• 郷祭1017

【郷祭】或る少女と自動人形

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2017/11/16 07:30
完成日
2017/11/19 15:36

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 祭のために装いを変えた広場、秋晴れの空は雲1つ無く爽やかな風が吹き抜ける。
 早朝、広場の一角に屋台のテントが3つ並び日が昇るまでに、馬車で荷物が運び込まれた。
 白いテントが2つ、マグノリアクッキーのロゴが描かれている。もう1つは小麦が描かれた青いテントだ。
 マグノリアクッキーのテントの1つには郷祭に合わせた紅葉と銀杏のクッキーセット、季節のクッキーとアイスボックスクッキーのセット、ドライフルーツの詰め合わせ、それからいつも店に並んでいる物から数種類が並べられている。
 もう1つのテントには鉄板が置かれ、店員と手伝いを頼まれたハンターがクレープの生地やクリームとフルーツを運んでいる。
「ジャムはこっちに置きますね、……スイートポテトはもう並べて良いですか?」
「メニューボード出しました。他にすることありますか?」
「パン屋さんの方、準備良いそうですよー」
「クッキー、こっちにも少し出しておきますね」
 声を一つ一つ捌き、最後に全員のエプロンをチェックして。
「さあ、今日も一日、頑張りましょう……美味しいクッキーと幸せをお客様に届けるために!」
 いつもの掛け声を。
 今日はクッキーだけではなくて、クレープと、お隣のパン屋さんとも頑張らなくっちゃ。

 郷祭の屋台で、いつものクッキー以外も扱うことになり、メニューのアイディアを募った先日。
 クッキーの品数を増やしたり、その場でクリームやドライフルーツをトッピングして渡す案と、クレープにクッキーを使う案が採用となった。
 パンを出してはどうかという案は、近所のパン屋に声を掛け、テントを並べることになった。
 小さく焼いたパンと、クッキーの傍には飾り付け用にドライフルーツやチョコスプレーが置いてあり、その隣でクレープ用の鉄板が生地を焼き続けている。
 四角い鉄板の隅では、最後に決まったスイートポテトが温められて湯気を上げていた。

 手伝いに参加したメグもエプロンを整えて深呼吸を。そして、
「いらっしゃいませ!」
 緊張した声で客を迎える。

 客が列を成した頃、こちらをじっと見詰める紫の目と目が合った。
 銀色の髪をした小柄な少女。ワンピースの裾と袖をはためかせている。
 少女が腕を上げると、その肘から先の袖はぺたりと垂れた。
 彼女には両腕が無いらしい。


「ギア―、ぎ――、あ――……」
 筒を2本抱えた青年が祭の広場を彷徨っている。
 髪をぼさぼさにして無精髭、草臥れたコートと古いブーツ。
 どことなく浮いた様相の、しかしまだ若い青年だった。
 ギア、と誰かを呼びながらふらふらと歩き回っている。

 青年は通りすがりのハンターに声を掛けた。
「あの、女の子、見ませんでしたか?」
 アクレイギアという名前で、髪は綺麗な銀色です。目は紫で、背はこれくらい。
 青年は胸の辺りで手を揺らす。探しているのは小さな少女らしい。
 白いワンピースを着ていて、可愛い子なんですが、無口で、ええと。
 祭に興味を持ったらしくて寄って見たのですが、はぐれてしまい。
 はぐれたのは、ついさっきだと思うのですが、何かの店の前で、甘い匂いがしていて。
 ああ、どこだったかな。

 要領を得ない話しは続く。

 そして。
「特徴というか、……ギアは、今、両腕が無いんです」
 筒を包んでいた布を解くと、それはここでは無い世界の技術を用いた砲身だった。


「……それは、食べ物ですね」
 硝子玉の様な瞳に見詰められて竦んでいたメグは、少女が発した声に表情を取り戻し頷いた。
「はい! 美味しいんですよ!」
 試食してみますか、と差し出したフォークの先をじっと見詰める。
「……ここは、お祭りだと聞いてきました」
 差し出されたクッキーを見据えて、少女は話し始めた。
「……お祭りという物は知りませんでした。沢山人が居る。食べ物がある。ギア、覚えました」
「ギアさんっていうんですね」
 メグの言葉には答えず、少女、ギアは続ける。
「……ギアは、覚えたことを、ご主人さまに報告します」
 ギアは振り返った。どこかぎこちない動きで首を傾け、踵を返す。

