ゲスト
(ka0000)
汝らは氷結を望む者か、否か
マスター:文ノ字律丸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/18 07:30
- 完成日
- 2017/11/23 06:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
始まりの異変は、世にも美しい花が咲いたことだった。
その花は『氷』で出来ていた――。
「こちら、アルニカ。これより『城』に潜入したいと思います」
ハンターオフィスへの連絡を終えたアルニカは、長く伸ばした黒髪をうっとうしげにかき上げ、一つ息を吐く。吐いた息は瞬く間に白くなって消えた。その息を確認するなり肌寒くなり、露出していた二の腕をさすって暖を取ろうとする。
この辺りは温暖な気候のはずだ。
彼女は地面を見る。さっきまで緑が生い茂っていた地面は、いつの間にか土が目立ち、気にせずそのまま進むと氷で出来た花が咲くようになった。
これは間違いなく――何らかの魔法。
あるいは、マテリアルのバランスが崩れている。
氷の花を摘むとパキンと茎が折れ、バラのように八重咲きの花びらが一枚、はらりと落ちる。
それは地面に落下するとガラスのような音を立てて、バラバラに砕け散った。
自然的に生成したものではない。どこか作り物のようだった。
「やはり、魔法公害事件なのかしら?」
事前情報では、この近辺で大規模な魔法を使ったという事実はなかったはずだ。であるとするならば、精霊が影響しているのか、それとも使用済み鉱物マテリアルの不法投棄か。
いや、最近では歪虚の動きも活発化している。
それらが影響して、この土地を変えてしまったのかもしれない。
一番大きな変化は、あの『城』だろう。
アルニカは目的地であるそれを見上げた。
開けた草原に忽然と現れたその『氷の城』だ。
調査に向かうため、彼女は火の精霊の加護を得る。
「さて、行きましょうか」
凍り付いた地面を踏みしめて、ザクザクと進んでいく。
城は門が開け放たれていた。まるで餌を待つ食虫植物だと思う。
「気味が悪いわね」
中は靴音が響くほど密度の高い氷で作られていた。床も壁も柱もみな氷だ。
ためしに、炎を操り、床を溶かそうと試みた。しかし、溶けない。どうやらなにかしらの魔法で守られた『絶対に溶けない氷』のようだ。
ふん、と鼻を鳴らして、アルニカは城を進んでいく。
途中で凍りづけにされた人間の遺体は何体か発見できたが、それ以外に人っ子どころか、幻獣も歪虚とも出会わない。そして、最奥の間へとたどり着いた。
そこには大きな氷の花が咲いていた。
「これがこの城の主……」
キーン。
突然聞こえてきた甲高い音に、アルニカはびくりと反応してしまった。武器を構える。
氷の花が蕾から花開き、その花の中央に女性の姿をした、綺麗な彫像が現れたのだ。
その氷の彫像は、悲鳴のようなものを上げる。
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
何らかの魔法で作られた魔法生物だと、アルニカは長年の経験で悟った。
逃げるか、戦うか、その二択に迷っていたところ、
「なっ」
その魔法生物がもう一体、近くに現れたことに気づいた。
それの吹きかけてきた息を絶妙のタイミングでかわして、逃げる。あれを浴びたら最後、氷漬けにされる。そんな予感があった。
アルニカは、あれは、一人で戦えるような相手ではないと判断した。情報を持ち帰るのが先決だろう。
長年、探索を専門にしてきたアルニカは、それを瞬時に計算できた。
逃げようと転じた。地面で蠢く何かに気づく。それは氷の茨だった。茨が片足にまとわりついてこようとしている。その茨には凶悪な棘が生えていた。
……絡みつかれたら、脱出も難しいな。
彼女は、その茨を避けきって、なんとか氷の城から逃げ帰ったのだった。
●ハンターオフィス
――緊急依頼。
そう喧伝された依頼に集まったハンター達の前で、アルニカは自分のしてきた体験を話す。
「あれは、ほとんど雑魔と化した魔法生物です。城の奥の間からは動けないようですが、ここで手を打たなければ、いずれ大規模な災害の芽となるでしょう。今のうちに討伐しないといけない」
アルニカの話を聞いて、ハンター達は意気込みながら、オフィスを出立した。
その花は『氷』で出来ていた――。
「こちら、アルニカ。これより『城』に潜入したいと思います」
ハンターオフィスへの連絡を終えたアルニカは、長く伸ばした黒髪をうっとうしげにかき上げ、一つ息を吐く。吐いた息は瞬く間に白くなって消えた。その息を確認するなり肌寒くなり、露出していた二の腕をさすって暖を取ろうとする。
