ゲスト
(ka0000)
或る少女と自動人形と街道の雑魔
マスター:佐倉眸
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/26 09:00
- 完成日
- 2017/12/04 00:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
またですか、と受付嬢は眉間に皺を刻んだ。
以前発生していたジェオルジ、ヴァリオス間の街道の、大型の雑魔がまた目撃されたという。
雑魔は多く討伐され、発生源と思われた汚染された草地も再生を見届けた。
何故それが、今になって。
しかし、目撃情報を重ねれば、それは以前と同じ馬の雑魔だけでは無いようだ。
街道で黒く大きな馬を見た。襲われそうになった。隠れている内にどこかへ行った。
それは森を出てきて、街道を少し走るとまた森に消えた。
馬の雑魔が消えた森の奥に、灰の舞ったような靄を見た。
黒い大きな影が這っていた。
見上げるほどの黒い蛞蝓だった。
何かに木がなぎ倒されるのを見た。
黒い馬が、靄の方に走っていた。
「馬だけでは無い……若しくは……」
受付嬢はテーブルに街道の地図を広げ、目撃情報を書き込みながら更に顔を険しくさせる。
「場所が、非常に良くないです。ハンターさんなら大丈夫だと思いますが……私は早起きも徹夜も苦手です」
目撃情報の重なる場所は街道の中程から森へ少し分け入る辺り。
ジェオルジからもヴァリオスからも遠く、朝に発って到着は日暮れ時。
夜の戦闘は避けた方が無難だろう。
「夜に発って貰うという手もありますが、野営をするならこの辺りでしょうか? 日中を準備に宛てて頂けます。目撃地点から近いことが難点ですが……最速での遭遇は、日の出、頃……? 計算は苦手なんですよ」
●
こんにちは、とオフィスの戸を細く開け、メグが顔を覗かせた。
先日の依頼でクッキーの屋台を手伝いに行ったはずが、途中で迷子の少女と出会い、彼女の連れの捜索に向かったため、半分近く持ち場を離れて仕舞っていたと項垂れて。
その背で跳ねた精霊に押され、メグがオフィスの中へ進むと受付嬢がにこやかに出迎える。
「こんにちは! ギアさんの件ですね! 保護者の方と、クッキーの依頼主さんからも連絡を貰っているので大丈夫です! 他にも手伝って下さった方がいらっしゃって、ギアさんにお友達ができたって喜ばれてました! クッキーの屋台も盛況だったようですよ。皆さんが頑張って下さったお陰です! ハンターさんはすごいですね!」
捲し立てるように身を乗り出してくる受付嬢に怯みながらも、メグはほっと安堵の息を吐く。
「ところでメグさん。ちょっと前にお願いしたピクニックの件覚えてますか?」
汚染された土地の再生を見に行って貰いましたよね?
その汚染の原因が関わっていた海辺の村のこと、気にしてましたよね?
●
昼に準備を終えて、夕方には夜営に適した場所へ向かって発つ。
街道を進んでテントを張れる程度に開けたところで一行は留まり、火を焚いた。
食事を終えて、月の昇る頃から、睡眠と見張りを交代で。
受付嬢の自信の無い計算を信じるならば、馬の雑魔の群がこの辺りを走り回っており、遅くとも朝には遭遇の可能性がある。
これまでヴァリオスを目指していた馬の雑魔が、若干ながら、動きを変えているらしい。
また、馬の雑魔以外にも何等かの存在が確認されている。
恐らくそれが、雑魔を生み出した汚染源の原因だろう。
「この間ぶりだね。腕の調子はどう?」
メグは見張りの焚き火の側に座り、毛布を羽織って暖を取りながらもう1人の見張りに声を掛けた。
「問題ありません。ギアはこの義手の扱いを熟知しています。……おきづかい、いただき、きょうしゅくに、ぞんじあげる、しょぞん」
銀色の髪をさらりと揺らして首を傾げたギアは包帯を巻いた腕を擡げる。
袖を捲って見せたその腕は、肩から指先まで白い包帯に厳重に覆われているが、ミトンのように巻かれたその下に確かに手の存在を感じる。
「ギアちゃんっ、……多分、えっとね、心配してくれて、ありがとって言うんだと思うよ?」