「……ご主人さまがいません」

 2人の周囲には誰もいなかった。

「……ご主人さまは、道が分からなくなることを迷子だと教えてくれました。ギア、迷子を覚えました」
 淡々と紡がれる言葉が寂しそうに思えた。
「はぐれたの? 大変……探そう。大丈夫、きっと見付かると思うよ」
 メグは励ます様にギアの肩を撫でて店員と他のハンターに声を掛けた。
 はぐれたらしい迷子の子、一緒に来ている人が居るみたいだから探してくる、と。


 青年は、砲身に驚くハンター達に状況を説明する。
 アクレイギア、ギアと呼んでいる少女はエバーグリーン出身、戦闘用に調整されたオートマトンで、こちらに移ってから人の腕を得る為の処置を続けている。
 砲身のアタッチメントが外れたので、オフィスへ向かい、次の処置へ、ナノマシンによる自己修復を促すために、義手を付ける予定だった。
 その途中、立ち寄った広場の賑わいの中、ギアが甘い匂いがすると言ってそちらへ。
 青年が他の来客にぶつかって蹌踉けていた隙に見失った。

「そう遠くへは行ってないと思いたいけど、心配だなぁ。まだ、こちらに慣れていないんだ」

 青年が項垂れて歩き出す。
 辺りを探してみるという。ハンター達にも見かけたら教えて欲しいと言い、頼むよと言い残し、人混みの中へ。


「……ご主人さま、どちらにいますか」
 淡々とした声でギアは誰かを探している。
 その傍でそれらしい人物を探しながら、メグは蟀谷を押さえた。
 こんな時、大抵背後で跳ねている緑の精霊も今日は珍しく大人しい。

 ギアに尋ねた、ご主人さまの容姿は漠然としていた。
 人間で、ギアよりも背が高く、幅もある。生別や髪型はよく分からない。
 1番似てる人は、と、マグノリアクッキーの店員を示すと、ショートヘアの長身の女性と、細身で眼鏡を掛けた、無口な女性の間で指を迷わせていた。
 女性か、小柄な男性だろうか。
 ギアと見て回った、クッキーと、クレープと、パンの列の中には見当たらない。
 この辺りにはいないのかも知れない。

「1人は心細いよね。……見付かるまで一緒に頑張ろうね」
「……ギア、心細いを、覚えました。頑張ります」

リプレイ本文


 祭の準備を終えて、まだ人も疎らな頃。
 こんにちは、とノワ(ka3572)の溌剌とした声がマグノリアクッキーの店員を呼び止めた。
 クッキーを並べたテーブルの前で迷いながら、ふと顔を上げると手伝いに来ている雪都(ka6604)を見付ける。
 見回せば近くにメグの姿もある。
「雪都さん、メグさん。今日はお仕事ですか? お疲れ様です!――以前いただいたクッキー、とっても美味しかったんですよね」
 郷祭出店のフライヤーを見て、買いに来てしまいました。
「いらっしゃいませ。えっと、良かったら、クレープも……言うまでも無いか」
「もちろんです!」
 笑顔で頷いたノワがクッキーを迷う隣のテーブルで、雪都はクレープ用のクッキーとフルーツを並べ、氷を添えて保冷するクリームを取り出す。
 メニューを確認し、材料を確かめて。眩しい空を仰げばエプロンに吊したお守りの自称幻獣王が揺れる。
「決まったかな、お客さん?」
 ヴァイス(ka0364)がノワに声を掛けた。どれにしようか、迷わせる指がクッキーを指しながら端から端へ何往復も。
「そうだ! 私の手に持てるだけ、オススメな品を下さい!」
 開いた両手を差し出せば、ヴァイスの金の目が驚いた様にぱちくりと。隣の雪都も相変わらずだと肩を竦めた。
 お勧めはどれだったかと、ヴァイスがメニューを辿り、雪都は焼き立てのクレープを渡した。

