ゲスト
(ka0000)
【郷祭】村長祭ダービー!'17
マスター:cr
オープニング
●
今年もこの季節がやって来た。
深まる秋の季節の中、それでも青さを保っている芝生が一面に広がっている。そこにリズミカルに、重く、深い音が響く。
美しい毛並みが秋晴れの太陽に照らされつやつやと輝く。その自然が産んだ流線型の肉体は速く走るために生まれた機能美というものを我々に教えてくれる。
そう、今日は村長祭で行われる競馬大会の日だった。
●
「あ、モアさーん!」
人混みの中頭一つ飛び出しひと際目を引く女がそう大声を上げた。彼女の名はイバラキ(kz0159)、鬼の女性である。
「ああ、イバラキさん。あなたも村長祭に来られたのですか?」
声を掛けられたのはモア・プリマクラッセ(kz0066)、ハンターオフィスの受付嬢であり、イバラキの顔見知りであった。
「まあな。つーかモアさんも遊びに来たのかい?」
「いえ、私は仕事で来たのですが」
「……モアさん休んでるのかよ」
思わず口をあんぐりと開けてしまうイバラキにモアはさも当然とばかりにこう答えた。
「ええ、休んでますよ。休みのときはこうやって仕事しています」
●
「っと、それはさておきこっちでも競馬とかやるんだな」
「ええ、というか村長祭の競馬大会はかなり有名でして、クリムゾンウェストでも最も大きいものの一つですよ」
そしてモアは一つ提案をした。
「ところでイバラキさんも競馬大会に参加するつもりは無いのですか?」
「いやぁ、アタシは人間とかに比べたら大きいからな。そういう人達と勝負させたら馬がかわいそうだろ……まあ、興味あるのは確かだから考えておくよ」
そして彼女が競馬大会への参加を検討する中、他の参加者たちも続々と集まってきていた。果たしてこの競馬大会、優勝の栄冠に輝くのはどの人馬であろうか。
今年もこの季節がやって来た。
深まる秋の季節の中、それでも青さを保っている芝生が一面に広がっている。そこにリズミカルに、重く、深い音が響く。
美しい毛並みが秋晴れの太陽に照らされつやつやと輝く。その自然が産んだ流線型の肉体は速く走るために生まれた機能美というものを我々に教えてくれる。
そう、今日は村長祭で行われる競馬大会の日だった。
●
「あ、モアさーん!」
人混みの中頭一つ飛び出しひと際目を引く女がそう大声を上げた。彼女の名はイバラキ(kz0159)、鬼の女性である。
「ああ、イバラキさん。あなたも村長祭に来られたのですか?」
声を掛けられたのはモア・プリマクラッセ(kz0066)、ハンターオフィスの受付嬢であり、イバラキの顔見知りであった。
「まあな。つーかモアさんも遊びに来たのかい?」
「いえ、私は仕事で来たのですが」
「……モアさん休んでるのかよ」
思わず口をあんぐりと開けてしまうイバラキにモアはさも当然とばかりにこう答えた。
「ええ、休んでますよ。休みのときはこうやって仕事しています」
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「っと、それはさておきこっちでも競馬とかやるんだな」
「ええ、というか村長祭の競馬大会はかなり有名でして、クリムゾンウェストでも最も大きいものの一つですよ」
そしてモアは一つ提案をした。
「ところでイバラキさんも競馬大会に参加するつもりは無いのですか?」
「いやぁ、アタシは人間とかに比べたら大きいからな。そういう人達と勝負させたら馬がかわいそうだろ……まあ、興味あるのは確かだから考えておくよ」
そして彼女が競馬大会への参加を検討する中、他の参加者たちも続々と集まってきていた。果たしてこの競馬大会、優勝の栄冠に輝くのはどの人馬であろうか。
リプレイ本文
●
青々とした秋晴れの空に朝日が煌めく。太陽の輝きが濃い緑色の草原の絨毯を照らし出す。簡単に作られた埒とゴール板だけが競馬場であることを示すその場所に、既にこの時間から人々は集まっていた。
「規模が大きいですね」
Gacrux(ka2726)はその光景を見て目を細めた。彼が居るのは埒の内側、つまりコース上である。足元に視線を落としゆっくりと歩きながら馬場の状態をチェックしていた。そして頭の中でレース運びをシミュレーションしていた。ひとしきりコースを見終えた彼は懐から仮面を取り出し、その場を後にした。
それと入れ替わるように蹄鉄が芝を踏む音が聞こえ始めていた。参加者達が次々とやって来て、レースの手続きを始めている。第一レースはもうすぐスタート。さあ、競馬を始めよう。
●第1レース
1枠:黒の夢(ka0187)&エクレア
2枠:瀬織 怜皇(ka0684)&セフィリア
3枠:星輝 Amhran(ka0724)
4枠:レイオス・アクアウォーカー(ka1990)&セカンド
5枠:ユリアン(ka1664)&アルエット
Uisca Amhran(ka0754)は困っていた。運命の悪戯か、恋人の瀬織と姉のキララが同じレースに出走することになったのだから。どちらも応援しているが、決勝レースに行けるのは一人だけ。
「まぁ、頑張ってみましょう」
そんな彼女の困惑をよそに瀬織は落ち着いたものだ。最も心を乱されては、それが馬にも伝わる。その点では平常心を保っている彼の考えは正しかった。
「うなうな、お散歩のつもりで気楽に行こっかー」
そして同じ様に落ち着いている……というかいつもと変わらないのが黒の夢。愛馬、エクレア号のその美しい黒毛の体を丹念にブラッシングしながら、彼女の頭の中は食べ物のことと
「参加賞はなんだろねーエクレアー」
とそんなことばかり考えていた。
一方そうやってのんびりした雰囲気の者も居れば、対象的に勝利目指して入れ込んでいる者も居る。
「あのレースからもう二年経つのか……早いな」
最終コーナー付近で入念に返し馬をしているのはユリアン。彼の愛馬、アルエットはその前のレースから現役を続けている。かつてこの競馬大会を制したアルエットの、競走馬のキャリアとしては古参になるが文字通り遅れを取るつもりは無い。最終コーナーでの動きを念入りにシミュレーションするその姿は追込で行くことを宣言しているようなものだが、しかしそれすら三味線かもしれない。駆け引きは既に始まっていた。
「3年前のダービーじゃ予選落ちだったからな。今年は勝ちに行くぞセカンド」
一方レイオスは前回とは違う相棒と共にレースに挑む。そんな彼の視線はキララに向かっていた。
「いつも乗っておるこの子じゃて、ワシの意図もよう汲んでくれる事じゃろう。逆に、ワシもこの子の限界と潜在能力をよう知っておる……人馬一体、勝利のキモは相棒との対話じゃ!」
何故ならキララも3年前の競馬大会で優勝したダービージョッキーの称号を持つ者だったからだ。当然マークも激しくなる。いきなり優勝経験者同士の潰し合い、ハードなレースになることは間違いない。が、彼女はそれを意に介さない。レース前のインタビューにも堂々と受け答えし、そしてゲートインした。
各馬が収まり程なくレースの開始を告げる音楽が鳴る。そしてゲートが開けば馬達は綺麗に並んで飛び出していく。出遅れは居ない。
そんな中まず先頭に立った……というか立たされたのはキララだった。他の馬達は誰が前に行くのか、牽制をしあい結果彼女が押し出されることになった。
