ゲスト
(ka0000)
ジャンジャン湖の精
マスター:あきのそら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/07 15:00
- 完成日
- 2017/11/11 00:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ジャンジャン湖
冒険都市リゼリオから、少し内陸へ入ったところ。
そこに、森に囲まれた大きな湖――ジャンジャン湖はあった。
湖のほとりには桟橋が設けられていて、近くの小屋にはボートや釣り具を貸し出す釣り屋さんがたっていた。
夏には涼しさと食を求めて、冬には氷上の釣りを求めて、多くのお客さんが訪れる近所ではちょっとした人気スポットだ。
「おとーさん! はやくはやくー!」
そんな釣り屋へ、元気よくやってきた一組の親子。
その前に、釣り屋の店主がやってくる。
「お客さん、釣りですか」
「えぇ、そろそろ寒くなってきますからね。凍りついちゃう前に、息子と釣りでもと思って」
「あぁ……そうですか」
店主は項垂れ、頭を下げる。
「申し訳ない、今ボートの貸し出しはしてないんだよ」
「えぇっ、どうして!」
子供が不満そうに声を上げると。
同時に、コロコロコロ……と何かが三人の前を転がっていく。
「おとーさん、なにあれ」
「あ、あぁ、回転草……かな」
「えぇ、そうなんですよ……」
店主は再び項垂れ、湖のほうを指さす。
その先には。
「「う、うわぁ」」
回転草に湖上を埋め尽くされた、湖の姿があった。
「なんでか知りませんが、今年は異常に回転草が多くて。すくってもすくっても無くならなくて、手こぎボートも帰ってこられなくなる始末でして」
「なるほど、それなら桟橋で釣らせていただくことは出来ませんか!」
「えぇ、えぇ……まぁ、構いませんよ。桟橋は出入り自由ですから。いや、ほんと申し訳ありませんね」
それだけ言うと、店主は店へと帰っていってしまった。
「まぁ、いいか! よし、桟橋に行ってみるか!」
「うん!」
そして、親子は桟橋へ向かい、釣り糸を垂らしたところで気がついた。
水面に、ハリが届かない。
「…………お父さん」
「……ん、なんだ」
「……帰ろ」
「……あぁ」
親子は、大人しく桟橋をあとにしたのだった。
●ジャンジャン湖 釣り屋の小屋
親子ががっくりと項垂れて帰るのを見届けた店主は、同じように項垂れていた。
「親父、やっぱりハンターさんたちにお願いしよう、な?」
店主の息子は、ボートの用意をしながら言う。
「なんて言うんだ、回転草を片づけてくださいとでも言うのか?」
「あぁ、そうだよ。長年片づけてきたオレたちが、湖の中にいる『何か』のせいで三度も溺れかけた湖を、代わりに綺麗にしてくれないかって頼むんだよ!」
「馬鹿なことを言うな! 湖に化け物が居るとでも思っているのか!」
「当たり前だろ! 引きずり込まれそうになったのはオレの時、親父の時、二人一緒の時の三回! 鍬二本、オールは一本、湖の底に引きずり込まれただろうが! 何を躊躇してるんだよ」
「………………」
店主は口をつぐみ、逡巡した後。
不安そうな声で言った。
「俺の、ひいじいさんがまだ生きてた頃の話だ。十月には、毎年ジャックオランタンを作って、ソウルケーキをお供えしてたんだよ」
「そんなことしてたのか、オレは一度もしたことないぞ」
「俺のオヤジがやらなくなったんだ。でも、そのソウルケーキとジャックオランタンはな、供え物だったんだよ」
「供え物って……誰に」
「湖の下に住むっていう、妖精たちに向けてだよ。湖の安全祈願と豊漁の感謝を込めた供え物をしてたんだ」
「じゃあなんだよ、オレたちが供え物をやめちまったからついに妖精さんたちの怒りを買ったってか? ハハ、馬鹿らしい」
「でなければどう説明するっていうんだ! あぁくそ……! こんなことなら毎年ちゃんと供え物をしとくんだった……!」
「馬鹿も休み休み言ってくれよ。そんな供え物如きで、回転草が馬鹿みたいに生えて? 湖に溜まっちまって? おまけに化け物まで呼び出すってのかよ」
「あぁそうだ! 妖精は高い知性と魔力を持っているんだ、このくらいの異常現象容易く引き起こせるに決まってる!」
「そんなことあるわけが――」
そんなことあるわけがない。
店主の息子がそう言おうとした時だった。
――コンッ。
「……なんの音だ」
どこからともなく聞こえてくる、何かがぶつけられたような、ノックするような音。
――コンコンコンッ。
今度は三度続けて繰り返される音の正体は、窓をノックする音だと気がついた。
「さっきのお客さんか……?」
店主の息子が、窓へ近づき。
窓を開けようとした、その時。
――バンバンバンバンッ! バンバンバンバンバンッ!!!