 ノワが礼を告げてテントの前を離れた頃、メグは迷子のギアを連れて店員に事情を説明する。
 ギアの様子に困惑しながらも承諾した店員に礼を言って、メグはハンター達の方へ戻ってくる。
 はぐれたのがオートマトンの少女が主人と称する、こちらでの保護者に当たる人物だと知ると、彼等も一様に頷いて2人を送り出す。
「おう、任せろ。こっちの方でもそのご主人様ってのが探しに来ないか気を払っておく」
 写真を撮っても良いか、と、ヴァイスはカメラを向けた。
 ご主人さまが店に来たら分かるだろう。
「……ギアは、写真はカメラで撮ると聞いていました。ギア、カメラを覚えました」
 写真を撮るのは初めてかと笑ってシャッターを切る。
 じっとレンズを見据えた少女の写真が印画され、ヴァイスはそれをテーブルに置いた。

 お願いしますと頭を下げて、メグはギアの腕を取る。
 屋台の前を出発すると、2人の上に巨躯の影が落ちた。

「美味いクッキー屋があるって聞いてきたんだけど……どうしたの? 困ってるみたいだし手伝うよ」
「ふむ、こんな所に迷子のオートマトンとはな」
 浅生 陸(ka7041)とルベーノ・バルバライン(ka6752)が目線を合わせるように屈んだ。
 浅生は店番中のハンターに手伝ってくると声を掛ける。
「かわいい女の子を探してる奴いたら、この店にいるって伝えてもらえるかな?」
 ご主人さまも探し歩くより、店で待って貰う方が良いだろう。
 ギアを見詰め、その仕草や言葉の人らしからぬ様子に、目覚めたばかりでオフィスを抜け出したのか、それとも単純に迷ったのかと首を捻るルベーノは、口角を上げて1つ頷く。
「俺はルベーノ・バルバライン、ハンターだ。お前の名は?」
 どのような理由であっても、力になろうと、励ます様にギアの髪を撫でた。
「……ギアは、本来はアクレイギアといいますが、長いのでギアと名乗ると良いと教わっています」
「ギアっていうんだな、俺は陸だ、よろしくな」
 浅生も明るい声を掛けて、賑やかになり始めた祭の広場を振り返る。
「せっかく迷子なんだし、楽しく迷子して、主人とやらを見つけよーぜ」


「メグと言ったな。この会場の迷子案内所はどこだ?」
 4人はマグノリアクッキーのテントの前を離れ、人混みを避ける様に歩き出す。
 ルベーノが尋ねると、メグは少し考えてから受付を行った本部の近くの筈だからと、広場の中央へ指を向けた。
 今回は、相手の方が探すだろう。呼びかけを依頼して、そこで待つのが手っ取り早い。
「そんじゃ、行こうか。肩車でもしようか?」
 ルベーノが、と冗談を言いながら浅生が屈む。
「……ギア、肩車を知りません」
 その背なを凝視してギアが言った。
 ルベーノとメグが顔を見合わせて、こうするんだと、動いてみせる。
 それを見ながらギアの腕の先が浅生の頭に突く、片手で細い背を支えられて首を跨ぐように肩に座り、両肘で頭を抱えるようにしがみつく。
 乗れた、と尋ねながら浅生の手が膝を掴み、不安定な背にルベーノが手を添えて頷く。
 声を掛けて立ち上がると、高くなった視界にギアが驚嘆の声を上げた。
 見回して動こうとする四肢の動きが浅生に伝わる。長身の肩に据わったギアの高さは見上げるほど、十分に目立つだろうと、4人は再び歩き始める。

 案内所での待機中に退屈しない方が良いだろうと、食べ物屋の並ぶ方へ足を向けた。
「ギア、主人は見えるか?」
 浅生の肩で姿勢を安定させて一定間隔で左右へ首を向けて広場を眺め続けるギアにルベーノが尋ねる。
 ギアは首を横に振った。視界になれたのか、時折ぽつりと並ぶテントや看板の文字を呟いたり、それらしい姿を目に留めて傾いだ姿勢を自力で立て直して、違いましたと零している。
 少し止まろうか、と浅生がチョコレートの屋台へ向かった。
 ガナッシュの包みを解き、一粒抓んで持ち上げる。
「迷子の時には、甘いものを食べて、気を楽にするといいんだ――ほら、口開けて?」
 腕が髪を撫でるように、身を乗り出したギアがチョコレートをぱくりと受け取る。
 2人もよかったら、とルベーノとギアにも差し出してギアの様子を見る。
「おお、気に入った様だな」
 チョコレートを食べたギアの表情は緩んで、ルベーノの手に抑えられながら浅生の肩で揺れている。
 気に入ったのなら、とルベーノが同じ物と他にも数種類のチョコレートを提げて、案内所へ向かい屋台の側を離れた。
 その道中も、ギアは嬉しそうに揺れていた。