ならばと探るように走りながら、距離を開けていくキララ。それを追いかける三頭。セカンド号は最後方からの競馬を進めていく。
「季節はもうクリスマスになるのなー」
もっとも黒の夢は別のことを考えていたのだが、その彼女の服装はなんというかセクシーすぎる。残りの三人は目のやり場に困っている。目を逸らさざるを得ないレイオス
すると彼からはキララの小柄な体が少しずつこちらに近づいて来るのが見えた。先頭に立って風をまともに受けながら走ればスタミナが奪われる。脚が鈍り始めたのだろう。自然と手綱を握る手に力が篭もる中、仕掛けるタイミングを伺う。
そして馬群は第三コーナーを回って最終コーナーへ。その時だった。
「前回チャンプのワシを見事負かして見るが良い!!」
キララはそう一言言い残すと鞭を入れる。すると再び馬はスピードを上げ直線へと飛び込んでいった。
バテた様に見えたのは演技だった。軽い体重で息を入れさせ、末脚を使う。それが作戦だった。
他の馬たちも一斉に鞭を入れる。お腹が空いた黒の夢も早くご飯にありつくためにスピードを上げる。
そして最後方に陣取っていたレイオスもここで勝負をかけた。
「ここから逆転勝利といこうか。GO! セカンド!」
セカンド号はそれに答えぐんぐん加速していく……が、それも僅かな距離だった。前を行く三頭が人馬を阻む壁となっていた。仕方なく馬体を大外へ回すが、時既に遅し。キララは既にゴールを駆け抜けていた。
●第2レース
1枠:南護 炎(ka6651)&ステイプラチナ
2枠:ルベーノ・バルバライン(ka6752)
3枠:イスカ&アレイオン
4枠:ミオレスカ(ka3496)&ブラウンダイヤ
5枠:夢路 まよい(ka1328)&ドリームフォロワー
南護は分厚い本を貪るように読んでいた。アークスタッド軍馬目録。この本には様々な軍馬の情報が登録されている。それだけでない、村長祭を始めとした競馬の情報もかき集め、他の馬達がどんな馬でどんなレースを展開するかをシミュレートしていた。
彼は紙面に目を落とし、データを頭に叩き込んでから目を上げる。そこに居たのは彼が最もマークする対象、皇帝杯競馬大会優勝者、ミオであった。
そんな彼女が今日騎乗するのは優勝馬であるハニーマーブル号ではなく、ブラウンダイヤ号。鹿毛の毛並みにまるで宝石の様に白い斑点が煌めいている。
その煌めく斑点を南護が目に焼き付けて居た頃、別の参加者が近づいてきた。
「私達は大逃げで行くよ!」
と大胆不敵にも宣言したのはまよいだった。大逃げを打ってこられれば自然ペースが上がる。それに下手に付いていかず抑える必要がある。新しい情報が入り南護の中でシミュレーションがさらに進む。
「ふはははは、俺とお前が頂点に立つ日がこんなに早くやってこようとはな……我らが人馬一体ぶり、皆に見せつけてやらねばな」
そんな時、さらに大きな声で馬場に入場してきたのはルベーノだった。馬の負担を減らそうと鞍を付けず、裸馬の愛馬を丁寧に撫でている。
「姉さま、決勝で待っていてください……アレイオンと一緒にがんばるのです!」
そして最後に馬場に入ってきたのは姉と分かれたばかりのイスカだった。今回はリアルブルーで作られているライダースーツに身を包み、空気抵抗を最大限に減らして準備は万端。あとはスタートの時を待つばかり。
そんな各馬をミオは静かに見つめていた。彼女はこの時何を考えていたのか。
時はあっという間に過ぎレースの時が来る。各馬がゲートに収まりフラッグが振られ、そしてレースが始まった。
スタートと同時に宣言通りぐんぐんと加速していくのはドリームフォロワー。一気にその差を広げようとするが、鞍上のまよいにも予想外の出来事がこの時起こった。
(この距離なら、前寄りの位置取りでも脚も持つでしょう)
その身を馬体に隠すように屈めながらもその身に煌めく白い斑点。ブラウンダイヤが後ろに付いて来ていた。
一方ミオより大きな体を馬体と平行になるように傾け風を切って奔っていたのはルベーノ。彼の愛馬も二頭に付いていき加速していく。脚は回転するように素早く動き、一瞬空中に浮かぶかのようにその身を躍らせると同時にトップスピードになった。
「行けー! 全力でダッシュだぜ!」
と観客席で友人の大伴 鈴太郎(ka6016)も大騒ぎしている。
「行くぜ! ステイプラチナ!!」
そしてブラウンダイヤの真後ろにピタリとくっついているのはステイプラチナ。じっとこの位置をキープして、ミオの思い通りの展開にならないようじっとその時を狙っていた。
一方イスカは馬群とは離れ、最後方でレースを進める。エルフは自然と共に生きる種族。その中でも巫女は自然に息づく動物達との交信能力が高い。彼女にはアレイオンが何を感じているかが手に取るように分かった。一人置いていかれるように思えても不安はない。これでいい。
「私達は逃げてるんじゃなくて、追いかけてるの……優勝って夢をね!」
馬群がレース場を周り第三コーナーへ。変わらず先頭に立っていたまよいはこのままゴールしようと手綱をしごく。ドリームフォロワーはそれに答え最終コーナーを飛び出し直線へ。ここで後ろについていた二頭が仕掛けた。ルベーノとブラウンダイヤが先頭へ出ようとし、三頭による競り合いが始まる。
だが無理にドリームフォロワーを追いかけていたルベーノはここでスタミナが切れたのか、少しずつ後ろに下がっていく。一方このまま一気に抜き去ろうとするブラウンダイヤ。そうはさせじとドリームフォロワー。
その時二頭の間を突き破るように一気に飛び出してくる馬があった。ステイプラチナだった。南護はゴール目前、この瞬間まで耐え、たった一度のチャンスに勝負をかけた。見事マークしたミオを抜き、ゴールへと飛び込む。
しかしその瞬間、もう一頭が大外から一気に駆け抜けてきた。その走りはまるで竜の如し。アレイオンだった。
最後の最後、ゴール板を踏むその瞬間に頭一つ抜け出しゴールに飛び込む。勝ったのはイスカだった。
一足先に決勝へ駒を進めていたキララが手を振る。それに答えるイスカ。
「お前の全力を出し切ったんだ。悔いはない……」
一方惜しくも敗れた南護は唇を噛みつつステイプラチナを撫でてやっていた。彼の愛馬は間違いなく全力を出してくれていた。その事は確かに感じていた。
一方そのまま馬場をゆっくりと走らせクールダウンしながら厩舎に戻ってきたルベーノは、早速飼葉をやりつつ馬体をマッサージする。どこもおかしなところは無い。
「今回は所詮お遊び。戦場でお前に勝る馬などいないことは、誰よりも俺が良く知っている……これからもよろしく頼むぞ」
無事レースを終えてくれた愛馬に感謝しつつ、丁寧に毛並みをブラッシングしていた。
●第3レース
1枠:マルカ・アニチキン(ka2542)&クトュルフの呼び声
2枠:岩井崎 旭(ka0234)&シーザー
3枠:宵待 サクラ(ka5561)&二十次郎
4枠:Tiefsee
5枠:イバラキ
「お祭りだ! レースだ! 突撃だ!」
岩井崎は実にテンションが高かった。村長祭、多くの人が集まりその賑わいは最高潮となったらいやが上にも心は踊る。しかもただ見て楽しむだけでなく参加できる競馬大会があるとなったらもうこれは参加せざるを得ない。
「よっしゃ、全力で楽しもうぜ、シーザー!!」
というわけで愛馬と共にエントリーする岩井崎。更に勝利の祝福用のつもりなのか、気の早いことに今のうちに人参を大量に買い込んでいる。レース後にはこれをおやつと洒落込もうと考えているようだ。