ギアの言葉に虚を突かれた様に暫し呆然としたメグが眉を下げた。
「……心配。……ギア、心配されることを覚えました。大丈夫です、ギアの腕の調子は良好です」
見て下さい。と、ギアが指先の包帯を引く。はらりと解けるそれは銀色の指を晒す。
細い鋼で組まれた骨格、関節を発条が支え指のしなやかな動きを制御する。装飾のような歯車がからりと一つ噛み合うと、指を覆うように鋼線が渡り、付け根から少しずつ皮膚の柔らかさを持った外殻が覆っていく。
ギアは包帯を巻き直してメグを見た。
「修復は滞りなく進んでいます。ご主人さまは、ギアはもう少しで手を使えるようになると言いました。ギアは、それがとても楽しみです」
「そろそろ交代の時間だね。もう眠くなっちゃった。無事に朝になると良いね」
毛布を畳み、軽く伸びをしてメグが言う。
ギアは焚き火の傍を動かない。赤い炎が白い頬を明るく照らす。
「最終目撃地点より目標がこちらへ直進した場合、報告から算出され得る時速の概算に寄るところの遭遇時刻まで約30分。誤差の範囲は30分です」
ギアの声が淡々と告げる。受付嬢よりも計算が得意らしいことがメグにも分かった。そして。
つまり、敵にこちらの位置が割れていた場合、今から1時間以内に遭遇するということらしい。
暗闇の中、小さな焚き火。メグは今まで見張っていた森へもう一度目を向ける。
「出た――――」
メグが声を上げてテントへ走るよりも早く、ギアが敵を狙って腕から光りを放った。
「ギアには夢があります。……ギアはこの腕が治ったら――――」
またですか、と受付嬢は眉間に皺を刻んだ。
以前発生していたジェオルジ、ヴァリオス間の街道の、大型の雑魔がまた目撃されたという。
雑魔は多く討伐され、発生源と思われた汚染された草地も再生を見届けた。
何故それが、今になって。
しかし、目撃情報を重ねれば、それは以前と同じ馬の雑魔だけでは無いようだ。
街道で黒く大きな馬を見た。襲われそうになった。隠れている内にどこかへ行った。
それは森を出てきて、街道を少し走るとまた森に消えた。
馬の雑魔が消えた森の奥に、灰の舞ったような靄を見た。
黒い大きな影が這っていた。
見上げるほどの黒い蛞蝓だった。
何かに木がなぎ倒されるのを見た。
黒い馬が、靄の方に走っていた。
「馬だけでは無い……若しくは……」
受付嬢はテーブルに街道の地図を広げ、目撃情報を書き込みながら更に顔を険しくさせる。
「場所が、非常に良くないです。ハンターさんなら大丈夫だと思いますが……私は早起きも徹夜も苦手です」
目撃情報の重なる場所は街道の中程から森へ少し分け入る辺り。
ジェオルジからもヴァリオスからも遠く、朝に発って到着は日暮れ時。
夜の戦闘は避けた方が無難だろう。
「夜に発って貰うという手もありますが、野営をするならこの辺りでしょうか? 日中を準備に宛てて頂けます。目撃地点から近いことが難点ですが……最速での遭遇は、日の出、頃……? 計算は苦手なんですよ」
●
こんにちは、とオフィスの戸を細く開け、メグが顔を覗かせた。
先日の依頼でクッキーの屋台を手伝いに行ったはずが、途中で迷子の少女と出会い、彼女の連れの捜索に向かったため、半分近く持ち場を離れて仕舞っていたと項垂れて。
その背で跳ねた精霊に押され、メグがオフィスの中へ進むと受付嬢がにこやかに出迎える。
「こんにちは! ギアさんの件ですね! 保護者の方と、クッキーの依頼主さんからも連絡を貰っているので大丈夫です! 他にも手伝って下さった方がいらっしゃって、ギアさんにお友達ができたって喜ばれてました! クッキーの屋台も盛況だったようですよ。皆さんが頑張って下さったお陰です! ハンターさんはすごいですね!」
捲し立てるように身を乗り出してくる受付嬢に怯みながらも、メグはほっと安堵の息を吐く。
「ところでメグさん。ちょっと前にお願いしたピクニックの件覚えてますか?」
汚染された土地の再生を見に行って貰いましたよね?
その汚染の原因が関わっていた海辺の村のこと、気にしてましたよね?
