ゲスト
(ka0000)
【陶曲】脚本家の逆襲
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2017/12/05 09:00
- 完成日
- 2017/12/13 01:54
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
山脈が連なる大地に降り立ち、黒い服を纏った男が右手に持っていたステッキの先を地面に軽く叩き付けた。
暗雲が広がっていく……。
白い仮面の男、カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、地の大精霊アメンスィに対して怒りと憎しみを顕にして、ステッキを掲げた。
「アメンスィよ、我が君、嫉妬王の『腕』を破壊した罪、万死に値する。よって、この大地を滅ぼす。これは、全てお前が招いたことだ」
『……。……』
アメンスィは、応えなかった。否、なるべくしてなったことかもしれない。
カッツォが、滑稽な笑い声を上げた。そして、襟元を正すと、こう告げた。
「そうだ。私とアメンスィとの間には、『契約』というものはない。おまえが、嫉妬王と勝手に結んだものであろう? 私には関係ないことだよ」
『……なんという理屈……いえ、あなたは嫉妬の歪虚……そう考えても可笑しくはありませんでしたね』
精霊の声だけが響く。
「フフフ、ご理解頂けて、うれしい限りだよ。これで思う存分、大地の精霊たちを利用させてもらおう。大地だけではない。この世界に生きる全てのモノに、愛憎の種を撒いてやろう。そうすれば、勝手にいがみ合い、自滅していく……これは見物だよ。なあ、アメンスィよ。何もできぬ自分自身を憎むが良い…ククク」
カッツォが指を鳴らすと、オート・パラディンとVOIDオートマトンの集団が出没した。
『待ちなさい。この付近にある遺跡には手を出してはなりません』
諭すように言うアメンスィ……姿は見えないが、声だけは聴こえてきた。
「どうやら、察しの良い大精霊サマですな。この大地で採れる鉱石は、自動兵器と融合し易いのでな。有難く、使わせて頂くとしよう」
カッツォは、楽しくて仕方がないと言わんばかりに、笑いを押し殺していた。
『カッツォ、あなたは本来……』
アメンスィの言葉を、斬り裂くように毅然と遮るカッツォ。
「過去の話は、知ったことではない。知ったところで、私は変わらぬのだ。今、私が存在できるのは、我が君、嫉妬王のおかげなのだよ」
そう告げた後、カッツォと嫉妬の眷属たちは消え、次の瞬間には大きな遺跡の中に侵入していた。
●
魔術師協会広報室に、サファイアの精霊が現れた。
『大変よ。山脈の遺跡に、カッツォ・ヴォイが侵入したわ。しかも、光の罠も張って、待ち構えているわ』
魔術師スコットは、すぐに依頼として手配することにした。
「サファイアの精霊、教えてくれてありがとう」
『異変があったら知らせるって約束したでしょう。それに、ハンターたちには助けられてばかりだし、私にできることは、これくらいのことよ』
サファイアの精霊は、遺跡内部の大まかな様子を教えてくれた。
スコットは紙に書き綴り、簡易的な地図を作製した。
「マクシミリアンさん、ボクも、その遺跡に連れて行ってください」
オートマトンの少年、ディエスが駆けつけてきた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、他のハンターたちを援護するため、依頼に参加していた。
「ディエス、相手はカッツォ・ヴォイだ。それでも、行くのか?」
真っ直ぐな瞳で問いかけるマクシミリアン。
「……正直に言うと怖い。だけど、仲間たちのためにも、ボクも何かしたいんだ」
ディエスは怖いとは言っていたが、震えてはいなかった。恐怖よりも、仲間を助けたい気持ちの方が大きいのだろう。
マクシミリアンが頷く。
「分かった。おまえには、回復を頼もう」
「はい! 任せてください」
ディエスは失った記憶を取り戻すためにも、カッツォ・ヴォイと接触するつもりでいた。
山脈の遺跡には、様々な鉱石が眠っていた。
カッツォの狙いは、一体、なにか?
新たな幕が、開こうとしていた。
山脈が連なる大地に降り立ち、黒い服を纏った男が右手に持っていたステッキの先を地面に軽く叩き付けた。
暗雲が広がっていく……。
白い仮面の男、カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、地の大精霊アメンスィに対して怒りと憎しみを顕にして、ステッキを掲げた。
「アメンスィよ、我が君、嫉妬王の『腕』を破壊した罪、万死に値する。よって、この大地を滅ぼす。これは、全てお前が招いたことだ」
『……。……』
アメンスィは、応えなかった。否、なるべくしてなったことかもしれない。
カッツォが、滑稽な笑い声を上げた。そして、襟元を正すと、こう告げた。
「そうだ。私とアメンスィとの間には、『契約』というものはない。おまえが、嫉妬王と勝手に結んだものであろう? 私には関係ないことだよ」
『……なんという理屈……いえ、あなたは嫉妬の歪虚……そう考えても可笑しくはありませんでしたね』
精霊の声だけが響く。
「フフフ、ご理解頂けて、うれしい限りだよ。これで思う存分、大地の精霊たちを利用させてもらおう。大地だけではない。この世界に生きる全てのモノに、愛憎の種を撒いてやろう。そうすれば、勝手にいがみ合い、自滅していく……これは見物だよ。なあ、アメンスィよ。何もできぬ自分自身を憎むが良い…ククク」
カッツォが指を鳴らすと、オート・パラディンとVOIDオートマトンの集団が出没した。
『待ちなさい。この付近にある遺跡には手を出してはなりません』
諭すように言うアメンスィ……姿は見えないが、声だけは聴こえてきた。
「どうやら、察しの良い大精霊サマですな。この大地で採れる鉱石は、自動兵器と融合し易いのでな。有難く、使わせて頂くとしよう」
カッツォは、楽しくて仕方がないと言わんばかりに、笑いを押し殺していた。
『カッツォ、あなたは本来……』
アメンスィの言葉を、斬り裂くように毅然と遮るカッツォ。
「過去の話は、知ったことではない。知ったところで、私は変わらぬのだ。今、私が存在できるのは、我が君、嫉妬王のおかげなのだよ」
そう告げた後、カッツォと嫉妬の眷属たちは消え、次の瞬間には大きな遺跡の中に侵入していた。
●
魔術師協会広報室に、サファイアの精霊が現れた。
『大変よ。山脈の遺跡に、カッツォ・ヴォイが侵入したわ。しかも、光の罠も張って、待ち構えているわ』
魔術師スコットは、すぐに依頼として手配することにした。
「サファイアの精霊、教えてくれてありがとう」
『異変があったら知らせるって約束したでしょう。それに、ハンターたちには助けられてばかりだし、私にできることは、これくらいのことよ』
サファイアの精霊は、遺跡内部の大まかな様子を教えてくれた。
スコットは紙に書き綴り、簡易的な地図を作製した。
「マクシミリアンさん、ボクも、その遺跡に連れて行ってください」
オートマトンの少年、ディエスが駆けつけてきた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、他のハンターたちを援護するため、依頼に参加していた。
「ディエス、相手はカッツォ・ヴォイだ。それでも、行くのか?」
真っ直ぐな瞳で問いかけるマクシミリアン。
「……正直に言うと怖い。だけど、仲間たちのためにも、ボクも何かしたいんだ」
ディエスは怖いとは言っていたが、震えてはいなかった。恐怖よりも、仲間を助けたい気持ちの方が大きいのだろう。
マクシミリアンが頷く。
「分かった。おまえには、回復を頼もう」
「はい! 任せてください」
ディエスは失った記憶を取り戻すためにも、カッツォ・ヴォイと接触するつもりでいた。
山脈の遺跡には、様々な鉱石が眠っていた。
カッツォの狙いは、一体、なにか?