小屋中の窓が一斉に大きな音を立て始めた。
「ひっ、ひぇぇ!!」
逃げ出す店主と息子。
急いで小屋を飛び出し、振り向くと。
そこには、小屋を取り囲む二十体以上のゴーストと。
人間大の大きな魚……に、人間の手足が生えた珍妙な生物が一体、桟橋にモリを構えて立って居た。
「#$%&~!」
「&%~¥~$~!」
「ひ、ひえええ! 化け物~!」
ゴーストたちは恨めしい不気味な声と共に店主たちを追いかけ回して追っ払う。
逃げ出した店主たちは、その足で街道を駆け抜けて。
ハンターズオフィスへと駆け込んだのだった。
冒険都市リゼリオから、少し内陸へ入ったところ。
そこに、森に囲まれた大きな湖――ジャンジャン湖はあった。
湖のほとりには桟橋が設けられていて、近くの小屋にはボートや釣り具を貸し出す釣り屋さんがたっていた。
夏には涼しさと食を求めて、冬には氷上の釣りを求めて、多くのお客さんが訪れる近所ではちょっとした人気スポットだ。
「おとーさん! はやくはやくー!」
そんな釣り屋へ、元気よくやってきた一組の親子。
その前に、釣り屋の店主がやってくる。
「お客さん、釣りですか」
「えぇ、そろそろ寒くなってきますからね。凍りついちゃう前に、息子と釣りでもと思って」
「あぁ……そうですか」
店主は項垂れ、頭を下げる。
「申し訳ない、今ボートの貸し出しはしてないんだよ」
「えぇっ、どうして!」
子供が不満そうに声を上げると。
同時に、コロコロコロ……と何かが三人の前を転がっていく。
「おとーさん、なにあれ」
「あ、あぁ、回転草……かな」
「えぇ、そうなんですよ……」
店主は再び項垂れ、湖のほうを指さす。
その先には。
「「う、うわぁ」」
回転草に湖上を埋め尽くされた、湖の姿があった。
「なんでか知りませんが、今年は異常に回転草が多くて。すくってもすくっても無くならなくて、手こぎボートも帰ってこられなくなる始末でして」
「なるほど、それなら桟橋で釣らせていただくことは出来ませんか!」
「えぇ、えぇ……まぁ、構いませんよ。桟橋は出入り自由ですから。いや、ほんと申し訳ありませんね」
それだけ言うと、店主は店へと帰っていってしまった。
「まぁ、いいか! よし、桟橋に行ってみるか!」
「うん!」
そして、親子は桟橋へ向かい、釣り糸を垂らしたところで気がついた。
水面に、ハリが届かない。
「…………お父さん」
「……ん、なんだ」
「……帰ろ」
「……あぁ」
親子は、大人しく桟橋をあとにしたのだった。
●ジャンジャン湖 釣り屋の小屋
親子ががっくりと項垂れて帰るのを見届けた店主は、同じように項垂れていた。
「親父、やっぱりハンターさんたちにお願いしよう、な?」
店主の息子は、ボートの用意をしながら言う。
「なんて言うんだ、回転草を片づけてくださいとでも言うのか?」
「あぁ、そうだよ。長年片づけてきたオレたちが、湖の中にいる『何か』のせいで三度も溺れかけた湖を、代わりに綺麗にしてくれないかって頼むんだよ!」
「馬鹿なことを言うな! 湖に化け物が居るとでも思っているのか!」
「当たり前だろ! 引きずり込まれそうになったのはオレの時、親父の時、二人一緒の時の三回! 鍬二本、オールは一本、湖の底に引きずり込まれただろうが! 何を躊躇してるんだよ」
「………………」
店主は口をつぐみ、逡巡した後。
不安そうな声で言った。
「俺の、ひいじいさんがまだ生きてた頃の話だ。十月には、毎年ジャックオランタンを作って、ソウルケーキをお供えしてたんだよ」
「そんなことしてたのか、オレは一度もしたことないぞ」
「俺のオヤジがやらなくなったんだ。でも、そのソウルケーキとジャックオランタンはな、供え物だったんだよ」
