸送艦に過ぎない。
軍艦へと改修される中で付与された装備は、申し訳ない程度に付けられたビーム砲2門だけ。
艦長のヘンディ・シュールストロムも元々は輸送船の艦長。危険な航海を幾つも経験している。
だが、今回程危険に満ちた航海は無い。
人類を危機に追い込むVOIDを前に、トゥルー・トラベラー一隻で接近しようというのだから。
(戦争はいつも若者の命を奪う。愛する者を想いながら死んでいく者や不慮の事故で突然無くなる者。ワシはもう沢山だ)
ヘンディは心の中でそう呟いた。
この言葉を軍属が口にする事は許されない。口にすれば営倉送りとなるだろう。自分が営倉に行くのは構わないが、死んでいく若者を運ぶ者が変わるだけ。
言うなれば、冥府の川の渡し守が交代するだけだ。
(すまん。ワシにはお主等を止められん。死を覚悟して突き進むお主等を……)
トゥルー・トラベラーがラグランジュポイントまでやってきた理由はただ一つ。
命令違反を覚悟の上でCAMパイロット有志を戦地へ送り届ける為だ。
政治的混乱で軍部が動けない今、敵は兵力を地球へ送り込み放題。こうしている間にも市民が狂気に襲われて命を落としているのだ。
それを黙って見過ごせる程、腐ってない。
ヘンディは命令違反を熟知した上で、CAMパイロット有志をここまで運んできたのだ。
彼らが立たなければ、必ず市民に被害が出る。
それが分かっているからこそ、ヘンディは後悔しながらもここまでCAMパイロット達と共にやってきたのだ。
「艦を180度旋回。同時にハッチを開け。各パイロットに発進準備を急がせろ。失敗は……許されんぞ」
リプレイ本文
「失敗は……許されんぞ」
地球統一連合軍所属艦『真実の旅人<トゥルー・トラベラー>』艦長のヘンディ・シュールストロムの声がブリッジに響き渡る。
ブリッジのオペレーター達は、艦の各部署へ忙しなく指示を飛ばす。
――無理もない。
これから、ラグランジュポイントへ向けて出撃するCAMパイロット達を発進させるのだから。
「アルターA、アルテミス。カタパルトへ移動します」
クオン・サガラ(ka0018)は、そう自らを名乗った。
ロールアウト直後の最新鋭宇宙専用機アルテミスをトゥルー・トラベラーのカタパルトへ移動させるのはアルターAを名乗る男だった。
某CAM開発企業のテストパイロットを名乗っているが、どうやら今回の事件を受けて軍部の焦臭い動きを察知。接収される前に企業から逃走してこのトゥルー・トラベラーへ辿り着いたようだ。
「艦長、敵の様子は?」
「未だ黙示騎士ウォーレンに動きは無い」
アルターAの問いを受け、ヘンディは答えた。
ウォーレンは月面基地『崑崙』を制圧、地球に向けて狂気が満載となったコンテナの降下を試みていた。
「続けて第二カタパルト。マリィア、メンドーサ」
2本のカタパルトのうち、もう一つのカタパルトにはマリィア・バルデス(ka5848)のメンドーサがいた。
遠距離狙撃に特化した機体ではあるが、敵の急所に当たれば十分に敵を撃破できる可能性がある。
マリィアは、敢えてこの機体を選んだ。
「艦長。この間の提案は覚えてます?」
「うむ。既に手を打った。間もなく中継が始まるはずだ」
マリィアの提案。それは、ウォーレンとCAMの戦いをメディア中継しようというのだ。
軍の命令違反を犯している時点で、艦長を含め軍属は皆営倉送り。
否、営倉送りならラッキーだ。
そこでマリィアは敢えてメディアを巻き込む事を思い付いた。
ウォーレンとCAMの戦いを『偶然』目撃したメディアは、一部始終をネットで配信してしまう。生中継であれば軍も差し止める事はできない。
「古参には古参の意地があるのですよ、艦長」
「意地、か」
「私より若く優秀な兵を、一人でも多く次の戦場へ導くという、ね」
マリィアも艦長も、あまりに長く戦いすぎた。
心も体も多く傷付いた。
だからこそ、自分の限界も見えている。未来ある兵士を導くのも、マリィアの仕事だ。「マリィア、メンドーサ。出るぞ」