この辺りは温暖な気候のはずだ。
彼女は地面を見る。さっきまで緑が生い茂っていた地面は、いつの間にか土が目立ち、気にせずそのまま進むと氷で出来た花が咲くようになった。
これは間違いなく――何らかの魔法。
あるいは、マテリアルのバランスが崩れている。
氷の花を摘むとパキンと茎が折れ、バラのように八重咲きの花びらが一枚、はらりと落ちる。
それは地面に落下するとガラスのような音を立てて、バラバラに砕け散った。
自然的に生成したものではない。どこか作り物のようだった。
「やはり、魔法公害事件なのかしら?」
事前情報では、この近辺で大規模な魔法を使ったという事実はなかったはずだ。であるとするならば、精霊が影響しているのか、それとも使用済み鉱物マテリアルの不法投棄か。
いや、最近では歪虚の動きも活発化している。
それらが影響して、この土地を変えてしまったのかもしれない。
一番大きな変化は、あの『城』だろう。
アルニカは目的地であるそれを見上げた。
開けた草原に忽然と現れたその『氷の城』だ。
調査に向かうため、彼女は火の精霊の加護を得る。
「さて、行きましょうか」
凍り付いた地面を踏みしめて、ザクザクと進んでいく。
城は門が開け放たれていた。まるで餌を待つ食虫植物だと思う。
「気味が悪いわね」
中は靴音が響くほど密度の高い氷で作られていた。床も壁も柱もみな氷だ。
ためしに、炎を操り、床を溶かそうと試みた。しかし、溶けない。どうやらなにかしらの魔法で守られた『絶対に溶けない氷』のようだ。
ふん、と鼻を鳴らして、アルニカは城を進んでいく。
途中で凍りづけにされた人間の遺体は何体か発見できたが、それ以外に人っ子どころか、幻獣も歪虚とも出会わない。そして、最奥の間へとたどり着いた。
そこには大きな氷の花が咲いていた。
「これがこの城の主……」
キーン。
突然聞こえてきた甲高い音に、アルニカはびくりと反応してしまった。武器を構える。
氷の花が蕾から花開き、その花の中央に女性の姿をした、綺麗な彫像が現れたのだ。
その氷の彫像は、悲鳴のようなものを上げる。
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
何らかの魔法で作られた魔法生物だと、アルニカは長年の経験で悟った。
逃げるか、戦うか、その二択に迷っていたところ、
「なっ」
その魔法生物がもう一体、近くに現れたことに気づいた。
それの吹きかけてきた息を絶妙のタイミングでかわして、逃げる。あれを浴びたら最後、氷漬けにされる。そんな予感があった。
アルニカは、あれは、一人で戦えるような相手ではないと判断した。情報を持ち帰るのが先決だろう。
長年、探索を専門にしてきたアルニカは、それを瞬時に計算できた。
逃げようと転じた。地面で蠢く何かに気づく。それは氷の茨だった。茨が片足にまとわりついてこようとしている。その茨には凶悪な棘が生えていた。
……絡みつかれたら、脱出も難しいな。
彼女は、その茨を避けきって、なんとか氷の城から逃げ帰ったのだった。
●ハンターオフィス
――緊急依頼。
そう喧伝された依頼に集まったハンター達の前で、アルニカは自分のしてきた体験を話す。
「あれは、ほとんど雑魔と化した魔法生物です。城の奥の間からは動けないようですが、ここで手を打たなければ、いずれ大規模な災害の芽となるでしょう。今のうちに討伐しないといけない」
アルニカの話を聞いて、ハンター達は意気込みながら、オフィスを出立した。
リプレイ本文
●
踏みしめるごとに、薄氷の割れる音を幻聴する。
ここは凍てついた城――氷の『城』。
氷漬けになった遺体。
それらが散らばる廊下を、八人のハンターが、白い息を吐きながら進んでいた。
北方の素材で作られたポンチョを着込み、ミオレスカ(ka3496)は苦悶の表情で凍り付く“彼ら”を悼む。
この氷結の城は、あるいは、人が触れてはいけなかった伝説。
触れざるべきだが、放置はできないと決意し、歩を進めた。
コートの襟を立てて首の頸動脈をしっかりと保護する。
手袋は指の付け根に食い込むほどに嵌めた。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、この城に頂く、女王を慮る。
人間に勝手に生み出され、放置されてしまった、哀れな女王。
「いくらか同情はする。だが」
目の隅に映るのは、関係のない人の死、死、死……。
そこに隠された復讐心。
「女王。かわいそうだが、もう、眠らせてやろう」
彼女は小さく呟く。