「供え物って……誰に」
「湖の下に住むっていう、妖精たちに向けてだよ。湖の安全祈願と豊漁の感謝を込めた供え物をしてたんだ」
「じゃあなんだよ、オレたちが供え物をやめちまったからついに妖精さんたちの怒りを買ったってか? ハハ、馬鹿らしい」
「でなければどう説明するっていうんだ! あぁくそ……! こんなことなら毎年ちゃんと供え物をしとくんだった……!」
「馬鹿も休み休み言ってくれよ。そんな供え物如きで、回転草が馬鹿みたいに生えて? 湖に溜まっちまって? おまけに化け物まで呼び出すってのかよ」
「あぁそうだ! 妖精は高い知性と魔力を持っているんだ、このくらいの異常現象容易く引き起こせるに決まってる!」
「そんなことあるわけが――」
そんなことあるわけがない。
店主の息子がそう言おうとした時だった。
――コンッ。
「……なんの音だ」
どこからともなく聞こえてくる、何かがぶつけられたような、ノックするような音。
――コンコンコンッ。
今度は三度続けて繰り返される音の正体は、窓をノックする音だと気がついた。
「さっきのお客さんか……?」
店主の息子が、窓へ近づき。
窓を開けようとした、その時。
――バンバンバンバンッ! バンバンバンバンバンッ!!!
小屋中の窓が一斉に大きな音を立て始めた。
「ひっ、ひぇぇ!!」
逃げ出す店主と息子。
急いで小屋を飛び出し、振り向くと。
そこには、小屋を取り囲む二十体以上のゴーストと。
人間大の大きな魚……に、人間の手足が生えた珍妙な生物が一体、桟橋にモリを構えて立って居た。
「#$%&~!」
「&%~¥~$~!」
「ひ、ひえええ! 化け物~!」
ゴーストたちは恨めしい不気味な声と共に店主たちを追いかけ回して追っ払う。
逃げ出した店主たちは、その足で街道を駆け抜けて。
ハンターズオフィスへと駆け込んだのだった。
リプレイ本文
●ジャンジャン湖 釣り屋さんの小屋
「……これでも足りるかどうか、正直分からないな」
釣り屋さんの小屋の前。
両手いっぱいに自前のお菓子と、仲間から受け取ったお菓子を持ちながらジーナ(ka1643)は少し不安そうに呟いた。
「大丈夫ですよ、ただ楽しませてあげればよいのです。私たちはね、ひっひ」
ちょっぴり不気味な笑い方とは裏腹に、良い笑顔を見せるフーリィ・フラック(ka7040)は勢いよくドアを開け放った。
「さあさ、お菓子が欲しい子は寄っといで~!」
「お菓子っ!? お菓子ーっ!」
「おっ菓子! おっ菓子! おっ菓っ子-っ!」
「おわっ、おわわっ」
小屋中で好き勝手に遊んでいたゴーストたちは、一斉にジーナたちの元へと駆け寄ってきた。
一気にごった返すジーナたちの周り。
しかし、そんなものはものともせず、フーリィは手早く受付用のカウンターを片づけて椅子を並べていく。
「彼方の剣劇をお肴に。此方は楽しい大道芸。しばしのお祭り騒ぎにお付き合い~。さあさ、お姉さんからお菓子を貰った子は席に着いておくれ~」
なんだなんだなにごとだと騒いでいたゴーストたちのひとりが、フーリィの言葉を聞いてジーナの前にちょこんと手を出した。
「お菓子くーださいっ!」
「あ、あぁ」
フーリィの手際に少しだけ戸惑いながら、ジーナは紙皿にマカロンを取り出すとミネアの万能調味料を添えてゴーストへと手渡してあげる。
「ありがとっ!」
とててっとカウンターへ走るゴースト。
気付けば、あっという間にジーナの目の前にはゴーストの列が出来上がっていた。
「お菓子くーださいっ!」
「お菓子ーっ!」
「ま、待て待て、順番に渡してやるからな」
「ジーナさ~ん? 手早くお願いしますね~?」
