ゲスト
(ka0000)
【虚動】闇波の向こう
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/28 12:00
- 完成日
- 2014/12/04 20:08
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
5年前に起こった王国を襲う災厄、その再来たるイスルダ島の歪虚の襲来は、クリムゾンウェストの世界を駆け巡り、震撼させた。
異界より到来したラッツィオ島での戦い、そして帝国に再び姿を現した剣機の歪虚。
世界を覆ういくつもの邪悪の影は、各国、各地域の首脳陣をリゼリオへと呼び集める。
人類の明日を、如何に守るべきか。
異世界リアルブルーの人々も交えた会合により、人類の希望は二つの兵器に託される。
一つは、蒼き世界の機械の巨人、サルヴァトーレ・ロッソに眠る戦闘装甲機「CAM」。
だがそれは、必要な燃料の入手に苦慮し、動くことはあたわなかった。
一つは、帝国の練魔院にて研究されてきた魔導アーマー。
長年の研究の結果、稼働実験にまで漕ぎ着けた、新たなる力。
そして世界は、二つの力を合わせることを選択する。
魔導アーマーの動力をCAMに搭載する実験が提唱され、世界はそれに向けて動き出した。
仮に実験が成功すれば、人類は歪虚に対抗する大きな手段を得るだろう。
だが……。
そろそろ雪もちらつき始める頃、ドワーフ工房【ド・ウェルク】に属するドワーフ王の娘、カペラとドワーフ王ヨアキムの代理で工房担当官を勤めるアルフェッカ・ユヴェーレンは肩を並べて廊下を歩いていた。
人が歩く音はするが、賑やかな私語の声はなく、とても整然としている。
以前のここはカペラはとても行くのが嫌いだった。
豪快な性質のドワーフですら辟易するような場所だったのだ。
今ではあまり近寄る理由はないが、行く用事が出来れば抵抗はない。
「何の用か聞いてる?」
「何も」
カペラがアルフェッカを見上げると彼はおどけた風であったが、嘘はついていないようだし、彼自身も呼ばれた理由を知らないようだった。
「そう」
今、二人が歩いているのは要塞都市【ノアーラ・クンタウ】の中枢。
とある扉の前に立ち、アルフェッカがノックをした。
「工房管理官、アルフェッカ・ユヴェーレン、ドワーフ王国王女カペラ姫、参りました」
「どうぞ」
返事を聞き、アルフェッカが扉を開く。中へ入ると、銀の髪の美丈夫が座席にて書類の束を整えていた。
「急に呼びたててすみません」
書類の束を机の隅に置いた男が立ち上がる。
「とりあえず用件は何かしら?」
カペラは目の前の男に敵意は持っていない。
少なくともこの男はこの要塞を真っ当な場所へと整えてくれた。
現、要塞都市【ノアーラ・クンタウ】の管理官、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がそこにいた。
回りくどい話を嫌うのはドワーフの種族特徴の一つ。
ドワーフ接し方にも慣れたヴェルナーは一つ頷いて本題へと入った。
「失礼ですが、CAMをご存知でしょうか?」
「リアルブルーの兵器という認識でしかないわ」
噂で聞いた話しかなく、実際に見たことはない。カペラ大抵工房にこもり、仕事をしている。要塞の外に出るのも月に一度あるかどうかの話だ。
それでも、リアルブルーの話は舞い込んでくる。
御伽噺のような兵器や文化はカペラの心をくすぐらないわけはない。
「そうですか。実は、先頃そのCAMの稼働実験を行う話がありましてね。
興味おありでしょうか? ……あ、場所はこの辺境で行います」
「辺境で!」
驚いた声を上げるカペラにヴェルナーは「ええ」と頷く。
「まって、辺境部族が優遇するとは限らないわ」
帝国派の部族だとて、その件に関してはどう反応を見せるか分らないのだ。
「はい。部族会議の皆様への説得はこれから行います」
「先に情報を流しておいて、場所は抑えているの?」