この依頼を聞いた時、他人事とは思えなかった――。
T-Sein(ka6936)は自分が打ち捨てられていたという『路地裏』が脳裏によぎり、その寒さから身を守るようにマフラーを口元に寄せる。
歩きながら、ハンター達は作戦の最終確認をする。
そこでT-Seinは自らの所信を表明した。
「《彼女》がもう誰も恨まなくて良いよう安らかな眠りを与える為に。参りましょう皆様」
「同じヒトの罪……なれば其れを背負い、せめてもの安寧を……」
小さく呟き、白露のような息を漏らす。
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、モコモコしたマフラーで身を暖めた。
ケープを流し、氷の床を踏むのは膝上まであるブーツ。
共に歩むは叶わぬか……と冷たい煙管を口に付ける。
先頭からしばし遅れて、星空の幻(ka6980)が体を震わせながら付いてきていた。
六花の描かれた手袋をこすり合わせて、少しでも暖を取ろうとする。
「勢いで参加してみたものの……やっぱ寒いの……」
温かいブラックコーヒーを空想しながら、この奥に鎮座するという、かの女王を思う。
(作られたのに放置されて忘れられた命……ですか……俺もひとつ間違えれば彼女のようになっていたのかな……少し同情……ですね……)
着物の隙間を補填するように着込んだ、レッグウォーマーや、ネックウォーマーの数々。
久延毘 羽々姫(ka6474)は男勝りに、鼻をこすりながら、ズンズンと進む。
「うーわー……解放されて自由にやりたいって気持ちは分かるけど、やりすぎだろ……」
彼女の目には死体が映っていた。
「……たく、ありのままに生き過ぎだっつうの」
保温目的で飲んだブランデーの味がまだ舌の上で転がっている。
シェイス(ka5065)はその匂いに、酔いはしないが、頭が冴えていくのを感じた。
――同情すんぜ、その扱われ方はよ。
黒い刃にて、殺し、その嘆きを終わらせよう。
「久方ぶりに仕事と行こうか」
呟き、奥の間へと通じる扉を開いた。
「それが俺の、救い方だ」
「氷の城たぁ、しゃれてんじゃねーか。まあ、一丁パリーンとやってやるじゃん!」
ゾファル・G・初火(ka4407)は宣い、氷の廊下を全力疾走する。
普段の薄着に着込んだマントが、バサリッ、と翻る。
彼女には寒さなんてワクワクのどきどきに変換されてしまうようで、その顔にはギラついた笑みが貼り付いている。一番乗りで奥の間に飛び込んだ。
「出てこい、女王! 俺様ちゃんと闘えー!」
ゾファルの狼藉に、氷の花の女王――ウィンディア=イタカは目を覚ます。
彼女の下半身は氷の花だ。手は縛られ、口も糸のようなもので縫い付けられていた。
“女王”は動けない。
だが、女王を守護する“分身”が四体いる。
囚われし女王は禍々しい高音で鳴いた。
それが命令であったかのように、女王と同じ顔をした氷の彫像二体が抜き出てくる。
――直後、巨大な火球がごおおおと彫像に迫り、その二体を焼いた。
その炎は『華炎』。行使したのは蜜鈴。それは先手必勝の奥義だった。
業火の中で一体は溶け、一体は半分体を溶かしながら、狂気に駆られたように迫り来る。
それを絡め取り、粉砕したのはアルトのワイヤーウィップ。
炎を身に纏った彼女は、氷の茨を優雅に避けながらステップを刻む。
時間経過にして数瞬の出来事だっただろう。髪は腰ほどに長く伸び、瞳に冷徹な炎を映し出した。
進み続けていた足を、――タンッ、と強く氷の床に踏み込んだ。
「ここで終わらせてやる」
言葉を呟き捨てながら、彼女は、一気に加速する。
氷の花の女王は、うめき声を上げると、分身体をもう二体生み出して、捨て身の強襲をさせる。
彫像には理も非もない。総勢四体がハンター達に、一度に迫った。
七色の光を散らしながら、ミオレスカは息を殺して、その時を待つ。
北方の山みたいな緊張感だ……とどこか郷愁の想いを抱くようだった。
直線上。そこに敵が揃う時。直感がよぎった。この機を逃さない。
弓を番い、ビンッと引く。
放たれた矢は不規則に動き、しかし目標は外さなかった。
二体を貫通し、床にザックリと突き刺さった。
冬山の雪崩のように、分身体は猪突猛進だった。
その進行方向にT-Seinが佇んでいた。
「ええ、“ニヒト”。『あれ』は止めなくてはなりません」
彼女は、足の裏で氷結の地面を踏みしめる。その目は橙色に光り、瞳は獣のように収斂していた。彼女が纏う『鉤状の気』が分身体の一体を刮ぎ落とす――。
死にきれない“半壊”のそれは、死に物狂いの剣撃を繰り出してきた。彼女は手甲から放たれた熱波をブーストに、くるりと回転し、攻撃をいなす。
