ゲスト
(ka0000)
【HW】「ない!」「ある!」
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/07 12:00
- 完成日
- 2017/11/17 07:37
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
――目が覚めたら、姿が違っていました。
* * *
いやいやいや、こんなアバウトきわまりない文章では伝わらないであろう。
つまり、こういうことだ。
とある男性ハンターはぼんきゅっぼんのナイスバディなおねーさんになり。
別のある女性ハンターはもぞもぞしながら男性トイレに駆け込んで複雑な表情をしてみたり。
そう。性別が反転していたのだ。
●
この奇妙きわまりない現象、ハンターにばかり起ったわけではなく、街を歩けばいつもの八百屋のおじさんがパワフルそうなおばさんの姿で出迎えてくれたり、近所の可愛い女学生が無精髭を生やして学校に出かけていったり。
マテリアルの変異だ、なんて主張する胡散臭いマッドサイエンティストなんて者もいたり、むしろお前が原因じゃないのかと追求しようとするハンターもいたり。
まあ詰まるところ、原因はつかめていないわけで。
でもそこは楽観的な人間も多いこの世の中、まあ明日になればいつもの毎日に戻るに違いないと思っている面子も少なくない。
●
――で、だ。
皆の性別が変わっていると言うことは、恐らく予想はつくだろう。
さあ、今日一日をどう過ごすか、それは君たち次第だ。
――目が覚めたら、姿が違っていました。
* * *
いやいやいや、こんなアバウトきわまりない文章では伝わらないであろう。
つまり、こういうことだ。
とある男性ハンターはぼんきゅっぼんのナイスバディなおねーさんになり。
別のある女性ハンターはもぞもぞしながら男性トイレに駆け込んで複雑な表情をしてみたり。
そう。性別が反転していたのだ。
●
この奇妙きわまりない現象、ハンターにばかり起ったわけではなく、街を歩けばいつもの八百屋のおじさんがパワフルそうなおばさんの姿で出迎えてくれたり、近所の可愛い女学生が無精髭を生やして学校に出かけていったり。
マテリアルの変異だ、なんて主張する胡散臭いマッドサイエンティストなんて者もいたり、むしろお前が原因じゃないのかと追求しようとするハンターもいたり。
まあ詰まるところ、原因はつかめていないわけで。
でもそこは楽観的な人間も多いこの世の中、まあ明日になればいつもの毎日に戻るに違いないと思っている面子も少なくない。
●
――で、だ。
皆の性別が変わっていると言うことは、恐らく予想はつくだろう。
さあ、今日一日をどう過ごすか、それは君たち次第だ。
リプレイ本文
●
――それは、夢のような不思議な話。
嘘か真か、それを知るのはきっと本人達のみ。
では、そんな一日を追いかけてみよう。
●
岩井崎 旭(ka0234)は、知る人ぞ知る方向音痴である。それゆえリゼリオ市内でもしょっちゅう自宅に帰られなくなって迷子になっていたりする……のだが、
「ぎゃあああああ!?」
毎度の如く自宅に帰れぬまま野宿をした翌日、自分の身に起きた違和感を水鏡に映すことではっきりと認識し、思わず妙ちきりんな声を上げた。
何しろそこにいたのは、癖毛のショートヘアに青い瞳の、やや小柄ながらなかなか可愛らしい少女であったからである。
「……な、なんだよこれっ。なにこれ、マジ? 冗談でもキツいってぇの……」
テンパっているせいか、変なハイテンションのままだ。
「つか、このまま家に帰ってもどーやって説明すんだ、これ?」
家で待つ大切な少女の顔を思いだして、頭を抱える。かといって、体型の変化によってかなりみっともない状態になっている服装その他をなんとかしなければ。
そんなことをぶつぶつと呟きつつ、服を引きずって歩いていると、目の前に見覚えのある家が現れた。ぱっと、旭の顔が明るくなる。
(こ、これだぁ!)