新たな幕が、開こうとしていた。
リプレイ本文
山々が連なる大地に、その遺跡があった。
「常識的に考えれば、このような場所に巨大な遺跡があるのも、妙ですね」
天央 観智(ka0896)が、そう思うのも尤もだ。
だからこそ、何のために遺跡が作られたのか、観智は気になっていたが、目的はカッツォ・ヴォイ率いる嫉妬の眷属たちを倒すことだ。
遺跡の入口には、VOIDオートマトンが群がり、ハンターたちの行先を遮っていた。
「正義のニンジャとしてカッツォの企みを暴き、この舞台から強制退去なんだからっ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、入口を塞いでいるVOIDオートマトンたちに向けて『五色光符陣』の結界を張り巡らせると、範囲内にいた敵が光で焼き尽くされ、消滅していった。
「皆さん、ジャンジャン攻撃して、内部へGO!」
ルンルンはそう言いながら、遺跡内部へと駆け出していった。
「カッツォが単純に待ち構えてる訳がねえ。ロクでもねえ悪巧みをしてるはずだ。させるかよ!」
ジャック・エルギン(ka1522)は遺跡の入口から間合いを取り、スペルボウ「フェリメント」を用いた『ダブルシューティング』を放った。
一体のVOIDオートマトンに命中して矢の攻撃により消滅すると、突破口ができた。ジャックは、その隙間を潜り抜けて駆け出し、内部へと辿り着いた。
見渡せば、巨大な空間。壁には淡い灯のような物が輝いていた。
ジャックは違和感を覚えつつも、ジュード・エアハート(ka0410)が『直感視』で光の罠を発見し、目印に放ったペイント弾が、罠に命中すると光の檻が出現した。
「リク君、罠は点々と散らばってるみたいだよ」
ジュードがそう言うと、キヅカ・リク(ka0038)が微笑みながら頷く。
「だったら、唄うしかないよね」
リクは『アイデアル・ソング』でバラード調の歌を唄いながら、ステップを踏み、少しずつ前方へと舞うように移動していく。途中、罠が発動するが、リクが歌いながら床を軽やかに踏みつけると、光の檻が足踏みで壊されていくではないか。
リクが通った石畳の罠は、ガラスのように粉々に砕け散っていた。それはまるで、男性アイドルが花道を演出して走っているようにも見えた。
「VOIDオートマトンの方は任せて、ですよぉ」
星野 ハナ(ka5852)は、VOIDオートマトン集団の殲滅に専念することにしたようだ。『五色光符陣』を解き放ったハナは、範囲内にいたVOIDオートマトンたちが全て焼き尽くされ消え去ると、うれしそうに瞳を輝かせていた。
「力の限り全ブッコロしてあげますよぅ!」
ハナは先行組のために露払いする意識はあったが、心密かに五色光符陣28連打を目指していた。
「まずは、入口にいるVOIDオートマトンたちを倒すのが先決ですね」
観智も加勢に入り、『グラビティフォール』を放った。VOIDオートマトンの群れが紫色の光を伴う重力波に巻き込まれ、一気に消滅していった。幸い、範囲内には味方のハンターたちがいなかったため、消滅したのは、敵のVOIDオートマトンだけだった。
「ハナさんのように、敵にのみ有効な魔法を使えば、もう少し魔法のコントロールにも融通が利きそうですが……」
観智はそう呟きつつも、仲間を範囲攻撃に巻き込まない様に、位置には気を配っていた。
「どうやら、先行組は内部へ行けそうだな」
アーサー・ホーガン(ka0471)は入口手前で『堅守』の構えを取り、試作振動刀「オートMURAMASA」とパリィグローブ「ディスターブ」による『二刀流』で前方にいるVOIDオートマトンを斬り裂くと、『アスラトゥーリ』のオーラが迸り、直線上にいたVOIDオートマトンたちを蹴散らしていく。オーラに貫かれた敵は、砕け散り、消滅していった。
アーサーは堅守の効果で、移動はできなかったが、それでも仲間のハンターたちを先へと行かせるため、自身の持てる力を駆使して、さらに突破口を広げたのだ。
「アーサーさん、ありがとう。これで、先へと進めるよ!」
クレール・ディンセルフ(ka0586)はステージに立つアイドルのように『紋章奏剣・協奏曲「陽炎」』を披露すると、アーサーが切り開いた突破口を移動しながら、光の檻を次々と踏み潰していく。
続いて、アリア・セリウス(ka6424)の『アイデアル・ソング』が響き渡り、クレールが通った場所を移動しながら、『透刃花・玲瓏』を繰り出した。その前方にいるのは、オート・パラディンだ。
剣舞の二重奏……クレールとアリアの想いが交差していく。
アリアの龍翼鎌「クータスタ」が、オート・パラディンの胴体を刺し貫くと、胴部が砕け散り、かなりのダメージを与えることができた。
「私の一撃でも倒れない……カッツォの支配下で強化されているのね」
「でしたら、俺も援護します」
後方から、神代 誠一(ka2086)が法術棒手裏剣「射光」を的確に投げ付け、『広角投射』によってオート・パラディンに命中し、爆発と同時に消滅していく。
すぐさまリロードする誠一。
「アリアさんが攻撃したパラディンを狙ってみましたが、爆発しながら消滅するのが気になりますね」
誠一は慎重に戦況を把握していた。クレールが罠を踏み潰してくれたおかげで、アリアの援護に入ることができたが、オート・パラディンたちの防衛陣の奥にはカッツォ・ヴォイがいるはずだ。
●
クラルテマントを纏ったカーミン・S・フィールズ(ka1559)は、グラヴィティブーツ「カルフ」で『シンニンギア』を発動させ、壁を歩いていく。
だが、罠は壁にも配置されていたのだ。カーミンは壁に固定されたように、光の檻に引っかかってしまった。
「移動できない?!」
反射的にショットアンカー「スピニット」で杭を壁に撃ちこむカーミン。
「ん? 移動できないだけで、行動はできるわね。罠も使い様ということで」
壁に固定した状態で、カーミンは上から戦況を観ることができるようになった。
ふと見遣れば、符の式神が数体、床の罠に引っかかり、光の檻に包まれていた。
ルンルンが罠対策として放った『御霊符』の術だ。
「ルンルン忍法式神捜査網! 死して屍消えるから無し」
VOIDオートマトンたちは、目についた式神を銃で撃ち抜いていた。
●
「先行組はオート・パラディンと接触したようだけど、残りのVOIDオートマトンたちも倒しておいた方がいいわね」
八原 篝(ka3104)は遺跡内部には入ったが、入口付近にいるVOIDオートマトンを片づけるため、魔導機式複合弓「ピアッサー」を構え、龍矢「シ・ヴァユ」を番えると『ハウンドバレット』によって弾道操作された矢が、直線を描きながら次々に敵を撃ち抜く。VOIDオートマトン6体は、篝が放った矢によって胴体を貫かれ、その衝撃で粉々になり、消滅していく。
『堅守』を使い、丑(ka4498)はVOIDオートマトンを引き付けようとしていたが、マテリアルには反応せず、思うように敵は近寄ってこなかった。
「やれやれ、敵味方の区別ができない相手でしたね」
堅守も敵を引き付けるスキルではあったが、マテリアルに反応しない対象には効果がない。
「私の傍にいれば、罠に引っかからずに進めるはずだ」
鞍馬 真(ka5819)は『アイデアル・ソング』を詠唱し、軽やかにステップして移動しながら光の檻を踏み、次々と潰していく。まるで霜柱を踏むような音がした。周囲にいるハンターにも歌舞の効果が付与され、罠に引っかからずに移動することができた。
「良い音色だな。次は、虱潰しに攻撃して、皆のフォローに廻ることにするか」
独りで何やら納得していた真であった。
●
「罠を踏み潰す人が多いな」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は『直感視』を駆使しながら違和感のある場所にペイント弾を放つと、命中した石畳に塗料が付着して、光の檻が発生していた。
