ゲスト
(ka0000)
宵闇に梟は舞う
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/18 19:00
- 完成日
- 2017/11/20 20:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
赤き大地に陽は沈み、周囲に闇が訪れる。
昼間に活動する動物は巣穴へと帰っていくが、同時に深夜に活動する動物が巣穴から顔を出す。
闇の中を見渡せば、虫の鳴き声と風の囁きが聞こえてくる。
鼻腔には湿り気を十分に含んだ空気が入ってくる。
今日も良い狩りができそうだ。
だが、まずは仲間達に恒例の挨拶をしなければ――。
「今日もみんな居るホー? 元気よく点呼するホー」
その声を受けて一斉に鳴き出す仲間達。
森に響き渡る鳴き声が、平和な一日を予感させる。
「では早速狩りを始めるホー」
●
話は、数日前に遡る。
「悪いけど、何とかしてくれない?」
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がイクタサ(kz0246)の住むシンタチャシへ呼び出されたのは今朝の事だ。
イクタサにとってヴェルナーは厄介な相手。ヴェルナー自身もその事を知っているが、その上でヴェルナーを呼び出したという事は余程の事情があるとみていた。
だが、蓋を開ければ肩透かしも良いところだ。
「えー、整理させていただきますね」
「ああ、いいよ」
「イクタサさんはこのシンタチャシの小屋でお休みになっている。これに間違いはないですね」
「うん。そうだよ」
「で、夜になると何処からホーホーと鳴き声が一晩中続く」
イクタサによれば、陽が落ちてから一定時間大量のモフロウが鳴き続けているらしい。今までのシンタチャシでこのような事がなかった為、モフロウはこの辺境に生息していた存在と考えるのが自然だ。おそらく居心地が良くてシンタチャシに住み着いてしまったのだろう。
「そうそう。毎日夜遅くまで鳴き続けるだ。ボクにとっては迷惑なんだよね」
「そのモフロウを私に何とかして欲しい……これが私への依頼でよろしいですか?」
ヴェルナーはわざわざ聞き返した。
部族会議の補佐役に要塞ノアーラクンタウ管理者。
こう見えてもヴェルナーは多忙だ。
その合間を縫ってシンタチャシまでやってきたのだが、モフロウを自分の森から追い出せというイクタサの願い。
嫌味である事を承知の上で、ヴェルナーは敢えて依頼内容を再度口にしたのだ。
だが、そんなヴェルナーの嫌味に反応する事無く、イクタサは疲れた顔で言葉を返す。
「そう。さすがにボクも参っているんだよね」
「あの。お言葉ですが精霊のあなたなら自分でモフロウを追い払えば良いのではないですか?」
「ボクの力を無闇に使えば歪虚も黙ってないでしょ。それにファリフもボクが力を多用するのは好きじゃないみたいなんだ」
ファリフ――ファリフ・スコール(kz0009)がお気に入りのイクタサは、とにかくファリフに甘い。
そのファリフは最近イクタサが自分の力を多用するのを好まないという話を聞きつけたようだ。確かにイクタサの力は強大だ。森を一晩で現出させる能力がある精霊なら当然だが、その力を多用すれば自分の成長を望まなくなる。ファリフはイクタサからのアドヴァイスは受けても力を極力借りないようにしている。
「それは感心ですね」
「そうなんだよ。そこがまたファリフの良いところなんだ。それでいて周りにも気を使う優しさがいいんだ。この間も森にやってきてボクの様子を見に来てくれたんだよ。一人でいるのは寂しくないかって。いやー、ボクにも優しく接してくれるファリフはきっと女神や天女なんじゃないかな。きっと将来は……」
ファリフの事になると饒舌になるイクタサ。
本当に気に入っているのは良く分かるが、今の話し出されても困る話題だ。
「失礼。話を戻します。イクタサさんは自分の力を使いたくない。ですが、安眠は確保したい。
……正直に申し上げます。我が侭ですね」
「そう。ボクは我が侭なんだ。別にいいでしょ」
子供っぽくぷいっと顔を背けるイクタサ。
人に物を態度ではないのだが、精霊の中でも気難しいイクタサが相手だ。ヴェルナーもその辺は熟知している。
「そうですか。ですが、実は今からバタルトゥさんの代わりにリアルブルーへ赴かなければなりません。代わりに対処いただけるハンターへ依頼しています」
「えー」
「そう仰ると思ってました。ですので、会話ができる大幻獣を連れてきました。大幻獣を介せばハンターもモフロウと会話できます」
「なるほど。それなら君よりも適任だ。確か、幻獣王って名乗っている幻獣がいたよね? あの丸いのを連れてきたの?」
イクタサは床を見回した。
以前、イクタサの小屋に現れたチューダは散々飯を食べた後、どでかい腹を突きだして自らの威厳を自慢していった。
ただの穀潰しなのだが――チューダが好き勝手に行動した為、イクタサの記憶にも残っていたようだ。
だが、チューダの姿はそこになく――。
「うぉい! あいつと一緒にするんじゃねぇよ、べらぼうめっ!」
ヴェルナーの足下にいたのは幻獣王ではなく、テルル(kz0218)。