「へぇぇ、お祭りで草競馬なんかやるんだー。面白そうじゃん。二十次郎、参加してみようよ」
そんな彼のはしゃぎ方に誘われたのか、他の参加者たちもエントリー。サクラもそんな一人だ。
「お祭りだからなー。食べ歩き無料券とか賞品になってるとうれしいんだけどなー」
エントリー手続きを済ませながら賞品を確認してみるが、残念ながら名誉を称えるカップが渡されるだけのようだ。少し残念だが、ならばと
「勝ったら店売りの美味しそうな飼葉を買ってきて二十次郎に進呈するからさ。頑張ろうね、二十次郎?」
と彼女は愛馬にそうささやきかけた。
「さて、アタシも参加するか。まあいい成績は残せないだろうけどな」
とイバラキも手続きを済ませている。
彼女が手続きを終えた頃、続いて来たのは仮面で顔を隠した謎の人物だった。彼は静かに名前欄に「Tiefsee」と署名すると厩舎に向かう。その正体は分からないが、その堂々とした態度からかなりの騎乗技術を持っていると伺えた。
一方そんな彼に対して暗く引いた雰囲気を漂わせていたのがマルカ。彼女は相棒のパルムと何かひそひそ話をしていた。作戦会議といったところなのだろうが、そのおどおどした態度からはとてもそうは見えなかった。
そんな間に各人の準備が終わり、全員がゲートに収まる。
「エクウスが多いと思ってたけど、このレースはゴースロンが多いみたいだね。無理せず頑張れ、二十次郎」
そんな風にサクラが話しかけたところでゲートが開いた。
それと同時に並んで飛び出していったのはシーザーと二十次郎。シーザーはその大きな体で蹄の音を高らかに鳴らし、一気に走り出していく。だが二十次郎もそれに恐れること無く先頭争いを繰り広げる。
「そんなことでビビるわけ無いぜ!」
その後方にはイバラキが付きレースを進めていく。
一方Tiefseeはそんな三頭に引き釣られる事無く、先頭集団をいつでも捉えられる位置をキープしてレースを展開していた。それだけでなく、芝のコンディションが全て頭に入っているのだろうか、内ラチに沿いながらも芝の状態が悪いところは巧みに避けてスタミナの無駄な消費を抑えつつ進んでいく。その騎乗技術は見る者が見れば舌を巻くようなものだった。
対してクトュルフの呼び声は騎手のおどおどした態度が乗り移ってしまったのか、出遅れたように見えて最後方からの競馬。しかし、鞍上のマルカは決して弱腰になどなっていなかった。いや、むしろ闘志を表に出し勝負に挑んでいた。頭にしがみつくパルムと共にレースの状況をその眼で確かに判断し、そんな彼女に全幅の信頼を寄せたのか愛馬は自然体の走りでレースを進めていく。
そのままレースは進み第三コーナーから第四コーナーへ。ここでイバラキが仕掛ける。鞭を振り回し先行く二頭を抜き去ろうとする。だが。
「おいおい、嘘だろ……」
そんな彼女の思いに応えられず、馬はズルズルと後ろへ下がっていった。騎手が重すぎたのか、鞭が強すぎたのか、スタミナ切れを起こしていた。
その理由はどちらでもなかった。後ろからじりじりとにじり寄るクトュルフの呼び声号が与える無言のプレッシャーに馬達のスタミナが削られていた。
(こうなりましたか……ですが想定の範囲内、そろそろ勝負ですね)
その後ろからの威圧感に気付かないTiefseeでは無かったが、その前にレースを終わらせられる事も分かっていた。ここで一発鞭を入れればその青鹿毛の馬体に力がこもり一気に加速、そのまま前へと出ていくと直線に飛び出したところで先頭に立っていた。
あとはそのままゴールに行けばと直線をひた走るが、そこで観客からの歓声が一段と大きくなった。
そう、それはクトュルフの呼び声号だった、一気に他の三頭をごぼう抜きにし先頭を視界に収める。
こうなると二頭による直線勝負のマッチレース、叩き合いになる。そんな中でもまるで視界が後ろにあるかのように、Tiefseeは馬体をクトュルフの呼び声号の方に寄せそれ以上の先行を妨害しようとする。
だが、馬体を近づけた瞬間マルカが、いや、彼女の相棒のパルムが馬体を抓る。これを鞭代わりにしするりと抜け出すように鼻一つ前に出たところが、ちょうどゴール板だった。
勝利が決まればレース中の様子が嘘のようにまたおどおどした雰囲気に戻るマルカ。一方あと少しのところで勝利を手から逃してしまったTiefseeだったが、レースが決まったと思ったときにはその姿は消えていた。
一方岩井崎は疲れを労い愛馬にたっぷりの人参をプレゼント、それを美味しそうに食べるシーザー。
それを見てサクラも、この会場で美味しいものをたっぷり買って二十次郎のみならず、ペットのみんなに食べさせてあげようと思うのだった。
●第4レース
1枠:エアルドフリス(ka1856)&ファラ
2枠:イルム=ローレ・エーレ(ka5113)&シュテルン
3枠:セイ(ka6982)
4枠:大伴 鈴太郎
5枠:モア・プリマクラッセ
実はこう見えて動物大好き、かわいいもの大好きの鈴太郎だが、彼女は馬を所有していなかった。しかしそんな彼女でも馬を借り受けることが出来る。そもそも鉄の馬、すなわちバイクならいくらでも乗ったことが有る彼女だが馬は初体験だ。早速手続きに行くと受付嬢のモアが待っていた。
「それでは彼女に騎乗してください。『貴婦人』を意味する名前らしく、落ち着いた性格で初めて馬に乗る鈴太郎さんには向いているかと」
というわけで早速跨ってみる鈴太郎。
「うわー! 高えなぁ! やっぱ単車とは見える風景が全然違えよ!」
と驚きながらもその顔からは自然と笑みがこぼれる。すぐに慣れる鈴太郎だが、それは彼女の動物好きの気持ちが伝わったのだろうか。
軽く一周りして走らせ方に慣れた彼女がモアの元に戻った頃、とんでもない勢いでモアに食って掛かっている者が居た。
「なにぃ、この競争、チャージもトランプルも出来ないのか!?」
「これは戦車競走ではありません」
「マジか―!? 戦馬のメインはチャージとトランプルだろう!?」
「おやめください。あくまでこの競馬大会は各馬の能力を計るのが目的で、そんな馬が傷つく様なレースではありません」
「おぉう、愛しのデストリアとチャージしまくろうと思って来たのになぁ……」
とすげなくモアにあしらわれがっくりと肩を落としていたのはセイだった。
そんな大騒ぎの最中、他の参加者達も馬場に集まってくる。
「オニヴァ! 待ちに待った村長祭ダービーだ!」
と現れたのはイルムだ。愛馬シュテルンの白い馬体に跨がればまさに白馬の王子様と言った面持ち、まあイルムは女性なのだが。
「2年ぶりだがこの催しはとても楽しい。また参加できて嬉しいよ」
一方対象的に真っ黒な馬体のファラ号と共に現れたのはエアルド。
「見事な青毛ですね。彼と共にこの競馬を存分にお楽しみください」
「ああ。だが勿論入賞は目指すとも、それが礼儀だ」
とモアと会話を交わし、そのまま返し馬に入る。
彼が馬を馬場に慣れさせていた頃、
「すまんエクウス、お前が独りで風になるのが好きなのは知ってるが。お前の力を俺に貸してくれー」
とセイは愛馬に土下座をかましていた。
そんな大騒ぎが落ち着いた頃、各馬がゲートに入り予選最終レースが始まる。
「ってモアさんも参加するのかよ?!」