「わ、わかっているっ!」
ジーナを急かしながらもテキパキとカウンター上にお菓子を用意しながら、ハーブティーの準備まで進めるフーリィ。
「はやくぅー!」
「あぁあぁ待ってくれ! ほら、落とすんじゃないぞ!」
「わぁーい!」
礼儀正しく並ぶのは構わない。
が、いっそのこと我先にとがっついてくれれば怒りようもあったのに……足りないのはお菓子ではなく人手の方だったかもしれない、と。
ジーナは思うのだった。
「おねーさんまだぁー!?」
「わ、わかってるってばぁ!」
●ジャンジャン湖 桟橋
一方、桟橋では。
「………………」
「尋常ではない闘気、どうあっても戦闘は避けられないか」
「事情が聞ければ戦わなくても済むかもって思ったのに……んもー!」
榊 兵庫(ka0010)と時音 ざくろ(ka1250)は、仁王立ちで構える魚人の前で武器を構えざるを得なかった。
揺らめく空気、ヒリつくような威圧感、指先が痺れるほどの研ぎ澄まされた闘気。
モリを構えた魚人は、風など吹いていないはずなのに回転草に埋め尽くされた水面がにわかに揺れ、波打つほどの圧力を纏っていた。
兵庫がゆっくりと十文字槍を構え、ざくろがラウンドシールドとメイスを構える。
数センチ、兵庫がにじり寄った瞬間。
「――――ッ!」
一瞬。
モリを構えた魚人が、大きく足を振りあげたかと思った直後。
「なっ!」
強烈な踏み込みと共に突き出されたモリが兵庫の十文字槍をすり抜けようと、その腹へ迫っていた。
「ぐっ、うぅっ!?」
「!」
魚人の突き出したモリの射程は驚異的なものだった。
魚人の手首にひっかけられた伸縮する縄によって放たれたモリを、掌底によって加速させる技。
間一髪、一撃を受けきることに成功した兵庫だったが、反撃へ転じる前に魚人は大きく後方へと跳んでいた。
「……なるほど、モリをそのように扱うか」
一撃を受けきられると見るやいなやの転身。掌底を合わせたロングレンジからの攻撃。
奇抜で洗練された身のこなし。
「だが、槍術ならば俺も相応の覚えがある」
しかし、兵庫の身には根底にある戦術が槍術のそれであると見抜くことが出来た。
「尋常に立ちあうとしようか」
「――ッ!」
再び構えに入る魚人。
ロングレンジからの突き、その初期動作に入った瞬間ざくろが飛び出してきた。
メイスを振りかぶりながら突進してくるざくろへ狙いを変えようとした時、兵庫の兜から放たれた波動が魚人の動きを阻害する。
「!」
兵庫の放つガウスジェイルによって狙いを変えられなかった魚人の腹へ、ざくろのメイスが叩き込まれる――瞬間。
「えぇっ!?」
魚人は無理やり身体を捻ると、湖へと倒れ込むように落ちた。
ドボンッ、と水の中へ落ちていった魚人の姿が見えなくなる。
水中はおろか、水面の揺れすらも二人には見えない。
「気をつけろ……相手は魚人、となれば――」
瞬間、大量の回転草が巻き上がり。
「!」
その中から、ざくろ目がけて鋭いモリの一撃が放たれた。
●ジャンジャン湖 釣り屋さんの小屋
「おねーさん、ぼくもおちゃちゃー!」
「はいはい、熱いから気をつけるんだぞ」
「わーい! ありがとー!」
白熱する桟橋での戦闘をよそに、小屋の中はフーリィの大道芸で盛り上がっていた。
ジーナはゴーストに囲まれ、せっせとハーブティーを淹れては配ってあげている。
「おやおや、こんなところにお菓子の袋を捨ててはいけませんよ~。私のような人に傘で回されてしまいますからね~」
カウンターの上に置かれたお菓子の袋を丸めると、フーリィは傘の上で回してみせる。
「すごーいっ!」
「これも回してーっ!」
ひょいっと投げ込まれるゴーストたちの食べ終えたお菓子の袋を、これまた見事に受け止めて傘の上で回してみせる。