飛行帽子を被った可愛らしい姿であるが、短気である事が玉に瑕だ。
「なにこの鳥」
「テルルさんです。古代文明や魔導に興味をお持ちの幻獣さんです」
「おい、ヴェルナー! 面白いもんが見られるっていうから来たのに、なんでこの汚い小屋にいないといけねぇんだ」
「……キミ、ボクの家を馬鹿にしてるの?」
殺気を放つイクタサ。
自分の家を馬鹿にされているのだから無理もない。
あまりの異様な雰囲気に戦くテルル。
「ちょ、待てよっ! 冗談だってぇの!」
「テルルさん。ここで協力してもらえたなら、帝国の錬魔院に紹介しても良いですよ」
「……えっ。ま、まじか!!」
目を輝かせるテルル。
魔導研究の最前線を見学できると聞けば、興奮を隠せない。
テルルは俄然やる気を出し始める。
「やってくれるそうです。ですから気を静めて下さい」
「ふん。あっそ。それならそれでいいや。
……あ、キミ。表のピリカはここでは使用禁止だから。ボクの森を荒らされたら困るからね」
昼間に活動する動物は巣穴へと帰っていくが、同時に深夜に活動する動物が巣穴から顔を出す。
闇の中を見渡せば、虫の鳴き声と風の囁きが聞こえてくる。
鼻腔には湿り気を十分に含んだ空気が入ってくる。
今日も良い狩りができそうだ。
だが、まずは仲間達に恒例の挨拶をしなければ――。
「今日もみんな居るホー? 元気よく点呼するホー」
その声を受けて一斉に鳴き出す仲間達。
森に響き渡る鳴き声が、平和な一日を予感させる。
「では早速狩りを始めるホー」
●
話は、数日前に遡る。
「悪いけど、何とかしてくれない?」
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がイクタサ(kz0246)の住むシンタチャシへ呼び出されたのは今朝の事だ。
イクタサにとってヴェルナーは厄介な相手。ヴェルナー自身もその事を知っているが、その上でヴェルナーを呼び出したという事は余程の事情があるとみていた。
だが、蓋を開ければ肩透かしも良いところだ。
「えー、整理させていただきますね」
「ああ、いいよ」
「イクタサさんはこのシンタチャシの小屋でお休みになっている。これに間違いはないですね」
「うん。そうだよ」
「で、夜になると何処からホーホーと鳴き声が一晩中続く」
イクタサによれば、陽が落ちてから一定時間大量のモフロウが鳴き続けているらしい。今までのシンタチャシでこのような事がなかった為、モフロウはこの辺境に生息していた存在と考えるのが自然だ。おそらく居心地が良くてシンタチャシに住み着いてしまったのだろう。
「そうそう。毎日夜遅くまで鳴き続けるだ。ボクにとっては迷惑なんだよね」
「そのモフロウを私に何とかして欲しい……これが私への依頼でよろしいですか?」
ヴェルナーはわざわざ聞き返した。
部族会議の補佐役に要塞ノアーラクンタウ管理者。
こう見えてもヴェルナーは多忙だ。
その合間を縫ってシンタチャシまでやってきたのだが、モフロウを自分の森から追い出せというイクタサの願い。
嫌味である事を承知の上で、ヴェルナーは敢えて依頼内容を再度口にしたのだ。
だが、そんなヴェルナーの嫌味に反応する事無く、イクタサは疲れた顔で言葉を返す。
「そう。さすがにボクも参っているんだよね」
「あの。お言葉ですが精霊のあなたなら自分でモフロウを追い払えば良いのではないですか?」
「ボクの力を無闇に使えば歪虚も黙ってないでしょ。それにファリフもボクが力を多用するのは好きじゃないみたいなんだ」
ファリフ――ファリフ・スコール(kz0009)がお気に入りのイクタサは、とにかくファリフに甘い。
そのファリフは最近イクタサが自分の力を多用するのを好まないという話を聞きつけたようだ。確かにイクタサの力は強大だ。森を一晩で現出させる能力がある精霊なら当然だが、その力を多用すれば自分の成長を望まなくなる。ファリフはイクタサからのアドヴァイスは受けても力を極力借りないようにしている。
「それは感心ですね」
「そうなんだよ。そこがまたファリフの良いところなんだ。それでいて周りにも気を使う優しさがいいんだ。この間も森にやってきてボクの様子を見に来てくれたんだよ。一人でいるのは寂しくないかって。いやー、ボクにも優しく接してくれるファリフはきっと女神や天女なんじゃないかな。きっと将来は……」
ファリフの事になると饒舌になるイクタサ。
本当に気に入っているのは良く分かるが、今の話し出されても困る話題だ。
「失礼。話を戻します。イクタサさんは自分の力を使いたくない。ですが、安眠は確保したい。
……正直に申し上げます。我が侭ですね」
「そう。ボクは我が侭なんだ。別にいいでしょ」
子供っぽくぷいっと顔を背けるイクタサ。
人に物を態度ではないのだが、精霊の中でも気難しいイクタサが相手だ。ヴェルナーもその辺は熟知している。
「そうですか。ですが、実は今からバタルトゥさんの代わりにリアルブルーへ赴かなければなりません。代わりに対処いただけるハンターへ依頼しています」
「えー」
「そう仰ると思ってました。ですので、会話ができる大幻獣を連れてきました。大幻獣を介せばハンターもモフロウと会話できます」