「ええ、皆さんと違って、私は転移門が使えませんからね。移動手段として馬には乗り慣れています」
といつも通りの鉄面皮のモア。鈴太郎が驚いたままの所でゲートが開く。
「逃げ馬は競馬の華。この日のためにシュテルンと調整してきたんだ」
とまず飛び出したのは白い馬体、シュテルン号に跨るイルムだった。ゲートが開くその瞬間に全神経を集中し一気に加速。
「観客を魅せる走りをしたいものだねっ」
と言っていた彼女だが、その思い通りぐんぐんと開く差に観客からは歓声が上がる。
そんなシュテルンを追いかけていくのはセイ。追いかけてくる姿に気づいたイルムだが
「それならば行った行ったのハネムーンさ」
と居にも介さず大逃げをかます。第二コーナーを抜ける頃にはたっぷりとした差が開いていた。
一方下がってきたセイの後ろにはファラがピッタリと付く。気性の荒いファラに合わせてペースを上げさせこの位置からの競馬を展開するが、鞍上のエアルドは実に落ち着いたものだ。
その後ろにはモア。こちらも実に落ち着いたもの。馬に乗り慣れているという言葉は確かに嘘ではないようだ。
対して完全に出遅れていたのが鈴太郎。最も彼女は単純に走れることを楽しんでいたようだが。
そして馬達は向正面を駆け抜け第三コーナーへ。ここでファラの前に出たい気持ちを察したエアルドは彼に任せる様に先へ出る。セイをかわし前には大きく逃げるシュテルン。しかしその距離は最初に比べれば随分縮まっている様に見えた。ここまでは狙い通り。
そんなファラの後ろにつくモアとともに最終コーナーを抜けると、やや遅れて鈴太郎が直線に入る。
「っとと、ヤベーな。そろそろ炎迅全開──フルスロットルと行っか!」
そして彼女は鞭を振り上げる。
「よっし! いっちょ鞭を……鞭を……そ、そんな可哀想なコト出来ねぇよぉ!!」
しかしどうしても鞭を入れることができない動物大好きの鈴太郎、仕方ないと馬に任せてレースを進める。
一方先頭ではファラとモアがシュテルンに追いつこうとしていた。
「今年のシュテルンは一味違うよ?」
しかしこれでレースは決まらなかった。密かに息を入れさせていたイルム。シュテルンはここで二の脚を使う。
「さあ、流星の如く駆け抜けろ!」
さらに加速して追いつかれかけたのを再度引き離すシュテルン。
対して鞭を入れて末脚を爆発させるファラ。
モアも含めた三頭が絡み合うように先頭争い。一度馬群に収まったシュテルンだが、ここから勝負根性を見せ前に出れば、ファラは負けじと代わりに戦闘へ、ここでモアが溜めた脚で前に出ればまたもシュテルンがかわりに先頭に立つ。
入れ替わり先頭に立ちながらゴール板へと向かっていく三頭。あと200m、100m……。
その時だった。大外一気に駆け抜けてくる影があった。鈴太郎だった。
鞍上の彼女も驚くぐらい彼女の借りた馬は尻尾を一振りすると一気に加速。たちまちトップスピードに達すると一気に直線を駆け抜ける。そしてそのままモアを抜き去り、シュテルンを抜き去り、そしてファラまで抜き去って一着でゴール板を駆け抜けていた。
乾坤一擲の驚くべき走りを見せられ、惜しくも敗れたエアルドだがそれでも十分にレースを楽しんだ感覚はあった。
「お疲れ様。偶には戦場以外を走るのも良いだろう?」
だから普段は節制させているファラに林檎と人参を上げ、その馬体を優しく撫でてあげるエアルドだった。
●決勝レース
1枠:キララ
2枠:イスカ&アレイオン
3枠:マルカ&クトュルフの呼び声
4枠:大伴 鈴太郎
日が傾き緑の芝が茜色に染まる頃、いよいよ決勝のレースが始まることになった。注目はやはりキララとイスカの姉妹対決。しかし他の二頭も予選では見事な追い込みを見せてここまでやって来た。どの馬が勝ってもおかしくはない。
そして運命の決勝レースのゲートが開いた。と同時に先に飛び出した……というより、押し出されるように前に出たのはキララ。予選と同じような展開である。しかし予選とは違い、彼女の真後ろにピタリとマルカ&クトュルフの呼び声が付いている。
一方アレイオンと鈴太郎は後ろからの競馬。と一口に言っても、二人は対照的だった。手綱を握り、心を通わせ、じっと仕掛けるときを伺うイスカ。対して鈴太郎はあくまで馬に任せて走る。何より夕陽を浴びながら四頭しかいない馬場を走るのは実に気持ちいいものだった。
先頭で引っ張るキララ、そこから縦に並ぶ二頭。しかしここで少しずつ鈴太郎が遅れ始めた。最も馬に任せて走り、鞭を入れることもためらってしまう彼女ではこうなっても仕方ない。
「しゃーねーや。オレたちに賭けてくれたヤツにはワリィけど、マイペースで楽しもうぜ」
ただ、彼女自身は気持ちを切り替え、風を切って走る感覚を楽しんでいた。体に伝わる振動も心地よい。
一方先頭争いの方は先ゆくキララにまるで這い寄るかのようにクトュルフの呼び声号が近づき始めていた。だが、キララもおいそれとは抜かせず再びの加速で先へ出る。そしてそんな二頭を後ろから射程圏内に捉えるイスカ。
そのまま三頭は並んで直線へ。ここでイスカが仕掛けた。予選で見せたように再び末脚を爆発させ豪快に追い上げる。
だが闘志溢れるマルカはただ抜かせるだけで終わらない。抜かれたと思えば再度抜き返す。
もちろんイスカも再び加速し抜き返す。追いつ追われつのデッドヒートを繰り広げつつ、先頭を走るキララを二頭を激しく追走する。
そしてキララは先頭で抜かせまいとその小さな体を更にかがめ、風と一体となってゴール板へと向かっていった。
三頭による勝負はそのままゴール板へなだれ込む。その結果は……
●
決勝レースは終わった。太陽はすっかり地平線の向こうに沈み辺りは暗闇が覆うはずだったが、競馬場の一角だけは灯りと人の賑わいで昼間のように輝いていた。そんな中決勝を走ったものたちの表彰が始まる。
しかし、それを待つ人々に聞こえてきたのは歌声だった。それは皆の健闘を称え合う歌声であり、二人の歌声がハーモニーを奏でていたが、やがてその声は一つになり勝者を称えるものへと変わっていった。
その歌声の主はイスカ。そして歌を捧げられ表彰台の中央に立つのは彼女の姉、キララだった。大混戦のレースの決着はキララの二度目の勝利で幕を閉じていた。
表彰台の一番高い場所で誇らしげに賞品のカップを掲げるキララ。そこに何かが注がれる。
それは瀬織がぶどうジュースを皆に振る舞っているところだった。恋人とその姉だけでなく、やはりおどおどした雰囲気に戻ったマルカにもそれを勧める。
伏し目がちに受け取るマルカにイスカは何かを差し出した。それは彼女手作りの白龍さまサブレだった。表彰されている者達だけでなく、皆に配っていく彼女。ありがたい白龍の巫女からのプレゼントにさらに盛り上がる会場。
一方レースを終えた鈴太郎は馬を返却するため、表彰式から一人離れていた。だがその前に一つやることがある。
「乗っけてくれてありがとな♪」
ブラシで丁寧に馬体をブラッシングして汗を拭いてあげ、さらにマッサージを施す鈴太郎。そんな厩舎には先客が居た。
「ありがとう 気持ち良かった……」
ユリアンは厩舎でアルエットに水を呑ませてやりながらマッサージを施していた。そんな彼に近づいてくる者達が居た。
「お疲れ様です、師匠。イルムさん」
「残念だったな。まあ、勝負は時の運という言葉もあるしな」
「そうさ、今回運命の女神が微笑んだのは彼女だったということ。まああんな走りを見せる相手が居たら難しいよね」
