ゲスト
(ka0000)
丸太運びのマルタ
マスター:あきのそら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/12 15:00
- 完成日
- 2017/11/20 00:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ヨイキーノ村
冒険都市リゼリオから馬車で五日。
深い山々に囲まれた盆地に、小さな村――ヨイキーノ村はある。
そこに、マルタという青年が居た。
「おい、マルタよ。どこへ行く気だ」
村の男が、マルタを呼び止める。
「森へは入るなと言っただろう、あそこは今雑魔が出ていて危険だと――」
「妹の熱がまた上がった。これでもう三日連続なんだ、これ以上待って居られないッ!」
マルタは、手に持った斧をキツく握りしめる。
村の男は、マルタの悔しそうな表情を見て、重い重いため息をつき、言った。
「……何度になったんだ」
「36度5分」
「平熱じゃないか!!!!!」
「平熱でもッ! 昨日は36度2分、おとといは36度1分だったんだよッ! どうみても病気だッ!!!」
「病気なのはお前のほうだ!!!!」
村の男が頭を抱えていると、周囲の家々から何事だと村人たちが顔を覗かせ、ある者は家を出て歩み寄ってくる。
「……じゃあ、俺はもう行くからな」
「いやいやいや待て待て待て、待てよマルタ。行ってどうする、船は雑魔に壊されてしまって今は無いだろう」
そう、このヨイキーノ村は山奥も山奥にある。
隣町へ行くにも山を越えて船で川を下らなければならず、徒歩では三日以上かかってしまう。
「丸太をボートにして行く」
「丸太を!? い、イカダを組むのか!?」
「いいや、丸太に乗る」
「お前が何を言っているのかワシにはわからん……いいや、そうだったな、お前の言っていることが分かった試しなどなかったな……」
「じゃあ俺はもう」
「待て待て待て! 丸太に乗って、なんだ、川を下る気か!?」
「そうだ」
「丸太はどうする、その斧で作るつもりか!?」
「違う。これはオール用の木を切る斧だ」
「丸太は!?」
「先週、こんなこともあろうかと切っておいたものがある」
「こんなことを想定していたのか!?」
「妹が丸太で川下りをしたことがあると話したら『お兄ちゃんかっこいい』と言ったから何度もやるつもりだった。念のため10本用意してある」
「10本も!? ここ数日いつも真面目なお前がいつも以上に熱心に働いていると思ったらそういうことだったのか! お前と言う奴は……まったく……」
「それじゃあ俺は」
「いやいやいや待ってくれ待ってくれ! 頼むから考え直してくれ! な!」
村の男は必死にマルタを止める。
何故なら、マルタこそこの村に住む唯一の若い男なのだ。
彼を失えば村は衰退してしまうかもしれない。
妹のことさえ目を瞑れば、真面目で働き者でセンスも良く知恵もあるマルタを村人たちは大切に思っているのだ。
「よしわかった、ならわかった。ハンターさんへ連絡をして、お医者さんを連れてきてもらおう。森の雑魔退治をお願いする予定でもあったんだ、な? それでどうだ、ハンターさんならすぐに来てくれるはずだぞ」
「だめだ。俺が町で薬を貰って来る。そして妹に飲ませてやって、看病している最中に『ありがとうお兄ちゃん』と言われたい」
「お前と言う奴は……!」
「ついでに丸太で川下りもして、元気になったらまた『お兄ちゃんかっこいい』と言われたい」
「………………」
村人たちは頭を抱え、そして。
ついに結論を出した。
「……わかった、ハンターさんを呼ぶ、お前を町まで連れていってもらう、そして雑魔退治をしてもらい、マルタは安全になった森を帰ってくる、これでどうだ、な? いいだろう?」
「丸太でか?」
「あぁ、そうだ。丸太で川を下ってだ」
「わかった。だけど今すぐ行かないと妹が……」