●
昼に準備を終えて、夕方には夜営に適した場所へ向かって発つ。
街道を進んでテントを張れる程度に開けたところで一行は留まり、火を焚いた。
食事を終えて、月の昇る頃から、睡眠と見張りを交代で。
受付嬢の自信の無い計算を信じるならば、馬の雑魔の群がこの辺りを走り回っており、遅くとも朝には遭遇の可能性がある。
これまでヴァリオスを目指していた馬の雑魔が、若干ながら、動きを変えているらしい。
また、馬の雑魔以外にも何等かの存在が確認されている。
恐らくそれが、雑魔を生み出した汚染源の原因だろう。
「この間ぶりだね。腕の調子はどう?」
メグは見張りの焚き火の側に座り、毛布を羽織って暖を取りながらもう1人の見張りに声を掛けた。
「問題ありません。ギアはこの義手の扱いを熟知しています。……おきづかい、いただき、きょうしゅくに、ぞんじあげる、しょぞん」
銀色の髪をさらりと揺らして首を傾げたギアは包帯を巻いた腕を擡げる。
袖を捲って見せたその腕は、肩から指先まで白い包帯に厳重に覆われているが、ミトンのように巻かれたその下に確かに手の存在を感じる。
「ギアちゃんっ、……多分、えっとね、心配してくれて、ありがとって言うんだと思うよ?」
ギアの言葉に虚を突かれた様に暫し呆然としたメグが眉を下げた。
「……心配。……ギア、心配されることを覚えました。大丈夫です、ギアの腕の調子は良好です」
見て下さい。と、ギアが指先の包帯を引く。はらりと解けるそれは銀色の指を晒す。
細い鋼で組まれた骨格、関節を発条が支え指のしなやかな動きを制御する。装飾のような歯車がからりと一つ噛み合うと、指を覆うように鋼線が渡り、付け根から少しずつ皮膚の柔らかさを持った外殻が覆っていく。
ギアは包帯を巻き直してメグを見た。
「修復は滞りなく進んでいます。ご主人さまは、ギアはもう少しで手を使えるようになると言いました。ギアは、それがとても楽しみです」
「そろそろ交代の時間だね。もう眠くなっちゃった。無事に朝になると良いね」
毛布を畳み、軽く伸びをしてメグが言う。
ギアは焚き火の傍を動かない。赤い炎が白い頬を明るく照らす。
「最終目撃地点より目標がこちらへ直進した場合、報告から算出され得る時速の概算に寄るところの遭遇時刻まで約30分。誤差の範囲は30分です」
ギアの声が淡々と告げる。受付嬢よりも計算が得意らしいことがメグにも分かった。そして。
つまり、敵にこちらの位置が割れていた場合、今から1時間以内に遭遇するということらしい。
暗闇の中、小さな焚き火。メグは今まで見張っていた森へもう一度目を向ける。
「出た――――」
メグが声を上げてテントへ走るよりも早く、ギアが敵を狙って腕から光りを放った。
「ギアには夢があります。……ギアはこの腕が治ったら――――」
リプレイ本文
●
葉の擦れる音、蹄の音が微かに。夜明も待たずに迫ってきた敵の気配が漂っている。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は装備に伸ばす手を留め、耳を欹ててその小さな音を認識すると、手早くそれらを身に着けた。
見張りを交代する時間も近い。何事だろうと、明かりの水晶球を手許へ寄せ、腰を浮かせた時だった。
戦端の切られた音が聞こえた次の瞬間に、勢いよくテントが開かれた。
テントから少し離した焚き火を背にメグが焦った声で敵の接近を告げた。
その声に弾かれるように、水晶球を引き連れてテントを飛び出す。
「マーガレット、確認できる敵の数と方角は!」
ディーナの動きにヴァイス(ka0364)の声が通る。
点灯させたランタンを腰に、得物を握ると金の双眸は闇の先を爛と睨んだ。
右側、30メートルくらい先に3匹、その50メートル以上先に、こちらに気付いてないものがいる。
左側には、3、4匹の塊が2箇所、更に遠方に影が薄ら。
思い出しながら話す辿々しい報告を聞きながら、エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は枕元から掴んで飛び出した得物を構え直す。
近付く音に耳を澄まし、焚き火まで前進するとそれを背にして森を睨む。
闇の内にこちらを向いた幾つもの光が見えた。
左手、幅のある通りを隔てた南側へヴァイスは敵の至近まで前進しディーナと合流、エラは後方に留まり、光源を敵へ状況を見る。
「夜討ち朝駆けは戦の作法の一つだが……」
充電を済ませて持参したライトを片手にロニ・カルディス(ka0551)が得物を取ってテントを出る。
それを受ける側に回るのはきついと言いながら、状況を測る目に迷いは無い。