と少し悪戯っぽい微笑みを鈴太郎に向けるイルム。鈴太郎は少々照れくさそうに頭をかきながら、彼女を乗せてくれた馬に語りかける。
「……オレ重くなかったよな?」
そんな彼女に「重くないよ」と答えるかのように、馬は彼女の顔をぺろりと一つ舐めていた。
表彰式が終わっても祭りの喧騒はまだまだ続く。
「勝負のあとは腹ごなしに屋台制覇だ!」
レイオスはセカンド号と共に屋台巡り。流石に同盟の農業の中心だけ合ってここには最高級の作物が集まっていた。もちろん人参もだ。それを買って早速食べさせてあげる。美味しさを現すように、セカンドの嘶きが一帯に轟いていた。
「餌の作り方ですか? それは……」
ミオは他の参加者のみならず、ジェオルジの人々とも馬にまつわる談義をかわしていた。ちなみに餌は彼女の場合、人参の大好きなユキウサギが居るので普段から大量にまとめ買いしている。
そんな会話に混ざってくる者が一人。
「お疲れ様でした。これをどうぞ♪」
「あ、イスカさん、ありがとうございます」
白龍さまサブレを受け取り微笑み返すミオ。自身は今回のレースは予選敗退だったが、不思議な満足感が胸に満たされていた。その思いを感じつつ、祭りの夜は更け行くのであった。
青々とした秋晴れの空に朝日が煌めく。太陽の輝きが濃い緑色の草原の絨毯を照らし出す。簡単に作られた埒とゴール板だけが競馬場であることを示すその場所に、既にこの時間から人々は集まっていた。
「規模が大きいですね」
Gacrux(ka2726)はその光景を見て目を細めた。彼が居るのは埒の内側、つまりコース上である。足元に視線を落としゆっくりと歩きながら馬場の状態をチェックしていた。そして頭の中でレース運びをシミュレーションしていた。ひとしきりコースを見終えた彼は懐から仮面を取り出し、その場を後にした。
それと入れ替わるように蹄鉄が芝を踏む音が聞こえ始めていた。参加者達が次々とやって来て、レースの手続きを始めている。第一レースはもうすぐスタート。さあ、競馬を始めよう。
●第1レース
1枠:黒の夢(ka0187)&エクレア
2枠:瀬織 怜皇(ka0684)&セフィリア
3枠:星輝 Amhran(ka0724)
4枠:レイオス・アクアウォーカー(ka1990)&セカンド
5枠:ユリアン(ka1664)&アルエット
Uisca Amhran(ka0754)は困っていた。運命の悪戯か、恋人の瀬織と姉のキララが同じレースに出走することになったのだから。どちらも応援しているが、決勝レースに行けるのは一人だけ。
「まぁ、頑張ってみましょう」
そんな彼女の困惑をよそに瀬織は落ち着いたものだ。最も心を乱されては、それが馬にも伝わる。その点では平常心を保っている彼の考えは正しかった。
「うなうな、お散歩のつもりで気楽に行こっかー」
そして同じ様に落ち着いている……というかいつもと変わらないのが黒の夢。愛馬、エクレア号のその美しい黒毛の体を丹念にブラッシングしながら、彼女の頭の中は食べ物のことと
「参加賞はなんだろねーエクレアー」
とそんなことばかり考えていた。
一方そうやってのんびりした雰囲気の者も居れば、対象的に勝利目指して入れ込んでいる者も居る。
「あのレースからもう二年経つのか……早いな」
最終コーナー付近で入念に返し馬をしているのはユリアン。彼の愛馬、アルエットはその前のレースから現役を続けている。かつてこの競馬大会を制したアルエットの、競走馬のキャリアとしては古参になるが文字通り遅れを取るつもりは無い。最終コーナーでの動きを念入りにシミュレーションするその姿は追込で行くことを宣言しているようなものだが、しかしそれすら三味線かもしれない。駆け引きは既に始まっていた。
「3年前のダービーじゃ予選落ちだったからな。今年は勝ちに行くぞセカンド」
一方レイオスは前回とは違う相棒と共にレースに挑む。そんな彼の視線はキララに向かっていた。
「いつも乗っておるこの子じゃて、ワシの意図もよう汲んでくれる事じゃろう。逆に、ワシもこの子の限界と潜在能力をよう知っておる……人馬一体、勝利のキモは相棒との対話じゃ!」
何故ならキララも3年前の競馬大会で優勝したダービージョッキーの称号を持つ者だったからだ。当然マークも激しくなる。いきなり優勝経験者同士の潰し合い、ハードなレースになることは間違いない。が、彼女はそれを意に介さない。レース前のインタビューにも堂々と受け答えし、そしてゲートインした。
各馬が収まり程なくレースの開始を告げる音楽が鳴る。そしてゲートが開けば馬達は綺麗に並んで飛び出していく。出遅れは居ない。
そんな中まず先頭に立った……というか立たされたのはキララだった。他の馬達は誰が前に行くのか、牽制をしあい結果彼女が押し出されることになった。
ならばと探るように走りながら、距離を開けていくキララ。それを追いかける三頭。セカンド号は最後方からの競馬を進めていく。
「季節はもうクリスマスになるのなー」
もっとも黒の夢は別のことを考えていたのだが、その彼女の服装はなんというかセクシーすぎる。残りの三人は目のやり場に困っている。目を逸らさざるを得ないレイオス
すると彼からはキララの小柄な体が少しずつこちらに近づいて来るのが見えた。先頭に立って風をまともに受けながら走ればスタミナが奪われる。脚が鈍り始めたのだろう。自然と手綱を握る手に力が篭もる中、仕掛けるタイミングを伺う。
そして馬群は第三コーナーを回って最終コーナーへ。その時だった。
「前回チャンプのワシを見事負かして見るが良い!!」
キララはそう一言言い残すと鞭を入れる。すると再び馬はスピードを上げ直線へと飛び込んでいった。
バテた様に見えたのは演技だった。軽い体重で息を入れさせ、末脚を使う。それが作戦だった。
他の馬たちも一斉に鞭を入れる。お腹が空いた黒の夢も早くご飯にありつくためにスピードを上げる。
そして最後方に陣取っていたレイオスもここで勝負をかけた。
「ここから逆転勝利といこうか。GO! セカンド!」
セカンド号はそれに答えぐんぐん加速していく……が、それも僅かな距離だった。前を行く三頭が人馬を阻む壁となっていた。仕方なく馬体を大外へ回すが、時既に遅し。キララは既にゴールを駆け抜けていた。
●第2レース
1枠:南護 炎(ka6651)&ステイプラチナ
2枠:ルベーノ・バルバライン(ka6752)
3枠:イスカ&アレイオン
4枠:ミオレスカ(ka3496)&ブラウンダイヤ
5枠:夢路 まよい(ka1328)&ドリームフォロワー
南護は分厚い本を貪るように読んでいた。アークスタッド軍馬目録。この本には様々な軍馬の情報が登録されている。それだけでない、村長祭を始めとした競馬の情報もかき集め、他の馬達がどんな馬でどんなレースを展開するかをシミュレートしていた。
彼は紙面に目を落とし、データを頭に叩き込んでから目を上げる。そこに居たのは彼が最もマークする対象、皇帝杯競馬大会優勝者、ミオであった。
そんな彼女が今日騎乗するのは優勝馬であるハニーマーブル号ではなく、ブラウンダイヤ号。鹿毛の毛並みにまるで宝石の様に白い斑点が煌めいている。
その煌めく斑点を南護が目に焼き付けて居た頃、別の参加者が近づいてきた。
「私達は大逃げで行くよ!」