ミオレスカ(ka3496)が『シャープシューティング』でロングボウ「エソ・ニラク」を構え、『リトリビューション』を放つと、射程範囲内にいたオート・パラディン6体に頭上から矢が突き刺さり、懲罰の効果によって行動を阻害することができた。
「私の攻撃でも、敵の動きは阻害できたようです。かと言って、カッツォに効果があるかは確信はありませんけど」
ミオレスカの攻撃によって行動阻害になったパラディン6体は、カッツォから離れた場所にいたのだ。
「周囲にいるヤツらが、パラディンの方へ行ったら厄介だわね」
マリィア・バルデス(ka5848)はVOIDオートマトンたちを狙い、接近して移動すると、黄金拳銃を構えて『フォールシュート』を放った。
範囲内にいた敵は、抵抗する術も無く弾に撃ち抜かれ、消滅していく。
マリィアは、罠の目印や破壊された場所を確認しながら、カッツォがいる場所を目指して移動することを優先していた。
アーク・フォーサイス(ka6568)は、幼馴染のレム・フィバート(ka6552)と連携して、オート・パラディン集団へ攻撃を繰り出した。
「ミオレスカが動きを封じてくれたパラディンを狙うよ」
アークが聖罰刃「ターミナー・レイ」を両手で構え、『部位狙い』でオート・パラディンの脚…関節部を斬り裂いた。脚を斬り裂かれたパラディンがバランスを崩す。
「アーくん、任せてね」
止めとばかりに、レムは聖拳「プロミネント・グリム」を構えて『青龍翔咬波』を解き放った。2体のオート・パラディンが直線上に放出されたマテリアルの波動によって、ダメージを喰らい、1体は爆発して消え去り、もう1体のパラディンは左の胴部が抉れるように破壊されていた。
その頃、フィーナ・マギ・フィルム(ka6617)はイヤリング「エピキノニア」から聴こえるカーミンの声を頼りに、『エクステンドキャスト』で魔力を練り込むと、『メテオスウォーム』を放った。
魔法収束により威力や範囲が拡大した流星が降り注ぎ、後衛にいたオート・パラディンたちが焼き尽くされた。
だが。
「あれだけの攻撃で、倒れないの?!」
カーミンは、壁に発生した光の檻で固定した状態のまま、観測者の双眼鏡を使い、戦況を見ていたが、カッツォの周囲にいるパラディンたちは、主人を守るように陣取っていた。
その様子をフィーナに通信したのだが、狙いは合っていたのだ。凄まじい魔法が命中したのだが、カッツォと周囲にいるパラディンたちは、何事もなかったかのように立ち尽くしていた。
●
爆炎が消え去り、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が『炎檻』で巨大な幻影の腕を浮かび上がらせ、後衛にいたオート・パラディン1体を引き寄せると、魔斧「モレク」による『砕火』の連撃を繰り出す。
「こっちに持ってきちまえば、良いだけだ」
ボルディアの燃え盛る攻撃により、パラディン1体が爆発し、消滅した。ボルディアは爆発に巻き込まれて、怪我をしていたが、ガミル・ジラク・アーマーで全身を防御していたこともあり、致命傷にはならなかった。
ジャックもまた、カッツォが操作しているパラディンたちを優先的に狙い、『ガウスジェイル』を発動させ、バスタードソード「アニマ・リベラ」からの『渾身撃』をパラディン一体に叩き込む。
ジャックの攻撃により、パラディン一体は警戒の効果を付与されていたが、ダメージに耐え切れずに爆発して、消滅していった。
「おっし、これでカッツォまでの突破口ができたぜ。カッツォを叩くなら、今だぜ!」
ジャックの呼びかけに、ルンルンが『黒曜封印符』の術を使い、カッツォのカウンター封印を試みた。
カッツォは封印の抵抗に打ち勝ち、不敵に立ち尽くしていた。
続いて、仁川 リア(ka3483)は前もって発動させていた『ナイトカーテン』を駆使してカッツォに接近していく。パラディンたちは気配に気付くことはなかった。
リアがクリスタルバレットを装填した銃剣付き騎兵銃「SABER」を構えて、銃弾を放った。
「4発限りのとっておき、存分に喰らいなよ!」
「ほほう、残念だが、私には見えているよ」
カッツォは銃弾を回避しつつ、反撃のために素早くリアに接近する。これにリアは反応し、カル・ゾ・リベリアを抜く。
ステッキを繰り出そうとしたその瞬間、リアの『雲散霧消』が発動し、剣がカッツォの肩を斬り裂いた。
「同盟に住む精霊たちのためにも、アメンスィを救う! だからカッツォ、君はここで必ず倒す!」
リアの言葉に、カッツォは冷めた声で応えた。リアの攻撃が命中したことで、更にカッツォのカウンターが誘発された。
「アメンスィを救うだと? そんな価値があったとはな」
「?!」
瞬影が発動せぬほどの速さで、カッツォのカウンターが繰り出され、リアの腹部にはステッキが突き刺さっていた。
血飛沫が飛び、リアが弾き飛ばされていく。
地面に叩きつけられるように転がるリア……重体となり、気を失っていた。
さらに、一人のハンターが飛び込んできた。
「存在を知ったときから殺したいと思っていたよ、よろしく同業者さん」
リカルド=フェアバーン(ka0356)は、『踏込』からの『虎の型』を駆使し、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」と試作振動刀「オートMURAMASA」の二刀の攻撃をカッツォの右腕を狙って叩き込む。
「杖を持つ手を狙うと、カウンターは確かに出せない……考えたな」
カッツォはステッキを巧みに操り、リカルドの二刀を軽々と受け払っていた。
「……攻撃を仕掛ける隙がないな」
限られた時間では、これ以上、カッツォに対してリカルドも攻撃はできなかった。
「エセ脚本家! 手を止めろ! さもなきゃこのまま焼き斬り殺す!」
クレールが叫ぶ。
カリスマリス・クレールを掲げ、紋章剣『炎竜』が破壊エネルギーを噴射していく。
カッツォだけでなく、周囲にいたパラディンたちも扇状に炎に巻き込まれていった。
「機導術か。かなりの使い手のようだが、それでは、この私を倒すことはできないな」
炎の中からカッツォが出現し、クレールに対してカウンターの一撃を繰り出す。
「えっ?!」
クレールが気が付いた時には、自分の腹部にカッツォのステッキが突き刺さっていた。
その衝撃で、クレールは吐血し、身体からは血が零れ落ち、気絶して倒れていた。
それでも、ハンターたちは諦めなかった。
フィーナが、カッツォに問いかけた。
「ナナを救ったのは、貴方?」
一瞬の沈黙。そして。
「フフフ、その通りだ。ナナ・ナインは、私が救ってやったのだよ。おまえも知っての通り、ナナは素晴らしい劇を繰り広げているだろう?」
カッツォの声は、どことなく不遜に聴こえた。
静かに告げるフィーナ。
「なら……貴方に、安らかな眠りを」
すでに『絶対零度の檻』は解き放たれていた。
氷の嵐が、カッツォとパラディンたちに吹き荒れ、絶対零度まで達し、液化した窒素が凍りついたかと思うと、パラディンたちは凍り漬けになり、身動きが取れなくなっていた。
カッツォも氷結していたが、見る見るうちに身体に張り付いた氷が解けていく。
「これまた、考えたものだ。マギステルの魔法は伊達ではないという事か」
そう言うや否や、カッツォはダメージを受けたこともあり、カウンターが発動して、フィーナの小さな体をステッキで貫いた。
「あ……」
フィーナは何か言おうとしたが、崩れるように倒れ、腹部から血を流していた。
と、そこへ、『ナイトカーテン』を纏った誠一が、カッツォに接近し、リヤンワイヤーの鞭で攻撃をしかけていく。
とっさに回避するカッツォ。
その刹那、誠一が装備していたブーツ「アンドルディース」が『影祓』を発動させ、目にも止まらぬ速さで鞭による連続攻撃を繰り出す。