「ねむい……なんて言ってる場合じゃないか……」
白いグローブの覆う手の甲で瞼を軽く擦り、鞍馬 真(ka5819)もロニに続きテントを飛び出す。
2人が手薄になった北側へ向かった後、テントの奥でもそもそと寝袋が蠢いた。
「うぅーん……? 眼鏡、眼鏡……」
日中の行軍が効いたのだろう、深く眠り込んでいた南條 真水(ka2377)は寝袋から伸ばした手を這わせて眼鏡を探し、ぼんやりとした眼で周囲を眺めて首を傾がせた。
戦線に戻ろうとしたメグが振り返り、敵です、と急かす。
その声に瞬くと、安らかな眠りを妨げられた怒りで頬がひくりと震えた。
装備にライトに、慌ただしく掴みながら転がり出ると、鞍馬とロニへ符を向けるエラの動きを見て、南側の前衛に出たヴァイスと、ディーナを追う。
エラの後ろに続いたメグが震える手を叱咤して杖を握り締めた。
●
鍔に魔導機械を埋め込んだ血の色に染めた刀身を持つ剣、柄のトリガーに指を掛け、敵を睨む鞍馬の双眸がその一瞬だけ金色に輝いた。
敵との距離を推し測り、足にマテリアルを込めて地面を蹴る。
その対岸、穂に複数の鈎をあしらう槍を、複雑な紋様を刻んだ柄を握り締めて構え、羽根飾りを翻す。
ヴァイス周囲に紅蓮の炎の幻影が取り巻いて、それは次第に激しく、眩いほど燃え盛る。炎は得物に絡むとその色を蒼く、蒼い炎を纏う刃は一層研ぎ澄まされて敵を照らす光の中で翻る。
2人がそれぞれの敵へ迫ろうと駆る。
ヴァイスの傍らを一筋の閃光が裂いた。
「ギアちゃん」
ディーナの声が響いた。
鎚頭に聖印をあしらう柄の細長い鎚矛、敵へ向けて大きく旋回させると、込められたマテリアルは無数の刃の形を成した。
闇の色を纏うそれが、ヴァイスに迫る雑魔を囲い、滑らかな刃で縫い止めたように彼等の足を止めた。
「ギアちゃんの行動が逆なの! 前衛は敵を止めるためにいるの、中後衛はその敵を前衛を巻き込まずに倒すためにいるの!」
射程のために下がるギアの配置を指摘すると、ギアは腕を敵に伸ばして狙いを付ける。
足を止められた雑魔へ、ヴァイスが槍の穂を翻す。
的確に首を捉えた刃は、鞠を放るほどに軽く雑魔の頭部を斬り飛ばす。
一拍遅れて吹き上がった血液を思わせる黒い飛沫は端から霧散し、馬体も崩れて土塊に、そして、灰の舞うように消えて無くなる。
前へ出ようとするギアを引き留め、ディーナはギアの説得を試みた。
ゼロ距離で戦わない、前衛を巻き込まない、前衛が止めた敵を、敵だけを撃つ、単独行動をしない。
その方法を覚えなければ、ハンターとして生きられない。
「そんなことになったらギアちゃんの夢も敵わなくなるの!」
会話を聞いた様にヴァイスが撃てる空間を作り、ギアはそこへ腕を伸ばした。
「……ギアが、前に出なくて、良いのですか」
戸惑いに震えた腕から放たれた光が鬣を灼き切って消えた。
焚き火を背にロニがライトを二つ敵へ向けた。
日の出前の暗がりの中、照らし出された敵は報告の3匹。そして、更に5匹の接近を見る。
「死角を補うように」
前へ出た鞍馬は敵に正対し、ロニとメグはその付近からの不意打ちを警戒する。
少し上擦った返事の声を背後に聞いた。
ギアの閃光は覗えるが、南の敵に当たっている以上、こちらに向くことは無さそうだ。
大きく踏み込んだところから更に斬り込む一閃、鞍馬の剣が光を映して馬体を大きく薙いだ。
1匹を抑えた隙に間合いを避けて大柄な身体で接近する雑魔へ、ロニが杖を向けて安息を祈る魔法を歌った。
エルフハイムの樹は滑らかに手に馴染み、持ち手に嵌め込まれたマテリアル鉱石ごと握り締める。
足を止めた敵を囲むように、黒い刃が放たれた。
「敵が待ち受ける森の中に踏み込むのは危険だろうしな……」
後方の敵との距離は、まだ目算が適わないほど離れている。
奥へ逃げられないうちに、ロニの魔法が足を止めている内に。
次の敵を、至近に残った2匹を捉える間合いに構えると、温かなマテリアルが身体を覆った。
振り返ると杖を振り下ろしたメグが安堵している。
立ち竦んでいた初陣の頃に比べると、落ち付いている。まだ薄く脆いマテリアルの鎧も、心なしか頼もしい。
「……追い付かれないようにしなければな」
成長を喜ぶ笑みを引き締め、扇を広げたように血色の残像を残しながら端から端へ一息に凪ぐ。
厚い硝子の奥で瞳が怪しく光を放つ。硝子の所為でその妖しい色彩が零れることは無いが。
前へ進んだ南條は身に着けた符を全て投じ、ヴァイスとディーナ、ギアを範囲に収めるように位置を測り、自身の周囲に結界を作る。
夢の蝶が揺蕩うように辺りを暖かなひかりが取り囲んだ。
