• 郷祭1017
  • 日常

【郷祭】或る少女と自動人形

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~8人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2017/11/16 07:30
リプレイ完成予定
2017/11/25 07:30

オープニング


 祭のために装いを変えた広場、秋晴れの空は雲1つ無く爽やかな風が吹き抜ける。
 早朝、広場の一角に屋台のテントが3つ並び日が昇るまでに、馬車で荷物が運び込まれた。
 白いテントが2つ、マグノリアクッキーのロゴが描かれている。もう1つは小麦が描かれた青いテントだ。
 マグノリアクッキーのテントの1つには郷祭に合わせた紅葉と銀杏のクッキーセット、季節のクッキーとアイスボックスクッキーのセット、ドライフルーツの詰め合わせ、それからいつも店に並んでいる物から数種類が並べられている。
 もう1つのテントには鉄板が置かれ、店員と手伝いを頼まれたハンターがクレープの生地やクリームとフルーツを運んでいる。
「ジャムはこっちに置きますね、……スイートポテトはもう並べて良いですか?」
「メニューボード出しました。他にすることありますか?」
「パン屋さんの方、準備良いそうですよー」
「クッキー、こっちにも少し出しておきますね」
 声を一つ一つ捌き、最後に全員のエプロンをチェックして。
「さあ、今日も一日、頑張りましょう……美味しいクッキーと幸せをお客様に届けるために!」
 いつもの掛け声を。
 今日はクッキーだけではなくて、クレープと、お隣のパン屋さんとも頑張らなくっちゃ。

 郷祭の屋台で、いつものクッキー以外も扱うことになり、メニューのアイディアを募った先日。
 クッキーの品数を増やしたり、その場でクリームやドライフルーツをトッピングして渡す案と、クレープにクッキーを使う案が採用となった。
 パンを出してはどうかという案は、近所のパン屋に声を掛け、テントを並べることになった。
 小さく焼いたパンと、クッキーの傍には飾り付け用にドライフルーツやチョコスプレーが置いてあり、その隣でクレープ用の鉄板が生地を焼き続けている。
 四角い鉄板の隅では、最後に決まったスイートポテトが温められて湯気を上げていた。

 手伝いに参加したメグもエプロンを整えて深呼吸を。そして、
「いらっしゃいませ!」
 緊張した声で客を迎える。

 客が列を成した頃、こちらをじっと見詰める紫の目と目が合った。
 銀色の髪をした小柄な少女。ワンピースの裾と袖をはためかせている。
 少女が腕を上げると、その肘から先の袖はぺたりと垂れた。
 彼女には両腕が無いらしい。


「ギア―、ぎ――、あ――……」
 筒を2本抱えた青年が祭の広場を彷徨っている。
 髪をぼさぼさにして無精髭、草臥れたコートと古いブーツ。
 どことなく浮いた様相の、しかしまだ若い青年だった。
 ギア、と誰かを呼びながらふらふらと歩き回っている。

 青年は通りすがりのハンターに声を掛けた。
「あの、女の子、見ませんでしたか?」
 アクレイギアという名前で、髪は綺麗な銀色です。目は紫で、背はこれくらい。
 青年は胸の辺りで手を揺らす。探しているのは小さな少女らしい。
 白いワンピースを着ていて、可愛い子なんですが、無口で、ええと。
 祭に興味を持ったらしくて寄って見たのですが、はぐれてしまい。
 はぐれたのは、ついさっきだと思うのですが、何かの店の前で、甘い匂いがしていて。
 ああ、どこだったかな。

 要領を得ない話しは続く。

 そして。
「特徴というか、……ギアは、今、両腕が無いんです」
 筒を包んでいた布を解くと、それはここでは無い世界の技術を用いた砲身だった。


「……それは、食べ物ですね」
 硝子玉の様な瞳に見詰められて竦んでいたメグは、少女が発した声に表情を取り戻し頷いた。
「はい! 美味しいんですよ!」
 試食してみますか、と差し出したフォークの先をじっと見詰める。
「……ここは、お祭りだと聞いてきました」
 差し出されたクッキーを見据えて、少女は話し始めた。
「……お祭りという物は知りませんでした。沢山人が居る。食べ物がある。ギア、覚えました」
「ギアさんっていうんですね」
 メグの言葉には答えず、少女、ギアは続ける。
「……ギアは、覚えたことを、ご主人さまに報告します」
 ギアは振り返った。どこかぎこちない動きで首を傾け、踵を返す。

