ゲスト
(ka0000)
龍園の片隅にかぼちゃの山
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/07 12:00
- 完成日
- 2017/11/12 18:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
お使いでリゼリオに行き、なぜかでかいかぼちゃを10個もらったラカ・ベルフ。
もらわない、という選択肢もあった。しかし、話の流れで断り切れなかった。
その結果、転移門をくぐって龍園にかぼちゃとともに到着し、それを家に運ぶ苦労が生まれた。それでも律儀に持って帰る。たぶん、転移門通った先に人がいた場合、真っ先に見たのはかぼちゃだったかもしれない。
「……これをどうすればいいのでしょうか」
試しに、一つ解体して食べてみることにした。
「おいしくないです」
捨てるに捨てられない物体ができた。
さてどうしたものかと悩むラカのもとに、子どもの声が届く。
「うわああ、これ、かぼちゃだ。神官様、神官様」
扉がどんどんとたたかれる。この声はグラズヘイム王国のルゥル(kz0210)にノートを届けてほしいと願った近所の子リラだ。
扉を開けると、目をキラキラさせた少女が立っていた。
「夜分遅くすみません。でも、かぼちゃ、すごくいっぱい!」
「リラ……落ち着きなさい」
「は、はい。これ、何に使うんですか? お風呂に入れるのです? それとも、かぼちゃ割り大会? 飾りにするんですか?」
「はい?」
ラカが巣頓狂な声をあげたのは言うまでもなかった。
どういう意味か要領を得ないためノートを借りて目を通す。
『リアルブルーにかぼちゃを使ったお祭りがあるのです。ハロウィンと言うのは十月の最後の日にかぼちゃお化けを飾るのです。それと、収穫出来て喜ぶのです。十二月にはトウジと言うのがあって、かぼちゃを食べたり、お風呂にはいったりするそうです。夏には、砂浜で目隠しをして、棒を持ってかぼちゃ割りをするそうです。でも、私はハロウィンしかしたことありません』
ラカはよくわからないことがよくわかった。
クリムゾンウェストの風習すらよくわかっていないのに、リアルブルーのことなどラカがわかるわけもない。
ラカがよくわかっているのは、ここにおいしくないかぼちゃがたくさんあること。それと、リアルブルー出身者やあちらにかかわっていることもあるという人物がハンターに多いことである。
「分かりました。このままだと私も気持ちが悪いですし、かぼちゃが無駄になります」
「どうするのですか?」
リラの期待と不安でいっぱいの視線がラカに注がれる。
「ハンターに依頼を出してきます」
ラカ、苦渋の決断。背は腹に変えられない仕方がないのだ。
「うわーい」
そんな心情は知らず、リラが小躍りしていた。
「仕方がありません。仕方が……解決できないのですから……」
そして、ラカ・ベルフの依頼が登録される。
かぼちゃに関する行事に詳しい人求む。
当方に巨大かぼちゃ九個あり。
これをどうするか悩むため、使い道を考えてほしい。
もらわない、という選択肢もあった。しかし、話の流れで断り切れなかった。
その結果、転移門をくぐって龍園にかぼちゃとともに到着し、それを家に運ぶ苦労が生まれた。それでも律儀に持って帰る。たぶん、転移門通った先に人がいた場合、真っ先に見たのはかぼちゃだったかもしれない。
「……これをどうすればいいのでしょうか」
試しに、一つ解体して食べてみることにした。
「おいしくないです」
捨てるに捨てられない物体ができた。
さてどうしたものかと悩むラカのもとに、子どもの声が届く。
「うわああ、これ、かぼちゃだ。神官様、神官様」
扉がどんどんとたたかれる。この声はグラズヘイム王国のルゥル(kz0210)にノートを届けてほしいと願った近所の子リラだ。
扉を開けると、目をキラキラさせた少女が立っていた。
「夜分遅くすみません。でも、かぼちゃ、すごくいっぱい!」
「リラ……落ち着きなさい」