そこへ、トドメの一撃(ラリアット)を加えたのは、ゾファル。
粉々に砕けた氷の彫像を見て、物足りなさそうに舌打ちをする。
「おいおい、この程度かよ。肩すかしもいいところだぜー」
挑発に乗る。
そこまでの知性がその氷の化身に存在していたのかは定かではない。
しかし、目の前の敵を『殺す』――。
その命令に忠実に動いた分身体は、ゾファルに飛びかかる。
が、それこそがゾファルの策。飛び込んできた分身体の足下をなぎ払う。倒れたところでゾファルは馬乗りになる。マウントポジションだ。殴打に、殴打。その一撃一撃は重く、分身体はピキピキという小気味良い音を立てながら砕けていった。
女王はまた嘆き叫ぶ――。
二体の分身体が生まれた。
そこに、空間を割るような雷鳴が轟いた。
蜜鈴の放った雷霆は氷の床をも砕く、猛然たる一撃。
だが、分身体に阻まれて、ウィンディア=イタカには届かない。その足下の茨を毟る程度だ。
「一思いに……と言わせてくれる程度なれば此程の恨みとはならぬよな」
口元に薄ら笑いを取り付けながら、前線へと意識を集中させる。
そして、言祝いだ。
『――ファイアエンチャント』
と。
籠手に火の精霊力が宿った。
分身体を排除しながら本体に向かっていた羽々姫は、それに気づき、離れたところから視ているのだろう蜜鈴に感謝を想う。
その籠手の威力を示す時はすぐに来た。
右側、斜め後方より――イタカの分身体が現れたのだ。
「これでも食らいやがれ!」
炎をちらつかせ、その分身体を殴り、屠る。
戦闘が始まって数分後。
氷の女王が、何度、呻き叫び、自らの分身を生み出したか。
その頃になって、シェイスはようやくウィンディア=イタカ本体のもとまでたどり着こうとしていた。
周囲を立体的に把握し、アクロバティックな機動で、分身体をすり抜けての、ほぼ直進。
(もうちょっとだ……)
そんな少しの気の緩みが、彼にもあったのかもしれない。
踏み込んだ先に、氷の茨が発生していた。
「チッ」
茨が起き上がり、棘が足に食い込む。
痛みが熱を帯びた。
最悪だったのは、すぐ真後ろに分身体が接近していたということだ。
シェイスは唇を噛む。
パンッ、という銃声が迸った。
銃弾は分身体を打ち抜いて、それはよろけて遠のいた。
「お兄ちゃん!」
煙を噴くオートマチック拳銃を下ろした星空の幻は、声を飛ばす。
その手に持っていたのは、発煙手榴弾。
「援護助かる、こいつらは任せるぜ」
シェイスは彼女の意図に気づき、本体に向かって走り出す。
タイミング良く放り込まれた発煙手榴弾の煙幕に紛れて、本体に接近し、跳び上がると頭部を狙った一撃を放つ。
揺らめく波紋の短刀は、頭部に命中した。
星空の幻が放った銃弾は、今度は確実に分身体を貫通したが、その体は痛みの感じない“氷”。
たとえ体が割れかけていようとも、すぐさま反撃へ転じてくる。
「ひっ」
彼女が目を閉ざしかけた時、
『翔けよ炎獣、その爪を、牙を、彼の敵を穿つ力と成せ』
赤い閃光が氷の彫像を貫いた。
「大丈夫かえ?」
蜜鈴が傍に立っていた。
「ありがとう」
星空の幻は、呆けたように感謝を述べた。
――女王が危険だ。
そう分身体が判断したのか、本体に近づこうとした。
阻んだのは、縮地瞬動によってそれの前に回り込んだ、T-Sein。
気を高めるような構えを取り、筋肉を締める。内功を如実に高めた。女王を助けに行こうとした分身体へ、掌底をぶち当てる。
充ち満ちた剄力が氷の体に伝わり、分身体は内側から破壊され、膝を突く。
そこにゾファルの『刺突一閃』が激突した。
鋭い蹴りによって、それは粉塵のように消え去っていく。
分身体は全て消え失せた。
本体は丸腰だ。
離れたところから、ミオレスカの高加速射撃された矢が突き刺さる。
紅い糸に繋がれたワイヤーウィップが一撃二撃と氷の体を砕く。
一気に距離を縮めてきた羽々姫は、その勢いのまま、鎧通しの拳打を浴びせた。
身を翻したシェイスの短刀が、胸を貫く。
「おんしが真、戯れに創られたか、愛しさ故に創られたかは妾にはわからぬ。さりとて、おんしの怒りこそが全ての真実であるとも思わぬ。斯様に美しき花を咲かせるおんしを殺しとう無い……それが妾の本心じゃ。なれど……おんしは其れすらヒトの傲慢じゃと言うのであろうの……」
蜜鈴は、フッと目を細める。
「――なれば、相対する者として、せめてもの安寧を……」
翳した拳銃によって放たれた緋色に染まった弾丸は、氷の花の女王を穿つ。
彼女は叫び声を止め、間もなくガタガタ――と崩落し始めた。
彼女を包んでいた氷の花弁は無造作に手折れ。