「……ご主人さまがいません」

 2人の周囲には誰もいなかった。

「……ご主人さまは、道が分からなくなることを迷子だと教えてくれました。ギア、迷子を覚えました」
 淡々と紡がれる言葉が寂しそうに思えた。
「はぐれたの? 大変……探そう。大丈夫、きっと見付かると思うよ」
 メグは励ます様にギアの肩を撫でて店員と他のハンターに声を掛けた。
 はぐれたらしい迷子の子、一緒に来ている人が居るみたいだから探してくる、と。


 青年は、砲身に驚くハンター達に状況を説明する。
 アクレイギア、ギアと呼んでいる少女はエバーグリーン出身、戦闘用に調整されたオートマトンで、こちらに移ってから人の腕を得る為の処置を続けている。
 砲身のアタッチメントが外れたので、オフィスへ向かい、次の処置へ、ナノマシンによる自己修復を促すために、義手を付ける予定だった。
 その途中、立ち寄った広場の賑わいの中、ギアが甘い匂いがすると言ってそちらへ。
 青年が他の来客にぶつかって蹌踉けていた隙に見失った。

「そう遠くへは行ってないと思いたいけど、心配だなぁ。まだ、こちらに慣れていないんだ」

 青年が項垂れて歩き出す。
 辺りを探してみるという。ハンター達にも見かけたら教えて欲しいと言い、頼むよと言い残し、人混みの中へ。


「……ご主人さま、どちらにいますか」
 淡々とした声でギアは誰かを探している。
 その傍でそれらしい人物を探しながら、メグは蟀谷を押さえた。
 こんな時、大抵背後で跳ねている緑の精霊も今日は珍しく大人しい。

 ギアに尋ねた、ご主人さまの容姿は漠然としていた。
 人間で、ギアよりも背が高く、幅もある。生別や髪型はよく分からない。
 1番似てる人は、と、マグノリアクッキーの店員を示すと、ショートヘアの長身の女性と、細身で眼鏡を掛けた、無口な女性の間で指を迷わせていた。
 女性か、小柄な男性だろうか。
 ギアと見て回った、クッキーと、クレープと、パンの列の中には見当たらない。
 この辺りにはいないのかも知れない。

「1人は心細いよね。……見付かるまで一緒に頑張ろうね」
「……ギア、心細いを、覚えました。頑張ります」

解説

目的 青年とギアを再会させる

●side マーガレット&アクレイギア(メグ&ギア)
 「ご主人さま」を探しながら広場を散策したり、来客や他の屋台の店員に尋ねることが可能です。
 ギアの話す「ご主人さま」の容姿は、ギアより背の高い人間、恐らく女性か小柄な男性とのことで、
 それ以上の情報をギアから得ることは出来ません。
 同行、交流が可能です。
 現在、ギアの腕は肘から先が無い状態ですが、飲食は可能です。

●side 青年(ご主人さま)
 アクレイギア(ギア)を探している青年です。
 説明に時間が掛かったため、ギアとは更に離れて仕舞ったようです。
 木訥として、口下手ですが、一応研究者の端くれで、ギアの保護者です。
 髪型はよく分からないと言われた通り、手入れを怠った不揃いな黒髪、
 前髪の影になって顔立ちは判然としませんが、無精髭の生えた男性です。
 同行は可能ですが、ほとんど喋りません。

●side マグノリアクッキー
 マーガレット(メグ)と共に『郷祭の屋台の店番を手伝って下さい』との依頼を引き受けて参加して頂きます。
 クッキーを売る、クレープを焼く、クッキーやパンにトッピングをする、列の整理をする、会計をする、
 他様々な仕事が有りますが、好きな場所の担当をお願いします。
 ロゴの入った白いエプロンが貸し出されますので、着用をお願いします。

●マグノリギフトクッキー
 お土産用に1人1つまで購入が可能(700G)
 月替わりのマグノリアクッキー1枚と、いつものアイスボックスクッキーの詰め合わせ。
 詳しくは支店長の設定1をご覧下さい。
 必要な場合はプレイングに【購入】と記入をお願いします。

マスターより

よろしくお願いします。

迷子の世話と、店番です。

関連NPC

  • 支店長
    ローザ・マグノリア・ソロリオ(kz0236
    人間(クリムゾンウェスト)|27才|女性|一般人
  • 新米ハンター
    マーガレット・ミケーリ(kz0215
    人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/11/19 15:36

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ドキドキ実験わんこ
    ノワ(ka3572
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士
  • チューダの弟子
    雪都(ka6604
    人間(蒼)|19才|男性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • Schwarzwald
    浅生 陸(ka7041
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 再会のための相談卓
浅生 陸(ka7041
人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/11/15 14:11:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/14 17:46:12