カタパルトが動き出し、マリィアが発進していく。
宇宙空間で機体制御を行いながら、所定のポジションを目指す。
狙うは――コンテナ。
あれを絶対に地球へ降下させてはならない。
「こちらウーナ。一足先に敵を捕捉したよ」
可変型CAM「サブ-1」を改修した「サブ-1 Type-R」から発せられたのはウーナ(ka1439)の声であった。
まずここで明確にしておくべきなのは、ウーナという軍人は先の火星での戦いで記録上『戦死』している。ウーナは火星の地でVOIDにその体を引き裂かれて命を落とした。
しかし、現実と記録には異なっている。
ウーナは奇跡的に命を取り留めた。
下半身と腕を失い、生きているのも奇跡の状態。
だが、ウーナに手を差し伸べたのはある研究者達だった。
傷を負ってCAMの操縦ができなくなった傷痍軍人をCAMと『融合』。
謂わば、サブ-1そのものにウーナを一体化させたのだ。
「プロジェクト『Reuse(再生)』――こうまでして人は戦わねばならぬのか……」
ヘンディはサブ-1を見ながら、そう呟いた。
研究者にとってこの戦いはデータ収集でしかない。
それをウーナも分かっている。そうであっても、ウーナはターゲットへ向かって機体を走らせた。
「目標、ウォーレン。火星の借りは絶対返してやるんだから!」
●
トゥルー・トラベラーから次々と発進するCAM。
そこから少し遅れた位置で発進する一機の連合軍戦闘ポッド。
地球統一連合軍が宇宙での数合わせに作業艇を再設計した戦闘ポッド。
戦闘力と汎用性ではCAMに劣るが、作業機譲りの操縦性とパワーが自慢。
この乗り慣れたポッドで岩井崎 メル(ka0520)は出撃する。
「遅れてる。急がなきゃ」
メルはポッドの出力を上げた。
メルは元々整備兵だ。年下で最愛の人を火星で喪っている。その事を思い出す度に心の傷が抉られる気がする。
それでも。
地球の為に体を張ろうとするCAMや艦長を放ってはおけなかった。
その想いが、戦闘ポッドでの参戦に背中を押した。
「大丈夫か」
メルの傍らに姿を見せたのはリーパーと呼ばれる機体だ。
軍には所属していない機体な上、機体をローブで覆って隠している。さらに手にはヒート大鎌。
まるで死神のような姿だ。
「あの、あなたは……?」
メルはリーパーのパイロットへ問いかけた。
パイロットは少し沈黙を貫いた後、ようやく口を開いた。
「民間上がりのアッシュだ」
岩井崎 旭(ka0234)はメルにそう自己紹介をした。
その名前でメルの脳裏に男の顔が思い浮かぶ。
ブリーフィングで仮面で顔を隠し、メルから離れていた人物だ。
「あの、失礼ですが……何処かでお会いした事はありませんか?」
「いや?」
メルの問いに、アッシュは答えた。
そして、その後の言葉にアッシュは更に続ける。
「余計な事は考えるんじゃねーぞ。ここまで来ちまったら後戻りはできねぇ。
だから……俺が必ず守ってやる」
●
そして、トゥルー・トラベラーから最後の一機が発進する。
「キヅカ、Loki。カタパルトへ移動だ」
キヅカ・リク(ka0038)。
トゥルー・トラベラーのクルーで知っている者も存在する人物だ。
崑崙で進められていた『deluge project』――高出力兵器を搭載した機体を並べて絶え間なく発射する事で接近する敵を殲滅する、という異端のプロジェクトだ。
そのプロジェクトの裏には『キャノンに取り憑かれし者』の存在があった。
何かを発射する行為――何故、それに執着するのか。
それはキャノンによる砲撃がすべてかだから。
砲撃こそ最強。
まさに狂気といえるプロジェクトのテストパイロットがキヅカなのだ。
そして、そのキヅカが騎乗するのがLoki――昨今量産化されたKZKキャノンの戦闘データを元に生産された機体。背中に装備された二門のKZKキャノンが漆黒の輝きが放っている。
「俺のキャノンは百発百中。必ず仕留めてみせる――VOIDでも、女でもな」
「あ? なんだって?」