これでもダメか、村人たちが絶望しかけたその時。
「お兄ちゃん……?」
マルタの妹――ルカがやってきた。
「ルカ! 寝ていないとダメじゃないか!」
「でも……お兄ちゃんにお本、よんでもらわないとねむれなくって……」
「よしわかった、すぐ帰る。家で待っててくれ」
「うん……」
「ちゃんと手洗いうがいしてからベッドに入るんだぞ」
「わかったぁ……」
ルカは家に戻り、村人たちがマルタの顔を伺う。
「わかった、ハンターさんを待つ。それから行くことにしよう」
「ほっ」
こうして、ハンターたちの元へ非効率な依頼が舞い込むのであった。
冒険都市リゼリオから馬車で五日。
深い山々に囲まれた盆地に、小さな村――ヨイキーノ村はある。
そこに、マルタという青年が居た。
「おい、マルタよ。どこへ行く気だ」
村の男が、マルタを呼び止める。
「森へは入るなと言っただろう、あそこは今雑魔が出ていて危険だと――」
「妹の熱がまた上がった。これでもう三日連続なんだ、これ以上待って居られないッ!」
マルタは、手に持った斧をキツく握りしめる。
村の男は、マルタの悔しそうな表情を見て、重い重いため息をつき、言った。
「……何度になったんだ」
「36度5分」
「平熱じゃないか!!!!!」
「平熱でもッ! 昨日は36度2分、おとといは36度1分だったんだよッ! どうみても病気だッ!!!」
「病気なのはお前のほうだ!!!!」
村の男が頭を抱えていると、周囲の家々から何事だと村人たちが顔を覗かせ、ある者は家を出て歩み寄ってくる。
「……じゃあ、俺はもう行くからな」
「いやいやいや待て待て待て、待てよマルタ。行ってどうする、船は雑魔に壊されてしまって今は無いだろう」
そう、このヨイキーノ村は山奥も山奥にある。
隣町へ行くにも山を越えて船で川を下らなければならず、徒歩では三日以上かかってしまう。
「丸太をボートにして行く」
「丸太を!? い、イカダを組むのか!?」
「いいや、丸太に乗る」
「お前が何を言っているのかワシにはわからん……いいや、そうだったな、お前の言っていることが分かった試しなどなかったな……」
「じゃあ俺はもう」
「待て待て待て! 丸太に乗って、なんだ、川を下る気か!?」
「そうだ」
「丸太はどうする、その斧で作るつもりか!?」
「違う。これはオール用の木を切る斧だ」
「丸太は!?」
「先週、こんなこともあろうかと切っておいたものがある」
「こんなことを想定していたのか!?」
「妹が丸太で川下りをしたことがあると話したら『お兄ちゃんかっこいい』と言ったから何度もやるつもりだった。念のため10本用意してある」
「10本も!? ここ数日いつも真面目なお前がいつも以上に熱心に働いていると思ったらそういうことだったのか! お前と言う奴は……まったく……」
「それじゃあ俺は」
「いやいやいや待ってくれ待ってくれ! 頼むから考え直してくれ! な!」
村の男は必死にマルタを止める。
何故なら、マルタこそこの村に住む唯一の若い男なのだ。
彼を失えば村は衰退してしまうかもしれない。
妹のことさえ目を瞑れば、真面目で働き者でセンスも良く知恵もあるマルタを村人たちは大切に思っているのだ。
「よしわかった、ならわかった。ハンターさんへ連絡をして、お医者さんを連れてきてもらおう。森の雑魔退治をお願いする予定でもあったんだ、な? それでどうだ、ハンターさんならすぐに来てくれるはずだぞ」
「だめだ。俺が町で薬を貰って来る。そして妹に飲ませてやって、看病している最中に『ありがとうお兄ちゃん』と言われたい」
「お前と言う奴は……!」
「ついでに丸太で川下りもして、元気になったらまた『お兄ちゃんかっこいい』と言われたい」
「………………」
村人たちは頭を抱え、そして。
ついに結論を出した。