体はゆっくりと落ちる。着氷する間際で、シェイスが抱き留めた。
「この痛みを最後に、凍てついた軛から逃れられるさ。だから、眠れ……安らかにな」
そう声をかける。
すると、ウィンディア=イタカはわずかに微笑み、粉塵と化したのだった。
●
氷の花の女王――ウィンディア=イタカとの激闘の幕が下りて。
アルトは、氷の城で命を落とした哀れな骸を弔うため、城の外へと運んでいた。
「――彼らがアンデットになるのは忍びないよ」
そんな想いのアルトの前に、近くの村の住人がやってきた。
村人達は戦闘が終わるのを待っていたのだ。
今、彼らは、脅威がなくなった城の中で、死体を運ぶ手伝いをしてくれている。
もしかしたら、この中に“彼ら”のうちの誰かと親しい者もいるのかもしれない。
アルトは、ふと、そんなことを思い、胸が締め付けられた。
同じく廊下にて。
蜜鈴はもはや口も効かぬ、亡骸に手で触れる。
人間の業が生み出した“魔物”が、人に裁きを加える。
それは至極まっとうな復讐に思えた。だが、許せない咎ではある。
なにせ、ここで死んでいった彼らにもきっと『家族』がいたのだから。
せめて『次』は、幸福な人生を――
「芽吹いた命じゃ……然りと、輪廻へ戻るが良い……」
その言葉は、《氷の花の女王》に向けられた哀悼でもあった。
北方の辺境では、氷に閉ざされた場所をよく見た。
ミオレスカは故郷の景色を思い出しながら、白い息を吐き出す。
北の大地は冬が長い。
日差しが降り注ぐ日でも空気は冷たく。雪が積もった日には白く凍てつく。
そんな『寒さ』に、この城は似ていた。
温かな湯気の立ち上る紅茶が欲しくなる。
銀色の光景を幻視しながら、ミオレスカは奥の間の朽ちた女王の元まで行った。
「彼女――人に恨みがあるようでした。打ち倒すことでしか、解放する術がなかったのが口惜しいです」
舞う粉雪に、女王の想いを慮る。
「せめて繰り返さないよう、私達が、覚えておくしかないですね」
「ええ」
そう答えたのは、T-Sein。
似た者――と、哀れな女王に自分を重ねていたT-Seinは墓標のようなものを作っていた。
氷の城の主たらしく『氷で出来た墓標』だ。
その前で指を組み、黙祷を捧げる。
ゾファルはまだ戦い足りなさそうに体を動かす。
そんなことをしているならこっちを手伝え、と村の人に言われて、遺体を運んでいた。
遺体を城の外に出し終えると、村人から炭酸の入った甘いジュースを差し入れされる。
「うわ! うまいじゃーん! 俺様ちゃんの舌にびびびってくるよ、これ!」
ごくごく飲んで、仕事の疲れを取った。
外に運び出された死体の死に顔を見て、羽々姫は眉を寄せた。
この世にはまだまだ『幸せ』になれない人がたくさんいる。
平和は遠い。ギュッと拳を握る。
「まだまだ頑張らないとな」
ハンターになった時の気持ちを思いだして、羽々姫はフン――と勇ましく気炎を上げた。
氷の城は、日が落ちる間際には、その原形をとどめないほどに崩れていた。
ハンター達はそれぞれに労いの言葉を投げかけ、ある者は次の旅へ、ある者は弔いをするため近くの村へ移動していく。
そんな中、T-Seinは崩れゆく城を見ながら、どこか落ち着かない気分で黄昏れた。
後日、シェイスと星空の幻が『氷結の城』の跡地を尋ねた。
そこはすでに緑が生い茂る草原へと戻っていた。
ここであった凄惨な事件なんて、なかったかのようだ。
でも、確かにあったのだ。ここで。
星空の幻はその草原の中央に、まだ溶けていなかった『氷の墓標』を見つけて花を供えた。
「貴方の分までちゃんと生きるの……。だから……教えて……貴方の生きたかった人生を……」
なにかはわからない。
だけど、同じ“何か”を感じて呟く。
「あいつは楽になったんだ」
シェイスの呟きに、星空の幻は振り返る。
「ついね、昔を思い出してな」
彼は、そう言って、遠く――遠い空を見つめるのだった。
踏みしめるごとに、薄氷の割れる音を幻聴する。
ここは凍てついた城――氷の『城』。
氷漬けになった遺体。
それらが散らばる廊下を、八人のハンターが、白い息を吐きながら進んでいた。
北方の素材で作られたポンチョを着込み、ミオレスカ(ka3496)は苦悶の表情で凍り付く“彼ら”を悼む。
この氷結の城は、あるいは、人が触れてはいけなかった伝説。
触れざるべきだが、放置はできないと決意し、歩を進めた。
コートの襟を立てて首の頸動脈をしっかりと保護する。
手袋は指の付け根に食い込むほどに嵌めた。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、この城に頂く、女王を慮る。