「なるほど。それなら君よりも適任だ。確か、幻獣王って名乗っている幻獣がいたよね? あの丸いのを連れてきたの?」
イクタサは床を見回した。
以前、イクタサの小屋に現れたチューダは散々飯を食べた後、どでかい腹を突きだして自らの威厳を自慢していった。
ただの穀潰しなのだが――チューダが好き勝手に行動した為、イクタサの記憶にも残っていたようだ。
だが、チューダの姿はそこになく――。
「うぉい! あいつと一緒にするんじゃねぇよ、べらぼうめっ!」
ヴェルナーの足下にいたのは幻獣王ではなく、テルル(kz0218)。
飛行帽子を被った可愛らしい姿であるが、短気である事が玉に瑕だ。
「なにこの鳥」
「テルルさんです。古代文明や魔導に興味をお持ちの幻獣さんです」
「おい、ヴェルナー! 面白いもんが見られるっていうから来たのに、なんでこの汚い小屋にいないといけねぇんだ」
「……キミ、ボクの家を馬鹿にしてるの?」
殺気を放つイクタサ。
自分の家を馬鹿にされているのだから無理もない。
あまりの異様な雰囲気に戦くテルル。
「ちょ、待てよっ! 冗談だってぇの!」
「テルルさん。ここで協力してもらえたなら、帝国の錬魔院に紹介しても良いですよ」
「……えっ。ま、まじか!!」
目を輝かせるテルル。
魔導研究の最前線を見学できると聞けば、興奮を隠せない。
テルルは俄然やる気を出し始める。
「やってくれるそうです。ですから気を静めて下さい」
「ふん。あっそ。それならそれでいいや。
……あ、キミ。表のピリカはここでは使用禁止だから。ボクの森を荒らされたら困るからね」
リプレイ本文
「ふふ、シーラと狩りなんて久しぶりね」
シンタチャシを北上するエルティア・ホープナー(ka0727)は、傍らにいるシルヴェイラ(ka0726)へ視線を送る。
手にはロングボウ「ディープ・オブジェクト」と仕留めた数匹のウサギ。
共に世界を生きる者として、糧になってくれたものへの感謝を忘れずに臨んだ狩りの成果だ。
「エアにしては良い気遣いだね」
視線を合わせるようにエルティアへ横を向くシルヴェイラ。
エルティアの上空にはペットであるフクロウ「フォグ」とモフロウ「ティト」が上空を旋回している。
彼らがこの時間に狩りを楽しんでいる訳ではない。
実はシンタチャシの北に住み着いたモフロウの一団に用事があるのだ。
「まったく、なんだってこんな所に住み着いたんだ? 何もここじゃなくてもいいだろ。幻獣の森とかよ」
ローラースケートの要領でローラジェットを履いて移動するのは、大幻獣のテルル(kz0218)。
精霊のイクタサ(kz0246)から依頼されて、夜中に鳴き続けるモフロウを調査しに来たという訳だ。
何故、彼らはここにいるのか。
何故、彼らは夜に鳴いているのか。
その謎を究明しようとしている――。
「しっかし、途中で狩りをするってぇのは良い案だったな。ここで餌をやって敵意がないのをアピールするってぇのはナイスなアイディアだ」
「褒めてくれてありがとう。でも、油断は禁物よ。彼らにとって私達は来訪者。下手な事をすれば敵意を見せてくるわ」
シルヴェイラが手にしていたウサギは、隠れているモフロウへの手土産だ。
精霊の住む森のシンタチャシは辺境で一日にして現出した森だ。イクタサの力を使えば、ある種の超常現象を起こす事も可能だろう。だが、当のイクタサは特に力を使う気配もない。
この為、周囲から動物達がやってきて普通の森のように生活を続けている。
「かわいらしい……いえ。テルル様、格好良いです」
ローラージェットの後を追うように進むのはリアリュール(ka2003)だ。
灯火の水晶球で周囲を照らしながら足下を警戒するリアリュール。地面には所々木の根が顔を覗かせている。気を付けていなければローラージェットが木の根に引っかかって倒れてしまうかもしれない。
「カッコイイ? そうだろ。俺っち自慢のローラジェットだ。いざとなりゃ、魔導の力で自動的に移動できるんだぜ」
ローラジェットを褒められたと勘違いするテルル。
端から見れば、可愛さ全開の丸い物体が移動しているようにしか見えない。
「モフロウへのお土産も準備できたから……カナハのお友達ができたらいいな」
リアリュールはそっと木々の間を飛ぶペットのモフロウ「カナハ」の姿を見る。
エルティアもフォグやティトを連れているように、モフロウの群れに遭遇するためには、同じモフロウであるカナハにも大きな役割を担ってくれるはずだ。
「そうだな。そうなりゃ……」
「危ないです。よそ見をしては」
忠告するシルヴェイラ。
リアリュールに向き直る形でテルルは後方に視線を向けていたからだ。このままでは道に飛び出した木の根に躓いてしまう。
そして、シルヴェイラの懸念通りに――。
「あっ」
テルルの声。
次の瞬間、進行方向に体が投げ出される感覚。
だが、危機を察知したリアリュールはテルルの体を抱き留める。
「だ、大丈夫です?」
「いやー、悪ぃ悪ぃ。シルヴェイラに注意されてたのになぁ」
両腕で抱きかかえるように抱きしめるテルルの体。
触れた部分から伝わるテルルの体温。
そしてテルルの体を覆う体毛。見た目通りのふんわりとした感触がリアリュールに伝わる。チューダとは異なる体毛の質感に、リアリュールは心地よさを覚える。