「は、はい。これ、何に使うんですか? お風呂に入れるのです? それとも、かぼちゃ割り大会? 飾りにするんですか?」
「はい?」
ラカが巣頓狂な声をあげたのは言うまでもなかった。
どういう意味か要領を得ないためノートを借りて目を通す。
『リアルブルーにかぼちゃを使ったお祭りがあるのです。ハロウィンと言うのは十月の最後の日にかぼちゃお化けを飾るのです。それと、収穫出来て喜ぶのです。十二月にはトウジと言うのがあって、かぼちゃを食べたり、お風呂にはいったりするそうです。夏には、砂浜で目隠しをして、棒を持ってかぼちゃ割りをするそうです。でも、私はハロウィンしかしたことありません』
ラカはよくわからないことがよくわかった。
クリムゾンウェストの風習すらよくわかっていないのに、リアルブルーのことなどラカがわかるわけもない。
ラカがよくわかっているのは、ここにおいしくないかぼちゃがたくさんあること。それと、リアルブルー出身者やあちらにかかわっていることもあるという人物がハンターに多いことである。
「分かりました。このままだと私も気持ちが悪いですし、かぼちゃが無駄になります」
「どうするのですか?」
リラの期待と不安でいっぱいの視線がラカに注がれる。
「ハンターに依頼を出してきます」
ラカ、苦渋の決断。背は腹に変えられない仕方がないのだ。
「うわーい」
そんな心情は知らず、リラが小躍りしていた。
「仕方がありません。仕方が……解決できないのですから……」
そして、ラカ・ベルフの依頼が登録される。
かぼちゃに関する行事に詳しい人求む。
当方に巨大かぼちゃ九個あり。
これをどうするか悩むため、使い道を考えてほしい。
リプレイ本文
●三々五々
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は依頼を見た瞬間、ラカがもらったかぼちゃが観賞用や飼料用だったに違いないと推測した。
「ならば、食用かぼちゃと味噌を仕入れてからラカちゃん家にGO!」
現地になさそうな材料と調味料を購入するためにまずは出かけた。
ハヒヤ・ベリモル(ka6620)は依頼を眺め、謎の行事について吟味した。
「はろうぃん! 名前からして面白そうにゃ! りあるぶるーの行事はよくわからにゃいから、まにゃぶにはいちょうどいいにゃ! 我、賢いにゃ!」
その上で、まずは依頼を処理する職員に問う。その結果わかったことがあった。
「かぼちゃを使って、お菓子を配ればいいにゃ? それと、仮装するにゃ?」
ふむふむとうなずく。どう考えても楽しそうなことなため、目が輝く。指定の時間に間に合うように、急いで必要な物を集めに行った。
マリィア・バルデス(ka5848)は依頼を見た瞬間、首をかしげる。
「まあ、行ってみてもいいかしらね……そもそも、どんなかぼちゃが待っているのかしら?」
ちょっと時期がずれているが、かぼちゃの行事でもハロウィンを望んでいるのだろうと推測はできる。
「かぼちゃ九個ね……食用から観賞用まで幅広いから」
どういう状況か分からないため、幾つか説明を場合分けしてでかける。
ミオレスカ(ka3496)はその数を見た瞬間「かぼちゃ祭り」と思った。
「お祭りと言いましても……ハロウィンでしょうか? まず、行ってみましょう。料理のことなどもそこからですね」
必要そうなものは鞄に入れる。状況によっては楽しめるだろうと、ハンドベルやマイクも入れておいた。
「食べるならば何がいいでしょうか……龍園あたりだとオーソドックスなのがいいでしょうか」
色々考えながら出かけた。
●準備から到着まで
マリィアはラカ・ベルフ(kz0240)の家の扉をノックしながら、かぼちゃの山を眺める。ラカとリラ・アウルが出てきたところで挨拶を交わした。
「これは食用かしら? ……このかぼちゃくれた人、何か言っていなかったかしら?」
ラカは思い出そうとする。しかし出てこないらしく沈黙と焦りが生じる。
「食べられるものもあるそうですわ……」
「で、どれ」
ラカ沈黙。
小刻みに震えてかぼちゃを眺める。
「た、たぶん、これです」