人間に勝手に生み出され、放置されてしまった、哀れな女王。
「いくらか同情はする。だが」
目の隅に映るのは、関係のない人の死、死、死……。
そこに隠された復讐心。
「女王。かわいそうだが、もう、眠らせてやろう」
彼女は小さく呟く。
この依頼を聞いた時、他人事とは思えなかった――。
T-Sein(ka6936)は自分が打ち捨てられていたという『路地裏』が脳裏によぎり、その寒さから身を守るようにマフラーを口元に寄せる。
歩きながら、ハンター達は作戦の最終確認をする。
そこでT-Seinは自らの所信を表明した。
「《彼女》がもう誰も恨まなくて良いよう安らかな眠りを与える為に。参りましょう皆様」
「同じヒトの罪……なれば其れを背負い、せめてもの安寧を……」
小さく呟き、白露のような息を漏らす。
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、モコモコしたマフラーで身を暖めた。
ケープを流し、氷の床を踏むのは膝上まであるブーツ。
共に歩むは叶わぬか……と冷たい煙管を口に付ける。
先頭からしばし遅れて、星空の幻(ka6980)が体を震わせながら付いてきていた。
六花の描かれた手袋をこすり合わせて、少しでも暖を取ろうとする。
「勢いで参加してみたものの……やっぱ寒いの……」
温かいブラックコーヒーを空想しながら、この奥に鎮座するという、かの女王を思う。
(作られたのに放置されて忘れられた命……ですか……俺もひとつ間違えれば彼女のようになっていたのかな……少し同情……ですね……)
着物の隙間を補填するように着込んだ、レッグウォーマーや、ネックウォーマーの数々。
久延毘 羽々姫(ka6474)は男勝りに、鼻をこすりながら、ズンズンと進む。
「うーわー……解放されて自由にやりたいって気持ちは分かるけど、やりすぎだろ……」
彼女の目には死体が映っていた。
「……たく、ありのままに生き過ぎだっつうの」
保温目的で飲んだブランデーの味がまだ舌の上で転がっている。
シェイス(ka5065)はその匂いに、酔いはしないが、頭が冴えていくのを感じた。
――同情すんぜ、その扱われ方はよ。
黒い刃にて、殺し、その嘆きを終わらせよう。
「久方ぶりに仕事と行こうか」
呟き、奥の間へと通じる扉を開いた。
「それが俺の、救い方だ」
「氷の城たぁ、しゃれてんじゃねーか。まあ、一丁パリーンとやってやるじゃん!」
ゾファル・G・初火(ka4407)は宣い、氷の廊下を全力疾走する。
普段の薄着に着込んだマントが、バサリッ、と翻る。
彼女には寒さなんてワクワクのどきどきに変換されてしまうようで、その顔にはギラついた笑みが貼り付いている。一番乗りで奥の間に飛び込んだ。
「出てこい、女王! 俺様ちゃんと闘えー!」
ゾファルの狼藉に、氷の花の女王――ウィンディア=イタカは目を覚ます。
彼女の下半身は氷の花だ。手は縛られ、口も糸のようなもので縫い付けられていた。
“女王”は動けない。
だが、女王を守護する“分身”が四体いる。
囚われし女王は禍々しい高音で鳴いた。
それが命令であったかのように、女王と同じ顔をした氷の彫像二体が抜き出てくる。
――直後、巨大な火球がごおおおと彫像に迫り、その二体を焼いた。
その炎は『華炎』。行使したのは蜜鈴。それは先手必勝の奥義だった。
業火の中で一体は溶け、一体は半分体を溶かしながら、狂気に駆られたように迫り来る。
それを絡め取り、粉砕したのはアルトのワイヤーウィップ。
炎を身に纏った彼女は、氷の茨を優雅に避けながらステップを刻む。
時間経過にして数瞬の出来事だっただろう。髪は腰ほどに長く伸び、瞳に冷徹な炎を映し出した。
進み続けていた足を、――タンッ、と強く氷の床に踏み込んだ。
「ここで終わらせてやる」
言葉を呟き捨てながら、彼女は、一気に加速する。
氷の花の女王は、うめき声を上げると、分身体をもう二体生み出して、捨て身の強襲をさせる。
彫像には理も非もない。総勢四体がハンター達に、一度に迫った。
七色の光を散らしながら、ミオレスカは息を殺して、その時を待つ。
北方の山みたいな緊張感だ……とどこか郷愁の想いを抱くようだった。
直線上。そこに敵が揃う時。直感がよぎった。この機を逃さない。
弓を番い、ビンッと引く。
放たれた矢は不規則に動き、しかし目標は外さなかった。
二体を貫通し、床にザックリと突き刺さった。
冬山の雪崩のように、分身体は猪突猛進だった。
その進行方向にT-Seinが佇んでいた。
「ええ、“ニヒト”。『あれ』は止めなくてはなりません」