と大胆不敵にも宣言したのはまよいだった。大逃げを打ってこられれば自然ペースが上がる。それに下手に付いていかず抑える必要がある。新しい情報が入り南護の中でシミュレーションがさらに進む。
「ふはははは、俺とお前が頂点に立つ日がこんなに早くやってこようとはな……我らが人馬一体ぶり、皆に見せつけてやらねばな」
そんな時、さらに大きな声で馬場に入場してきたのはルベーノだった。馬の負担を減らそうと鞍を付けず、裸馬の愛馬を丁寧に撫でている。
「姉さま、決勝で待っていてください……アレイオンと一緒にがんばるのです!」
そして最後に馬場に入ってきたのは姉と分かれたばかりのイスカだった。今回はリアルブルーで作られているライダースーツに身を包み、空気抵抗を最大限に減らして準備は万端。あとはスタートの時を待つばかり。
そんな各馬をミオは静かに見つめていた。彼女はこの時何を考えていたのか。
時はあっという間に過ぎレースの時が来る。各馬がゲートに収まりフラッグが振られ、そしてレースが始まった。
スタートと同時に宣言通りぐんぐんと加速していくのはドリームフォロワー。一気にその差を広げようとするが、鞍上のまよいにも予想外の出来事がこの時起こった。
(この距離なら、前寄りの位置取りでも脚も持つでしょう)
その身を馬体に隠すように屈めながらもその身に煌めく白い斑点。ブラウンダイヤが後ろに付いて来ていた。
一方ミオより大きな体を馬体と平行になるように傾け風を切って奔っていたのはルベーノ。彼の愛馬も二頭に付いていき加速していく。脚は回転するように素早く動き、一瞬空中に浮かぶかのようにその身を躍らせると同時にトップスピードになった。
「行けー! 全力でダッシュだぜ!」
と観客席で友人の大伴 鈴太郎(ka6016)も大騒ぎしている。
「行くぜ! ステイプラチナ!!」
そしてブラウンダイヤの真後ろにピタリとくっついているのはステイプラチナ。じっとこの位置をキープして、ミオの思い通りの展開にならないようじっとその時を狙っていた。
一方イスカは馬群とは離れ、最後方でレースを進める。エルフは自然と共に生きる種族。その中でも巫女は自然に息づく動物達との交信能力が高い。彼女にはアレイオンが何を感じているかが手に取るように分かった。一人置いていかれるように思えても不安はない。これでいい。
「私達は逃げてるんじゃなくて、追いかけてるの……優勝って夢をね!」
馬群がレース場を周り第三コーナーへ。変わらず先頭に立っていたまよいはこのままゴールしようと手綱をしごく。ドリームフォロワーはそれに答え最終コーナーを飛び出し直線へ。ここで後ろについていた二頭が仕掛けた。ルベーノとブラウンダイヤが先頭へ出ようとし、三頭による競り合いが始まる。
だが無理にドリームフォロワーを追いかけていたルベーノはここでスタミナが切れたのか、少しずつ後ろに下がっていく。一方このまま一気に抜き去ろうとするブラウンダイヤ。そうはさせじとドリームフォロワー。
その時二頭の間を突き破るように一気に飛び出してくる馬があった。ステイプラチナだった。南護はゴール目前、この瞬間まで耐え、たった一度のチャンスに勝負をかけた。見事マークしたミオを抜き、ゴールへと飛び込む。
しかしその瞬間、もう一頭が大外から一気に駆け抜けてきた。その走りはまるで竜の如し。アレイオンだった。
最後の最後、ゴール板を踏むその瞬間に頭一つ抜け出しゴールに飛び込む。勝ったのはイスカだった。
一足先に決勝へ駒を進めていたキララが手を振る。それに答えるイスカ。
「お前の全力を出し切ったんだ。悔いはない……」
一方惜しくも敗れた南護は唇を噛みつつステイプラチナを撫でてやっていた。彼の愛馬は間違いなく全力を出してくれていた。その事は確かに感じていた。
一方そのまま馬場をゆっくりと走らせクールダウンしながら厩舎に戻ってきたルベーノは、早速飼葉をやりつつ馬体をマッサージする。どこもおかしなところは無い。
「今回は所詮お遊び。戦場でお前に勝る馬などいないことは、誰よりも俺が良く知っている……これからもよろしく頼むぞ」
無事レースを終えてくれた愛馬に感謝しつつ、丁寧に毛並みをブラッシングしていた。
●第3レース
1枠:マルカ・アニチキン(ka2542)&クトュルフの呼び声
2枠:岩井崎 旭(ka0234)&シーザー
3枠:宵待 サクラ(ka5561)&二十次郎
4枠:Tiefsee
5枠:イバラキ
「お祭りだ! レースだ! 突撃だ!」
岩井崎は実にテンションが高かった。村長祭、多くの人が集まりその賑わいは最高潮となったらいやが上にも心は踊る。しかもただ見て楽しむだけでなく参加できる競馬大会があるとなったらもうこれは参加せざるを得ない。
「よっしゃ、全力で楽しもうぜ、シーザー!!」
というわけで愛馬と共にエントリーする岩井崎。更に勝利の祝福用のつもりなのか、気の早いことに今のうちに人参を大量に買い込んでいる。レース後にはこれをおやつと洒落込もうと考えているようだ。
「へぇぇ、お祭りで草競馬なんかやるんだー。面白そうじゃん。二十次郎、参加してみようよ」
そんな彼のはしゃぎ方に誘われたのか、他の参加者たちもエントリー。サクラもそんな一人だ。
「お祭りだからなー。食べ歩き無料券とか賞品になってるとうれしいんだけどなー」
エントリー手続きを済ませながら賞品を確認してみるが、残念ながら名誉を称えるカップが渡されるだけのようだ。少し残念だが、ならばと
「勝ったら店売りの美味しそうな飼葉を買ってきて二十次郎に進呈するからさ。頑張ろうね、二十次郎?」
と彼女は愛馬にそうささやきかけた。
「さて、アタシも参加するか。まあいい成績は残せないだろうけどな」
とイバラキも手続きを済ませている。
彼女が手続きを終えた頃、続いて来たのは仮面で顔を隠した謎の人物だった。彼は静かに名前欄に「Tiefsee」と署名すると厩舎に向かう。その正体は分からないが、その堂々とした態度からかなりの騎乗技術を持っていると伺えた。
一方そんな彼に対して暗く引いた雰囲気を漂わせていたのがマルカ。彼女は相棒のパルムと何かひそひそ話をしていた。作戦会議といったところなのだろうが、そのおどおどした態度からはとてもそうは見えなかった。
そんな間に各人の準備が終わり、全員がゲートに収まる。
「エクウスが多いと思ってたけど、このレースはゴースロンが多いみたいだね。無理せず頑張れ、二十次郎」
そんな風にサクラが話しかけたところでゲートが開いた。
それと同時に並んで飛び出していったのはシーザーと二十次郎。シーザーはその大きな体で蹄の音を高らかに鳴らし、一気に走り出していく。だが二十次郎もそれに恐れること無く先頭争いを繰り広げる。
「そんなことでビビるわけ無いぜ!」
その後方にはイバラキが付きレースを進めていく。
一方Tiefseeはそんな三頭に引き釣られる事無く、先頭集団をいつでも捉えられる位置をキープしてレースを展開していた。それだけでなく、芝のコンディションが全て頭に入っているのだろうか、内ラチに沿いながらも芝の状態が悪いところは巧みに避けてスタミナの無駄な消費を抑えつつ進んでいく。その騎乗技術は見る者が見れば舌を巻くようなものだった。