狙いは、カッツォの仮面。
「貴方のやり方には虫酸が走りますよ。許さないというレベルを超えています」
誠一が、普段は見せない冷酷な瞳で告げる。それは殺意か……。
誠一の鞭が命中し、『蔦葛』によってカッツォの頭部に絡みつくが、紙一重で仮面は取れなかった。
「……貴様……ヒトの分際で、私の仮面を狙うとは……小賢しいっ!!」
カッツォは激しい怒りと共に、重い一撃のカウンターを繰り出した。
誠一はカッツォと接近していたこともあり、鋭い一撃が飛び込んでくる。
カッツォのステッキが、誠一の胴部に突き刺さっていた。強引にステッキを引き抜くカッツォ。
誠一は血塗れになりながら、力尽きて倒れた。
「……俺が……倒れても……仲間が……い……る」
そう呟いた後、誠一は気を失っていた。
先行組と合流していた鳳城 錬介(ka6053)が、誠一の元へと駆け寄り、『ファーストエイド』による『フルリカバリー』を施し、次の戦いに備えて『ガウスジェイル』の結界を張った。
「……なんとか命を食い止めることができましたね。回復には時間はかかるでしょうが、できれば、この戦域からカッツォを追い出したいところです」
あと一秒でも遅かったら、誠一はどうなっていたことか。
錬介の処置が間に合ったのは、ファーストエイドを発動していたこともあった。
カッツォは落ち着きを取り戻すと、大きく指を鳴らした。
オート・パラディンたちが、一斉にマテリアルレーザーを放つ。
錬介の『ガウスジェイル』によってレーザーが引き寄せられていく。
聖盾剣「アレクサンダー」で、敵のレーザーを受け流す錬介。
ジャックも『ガウスジェイル』を発動させていたこともあり、敵のレーザーを引き寄せるようにパリィグローブ「ディスターブ」で受け流していた。
「カッツォ! てめえの企み、絶対に阻止してやるからなっ!」
ジャックがそう叫んだ後、カッツォは俊足を活かして移動していった。
●
「おまえは、ディエスか」
カッツォは、遺跡の中央部に立っていた。
オートマトンのディエスは、首に手を押さえて苦しんでいた。
カッツォに首を掴まれ、持ち上げられていたからだ。
「やめろぉぉぉぉぉーっ!!」
リクの叫びが響く。
ディエスの護衛をしていたリクであったが、カッツォに割り込まれてしまい、とっさに攻撃できたのは、『デルタレイ』であった。
光の一点はカッツォの腕に掠ったが、残り二点の光は命中せず、一筋の光となって消えていく。
「ディエスを返して。その子は、仲間を助けたくて、ここに来たのよ」
アリアは『アイデアル・ソング』を詠唱しながら、『透刃花・玲瓏』を繰り出し『心の刃』でカッツォの仮面を狙った。
「私の歌劇を教えてあげるわ。その仮面の砕ける音を伴奏にしても良いのよ」
「……おまえの心の刃には、憎しみがない。これでは、さすがの私も反撃できないな」
カッツォは身体を逸らして、仮面を死守することはできたが、アリアの龍翼鎌「クータスタ」が胴部に突き刺さっていた。
身構えるアリアだが、カッツォのカウンターは発動しなかった。
白い仮面の男は、ディエスを物のように投げ捨てた。
「神の器にならなかった失敗作には、用はない。そんなに欲しければ、くれてやろう」
「なんて言い草だ。ディエスは、俺たちの仲間だ」
アークは投げ飛ばされたディエスを受け止め、やさしく両腕で抱えていた。
「……アークさん、ボク……」
ディエスを助けることができて、安堵するアーク。
レムがディエスの様子に気付いた。
「待って、アーくん。ディエス君は首の辺りに怪我があるよ。それに、なんだか麻痺してるみたい」
そう言って、レムが『チャクラ・ヒール』を施すと、ディエスの首元が回復して、麻痺も解除されていく。
「レム、一旦、ここから離れよう。敵に囲まれたら、ディエスがまた狙われるかもしれない」
アークはディエスを抱えながら走り出すと、レムはアークとディエスを守るために周囲を警戒しながら駆け出した。
●
「パラディンには効果があるようだな」
真が『ソウルトーチ』を纏うと、オート・パラディン3体を引き付けることができた。
「では、真さんの動きに合わせて、パラディンを狙うのが賢明ですかね」
丑は太刀「宗三左文字」を構え、『薙ぎ払い』で前方にいるパラディンたちを斬り裂いていく。
「私も援護に入るわ」
篝が魔導機式複合弓「ピアッサー」にゼノンの矢を番えて『射手の矜持』からの『二つ番え』でオート・パラディンを狙い撃つ。命中して矢が突き刺さると、パラディンは爆発して消滅した。
その頃、カーミンは壁に張り付いたまま、フィーナにイヤリング「エピキノニア」の通信機で呼びかけていたが、彼女からの応答はなかった。
代わりに返答があったのは、ジュードだった。
「フィーナさんは重体で気絶してるけど、ステラさんたちが助けに行ってるから安心して。カーミンさんから見た戦況を知りたいんだけど、良いかな?」
「フィーナは無事なのね。重体か……心配だなぁ。あっと、ごめん。今の戦況ね。ジュードのいる位置からだと、前方にはオート・パラディンたちがV字型の陣形になってるわ。背後には、いつのまにか、カッツォがいるから気を付けて」
カーミンの連絡を受けて、ジュードは後ろを振り返る。確かにカッツォがいた。
ステラはフィーナの元へと駆け寄ると、『鎧受け』を駆使してオート・パラディンたちのマテリアルブレードを受け流していた。
ミオレスカが、パラディンの放ったレーザーを『妨害射撃』で食い止める。
「フィーナさん、もうしばらくの辛抱です」
「待ってろ。脱出経路を作るからな」
ステラはライフル「メルヴイルM38-SP」を構えて『リトリビューション』の銃弾を放った。オート・パラディンたちに命中して、貫かれた敵は一時的に身体の自由を奪われていた。
ミオレスカが、ロングボウ「エソ・ニラク」を装備した状態で『フォールシュート』を放つと、通常より広い範囲で、敵を撃ち抜いていく。命中した矢によってダメージを受けたパラディンたちは爆発して消え去った。
激戦の中、龍神神官のマルセル=ヴァラン(ka6931)がステラたちと合流し、スペルロザリオ「エレオス」を発動体とした『ヒール』をフィーナに施した。
「血を止めることはできましたが、やはり回復には時間がかかると思います」
痛々しいフィーナを見て、マルセルは龍神に祈りを捧げていた。
カッツォは、他のハンターたちと闘いを繰り広げていた。
「神官さん、フィーナの血止め、恩に着るぜ」
ステラはフィーナを背負い、ミオレスカが彼女たちの護衛に廻った。
「入口に向かうにしても、カッツォがいますから、今、動くのは危険です」
そう判断したミオレスカは、フィーナを背負ったステラを庇うように制した。
カッツォは、相変わらずリカルドに狙われていた。
「意外と、しぶといヤツだな」
カッツォがそう告げると、リカルドは問答無用で『踏込』からの『龍の型』を駆使して試作光斬刀「MURASAMEブレイド」を振り下ろした。
頭部を狙ったはずだが、カッツォは身体を逸らしていた。命中したのは、腹部……カウンターを誘発して、リカルドの胴部にステッキを深く突き刺した。『ムルパティ・プティ・シラット・鋼の肉塊』は確かに発動していたが、カッツォはリカルドの急所を狙っていたのだ。
運命の賽は、皮肉にもカッツォに味方した。急所を突かれたリカルドの身体からは血が飛び散り、反動で後方へと弾き飛ばされた。
「な……んて、こった」
リカルドの意識は徐々に薄れ、気を失った。
「重体で済むとは、覚醒者とは恐ろしい存在だな」
カッツォがそう言い放つと、リボルバー「ピースメイカー」を構えたジュードが引き金を引いた。その残弾が残り1発となった瞬間、ジュードの『トリガーエンド』が発動したのだ。攻撃中に収束させたマテリアルが一気に解き放たれ、カッツォの肩を撃ち抜いていた。
