• 郷祭1017

【郷祭】帰って来た! 炎の料理人

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2017/11/17 12:00
完成日
2017/11/25 02:10

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 その日の同盟オフィスは、なんとも異様な空気に包まれていた。
 例えるならば、一面の菜の花畑の中に真っ赤な薔薇が一輪だけ咲いているかのような――そんな場違いな景色を前にして、流石のルミもたじたじになって眉尻をひくつかせていた。
 
「お久しぶりです、お元気にしていましたか?」
 一輪の薔薇――胸元がぱっつんぱっつんのコック姿で、無駄に真っ白な歯をきらりと光らせた筋骨隆々の男は、なんとも暑苦し――爽やかな笑顔を浮かべる。
「あ、ありがとうございます。アルフォンソさんもお変わりなく……いえ、ちょっと痩せました?」
 愛想笑いを浮かべたルミの言葉に、アルフォンソは盛大な笑い声をあげる。
 途端に、ビリビリと空気が震えた空気が肌を震わせる。
「はっはっはっ! 実は1年半ほど各地を巡って料理研究に明け暮れておりましてね。歩き詰めで、だいぶ身体は絞られてしまいました」
「1年半……!? あれ、お店の方は?」
 
 ――この男、アルフォンソ。
 ポルトワールの有名トラットリア『エスプロジオーネ』のオーナーシェフであり、“炎の料理人”の異名を持つ情熱的な料理人だ。郷祭の度にハンター達と料理対決を繰り広げる中でいつしか勝負に固執してしまうが、勝負の中で料理人としての本懐を思い出すことができた過去を持つ。

「お恥ずかしい話ですが、研究の旅に出るのと同時に畳んでしまいました」
「え、えええ!?」
「オーナーシェフが長期間店を開けるわけにもいきませんからね。もちろん、従業員達の職場斡旋は済ませてありました」
「そ、そうなんですか……でも、繁盛店だったのに勿体ないですね」
 なんとも言えない表情のルミだったが、彼は涼し気な笑みを絶やさない。
 それどころか、長く伸びた前髪をキザに弾くと、すくりと立ち上がってみせた。
「そうでもありませんよ。ちょっと、表まで来ていただけませんか?」

 首をかしげながらも後を追ったオフィスの外。
 そこに佇んでいた物体を見て、ルミは一転、キラキラと目を輝かせた。
「ご覧ください――これが新生トラットリア『エスプロジオーネ』です!」
 2人の目の前にあったのは、1台の大きな馬車だった。
 荷台部分はカラフルな板を組み合わせて作ったファンシーな佇まいの屋台になっている。
 四方の壁が開けたその中を覗き込むと、郷祭の時のライブキッチンさながらの調理セットがところ狭しと並んでいた。
「こ、これってもしかして……」
「ええ、移動式のキッチンです。残された貯金を全部はたいて完成させた、自慢の一品ですよ!」
 誇らしげなアルフォンソは、これまでの経緯を語り聞かせる。
 
 1年半を掛けて方々旅をしたアルフォンソは、各地で様々な料理に触れ、さらなる腕と味の向上へと繋げたらしい。
 そしてポルトワールへと帰って来たところで、新たに店を構えることを画策。

「前回の料理対決で、私は自分自身の料理への情熱を取り戻すことができました。そして、1人でも多くのお客さんと、その想いを共有したい! ですが、元の通りポルトワールに店を構えていたのでは、本当の意味でそれを成すことができません。そこで思案した結果、たどり着いたのが――」
「――移動式のトラットリア、というわけですね!」
 興味津々のルミは解説を話半分に、屋台キッチンの中身の見学に忙しい。
 屋台を気に入ってくれたのがそれはそれで嬉しいのか、彼も特に咎めもせず、ニコニコとその様子を見守っていた。
「それで……今回は、どうしてオフィスへ?」
 中からひょこりと顔を出したルミの問いへ、アルフォンソは苦い表情を浮かべる。
 
 移動式トラットリアが完成して、彼はポルトワール郊外の漁師町でプレオープンを行った。
 久しぶりに客相手に厨房に立つということもあり心配も多かったが、そこは仮にも元有名店のオーナーシェフ。
 店は繁盛も繁盛で、嬉しい悲鳴だったらしい。
 だがその一方で、沢山来てくれたお客さんをたった1人で対応しきることは流石にできず、一人一人を心からおもてなしできたかと言うと大きな疑問が残る結果となったという。