明言でバシッと決まったキヅカだが、オペレーターの志村梅には聞こえていない。
志村梅は生涯現役を掲げる最年長オペレーターで齢は80を超える。その可愛らしいお婆さんの外見にクルー達からも人気だ。
「最近、耳が遠くなっちまってよぉ。よく聞こえねぇんだ」
老化で耳が聞こえづらくなってしまい、オペレーターとして大きな欠陥を抱えていた。
格好つけたのにスルーされた形となったキヅカ。
逃げ出すようにカタパルトから発射される。
「き、キヅカ。Loki。出る!」
●
トゥルー・トラベラーから発進した各機。
しかし、戦闘では思わぬ展開となってしまう。
「コンテナがっ!」
二機目のコンテナが地球へと降下していった。
決してCAMが悪い訳ではない。
彼らは必死にコンテナを狙って攻撃を試みていた。
しかし、コンテナを狙う者が多数である代わりに歪虚CAMを足止めするCAMがアッシュ一機なのだ。
「くっ、邪魔をするな!」
マリィアのメンドーサがスナイパーライフル「NMM-1」でフォールトシュートを放つ。
狙いは落下するコンテナ。
しかし、歪虚CAMが射線に入り、身を張って弾丸を防ぐ。
落下していくコンテナは、大気圏へ突入。そのまま地表に向かって落下していく。
「あの角度と位置……ベルギー付近でしょうか。欧州戦線へ増援となってしまいましたか」
アルターAは冷静にコンテナの進路を予測する。
既に落下した場所は南米と欧州。既にVOIDと開戦している地域だ。落下地点が地球統一連合軍に近い場所ならば、先回りして敵を駆除する事も可能だろう。
だが、それよりも先に止めるべきは最後のコンテナである。
「最後の一機は、落とさせません」
アームドベースのコンテナが開き、発射されるは複数のミサイル。
宇宙戦用に改修されたミサイルが歪虚CAMに向けて発射される。
爆発。
コンテナへの道を遮ってきた歪虚CAMの一角が始末される。
「邪魔するんじゃねぇ!」
リーパーの眼前にいた歪虚CAMに向けて、アッシュはガトリングを発射。
小さな弾丸が歪虚CAMの機体を貫通。さらにヒート大鎌で胴体を二分に切り分けた。
これで歪虚CAMは二機撃破。
アッシュは、コンテナを狙う。
これ以上は、落とさせない。
――だが。
「コンテナが落下を始めたぞ」
マリィアは遠距離からコンテナの狙撃を試みる。クイックリロードを繰り返して何度もコンテナに向けて弾丸を叩き込む。
だが、火力が弱い為か、軌道修正までには至らない。
「駄目です。直接コンテナを押して軌道を変えないと! 重力に引かれれば、止められません!」
アルターAは最後のコンテナについて計算を行う。
落下先は日本―それも東京南東部。
「や、やらせません!」
ここでメルが動いた。
戦闘ポッドを巧みに操り、コンテナの背面へ回り込む。
自慢の作業アームでコンテナの押し出しを試みる。
しかし、残る歪虚CAMが黙っているはずもない。
「きゃあああ!」
歪虚CAMが戦闘ポッドへ至近距離からアサルトライフルを発射。
大きく揺れるポッド。
「させるかよ! もうVOIDに飲まれるあの空を、もう一度見上げるのだけはお断りだ! 誰かにそれを見させるのもな!」
背後から歪虚CAMへ繰り出す放電パンチ。
機体を貫いた一撃は、トドメとなって歪虚CAMの活動を停止させる。
「それにさせるかよ……その子だけはなぁ」
「……アサヒ君?」
メルは、アッシュに向けてそう呟いた。
何故そう呟いたのか。メルにも分からない。
ただ、忘れられない雰囲気がアッシュから感じ取ったのかもしれない。
「メル、分かるのか?」
「うん、忘れないよ。忘れられないよ」
そう呟くメル。
だが、既に戦闘ポッドは歪虚CAMの残骸と共に重力へ引かれていた。
「アッシュ、ポッドを掴め。助けるんだ」
「駄目。アサヒ君も巻き込んじゃう。それに、このコンテナを止めなきゃ」
マリィアの言葉を遮るように、メルは救いの手を拒絶した。
メルはコンテナの至近距離で120mm連装砲を発射する。
強烈な爆音。
「くそぉ!」