「ほほぅ、その技では避けられぬな」
感心したように呟くカッツォ。
ジュードは仮面を狙ったはずだが、命中したのは肩だった。
「狙いは外れても、別の部位には命中したってことは……」
「遠距離からなら、反撃はできないでしょう?」
マリィアは魔導銃「狂乱せしアルコル」を構え、『クイックリロード』で銃弾を満たすと『フォールシュート』による連続射撃でカッツォを狙った。周囲にいたパラディンには攻撃が命中していた。
だが、カッツォは全ての弾丸を回避していたのだ。
「もう少し相手をしてやりたいところだが、そろそろ遺跡から出た方が良さそうだな」
カッツォはシルクハットを取り、御辞儀をすると、何食わぬ顔で、その場から消え去った。
「……射撃を全て回避するなんて、やはり災厄の十三魔は侮れないわね」
悔しそうにマリィアが呟いた。
●
カッツォを追い出すことはできたが、まだオート・パラディンが残っていた。
「ようやく、ここまで来れたな」
先行組と合流したアーサーは、『堅守』の構えから『二刀流』を繰り出し、パラディンの胴部を斬り裂くと『アスラトゥーリ』を放つ。2体のパラディンが巻き込まれ、爆発して消滅。
ボルディアが『烽火連天』で魔斧「モレク」を豪快に振り回し、周囲にいるパラディンを薙ぎ払っていく。
「おまえらのご主人様はすでに撤退したぜ」
「手下を置き去りか。あまり気持ちの良いものではないな」
真は『ソウルエッジ』を発動させ、魔導剣「カオスウィース」による『薙ぎ払い』でパラディンを斬り裂いていく。
【豪炎】を噴射して援護に入ったのは、リクだった。
「カッツォは消えたが、またどこかで会いそうだな」
「その時は、全力でブッコロですぅ」
ハナが『五色光符陣』を放つと、パラディンは光の結界に巻き込まれ、ダメージを受けると爆発して消滅していった。
灯火の水晶球が、ハナの周囲で動き回り、光を放っていた。
「敵は全滅ですよぉ。カッツォ以外は」
「あの場所、気になります」
ミオレスカが柱の角に異変を感じて、ペイント弾を放った。命中して塗料が付くと、光の檻が発生していた。
「これは、どういうことでしょう?」
「まさか、とは思いますが」
錬介が『ピュリフィケーション』を発動させると、負のマテリアルが浄化され、光の檻も消滅。
その後、魔術師協会が遺跡を調査することになった。
戦いが終わり、マルセルと錬介は手分けして、仲間の怪我を回復の術で癒していた。
「皆様に青龍様の加護があらんことを……」
マルセルは『ヒーリングスフィア』を発動させ、範囲内にいる味方の怪我を癒していった。
(未熟ながらもこの場にはせ参じたハンターとして、そして何より青龍様に仕える神官としての務めです)
懸命に、自分のできることで人を助けようとするマルセルの姿に、ディエスは心打たれていた。
気を引き締め、ディエスは六花の指輪を手に持ち、アリアに『ヒール』を施した。
「アリアさん、約束通り、この指輪は返すよ。無事に戻れたら、そうしたいと言ったの覚えてる?」
「そうだったわね。約束を守ってくれて、ありがとう」
アリアは六花の指輪を受け取り、ディエスに微笑んだ。
リクがやってきて、優しくディエスの肩を叩く。
「カッツォに割り込まれた時は、どうなるかと思ったけど、ディエスのこと気にかけてくれた人たちが協力してくれたのが、うれしかったな」
そう告げるリクに、ディエスは無邪気な笑顔を見せた。
「リクさんは、いろいろな人たちに信頼されているんだね。ボク、もっともっと強くなって、一人でも多くの人達を助けたいな」
ディエスは、この世界に来て、ようやく生きる目的を見出していた。
そんな様子を見て、アークが静かに安堵していた。
「常識的に考えれば、このような場所に巨大な遺跡があるのも、妙ですね」
天央 観智(ka0896)が、そう思うのも尤もだ。
だからこそ、何のために遺跡が作られたのか、観智は気になっていたが、目的はカッツォ・ヴォイ率いる嫉妬の眷属たちを倒すことだ。
遺跡の入口には、VOIDオートマトンが群がり、ハンターたちの行先を遮っていた。
「正義のニンジャとしてカッツォの企みを暴き、この舞台から強制退去なんだからっ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、入口を塞いでいるVOIDオートマトンたちに向けて『五色光符陣』の結界を張り巡らせると、範囲内にいた敵が光で焼き尽くされ、消滅していった。
「皆さん、ジャンジャン攻撃して、内部へGO!」
ルンルンはそう言いながら、遺跡内部へと駆け出していった。
「カッツォが単純に待ち構えてる訳がねえ。ロクでもねえ悪巧みをしてるはずだ。させるかよ!」
ジャック・エルギン(ka1522)は遺跡の入口から間合いを取り、スペルボウ「フェリメント」を用いた『ダブルシューティング』を放った。
一体のVOIDオートマトンに命中して矢の攻撃により消滅すると、突破口ができた。ジャックは、その隙間を潜り抜けて駆け出し、内部へと辿り着いた。
見渡せば、巨大な空間。壁には淡い灯のような物が輝いていた。
ジャックは違和感を覚えつつも、ジュード・エアハート(ka0410)が『直感視』で光の罠を発見し、目印に放ったペイント弾が、罠に命中すると光の檻が出現した。
「リク君、罠は点々と散らばってるみたいだよ」
ジュードがそう言うと、キヅカ・リク(ka0038)が微笑みながら頷く。
「だったら、唄うしかないよね」
リクは『アイデアル・ソング』でバラード調の歌を唄いながら、ステップを踏み、少しずつ前方へと舞うように移動していく。途中、罠が発動するが、リクが歌いながら床を軽やかに踏みつけると、光の檻が足踏みで壊されていくではないか。
リクが通った石畳の罠は、ガラスのように粉々に砕け散っていた。それはまるで、男性アイドルが花道を演出して走っているようにも見えた。
「VOIDオートマトンの方は任せて、ですよぉ」
星野 ハナ(ka5852)は、VOIDオートマトン集団の殲滅に専念することにしたようだ。『五色光符陣』を解き放ったハナは、範囲内にいたVOIDオートマトンたちが全て焼き尽くされ消え去ると、うれしそうに瞳を輝かせていた。
「力の限り全ブッコロしてあげますよぅ!」
ハナは先行組のために露払いする意識はあったが、心密かに五色光符陣28連打を目指していた。
「まずは、入口にいるVOIDオートマトンたちを倒すのが先決ですね」
観智も加勢に入り、『グラビティフォール』を放った。VOIDオートマトンの群れが紫色の光を伴う重力波に巻き込まれ、一気に消滅していった。幸い、範囲内には味方のハンターたちがいなかったため、消滅したのは、敵のVOIDオートマトンだけだった。
「ハナさんのように、敵にのみ有効な魔法を使えば、もう少し魔法のコントロールにも融通が利きそうですが……」
観智はそう呟きつつも、仲間を範囲攻撃に巻き込まない様に、位置には気を配っていた。
「どうやら、先行組は内部へ行けそうだな」
アーサー・ホーガン(ka0471)は入口手前で『堅守』の構えを取り、試作振動刀「オートMURAMASA」とパリィグローブ「ディスターブ」による『二刀流』で前方にいるVOIDオートマトンを斬り裂くと、『アスラトゥーリ』のオーラが迸り、直線上にいたVOIDオートマトンたちを蹴散らしていく。オーラに貫かれた敵は、砕け散り、消滅していった。
アーサーは堅守の効果で、移動はできなかったが、それでも仲間のハンターたちを先へと行かせるため、自身の持てる力を駆使して、さらに突破口を広げたのだ。
「アーサーさん、ありがとう。これで、先へと進めるよ!」
クレール・ディンセルフ(ka0586)はステージに立つアイドルのように『紋章奏剣・協奏曲「陽炎」』を披露すると、アーサーが切り開いた突破口を移動しながら、光の檻を次々と踏み潰していく。