「「おぉぉーーっ!!」」
すると、ゴーストたちは声を揃えて拍手した。
「久しぶりのお菓子、とってもおいしいね!」
「ねーっ!」
フーリィの大道芸を見ながら、ハーブティーを物珍しそうに飲みながら、お菓子をたくさん食べながら。
楽しそうに笑うゴーストたちは、無邪気な子供そのもののようで。
「……あぁ、みんなで食べるとおいしいな」
「うんっ!」
ジーナはフッと微笑むのだった。
●ジャンジャン湖 桟橋
「ちぃっ……!!」
湖から飛び出してきた魚人の一撃は、間一髪ざくろの盾に吸い込まれた。
着地の瞬間、兵庫の強撃が足元を掬いにかかるが魚人の身のこなしは異様なほど軽く、その場でバク宙してみせると、反撃の一撃すら繰り出してみせた。
「!」
二人の間でモリを槍のように振り回し、円を描くように二人をさばく魚人。
その連撃は兵庫の切っ先を防ぎ、ざくろの足を狙う。
「くっ! あぶ……っ!」
ジェットブーツの浮遊によって魚人の払いを避けるざくろ。
そこへ再びモリの切っ先が迫る。
「只者ではない身のこなし、だが――」
その一撃がざくろの盾を捕らえた瞬間。
「――軽ーいっ!」
ざくろの盾が光の障壁に覆われると。
「超機導パワーオン、弾け飛べ!」
バヂィッと雷撃を纏うと魚人を弾き飛ばした。
「!!!」
兵庫を飛び越え、大きく弾き飛ばされた魚人が着地したのは地面。
桟橋を飛び越え、湖を囲う地面へと着地させられていた。
「喰らえフリージングレイ、更に拡散ヒートレイ!」
「!」
大きな範囲を持った二連の魔法が魚人目がけて襲い掛かる。
無数の氷柱と扇状に放たれる炎が自在に跳びまわる魚人を捉え、その動きを鈍らせる。
「今度は外さんッ!」
氷炎の中、極限まで高められたマテリアルのオーラを纏った兵庫の突きは魚人のモリを捉え、遥か遠くへと弾き飛ばしたのだった。
「…………参った」
「ふぅ……」
両手をあげる魚人。
それに釣られ、兵庫とざくろも武器を降ろすと、兵庫はどっかりと座り込みマテリアルヒーリングを自らに施すのだった。
●ジャンジャン湖 桟橋
「面目ない……まさか話す間もないほど脅かしてしまっていたとは思わず、てっきり我らを捨てたものとばかり」
戦いがひと段落した後。
ジーナとフーリィ、そしてゴーストたちが桟橋へやってくると、魚人は申し訳なさそうに魚面な頭をかいた。
「約束を反故にしただけでなく逃げるとは言語道断、などと怒りに我を忘れておりました。いやはや、お恥ずかしい」
「約束というのは、やはりお供え物のことなのですか?」
フーリィが問いかけると、魚人は頷いた。
「えぇ、えぇ。拙者には自然をどうこうする力などありません、せいぜいモリを振り回す程度。しかし、この子らがお菓子をくれるならと人間に力を貸しても良いと言って一生懸命頑張っておったのです」
魚人はお菓子を手にはしゃぐゴーストたちを優しく撫でる。
「その人間ってのは、そこの小屋に住んでる人間で間違いないのかい?」
兵庫の言葉にも魚人は頷く。
「えぇ。彼ら一族が湖の豊漁の代わりに供え物の甘味を欠かさないと約束したのです」
「なのにずぅっとお供え物が無いから、頭に来ちゃったんだね」
「しかり。湖に異変のひとつでも起こせば、きっと思い出すに違いないと思っておったのですが、さっぱりで」
項垂れる魚人へ、ジーナが微笑みかける。
「なら、もう大丈夫だろう。店主もその息子も、今回のことで思い知ったに違いない。菓子の供え物なら、きちんとすると言っていたぞ」
「おぉ、本当ですか! それは良かった。あぁ、であれば週に一度でも月に一度でも、気がついた時に供えて欲しいと言伝えては貰えませんか。この子たちも、しばらくは忘れられた分を取り戻したいはずです」