「それで、オフィスに来た――ってことですネ」
「はい……」
 彼はバツが悪そうに視線を落とす。
「次回、ジェオルジの郷祭でお店を開く予定があります。その際に、ハンターの皆さんにお店を手伝っていただきたいのです」
「ほむ、なるほど」
 ようやく屋台から降りたルミは、トコトコとアルフォンソの前へと歩いていくと、その大きな身体を真っすぐに見上げた。
「そういう事なら、もちろん斡旋させていただきますよ♪」
「本当ですか!?」
 思わず、彼の表情が綻ぶ。
「むしろ、私にもお手伝いをさせて貰えませんか? お客さんの呼び込みとかなら、力になれると思うんだけどなぁ」
「もちろんです! よろしくお願いします!」
 その申し出に、厚い胸板に手を当てながら深く礼を示すアルフォンソ。
 そんな彼を見つめながら、ルミもまたニコニコと満面の笑みを浮かべる。
(飲食店のアルバイトって言ったら、美味しい「まかない」が付きものですよね。ルミちゃん、頑張っちゃうゾ☆)

 そして、郷祭の日。
 1人の料理人の新たな夢、移動式トラットリア『エスプロジオーネ』は開店する――

リプレイ本文


「エスプロジオーネです! スペシャルな料理と音楽で素敵なひとときをお届けします!」
「よろしくお願いしま~す☆」
 収穫祭で浮ついた空気の村に、澄んだ声と音色が響き渡る。
 街路樹の切株に腰かけて、リュートを奏でるルナ・レンフィールド(ka1565)。
 その演奏に足を止めた通行人の胸元にルミが満面の笑みで、お手製のチラシを押し付ける。
「あらあら、ずいぶん前に閉店したって聞いていたけれど?」
「それが、なんと帰って来たんですよ! 素敵なショーもありますので、ぜひ来てくださいね。さ、ルミさんっ」
「は~い、任せて♪」
 タップダンスのように爪弾かれる軽快なリズムに、ルミがひらひらとスカートとマントをひらめかせながら激しいステップを踏む。
 やがて手を天高く振り上げてポーズを決めると共に曲が締めくくられると、口笛交じりの拍手が広がった。
「やったね!」
「はい!」
 それから余韻冷めない観客たちへ、1人ずつチラシを手渡していくのだ。

 昼食を取るにはまだ少し早いくらいだったが、村の広場に造られたオープンエアのトラットリアはすでに大変な賑わいを見せていた。
「いらっしゃいませー♪ 3名様ご案内しまーす!」
 溌剌とした笑顔を浮かべて、天王寺茜(ka4080)は親子連れを席へと案内する。
 彼らが腰を下ろすと、どこからともなく現れたフィロ(ka6966)が手にしたおしぼりを広げながら差し出した。
「いらっしゃいませ。炎の料理人、アルフォンソが1年半の武者修行を経て郷祭に戻って参りました。是非ご堪能ください」
「ええ、家内が大ファンでして。楽しみにしています」
 期待に胸を膨らませる男性に恭しく会釈をする彼女の姿は、ウェイトレスというよりは使用人のそれであったが、接客と言う意味で優れたものに違いはない。
「いや~、お昼前から大繁盛ですね! ルナさんたち、うまく宣伝してくれたみたい」
「はい。とても喜ばしいことですね、茜様」
「あはは……その、茜“様”っていうの、ちょっと慣れないかな」
「それは失礼をいたしました、茜様」
 分かっているのかいないのか、変わらずの物言いに茜は苦笑するほかなかった。
 そんな彼女の気は知れず、フィロは盛況のブースを一瞥する。
「喜ばしいこと、なのですが――」
「――すみませ~ん!」
 何かを言いかけたところで響くお客の声。
「あ、は~い、ただいま! ちょっと行ってきますねっ」
 言い残して席へと駆けて行く茜の後姿を見送って、フィロは飲み込みかけた言葉を反芻するように頭の中で復唱していた。
(――喜ばしいことですが……少し心配ですね)