ラカはちょっと小ぶりのを指した。それをとりだすと、マリィアはひっくり返したり匂いを嗅いでみたりしつつ確認する。
よくわからなかったが、他のかぼちゃとは一線を画すような気がした。
「うん、そうかもしれないわね。食用かぼちゃもごくまれに巨大化することもあるわ。ミニカボチャは観賞用だし、巨大南瓜は牛馬の飼料用だし、どちらも基本的に食用ではないわね」
マリィアの解説にラカは青くなる。
「じゃ、この煮物がまずいのは」
家の中の鍋を指す。
「牛馬が食べるのだから食べられなくはないでしょうけど、人間が食べておいしいかは話が別よ」
マリィアは憐憫のこもった目で見つめた。
「そういえば、かぼちゃについての種本があるって聞いたけれど?」
リラが見せる。
そのノートには彼女が知っているルゥル(kz0210)の名があり、つたない字で記載がある。
「どうしよう……あの子本気でおバカ可愛い」
「……そ、そうきますの」
ラカがあきれる。
「まあ、砂浜で夏に割るのはスイカで南瓜じゃありません、これは重要ね」
「スイカ?」
マリィアに教えられて、ラカとリラが首を傾げた。
ミオレスカが到着するとラカとあいさつを交わす。
「かぼちゃの行事とのことですね? かぼちゃには早生種、遅咲き、春南瓜があります。その上、クリムゾンウェストだけでも気候の違いもありますし、いつでも食べられますね」
ラカは地形を思い浮かべつつなんとく理解した。ここは非常に寒いため限られるが、東方は考えられないほど暑いとのこと。
「年中かぼちゃ祭りです」
ミオレスカがにっこりと告げる。
「なので、毎年の恵方に常にお供えして、熟れた物から食べるのが基本です」
変わらない調子で告げた為、ラカとリラは「そうなのか」と納得しかかっている。
「という冗談はおいておきまして――」
ミオレスカは正解を告げようとしたが、元気な声に遮られた。
「とりっく・おあ・とりーとにゃー」
ハヒヤは三角帽子に黒いワンピースの正統派魔女な格好でやってきた。手にはかぼちゃを持ち、台所を借りる準備をしていた。
硬直したラカの視線の下に三角帽子が揺れている。大変いい笑顔のハヒヤにラカはどうしていいのかわからない。
「はろうぃんについてはあまりよくわからないにゃー。でも、楽しいことは全力で取り組むにゃー」
「そ、そうですね」
「にゃ」
ハヒヤは入ると先客にあいさつし、「台所を借りるにゃ」と告げる。
「かぼちゃのクッキーを作るにゃ。他の人も何をするのか楽しみにゃ」
鼻歌を歌いながらハヒヤはラカの説明を聞き、道具を借りて作り始めたのだった。
「ラカちゃーん、外のかぼちゃ、見事に飼料用じゃん」
どーんと入ってきたヴォーイはラカが数分前に受けた傷をえぐった。一つだけは食用だったが、屋内にあるのだからヴォーイは知らない。
「話を聞いてそんなことだろうと思ったから、ほら、食べるよう」
食用でも大き目の南瓜二つと東方で仕入れたという味噌の小さい樽をテーブルに置いたのだった。
「さて、何から始めるかな?」
仲間を見渡したのだった。
●嘘八百
各種かぼちゃお化けのオブジェを作る。
かぼちゃスープ、ほうとう、パンを作る……などがあげられる。そして、ここに作業を開始した。
まずは台所。
ミオレスカはパンの生地を作りながら、途中かぼちゃスープを作っていくことになる。
「かぼちゃを器にするのもいいですが……パンを器にしたほうが、パーティ風にはいいでしょうか」
パンのサイズを検討する。ミオレスカは固焼きパンを皿にして饗することにした。
その横ではハヒヤが真っ白になりながら南瓜を使ったクッキーを作っている。
「次に……こうしてこうにゃ」
生地を広げて型を取る。
「にゃ、クッキーは寝かさなくていいにゃ!?」
ミオレスカがパン生地を部屋の暖かいところに置いたのを見てハヒヤが困惑した。
「クッキーは発酵はいりませんけど、寝かすほうがいいですね」
「そ、そうにゃたにゃ」
ハヒヤは危なかったところで生地を寝かす作業に移った。
テーブルやその近くではかぼちゃでランタンやらオブジェなどを作るマリィアとヴォーイがいる。マリィアの説明を聞きつつ、ラカとリラは南瓜ランタンを作っていた。