「ほっほ、ちゃんと言い付けておきましょう。それでは、先ほど御覧いただけなかった貴方にも」
そう言って、フーリィは魚人へチョコレートを手渡すと、クッキーにマカロンにキャンディ、マシュマロを次々と手品のようにどこからともなく取り出してみせた。
「なにそれー!?」
「お菓子どこから出したのー!」
「ひっひ、もう一度見せてあげましょう。いいですか、それっ」
「「わーっ!」」
フーリィが取り出してみせるたくさんのお菓子。
心ゆくまでお菓子と手品を楽しむゴーストと、魚人と、ハンターたちの笑い声は湖のほとりでいつまでも続いたのだった。
おしまい
「……これでも足りるかどうか、正直分からないな」
釣り屋さんの小屋の前。
両手いっぱいに自前のお菓子と、仲間から受け取ったお菓子を持ちながらジーナ(ka1643)は少し不安そうに呟いた。
「大丈夫ですよ、ただ楽しませてあげればよいのです。私たちはね、ひっひ」
ちょっぴり不気味な笑い方とは裏腹に、良い笑顔を見せるフーリィ・フラック(ka7040)は勢いよくドアを開け放った。
「さあさ、お菓子が欲しい子は寄っといで~!」
「お菓子っ!? お菓子ーっ!」
「おっ菓子! おっ菓子! おっ菓っ子-っ!」
「おわっ、おわわっ」
小屋中で好き勝手に遊んでいたゴーストたちは、一斉にジーナたちの元へと駆け寄ってきた。
一気にごった返すジーナたちの周り。
しかし、そんなものはものともせず、フーリィは手早く受付用のカウンターを片づけて椅子を並べていく。
「彼方の剣劇をお肴に。此方は楽しい大道芸。しばしのお祭り騒ぎにお付き合い~。さあさ、お姉さんからお菓子を貰った子は席に着いておくれ~」
なんだなんだなにごとだと騒いでいたゴーストたちのひとりが、フーリィの言葉を聞いてジーナの前にちょこんと手を出した。
「お菓子くーださいっ!」
「あ、あぁ」
フーリィの手際に少しだけ戸惑いながら、ジーナは紙皿にマカロンを取り出すとミネアの万能調味料を添えてゴーストへと手渡してあげる。
「ありがとっ!」
とててっとカウンターへ走るゴースト。
気付けば、あっという間にジーナの目の前にはゴーストの列が出来上がっていた。
「お菓子くーださいっ!」
「お菓子ーっ!」
「ま、待て待て、順番に渡してやるからな」
「ジーナさ~ん? 手早くお願いしますね~?」
「わ、わかっているっ!」
ジーナを急かしながらもテキパキとカウンター上にお菓子を用意しながら、ハーブティーの準備まで進めるフーリィ。
「はやくぅー!」
「あぁあぁ待ってくれ! ほら、落とすんじゃないぞ!」
「わぁーい!」
礼儀正しく並ぶのは構わない。
が、いっそのこと我先にとがっついてくれれば怒りようもあったのに……足りないのはお菓子ではなく人手の方だったかもしれない、と。
ジーナは思うのだった。
「おねーさんまだぁー!?」
「わ、わかってるってばぁ!」
●ジャンジャン湖 桟橋
一方、桟橋では。
「………………」
「尋常ではない闘気、どうあっても戦闘は避けられないか」
「事情が聞ければ戦わなくても済むかもって思ったのに……んもー!」
榊 兵庫(ka0010)と時音 ざくろ(ka1250)は、仁王立ちで構える魚人の前で武器を構えざるを得なかった。
揺らめく空気、ヒリつくような威圧感、指先が痺れるほどの研ぎ澄まされた闘気。
モリを構えた魚人は、風など吹いていないはずなのに回転草に埋め尽くされた水面がにわかに揺れ、波打つほどの圧力を纏っていた。
兵庫がゆっくりと十文字槍を構え、ざくろがラウンドシールドとメイスを構える。