 方やブースの中心に陣取る大きな馬車の上では、コック服に身を包んだ2人のマッチョがド迫力のコンツェルトを奏でていた。
 額に光る汗を首に巻いたバンダナで拭いながら、藤堂研司(ka0569)は慣れた手つきで玉ねぎを刻んではザルへと放り込む。
 その中からひと掴み手に取ったアルフォンソが、竈にかけたフライパンの上にそれを散らすと、急激に熱された玉ねぎの水分がジュワジュワと小気味の良い音を立てながら甘いカラメル臭を一帯に振りまいた。
「研司さんの動き、一朝一夕のものではありませんね!」
「ハンターという職柄、こういう場での動き方は鍛えられてますので!」
 様々な音が飛び交うキッチンの中では、自然とその声量も増えてくる。
「なるほど! では、移動式店舗という意味では大先輩になりますね!」
「そんな事を言ったら、そもそもアルフォンソさんは料理の大先輩じゃありませんか!」
「いやいや、料理というものは古来最も身近な人の営みです! そういう意味では、みな生まれながらにして料理に従事しているといって過言ではありません!」
 熟練のスナップでフライパンを振りながら、料理を心待ちにする人々へと視線を投げるアルフォンソ。
「人は誰しも、それぞれの家庭における専属料理人なのです……だから、こうして私の料理を食べに来てくれた今だけは、お客様には我が家の家族になっていただきたい! それが、料理遊行で学んだ一番の想いです!」
 そう語りながら炎に照らされた彼の表情を目の当りにして、研司は首のバンダナを額にしっかり巻き付けると、目の前の野菜に真摯に向き直る。
「だったら私は、いや今の俺は、台所を手伝う息子の1人です! 何でも仰ってください!」
 そう言って気合いを入れる彼にアルフォンソは、輝かしいばかりの笑顔とサムズアップで応えた。

 チラシをあらかた配り終えてブースへと戻って来たルナたちの姿を見つけると、お帰りのテーブルで電卓を忙しなく叩いていた茜が、猫にも縋る様子で2人のもとへと飛び込んで来た。
「ルミさん、ルナさん、良い所にっ! ちょっとだけ! ちょっとだけ、料理運ぶの手伝ってっ!!」
「えっ?」
 その必死さに思わず目を丸くして顔を見合わせる2人は、改めてブースを見渡してその理由を理解する。
 そもそもこの回せる分のテーブルしか準備していないブースではあったが、宣伝の効果もあってそれでもとっくに満席であり、近くには順番待ちの長蛇の列ができている。
 そんな中でフィロは大量の皿を器用に抱えて、涼しい顔で席の間を歩き抜けているが、少しでも注文や提供のタイミングが重なれば彼女たちだけではとてもじゃないが追いついていない。
「ご昼食時のこの時間を過ぎれば、一度落ち着くことでしょう。それまでの間だけ、お願いいたします」
「そ、そんな頭を下げられなくても、もちろん手伝いますよっ!」
 フィロにも頭を下げられて、ルナは慌てて両手を左右に振る。
 それから2人でエプロンを締めて、ブースの中を奔走していった。


 ピークタイムを乗り切った一同は、大きく一息をつきながらアルフォンソ差し入れのレモネードを啜っていた。
「私たち演奏がてらもう少しテーブルを見てるから、良かったら先に休憩をどうぞ」
「ごめんね、よろしくお願いします!」
 片手間にリュートの弦を合わせるルナと、オーダーを取りながら遠くでウィンクするルミに申し訳なさそうに手を合わせて、茜とフィロは瞳に若干疲れを見せながら屋台の裏へと引っ込んでいく。
 そこに設えられた従業員用の簡易テーブルでは、研司が鍋の中のパスタを人数分の皿に盛り分けている姿があった。
「アルフォンソさんも、お先に休憩どうですか?」
「いえ、私は大丈夫です。味見に摘まんでいると、案外お腹が膨れるもので」
「わかります、わかります! 作りたての鍋から食べる料理って、なんか美味しいですよねっ」
 パスタを頬張りながら声を弾ませる茜に、アルフォンソは大きく頷いてみせる。
「あ~、なら味見ついでに見ていただきたいものがあるんですが」
 そう言って研司は、キッチンの隅に置いてあった包を彼へと差し出した。
 キョトンとした表情で開いたその包の中から、焼き目のついたサンドイッチの綺麗な断面が顔を覗かせる。
「これは、パニーノですね?」
「余った食材で作ってみたんです。これをサイドメニューとして提供したら、もう少し混雑も解消されるんじゃないかって思いまして」
「なるほど、お手軽に味わってみたいという方には良いかもしれませんね」
 研司やフィロの説明を聞きながら、アルフォンソはカリッと表面の焦げたそれを頬張った。
「お持ち帰りという考えは思い至りませんでした。とても良いと思います。ただ、専用で調理すると流石に手間ですね……メイン用に仕込んであるものを流用して使いましょう。それなら手間もかからないはずです」
「良いんですか? それなら、もっと良いものが出せそうだ!」
「では、すぐにメニューを作りましょう。掲示用とお席用。少しでも目立つものを作らなければなりませんね」
 どこからともなく紙とペンを取り出して、さらさらと新メニュー表を作り始めるフィロ。
 研司も勇んでパンの準備に取り掛かり、茜も残った休憩時間でそれを手伝う。
 夕方からのピークタイムが来る前に、全ての準備を済ませるのだ。