ライトと焚き火の明かりを頼り対岸へ目を向けると、エラも同様に、ロニと鞍馬、それからメグを符の結界の端へ留めている。
マテリアルを受け生来の蒼に戻る瞳が敵を見据えた。
後方の焚き火、他、仲間の光源の維持を確かめてからデバイスを身に着ける腕を敵へ向けた。
そこから放たれた三条の光りが鋭く伸びて、鞍馬の攻撃に加勢し、2匹の雑魔を灼き尽くして土塊へ、そして灰へと消した。
「視認可能な敵は以上ですが……」
森に残る敵の接近を知ると、それが迫る前に軸の符を改める。
南條はディーナの抑えた敵の外側を行く雑魔へ杖の先を向けた。
魔導機械としても調整されたそれを操って放った光弓。撓る弓は時を統べる三種の針を放ち、それぞれに敵を捕らえた。
「南條さん、ご立腹だよね」
消えて行く敵を睨んだ双眸、眼鏡に光が差した一瞬に浮かぶ表情は、眠気よりも怒りを強く表していた。
森の奥、蹄の鳴る音が聞こえる。草を踏み掛けてくる音、嘶く濁った声。
来たかというようにロニと鞍馬が構え直した。
接近に合わせ、エラは符の結界を再び、メグも握り締めた杖を振る。
「出てきてくれたみたいだな」
最も近くにいた鞍馬に目を向けた雑魔が3匹、そのすぐ後方に2匹続く。
美しい光りの昇る符の結界が、振り下ろされた蹄の重さを吸い、マテリアルの鎧が残った衝撃を抑えた。
1匹目の攻撃を任せ、続く2匹目は避けきって翻す刀でその首を裂き、3匹目も狙うが浅く、刈った鬣が舞い散った。
突進してくる2匹を刀身でいなし、5匹集まるところをロニが歌い上げた鎮魂歌が捕らえ、抑え込んだ。
「これで全てか」
周囲へ目を配りながら警戒の強い声で呟く。
一つ息を吐くと、マテリアルを込めた杖の先を敵へ向けた。
「恐らくは。焚き火の方も警戒を続けましょう。……あちらも、こちらと同じ状況のようです」
エラは燃える火を肩越しに一瞥してから、敵へデバイスを向け光を放った。
森の奥から進んできた敵は3、ヴァイスが槍を翻し、ディーナも鎚矛を掲げる。
南條は結界を張り直すと、敵の動きを観察し、光源への進路を遮るように動いて杖を構えた。
「周囲の状況の注意と声掛けを徹底するんだ。焦らず、奢らずそのタイミングを逃さず狙え!」
敵の接近に、腕を伸ばしていたギアは、ヴァイスの声にその腕へもう片方の手を添えて狙いを据える。
嘶く音が吠えるように迫る。
「敵3対の確認、距離19、18、……ギアの射程に入ります、右端を攻撃します」
ヴァイスが1匹抑え込み、3匹の足止めにディーナが鎚矛を振るい足を止めた所へ向かって動く。
藻掻いて逃れた1匹がギアを狙い馬首を向けると、咄嗟にその柄を翻しギアの周囲に光りの壁を作った。
擦れた馬体に砕かれたマテリアルの燐光に照らされ、ギアは睨む様に敵を見据えた。
「近付かれる前に、処理したいんだよね、南條さんも」
南條がその雑魔に向かって光りを、最後の1匹らしく、3本の矢の残りは朝日を割って消えて何処かへ消える。
昇り始めていた朝日に、怪我は無いかと見回すロニが眩しげに目を細めた。
無いと答えて鞍馬とエラは一旦焚き火の傍らへ下がる。
集まったヴァイスと南條、ギアにも怪我は無いとディーナが下ろした得物を抱えるように。
「……疲れてません、か?」
メグがヴァイスへと杖を向けた。加減せずマテリアルを解放していた為だろうと答えを聞くと、回復の祈りをマテリアルに込めた。
強くない祈りでも多少の消耗は癒やせるらしく、ヴァイスの顔色は元に戻った。
●
中衛の戦い方はどう、とディーナがギアに尋ねた。
日の出を眺め、見張りながらの休息を取ると、それぞれにテントに残した荷物を片付ける。
ギアも座って包帯を巻き直していた。少しぎこちない動きで、覚えたことを並べていく。
巻き込まない、敵だけ、単独は駄目。
それから、前に出なくてもいい、と。
「……ギア、教わった時は、お礼を言うと、知っています。……ありがとうございました」
手早く、効率よく。エラは片付けを終えて出発の支度を調える。
ロニも荷物を纏めて支度を終えた。
目が冴えたと南條は、片付けた荷を置くと、雑魔の出没した方へと踏み入って地面や木々に痕跡を探す。
何等かの残留品があればと期待して暫く進んだが、それらしい物は見当たらない。
「持って帰れる収穫は無さそうだね」
足跡は見付けたが回収の方法に首を捻って溜息を吐く。
何度か群を倒している黒い馬。
出立前の目撃情報では他の影も出たと聞いたが、戦っている最中には見当たらなかった。
既に去ってしまったのだろうか。
原因を見付けたいところだと、荷物を置いて森を眺めた。
「少しでも体力を温存する為に通常警戒に戻して休める時に休んでおこう」