「……わかった、ハンターさんを呼ぶ、お前を町まで連れていってもらう、そして雑魔退治をしてもらい、マルタは安全になった森を帰ってくる、これでどうだ、な? いいだろう?」
「丸太でか?」
「あぁ、そうだ。丸太で川を下ってだ」
「わかった。だけど今すぐ行かないと妹が……」
これでもダメか、村人たちが絶望しかけたその時。
「お兄ちゃん……?」
マルタの妹――ルカがやってきた。
「ルカ! 寝ていないとダメじゃないか!」
「でも……お兄ちゃんにお本、よんでもらわないとねむれなくって……」
「よしわかった、すぐ帰る。家で待っててくれ」
「うん……」
「ちゃんと手洗いうがいしてからベッドに入るんだぞ」
「わかったぁ……」
ルカは家に戻り、村人たちがマルタの顔を伺う。
「わかった、ハンターさんを待つ。それから行くことにしよう」
「ほっ」
こうして、ハンターたちの元へ非効率な依頼が舞い込むのであった。
リプレイ本文
●川 上流
「よし、それでは予定通り三班に分かれて下ろう。それでは、宜しく頼む」
川の上流。
三本の丸太にそれぞれ乗り、ある者は跨ったハンターたちはロニ・カルディス(ka0551)の合図で川を下り始めた。
協力要請に応えてくれた村人は二人。
壮年の男と、高年のベテランの男がオールを握ってくれた。
「うおー♪ 爽快なのだ! 楽しんで行こうー♪」
ロニと共に壮年の男の丸太に乗ったネフィリア・レインフォード(ka0444)は丸太に跨りながらノリノリで拳を突き上げる。
「あはは、まるたん棒で川下りなんて面白ーい!」
高年のベテランに乗せられた夢路 まよい(ka1328)もまた、同じく元気に川下り。
ベテランの巧みなオール捌きで、下り心地も良好なようだ。
「こりゃ良い風景だ。下り心地も良好……んだけどよ、夢路。ホントに匂わないか?」
まよいの後ろで煙の香りを気にするのはトリプルJ(ka6653)。
「えぇ、とても清々しい自然の息吹しか感じないわ!」
「ハハ、そりゃよかった。くれぐれも落ちないようにな」
「あは、トリプルJもね♪」
そんな二組の間。
マルタの丸太に乗るコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は眉をひそめていた。
「呑気な奴らだ……全く。おい小僧、余計な真似はするなよ」
「まぁまぁ、コーネリアさん。お話は町についてからゆっくりしましょう、ね」
コーネリアの後ろに立つミオレスカ(ka3496)がどうどうとなだめながら、しかし。
確実に何かしら言いたいことのこもった笑顔で弓を構えていた。
「ん、片足をつけば大丈夫そう……マルタさん、水面を足場にするので前方に何かあったら教えてくださいね」
ウォーターウォークを使用して、水面を足場にしながら弓の構え心地を確かめるミオレスカ。
各々、他の班もまたウォーターウォークを使用して戦闘準備を整えたところで。
「全員戦闘準備ッ!」
ロニの声が響き渡った。
●
枝葉をなぎ倒す音や大きな羽音と共に物凄い勢いで何かが飛び出してくる。
「まぁ、とっても鮮やかな白色ね」
音の正体は刃を持つ白い雑魔だった。
「あはは、季節外れの虫取りかしら♪」
楽しそうに笑うまよいの杖へ、紫色の光が収束していく。
球体となった重力波の塊は未だ遠くを飛んでいる雑魔目がけて勢いよく放たれた。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」
未だ川岸近くを飛んでいた雑魔は、まよいの重力波を受け回転を止める。
大きな羽音こそ止まないが、しかし明らかに高度は落ちていた。
重力波の威力と移動阻害の効果は、十分発揮されたようだ。
「飛び道具は苦手なんだけどなっ!」
動きを鈍らせながらもハンターたちを追ってくる雑魔目がけて、トリプルJは青龍翔咬波を放つ。
トリプルJの全身で練られたマテリアルは一気に放出され、雑魔目がけて直線状に飛んでいく。
が、しかし。
「あっ」