(もふもふだー)
「おい。そろそろ下ろしてくんねぇか?」
テルルに言われて名残惜しそうに下ろすリアリュール。
「怪我がなくて、良かったです。私もさっき、注意しました、よね?」
桜憐りるか(ka3748)は、しゃがみ込んでテルルに再度注意を促す。
実はシルヴェイラよりも前にりるかからもテルルは注意を受けていた。
テルルの体の身を感じていたが、同時に周囲の木々に傷を付けないように気を配っていたのだ。
「そうだったな。久しぶりにハンターと一緒に俺っちが活躍するんだから、興奮してたみてぇだ」
「テルルさんが、頼りなので……傷付くような事はしないで下さい、ね」
りるかは強めに念を押した。
それには、大きな理由がある。
隠れたモフロウに接触できると信じているが、問題はその後だ。
モフロウとどのように親睦を深めるか。
相手は幻獣なのだ。まともに言葉が通じる訳もない。
そこで大幻獣のテルルが出番になる。テルルならばハンターと意志疎通もできれば、モフロウ達と話す事もできる。コミュニケーションの鍵を握っているのだ。
「みんな、どうやらあの子達が見つけたみたいよ」
エルティアの言葉でハンター達の間に緊張が走る。
エルティアは、ティトとフォグの様子が慌ただしく動き始めたのに気付いたのだ。
早速、エルティアはティトとフォグに合図を送ってこちらへと呼び寄せる。モフロウをハンター達の前へ呼び込む為だ。
――だが、ここで思わぬ事が発覚する。
「へぇ」
シルヴェイラの口から、その一言が漏れた。
モフロウであるならば、同じモフロウであるティトと同じサイズでなければおかしい。
だが、姿を見せたモフロウは違った。
ティトの数倍近い大きさになっているのだ。
人が騎乗するには小さすぎるが、それでも異常とも言えるサイズに成長したモフロウ。胸元のもふもふ感が更に向上しているように見える。
「何あれ!?」
「……! ありゃ、マテリアルの量が普通よりも多いな」
リアリュールの声に反応して、テルルは冷静に状況を分析する。
幻獣として体が大きくなっている事から、保有しているマテリアルの量が多くなっていると考えた。
それがどういう意味を持つかと言えば――。
「俺っちが昔見たモフロウはあれぐらいのサイズだったな。もしかして、この森のせいか」
「森のせい、ですか?」
りるかの疑問にテルルが答える。
「ああ。この森って確かイクタサが一晩で作った森なんだろ? つまり、普通の森じゃねぇ。モフロウにとって成長を促進させるような作用が働いちまったのかもしれねぇな。
だとすると……おい、エルティア。ティトとフォグを戻した方がいいぞ」
「え? どういう事?」
「イクタサが眠れない程、夜中に大合唱しているって事は一匹だけが大きい訳じゃねぇ。それからあのモフロウが昔のサイズだとすれば、俺っちらは奴ら全員に発見されたと見て間違いねぇ」
エルティアはテルルの言う通り、ティトとフォグを自分の元へ引き寄せた。
大きくなったモフロウはハンターの姿を一通り見つめた後、更に北の方へと予備去った。
その様子を見守ったシルヴェイラは、テルルへ話し掛ける。
「エアが興味を持ちそうな展開になってきたね」
「人のせいにしないで。本当はシーラが一番興味あるのに。それで、テルル。どういう意味なの?」
シルヴェイラの言葉をよそに、エルティアはしゃがみ込んでテルルと視線を合わせる。
テルルは思い出すように口を開く。
「霊闘士にファミリアズアイって能力があるのは知ってるだろ? ありゃあ、昔の霊闘士がモフロウの生態を真似て編み出した能力だ」
「え、ちょっと待って。ファミリアズアイって確か……」
リアリュールは自分の記憶を呼び起こす。
ファミリアズアイは仲間と視覚を共有する能力だ。つまり、あの大きなサイズのモフロウから50メートル以内に仲間がいれば、その仲間にも視覚が共有されていたという事だ。
「つまり、あたし達はもう……モフロウ達に発見されている、という事でしょうか?」
ペット「モフロウ」を自分の元へ戻しながら、りるかは上空を見上げる。
木々の上に何かがいる気配。
一瞬見える大きな二つの光。
耳を澄ませば、何かが羽ばたく音が聞こえてくる。
「ああ、ご丁寧に奴らは俺っちらを取り囲んだみてぇだぞ。何かあれば襲う気満々だ」
テルルも周囲を警戒する。
ついに出会った目的のモフロウ達を前に、緊張を隠せないハンター達であった。
●
姿を現したモフロウの群れ。
巨大化した彼らを前にハンター達が掲げた目標は、如何に彼らと親睦を深めるかだ。
「集まってくれたなら好都合ね。シーラ」
「分かってる」
エルティアの合図を受け、シルヴェイラは途中で狩っていたウサギを地面におく。エルティアも途中で発見した虫を虫籠から放つ。
「喜んでくれるといいんだけど」
リアリュールは持ち込んだ肉を提供。更にオカリナを奏でてモフロウ達の注目を集める。餌を用意しても周辺のモフロウがやって来なければ意味が無い。より多くのモフロウを集める必要があると考えたのだ。
「モフロウさん達と仲良くなれると嬉しいの、ですね」
りるかも干し肉をモフロウ達にプレゼントする。