そんな中、かぼちゃの加工をしながらヴォーイはおもむろに「はろうぃん」について説明をする。
「かぼちゃお化けはかぼちゃ大王の使者を迎えるためのものなんだ、かぼちゃ大王はかぼちゃ頭の異形。ハロウィンの晩だけイケメンの姿になるんだ。使者の目的はかぼちゃの馬車で大王の嫁さん探し。女性は使者にお菓子をあげて帰ってもらうか、変装して大王の舞踏会へ……女性の返送は人間だとばれないもためのものなんだ」
淡々と告げる。そして、作っているのはジャック・オ・ランタンと南瓜の馬車の模型。
「それは歪虚ですか!」
ラカ、鋭い指摘。リラは「嫌だ」と震える。
ハヒヤは自分が聞いた話と異なるため、驚きながらどう反応するか悩む。
(大人な我は「知っていたにゃ」と言うべきにゃ。しかし、知らないことを知らないというのも大人なのにゃ)
ミオレスカとマリィアがハヒヤの悩みを吹き飛ばしてくれた。
「いえいえ……そのような話はないですよ」
「そうね。全くそんな話はないから吹き込まないの」
リラはホッと胸をなでおろし、ラカはうなずいた。
「ハロウィンは収穫の感謝と先祖への弔いの気持ちのお祭りみたいなものです」
「そうそうね、それがわかっていればいいわね。ケルトの収穫祭や万聖節の話……につながるけれど、まじめかつ話が長くなるわよ?」
ミオレスカとマリィアがラカとリラの様子を見る。様子からこの程度で問題ないと分かる。
一緒にハヒヤもほっとしていたが、一つ疑問が生じる。
「でも、なんで仮装するにゃん?」
「それは、悪霊がいるからです」
「そうそう、人間ではないと思わせる為ね……そういえばヴォーイが言うことも一部は事実よね」
ミオレスカの言葉を引き取って告げるマリィアは、せっせと南瓜ランタンではない何かを作るヴォーイを見た。
しばらくすると、ランタンが出来上がっていく。
「じゃ、俺はホウトウを作るじゃん! ……ホウトウって砲塔?」
かぼちゃをまな板に置きながらヴォーイがつぶやく。
「なんとなく、ホウトウ違いでつぶやいていますよね?」
ミオレスカにやんわり指摘される。
「砲撃する塔」
「いえいえ、ほうとうって手打ちうどんで作ったリアルブルーの郷土料理のことですよね?」
「そうそう」
「知っている上での話ですね」
ミオレスカは苦笑した。ヴォーイはほうとうを作り始めた。
ラカとリラとともにマリィアは南瓜ランタンを作っていく。
「こうして、蝋燭をいれればわ。ジャック・オ・ランタン、悪霊よけのかぼちゃのランタンよ。家の前や通路に飾るといいわ。終わったら細かく砕いて飼料にしましょう」
てきぱき言う。
「食用かぼちゃは多くないからあれだけど、一応説明するわね」
作りながら冬至の話をする。
「食べられるかぼちゃが余ったら、南瓜ペーストにしてしまうといいわよ。ジャム代わりにパンにつけてもいいし、パイに入れてもいい。ポタージュやプリンをそこから簡単に作れるし」
マリィアの説明を聞きながら、ラカはうなずく。
「ノートににあったのは冬至ね。日本では柚子湯に入って、南瓜を食べるの。冬至は一番夜が長いし『陰極まり陽となる』っていう概念があるの。そこから『一陽来復』と言って『金銀融通』……きちんと作法に則ればお金持ちになるって」
ラカは理解しているように見えるが、マリィアの目から見て「いっぱいいっぱいになってるわ」と感じた。
台所からは香ばしいパンやクッキーやスープ、味噌の匂いが漂っていた。
「これが溶ければできあがりだぜ」
ヴォーイが胸を張る。
「って何ですか?」
「お化けかぼちゃ? 灯台にゃん?」
ヴォーイが鍋の中央に入れた南瓜のオブジェを見て、ミオレスカとハヒヤが首をひねる。
「ジャック・オ・ランタン型、南瓜砲塔」
それが溶けるのはいつのことか。
●お祭り
ハヒヤは大きな籠に作ったクッキーを入れる。クッキーは所々焦げているところは見えるが、食べるのに支障はない。
「まず、ラカにあげるにゃーん。どうぞにゃー」
「ありがとうございます」
ぬくもりの残るクッキーをラカは見つめる。