アッシュのヒート大鎌による一撃。
そこで機体に大きな穴が空く。
大気圏突入の摩擦に絶えられない程の穴。
「軌道変更。コンテナは太平洋上へ落下します」
アルターAが計算結果を報告する。
アッシュの顔に歓喜が戻る。
「メル、やったぞ。これで……」
「もうよせ」
再度手を伸ばそうとしたアッシュをマリィアが止めた。
その背後にはアルターAが悲しみを堪えている。
そこに戦闘ポッドの姿はなかった。
歪虚CAMの残骸と共に大気圏へと突入。小さくなっていく塊が遠くに見えた。
●
パイロットの犠牲。
それはメディアで放送されている視聴者に大きな反響があった。
だが、それは同時に真裏で発生していた事件を巻き込んで大きな論争へと発展する。
「なんで生きてるって……どうでもいいでしょ。どきなよ!」
サブ-1のウーナが船体を翻してウォーシンに攻撃を叩き込む。
ウォーシンに突き刺さる弾丸。
だが、Type-Rは機動性と高性能が売りの機体だ。兵装は機銃のみ。ウォーシンを倒すにはあまりに貧弱過ぎた。
「弱い力だ。だが、その動きはかつての動きとは違い過ぎる。さては、何かを捨てて得た力か」
ウーナはウォーシンの言葉に耳を傾けず、弾丸を叩き込む。
しかし、ウーナ自身もこれで倒せるとは思っていない。重要な事は、ここで『自分に注目を集め続ける事』である。
「待っていた、この瞬間を。キヅカキャノンMK2が折られても、まだキャノンは潰れてない!」
ウォーシンのサーベルで破壊されたLokiのキヅカキャノンMK2。
大砲しかない?
否、大砲がすべてだ。
「究極のキャノン、それは……僕自身がキヅカキャノンになる事だ……!!」
キヅカは今、リミッターを外して――『ゴッドキヅカキャノンモード』へと変貌を遂げる。
「なに!?」
異変に気付くウォーレン。
だが、その頃にはLokiは金色に輝く一つのキヅカキャノンへと姿を変えていた。
それこそ、キヅカを含むプロジェクトチームが描いた究極のキャノン。
「俺のキャノンが光って唸る。命を滾らせ轟き叫ぶ! 爆熱、ゴッドキヅカキャノンっ!」
既にキャノンの砲身はウォーレンを捉える。
回避などさせない。
そんな暇など与えない。
「くそ!」
「キャノン……エンドっ!」
疲労感に襲われるキヅカ。
放たれる金色の光。
宇宙空間に描かれた線は、ウォーレンの体を貫く。
「やった?」
ウーナは、レーダーをチェックする。
キャノンの影響ですぐには周囲の状況を把握できない。
だが、それが落ち着くに連れて『現実』が姿を見せる。
「やってくれるな、人類」
さすがのウォーレンも大きなダメージを負ったのだろう。
だが、終わってはいない。
そしてウォーレンの少し先には真っ白に燃え尽きたキヅカとLokiの姿があった。
「そこのお前。こちらへ来る気はないか?」
「誰がVOIDに……」
そう言い掛けたウーナであったが、地球からの通信が耳に飛び込んでくる。
『負傷した軍人を再利用とはどういう事だ!』
『兵士は道具じゃない!』
『軍は謝罪しろ!』
流れ込む地球からの声。
ウーナは、地球を守る為に戦い続けた。
四肢失い、機械となったその体。
いや、ウーナはすべてを犠牲にした。
だが、その犠牲に対して地球から届けられた声はウーナの心を踏みにじるものだった。
「お前がやったのは自己満足だ。そうでないなら、お前は何の為に犠牲となったのだ?」
「馬鹿な事を考えてはいけません。ここで裏切ればどうなるか分かっているのですか!」
アルターAはウーナへ呼び掛けた。
悪魔の囁き。
絶対に耳を貸してはならない。
だが、アルターAの言葉を届かない。
ウーナの脳裏に繰り返されるウォーレンの言葉。
自己満足。
犠牲。
目的を失ったウーナが、ウォーレンの誘いの乗るのは時間の問題だった。
パイロット2名の行方不明。
うち1名はVOID側への裏切り。
このセンセーショナル事件はネットで生中継された上で、議会や軍部を窮地へと追い込んだ。
そしてVOIDは地球侵攻を開始する。