元々テルルに依頼したのは帝国のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)である。今はこの場にいないヴェルナーの為にもりるかは全力を尽くすと決めていた。
「お客さんが大勢お越しのようだ」
シルヴェイラは、更に大勢のモフロウが集まってきた事を気配で察した。
本来は好戦的な幻獣だと聞いている。ならば、餌を求めるだけではなく縄張りを守る為に仲間を呼び集めても不思議ではない。少しでも多くのモフロウを集めて親睦を深めるならば、この状況は悪い事ではない。
「テルル、通訳をお願い。私達は森に住む者同士、仲良くしたいって」
「分かったぜ」
テルルはエルティアの言う通りに言葉を投げかける。
地面に置かれている食料が自分達への物だと理解するのに少々時間がかかるようだ。無理もない。降りた途端に捕縛される恐れを考えているなら、警戒は当然だ。
「テルルさん、私も通訳を、お願いします。
あの……初めまして。桜憐りるかと言い、ます。是非、お話をしたいと思ってやってきたの……」
「ああ、そのまま伝えりゃいいんだな」
テルルはりるかの自己紹介もモフロウ達へ伝えた。
こうしている間、リアリュールはオカリナで鳥の声に似せた音階を奏でる。夜中に合唱するようなモフロウ達だ。音楽が嫌いじゃないと考えているのだ。
そのせいだろうか。モフロウ達の中から徐々に餌に向かって降りてくる者が現れ始める。気付けば、餌に向かって大量のモフロウ達が群がり始める。
「これは……なかなか興味深い光景だ」
「大型化したモフロウの群れ。すべてが大きくなっているわね。それも丸々と、毛並みも柔らかそうね」
シルヴェイラの言葉にエルティアが続けた。
同じモフロウのティトと比較しても、大きさは断然違う。同時に自慢の毛並みは見るからに柔らかそうだ。もし、あの一団に飛び込む事ができれば全身でもふもふを楽しむ事ができるかもしれない。
「テルル、彼らに聞いてくれないか。何故、この森で夜中に歌うのか。何か理由があるならば力になりたい、とね」
「それでいいんだな? 分かった」
シルヴェイラはテルルを介して今回の一件について、単刀直入に聞く事にした。
夜中に大合唱する理由が分かれば、イクタサもゆっくり休めるはずだ。
だが、テルルから帰ってきた言葉は予想外のものであった。
「なんか、夜中に鳴くのは自分達の点呼と元気である事を示す為だって言ってるぜ。何か事件で鳴いている訳じゃねぇみてぇだ」
テルルの答えは、単純明快。
モフロウはあの合唱を日常的に行っているだけなのだ。ただ、あの巨体で声量も大きくなった事が原因だ。狩りの為にも行っているが、当のモフロウ達は仲良くなってもお願いを聞く様子は無さそうだ。。
「近く……南の方に精霊がお住まいで、夜中に鳴かれると眠れないと仰っているの。声の聞こえない所へ移動していただけませんか? と聞いて貰えない?」
リアリュールはテルルに向かって通訳を頼んだ。
小さく頷くテルル。
だが、リアリュールの問いに対して答えたのは、まったく別の存在であった。
「それは嫌だホー」
「え……だ、誰?」
背後から現れた存在に気付くリアリュール。
そこにいたのは一匹のモフロウ。しかし、他の個体よりも大きい上に言葉を喋っている。おそらくテルルと同じ大幻獣だろう。他の個体よりも丸々とした体はもふもふ好きには堪らない。
「小生はモフロウ博士だホー。ご馳走をくれたので挨拶するホー」
「モフロウ博士、だっけ? 私も気になるわ。どうして嫌なの?」
エルティアの問いに、モフロウ博士は何故か胸を張って大きな体を誇示している。
ハンターには負けないという意思表示なのだろうか。
「小生達は東の幻獣の森ってところにいたホー。でも、王様を名乗るキューソが毎日巣を覗きに来て寝られないから森を出てきたホー。
で、新しく見つけたいこの森は、とっても過ごしやすいホー」
どうやら、シンタチャシの環境がモフロウ達にとって最適な場所となっていたようだ。 その上、シンタチャシで過ごしている間に急成長を遂げてしまったようだ。更にモフロウ博士も、他の大幻獣と違って突然変異で大幻獣となったと見るべきだ。
だが、テルルにはモフロウ博士の言葉にある『穀潰しの顔』が浮かんでいた。
「王様を名乗るキューソって……まさか、チューダか! じゃあ、この状況は全部あいつのせいだってぇのか、あんの馬鹿っ!」
思わず叫ぶテルル。
夜型のモフロウ達の巣を毎朝訪ねて声をかけていた為、モフロウ達は幻獣の森を出てシンタチャシへ移り住んだようだ。
つまり、チューダの余計なちょっかいが、今回の事件を引き起こしたのだ。
テルルのその怒りはモフロウ博士にぶつけられる。
「いいから幻獣の森へ戻れよ! イクタサの奴が迷惑だって言ってるじゃねぇか!」
「嫌だホー。そんなにうるさいなら実力行使だホー」
モフロウ博士が合図をすると、傍らにいたモフロウがテルルの頭上へ飛来する。
そして、爪でテルルの体を掴むと一気に持ち上げた。
「うおっ! 何しやがる!」
「そのうるさいシマエナガをどっかに捨ててくるホー」
「てめぇ! 覚えてろよー」
(軽いとはいえ、テルルを持ち上げられるのか。あの足に捕まればハンターも軽く飛べるかもしれないな)