「はい。何分時間がありませんので……。
実験はマギア砦の南になります」
あっさりと場所を言ったヴェルナーにカペラはため息交じりで肩を竦める。
「言いたい事は理解したわ。先に確認してくるわ」
「察しが良くて助かります」
社交辞令宜しく微笑を浮かべるヴェルナーにカペラはアルフェッカを促しつつ踵を返して部屋を出ようとする。
数歩だけ歩いた所でカペラだけ振り向いた。
「いい返事、貰えるといいわね」
「どうもありがとう」
頭を使う余計な仕事はヴェルナーにやらせればいい、自分のできることをするべく、カペラは退出した。
そして、カペラはハンターオフィスに依頼を出した。
マギア砦に調査に行く為の護衛依頼。
集まったハンター達を連れてカペラはドワーフ小隊と共にマギア砦へ向かっていく。
「寒い? 大丈夫?」
「平気」
「無理するんじゃないぞ」
「ありがとう」
皆で声をかけつつ、休憩をはさんで進んでいった。
「もう少しで着く頃かの」
一度休憩を挟み、地図を見ながら皆で確認する。
「もうひとふん張りね」
カペラが皆に伝えると、支度をして進み出す。
もう少しで目的の場所にいける。ふと、見やれば視覚で捉えられる遠さで遊牧民らしい姿が見えた。
辺境部族は土地に腰を下ろしている部族もあれば、定期的に移動する遊牧民的部族も存在する。
部族の子供がハンター達とドワーフに気が付いて手を振っている。
しかし、子供の動きが止まり、振り向いた先にハンター達も気づいた。
黒い煙……影……波のようなものが遊牧民部族へと向かっている。
「まさか……」
「歪虚か!」
「このまま行けば、部族が危ない!」
確実に波は部族の方へと向かっている。部族たちも逃げ始めているが、間に合うかどうか分らない。
「皆、部族を助けるのよ!」
カペラが率先して駆け出した。
姫の言葉にドワーフ達も駆け出す。誰かを見殺しにして飲む酒が美味いわけはない。
「仕方ない」
「やりますか!」
ハンター達もドワーフ達に負けじと走り出した。
異界より到来したラッツィオ島での戦い、そして帝国に再び姿を現した剣機の歪虚。
世界を覆ういくつもの邪悪の影は、各国、各地域の首脳陣をリゼリオへと呼び集める。
人類の明日を、如何に守るべきか。
異世界リアルブルーの人々も交えた会合により、人類の希望は二つの兵器に託される。
一つは、蒼き世界の機械の巨人、サルヴァトーレ・ロッソに眠る戦闘装甲機「CAM」。
だがそれは、必要な燃料の入手に苦慮し、動くことはあたわなかった。
一つは、帝国の練魔院にて研究されてきた魔導アーマー。
長年の研究の結果、稼働実験にまで漕ぎ着けた、新たなる力。
そして世界は、二つの力を合わせることを選択する。
魔導アーマーの動力をCAMに搭載する実験が提唱され、世界はそれに向けて動き出した。
仮に実験が成功すれば、人類は歪虚に対抗する大きな手段を得るだろう。
だが……。
そろそろ雪もちらつき始める頃、ドワーフ工房【ド・ウェルク】に属するドワーフ王の娘、カペラとドワーフ王ヨアキムの代理で工房担当官を勤めるアルフェッカ・ユヴェーレンは肩を並べて廊下を歩いていた。
人が歩く音はするが、賑やかな私語の声はなく、とても整然としている。
以前のここはカペラはとても行くのが嫌いだった。
豪快な性質のドワーフですら辟易するような場所だったのだ。
今ではあまり近寄る理由はないが、行く用事が出来れば抵抗はない。
「何の用か聞いてる?」
「何も」
カペラがアルフェッカを見上げると彼はおどけた風であったが、嘘はついていないようだし、彼自身も呼ばれた理由を知らないようだった。
「そう」
今、二人が歩いているのは要塞都市【ノアーラ・クンタウ】の中枢。
とある扉の前に立ち、アルフェッカがノックをした。
「工房管理官、アルフェッカ・ユヴェーレン、ドワーフ王国王女カペラ姫、参りました」
「どうぞ」
返事を聞き、アルフェッカが扉を開く。中へ入ると、銀の髪の美丈夫が座席にて書類の束を整えていた。