そこはハンター仲間であり、同時に迷子仲間であるという、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)の家。
このシルヴィアという少女、本来はとても小柄で金髪碧眼というそれなりに目立つ容姿をしているのだが、素顔を見る機会は殆どない。というのも、シルヴィアは好んでヘルメットや鎧を着込み、顔を隠すことが多いからである。
しかし今の旭にとって、それは非常にありがたいことに思われた。恐らく今の旭とシルヴィアならば体型も近いだろうし、何より顔を隠して行動することも可能だからだ。
「おい、シルヴィア! 助けて、泊めて、かくまって……!」
やや乱暴に、旭がドアをノックする。――と。
「……すみませんどなたでしょうか。とりあえず今は立て込んでいますので、お引き取り願えますか?」
そう言って顔を出したのは、少し癖のあるショートの金髪に青い瞳の細マッチョ――という、旭の知らない青年であった。
「……だ、誰?」
その青年こそがシルヴィアなのだが、旭は知るわけもない。
ここで少し時間を戻そう。
シルヴィアがここまで如何していたかと言うことについて、だ。
まず、彼女はいつものように、自分の家のベッドで眠っていた。起きた時に感じたのは妙な違和感だった。
(……ベッドが小さくなった……?)
不思議そうに首をかしげながら、微妙に動かしにくい身体を動かして起き上がり、鏡を覗いてみる――と。そこにいたのは金髪碧眼細マッチョだったわけで。しかも女物の下着を穿いていて、正直変態としか言いようのない姿で。
よくよくみれば義手や義足はいつもやや大きめだったのだが、今はぴったりと身体に合っている。
「ついに私にも成長期が来たようで……って、そんなわけないですか」
意外と冷静に判断を下し、はあっと一つため息をつく。そっと上を向くと、いつもよりも天井が近くに感じられた。
(しかし流石にこの身体で外に出るわけにも行かないですし……どうしましょうか……)
そう思っている矢先にドアをノックする音がした、というわけなのだった。
「……旭さんだったんですね」
目の前で困惑している少女の正体がそれとわかると、シルヴィアも安堵したかのように頷いて見せた。
と言っても、普段とは体格その他がまるで正反対で、今は取り敢えずお互いの服を取り替えると言うことで事なきを得ているが。
(ふむ、ズボンというのは案外動きやすいですね。そして何より、身長の変化のせいでしょう、視界もいつもと違う)
シルヴィアはぼんやりとそう思うけれど、旭は旭でどぎまぎしている。
(今更気が付いたけれど、こいつの服、普段から丈の短い服ばっかりだったんだなぁ)
異性の服を借りるなど機会のあるものでなし、どぎまぎするのも仕方はない。その上下着まで貸してくれるというのだから、そうなるのも当然だろう。ホントにこれをつけてもいいのか、自分に何度も言い聞かせた上で、勢いでそれを着け。まあ、全裸で女性もの下着をいじくり回している旭に、シルヴィアが冷静な声かけをしたのも一因だが。
「あー、それにしてもスカートって落ち着かねぇな」
そんなことを言って誤魔化してみたり、恥ずかしいのをなんとかこらえてみてはいるものの、やはり慣れない服装と体型に顔はしぜんと赤くなる。
「ま、服もとりあえずはどうにかなりましたし、情報収集ついでに街に……服屋にでも言ってみましょうか。緊急事態とは言え、またとない機会では在りますし」
ないはずのものが増えた違和感を覚えつつも、シルヴィアはあくまでいつもの冷静さを失わないのであった。
●
(嗚呼、これは夢だ)
目覚めてすぐにそう認識したのはアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。今までの彼の経験からして、この手の意味不明な状況は母の悪戯か夢と相場が決まっている、らしい。そしていくら母親でもこういう変化はあり得まい、それならば夢だと結論づけたのは認識能力が高いと言うべきなのか。
(……むしろそれ以外で見た目がまるで変わらない、というのは一体どういうことなのか……)
成長中の身体ではあるが、けして女性的というわけでもないはずだ。アウレールは頭を抑えつつ、取り敢えず起き上がった。
何しろ早くにからくりに気付いてしまったせいもあって、折角ならばとノリノリで今の自分に一番しっくりきそうなコルセットドレスでめかし込み、乗り込もうとするのは帝国貴族が主催する仮面舞踏会。