続いて、アリア・セリウス(ka6424)の『アイデアル・ソング』が響き渡り、クレールが通った場所を移動しながら、『透刃花・玲瓏』を繰り出した。その前方にいるのは、オート・パラディンだ。
剣舞の二重奏……クレールとアリアの想いが交差していく。
アリアの龍翼鎌「クータスタ」が、オート・パラディンの胴体を刺し貫くと、胴部が砕け散り、かなりのダメージを与えることができた。
「私の一撃でも倒れない……カッツォの支配下で強化されているのね」
「でしたら、俺も援護します」
後方から、神代 誠一(ka2086)が法術棒手裏剣「射光」を的確に投げ付け、『広角投射』によってオート・パラディンに命中し、爆発と同時に消滅していく。
すぐさまリロードする誠一。
「アリアさんが攻撃したパラディンを狙ってみましたが、爆発しながら消滅するのが気になりますね」
誠一は慎重に戦況を把握していた。クレールが罠を踏み潰してくれたおかげで、アリアの援護に入ることができたが、オート・パラディンたちの防衛陣の奥にはカッツォ・ヴォイがいるはずだ。
●
クラルテマントを纏ったカーミン・S・フィールズ(ka1559)は、グラヴィティブーツ「カルフ」で『シンニンギア』を発動させ、壁を歩いていく。
だが、罠は壁にも配置されていたのだ。カーミンは壁に固定されたように、光の檻に引っかかってしまった。
「移動できない?!」
反射的にショットアンカー「スピニット」で杭を壁に撃ちこむカーミン。
「ん? 移動できないだけで、行動はできるわね。罠も使い様ということで」
壁に固定した状態で、カーミンは上から戦況を観ることができるようになった。
ふと見遣れば、符の式神が数体、床の罠に引っかかり、光の檻に包まれていた。
ルンルンが罠対策として放った『御霊符』の術だ。
「ルンルン忍法式神捜査網! 死して屍消えるから無し」
VOIDオートマトンたちは、目についた式神を銃で撃ち抜いていた。
●
「先行組はオート・パラディンと接触したようだけど、残りのVOIDオートマトンたちも倒しておいた方がいいわね」
八原 篝(ka3104)は遺跡内部には入ったが、入口付近にいるVOIDオートマトンを片づけるため、魔導機式複合弓「ピアッサー」を構え、龍矢「シ・ヴァユ」を番えると『ハウンドバレット』によって弾道操作された矢が、直線を描きながら次々に敵を撃ち抜く。VOIDオートマトン6体は、篝が放った矢によって胴体を貫かれ、その衝撃で粉々になり、消滅していく。
『堅守』を使い、丑(ka4498)はVOIDオートマトンを引き付けようとしていたが、マテリアルには反応せず、思うように敵は近寄ってこなかった。
「やれやれ、敵味方の区別ができない相手でしたね」
堅守も敵を引き付けるスキルではあったが、マテリアルに反応しない対象には効果がない。
「私の傍にいれば、罠に引っかからずに進めるはずだ」
鞍馬 真(ka5819)は『アイデアル・ソング』を詠唱し、軽やかにステップして移動しながら光の檻を踏み、次々と潰していく。まるで霜柱を踏むような音がした。周囲にいるハンターにも歌舞の効果が付与され、罠に引っかからずに移動することができた。
「良い音色だな。次は、虱潰しに攻撃して、皆のフォローに廻ることにするか」
独りで何やら納得していた真であった。
●
「罠を踏み潰す人が多いな」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は『直感視』を駆使しながら違和感のある場所にペイント弾を放つと、命中した石畳に塗料が付着して、光の檻が発生していた。
ミオレスカ(ka3496)が『シャープシューティング』でロングボウ「エソ・ニラク」を構え、『リトリビューション』を放つと、射程範囲内にいたオート・パラディン6体に頭上から矢が突き刺さり、懲罰の効果によって行動を阻害することができた。
「私の攻撃でも、敵の動きは阻害できたようです。かと言って、カッツォに効果があるかは確信はありませんけど」
ミオレスカの攻撃によって行動阻害になったパラディン6体は、カッツォから離れた場所にいたのだ。
「周囲にいるヤツらが、パラディンの方へ行ったら厄介だわね」
マリィア・バルデス(ka5848)はVOIDオートマトンたちを狙い、接近して移動すると、黄金拳銃を構えて『フォールシュート』を放った。
範囲内にいた敵は、抵抗する術も無く弾に撃ち抜かれ、消滅していく。
マリィアは、罠の目印や破壊された場所を確認しながら、カッツォがいる場所を目指して移動することを優先していた。
アーク・フォーサイス(ka6568)は、幼馴染のレム・フィバート(ka6552)と連携して、オート・パラディン集団へ攻撃を繰り出した。
「ミオレスカが動きを封じてくれたパラディンを狙うよ」
アークが聖罰刃「ターミナー・レイ」を両手で構え、『部位狙い』でオート・パラディンの脚…関節部を斬り裂いた。脚を斬り裂かれたパラディンがバランスを崩す。
「アーくん、任せてね」
止めとばかりに、レムは聖拳「プロミネント・グリム」を構えて『青龍翔咬波』を解き放った。2体のオート・パラディンが直線上に放出されたマテリアルの波動によって、ダメージを喰らい、1体は爆発して消え去り、もう1体のパラディンは左の胴部が抉れるように破壊されていた。
その頃、フィーナ・マギ・フィルム(ka6617)はイヤリング「エピキノニア」から聴こえるカーミンの声を頼りに、『エクステンドキャスト』で魔力を練り込むと、『メテオスウォーム』を放った。
魔法収束により威力や範囲が拡大した流星が降り注ぎ、後衛にいたオート・パラディンたちが焼き尽くされた。
だが。
「あれだけの攻撃で、倒れないの?!」
カーミンは、壁に発生した光の檻で固定した状態のまま、観測者の双眼鏡を使い、戦況を見ていたが、カッツォの周囲にいるパラディンたちは、主人を守るように陣取っていた。
その様子をフィーナに通信したのだが、狙いは合っていたのだ。凄まじい魔法が命中したのだが、カッツォと周囲にいるパラディンたちは、何事もなかったかのように立ち尽くしていた。
●
爆炎が消え去り、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が『炎檻』で巨大な幻影の腕を浮かび上がらせ、後衛にいたオート・パラディン1体を引き寄せると、魔斧「モレク」による『砕火』の連撃を繰り出す。
「こっちに持ってきちまえば、良いだけだ」
ボルディアの燃え盛る攻撃により、パラディン1体が爆発し、消滅した。ボルディアは爆発に巻き込まれて、怪我をしていたが、ガミル・ジラク・アーマーで全身を防御していたこともあり、致命傷にはならなかった。
ジャックもまた、カッツォが操作しているパラディンたちを優先的に狙い、『ガウスジェイル』を発動させ、バスタードソード「アニマ・リベラ」からの『渾身撃』をパラディン一体に叩き込む。
ジャックの攻撃により、パラディン一体は警戒の効果を付与されていたが、ダメージに耐え切れずに爆発して、消滅していった。
「おっし、これでカッツォまでの突破口ができたぜ。カッツォを叩くなら、今だぜ!」
ジャックの呼びかけに、ルンルンが『黒曜封印符』の術を使い、カッツォのカウンター封印を試みた。
カッツォは封印の抵抗に打ち勝ち、不敵に立ち尽くしていた。
続いて、仁川 リア(ka3483)は前もって発動させていた『ナイトカーテン』を駆使してカッツォに接近していく。パラディンたちは気配に気付くことはなかった。
リアがクリスタルバレットを装填した銃剣付き騎兵銃「SABER」を構えて、銃弾を放った。
「4発限りのとっておき、存分に喰らいなよ!」
「ほほう、残念だが、私には見えているよ」