「ん? まずそう?」
「いえ、そのようなことはありませんわ」
「そうにゃ、気のせいにゃー! 収穫を祝うものらしいから、感謝して食べてほしいにゃ!」
「そうですね……収穫は大切なことです」
ラカはうなずき食べ、微笑む。
「おいしいですわ」
「にゃー」
ハヒヤが嬉しそうに笑った。
近所の人も集まっていため、ハヒヤは籠を持って回ったのだった。
ほうとうが入った鍋を持って、ヴォーイは外に出る。
ラカの家が賑やかであるため、すでに気にしている人はいた。そのためヴォーイが出てくるとちらりちらりと気にし始めている。
「さあ、みんなで食べようぜ」
近所の子が器とスプーンを持ってくる。
「熱いから気を付けろよ」
おっかなびっくり食べるラカを見る。おいしいという顔になったので一安心だ。ヴォーイも食べる。
「うはーっ、あったまるぜぇ」
マリィアも器によそって食べる。近所の子が「もらってもいいの?」と尋ねてきたので、ついでに入れる。
「本当……外は寒いから余計にしみわたるわね……こっちのスープとパン……パンが冷えるのが早い……こっちもあるわよ」
マリィアはまずほうとうを食べ、集まった人にパンを器にしたスープも進める。
並べられたかぼちゃを見て、子どもたちだけでなく大人も質問をしたそうだ。食べ終わったところで、マリィアは声をかける。
「これはね、ハロウィンと言う祭りなよ」
マリィアは説明をしていく。好奇心旺盛な人たちは感心し、面白がっていた。
「芋煮会ってあるらしいけどカボチャ煮会でもいいな」
ヴォーイはわいわいと楽しんでいる人たちを見て笑った。
「それにしても……仮装したの我だけにゃー」
クッキーを配りながらハヒヤが不満げに叫んだ。
ミオレスカはかぼちゃの皮で作ったお面をつけた。
「そんなことないですよ、仮装ですよ?」
「ええー、確かに仮装にゃ? 仮装?」
ハヒヤは少しむくれた。
「ほら、こっちに色々あるわよグッズ」
「そうそう」
マリィアとヴォーイに言われ、改めて見ればかぼちゃのオブジェはたくさんある。蝋燭も入っているため、先ほどよりおどろおどろしさや可愛さなどが加わっている。
「そうにゃ、これもいい味わいにゃ。とりっく・おあ・とりーとにゃー」
「にゃー」
集まった子どもたち、ハヒヤを真似をする。ハヒヤはクッキーを配った後、南瓜ランタンを眺めた。
微笑みながらミオレスカは眺めていた。荷物からハンドベルを出し、奏で始めた。
彼女の前には食事を手に、談笑する龍園の人たちとハンターの姿がある。
(この場所を生きて、楽しめることに感謝です)
ミオレスカは仮面の下でこの時間を愛おしく思った。
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は依頼を見た瞬間、ラカがもらったかぼちゃが観賞用や飼料用だったに違いないと推測した。
「ならば、食用かぼちゃと味噌を仕入れてからラカちゃん家にGO!」
現地になさそうな材料と調味料を購入するためにまずは出かけた。
ハヒヤ・ベリモル(ka6620)は依頼を眺め、謎の行事について吟味した。
「はろうぃん! 名前からして面白そうにゃ! りあるぶるーの行事はよくわからにゃいから、まにゃぶにはいちょうどいいにゃ! 我、賢いにゃ!」
その上で、まずは依頼を処理する職員に問う。その結果わかったことがあった。
「かぼちゃを使って、お菓子を配ればいいにゃ? それと、仮装するにゃ?」
ふむふむとうなずく。どう考えても楽しそうなことなため、目が輝く。指定の時間に間に合うように、急いで必要な物を集めに行った。
マリィア・バルデス(ka5848)は依頼を見た瞬間、首をかしげる。
「まあ、行ってみてもいいかしらね……そもそも、どんなかぼちゃが待っているのかしら?」
ちょっと時期がずれているが、かぼちゃの行事でもハロウィンを望んでいるのだろうと推測はできる。
「かぼちゃ九個ね……食用から観賞用まで幅広いから」
どういう状況か分からないため、幾つか説明を場合分けしてでかける。