(いくら伏魔殿の社交界といえど、現実にこんな面白い格好のアブない女がいるわけが無いし)
ターゲットはよく見掛ける、ぶっちゃけ見掛けるたびにいつかこられないようにしてやりたいと思っている変態という名の紳士諸兄。女で痛い目にあってしまえばいいのにと言う想いは以前からあったし、それを行動に移せる絶好のチャンスというわけだ。この姿で誘惑し、その上で脅しの材料を得るなり何なり、出来ることはなんでもあるに違いない。
――と思いいさんで向かったのはいいものの、今回のこの夢――性別の反転は他の人間にも起きている。つまり変態紳士諸兄は変態淑女と化しており、むしろ裏でのどろどろやキャットファイトが加速しているという有り様。あまりにも無残という言葉が似合う有り様で、下手に動くことも出来やしない。
その上男受けが良かったりすれば、……まあどうなるかはご想像にお任せする。
(夢にだって色々あるけれど)
アウレールは胸の奥でため息をつく。
(これは本当に夢で良かった――)
●
アウレールとは違う意味であっさり受け入れたのは、鞍馬 真(ka5819)だった。もともとが中性的な容姿に長い髪、その上体格も男性的とは言えなかったので特に違和感が無い。胸も空気を読んだのか、いわゆるまな板という奴である。しいて変化を言うならば、声が多少高くなった程度、なのかも知れない。
(せめて胸が大きければ、多少の違和感があったろうに……)
別の意味でがっくりしてしまう。
これだけ『殆ど変わっていない』状況では、違和感もなにもあったものではない。周囲にもごく当たり前に受け入れられてしまうだろうし、逆にそういう意味で複雑な気分になるだろう。
「取り敢えずオフィスでなにか仕事を貰ってくるか……」
向かったハンターオフィスでは、見慣れた顔のはずの受付嬢が男性になっていて、
「そうなんですよね、これもなんかみんな困惑はしているんですけど、……それでも真さんのようにすぐにわかるひとばかりではないのが現実ですね。あそこにいる人たちも、ほら」
そう言って視線を向けた先にいるのは旭とシルヴィア。服を買い込んだあとでここに来たらしい。
「あー……一瞬誰か判らなかったけれど、なるほど」
言われて真も頷く。よくよく見れば面影の残る顔立ちだから、彼らの正体がすんなり理解出来た。
「で、今日は適当な討伐依頼でもあるか? このもやもや感をなにかにぶつけて発散したい気分だからさ」
「あー、今日はそういう人多いですねえ……初心者ハンターさんも手ほどきを望んでいたりしますし、そちらのお相手をする形でもいいですか」
「嗚呼、そう言うのも需要があるなら構わない」
と言うわけで訓練所で師範役――というほどたいそうなものではないが、初心者と剣をあわせて汗を流すことに決めた。
(……性別以外は本当に普段とそう変わらないな)
それはそれで喜んでいいのか嘆くべきなのかわからないが。
●
ところで、胸というのは女性らしさのシンボルではあるが……まあ、色々人それぞれ悩みというのはあって。
(……嗚呼、なんだか男性になってしまっているようだけれど、もとから胸は平坦だったというか、むしろ胸筋がついているせいかふだんよりも立派になったような気がしなくもなくて、うふふふふ)
そう乾いた笑みを浮かべながら呆然としているのはリン・フュラー(ka5869)。普段は大人しげな雰囲気のエルフの少女だが、今回のこの騒動のせいでいつもよりも体格は一回りほど立派になり、……ついでに、まあないモノが生えていたりしてはいるが、それ以外はとくに大きな違和感も無く過ごせそうかな、とぼんやりと考える。
「まあ、細かいことを気にせず、生活していればそのうちなれるでしょう。それよりも今日は手合わせをする約束をしているのだから、気持ちを切り替えてそちらにも集中しなくちゃ……」
あえて口にだし、気分を一新する。
さて、その手合わせの相手、というのは。
アーク・フォーサイス(ka6568)、小柄な、何処か中性的な少年である――が、こちらもご多分に漏れず少女の姿になっていた。髪は背中の中程まで伸びていたので、ポニーテールにして軽くまとめ、身長などの変化はそれほどあるわけではないが、やはり女性のそれであるのがわかる程度には胸の膨らみが主張している。しかしもともと何処かぼんやりしたところもある性格をしているせいか、この変化をなんとなしに受け入れてしまっていた。