放たれた波動は雑魔の横を通り過ぎ、川岸に生える木々をなぎ倒してしまった。
「…………トリプルJ?」
「霊闘士やってると飛び道具が苦手になってくるんだよ!」
まよいの嫌な笑顔を向けられながら、もう一度構えを取る。
そうして再びマテリアルの波動が放たれようとした時。
「なにっ!?」
白い雑魔の下をくぐり抜けるようにして黒い雑魔が飛び出してきた。
「って、依頼人を狙うんじゃねえよ、この虫野郎!」
黒い雑魔の向かったのは、三班の中でも先頭を下っていたマルタの丸太だった。
「お邪魔なのが来たのだ♪ それの相手は僕がするのだ!」
黒い雑魔がまよいたちの丸太を抜けた先。
そこは、互いのカバーを前提として距離を保っていたロニの采配通り、ネフィリアのファントムハンドの射程内だった。
「む、近づいてこない気かな? かな? それなら……こっちに来るのだー♪ ファントムハンドだよ!」
黒い雑魔は重厚な体躯を幻影にわしづかみにされ、強引にネフィリアとロニの方向へと引きずられる。
「向こうも巻き込めれば良かったが……仕方ない」
ロニから広がった光の波動は、黒い雑魔を巻き込みながら炸裂する。
強烈な閃光は確かに黒い雑魔を捉えたが、しかしタフな雑魔はネフィリアへと向き直り、突進してきた。
「こっちに来たなら……吹っ飛ぶのだ♪」
ロニのウォーターウォークをかけてもらったネフィリアが、大きく水面へ踏み込む。
背丈ほどの水しぶきが上がる中、ネフィリアのナックルは黒い雑魔の閃光で焼け焦げた装甲を貫いた。
「一体目、撃破なのだー♪」
「そちらもこれならどうだ」
未だに白い雑魔を仕留め切れていないトリプルJへ、ロニの支援が飛ぶ。
光の杭が白い雑魔を打ち抜き、その動きを完全に止めた瞬間。
「これで……どうだっ!」
今度こそトリプルJの青龍翔咬波が白い雑魔を粉砕した。
「ふぅ、二体目撃破だな」
●
二体の雑魔を撃破した後。
雑魔の姿は見えないものの、村人さんたちは急流に苦戦を強いられていた。
大きく水面に突き出た岩や、流れ込みの間を時には蛇行しながらくぐり抜けていかなければならず、どうしてもバランスが取りにくくなってしまう。
万が一のことがあったらいけない――細心の周囲を払いながら村人たちは操縦していた、のだが。
当のハンターたちはと言えば。
「滑り台みたいなのだー♪」
「急流を走るのも面白ーい!」
ウォーターウォークの効果で、そこら中を駆け回り放題だった。
「残り二体はまだ出てこない……四体でなわばりを作っているわけではないのか? それとも隙を伺っているのか」
「いいですかマルタさん、妹さんがとても可愛いことはわかります。けれど自分で回復できる力も、ちゃんと鍛えておかないといけませんよ?」
ある者は大きな段差を流れる急流を滑り。
ある者は岩の上に立ち、辺りを警戒し。
ある者は丸太に腰かけながらマルタにお説教中だった。
「オーイ、あんまりバラけすぎるなよー」
時折丸太から降りながらも、きちんとベテランの男を追いかけるトリプルJが声をかけた、その時。
「もう遅かったようだ、来たぞッ!」
コーネリアの声が響き渡った。
「先制しますっ」
ミオレスカの構えた大きな弓から、空気を引き裂く遠射が放たれる。
狙ったのは、全員の前方上空を飛ぶ赤い雑魔。
大きな顎を持つ赤い個体へと、限界射程を越えた遠射が襲い掛かる。
が、矢は機敏に動く雑魔の殻をかするだけにとどまってしまった。
「次を構えろ、動きを止めるッ――」
コーネリアが威嚇射撃を構える。
猛スピードで突進してくる赤い雑魔、その移動先へと射撃を撃ち込む――その瞬間。
「チッ」
急激に加速した雑魔は、そのまま三人めがけて突進してきた。
間一髪、マルタごと水面に飛び出して避けることは出来たが、雑魔は既に射程外で旋回し、二度目の突進に備えている。
「デカいだけの虫けらが、粋がるなよ?」
再びライフルを構え直すコーネリア。