「急に呼びたててすみません」
書類の束を机の隅に置いた男が立ち上がる。
「とりあえず用件は何かしら?」
カペラは目の前の男に敵意は持っていない。
少なくともこの男はこの要塞を真っ当な場所へと整えてくれた。
現、要塞都市【ノアーラ・クンタウ】の管理官、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がそこにいた。
回りくどい話を嫌うのはドワーフの種族特徴の一つ。
ドワーフ接し方にも慣れたヴェルナーは一つ頷いて本題へと入った。
「失礼ですが、CAMをご存知でしょうか?」
「リアルブルーの兵器という認識でしかないわ」
噂で聞いた話しかなく、実際に見たことはない。カペラ大抵工房にこもり、仕事をしている。要塞の外に出るのも月に一度あるかどうかの話だ。
それでも、リアルブルーの話は舞い込んでくる。
御伽噺のような兵器や文化はカペラの心をくすぐらないわけはない。
「そうですか。実は、先頃そのCAMの稼働実験を行う話がありましてね。
興味おありでしょうか? ……あ、場所はこの辺境で行います」
「辺境で!」
驚いた声を上げるカペラにヴェルナーは「ええ」と頷く。
「まって、辺境部族が優遇するとは限らないわ」
帝国派の部族だとて、その件に関してはどう反応を見せるか分らないのだ。
「はい。部族会議の皆様への説得はこれから行います」
「先に情報を流しておいて、場所は抑えているの?」
「はい。何分時間がありませんので……。
実験はマギア砦の南になります」
あっさりと場所を言ったヴェルナーにカペラはため息交じりで肩を竦める。
「言いたい事は理解したわ。先に確認してくるわ」
「察しが良くて助かります」
社交辞令宜しく微笑を浮かべるヴェルナーにカペラはアルフェッカを促しつつ踵を返して部屋を出ようとする。
数歩だけ歩いた所でカペラだけ振り向いた。
「いい返事、貰えるといいわね」
「どうもありがとう」
頭を使う余計な仕事はヴェルナーにやらせればいい、自分のできることをするべく、カペラは退出した。
そして、カペラはハンターオフィスに依頼を出した。
マギア砦に調査に行く為の護衛依頼。
集まったハンター達を連れてカペラはドワーフ小隊と共にマギア砦へ向かっていく。
「寒い? 大丈夫?」
「平気」
「無理するんじゃないぞ」
「ありがとう」
皆で声をかけつつ、休憩をはさんで進んでいった。
「もう少しで着く頃かの」
一度休憩を挟み、地図を見ながら皆で確認する。
「もうひとふん張りね」
カペラが皆に伝えると、支度をして進み出す。
もう少しで目的の場所にいける。ふと、見やれば視覚で捉えられる遠さで遊牧民らしい姿が見えた。
辺境部族は土地に腰を下ろしている部族もあれば、定期的に移動する遊牧民的部族も存在する。
部族の子供がハンター達とドワーフに気が付いて手を振っている。
しかし、子供の動きが止まり、振り向いた先にハンター達も気づいた。
黒い煙……影……波のようなものが遊牧民部族へと向かっている。
「まさか……」
「歪虚か!」
「このまま行けば、部族が危ない!」
確実に波は部族の方へと向かっている。部族たちも逃げ始めているが、間に合うかどうか分らない。
「皆、部族を助けるのよ!」
カペラが率先して駆け出した。
姫の言葉にドワーフ達も駆け出す。誰かを見殺しにして飲む酒が美味いわけはない。
「仕方ない」
「やりますか!」
ハンター達もドワーフ達に負けじと走り出した。
リプレイ本文
「俺達は三つに分かれるぞ!」
提案したのはシガレット=ウナギパイ(ka2884)だ。
「前衛に四人入れ! メインアタッカーは二人! 殿に遊牧民の護衛として二人だ。俺は遊牧民の護衛に入る!」
それだけ言えば、シガレットは馬を駆けさせて速度を上げた。
追いつく先は先を駆けるカペラ。
「カペラ!」
名を呼べば、カペラは振り向く。早く助けたい焦りはあるようだが、まだ話を聞いてくれそうであった。