だが、それですべての希望が潰えた訳ではない。
人類の希望はオーストラリアから――あの血塗られた異端の研究から幕を開ける。
地球統一連合軍所属艦『真実の旅人<トゥルー・トラベラー>』艦長のヘンディ・シュールストロムの声がブリッジに響き渡る。
ブリッジのオペレーター達は、艦の各部署へ忙しなく指示を飛ばす。
――無理もない。
これから、ラグランジュポイントへ向けて出撃するCAMパイロット達を発進させるのだから。
「アルターA、アルテミス。カタパルトへ移動します」
クオン・サガラ(ka0018)は、そう自らを名乗った。
ロールアウト直後の最新鋭宇宙専用機アルテミスをトゥルー・トラベラーのカタパルトへ移動させるのはアルターAを名乗る男だった。
某CAM開発企業のテストパイロットを名乗っているが、どうやら今回の事件を受けて軍部の焦臭い動きを察知。接収される前に企業から逃走してこのトゥルー・トラベラーへ辿り着いたようだ。
「艦長、敵の様子は?」
「未だ黙示騎士ウォーレンに動きは無い」
アルターAの問いを受け、ヘンディは答えた。
ウォーレンは月面基地『崑崙』を制圧、地球に向けて狂気が満載となったコンテナの降下を試みていた。
「続けて第二カタパルト。マリィア、メンドーサ」
2本のカタパルトのうち、もう一つのカタパルトにはマリィア・バルデス(ka5848)のメンドーサがいた。
遠距離狙撃に特化した機体ではあるが、敵の急所に当たれば十分に敵を撃破できる可能性がある。
マリィアは、敢えてこの機体を選んだ。
「艦長。この間の提案は覚えてます?」
「うむ。既に手を打った。間もなく中継が始まるはずだ」
マリィアの提案。それは、ウォーレンとCAMの戦いをメディア中継しようというのだ。
軍の命令違反を犯している時点で、艦長を含め軍属は皆営倉送り。
否、営倉送りならラッキーだ。
そこでマリィアは敢えてメディアを巻き込む事を思い付いた。
ウォーレンとCAMの戦いを『偶然』目撃したメディアは、一部始終をネットで配信してしまう。生中継であれば軍も差し止める事はできない。
「古参には古参の意地があるのですよ、艦長」
「意地、か」
「私より若く優秀な兵を、一人でも多く次の戦場へ導くという、ね」
マリィアも艦長も、あまりに長く戦いすぎた。
心も体も多く傷付いた。
だからこそ、自分の限界も見えている。未来ある兵士を導くのも、マリィアの仕事だ。「マリィア、メンドーサ。出るぞ」
カタパルトが動き出し、マリィアが発進していく。
宇宙空間で機体制御を行いながら、所定のポジションを目指す。
狙うは――コンテナ。
あれを絶対に地球へ降下させてはならない。
「こちらウーナ。一足先に敵を捕捉したよ」
可変型CAM「サブ-1」を改修した「サブ-1 Type-R」から発せられたのはウーナ(ka1439)の声であった。
まずここで明確にしておくべきなのは、ウーナという軍人は先の火星での戦いで記録上『戦死』している。ウーナは火星の地でVOIDにその体を引き裂かれて命を落とした。
しかし、現実と記録には異なっている。
ウーナは奇跡的に命を取り留めた。
下半身と腕を失い、生きているのも奇跡の状態。
だが、ウーナに手を差し伸べたのはある研究者達だった。
傷を負ってCAMの操縦ができなくなった傷痍軍人をCAMと『融合』。
謂わば、サブ-1そのものにウーナを一体化させたのだ。
「プロジェクト『Reuse(再生)』――こうまでして人は戦わねばならぬのか……」
ヘンディはサブ-1を見ながら、そう呟いた。
研究者にとってこの戦いはデータ収集でしかない。
それをウーナも分かっている。そうであっても、ウーナはターゲットへ向かって機体を走らせた。
「目標、ウォーレン。火星の借りは絶対返してやるんだから!」
●
トゥルー・トラベラーから次々と発進するCAM。
そこから少し遅れた位置で発進する一機の連合軍戦闘ポッド。
地球統一連合軍が宇宙での数合わせに作業艇を再設計した戦闘ポッド。