ミオレスカ(ka3496)はその数を見た瞬間「かぼちゃ祭り」と思った。
「お祭りと言いましても……ハロウィンでしょうか? まず、行ってみましょう。料理のことなどもそこからですね」
必要そうなものは鞄に入れる。状況によっては楽しめるだろうと、ハンドベルやマイクも入れておいた。
「食べるならば何がいいでしょうか……龍園あたりだとオーソドックスなのがいいでしょうか」
色々考えながら出かけた。
●準備から到着まで
マリィアはラカ・ベルフ(kz0240)の家の扉をノックしながら、かぼちゃの山を眺める。ラカとリラ・アウルが出てきたところで挨拶を交わした。
「これは食用かしら? ……このかぼちゃくれた人、何か言っていなかったかしら?」
ラカは思い出そうとする。しかし出てこないらしく沈黙と焦りが生じる。
「食べられるものもあるそうですわ……」
「で、どれ」
ラカ沈黙。
小刻みに震えてかぼちゃを眺める。
「た、たぶん、これです」
ラカはちょっと小ぶりのを指した。それをとりだすと、マリィアはひっくり返したり匂いを嗅いでみたりしつつ確認する。
よくわからなかったが、他のかぼちゃとは一線を画すような気がした。
「うん、そうかもしれないわね。食用かぼちゃもごくまれに巨大化することもあるわ。ミニカボチャは観賞用だし、巨大南瓜は牛馬の飼料用だし、どちらも基本的に食用ではないわね」
マリィアの解説にラカは青くなる。
「じゃ、この煮物がまずいのは」
家の中の鍋を指す。
「牛馬が食べるのだから食べられなくはないでしょうけど、人間が食べておいしいかは話が別よ」
マリィアは憐憫のこもった目で見つめた。
「そういえば、かぼちゃについての種本があるって聞いたけれど?」
リラが見せる。
そのノートには彼女が知っているルゥル(kz0210)の名があり、つたない字で記載がある。
「どうしよう……あの子本気でおバカ可愛い」
「……そ、そうきますの」
ラカがあきれる。
「まあ、砂浜で夏に割るのはスイカで南瓜じゃありません、これは重要ね」
「スイカ?」
マリィアに教えられて、ラカとリラが首を傾げた。
ミオレスカが到着するとラカとあいさつを交わす。
「かぼちゃの行事とのことですね? かぼちゃには早生種、遅咲き、春南瓜があります。その上、クリムゾンウェストだけでも気候の違いもありますし、いつでも食べられますね」
ラカは地形を思い浮かべつつなんとく理解した。ここは非常に寒いため限られるが、東方は考えられないほど暑いとのこと。
「年中かぼちゃ祭りです」
ミオレスカがにっこりと告げる。
「なので、毎年の恵方に常にお供えして、熟れた物から食べるのが基本です」
変わらない調子で告げた為、ラカとリラは「そうなのか」と納得しかかっている。
「という冗談はおいておきまして――」
ミオレスカは正解を告げようとしたが、元気な声に遮られた。
「とりっく・おあ・とりーとにゃー」
ハヒヤは三角帽子に黒いワンピースの正統派魔女な格好でやってきた。手にはかぼちゃを持ち、台所を借りる準備をしていた。
硬直したラカの視線の下に三角帽子が揺れている。大変いい笑顔のハヒヤにラカはどうしていいのかわからない。
「はろうぃんについてはあまりよくわからないにゃー。でも、楽しいことは全力で取り組むにゃー」
「そ、そうですね」
「にゃ」
ハヒヤは入ると先客にあいさつし、「台所を借りるにゃ」と告げる。
「かぼちゃのクッキーを作るにゃ。他の人も何をするのか楽しみにゃ」
鼻歌を歌いながらハヒヤはラカの説明を聞き、道具を借りて作り始めたのだった。
「ラカちゃーん、外のかぼちゃ、見事に飼料用じゃん」
どーんと入ってきたヴォーイはラカが数分前に受けた傷をえぐった。一つだけは食用だったが、屋内にあるのだからヴォーイは知らない。
「話を聞いてそんなことだろうと思ったから、ほら、食べるよう」
食用でも大き目の南瓜二つと東方で仕入れたという味噌の小さい樽をテーブルに置いたのだった。
「さて、何から始めるかな?」
仲間を見渡したのだった。
●嘘八百
各種かぼちゃお化けのオブジェを作る。