彼女は、足の裏で氷結の地面を踏みしめる。その目は橙色に光り、瞳は獣のように収斂していた。彼女が纏う『鉤状の気』が分身体の一体を刮ぎ落とす――。
死にきれない“半壊”のそれは、死に物狂いの剣撃を繰り出してきた。彼女は手甲から放たれた熱波をブーストに、くるりと回転し、攻撃をいなす。
そこへ、トドメの一撃(ラリアット)を加えたのは、ゾファル。
粉々に砕けた氷の彫像を見て、物足りなさそうに舌打ちをする。
「おいおい、この程度かよ。肩すかしもいいところだぜー」
挑発に乗る。
そこまでの知性がその氷の化身に存在していたのかは定かではない。
しかし、目の前の敵を『殺す』――。
その命令に忠実に動いた分身体は、ゾファルに飛びかかる。
が、それこそがゾファルの策。飛び込んできた分身体の足下をなぎ払う。倒れたところでゾファルは馬乗りになる。マウントポジションだ。殴打に、殴打。その一撃一撃は重く、分身体はピキピキという小気味良い音を立てながら砕けていった。
女王はまた嘆き叫ぶ――。
二体の分身体が生まれた。
そこに、空間を割るような雷鳴が轟いた。
蜜鈴の放った雷霆は氷の床をも砕く、猛然たる一撃。
だが、分身体に阻まれて、ウィンディア=イタカには届かない。その足下の茨を毟る程度だ。
「一思いに……と言わせてくれる程度なれば此程の恨みとはならぬよな」
口元に薄ら笑いを取り付けながら、前線へと意識を集中させる。
そして、言祝いだ。
『――ファイアエンチャント』
と。
籠手に火の精霊力が宿った。
分身体を排除しながら本体に向かっていた羽々姫は、それに気づき、離れたところから視ているのだろう蜜鈴に感謝を想う。
その籠手の威力を示す時はすぐに来た。
右側、斜め後方より――イタカの分身体が現れたのだ。
「これでも食らいやがれ!」
炎をちらつかせ、その分身体を殴り、屠る。
戦闘が始まって数分後。
氷の女王が、何度、呻き叫び、自らの分身を生み出したか。
その頃になって、シェイスはようやくウィンディア=イタカ本体のもとまでたどり着こうとしていた。
周囲を立体的に把握し、アクロバティックな機動で、分身体をすり抜けての、ほぼ直進。
(もうちょっとだ……)
そんな少しの気の緩みが、彼にもあったのかもしれない。
踏み込んだ先に、氷の茨が発生していた。
「チッ」
茨が起き上がり、棘が足に食い込む。
痛みが熱を帯びた。
最悪だったのは、すぐ真後ろに分身体が接近していたということだ。
シェイスは唇を噛む。
パンッ、という銃声が迸った。
銃弾は分身体を打ち抜いて、それはよろけて遠のいた。
「お兄ちゃん!」
煙を噴くオートマチック拳銃を下ろした星空の幻は、声を飛ばす。
その手に持っていたのは、発煙手榴弾。
「援護助かる、こいつらは任せるぜ」
シェイスは彼女の意図に気づき、本体に向かって走り出す。
タイミング良く放り込まれた発煙手榴弾の煙幕に紛れて、本体に接近し、跳び上がると頭部を狙った一撃を放つ。
揺らめく波紋の短刀は、頭部に命中した。
星空の幻が放った銃弾は、今度は確実に分身体を貫通したが、その体は痛みの感じない“氷”。
たとえ体が割れかけていようとも、すぐさま反撃へ転じてくる。
「ひっ」
彼女が目を閉ざしかけた時、
『翔けよ炎獣、その爪を、牙を、彼の敵を穿つ力と成せ』
赤い閃光が氷の彫像を貫いた。
「大丈夫かえ?」
蜜鈴が傍に立っていた。
「ありがとう」
星空の幻は、呆けたように感謝を述べた。
――女王が危険だ。
そう分身体が判断したのか、本体に近づこうとした。
阻んだのは、縮地瞬動によってそれの前に回り込んだ、T-Sein。
気を高めるような構えを取り、筋肉を締める。内功を如実に高めた。女王を助けに行こうとした分身体へ、掌底をぶち当てる。
充ち満ちた剄力が氷の体に伝わり、分身体は内側から破壊され、膝を突く。
そこにゾファルの『刺突一閃』が激突した。
鋭い蹴りによって、それは粉塵のように消え去っていく。
分身体は全て消え失せた。
本体は丸腰だ。
離れたところから、ミオレスカの高加速射撃された矢が突き刺さる。
紅い糸に繋がれたワイヤーウィップが一撃二撃と氷の体を砕く。
一気に距離を縮めてきた羽々姫は、その勢いのまま、鎧通しの拳打を浴びせた。
身を翻したシェイスの短刀が、胸を貫く。
「おんしが真、戯れに創られたか、愛しさ故に創られたかは妾にはわからぬ。さりとて、おんしの怒りこそが全ての真実であるとも思わぬ。斯様に美しき花を咲かせるおんしを殺しとう無い……それが妾の本心じゃ。なれど……おんしは其れすらヒトの傲慢じゃと言うのであろうの……」
蜜鈴は、フッと目を細める。
「――なれば、相対する者として、せめてもの安寧を……」