戦闘力と汎用性ではCAMに劣るが、作業機譲りの操縦性とパワーが自慢。
この乗り慣れたポッドで岩井崎 メル(ka0520)は出撃する。
「遅れてる。急がなきゃ」
メルはポッドの出力を上げた。
メルは元々整備兵だ。年下で最愛の人を火星で喪っている。その事を思い出す度に心の傷が抉られる気がする。
それでも。
地球の為に体を張ろうとするCAMや艦長を放ってはおけなかった。
その想いが、戦闘ポッドでの参戦に背中を押した。
「大丈夫か」
メルの傍らに姿を見せたのはリーパーと呼ばれる機体だ。
軍には所属していない機体な上、機体をローブで覆って隠している。さらに手にはヒート大鎌。
まるで死神のような姿だ。
「あの、あなたは……?」
メルはリーパーのパイロットへ問いかけた。
パイロットは少し沈黙を貫いた後、ようやく口を開いた。
「民間上がりのアッシュだ」
岩井崎 旭(ka0234)はメルにそう自己紹介をした。
その名前でメルの脳裏に男の顔が思い浮かぶ。
ブリーフィングで仮面で顔を隠し、メルから離れていた人物だ。
「あの、失礼ですが……何処かでお会いした事はありませんか?」
「いや?」
メルの問いに、アッシュは答えた。
そして、その後の言葉にアッシュは更に続ける。
「余計な事は考えるんじゃねーぞ。ここまで来ちまったら後戻りはできねぇ。
だから……俺が必ず守ってやる」
●
そして、トゥルー・トラベラーから最後の一機が発進する。
「キヅカ、Loki。カタパルトへ移動だ」
キヅカ・リク(ka0038)。
トゥルー・トラベラーのクルーで知っている者も存在する人物だ。
崑崙で進められていた『deluge project』――高出力兵器を搭載した機体を並べて絶え間なく発射する事で接近する敵を殲滅する、という異端のプロジェクトだ。
そのプロジェクトの裏には『キャノンに取り憑かれし者』の存在があった。
何かを発射する行為――何故、それに執着するのか。
それはキャノンによる砲撃がすべてかだから。
砲撃こそ最強。
まさに狂気といえるプロジェクトのテストパイロットがキヅカなのだ。
そして、そのキヅカが騎乗するのがLoki――昨今量産化されたKZKキャノンの戦闘データを元に生産された機体。背中に装備された二門のKZKキャノンが漆黒の輝きが放っている。
「俺のキャノンは百発百中。必ず仕留めてみせる――VOIDでも、女でもな」
「あ? なんだって?」
明言でバシッと決まったキヅカだが、オペレーターの志村梅には聞こえていない。
志村梅は生涯現役を掲げる最年長オペレーターで齢は80を超える。その可愛らしいお婆さんの外見にクルー達からも人気だ。
「最近、耳が遠くなっちまってよぉ。よく聞こえねぇんだ」
老化で耳が聞こえづらくなってしまい、オペレーターとして大きな欠陥を抱えていた。
格好つけたのにスルーされた形となったキヅカ。
逃げ出すようにカタパルトから発射される。
「き、キヅカ。Loki。出る!」
●
トゥルー・トラベラーから発進した各機。
しかし、戦闘では思わぬ展開となってしまう。
「コンテナがっ!」
二機目のコンテナが地球へと降下していった。
決してCAMが悪い訳ではない。
彼らは必死にコンテナを狙って攻撃を試みていた。
しかし、コンテナを狙う者が多数である代わりに歪虚CAMを足止めするCAMがアッシュ一機なのだ。
「くっ、邪魔をするな!」
マリィアのメンドーサがスナイパーライフル「NMM-1」でフォールトシュートを放つ。
狙いは落下するコンテナ。
しかし、歪虚CAMが射線に入り、身を張って弾丸を防ぐ。
落下していくコンテナは、大気圏へ突入。そのまま地表に向かって落下していく。
「あの角度と位置……ベルギー付近でしょうか。欧州戦線へ増援となってしまいましたか」
アルターAは冷静にコンテナの進路を予測する。
既に落下した場所は南米と欧州。既にVOIDと開戦している地域だ。落下地点が地球統一連合軍に近い場所ならば、先回りして敵を駆除する事も可能だろう。