対してクトュルフの呼び声は騎手のおどおどした態度が乗り移ってしまったのか、出遅れたように見えて最後方からの競馬。しかし、鞍上のマルカは決して弱腰になどなっていなかった。いや、むしろ闘志を表に出し勝負に挑んでいた。頭にしがみつくパルムと共にレースの状況をその眼で確かに判断し、そんな彼女に全幅の信頼を寄せたのか愛馬は自然体の走りでレースを進めていく。
そのままレースは進み第三コーナーから第四コーナーへ。ここでイバラキが仕掛ける。鞭を振り回し先行く二頭を抜き去ろうとする。だが。
「おいおい、嘘だろ……」
そんな彼女の思いに応えられず、馬はズルズルと後ろへ下がっていった。騎手が重すぎたのか、鞭が強すぎたのか、スタミナ切れを起こしていた。
その理由はどちらでもなかった。後ろからじりじりとにじり寄るクトュルフの呼び声号が与える無言のプレッシャーに馬達のスタミナが削られていた。
(こうなりましたか……ですが想定の範囲内、そろそろ勝負ですね)
その後ろからの威圧感に気付かないTiefseeでは無かったが、その前にレースを終わらせられる事も分かっていた。ここで一発鞭を入れればその青鹿毛の馬体に力がこもり一気に加速、そのまま前へと出ていくと直線に飛び出したところで先頭に立っていた。
あとはそのままゴールに行けばと直線をひた走るが、そこで観客からの歓声が一段と大きくなった。
そう、それはクトュルフの呼び声号だった、一気に他の三頭をごぼう抜きにし先頭を視界に収める。
こうなると二頭による直線勝負のマッチレース、叩き合いになる。そんな中でもまるで視界が後ろにあるかのように、Tiefseeは馬体をクトュルフの呼び声号の方に寄せそれ以上の先行を妨害しようとする。
だが、馬体を近づけた瞬間マルカが、いや、彼女の相棒のパルムが馬体を抓る。これを鞭代わりにしするりと抜け出すように鼻一つ前に出たところが、ちょうどゴール板だった。
勝利が決まればレース中の様子が嘘のようにまたおどおどした雰囲気に戻るマルカ。一方あと少しのところで勝利を手から逃してしまったTiefseeだったが、レースが決まったと思ったときにはその姿は消えていた。
一方岩井崎は疲れを労い愛馬にたっぷりの人参をプレゼント、それを美味しそうに食べるシーザー。
それを見てサクラも、この会場で美味しいものをたっぷり買って二十次郎のみならず、ペットのみんなに食べさせてあげようと思うのだった。
●第4レース
1枠:エアルドフリス(ka1856)&ファラ
2枠:イルム=ローレ・エーレ(ka5113)&シュテルン
3枠:セイ(ka6982)
4枠:大伴 鈴太郎
5枠:モア・プリマクラッセ
実はこう見えて動物大好き、かわいいもの大好きの鈴太郎だが、彼女は馬を所有していなかった。しかしそんな彼女でも馬を借り受けることが出来る。そもそも鉄の馬、すなわちバイクならいくらでも乗ったことが有る彼女だが馬は初体験だ。早速手続きに行くと受付嬢のモアが待っていた。
「それでは彼女に騎乗してください。『貴婦人』を意味する名前らしく、落ち着いた性格で初めて馬に乗る鈴太郎さんには向いているかと」
というわけで早速跨ってみる鈴太郎。
「うわー! 高えなぁ! やっぱ単車とは見える風景が全然違えよ!」
と驚きながらもその顔からは自然と笑みがこぼれる。すぐに慣れる鈴太郎だが、それは彼女の動物好きの気持ちが伝わったのだろうか。
軽く一周りして走らせ方に慣れた彼女がモアの元に戻った頃、とんでもない勢いでモアに食って掛かっている者が居た。
「なにぃ、この競争、チャージもトランプルも出来ないのか!?」
「これは戦車競走ではありません」
「マジか―!? 戦馬のメインはチャージとトランプルだろう!?」
「おやめください。あくまでこの競馬大会は各馬の能力を計るのが目的で、そんな馬が傷つく様なレースではありません」
「おぉう、愛しのデストリアとチャージしまくろうと思って来たのになぁ……」
とすげなくモアにあしらわれがっくりと肩を落としていたのはセイだった。
そんな大騒ぎの最中、他の参加者達も馬場に集まってくる。
「オニヴァ! 待ちに待った村長祭ダービーだ!」
と現れたのはイルムだ。愛馬シュテルンの白い馬体に跨がればまさに白馬の王子様と言った面持ち、まあイルムは女性なのだが。
「2年ぶりだがこの催しはとても楽しい。また参加できて嬉しいよ」
一方対象的に真っ黒な馬体のファラ号と共に現れたのはエアルド。
「見事な青毛ですね。彼と共にこの競馬を存分にお楽しみください」
「ああ。だが勿論入賞は目指すとも、それが礼儀だ」
とモアと会話を交わし、そのまま返し馬に入る。
彼が馬を馬場に慣れさせていた頃、
「すまんエクウス、お前が独りで風になるのが好きなのは知ってるが。お前の力を俺に貸してくれー」
とセイは愛馬に土下座をかましていた。
そんな大騒ぎが落ち着いた頃、各馬がゲートに入り予選最終レースが始まる。
「ってモアさんも参加するのかよ?!」
「ええ、皆さんと違って、私は転移門が使えませんからね。移動手段として馬には乗り慣れています」
といつも通りの鉄面皮のモア。鈴太郎が驚いたままの所でゲートが開く。
「逃げ馬は競馬の華。この日のためにシュテルンと調整してきたんだ」
とまず飛び出したのは白い馬体、シュテルン号に跨るイルムだった。ゲートが開くその瞬間に全神経を集中し一気に加速。
「観客を魅せる走りをしたいものだねっ」
と言っていた彼女だが、その思い通りぐんぐんと開く差に観客からは歓声が上がる。
そんなシュテルンを追いかけていくのはセイ。追いかけてくる姿に気づいたイルムだが
「それならば行った行ったのハネムーンさ」
と居にも介さず大逃げをかます。第二コーナーを抜ける頃にはたっぷりとした差が開いていた。
一方下がってきたセイの後ろにはファラがピッタリと付く。気性の荒いファラに合わせてペースを上げさせこの位置からの競馬を展開するが、鞍上のエアルドは実に落ち着いたものだ。
その後ろにはモア。こちらも実に落ち着いたもの。馬に乗り慣れているという言葉は確かに嘘ではないようだ。
対して完全に出遅れていたのが鈴太郎。最も彼女は単純に走れることを楽しんでいたようだが。
そして馬達は向正面を駆け抜け第三コーナーへ。ここでファラの前に出たい気持ちを察したエアルドは彼に任せる様に先へ出る。セイをかわし前には大きく逃げるシュテルン。しかしその距離は最初に比べれば随分縮まっている様に見えた。ここまでは狙い通り。
そんなファラの後ろにつくモアとともに最終コーナーを抜けると、やや遅れて鈴太郎が直線に入る。
「っとと、ヤベーな。そろそろ炎迅全開──フルスロットルと行っか!」
そして彼女は鞭を振り上げる。
「よっし! いっちょ鞭を……鞭を……そ、そんな可哀想なコト出来ねぇよぉ!!」
しかしどうしても鞭を入れることができない動物大好きの鈴太郎、仕方ないと馬に任せてレースを進める。
一方先頭ではファラとモアがシュテルンに追いつこうとしていた。
「今年のシュテルンは一味違うよ?」
しかしこれでレースは決まらなかった。密かに息を入れさせていたイルム。シュテルンはここで二の脚を使う。
「さあ、流星の如く駆け抜けろ!」
さらに加速して追いつかれかけたのを再度引き離すシュテルン。
対して鞭を入れて末脚を爆発させるファラ。