翳した拳銃によって放たれた緋色に染まった弾丸は、氷の花の女王を穿つ。
彼女は叫び声を止め、間もなくガタガタ――と崩落し始めた。
彼女を包んでいた氷の花弁は無造作に手折れ。
体はゆっくりと落ちる。着氷する間際で、シェイスが抱き留めた。
「この痛みを最後に、凍てついた軛から逃れられるさ。だから、眠れ……安らかにな」
そう声をかける。
すると、ウィンディア=イタカはわずかに微笑み、粉塵と化したのだった。
●
氷の花の女王――ウィンディア=イタカとの激闘の幕が下りて。
アルトは、氷の城で命を落とした哀れな骸を弔うため、城の外へと運んでいた。
「――彼らがアンデットになるのは忍びないよ」
そんな想いのアルトの前に、近くの村の住人がやってきた。
村人達は戦闘が終わるのを待っていたのだ。
今、彼らは、脅威がなくなった城の中で、死体を運ぶ手伝いをしてくれている。
もしかしたら、この中に“彼ら”のうちの誰かと親しい者もいるのかもしれない。
アルトは、ふと、そんなことを思い、胸が締め付けられた。
同じく廊下にて。
蜜鈴はもはや口も効かぬ、亡骸に手で触れる。
人間の業が生み出した“魔物”が、人に裁きを加える。
それは至極まっとうな復讐に思えた。だが、許せない咎ではある。
なにせ、ここで死んでいった彼らにもきっと『家族』がいたのだから。
せめて『次』は、幸福な人生を――
「芽吹いた命じゃ……然りと、輪廻へ戻るが良い……」
その言葉は、《氷の花の女王》に向けられた哀悼でもあった。
北方の辺境では、氷に閉ざされた場所をよく見た。
ミオレスカは故郷の景色を思い出しながら、白い息を吐き出す。
北の大地は冬が長い。
日差しが降り注ぐ日でも空気は冷たく。雪が積もった日には白く凍てつく。
そんな『寒さ』に、この城は似ていた。
温かな湯気の立ち上る紅茶が欲しくなる。
銀色の光景を幻視しながら、ミオレスカは奥の間の朽ちた女王の元まで行った。
「彼女――人に恨みがあるようでした。打ち倒すことでしか、解放する術がなかったのが口惜しいです」
舞う粉雪に、女王の想いを慮る。
「せめて繰り返さないよう、私達が、覚えておくしかないですね」
「ええ」
そう答えたのは、T-Sein。
似た者――と、哀れな女王に自分を重ねていたT-Seinは墓標のようなものを作っていた。
氷の城の主たらしく『氷で出来た墓標』だ。
その前で指を組み、黙祷を捧げる。
ゾファルはまだ戦い足りなさそうに体を動かす。
そんなことをしているならこっちを手伝え、と村の人に言われて、遺体を運んでいた。
遺体を城の外に出し終えると、村人から炭酸の入った甘いジュースを差し入れされる。
「うわ! うまいじゃーん! 俺様ちゃんの舌にびびびってくるよ、これ!」
ごくごく飲んで、仕事の疲れを取った。
外に運び出された死体の死に顔を見て、羽々姫は眉を寄せた。
この世にはまだまだ『幸せ』になれない人がたくさんいる。
平和は遠い。ギュッと拳を握る。
「まだまだ頑張らないとな」
ハンターになった時の気持ちを思いだして、羽々姫はフン――と勇ましく気炎を上げた。
氷の城は、日が落ちる間際には、その原形をとどめないほどに崩れていた。
ハンター達はそれぞれに労いの言葉を投げかけ、ある者は次の旅へ、ある者は弔いをするため近くの村へ移動していく。
そんな中、T-Seinは崩れゆく城を見ながら、どこか落ち着かない気分で黄昏れた。
後日、シェイスと星空の幻が『氷結の城』の跡地を尋ねた。
そこはすでに緑が生い茂る草原へと戻っていた。
ここであった凄惨な事件なんて、なかったかのようだ。
でも、確かにあったのだ。ここで。
星空の幻はその草原の中央に、まだ溶けていなかった『氷の墓標』を見つけて花を供えた。
「貴方の分までちゃんと生きるの……。だから……教えて……貴方の生きたかった人生を……」
なにかはわからない。
だけど、同じ“何か”を感じて呟く。
「あいつは楽になったんだ」
シェイスの呟きに、星空の幻は振り返る。
「ついね、昔を思い出してな」
彼は、そう言って、遠く――遠い空を見つめるのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/15 01:40:00 |
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相談卓 久延毘 羽々姫(ka6474) 人間(リアルブルー)|19才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/11/17 23:14:32 |