カッツォは銃弾を回避しつつ、反撃のために素早くリアに接近する。これにリアは反応し、カル・ゾ・リベリアを抜く。
ステッキを繰り出そうとしたその瞬間、リアの『雲散霧消』が発動し、剣がカッツォの肩を斬り裂いた。
「同盟に住む精霊たちのためにも、アメンスィを救う! だからカッツォ、君はここで必ず倒す!」
リアの言葉に、カッツォは冷めた声で応えた。リアの攻撃が命中したことで、更にカッツォのカウンターが誘発された。
「アメンスィを救うだと? そんな価値があったとはな」
「?!」
瞬影が発動せぬほどの速さで、カッツォのカウンターが繰り出され、リアの腹部にはステッキが突き刺さっていた。
血飛沫が飛び、リアが弾き飛ばされていく。
地面に叩きつけられるように転がるリア……重体となり、気を失っていた。
さらに、一人のハンターが飛び込んできた。
「存在を知ったときから殺したいと思っていたよ、よろしく同業者さん」
リカルド=フェアバーン(ka0356)は、『踏込』からの『虎の型』を駆使し、試作光斬刀「MURASAMEブレイド」と試作振動刀「オートMURAMASA」の二刀の攻撃をカッツォの右腕を狙って叩き込む。
「杖を持つ手を狙うと、カウンターは確かに出せない……考えたな」
カッツォはステッキを巧みに操り、リカルドの二刀を軽々と受け払っていた。
「……攻撃を仕掛ける隙がないな」
限られた時間では、これ以上、カッツォに対してリカルドも攻撃はできなかった。
「エセ脚本家! 手を止めろ! さもなきゃこのまま焼き斬り殺す!」
クレールが叫ぶ。
カリスマリス・クレールを掲げ、紋章剣『炎竜』が破壊エネルギーを噴射していく。
カッツォだけでなく、周囲にいたパラディンたちも扇状に炎に巻き込まれていった。
「機導術か。かなりの使い手のようだが、それでは、この私を倒すことはできないな」
炎の中からカッツォが出現し、クレールに対してカウンターの一撃を繰り出す。
「えっ?!」
クレールが気が付いた時には、自分の腹部にカッツォのステッキが突き刺さっていた。
その衝撃で、クレールは吐血し、身体からは血が零れ落ち、気絶して倒れていた。
それでも、ハンターたちは諦めなかった。
フィーナが、カッツォに問いかけた。
「ナナを救ったのは、貴方?」
一瞬の沈黙。そして。
「フフフ、その通りだ。ナナ・ナインは、私が救ってやったのだよ。おまえも知っての通り、ナナは素晴らしい劇を繰り広げているだろう?」
カッツォの声は、どことなく不遜に聴こえた。
静かに告げるフィーナ。
「なら……貴方に、安らかな眠りを」
すでに『絶対零度の檻』は解き放たれていた。
氷の嵐が、カッツォとパラディンたちに吹き荒れ、絶対零度まで達し、液化した窒素が凍りついたかと思うと、パラディンたちは凍り漬けになり、身動きが取れなくなっていた。
カッツォも氷結していたが、見る見るうちに身体に張り付いた氷が解けていく。
「これまた、考えたものだ。マギステルの魔法は伊達ではないという事か」
そう言うや否や、カッツォはダメージを受けたこともあり、カウンターが発動して、フィーナの小さな体をステッキで貫いた。
「あ……」
フィーナは何か言おうとしたが、崩れるように倒れ、腹部から血を流していた。
と、そこへ、『ナイトカーテン』を纏った誠一が、カッツォに接近し、リヤンワイヤーの鞭で攻撃をしかけていく。
とっさに回避するカッツォ。
その刹那、誠一が装備していたブーツ「アンドルディース」が『影祓』を発動させ、目にも止まらぬ速さで鞭による連続攻撃を繰り出す。
狙いは、カッツォの仮面。
「貴方のやり方には虫酸が走りますよ。許さないというレベルを超えています」
誠一が、普段は見せない冷酷な瞳で告げる。それは殺意か……。
誠一の鞭が命中し、『蔦葛』によってカッツォの頭部に絡みつくが、紙一重で仮面は取れなかった。
「……貴様……ヒトの分際で、私の仮面を狙うとは……小賢しいっ!!」
カッツォは激しい怒りと共に、重い一撃のカウンターを繰り出した。
誠一はカッツォと接近していたこともあり、鋭い一撃が飛び込んでくる。
カッツォのステッキが、誠一の胴部に突き刺さっていた。強引にステッキを引き抜くカッツォ。
誠一は血塗れになりながら、力尽きて倒れた。
「……俺が……倒れても……仲間が……い……る」
そう呟いた後、誠一は気を失っていた。
先行組と合流していた鳳城 錬介(ka6053)が、誠一の元へと駆け寄り、『ファーストエイド』による『フルリカバリー』を施し、次の戦いに備えて『ガウスジェイル』の結界を張った。
「……なんとか命を食い止めることができましたね。回復には時間はかかるでしょうが、できれば、この戦域からカッツォを追い出したいところです」
あと一秒でも遅かったら、誠一はどうなっていたことか。
錬介の処置が間に合ったのは、ファーストエイドを発動していたこともあった。
カッツォは落ち着きを取り戻すと、大きく指を鳴らした。
オート・パラディンたちが、一斉にマテリアルレーザーを放つ。
錬介の『ガウスジェイル』によってレーザーが引き寄せられていく。
聖盾剣「アレクサンダー」で、敵のレーザーを受け流す錬介。
ジャックも『ガウスジェイル』を発動させていたこともあり、敵のレーザーを引き寄せるようにパリィグローブ「ディスターブ」で受け流していた。
「カッツォ! てめえの企み、絶対に阻止してやるからなっ!」
ジャックがそう叫んだ後、カッツォは俊足を活かして移動していった。
●
「おまえは、ディエスか」
カッツォは、遺跡の中央部に立っていた。
オートマトンのディエスは、首に手を押さえて苦しんでいた。
カッツォに首を掴まれ、持ち上げられていたからだ。
「やめろぉぉぉぉぉーっ!!」
リクの叫びが響く。
ディエスの護衛をしていたリクであったが、カッツォに割り込まれてしまい、とっさに攻撃できたのは、『デルタレイ』であった。
光の一点はカッツォの腕に掠ったが、残り二点の光は命中せず、一筋の光となって消えていく。
「ディエスを返して。その子は、仲間を助けたくて、ここに来たのよ」
アリアは『アイデアル・ソング』を詠唱しながら、『透刃花・玲瓏』を繰り出し『心の刃』でカッツォの仮面を狙った。
「私の歌劇を教えてあげるわ。その仮面の砕ける音を伴奏にしても良いのよ」
「……おまえの心の刃には、憎しみがない。これでは、さすがの私も反撃できないな」
カッツォは身体を逸らして、仮面を死守することはできたが、アリアの龍翼鎌「クータスタ」が胴部に突き刺さっていた。
身構えるアリアだが、カッツォのカウンターは発動しなかった。
白い仮面の男は、ディエスを物のように投げ捨てた。
「神の器にならなかった失敗作には、用はない。そんなに欲しければ、くれてやろう」
「なんて言い草だ。ディエスは、俺たちの仲間だ」
アークは投げ飛ばされたディエスを受け止め、やさしく両腕で抱えていた。
「……アークさん、ボク……」
ディエスを助けることができて、安堵するアーク。
レムがディエスの様子に気付いた。
「待って、アーくん。ディエス君は首の辺りに怪我があるよ。それに、なんだか麻痺してるみたい」
そう言って、レムが『チャクラ・ヒール』を施すと、ディエスの首元が回復して、麻痺も解除されていく。
「レム、一旦、ここから離れよう。敵に囲まれたら、ディエスがまた狙われるかもしれない」
アークはディエスを抱えながら走り出すと、レムはアークとディエスを守るために周囲を警戒しながら駆け出した。
●
「パラディンには効果があるようだな」
真が『ソウルトーチ』を纏うと、オート・パラディン3体を引き付けることができた。
「では、真さんの動きに合わせて、パラディンを狙うのが賢明ですかね」
丑は太刀「宗三左文字」を構え、『薙ぎ払い』で前方にいるパラディンたちを斬り裂いていく。
「私も援護に入るわ」