数センチ、兵庫がにじり寄った瞬間。
「――――ッ!」
一瞬。
モリを構えた魚人が、大きく足を振りあげたかと思った直後。
「なっ!」
強烈な踏み込みと共に突き出されたモリが兵庫の十文字槍をすり抜けようと、その腹へ迫っていた。
「ぐっ、うぅっ!?」
「!」
魚人の突き出したモリの射程は驚異的なものだった。
魚人の手首にひっかけられた伸縮する縄によって放たれたモリを、掌底によって加速させる技。
間一髪、一撃を受けきることに成功した兵庫だったが、反撃へ転じる前に魚人は大きく後方へと跳んでいた。
「……なるほど、モリをそのように扱うか」
一撃を受けきられると見るやいなやの転身。掌底を合わせたロングレンジからの攻撃。
奇抜で洗練された身のこなし。
「だが、槍術ならば俺も相応の覚えがある」
しかし、兵庫の身には根底にある戦術が槍術のそれであると見抜くことが出来た。
「尋常に立ちあうとしようか」
「――ッ!」
再び構えに入る魚人。
ロングレンジからの突き、その初期動作に入った瞬間ざくろが飛び出してきた。
メイスを振りかぶりながら突進してくるざくろへ狙いを変えようとした時、兵庫の兜から放たれた波動が魚人の動きを阻害する。
「!」
兵庫の放つガウスジェイルによって狙いを変えられなかった魚人の腹へ、ざくろのメイスが叩き込まれる――瞬間。
「えぇっ!?」
魚人は無理やり身体を捻ると、湖へと倒れ込むように落ちた。
ドボンッ、と水の中へ落ちていった魚人の姿が見えなくなる。
水中はおろか、水面の揺れすらも二人には見えない。
「気をつけろ……相手は魚人、となれば――」
瞬間、大量の回転草が巻き上がり。
「!」
その中から、ざくろ目がけて鋭いモリの一撃が放たれた。
●ジャンジャン湖 釣り屋さんの小屋
「おねーさん、ぼくもおちゃちゃー!」
「はいはい、熱いから気をつけるんだぞ」
「わーい! ありがとー!」
白熱する桟橋での戦闘をよそに、小屋の中はフーリィの大道芸で盛り上がっていた。
ジーナはゴーストに囲まれ、せっせとハーブティーを淹れては配ってあげている。
「おやおや、こんなところにお菓子の袋を捨ててはいけませんよ~。私のような人に傘で回されてしまいますからね~」
カウンターの上に置かれたお菓子の袋を丸めると、フーリィは傘の上で回してみせる。
「すごーいっ!」
「これも回してーっ!」
ひょいっと投げ込まれるゴーストたちの食べ終えたお菓子の袋を、これまた見事に受け止めて傘の上で回してみせる。
「「おぉぉーーっ!!」」
すると、ゴーストたちは声を揃えて拍手した。
「久しぶりのお菓子、とってもおいしいね!」
「ねーっ!」
フーリィの大道芸を見ながら、ハーブティーを物珍しそうに飲みながら、お菓子をたくさん食べながら。
楽しそうに笑うゴーストたちは、無邪気な子供そのもののようで。
「……あぁ、みんなで食べるとおいしいな」
「うんっ!」
ジーナはフッと微笑むのだった。
●ジャンジャン湖 桟橋
「ちぃっ……!!」
湖から飛び出してきた魚人の一撃は、間一髪ざくろの盾に吸い込まれた。
着地の瞬間、兵庫の強撃が足元を掬いにかかるが魚人の身のこなしは異様なほど軽く、その場でバク宙してみせると、反撃の一撃すら繰り出してみせた。
「!」
二人の間でモリを槍のように振り回し、円を描くように二人をさばく魚人。
その連撃は兵庫の切っ先を防ぎ、ざくろの足を狙う。
「くっ! あぶ……っ!」
ジェットブーツの浮遊によって魚人の払いを避けるざくろ。
そこへ再びモリの切っ先が迫る。
「只者ではない身のこなし、だが――」
その一撃がざくろの盾を捕らえた瞬間。
「――軽ーいっ!」
ざくろの盾が光の障壁に覆われると。