(何がどうしてこうなっているのかは判らないけれど、命の危険があるわけでもないだろうし、そこまで大騒ぎをするようなことでもないかな。……まあ、多少不便ではあるかも知れないけれど)
自分は自分、その本質の変化はないと思っているため、すんなりと受け入れた――という感じだろう。
(取り敢えずリンとの約束もあるし、向かわないと)
手合わせの道具一式を持ち、いつもと少々勝手の異なる身体にはさらしを巻いて、手合わせ予定のソサエティ内にある修練場に向かった。
「……リン!」
呼ばれたリンは一瞬目を丸くする。そう名前を呼んだ人物は、どう見ても自分とそう年のころの変わらぬ少女で、今日会う予定の人物はしかし少年だったからだ。
「って、それ……アークさんも女性になってる……!?」
リンは思わずそう口に出す。するとアークはああ、と納得したかのように頷いて、
「まあなんかいつもと若干勝手は違うけれど、それほど気にすることじゃないと思うし」
アークからしてみれば、リンはハンターの先輩にあたる。ほんの少しの差かも知れないが、扱う得物も同じ、そして仕事をともにすることも多かったこともあり、親近感を持って付き合うことのできる相手だ。他人との会話が得意とは言えない彼にとって、気安く話すことのできる相手、というのは大事なのである。
しかし。
そのアークの胸に、リンの視線はいやでも注がれる。
(あの胸の感じ……Bか、あるいはCくらいありそうな……)
リンとしては、もともとが女性だったと言うこともあり、その自分の胸よりも大きいとなればため息が出てしまう。いやでも普段の自分の貧乳ぶりを突きつけられてしまっているかのようで、もやもやとしてしまう。
――それでも、手合わせとなればお互い手を抜くことはしない。
「この身体でも、どこまで出来るのかなどを試しておきたいし、……命を賭けるわけではなくても勝負だからね、気を抜かずにいこう」
アークはそう言って、勝敗の条件を提示する。刀を手放したり、降参を宣言したりしたら、と言うことに落ち着いた。
二人は練習用の、刃を潰した刀を持ち、そろりそろりと構え、身体を動かし出す。
リンは常に円舞を意識したなめらかな動きで相手の剣を受け流し、ヒット&アウェイを繰り返す。
アークもそれに対応はできるが、反撃が上手くできるかというとなかなか出来ない。それでも負けず嫌いなところがあるので、決して自分から降参とは言いたくないのだ。
と、油断を一瞬したのだろうか。アークの目の前を、刀が薙いでいく。慌てて避けようとしたものの、足が少しもつれてしまい、ぐらりとリンともども倒れてしまった。
ちょうど、リンの上にアークが覆い被さるようになってしまっている。どちらからしても目のやり場に困る状況で、慌てて立ち上がって襟を整えた。
(まだ及ばないなぁ……それでも、普段は今の俺に近い体格で、それをこなしているリンは、やっぱり凄い……)
おかしなところでしみじみと実感するアークなのだった。
●
――やがて日も暮れ、ぼんやりと時間が過ぎていく。時計の針が明日を告げれば、身体はいつの間にか元通り。
夢でよかったと思うのか。
夢でなければと思うのか。
それは、きっと――人それぞれ。
――それは、夢のような不思議な話。
嘘か真か、それを知るのはきっと本人達のみ。
では、そんな一日を追いかけてみよう。
●
岩井崎 旭(ka0234)は、知る人ぞ知る方向音痴である。それゆえリゼリオ市内でもしょっちゅう自宅に帰られなくなって迷子になっていたりする……のだが、
「ぎゃあああああ!?」
毎度の如く自宅に帰れぬまま野宿をした翌日、自分の身に起きた違和感を水鏡に映すことではっきりと認識し、思わず妙ちきりんな声を上げた。
何しろそこにいたのは、癖毛のショートヘアに青い瞳の、やや小柄ながらなかなか可愛らしい少女であったからである。
「……な、なんだよこれっ。なにこれ、マジ? 冗談でもキツいってぇの……」
テンパっているせいか、変なハイテンションのままだ。
「つか、このまま家に帰ってもどーやって説明すんだ、これ?」
家で待つ大切な少女の顔を思いだして、頭を抱える。かといって、体型の変化によってかなりみっともない状態になっている服装その他をなんとかしなければ。
そんなことをぶつぶつと呟きつつ、服を引きずって歩いていると、目の前に見覚えのある家が現れた。ぱっと、旭の顔が明るくなる。
(こ、これだぁ!)