「どうしましょうか、コーネリアさん」
「カウンターだ、今度は避けない。ミオレスカが仕留めろ」
「了解ですっ」
ミオレスカが弓の代わりに拳銃を構えたところで、再び赤い雑魔が突進してくる。
「よく見ておけよ小僧、こいつが――」
瞬く間に接近してきた雑魔が、先ほど同様。
更に加速した瞬間。
「――本当の戦いってもんだ」
コーネリアの放ったフローズンパニッシャーが雑魔を凍結させ、ミオレスカのハウンドバレットが上下から雑魔を粉砕した。
●
コーネリアたちが赤い雑魔と対峙している時。
「まてまてなのだー!」
ネフィリアたち四人は、緑色の雑魔と対峙していた。
遠距離を飛びまわる雑魔を、ネフィリアとトリプルJが水面を走り追いかける。
ファントムハンド、青龍翔咬波の射程外を飛び回る雑魔を追い込んだ先。
「そっちいったぞ!」
「あは、虫取りなのに追い込み漁なんて変よね」
「だが、効果的だ」
ロニのジャッジメントが雑魔の動きを止め、まよいのアイスボルトが凍り付かせる。
そうして落下する雑魔目がけて、岩から飛び出したトリプルJとネフィリアの拳が叩きつけられ、最後の雑魔も撃破完了したのであった。
「ふぅ、これで一件落着だな」
●麓の町
川を下り終えたハンターたちは、麓の町で薬を調達したマルタを見送るところだった。
「向こう見ずはこれっきりにしておくんだな。今日のことで分かっただろう、力のない小僧が戦場に居れば周りに余計な危険を――」
「まーまーまーまー、お小言はそんぐらいでいいじゃねえか」
まだ言い足りなさそうにするコーネリアを制しながら、トリプルJが馬に跨りつつマルタへ手を伸ばす。
「妹に早く薬を届けていいところ見せるんだろ?」
頷き、トリプルJの手を取るマルタを見送るコーネリアたちと、村人二人。
「お二人とも、マルタさんが大事なのはわかりますが、時には厳しい叱責も必要ですよ」
あっという間に遠ざかっていくマルタの背を見送りながら、村人二人はぐったりと疲れた身体を投げ出して。
村に戻ったら、一発ガツンと言ってやろうと心に誓うのだった。
おしまい
「よし、それでは予定通り三班に分かれて下ろう。それでは、宜しく頼む」
川の上流。
三本の丸太にそれぞれ乗り、ある者は跨ったハンターたちはロニ・カルディス(ka0551)の合図で川を下り始めた。
協力要請に応えてくれた村人は二人。
壮年の男と、高年のベテランの男がオールを握ってくれた。
「うおー♪ 爽快なのだ! 楽しんで行こうー♪」
ロニと共に壮年の男の丸太に乗ったネフィリア・レインフォード(ka0444)は丸太に跨りながらノリノリで拳を突き上げる。
「あはは、まるたん棒で川下りなんて面白ーい!」
高年のベテランに乗せられた夢路 まよい(ka1328)もまた、同じく元気に川下り。
ベテランの巧みなオール捌きで、下り心地も良好なようだ。
「こりゃ良い風景だ。下り心地も良好……んだけどよ、夢路。ホントに匂わないか?」
まよいの後ろで煙の香りを気にするのはトリプルJ(ka6653)。
「えぇ、とても清々しい自然の息吹しか感じないわ!」
「ハハ、そりゃよかった。くれぐれも落ちないようにな」
「あは、トリプルJもね♪」
そんな二組の間。
マルタの丸太に乗るコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は眉をひそめていた。
「呑気な奴らだ……全く。おい小僧、余計な真似はするなよ」
「まぁまぁ、コーネリアさん。お話は町についてからゆっくりしましょう、ね」
コーネリアの後ろに立つミオレスカ(ka3496)がどうどうとなだめながら、しかし。
確実に何かしら言いたいことのこもった笑顔で弓を構えていた。
「ん、片足をつけば大丈夫そう……マルタさん、水面を足場にするので前方に何かあったら教えてくださいね」