「超機導パワーオン、弾け飛べ!」
バヂィッと雷撃を纏うと魚人を弾き飛ばした。
「!!!」
兵庫を飛び越え、大きく弾き飛ばされた魚人が着地したのは地面。
桟橋を飛び越え、湖を囲う地面へと着地させられていた。
「喰らえフリージングレイ、更に拡散ヒートレイ!」
「!」
大きな範囲を持った二連の魔法が魚人目がけて襲い掛かる。
無数の氷柱と扇状に放たれる炎が自在に跳びまわる魚人を捉え、その動きを鈍らせる。
「今度は外さんッ!」
氷炎の中、極限まで高められたマテリアルのオーラを纏った兵庫の突きは魚人のモリを捉え、遥か遠くへと弾き飛ばしたのだった。
「…………参った」
「ふぅ……」
両手をあげる魚人。
それに釣られ、兵庫とざくろも武器を降ろすと、兵庫はどっかりと座り込みマテリアルヒーリングを自らに施すのだった。
●ジャンジャン湖 桟橋
「面目ない……まさか話す間もないほど脅かしてしまっていたとは思わず、てっきり我らを捨てたものとばかり」
戦いがひと段落した後。
ジーナとフーリィ、そしてゴーストたちが桟橋へやってくると、魚人は申し訳なさそうに魚面な頭をかいた。
「約束を反故にしただけでなく逃げるとは言語道断、などと怒りに我を忘れておりました。いやはや、お恥ずかしい」
「約束というのは、やはりお供え物のことなのですか?」
フーリィが問いかけると、魚人は頷いた。
「えぇ、えぇ。拙者には自然をどうこうする力などありません、せいぜいモリを振り回す程度。しかし、この子らがお菓子をくれるならと人間に力を貸しても良いと言って一生懸命頑張っておったのです」
魚人はお菓子を手にはしゃぐゴーストたちを優しく撫でる。
「その人間ってのは、そこの小屋に住んでる人間で間違いないのかい?」
兵庫の言葉にも魚人は頷く。
「えぇ。彼ら一族が湖の豊漁の代わりに供え物の甘味を欠かさないと約束したのです」
「なのにずぅっとお供え物が無いから、頭に来ちゃったんだね」
「しかり。湖に異変のひとつでも起こせば、きっと思い出すに違いないと思っておったのですが、さっぱりで」
項垂れる魚人へ、ジーナが微笑みかける。
「なら、もう大丈夫だろう。店主もその息子も、今回のことで思い知ったに違いない。菓子の供え物なら、きちんとすると言っていたぞ」
「おぉ、本当ですか! それは良かった。あぁ、であれば週に一度でも月に一度でも、気がついた時に供えて欲しいと言伝えては貰えませんか。この子たちも、しばらくは忘れられた分を取り戻したいはずです」
「ほっほ、ちゃんと言い付けておきましょう。それでは、先ほど御覧いただけなかった貴方にも」
そう言って、フーリィは魚人へチョコレートを手渡すと、クッキーにマカロンにキャンディ、マシュマロを次々と手品のようにどこからともなく取り出してみせた。
「なにそれー!?」
「お菓子どこから出したのー!」
「ひっひ、もう一度見せてあげましょう。いいですか、それっ」
「「わーっ!」」
フーリィが取り出してみせるたくさんのお菓子。
心ゆくまでお菓子と手品を楽しむゴーストと、魚人と、ハンターたちの笑い声は湖のほとりでいつまでも続いたのだった。
おしまい
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相談ですよ フーリィ・フラック(ka7040) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/11/07 12:55:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/04 12:28:51 |