かぼちゃスープ、ほうとう、パンを作る……などがあげられる。そして、ここに作業を開始した。
まずは台所。
ミオレスカはパンの生地を作りながら、途中かぼちゃスープを作っていくことになる。
「かぼちゃを器にするのもいいですが……パンを器にしたほうが、パーティ風にはいいでしょうか」
パンのサイズを検討する。ミオレスカは固焼きパンを皿にして饗することにした。
その横ではハヒヤが真っ白になりながら南瓜を使ったクッキーを作っている。
「次に……こうしてこうにゃ」
生地を広げて型を取る。
「にゃ、クッキーは寝かさなくていいにゃ!?」
ミオレスカがパン生地を部屋の暖かいところに置いたのを見てハヒヤが困惑した。
「クッキーは発酵はいりませんけど、寝かすほうがいいですね」
「そ、そうにゃたにゃ」
ハヒヤは危なかったところで生地を寝かす作業に移った。
テーブルやその近くではかぼちゃでランタンやらオブジェなどを作るマリィアとヴォーイがいる。マリィアの説明を聞きつつ、ラカとリラは南瓜ランタンを作っていた。
そんな中、かぼちゃの加工をしながらヴォーイはおもむろに「はろうぃん」について説明をする。
「かぼちゃお化けはかぼちゃ大王の使者を迎えるためのものなんだ、かぼちゃ大王はかぼちゃ頭の異形。ハロウィンの晩だけイケメンの姿になるんだ。使者の目的はかぼちゃの馬車で大王の嫁さん探し。女性は使者にお菓子をあげて帰ってもらうか、変装して大王の舞踏会へ……女性の返送は人間だとばれないもためのものなんだ」
淡々と告げる。そして、作っているのはジャック・オ・ランタンと南瓜の馬車の模型。
「それは歪虚ですか!」
ラカ、鋭い指摘。リラは「嫌だ」と震える。
ハヒヤは自分が聞いた話と異なるため、驚きながらどう反応するか悩む。
(大人な我は「知っていたにゃ」と言うべきにゃ。しかし、知らないことを知らないというのも大人なのにゃ)
ミオレスカとマリィアがハヒヤの悩みを吹き飛ばしてくれた。
「いえいえ……そのような話はないですよ」
「そうね。全くそんな話はないから吹き込まないの」
リラはホッと胸をなでおろし、ラカはうなずいた。
「ハロウィンは収穫の感謝と先祖への弔いの気持ちのお祭りみたいなものです」
「そうそうね、それがわかっていればいいわね。ケルトの収穫祭や万聖節の話……につながるけれど、まじめかつ話が長くなるわよ?」
ミオレスカとマリィアがラカとリラの様子を見る。様子からこの程度で問題ないと分かる。
一緒にハヒヤもほっとしていたが、一つ疑問が生じる。
「でも、なんで仮装するにゃん?」
「それは、悪霊がいるからです」
「そうそう、人間ではないと思わせる為ね……そういえばヴォーイが言うことも一部は事実よね」
ミオレスカの言葉を引き取って告げるマリィアは、せっせと南瓜ランタンではない何かを作るヴォーイを見た。
しばらくすると、ランタンが出来上がっていく。
「じゃ、俺はホウトウを作るじゃん! ……ホウトウって砲塔?」
かぼちゃをまな板に置きながらヴォーイがつぶやく。
「なんとなく、ホウトウ違いでつぶやいていますよね?」
ミオレスカにやんわり指摘される。
「砲撃する塔」
「いえいえ、ほうとうって手打ちうどんで作ったリアルブルーの郷土料理のことですよね?」
「そうそう」
「知っている上での話ですね」
ミオレスカは苦笑した。ヴォーイはほうとうを作り始めた。
ラカとリラとともにマリィアは南瓜ランタンを作っていく。
「こうして、蝋燭をいれればわ。ジャック・オ・ランタン、悪霊よけのかぼちゃのランタンよ。家の前や通路に飾るといいわ。終わったら細かく砕いて飼料にしましょう」
てきぱき言う。
「食用かぼちゃは多くないからあれだけど、一応説明するわね」
作りながら冬至の話をする。
「食べられるかぼちゃが余ったら、南瓜ペーストにしてしまうといいわよ。ジャム代わりにパンにつけてもいいし、パイに入れてもいい。ポタージュやプリンをそこから簡単に作れるし」
マリィアの説明を聞きながら、ラカはうなずく。