ウォーターウォークを使用して、水面を足場にしながら弓の構え心地を確かめるミオレスカ。
各々、他の班もまたウォーターウォークを使用して戦闘準備を整えたところで。
「全員戦闘準備ッ!」
ロニの声が響き渡った。
●
枝葉をなぎ倒す音や大きな羽音と共に物凄い勢いで何かが飛び出してくる。
「まぁ、とっても鮮やかな白色ね」
音の正体は刃を持つ白い雑魔だった。
「あはは、季節外れの虫取りかしら♪」
楽しそうに笑うまよいの杖へ、紫色の光が収束していく。
球体となった重力波の塊は未だ遠くを飛んでいる雑魔目がけて勢いよく放たれた。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」
未だ川岸近くを飛んでいた雑魔は、まよいの重力波を受け回転を止める。
大きな羽音こそ止まないが、しかし明らかに高度は落ちていた。
重力波の威力と移動阻害の効果は、十分発揮されたようだ。
「飛び道具は苦手なんだけどなっ!」
動きを鈍らせながらもハンターたちを追ってくる雑魔目がけて、トリプルJは青龍翔咬波を放つ。
トリプルJの全身で練られたマテリアルは一気に放出され、雑魔目がけて直線状に飛んでいく。
が、しかし。
「あっ」
放たれた波動は雑魔の横を通り過ぎ、川岸に生える木々をなぎ倒してしまった。
「…………トリプルJ?」
「霊闘士やってると飛び道具が苦手になってくるんだよ!」
まよいの嫌な笑顔を向けられながら、もう一度構えを取る。
そうして再びマテリアルの波動が放たれようとした時。
「なにっ!?」
白い雑魔の下をくぐり抜けるようにして黒い雑魔が飛び出してきた。
「って、依頼人を狙うんじゃねえよ、この虫野郎!」
黒い雑魔の向かったのは、三班の中でも先頭を下っていたマルタの丸太だった。
「お邪魔なのが来たのだ♪ それの相手は僕がするのだ!」
黒い雑魔がまよいたちの丸太を抜けた先。
そこは、互いのカバーを前提として距離を保っていたロニの采配通り、ネフィリアのファントムハンドの射程内だった。
「む、近づいてこない気かな? かな? それなら……こっちに来るのだー♪ ファントムハンドだよ!」
黒い雑魔は重厚な体躯を幻影にわしづかみにされ、強引にネフィリアとロニの方向へと引きずられる。
「向こうも巻き込めれば良かったが……仕方ない」
ロニから広がった光の波動は、黒い雑魔を巻き込みながら炸裂する。
強烈な閃光は確かに黒い雑魔を捉えたが、しかしタフな雑魔はネフィリアへと向き直り、突進してきた。
「こっちに来たなら……吹っ飛ぶのだ♪」
ロニのウォーターウォークをかけてもらったネフィリアが、大きく水面へ踏み込む。
背丈ほどの水しぶきが上がる中、ネフィリアのナックルは黒い雑魔の閃光で焼け焦げた装甲を貫いた。
「一体目、撃破なのだー♪」
「そちらもこれならどうだ」
未だに白い雑魔を仕留め切れていないトリプルJへ、ロニの支援が飛ぶ。
光の杭が白い雑魔を打ち抜き、その動きを完全に止めた瞬間。
「これで……どうだっ!」
今度こそトリプルJの青龍翔咬波が白い雑魔を粉砕した。
「ふぅ、二体目撃破だな」
●
二体の雑魔を撃破した後。
雑魔の姿は見えないものの、村人さんたちは急流に苦戦を強いられていた。
大きく水面に突き出た岩や、流れ込みの間を時には蛇行しながらくぐり抜けていかなければならず、どうしてもバランスが取りにくくなってしまう。
万が一のことがあったらいけない――細心の周囲を払いながら村人たちは操縦していた、のだが。
当のハンターたちはと言えば。
「滑り台みたいなのだー♪」
「急流を走るのも面白ーい!」
ウォーターウォークの効果で、そこら中を駆け回り放題だった。
「残り二体はまだ出てこない……四体でなわばりを作っているわけではないのか? それとも隙を伺っているのか」
「いいですかマルタさん、妹さんがとても可愛いことはわかります。けれど自分で回復できる力も、ちゃんと鍛えておかないといけませんよ?」