 クッキーを食べたり包み直して片腕に纏めたノワが、嬉しそうにクレープを食べて、美味しいと飛び跳ねてはしゃいだ様子を思い出しながら、雪都はクレープの生地の量産に勤しむ。
 一度使い切ったボウルには、新しくクリーム色の生地が満たされ、それを一掬い鉄板に落とし、専用のトンボで薄く広げる。
 手の空いている内に作ってしまわなければ、列を成した客の注文を聞きながらでは忙しい。
 ふと手が止まる。眼前を横切った見慣れぬ装いの来場者。
 見回せば、様々な容姿の種族が入り交じっている。
「……ここにきてそれなりに経つけど、非日常的な感覚にふと戻されるんだよな」
 嘗て暮らした世界を思うように瞼を伏せ。1つ息を吐くと気持ちを切り替えてクレープを焼く。
 注文良いですか、と客の声に微笑んで、どうぞ、とメニューを差し出した。
 クリームを絞り、クッキーを散らす。注文に応じてフルーツを追加し、くるりと畳んで差し出した。
 1人去ればすぐ次の客が待っている。隣からも賑やかな声。また忙しくなりそうだと、お守りに微笑みかけて思う。
「いらっしゃいませ」
 上げた声には、少しばかりの緊張を覗わせながら、賑わいの中よく通った。

 1人抜けているのだからと気合を入れて、ヴァイスはクッキーを買い求める客に笑顔で応対する。
 クレープやパン屋の方も忙しそうだが、笑顔は絶やさずに。
「いらっしゃい! お勧めはこれだ、郷祭の特別セット。この店が初めてなら、こっちがいつも店で売ってるやつだから、良かったら食ってみてくれ、……気に入ってくれたか、嬉しいぜ、すぐ包むからな」
 満面の笑顔で歯を見せて、数を確かめて白いショッパーに詰めた商品を差し出した。
「ありがとうございました!」
 見送りの辞儀は深く、頭を上げれば、次の客が写真に目を留めていた。
 クッキーの注文を受けながら迷子で保護者を探していると説明すると、客は向こうの方で肩車されていたのを見たという。
 クレープも買っていくと言いながらその客は、女の子を探してそうな人を見かけたら伝えておくと、もう一度写真を見た。

 クレープの甘い匂いに誘われたように列が連なり、近付いて並んだクッキーにも惹かれて、列を整える店員の声が響く。
 雪都もクレープを焼きながら会計の手伝いにも駆り出されていた。
 ヴァイスは連なる列を見ながら、店員に場を任せ、減った商品の木箱を運びにテントの奥へ。
 ボウルの生地が尽きた雪都と行き合うと、お疲れさまと、どちらからともなく声を掛ける。
 この賑わいは、もう暫く続きそうだ。


「あっ、待って下さい!」
 ギアの事情を説明し、ふらふらと歩き始めた青年を引き留めたノワが広場を見回す。
 これだけの人の中を探すのは大変だろうと言えば、青年も溜息交じりに頷いた。
「私もお手伝いします。甘い匂いのするお店に釣られてしまったのでしたら……」
 食べ物を売っている店だろう。しかし、広場は鼻腔を擽る魅力的な甘い匂いで溢れている。
 手許の物は大分減ってしまったけれどクッキーかも知れないし、友人が焼いてくれたクレープも甘い匂いがしていて、食べてもとても美味しかった。
 ここまでにチョコレートやキャンディの屋台も見かけたし、焼き菓子の店も数軒立ち寄っている。
 通ってきたところにそれらしい少女はいなかったから、まだ見ていないところだろう。
「それから、――ハウラさん、宜しくお願いしますね」
 空からも探してみましょう、と、丸いフォルムの梟を羽撃かせる。
 眠そうにしていたハウラが空へ飛び立って旋回すると、戦いだ風に跳ねた髪が揺れて、宝石を思わせる瞳には俯瞰の画が映る。
「腕がないと不便でしょう、早く見つかるといいですね。あっ、このクッキー、先程購入したものですがよかったら食べますか?」
 渦巻き模様のクッキーを差し出して、励ます様に微笑んだ。
 考える時には頭分が必要、それに甘い物は心を落ち着かせる効果があります、と。