だが、それよりも先に止めるべきは最後のコンテナである。
「最後の一機は、落とさせません」
アームドベースのコンテナが開き、発射されるは複数のミサイル。
宇宙戦用に改修されたミサイルが歪虚CAMに向けて発射される。
爆発。
コンテナへの道を遮ってきた歪虚CAMの一角が始末される。
「邪魔するんじゃねぇ!」
リーパーの眼前にいた歪虚CAMに向けて、アッシュはガトリングを発射。
小さな弾丸が歪虚CAMの機体を貫通。さらにヒート大鎌で胴体を二分に切り分けた。
これで歪虚CAMは二機撃破。
アッシュは、コンテナを狙う。
これ以上は、落とさせない。
――だが。
「コンテナが落下を始めたぞ」
マリィアは遠距離からコンテナの狙撃を試みる。クイックリロードを繰り返して何度もコンテナに向けて弾丸を叩き込む。
だが、火力が弱い為か、軌道修正までには至らない。
「駄目です。直接コンテナを押して軌道を変えないと! 重力に引かれれば、止められません!」
アルターAは最後のコンテナについて計算を行う。
落下先は日本―それも東京南東部。
「や、やらせません!」
ここでメルが動いた。
戦闘ポッドを巧みに操り、コンテナの背面へ回り込む。
自慢の作業アームでコンテナの押し出しを試みる。
しかし、残る歪虚CAMが黙っているはずもない。
「きゃあああ!」
歪虚CAMが戦闘ポッドへ至近距離からアサルトライフルを発射。
大きく揺れるポッド。
「させるかよ! もうVOIDに飲まれるあの空を、もう一度見上げるのだけはお断りだ! 誰かにそれを見させるのもな!」
背後から歪虚CAMへ繰り出す放電パンチ。
機体を貫いた一撃は、トドメとなって歪虚CAMの活動を停止させる。
「それにさせるかよ……その子だけはなぁ」
「……アサヒ君?」
メルは、アッシュに向けてそう呟いた。
何故そう呟いたのか。メルにも分からない。
ただ、忘れられない雰囲気がアッシュから感じ取ったのかもしれない。
「メル、分かるのか?」
「うん、忘れないよ。忘れられないよ」
そう呟くメル。
だが、既に戦闘ポッドは歪虚CAMの残骸と共に重力へ引かれていた。
「アッシュ、ポッドを掴め。助けるんだ」
「駄目。アサヒ君も巻き込んじゃう。それに、このコンテナを止めなきゃ」
マリィアの言葉を遮るように、メルは救いの手を拒絶した。
メルはコンテナの至近距離で120mm連装砲を発射する。
強烈な爆音。
「くそぉ!」
アッシュのヒート大鎌による一撃。
そこで機体に大きな穴が空く。
大気圏突入の摩擦に絶えられない程の穴。
「軌道変更。コンテナは太平洋上へ落下します」
アルターAが計算結果を報告する。
アッシュの顔に歓喜が戻る。
「メル、やったぞ。これで……」
「もうよせ」
再度手を伸ばそうとしたアッシュをマリィアが止めた。
その背後にはアルターAが悲しみを堪えている。
そこに戦闘ポッドの姿はなかった。
歪虚CAMの残骸と共に大気圏へと突入。小さくなっていく塊が遠くに見えた。
●
パイロットの犠牲。
それはメディアで放送されている視聴者に大きな反響があった。
だが、それは同時に真裏で発生していた事件を巻き込んで大きな論争へと発展する。
「なんで生きてるって……どうでもいいでしょ。どきなよ!」
サブ-1のウーナが船体を翻してウォーシンに攻撃を叩き込む。
ウォーシンに突き刺さる弾丸。
だが、Type-Rは機動性と高性能が売りの機体だ。兵装は機銃のみ。ウォーシンを倒すにはあまりに貧弱過ぎた。
「弱い力だ。だが、その動きはかつての動きとは違い過ぎる。さては、何かを捨てて得た力か」
ウーナはウォーシンの言葉に耳を傾けず、弾丸を叩き込む。
しかし、ウーナ自身もこれで倒せるとは思っていない。重要な事は、ここで『自分に注目を集め続ける事』である。
「待っていた、この瞬間を。キヅカキャノンMK2が折られても、まだキャノンは潰れてない!」
ウォーシンのサーベルで破壊されたLokiのキヅカキャノンMK2。
大砲しかない?