 夕日が西に傾きかけて茜色に空が染まるころ、ブースには再びお客の姿が集まり始めていた。
 客足が少ない間もルナとルミがお店の前でプチコンサートを開き、通行人の足を止める。
 そうして頃合いを見定めてキッチンで料理を作り始めれば、小腹がすき始めた見物人をそのままお店に呼び込めるというものだった。
(私のリュートに難なくついて来てくれる。趣味とか、そういうレベルじゃないよね……すごいや)
 一緒にステージを盛り上げれば盛り上げるほど、何曲続けても疲れを見せずにパフォーマンスを続けるルミの姿に目を見張る。
 曲を終えて拍手が沸き起こる中で、息も切らさずに手を振って応える姿は、まさしくプロのそれだった。
「素敵な曲に耳を癒されながら、美味しい料理でお腹も満足していきませんか~?」
 茜の呼び込み文句に釣られて席はどんどん埋まっていく。
 昼間からの口コミもあったのか、瞬く間にブースの前には行列ができていた。
「う~ん、こんなに並んでいるなら他の屋台で買って帰ろうかしら……?」
 眉を寄せながらうろつく婦人を見つけたフィロが、すぐさまその傍へ寄って深く頭を下げる。
「申し訳ありません。現在、お席へのご案内はお時間を頂いております。ただ、お持ち帰り用のパニーノもお作りしておりますよ」
「そうなの? じゃあ、せっかくだしいただいて行こうかしら」
「かしこまりました。こちらメニューになりますので、お決まりになりましたらお呼びください」
 そう言って立て看板を示すと、並ぶか迷いかねていた客足がぞろぞろとそちらへ歩み寄る。
 そんな様子を遠目で眺めて、テーブル席の農夫が物欲しそうに眼を細めた。
「あれは、ここでも頼めるのかい?」
「はい、もちろんっ。良かったら、お土産用にお包みしますよ!」
「そいつはいい、親父とお袋も喜ぶよ!」
 声を弾ませる農夫の言葉に、茜の笑顔がそれに答える。
「オーダー入りましたっ。パスタ2品とパニーノ2本、お願いしまーす」
「はい、かしこまりました!」
 オーダー表を受け取って、アルフォンソはすぐさまフライパンを竈の火に掛けた。
 片手間に指の絞りでパスタの量を計ると、ぐつぐつと煮えたぎる鍋の中へと回し入れる。
「研司さん! 竈を1つお任せするので、パニーノの調理をお願いできますか?」
「えっ……いいんですか!?」
 パスタソースの入ったタッパーをサイドボードに準備していた研司は、突然の申し出に思わず声を上擦らせた。
 アルフォンソは炒めた茸に赤色のソースを絡めながら、白い歯を見せて流し目でウィンクしてみせる。
「移動式店舗のことはその道の大先輩に、ですよ。任せられますか?」
「は……はい、もちろんです! 任せてください!」
 その言葉に目を見開いて、それから彼に負けんばかりの笑顔でホワイトニングを光らせる。
「パニーノ4本、追加で入りま~す!」
「はい、喜んで!」
 威勢のいい掛け声と共に茜からオーダーを受け取ってパッツンパッツンの袖をまくり上げると、気合いを入れるように両の頬を平手で叩く。
「ようし! お客全員、大満足させてみせるぜ!」
 料理人・藤堂研司、鍛えた上腕二頭筋を滾らせて厨房に雄々しく立つ。