先の戦いで全て倒したか分からないが、と辺りを警戒しながら、ヴァイスは腰を落ち着けて森へ目を遣った。
遠くから微かな物音が聞こえた。
距離を考えれば相当大きな物が動いたようだ。
森を気に掛けていた3人が得物に手を掛けるが、その正確な位置すら掴めず、音は次第に聞こえなくなった。
目を凝らしても、やはり姿は遠いらしい。
支度と休息を終え、焚き火の火を落としてハンター達が出発する。
鞍馬はふと思い出してギアへ目を向けた。
今は包帯の巻かれた腕を見て尋ねる。
「きみは、腕が治ったら何をしたいのかな?」
夢があると言っていた。それを尋ねると、ギアは驚いた様に目を瞠って、それから嬉しそうに微笑んだ。
「……ギアは自分の指で引き金を引き、拳銃を、小銃を、狙撃銃を……この世のありとあらゆる銃を撃ってみたいのです」
今までは、ギアの腕が銃でしたから。
朗らかに語る少女と、戦闘の緊張感が抜けずにふらつく少女、その背後に揺れる緑の精霊と。
帰途は非常に穏やかなものとなり、その途中覗いた、以前は汚染されていた場所も、周囲と遜色なく育んだ緑を、赤く色付かせて、或いは冬らしく散らしていた。
葉の擦れる音、蹄の音が微かに。夜明も待たずに迫ってきた敵の気配が漂っている。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は装備に伸ばす手を留め、耳を欹ててその小さな音を認識すると、手早くそれらを身に着けた。
見張りを交代する時間も近い。何事だろうと、明かりの水晶球を手許へ寄せ、腰を浮かせた時だった。
戦端の切られた音が聞こえた次の瞬間に、勢いよくテントが開かれた。
テントから少し離した焚き火を背にメグが焦った声で敵の接近を告げた。
その声に弾かれるように、水晶球を引き連れてテントを飛び出す。
「マーガレット、確認できる敵の数と方角は!」
ディーナの動きにヴァイス(ka0364)の声が通る。
点灯させたランタンを腰に、得物を握ると金の双眸は闇の先を爛と睨んだ。
右側、30メートルくらい先に3匹、その50メートル以上先に、こちらに気付いてないものがいる。
左側には、3、4匹の塊が2箇所、更に遠方に影が薄ら。
思い出しながら話す辿々しい報告を聞きながら、エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は枕元から掴んで飛び出した得物を構え直す。
近付く音に耳を澄まし、焚き火まで前進するとそれを背にして森を睨む。
闇の内にこちらを向いた幾つもの光が見えた。
左手、幅のある通りを隔てた南側へヴァイスは敵の至近まで前進しディーナと合流、エラは後方に留まり、光源を敵へ状況を見る。
「夜討ち朝駆けは戦の作法の一つだが……」
充電を済ませて持参したライトを片手にロニ・カルディス(ka0551)が得物を取ってテントを出る。
それを受ける側に回るのはきついと言いながら、状況を測る目に迷いは無い。
「ねむい……なんて言ってる場合じゃないか……」
白いグローブの覆う手の甲で瞼を軽く擦り、鞍馬 真(ka5819)もロニに続きテントを飛び出す。
2人が手薄になった北側へ向かった後、テントの奥でもそもそと寝袋が蠢いた。
「うぅーん……? 眼鏡、眼鏡……」
日中の行軍が効いたのだろう、深く眠り込んでいた南條 真水(ka2377)は寝袋から伸ばした手を這わせて眼鏡を探し、ぼんやりとした眼で周囲を眺めて首を傾がせた。
戦線に戻ろうとしたメグが振り返り、敵です、と急かす。
その声に瞬くと、安らかな眠りを妨げられた怒りで頬がひくりと震えた。
装備にライトに、慌ただしく掴みながら転がり出ると、鞍馬とロニへ符を向けるエラの動きを見て、南側の前衛に出たヴァイスと、ディーナを追う。
エラの後ろに続いたメグが震える手を叱咤して杖を握り締めた。
●
鍔に魔導機械を埋め込んだ血の色に染めた刀身を持つ剣、柄のトリガーに指を掛け、敵を睨む鞍馬の双眸がその一瞬だけ金色に輝いた。
敵との距離を推し測り、足にマテリアルを込めて地面を蹴る。
その対岸、穂に複数の鈎をあしらう槍を、複雑な紋様を刻んだ柄を握り締めて構え、羽根飾りを翻す。
ヴァイス周囲に紅蓮の炎の幻影が取り巻いて、それは次第に激しく、眩いほど燃え盛る。炎は得物に絡むとその色を蒼く、蒼い炎を纏う刃は一層研ぎ澄まされて敵を照らす光の中で翻る。
2人がそれぞれの敵へ迫ろうと駆る。
ヴァイスの傍らを一筋の閃光が裂いた。
「ギアちゃん」
ディーナの声が響いた。
鎚頭に聖印をあしらう柄の細長い鎚矛、敵へ向けて大きく旋回させると、込められたマテリアルは無数の刃の形を成した。