そこはハンター仲間であり、同時に迷子仲間であるという、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)の家。
このシルヴィアという少女、本来はとても小柄で金髪碧眼というそれなりに目立つ容姿をしているのだが、素顔を見る機会は殆どない。というのも、シルヴィアは好んでヘルメットや鎧を着込み、顔を隠すことが多いからである。
しかし今の旭にとって、それは非常にありがたいことに思われた。恐らく今の旭とシルヴィアならば体型も近いだろうし、何より顔を隠して行動することも可能だからだ。
「おい、シルヴィア! 助けて、泊めて、かくまって……!」
やや乱暴に、旭がドアをノックする。――と。
「……すみませんどなたでしょうか。とりあえず今は立て込んでいますので、お引き取り願えますか?」
そう言って顔を出したのは、少し癖のあるショートの金髪に青い瞳の細マッチョ――という、旭の知らない青年であった。
「……だ、誰?」
その青年こそがシルヴィアなのだが、旭は知るわけもない。
ここで少し時間を戻そう。
シルヴィアがここまで如何していたかと言うことについて、だ。
まず、彼女はいつものように、自分の家のベッドで眠っていた。起きた時に感じたのは妙な違和感だった。
(……ベッドが小さくなった……?)
不思議そうに首をかしげながら、微妙に動かしにくい身体を動かして起き上がり、鏡を覗いてみる――と。そこにいたのは金髪碧眼細マッチョだったわけで。しかも女物の下着を穿いていて、正直変態としか言いようのない姿で。
よくよくみれば義手や義足はいつもやや大きめだったのだが、今はぴったりと身体に合っている。
「ついに私にも成長期が来たようで……って、そんなわけないですか」
意外と冷静に判断を下し、はあっと一つため息をつく。そっと上を向くと、いつもよりも天井が近くに感じられた。
(しかし流石にこの身体で外に出るわけにも行かないですし……どうしましょうか……)
そう思っている矢先にドアをノックする音がした、というわけなのだった。
「……旭さんだったんですね」
目の前で困惑している少女の正体がそれとわかると、シルヴィアも安堵したかのように頷いて見せた。
と言っても、普段とは体格その他がまるで正反対で、今は取り敢えずお互いの服を取り替えると言うことで事なきを得ているが。
(ふむ、ズボンというのは案外動きやすいですね。そして何より、身長の変化のせいでしょう、視界もいつもと違う)
シルヴィアはぼんやりとそう思うけれど、旭は旭でどぎまぎしている。
(今更気が付いたけれど、こいつの服、普段から丈の短い服ばっかりだったんだなぁ)
異性の服を借りるなど機会のあるものでなし、どぎまぎするのも仕方はない。その上下着まで貸してくれるというのだから、そうなるのも当然だろう。ホントにこれをつけてもいいのか、自分に何度も言い聞かせた上で、勢いでそれを着け。まあ、全裸で女性もの下着をいじくり回している旭に、シルヴィアが冷静な声かけをしたのも一因だが。
「あー、それにしてもスカートって落ち着かねぇな」
そんなことを言って誤魔化してみたり、恥ずかしいのをなんとかこらえてみてはいるものの、やはり慣れない服装と体型に顔はしぜんと赤くなる。
「ま、服もとりあえずはどうにかなりましたし、情報収集ついでに街に……服屋にでも言ってみましょうか。緊急事態とは言え、またとない機会では在りますし」
ないはずのものが増えた違和感を覚えつつも、シルヴィアはあくまでいつもの冷静さを失わないのであった。
●
(嗚呼、これは夢だ)
目覚めてすぐにそう認識したのはアウレール・V・ブラオラント(ka2531)。今までの彼の経験からして、この手の意味不明な状況は母の悪戯か夢と相場が決まっている、らしい。そしていくら母親でもこういう変化はあり得まい、それならば夢だと結論づけたのは認識能力が高いと言うべきなのか。
(……むしろそれ以外で見た目がまるで変わらない、というのは一体どういうことなのか……)