 ハウラが風に乗って高く舞い上がった時、ノワの視界に長身の青年に負ぶわれた少女が見えた。
 銀色の長い髪の小柄な少女、広場に並んだテントを離れて中央へ向かっている。
「――見えました、向こうの方に行ってみましょう!」
 ノワは青年と走り出した。


 浅生とルベーノは走って近付いてくる気配に足を止め、メグもそれに合わせて留まった。
 ギアが首を捻り、背を反らして振り返る。
「……っ、ごしゅじんさま!」
 浅生の肩から落ちそうになる小さな身体をルベーノが抱え、浅生が屈んでそっと下ろす。
 走って、飛び込むように抱き付く身体を、青年はノワに砲身を預けて受け留めた。
「……ご主人さま、ギアは幾つかのことを覚えました。チョコレートが甘いことを覚えました、肩車がとても高いことを覚えました、陸さんと、ルベーノさんのことも覚えました」
 話し続けるギアの頭に、ぽんと温かな手が乗せられた。
 主人か、とルベーノが目を向けた。
 青年が頷くと、ルベーノが表情を和らげた。生まれたてのオートマトンには縁がある、長く寂しがらせずに済んで良かったと。
 軽く肩を解しながら浅生も2人を見詰めて安堵した。
 主人を見付けて飛び降りようとしたり、声は単調だがはぐれていた間のことを話し続ける様子は、本当に人の子のようだと、ノワの抱える包みを見据えて首を傾けた。
 これは、何なんだろう。精霊を閉じ込めて機械を動かせるのなら。それは人の魂でも。
 想像を振り払うように頭を振って、良かったねと、メグに笑みを向けた。

 ほっとしましたと、メグは先に店に戻る。
 ルベーノはカメラを取り出すと青年の写真を1枚、ギアに差し出した。
「次はお前がこの写真で探してやるといい」
 腕に乗せたそれを見詰めるギアに、次は腕も治っているのだろうと尋ねるとギアは頷き、青年は自身の写った写真をギアのポケットに収めた。
 クッキーを買いに来たんだったと、思い出した浅生と、結局食べきってしまいましたと、空の袋を覗いたノワに連れられて、再会の報告を兼ねてマグノリアクッキーへ向かう。
 雪都は相変わらずクレープを焼いているが、最初の1つをノワに差し出した時よりも、トンボの扱いが板に付いている。
 淀みなく商品を勧めながら、客と会話を弾ませているヴァイスがハンター達に気付いて声を掛けた。
 ギアの写真を青年に渡し、折角だからと2人で並んだ写真もそれぞれに。

 客が途切れた隙に撮った集合写真を眺め、浅生は青年にギアとの出逢いを尋ねる。
 青年は、ギアが持ち帰られてきた時に偶然訪ねてきていただけの研究者だと言うが、ギアは彼の元へ来たのだと言い切った。
 天辺の日が少し傾く。
 今から買って帰ったら、家族の茶菓子になるだろうと、話しを終えた浅生はクッキーを買いに。
 ノワも再び満載になった袋を提げて帰途に就く。
 ハンター達に礼を告げた青年とギアも、その場を離れる。青年の後を追う様に歩くギアに、時折優しい眼差しが向けられるのが見えた。

 店じまいの頃、最後に残っていたクッキーを、売り上げに貢献だと笑って購入してテーブルを片付ける。
 生地を使い切ったクレープの鉄板とテーブルは、先に片付けを終え、揃ってテントを下ろして畳む。
 今日はありがとう。支柱を抱えた支店長が声を掛け、空の木箱を運んでいたメグも不在時の礼を告げた。
 完売御礼となったマグノリアクッキーの屋台は、祭の終わりよりも少し早めに撤収した。

依頼結果

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MVP一覧

  • ドキドキ実験わんこ
    ノワka3572
  • Schwarzwald
    浅生 陸ka7041

重体一覧

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ドキドキ実験わんこ
    ノワ(ka3572
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士
  • チューダの弟子
    雪都(ka6604
    人間(蒼)|19才|男性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • Schwarzwald
    浅生 陸(ka7041
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 再会のための相談卓
浅生 陸(ka7041
人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/11/15 14:11:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/14 17:46:12