闇の色を纏うそれが、ヴァイスに迫る雑魔を囲い、滑らかな刃で縫い止めたように彼等の足を止めた。
「ギアちゃんの行動が逆なの! 前衛は敵を止めるためにいるの、中後衛はその敵を前衛を巻き込まずに倒すためにいるの!」
射程のために下がるギアの配置を指摘すると、ギアは腕を敵に伸ばして狙いを付ける。
足を止められた雑魔へ、ヴァイスが槍の穂を翻す。
的確に首を捉えた刃は、鞠を放るほどに軽く雑魔の頭部を斬り飛ばす。
一拍遅れて吹き上がった血液を思わせる黒い飛沫は端から霧散し、馬体も崩れて土塊に、そして、灰の舞うように消えて無くなる。
前へ出ようとするギアを引き留め、ディーナはギアの説得を試みた。
ゼロ距離で戦わない、前衛を巻き込まない、前衛が止めた敵を、敵だけを撃つ、単独行動をしない。
その方法を覚えなければ、ハンターとして生きられない。
「そんなことになったらギアちゃんの夢も敵わなくなるの!」
会話を聞いた様にヴァイスが撃てる空間を作り、ギアはそこへ腕を伸ばした。
「……ギアが、前に出なくて、良いのですか」
戸惑いに震えた腕から放たれた光が鬣を灼き切って消えた。
焚き火を背にロニがライトを二つ敵へ向けた。
日の出前の暗がりの中、照らし出された敵は報告の3匹。そして、更に5匹の接近を見る。
「死角を補うように」
前へ出た鞍馬は敵に正対し、ロニとメグはその付近からの不意打ちを警戒する。
少し上擦った返事の声を背後に聞いた。
ギアの閃光は覗えるが、南の敵に当たっている以上、こちらに向くことは無さそうだ。
大きく踏み込んだところから更に斬り込む一閃、鞍馬の剣が光を映して馬体を大きく薙いだ。
1匹を抑えた隙に間合いを避けて大柄な身体で接近する雑魔へ、ロニが杖を向けて安息を祈る魔法を歌った。
エルフハイムの樹は滑らかに手に馴染み、持ち手に嵌め込まれたマテリアル鉱石ごと握り締める。
足を止めた敵を囲むように、黒い刃が放たれた。
「敵が待ち受ける森の中に踏み込むのは危険だろうしな……」
後方の敵との距離は、まだ目算が適わないほど離れている。
奥へ逃げられないうちに、ロニの魔法が足を止めている内に。
次の敵を、至近に残った2匹を捉える間合いに構えると、温かなマテリアルが身体を覆った。
振り返ると杖を振り下ろしたメグが安堵している。
立ち竦んでいた初陣の頃に比べると、落ち付いている。まだ薄く脆いマテリアルの鎧も、心なしか頼もしい。
「……追い付かれないようにしなければな」
成長を喜ぶ笑みを引き締め、扇を広げたように血色の残像を残しながら端から端へ一息に凪ぐ。
厚い硝子の奥で瞳が怪しく光を放つ。硝子の所為でその妖しい色彩が零れることは無いが。
前へ進んだ南條は身に着けた符を全て投じ、ヴァイスとディーナ、ギアを範囲に収めるように位置を測り、自身の周囲に結界を作る。
夢の蝶が揺蕩うように辺りを暖かなひかりが取り囲んだ。
ライトと焚き火の明かりを頼り対岸へ目を向けると、エラも同様に、ロニと鞍馬、それからメグを符の結界の端へ留めている。
マテリアルを受け生来の蒼に戻る瞳が敵を見据えた。
後方の焚き火、他、仲間の光源の維持を確かめてからデバイスを身に着ける腕を敵へ向けた。
そこから放たれた三条の光りが鋭く伸びて、鞍馬の攻撃に加勢し、2匹の雑魔を灼き尽くして土塊へ、そして灰へと消した。
「視認可能な敵は以上ですが……」
森に残る敵の接近を知ると、それが迫る前に軸の符を改める。
南條はディーナの抑えた敵の外側を行く雑魔へ杖の先を向けた。
魔導機械としても調整されたそれを操って放った光弓。撓る弓は時を統べる三種の針を放ち、それぞれに敵を捕らえた。
「南條さん、ご立腹だよね」
消えて行く敵を睨んだ双眸、眼鏡に光が差した一瞬に浮かぶ表情は、眠気よりも怒りを強く表していた。
森の奥、蹄の鳴る音が聞こえる。草を踏み掛けてくる音、嘶く濁った声。
来たかというようにロニと鞍馬が構え直した。
接近に合わせ、エラは符の結界を再び、メグも握り締めた杖を振る。
「出てきてくれたみたいだな」
最も近くにいた鞍馬に目を向けた雑魔が3匹、そのすぐ後方に2匹続く。
美しい光りの昇る符の結界が、振り下ろされた蹄の重さを吸い、マテリアルの鎧が残った衝撃を抑えた。
1匹目の攻撃を任せ、続く2匹目は避けきって翻す刀でその首を裂き、3匹目も狙うが浅く、刈った鬣が舞い散った。
突進してくる2匹を刀身でいなし、5匹集まるところをロニが歌い上げた鎮魂歌が捕らえ、抑え込んだ。
「これで全てか」
周囲へ目を配りながら警戒の強い声で呟く。