「ノートににあったのは冬至ね。日本では柚子湯に入って、南瓜を食べるの。冬至は一番夜が長いし『陰極まり陽となる』っていう概念があるの。そこから『一陽来復』と言って『金銀融通』……きちんと作法に則ればお金持ちになるって」
ラカは理解しているように見えるが、マリィアの目から見て「いっぱいいっぱいになってるわ」と感じた。
台所からは香ばしいパンやクッキーやスープ、味噌の匂いが漂っていた。
「これが溶ければできあがりだぜ」
ヴォーイが胸を張る。
「って何ですか?」
「お化けかぼちゃ? 灯台にゃん?」
ヴォーイが鍋の中央に入れた南瓜のオブジェを見て、ミオレスカとハヒヤが首をひねる。
「ジャック・オ・ランタン型、南瓜砲塔」
それが溶けるのはいつのことか。
●お祭り
ハヒヤは大きな籠に作ったクッキーを入れる。クッキーは所々焦げているところは見えるが、食べるのに支障はない。
「まず、ラカにあげるにゃーん。どうぞにゃー」
「ありがとうございます」
ぬくもりの残るクッキーをラカは見つめる。
「ん? まずそう?」
「いえ、そのようなことはありませんわ」
「そうにゃ、気のせいにゃー! 収穫を祝うものらしいから、感謝して食べてほしいにゃ!」
「そうですね……収穫は大切なことです」
ラカはうなずき食べ、微笑む。
「おいしいですわ」
「にゃー」
ハヒヤが嬉しそうに笑った。
近所の人も集まっていため、ハヒヤは籠を持って回ったのだった。
ほうとうが入った鍋を持って、ヴォーイは外に出る。
ラカの家が賑やかであるため、すでに気にしている人はいた。そのためヴォーイが出てくるとちらりちらりと気にし始めている。
「さあ、みんなで食べようぜ」
近所の子が器とスプーンを持ってくる。
「熱いから気を付けろよ」
おっかなびっくり食べるラカを見る。おいしいという顔になったので一安心だ。ヴォーイも食べる。
「うはーっ、あったまるぜぇ」
マリィアも器によそって食べる。近所の子が「もらってもいいの?」と尋ねてきたので、ついでに入れる。
「本当……外は寒いから余計にしみわたるわね……こっちのスープとパン……パンが冷えるのが早い……こっちもあるわよ」
マリィアはまずほうとうを食べ、集まった人にパンを器にしたスープも進める。
並べられたかぼちゃを見て、子どもたちだけでなく大人も質問をしたそうだ。食べ終わったところで、マリィアは声をかける。
「これはね、ハロウィンと言う祭りなよ」
マリィアは説明をしていく。好奇心旺盛な人たちは感心し、面白がっていた。
「芋煮会ってあるらしいけどカボチャ煮会でもいいな」
ヴォーイはわいわいと楽しんでいる人たちを見て笑った。
「それにしても……仮装したの我だけにゃー」
クッキーを配りながらハヒヤが不満げに叫んだ。
ミオレスカはかぼちゃの皮で作ったお面をつけた。
「そんなことないですよ、仮装ですよ?」
「ええー、確かに仮装にゃ? 仮装?」
ハヒヤは少しむくれた。
「ほら、こっちに色々あるわよグッズ」
「そうそう」
マリィアとヴォーイに言われ、改めて見ればかぼちゃのオブジェはたくさんある。蝋燭も入っているため、先ほどよりおどろおどろしさや可愛さなどが加わっている。
「そうにゃ、これもいい味わいにゃ。とりっく・おあ・とりーとにゃー」
「にゃー」
集まった子どもたち、ハヒヤを真似をする。ハヒヤはクッキーを配った後、南瓜ランタンを眺めた。
微笑みながらミオレスカは眺めていた。荷物からハンドベルを出し、奏で始めた。
彼女の前には食事を手に、談笑する龍園の人たちとハンターの姿がある。
(この場所を生きて、楽しめることに感謝です)
ミオレスカは仮面の下でこの時間を愛おしく思った。
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かぼちゃイベント ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/11/07 01:22:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/05 18:39:16 |