 大量に準備しておきながら、もう半分は減ったおしぼりの山見つめてフィロはストッカーの蓋を閉じた。
 それから水の入ったカップと共にテーブル席へ歩み寄る。
「いらっしゃいませ。今宵は、トラットリア『エスプロジオーネ』へようこそ」
 お決まりの文句で礼を尽くすと、席に着いたばかりの客はきょろきょろと辺りを見渡していた。
「あの、素敵な音楽も聞けると伺って参ったのですが」
 その言葉でその老紳士の求めているものを理解した彼女は、ちらりと簡易ステージを見やって、それから彼の視線をそちらへ導いた。
「ちょうど、準備ができたたようです」
 視線の先には荷運び用の馬車で化粧直しをして、赤と青の対照的なパーティドレスに身を包んだルナとルミ。
 互いにアイコンタクトで準備ができた事を伝え合うと、ルナのリュートが夜の闇を思わせるしっとりとした音色を響かせる。
 拍を置いて月の輝きのように存在感のある、ノビのあるボーカル。
 そしてルナの流れ星のような煌びやかなコーラスが合わされば、浮かぶのはまさしく頭上に広がる満点の星空のようだった。
 うっとりとした表情でそれに聞き惚れるブースのお客たち。
 郷祭の一幕は、寒さも忘れる暖かい心と共に過ぎていく。


 その日の営業を終えて、あらかたの片付けを終えたブースの中に、ランタンに照らされたテーブルが2つほど浮かび上がる。
 その上にはトマトで煮込んだ牛肉や、魚介の出汁が効いているであろうスープ皿。
 色とりどりのパスタたちに、ピッツァ、グラタン、包み焼き。
 準備した食材で作った即興ながら渾身の一皿たちが、所狭しと並んでいた。
「今日は想定をはるかに超える売り上げになりました。心ばかりのお礼ですが、思う存分楽しんでください!」
 キッチンで腕を振るうアルフォンソは、夜中ながらむき出した歯の白さがまぶしい。
「ん~! 最っ高~!!」
 両手に花ならぬ両手に美食を抱えたルミは、ハムスターのように料理を頬張りながら幸せそうに感嘆の笑みを浮かべていた。
「ルミさん、ルナさんも本当にお疲れ様でした。とっても素敵なステージでした♪」
「ありがとう。今日はいっぱい演奏に歌が歌えて、大満足だよ」
 嬉しそうに語るルナの前には、フィロが運んできた料理が次々と並んでいく。
「うわっ、こんなに並んだら流石に食べきれないぜ! でも、残すのだけは百歩譲っても自分を許さん!」
「大丈夫です。もう少ししたら、私もご主人様も混ざらせていただきます。それに……」
 言いながら視線を移したその先には、みるみる空き皿を積んでいくルミの姿。
「す、すご……どこにあんなに入ってるんだろう。あっ、この煮込み美味しい~! ベースは塩だけど、隠し味はなんだろう……?」
 食べながらうんうん頭を唸らせる茜の姿。
 それに習うように、研司もまたがっつくように料理を口元に運びながら、驚きに目を見開いたり、眉間に皺を寄せて虚空を見つめたり、百面相に忙しない。
「あははっ、研司さんの顔面白~い!」
「ルミちゃんも、ハムスターみたいだよ」
 それを見て大笑いするルミを見て、ルナもくすりと笑みをこぼす。
 そんな様子を遠巻きに眺めながら、アルフォンソはどこか懐かしむように目を細めた。
「やはり、仲間とお店を盛り上げるというのは良いものですね……」
 そんな彼からケーキの乗ったデザートプレートを受け取って、フィロもまた宴の様子をぼんやりとした表情で見渡した。
「はい、ご主人様。私もなんだか――」
 皿と共に、自らも輪の中へと溶け込む彼女を、沢山の笑顔が出迎える。

 それは秋の夜の、小さな村での1ページ。

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MVP一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司ka0569
  • 語り継ぐ約束
    天王寺茜ka4080

重体一覧

参加者一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 語り継ぐ約束
    天王寺茜(ka4080
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 炎のアルバイト!相談!
藤堂研司(ka0569
人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/11/16 21:45:08
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/14 20:20:21