否、大砲がすべてだ。
「究極のキャノン、それは……僕自身がキヅカキャノンになる事だ……!!」
キヅカは今、リミッターを外して――『ゴッドキヅカキャノンモード』へと変貌を遂げる。
「なに!?」
異変に気付くウォーレン。
だが、その頃にはLokiは金色に輝く一つのキヅカキャノンへと姿を変えていた。
それこそ、キヅカを含むプロジェクトチームが描いた究極のキャノン。
「俺のキャノンが光って唸る。命を滾らせ轟き叫ぶ! 爆熱、ゴッドキヅカキャノンっ!」
既にキャノンの砲身はウォーレンを捉える。
回避などさせない。
そんな暇など与えない。
「くそ!」
「キャノン……エンドっ!」
疲労感に襲われるキヅカ。
放たれる金色の光。
宇宙空間に描かれた線は、ウォーレンの体を貫く。
「やった?」
ウーナは、レーダーをチェックする。
キャノンの影響ですぐには周囲の状況を把握できない。
だが、それが落ち着くに連れて『現実』が姿を見せる。
「やってくれるな、人類」
さすがのウォーレンも大きなダメージを負ったのだろう。
だが、終わってはいない。
そしてウォーレンの少し先には真っ白に燃え尽きたキヅカとLokiの姿があった。
「そこのお前。こちらへ来る気はないか?」
「誰がVOIDに……」
そう言い掛けたウーナであったが、地球からの通信が耳に飛び込んでくる。
『負傷した軍人を再利用とはどういう事だ!』
『兵士は道具じゃない!』
『軍は謝罪しろ!』
流れ込む地球からの声。
ウーナは、地球を守る為に戦い続けた。
四肢失い、機械となったその体。
いや、ウーナはすべてを犠牲にした。
だが、その犠牲に対して地球から届けられた声はウーナの心を踏みにじるものだった。
「お前がやったのは自己満足だ。そうでないなら、お前は何の為に犠牲となったのだ?」
「馬鹿な事を考えてはいけません。ここで裏切ればどうなるか分かっているのですか!」
アルターAはウーナへ呼び掛けた。
悪魔の囁き。
絶対に耳を貸してはならない。
だが、アルターAの言葉を届かない。
ウーナの脳裏に繰り返されるウォーレンの言葉。
自己満足。
犠牲。
目的を失ったウーナが、ウォーレンの誘いの乗るのは時間の問題だった。
パイロット2名の行方不明。
うち1名はVOID側への裏切り。
このセンセーショナル事件はネットで生中継された上で、議会や軍部を窮地へと追い込んだ。
そしてVOIDは地球侵攻を開始する。
だが、それですべての希望が潰えた訳ではない。
人類の希望はオーストラリアから――あの血塗られた異端の研究から幕を開ける。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
軌道上の相談スレ ウーナ(ka1439) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/10/30 08:11:28 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/30 08:09:02 |