一つ息を吐くと、マテリアルを込めた杖の先を敵へ向けた。
「恐らくは。焚き火の方も警戒を続けましょう。……あちらも、こちらと同じ状況のようです」
エラは燃える火を肩越しに一瞥してから、敵へデバイスを向け光を放った。
森の奥から進んできた敵は3、ヴァイスが槍を翻し、ディーナも鎚矛を掲げる。
南條は結界を張り直すと、敵の動きを観察し、光源への進路を遮るように動いて杖を構えた。
「周囲の状況の注意と声掛けを徹底するんだ。焦らず、奢らずそのタイミングを逃さず狙え!」
敵の接近に、腕を伸ばしていたギアは、ヴァイスの声にその腕へもう片方の手を添えて狙いを据える。
嘶く音が吠えるように迫る。
「敵3対の確認、距離19、18、……ギアの射程に入ります、右端を攻撃します」
ヴァイスが1匹抑え込み、3匹の足止めにディーナが鎚矛を振るい足を止めた所へ向かって動く。
藻掻いて逃れた1匹がギアを狙い馬首を向けると、咄嗟にその柄を翻しギアの周囲に光りの壁を作った。
擦れた馬体に砕かれたマテリアルの燐光に照らされ、ギアは睨む様に敵を見据えた。
「近付かれる前に、処理したいんだよね、南條さんも」
南條がその雑魔に向かって光りを、最後の1匹らしく、3本の矢の残りは朝日を割って消えて何処かへ消える。
昇り始めていた朝日に、怪我は無いかと見回すロニが眩しげに目を細めた。
無いと答えて鞍馬とエラは一旦焚き火の傍らへ下がる。
集まったヴァイスと南條、ギアにも怪我は無いとディーナが下ろした得物を抱えるように。
「……疲れてません、か?」
メグがヴァイスへと杖を向けた。加減せずマテリアルを解放していた為だろうと答えを聞くと、回復の祈りをマテリアルに込めた。
強くない祈りでも多少の消耗は癒やせるらしく、ヴァイスの顔色は元に戻った。
●
中衛の戦い方はどう、とディーナがギアに尋ねた。
日の出を眺め、見張りながらの休息を取ると、それぞれにテントに残した荷物を片付ける。
ギアも座って包帯を巻き直していた。少しぎこちない動きで、覚えたことを並べていく。
巻き込まない、敵だけ、単独は駄目。
それから、前に出なくてもいい、と。
「……ギア、教わった時は、お礼を言うと、知っています。……ありがとうございました」
手早く、効率よく。エラは片付けを終えて出発の支度を調える。
ロニも荷物を纏めて支度を終えた。
目が冴えたと南條は、片付けた荷を置くと、雑魔の出没した方へと踏み入って地面や木々に痕跡を探す。
何等かの残留品があればと期待して暫く進んだが、それらしい物は見当たらない。
「持って帰れる収穫は無さそうだね」
足跡は見付けたが回収の方法に首を捻って溜息を吐く。
何度か群を倒している黒い馬。
出立前の目撃情報では他の影も出たと聞いたが、戦っている最中には見当たらなかった。
既に去ってしまったのだろうか。
原因を見付けたいところだと、荷物を置いて森を眺めた。
「少しでも体力を温存する為に通常警戒に戻して休める時に休んでおこう」
先の戦いで全て倒したか分からないが、と辺りを警戒しながら、ヴァイスは腰を落ち着けて森へ目を遣った。
遠くから微かな物音が聞こえた。
距離を考えれば相当大きな物が動いたようだ。
森を気に掛けていた3人が得物に手を掛けるが、その正確な位置すら掴めず、音は次第に聞こえなくなった。
目を凝らしても、やはり姿は遠いらしい。
支度と休息を終え、焚き火の火を落としてハンター達が出発する。
鞍馬はふと思い出してギアへ目を向けた。
今は包帯の巻かれた腕を見て尋ねる。
「きみは、腕が治ったら何をしたいのかな?」
夢があると言っていた。それを尋ねると、ギアは驚いた様に目を瞠って、それから嬉しそうに微笑んだ。
「……ギアは自分の指で引き金を引き、拳銃を、小銃を、狙撃銃を……この世のありとあらゆる銃を撃ってみたいのです」
今までは、ギアの腕が銃でしたから。
朗らかに語る少女と、戦闘の緊張感が抜けずにふらつく少女、その背後に揺れる緑の精霊と。
帰途は非常に穏やかなものとなり、その途中覗いた、以前は汚染されていた場所も、周囲と遜色なく育んだ緑を、赤く色付かせて、或いは冬らしく散らしていた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/24 21:36:41 |
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寝起きに馬肉と戦う日 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/11/26 06:50:38 |