成長中の身体ではあるが、けして女性的というわけでもないはずだ。アウレールは頭を抑えつつ、取り敢えず起き上がった。
何しろ早くにからくりに気付いてしまったせいもあって、折角ならばとノリノリで今の自分に一番しっくりきそうなコルセットドレスでめかし込み、乗り込もうとするのは帝国貴族が主催する仮面舞踏会。
(いくら伏魔殿の社交界といえど、現実にこんな面白い格好のアブない女がいるわけが無いし)
ターゲットはよく見掛ける、ぶっちゃけ見掛けるたびにいつかこられないようにしてやりたいと思っている変態という名の紳士諸兄。女で痛い目にあってしまえばいいのにと言う想いは以前からあったし、それを行動に移せる絶好のチャンスというわけだ。この姿で誘惑し、その上で脅しの材料を得るなり何なり、出来ることはなんでもあるに違いない。
――と思いいさんで向かったのはいいものの、今回のこの夢――性別の反転は他の人間にも起きている。つまり変態紳士諸兄は変態淑女と化しており、むしろ裏でのどろどろやキャットファイトが加速しているという有り様。あまりにも無残という言葉が似合う有り様で、下手に動くことも出来やしない。
その上男受けが良かったりすれば、……まあどうなるかはご想像にお任せする。
(夢にだって色々あるけれど)
アウレールは胸の奥でため息をつく。
(これは本当に夢で良かった――)
●
アウレールとは違う意味であっさり受け入れたのは、鞍馬 真(ka5819)だった。もともとが中性的な容姿に長い髪、その上体格も男性的とは言えなかったので特に違和感が無い。胸も空気を読んだのか、いわゆるまな板という奴である。しいて変化を言うならば、声が多少高くなった程度、なのかも知れない。
(せめて胸が大きければ、多少の違和感があったろうに……)
別の意味でがっくりしてしまう。
これだけ『殆ど変わっていない』状況では、違和感もなにもあったものではない。周囲にもごく当たり前に受け入れられてしまうだろうし、逆にそういう意味で複雑な気分になるだろう。
「取り敢えずオフィスでなにか仕事を貰ってくるか……」
向かったハンターオフィスでは、見慣れた顔のはずの受付嬢が男性になっていて、
「そうなんですよね、これもなんかみんな困惑はしているんですけど、……それでも真さんのようにすぐにわかるひとばかりではないのが現実ですね。あそこにいる人たちも、ほら」
そう言って視線を向けた先にいるのは旭とシルヴィア。服を買い込んだあとでここに来たらしい。
「あー……一瞬誰か判らなかったけれど、なるほど」
言われて真も頷く。よくよく見れば面影の残る顔立ちだから、彼らの正体がすんなり理解出来た。
「で、今日は適当な討伐依頼でもあるか? このもやもや感をなにかにぶつけて発散したい気分だからさ」
「あー、今日はそういう人多いですねえ……初心者ハンターさんも手ほどきを望んでいたりしますし、そちらのお相手をする形でもいいですか」
「嗚呼、そう言うのも需要があるなら構わない」
と言うわけで訓練所で師範役――というほどたいそうなものではないが、初心者と剣をあわせて汗を流すことに決めた。
(……性別以外は本当に普段とそう変わらないな)
それはそれで喜んでいいのか嘆くべきなのかわからないが。
●
ところで、胸というのは女性らしさのシンボルではあるが……まあ、色々人それぞれ悩みというのはあって。
(……嗚呼、なんだか男性になってしまっているようだけれど、もとから胸は平坦だったというか、むしろ胸筋がついているせいかふだんよりも立派になったような気がしなくもなくて、うふふふふ)
そう乾いた笑みを浮かべながら呆然としているのはリン・フュラー(ka5869)。普段は大人しげな雰囲気のエルフの少女だが、今回のこの騒動のせいでいつもよりも体格は一回りほど立派になり、……ついでに、まあないモノが生えていたりしてはいるが、それ以外はとくに大きな違和感も無く過ごせそうかな、とぼんやりと考える。
「まあ、細かいことを気にせず、生活していればそのうちなれるでしょう。それよりも今日は手合わせをする約束をしているのだから、気持ちを切り替えてそちらにも集中しなくちゃ……」