「どうかした!?」
「ドワーフを遊牧民護衛に二人借る!」
「分ったわ、後はできる事ある!?」
カペラが問えば、シガレットはハンター達に三つの班に別れて迎撃、護衛する事を伝える。
「ハンターとドワーフの連携でこの危機を乗り越えるンだ!」
「ええ、必ずや、守りましょう!」
シガレットとカペラがそれぞれの意志の強い瞳がぶつかり、それぞれの持ち場へと駆けていく。
遊牧民達は恐怖と混乱と戦いつつも逃げる用意を始める。
地が響き、こちらに向かってくる足音は更なる恐怖を生んでいく。
「助けに来ました!」
先頭を走るドワーフ達を軽やかに追い抜かし、馬上より叫んだのは柊 真司(ka0705)、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)、ミリア・コーネリウス(ka1287)。
敵の先頭もそろそろ近づいてくる。
「長は誰だ!」
「私だ! あんた達は一体……」
真司が叫ぶと壮年の男が応えた。
シルヴィアは頭を覆うヘルメットをしており、年齢も定かでないが、若い者と判断できるし、真司は自分の子供……孫にも見える若さだ。そんな二人が武装をして自分達を守ろうとしている事に戸惑いを隠せない。
「俺達はハンターだ。南の方に逃げろ。俺達が食い止める」
「あ、あんた達二人でか!」
正気かと叫びそうな長に真司は落ち着けと肩をつかむ。
「見えるだろう。味方が」
「ドワーフ?」
真司が促した先にハンターやドワーフ達が駆けてくる。
「南に俺達の仲間二人とドワーフが二人いる。それまでなんとしても逃げ延びてくれ」
「すまない……」
自分達に戦う術はない。長は真司とシルヴィアに詫びる。
「ここはすぐ戦場になります!」
声高にミリアが危機を伝える。
「でも、俺達とは何の関わりもないのに……!」
「誰かの危機を助ける事に理由は要りません。さぁ、早く!」
戸惑う遊牧民達とハンターは確かに関わり合いがない。だが、関わりがなくては助けられないという理由はない。
「大丈夫ですか」
よろけた遊牧民にシルヴィアが声をかける。オーバーヘルメットで顔も分らないが、声で若い女の声と理解した。
「アンタ、女の子なのに……!」
乳飲み子を抱いた母親がシルヴィアを心配する。
「早く逃げてください、私は護衛の為に貴方達の殿を護ります」
「ああ、無事でいるんだよ……」
「善処します」
駆け出す母子を見送り、シルヴィアは前を見据える。
「まだ射程範囲外ですね」
じっと待つシルヴィアが構えるのは二丁のアサルトライフル。
「私達が来たからにはここからは通行止めです。ネズミ雑魔1匹通しませんっ!」
ミリアのブルーの瞳が赤く煌き、全長二メートルのツヴァイハンダーを構える右手の甲に剣を模した紋章が浮かび上がる。
「射程範囲内、来るぞ!」
少しずつ遊牧民が逃れ始め、周囲を窺っていた真司が叫ぶ。
先に威嚇射撃を始めたのはシルヴィアだ。
足元を狙い撃ち、一匹が転げると数匹巻き込まれて転倒した。
ドワーフ達の先導役としてカペラと共に駆けるのはメンター・ハート(ka1966)だ。
今回、同族の依頼ともあり、同行したメンターはイケメン(ドワーフ視点)揃いで心の中で感嘆の声を上げ、親交を深めてとても楽しそうだった。
ドワーフ王国の中でも優秀な調査役にして武官達。逞しく引き締まった筋肉質の体格に顔が埋もれてしまいそうなほど豊かな髭揃いだったのだ。
メンターとて年頃で人間やエルフ同様に素敵な殿方は好きだ。
当然、その美的感覚も様々である。
彼女の赤の髪は黒へと黒い瞳は赤へと変化している。
「往きましょう、戦いの地へ!」
馬上で拳を天へと突き上げて同胞達へ語りかけた。
「我々は土の民! 岩の民! 鋼の民! 土より生まれ、岩の体と、鋼の絆を持つ誇り高き民!」
メンターの声にドワーフ達は「応!」と声を上げる。
「辺境の友の命の灯が消されようとしている。否! 我々によってその灯は守られるのです!