連れ去られるテルルを見守りながら、冷静を分析するシルヴェイラ。
もし、エアのティトのように共に戦う事ができれば新しい力になってくれるかもしれない。
だが、今はそれどころではない。このままではテルルはシンタチャシの外へ放り出されてしまう。
りるかは、モフロウ博士へ願い出る。
「も、モフロウ博士さん。危ないからやめさせて、下さい」
「嫌だホー。シマエナガみたいに怒ったり暴力振るうなら幻獣の森には帰らないホー。モフロウは好戦的でも馬鹿じゃないホー」
シンタチャシを北上するエルティア・ホープナー(ka0727)は、傍らにいるシルヴェイラ(ka0726)へ視線を送る。
手にはロングボウ「ディープ・オブジェクト」と仕留めた数匹のウサギ。
共に世界を生きる者として、糧になってくれたものへの感謝を忘れずに臨んだ狩りの成果だ。
「エアにしては良い気遣いだね」
視線を合わせるようにエルティアへ横を向くシルヴェイラ。
エルティアの上空にはペットであるフクロウ「フォグ」とモフロウ「ティト」が上空を旋回している。
彼らがこの時間に狩りを楽しんでいる訳ではない。
実はシンタチャシの北に住み着いたモフロウの一団に用事があるのだ。
「まったく、なんだってこんな所に住み着いたんだ? 何もここじゃなくてもいいだろ。幻獣の森とかよ」
ローラースケートの要領でローラジェットを履いて移動するのは、大幻獣のテルル(kz0218)。
精霊のイクタサ(kz0246)から依頼されて、夜中に鳴き続けるモフロウを調査しに来たという訳だ。
何故、彼らはここにいるのか。
何故、彼らは夜に鳴いているのか。
その謎を究明しようとしている――。
「しっかし、途中で狩りをするってぇのは良い案だったな。ここで餌をやって敵意がないのをアピールするってぇのはナイスなアイディアだ」
「褒めてくれてありがとう。でも、油断は禁物よ。彼らにとって私達は来訪者。下手な事をすれば敵意を見せてくるわ」
シルヴェイラが手にしていたウサギは、隠れているモフロウへの手土産だ。
精霊の住む森のシンタチャシは辺境で一日にして現出した森だ。イクタサの力を使えば、ある種の超常現象を起こす事も可能だろう。だが、当のイクタサは特に力を使う気配もない。
この為、周囲から動物達がやってきて普通の森のように生活を続けている。
「かわいらしい……いえ。テルル様、格好良いです」
ローラージェットの後を追うように進むのはリアリュール(ka2003)だ。
灯火の水晶球で周囲を照らしながら足下を警戒するリアリュール。地面には所々木の根が顔を覗かせている。気を付けていなければローラージェットが木の根に引っかかって倒れてしまうかもしれない。
「カッコイイ? そうだろ。俺っち自慢のローラジェットだ。いざとなりゃ、魔導の力で自動的に移動できるんだぜ」
ローラジェットを褒められたと勘違いするテルル。
端から見れば、可愛さ全開の丸い物体が移動しているようにしか見えない。
「モフロウへのお土産も準備できたから……カナハのお友達ができたらいいな」
リアリュールはそっと木々の間を飛ぶペットのモフロウ「カナハ」の姿を見る。
エルティアもフォグやティトを連れているように、モフロウの群れに遭遇するためには、同じモフロウであるカナハにも大きな役割を担ってくれるはずだ。
「そうだな。そうなりゃ……」
「危ないです。よそ見をしては」
忠告するシルヴェイラ。
リアリュールに向き直る形でテルルは後方に視線を向けていたからだ。このままでは道に飛び出した木の根に躓いてしまう。
そして、シルヴェイラの懸念通りに――。
「あっ」
テルルの声。
次の瞬間、進行方向に体が投げ出される感覚。
だが、危機を察知したリアリュールはテルルの体を抱き留める。
「だ、大丈夫です?」
「いやー、悪ぃ悪ぃ。シルヴェイラに注意されてたのになぁ」
両腕で抱きかかえるように抱きしめるテルルの体。
触れた部分から伝わるテルルの体温。
そしてテルルの体を覆う体毛。見た目通りのふんわりとした感触がリアリュールに伝わる。チューダとは異なる体毛の質感に、リアリュールは心地よさを覚える。
(もふもふだー)
「おい。そろそろ下ろしてくんねぇか?」
テルルに言われて名残惜しそうに下ろすリアリュール。
「怪我がなくて、良かったです。私もさっき、注意しました、よね?」
桜憐りるか(ka3748)は、しゃがみ込んでテルルに再度注意を促す。
実はシルヴェイラよりも前にりるかからもテルルは注意を受けていた。
テルルの体の身を感じていたが、同時に周囲の木々に傷を付けないように気を配っていたのだ。
「そうだったな。久しぶりにハンターと一緒に俺っちが活躍するんだから、興奮してたみてぇだ」
「テルルさんが、頼りなので……傷付くような事はしないで下さい、ね」
りるかは強めに念を押した。
それには、大きな理由がある。
隠れたモフロウに接触できると信じているが、問題はその後だ。
モフロウとどのように親睦を深めるか。
相手は幻獣なのだ。まともに言葉が通じる訳もない。
そこで大幻獣のテルルが出番になる。テルルならばハンターと意志疎通もできれば、モフロウ達と話す事もできる。コミュニケーションの鍵を握っているのだ。