あえて口にだし、気分を一新する。
さて、その手合わせの相手、というのは。
アーク・フォーサイス(ka6568)、小柄な、何処か中性的な少年である――が、こちらもご多分に漏れず少女の姿になっていた。髪は背中の中程まで伸びていたので、ポニーテールにして軽くまとめ、身長などの変化はそれほどあるわけではないが、やはり女性のそれであるのがわかる程度には胸の膨らみが主張している。しかしもともと何処かぼんやりしたところもある性格をしているせいか、この変化をなんとなしに受け入れてしまっていた。
(何がどうしてこうなっているのかは判らないけれど、命の危険があるわけでもないだろうし、そこまで大騒ぎをするようなことでもないかな。……まあ、多少不便ではあるかも知れないけれど)
自分は自分、その本質の変化はないと思っているため、すんなりと受け入れた――という感じだろう。
(取り敢えずリンとの約束もあるし、向かわないと)
手合わせの道具一式を持ち、いつもと少々勝手の異なる身体にはさらしを巻いて、手合わせ予定のソサエティ内にある修練場に向かった。
「……リン!」
呼ばれたリンは一瞬目を丸くする。そう名前を呼んだ人物は、どう見ても自分とそう年のころの変わらぬ少女で、今日会う予定の人物はしかし少年だったからだ。
「って、それ……アークさんも女性になってる……!?」
リンは思わずそう口に出す。するとアークはああ、と納得したかのように頷いて、
「まあなんかいつもと若干勝手は違うけれど、それほど気にすることじゃないと思うし」
アークからしてみれば、リンはハンターの先輩にあたる。ほんの少しの差かも知れないが、扱う得物も同じ、そして仕事をともにすることも多かったこともあり、親近感を持って付き合うことのできる相手だ。他人との会話が得意とは言えない彼にとって、気安く話すことのできる相手、というのは大事なのである。
しかし。
そのアークの胸に、リンの視線はいやでも注がれる。
(あの胸の感じ……Bか、あるいはCくらいありそうな……)
リンとしては、もともとが女性だったと言うこともあり、その自分の胸よりも大きいとなればため息が出てしまう。いやでも普段の自分の貧乳ぶりを突きつけられてしまっているかのようで、もやもやとしてしまう。
――それでも、手合わせとなればお互い手を抜くことはしない。
「この身体でも、どこまで出来るのかなどを試しておきたいし、……命を賭けるわけではなくても勝負だからね、気を抜かずにいこう」
アークはそう言って、勝敗の条件を提示する。刀を手放したり、降参を宣言したりしたら、と言うことに落ち着いた。
二人は練習用の、刃を潰した刀を持ち、そろりそろりと構え、身体を動かし出す。
リンは常に円舞を意識したなめらかな動きで相手の剣を受け流し、ヒット&アウェイを繰り返す。
アークもそれに対応はできるが、反撃が上手くできるかというとなかなか出来ない。それでも負けず嫌いなところがあるので、決して自分から降参とは言いたくないのだ。
と、油断を一瞬したのだろうか。アークの目の前を、刀が薙いでいく。慌てて避けようとしたものの、足が少しもつれてしまい、ぐらりとリンともども倒れてしまった。
ちょうど、リンの上にアークが覆い被さるようになってしまっている。どちらからしても目のやり場に困る状況で、慌てて立ち上がって襟を整えた。
(まだ及ばないなぁ……それでも、普段は今の俺に近い体格で、それをこなしているリンは、やっぱり凄い……)
おかしなところでしみじみと実感するアークなのだった。
●
――やがて日も暮れ、ぼんやりと時間が過ぎていく。時計の針が明日を告げれば、身体はいつの間にか元通り。
夢でよかったと思うのか。
夢でなければと思うのか。
それは、きっと――人それぞれ。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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