モアも含めた三頭が絡み合うように先頭争い。一度馬群に収まったシュテルンだが、ここから勝負根性を見せ前に出れば、ファラは負けじと代わりに戦闘へ、ここでモアが溜めた脚で前に出ればまたもシュテルンがかわりに先頭に立つ。
入れ替わり先頭に立ちながらゴール板へと向かっていく三頭。あと200m、100m……。
その時だった。大外一気に駆け抜けてくる影があった。鈴太郎だった。
鞍上の彼女も驚くぐらい彼女の借りた馬は尻尾を一振りすると一気に加速。たちまちトップスピードに達すると一気に直線を駆け抜ける。そしてそのままモアを抜き去り、シュテルンを抜き去り、そしてファラまで抜き去って一着でゴール板を駆け抜けていた。
乾坤一擲の驚くべき走りを見せられ、惜しくも敗れたエアルドだがそれでも十分にレースを楽しんだ感覚はあった。
「お疲れ様。偶には戦場以外を走るのも良いだろう?」
だから普段は節制させているファラに林檎と人参を上げ、その馬体を優しく撫でてあげるエアルドだった。
●決勝レース
1枠:キララ
2枠:イスカ&アレイオン
3枠:マルカ&クトュルフの呼び声
4枠:大伴 鈴太郎
日が傾き緑の芝が茜色に染まる頃、いよいよ決勝のレースが始まることになった。注目はやはりキララとイスカの姉妹対決。しかし他の二頭も予選では見事な追い込みを見せてここまでやって来た。どの馬が勝ってもおかしくはない。
そして運命の決勝レースのゲートが開いた。と同時に先に飛び出した……というより、押し出されるように前に出たのはキララ。予選と同じような展開である。しかし予選とは違い、彼女の真後ろにピタリとマルカ&クトュルフの呼び声が付いている。
一方アレイオンと鈴太郎は後ろからの競馬。と一口に言っても、二人は対照的だった。手綱を握り、心を通わせ、じっと仕掛けるときを伺うイスカ。対して鈴太郎はあくまで馬に任せて走る。何より夕陽を浴びながら四頭しかいない馬場を走るのは実に気持ちいいものだった。
先頭で引っ張るキララ、そこから縦に並ぶ二頭。しかしここで少しずつ鈴太郎が遅れ始めた。最も馬に任せて走り、鞭を入れることもためらってしまう彼女ではこうなっても仕方ない。
「しゃーねーや。オレたちに賭けてくれたヤツにはワリィけど、マイペースで楽しもうぜ」
ただ、彼女自身は気持ちを切り替え、風を切って走る感覚を楽しんでいた。体に伝わる振動も心地よい。
一方先頭争いの方は先ゆくキララにまるで這い寄るかのようにクトュルフの呼び声号が近づき始めていた。だが、キララもおいそれとは抜かせず再びの加速で先へ出る。そしてそんな二頭を後ろから射程圏内に捉えるイスカ。
そのまま三頭は並んで直線へ。ここでイスカが仕掛けた。予選で見せたように再び末脚を爆発させ豪快に追い上げる。
だが闘志溢れるマルカはただ抜かせるだけで終わらない。抜かれたと思えば再度抜き返す。
もちろんイスカも再び加速し抜き返す。追いつ追われつのデッドヒートを繰り広げつつ、先頭を走るキララを二頭を激しく追走する。
そしてキララは先頭で抜かせまいとその小さな体を更にかがめ、風と一体となってゴール板へと向かっていった。
三頭による勝負はそのままゴール板へなだれ込む。その結果は……
●
決勝レースは終わった。太陽はすっかり地平線の向こうに沈み辺りは暗闇が覆うはずだったが、競馬場の一角だけは灯りと人の賑わいで昼間のように輝いていた。そんな中決勝を走ったものたちの表彰が始まる。
しかし、それを待つ人々に聞こえてきたのは歌声だった。それは皆の健闘を称え合う歌声であり、二人の歌声がハーモニーを奏でていたが、やがてその声は一つになり勝者を称えるものへと変わっていった。
その歌声の主はイスカ。そして歌を捧げられ表彰台の中央に立つのは彼女の姉、キララだった。大混戦のレースの決着はキララの二度目の勝利で幕を閉じていた。
表彰台の一番高い場所で誇らしげに賞品のカップを掲げるキララ。そこに何かが注がれる。
それは瀬織がぶどうジュースを皆に振る舞っているところだった。恋人とその姉だけでなく、やはりおどおどした雰囲気に戻ったマルカにもそれを勧める。
伏し目がちに受け取るマルカにイスカは何かを差し出した。それは彼女手作りの白龍さまサブレだった。表彰されている者達だけでなく、皆に配っていく彼女。ありがたい白龍の巫女からのプレゼントにさらに盛り上がる会場。
一方レースを終えた鈴太郎は馬を返却するため、表彰式から一人離れていた。だがその前に一つやることがある。
「乗っけてくれてありがとな♪」
ブラシで丁寧に馬体をブラッシングして汗を拭いてあげ、さらにマッサージを施す鈴太郎。そんな厩舎には先客が居た。
「ありがとう 気持ち良かった……」
ユリアンは厩舎でアルエットに水を呑ませてやりながらマッサージを施していた。そんな彼に近づいてくる者達が居た。
「お疲れ様です、師匠。イルムさん」
「残念だったな。まあ、勝負は時の運という言葉もあるしな」
「そうさ、今回運命の女神が微笑んだのは彼女だったということ。まああんな走りを見せる相手が居たら難しいよね」
と少し悪戯っぽい微笑みを鈴太郎に向けるイルム。鈴太郎は少々照れくさそうに頭をかきながら、彼女を乗せてくれた馬に語りかける。
「……オレ重くなかったよな?」
そんな彼女に「重くないよ」と答えるかのように、馬は彼女の顔をぺろりと一つ舐めていた。
表彰式が終わっても祭りの喧騒はまだまだ続く。
「勝負のあとは腹ごなしに屋台制覇だ!」
レイオスはセカンド号と共に屋台巡り。流石に同盟の農業の中心だけ合ってここには最高級の作物が集まっていた。もちろん人参もだ。それを買って早速食べさせてあげる。美味しさを現すように、セカンドの嘶きが一帯に轟いていた。
「餌の作り方ですか? それは……」
ミオは他の参加者のみならず、ジェオルジの人々とも馬にまつわる談義をかわしていた。ちなみに餌は彼女の場合、人参の大好きなユキウサギが居るので普段から大量にまとめ買いしている。
そんな会話に混ざってくる者が一人。
「お疲れ様でした。これをどうぞ♪」
「あ、イスカさん、ありがとうございます」
白龍さまサブレを受け取り微笑み返すミオ。自身は今回のレースは予選敗退だったが、不思議な満足感が胸に満たされていた。その思いを感じつつ、祭りの夜は更け行くのであった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談?卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/11/19 13:54:44 |
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![]() |
質問卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/11/15 00:11:45 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/19 01:45:56 |
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![]() |
脚質について モア・プリマクラッセ(kz0066) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/13 16:03:31 |