「みんな、どうやらあの子達が見つけたみたいよ」
エルティアの言葉でハンター達の間に緊張が走る。
エルティアは、ティトとフォグの様子が慌ただしく動き始めたのに気付いたのだ。
早速、エルティアはティトとフォグに合図を送ってこちらへと呼び寄せる。モフロウをハンター達の前へ呼び込む為だ。
――だが、ここで思わぬ事が発覚する。
「へぇ」
シルヴェイラの口から、その一言が漏れた。
モフロウであるならば、同じモフロウであるティトと同じサイズでなければおかしい。
だが、姿を見せたモフロウは違った。
ティトの数倍近い大きさになっているのだ。
人が騎乗するには小さすぎるが、それでも異常とも言えるサイズに成長したモフロウ。胸元のもふもふ感が更に向上しているように見える。
「何あれ!?」
「……! ありゃ、マテリアルの量が普通よりも多いな」
リアリュールの声に反応して、テルルは冷静に状況を分析する。
幻獣として体が大きくなっている事から、保有しているマテリアルの量が多くなっていると考えた。
それがどういう意味を持つかと言えば――。
「俺っちが昔見たモフロウはあれぐらいのサイズだったな。もしかして、この森のせいか」
「森のせい、ですか?」
りるかの疑問にテルルが答える。
「ああ。この森って確かイクタサが一晩で作った森なんだろ? つまり、普通の森じゃねぇ。モフロウにとって成長を促進させるような作用が働いちまったのかもしれねぇな。
だとすると……おい、エルティア。ティトとフォグを戻した方がいいぞ」
「え? どういう事?」
「イクタサが眠れない程、夜中に大合唱しているって事は一匹だけが大きい訳じゃねぇ。それからあのモフロウが昔のサイズだとすれば、俺っちらは奴ら全員に発見されたと見て間違いねぇ」
エルティアはテルルの言う通り、ティトとフォグを自分の元へ引き寄せた。
大きくなったモフロウはハンターの姿を一通り見つめた後、更に北の方へと予備去った。
その様子を見守ったシルヴェイラは、テルルへ話し掛ける。
「エアが興味を持ちそうな展開になってきたね」
「人のせいにしないで。本当はシーラが一番興味あるのに。それで、テルル。どういう意味なの?」
シルヴェイラの言葉をよそに、エルティアはしゃがみ込んでテルルと視線を合わせる。
テルルは思い出すように口を開く。
「霊闘士にファミリアズアイって能力があるのは知ってるだろ? ありゃあ、昔の霊闘士がモフロウの生態を真似て編み出した能力だ」
「え、ちょっと待って。ファミリアズアイって確か……」
リアリュールは自分の記憶を呼び起こす。
ファミリアズアイは仲間と視覚を共有する能力だ。つまり、あの大きなサイズのモフロウから50メートル以内に仲間がいれば、その仲間にも視覚が共有されていたという事だ。
「つまり、あたし達はもう……モフロウ達に発見されている、という事でしょうか?」
ペット「モフロウ」を自分の元へ戻しながら、りるかは上空を見上げる。
木々の上に何かがいる気配。
一瞬見える大きな二つの光。
耳を澄ませば、何かが羽ばたく音が聞こえてくる。
「ああ、ご丁寧に奴らは俺っちらを取り囲んだみてぇだぞ。何かあれば襲う気満々だ」
テルルも周囲を警戒する。
ついに出会った目的のモフロウ達を前に、緊張を隠せないハンター達であった。
●
姿を現したモフロウの群れ。
巨大化した彼らを前にハンター達が掲げた目標は、如何に彼らと親睦を深めるかだ。
「集まってくれたなら好都合ね。シーラ」
「分かってる」
エルティアの合図を受け、シルヴェイラは途中で狩っていたウサギを地面におく。エルティアも途中で発見した虫を虫籠から放つ。
「喜んでくれるといいんだけど」
リアリュールは持ち込んだ肉を提供。更にオカリナを奏でてモフロウ達の注目を集める。餌を用意しても周辺のモフロウがやって来なければ意味が無い。より多くのモフロウを集める必要があると考えたのだ。
「モフロウさん達と仲良くなれると嬉しいの、ですね」
りるかも干し肉をモフロウ達にプレゼントする。
元々テルルに依頼したのは帝国のヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)である。今はこの場にいないヴェルナーの為にもりるかは全力を尽くすと決めていた。
「お客さんが大勢お越しのようだ」
シルヴェイラは、更に大勢のモフロウが集まってきた事を気配で察した。
本来は好戦的な幻獣だと聞いている。ならば、餌を求めるだけではなく縄張りを守る為に仲間を呼び集めても不思議ではない。少しでも多くのモフロウを集めて親睦を深めるならば、この状況は悪い事ではない。
「テルル、通訳をお願い。私達は森に住む者同士、仲良くしたいって」
「分かったぜ」
テルルはエルティアの言う通りに言葉を投げかける。
地面に置かれている食料が自分達への物だと理解するのに少々時間がかかるようだ。無理もない。降りた途端に捕縛される恐れを考えているなら、警戒は当然だ。
「テルルさん、私も通訳を、お願いします。
あの……初めまして。桜憐りるかと言い、ます。是非、お話をしたいと思ってやってきたの……」
「ああ、そのまま伝えりゃいいんだな」