ある者は大きな段差を流れる急流を滑り。
ある者は岩の上に立ち、辺りを警戒し。
ある者は丸太に腰かけながらマルタにお説教中だった。
「オーイ、あんまりバラけすぎるなよー」
時折丸太から降りながらも、きちんとベテランの男を追いかけるトリプルJが声をかけた、その時。
「もう遅かったようだ、来たぞッ!」
コーネリアの声が響き渡った。
「先制しますっ」
ミオレスカの構えた大きな弓から、空気を引き裂く遠射が放たれる。
狙ったのは、全員の前方上空を飛ぶ赤い雑魔。
大きな顎を持つ赤い個体へと、限界射程を越えた遠射が襲い掛かる。
が、矢は機敏に動く雑魔の殻をかするだけにとどまってしまった。
「次を構えろ、動きを止めるッ――」
コーネリアが威嚇射撃を構える。
猛スピードで突進してくる赤い雑魔、その移動先へと射撃を撃ち込む――その瞬間。
「チッ」
急激に加速した雑魔は、そのまま三人めがけて突進してきた。
間一髪、マルタごと水面に飛び出して避けることは出来たが、雑魔は既に射程外で旋回し、二度目の突進に備えている。
「デカいだけの虫けらが、粋がるなよ?」
再びライフルを構え直すコーネリア。
「どうしましょうか、コーネリアさん」
「カウンターだ、今度は避けない。ミオレスカが仕留めろ」
「了解ですっ」
ミオレスカが弓の代わりに拳銃を構えたところで、再び赤い雑魔が突進してくる。
「よく見ておけよ小僧、こいつが――」
瞬く間に接近してきた雑魔が、先ほど同様。
更に加速した瞬間。
「――本当の戦いってもんだ」
コーネリアの放ったフローズンパニッシャーが雑魔を凍結させ、ミオレスカのハウンドバレットが上下から雑魔を粉砕した。
●
コーネリアたちが赤い雑魔と対峙している時。
「まてまてなのだー!」
ネフィリアたち四人は、緑色の雑魔と対峙していた。
遠距離を飛びまわる雑魔を、ネフィリアとトリプルJが水面を走り追いかける。
ファントムハンド、青龍翔咬波の射程外を飛び回る雑魔を追い込んだ先。
「そっちいったぞ!」
「あは、虫取りなのに追い込み漁なんて変よね」
「だが、効果的だ」
ロニのジャッジメントが雑魔の動きを止め、まよいのアイスボルトが凍り付かせる。
そうして落下する雑魔目がけて、岩から飛び出したトリプルJとネフィリアの拳が叩きつけられ、最後の雑魔も撃破完了したのであった。
「ふぅ、これで一件落着だな」
●麓の町
川を下り終えたハンターたちは、麓の町で薬を調達したマルタを見送るところだった。
「向こう見ずはこれっきりにしておくんだな。今日のことで分かっただろう、力のない小僧が戦場に居れば周りに余計な危険を――」
「まーまーまーまー、お小言はそんぐらいでいいじゃねえか」
まだ言い足りなさそうにするコーネリアを制しながら、トリプルJが馬に跨りつつマルタへ手を伸ばす。
「妹に早く薬を届けていいところ見せるんだろ?」
頷き、トリプルJの手を取るマルタを見送るコーネリアたちと、村人二人。
「お二人とも、マルタさんが大事なのはわかりますが、時には厳しい叱責も必要ですよ」
あっという間に遠ざかっていくマルタの背を見送りながら、村人二人はぐったりと疲れた身体を投げ出して。
村に戻ったら、一発ガツンと言ってやろうと心に誓うのだった。
おしまい
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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丸太の戦い ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/11/12 13:42:05 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/11 19:44:46 |