篝が魔導機式複合弓「ピアッサー」にゼノンの矢を番えて『射手の矜持』からの『二つ番え』でオート・パラディンを狙い撃つ。命中して矢が突き刺さると、パラディンは爆発して消滅した。
その頃、カーミンは壁に張り付いたまま、フィーナにイヤリング「エピキノニア」の通信機で呼びかけていたが、彼女からの応答はなかった。
代わりに返答があったのは、ジュードだった。
「フィーナさんは重体で気絶してるけど、ステラさんたちが助けに行ってるから安心して。カーミンさんから見た戦況を知りたいんだけど、良いかな?」
「フィーナは無事なのね。重体か……心配だなぁ。あっと、ごめん。今の戦況ね。ジュードのいる位置からだと、前方にはオート・パラディンたちがV字型の陣形になってるわ。背後には、いつのまにか、カッツォがいるから気を付けて」
カーミンの連絡を受けて、ジュードは後ろを振り返る。確かにカッツォがいた。
ステラはフィーナの元へと駆け寄ると、『鎧受け』を駆使してオート・パラディンたちのマテリアルブレードを受け流していた。
ミオレスカが、パラディンの放ったレーザーを『妨害射撃』で食い止める。
「フィーナさん、もうしばらくの辛抱です」
「待ってろ。脱出経路を作るからな」
ステラはライフル「メルヴイルM38-SP」を構えて『リトリビューション』の銃弾を放った。オート・パラディンたちに命中して、貫かれた敵は一時的に身体の自由を奪われていた。
ミオレスカが、ロングボウ「エソ・ニラク」を装備した状態で『フォールシュート』を放つと、通常より広い範囲で、敵を撃ち抜いていく。命中した矢によってダメージを受けたパラディンたちは爆発して消え去った。
激戦の中、龍神神官のマルセル=ヴァラン(ka6931)がステラたちと合流し、スペルロザリオ「エレオス」を発動体とした『ヒール』をフィーナに施した。
「血を止めることはできましたが、やはり回復には時間がかかると思います」
痛々しいフィーナを見て、マルセルは龍神に祈りを捧げていた。
カッツォは、他のハンターたちと闘いを繰り広げていた。
「神官さん、フィーナの血止め、恩に着るぜ」
ステラはフィーナを背負い、ミオレスカが彼女たちの護衛に廻った。
「入口に向かうにしても、カッツォがいますから、今、動くのは危険です」
そう判断したミオレスカは、フィーナを背負ったステラを庇うように制した。
カッツォは、相変わらずリカルドに狙われていた。
「意外と、しぶといヤツだな」
カッツォがそう告げると、リカルドは問答無用で『踏込』からの『龍の型』を駆使して試作光斬刀「MURASAMEブレイド」を振り下ろした。
頭部を狙ったはずだが、カッツォは身体を逸らしていた。命中したのは、腹部……カウンターを誘発して、リカルドの胴部にステッキを深く突き刺した。『ムルパティ・プティ・シラット・鋼の肉塊』は確かに発動していたが、カッツォはリカルドの急所を狙っていたのだ。
運命の賽は、皮肉にもカッツォに味方した。急所を突かれたリカルドの身体からは血が飛び散り、反動で後方へと弾き飛ばされた。
「な……んて、こった」
リカルドの意識は徐々に薄れ、気を失った。
「重体で済むとは、覚醒者とは恐ろしい存在だな」
カッツォがそう言い放つと、リボルバー「ピースメイカー」を構えたジュードが引き金を引いた。その残弾が残り1発となった瞬間、ジュードの『トリガーエンド』が発動したのだ。攻撃中に収束させたマテリアルが一気に解き放たれ、カッツォの肩を撃ち抜いていた。
「ほほぅ、その技では避けられぬな」
感心したように呟くカッツォ。
ジュードは仮面を狙ったはずだが、命中したのは肩だった。
「狙いは外れても、別の部位には命中したってことは……」
「遠距離からなら、反撃はできないでしょう?」
マリィアは魔導銃「狂乱せしアルコル」を構え、『クイックリロード』で銃弾を満たすと『フォールシュート』による連続射撃でカッツォを狙った。周囲にいたパラディンには攻撃が命中していた。
だが、カッツォは全ての弾丸を回避していたのだ。
「もう少し相手をしてやりたいところだが、そろそろ遺跡から出た方が良さそうだな」
カッツォはシルクハットを取り、御辞儀をすると、何食わぬ顔で、その場から消え去った。
「……射撃を全て回避するなんて、やはり災厄の十三魔は侮れないわね」
悔しそうにマリィアが呟いた。
●
カッツォを追い出すことはできたが、まだオート・パラディンが残っていた。
「ようやく、ここまで来れたな」
先行組と合流したアーサーは、『堅守』の構えから『二刀流』を繰り出し、パラディンの胴部を斬り裂くと『アスラトゥーリ』を放つ。2体のパラディンが巻き込まれ、爆発して消滅。
ボルディアが『烽火連天』で魔斧「モレク」を豪快に振り回し、周囲にいるパラディンを薙ぎ払っていく。
「おまえらのご主人様はすでに撤退したぜ」
「手下を置き去りか。あまり気持ちの良いものではないな」
真は『ソウルエッジ』を発動させ、魔導剣「カオスウィース」による『薙ぎ払い』でパラディンを斬り裂いていく。
【豪炎】を噴射して援護に入ったのは、リクだった。
「カッツォは消えたが、またどこかで会いそうだな」
「その時は、全力でブッコロですぅ」
ハナが『五色光符陣』を放つと、パラディンは光の結界に巻き込まれ、ダメージを受けると爆発して消滅していった。
灯火の水晶球が、ハナの周囲で動き回り、光を放っていた。
「敵は全滅ですよぉ。カッツォ以外は」
「あの場所、気になります」
ミオレスカが柱の角に異変を感じて、ペイント弾を放った。命中して塗料が付くと、光の檻が発生していた。
「これは、どういうことでしょう?」
「まさか、とは思いますが」
錬介が『ピュリフィケーション』を発動させると、負のマテリアルが浄化され、光の檻も消滅。
その後、魔術師協会が遺跡を調査することになった。
戦いが終わり、マルセルと錬介は手分けして、仲間の怪我を回復の術で癒していた。
「皆様に青龍様の加護があらんことを……」
マルセルは『ヒーリングスフィア』を発動させ、範囲内にいる味方の怪我を癒していった。
(未熟ながらもこの場にはせ参じたハンターとして、そして何より青龍様に仕える神官としての務めです)
懸命に、自分のできることで人を助けようとするマルセルの姿に、ディエスは心打たれていた。
気を引き締め、ディエスは六花の指輪を手に持ち、アリアに『ヒール』を施した。
「アリアさん、約束通り、この指輪は返すよ。無事に戻れたら、そうしたいと言ったの覚えてる?」
「そうだったわね。約束を守ってくれて、ありがとう」
アリアは六花の指輪を受け取り、ディエスに微笑んだ。
リクがやってきて、優しくディエスの肩を叩く。
「カッツォに割り込まれた時は、どうなるかと思ったけど、ディエスのこと気にかけてくれた人たちが協力してくれたのが、うれしかったな」
そう告げるリクに、ディエスは無邪気な笑顔を見せた。
「リクさんは、いろいろな人たちに信頼されているんだね。ボク、もっともっと強くなって、一人でも多くの人達を助けたいな」
ディエスは、この世界に来て、ようやく生きる目的を見出していた。
そんな様子を見て、アークが静かに安堵していた。
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/12/05 07:55:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/02 16:25:52 |
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質問卓は許される?! カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/12/03 02:32:48 |