テルルはりるかの自己紹介もモフロウ達へ伝えた。
こうしている間、リアリュールはオカリナで鳥の声に似せた音階を奏でる。夜中に合唱するようなモフロウ達だ。音楽が嫌いじゃないと考えているのだ。
そのせいだろうか。モフロウ達の中から徐々に餌に向かって降りてくる者が現れ始める。気付けば、餌に向かって大量のモフロウ達が群がり始める。
「これは……なかなか興味深い光景だ」
「大型化したモフロウの群れ。すべてが大きくなっているわね。それも丸々と、毛並みも柔らかそうね」
シルヴェイラの言葉にエルティアが続けた。
同じモフロウのティトと比較しても、大きさは断然違う。同時に自慢の毛並みは見るからに柔らかそうだ。もし、あの一団に飛び込む事ができれば全身でもふもふを楽しむ事ができるかもしれない。
「テルル、彼らに聞いてくれないか。何故、この森で夜中に歌うのか。何か理由があるならば力になりたい、とね」
「それでいいんだな? 分かった」
シルヴェイラはテルルを介して今回の一件について、単刀直入に聞く事にした。
夜中に大合唱する理由が分かれば、イクタサもゆっくり休めるはずだ。
だが、テルルから帰ってきた言葉は予想外のものであった。
「なんか、夜中に鳴くのは自分達の点呼と元気である事を示す為だって言ってるぜ。何か事件で鳴いている訳じゃねぇみてぇだ」
テルルの答えは、単純明快。
モフロウはあの合唱を日常的に行っているだけなのだ。ただ、あの巨体で声量も大きくなった事が原因だ。狩りの為にも行っているが、当のモフロウ達は仲良くなってもお願いを聞く様子は無さそうだ。。
「近く……南の方に精霊がお住まいで、夜中に鳴かれると眠れないと仰っているの。声の聞こえない所へ移動していただけませんか? と聞いて貰えない?」
リアリュールはテルルに向かって通訳を頼んだ。
小さく頷くテルル。
だが、リアリュールの問いに対して答えたのは、まったく別の存在であった。
「それは嫌だホー」
「え……だ、誰?」
背後から現れた存在に気付くリアリュール。
そこにいたのは一匹のモフロウ。しかし、他の個体よりも大きい上に言葉を喋っている。おそらくテルルと同じ大幻獣だろう。他の個体よりも丸々とした体はもふもふ好きには堪らない。
「小生はモフロウ博士だホー。ご馳走をくれたので挨拶するホー」
「モフロウ博士、だっけ? 私も気になるわ。どうして嫌なの?」
エルティアの問いに、モフロウ博士は何故か胸を張って大きな体を誇示している。
ハンターには負けないという意思表示なのだろうか。
「小生達は東の幻獣の森ってところにいたホー。でも、王様を名乗るキューソが毎日巣を覗きに来て寝られないから森を出てきたホー。
で、新しく見つけたいこの森は、とっても過ごしやすいホー」
どうやら、シンタチャシの環境がモフロウ達にとって最適な場所となっていたようだ。 その上、シンタチャシで過ごしている間に急成長を遂げてしまったようだ。更にモフロウ博士も、他の大幻獣と違って突然変異で大幻獣となったと見るべきだ。
だが、テルルにはモフロウ博士の言葉にある『穀潰しの顔』が浮かんでいた。
「王様を名乗るキューソって……まさか、チューダか! じゃあ、この状況は全部あいつのせいだってぇのか、あんの馬鹿っ!」
思わず叫ぶテルル。
夜型のモフロウ達の巣を毎朝訪ねて声をかけていた為、モフロウ達は幻獣の森を出てシンタチャシへ移り住んだようだ。
つまり、チューダの余計なちょっかいが、今回の事件を引き起こしたのだ。
テルルのその怒りはモフロウ博士にぶつけられる。
「いいから幻獣の森へ戻れよ! イクタサの奴が迷惑だって言ってるじゃねぇか!」
「嫌だホー。そんなにうるさいなら実力行使だホー」
モフロウ博士が合図をすると、傍らにいたモフロウがテルルの頭上へ飛来する。
そして、爪でテルルの体を掴むと一気に持ち上げた。
「うおっ! 何しやがる!」
「そのうるさいシマエナガをどっかに捨ててくるホー」
「てめぇ! 覚えてろよー」
(軽いとはいえ、テルルを持ち上げられるのか。あの足に捕まればハンターも軽く飛べるかもしれないな)
連れ去られるテルルを見守りながら、冷静を分析するシルヴェイラ。
もし、エアのティトのように共に戦う事ができれば新しい力になってくれるかもしれない。
だが、今はそれどころではない。このままではテルルはシンタチャシの外へ放り出されてしまう。
りるかは、モフロウ博士へ願い出る。
「も、モフロウ博士さん。危ないからやめさせて、下さい」
「嫌だホー。シマエナガみたいに怒ったり暴力振るうなら幻獣の森には帰らないホー。モフロウは好戦的でも馬鹿じゃないホー」
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大精霊の安眠、モフロウの生態 エルティア・ホープナー(ka0727) エルフ|21才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/11/18 00:19:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/17 22:30:46 |