駆けよ! 疾く駆けるのです!」
大地の戦女神の如く、ドワーフの士気を上げるメンターの声にドワーフ達は答えるべく、地響きの如くの雄叫びを上げる。
最前線に立ち、雑魔の動きを鈍らせる盾となる。
ドワーフという岩の盾が遊牧民達を、ハンター達を守る。
「景気よくいくわよ!」
護られるだけではいられないとばかりにアルケミストタクトを掲げるのはカペラ。
一気にマテリアルをタクトに込めて機導砲を発動させる。マテリアルの光を受けた鹿は左角を折られ、首も折れて転倒した。
カペラの機導砲を見た前衛組が遊牧民達がいたところへ合流した。
「お待たせっと」
おっとりとした口調で駆けつけたのはノアール=プレアール(ka1623)。
「モニちゃん、いくわよー」
「了解、なのよっ!」
モニカ(ka1736)が振り向いて返事をする。風が舞い上がり、色とりどりの花びらの幻影がモニカの周囲に舞う。
「一度離脱します」
「気をつけて!」
遊牧民の殿は長だ。
長と共にシルヴィアが護衛の為に前線を離脱する時にシェール・L・アヴァロン(ka1386)がシルヴィアと長を気遣う。
「はい」
シェールの気遣いを受け止め、シルヴィアが頷き、長と共に馬に乗り、南下する。
「さーて、早いところ片付けましょうねー」
マジカルステッキをモニカへと向けると、ノアールの瞳が発光する。モニカへとマテリアルを流入させて命中度を高めたあと、自身にもそれを向ける。
シェールが敵との距離を把握しようとしていた。
射程内に入った敵は鹿とウサギ。次に狼、ライオンの姿が後ろにあった。
「ライオン! あんな獰猛なものまで……皆さん、気をつけてーー!!」
ライオンの姿に気づいた馬上のシェールが注意を呼びかける。
「あらあら、向こうの射程範囲内に入ったら危ないわねー。今どれくらいー?」
ゆったりとした口調でシェールにライオンの位置を尋ねるノアールだがその攻撃の手は的確に雑魔を仕留めている。
「モニカさんの銃なら届きそうです。遠射を含めて」
「わかった……なのよ」
狙いはライオン。早くし止めるに越した事はない。奴らは自分達の射程内に入った獲物を捕まえる為に倍以上の速度で獲物を追いかけて体格を生かして押し倒してその鋭い牙で獲物の命を奪う。
頑丈なドワーフ達であろうとも、その歯牙にかけさせるわけにいかない。
モニカはマテリアルを自分の身長に近い大きさのライフルに込めて射撃の精度を上げる。
乾いた音が響き、音の速さで弾丸が先を走るライオンの右目に命中し、貫通した。右目から上の頭が破裂し、ライオンは絶命した。
「私の肉眼ではまだ四体確認しました」
「先にライオンから仕留めていく……なのよ」
体勢を崩さずにモニカは再び遠射と強射を連携で発生すべくマテリアルをこめていく。
「前線に入る雑魔を倒していくわ」
さて、一方、長を連れたシルヴィアは無事にシガレットとドワーフ二人、先に逃げた遊牧民達と合流できた。
「泣くと思ったが、寝てやがる。大物になるぜぇ」
母に抱かれた乳飲み子はこの緊急事態時に寝ていてシガレットが呆れつつも大物ぶりについ、笑みがこぼれる。
「……前線より、零れた雑魔が」
シガレットにしか聞こえないようにシルヴィアが声をかける。
「未来の大物が傷つかないようにな」
母子に包まれた光は防御力を高める為、シガレットが発動させたプロテクション。
「あんた、聖導士には見えないが、神々しいもんだな」
あっけらかんと言うドワーフにシガレットは「まァな!」と笑う。
「赤ン坊が泣いてねェのに大人が慌てる訳にはいかないからな、落ち着いていこうぜェ」
遊牧民達を勇気付けるようにシガレットが声をかける。
タバコに火をつけたシガレットに最初、ハンター達へ手を振った子供が声をかける。
「ハンターたち、だいじょうぶ……」
「あいつらは強ェんだぜェ」
ニヤリと笑い、シガレットは紫煙をゆっくり吐きだした。
気流はシガレットの追う流れなのにその煙はシガレットの背後へ羽の様な形を見せた。
これ以上悲劇は繰り返させない。これ以上悲劇を生ませない為に戦わなければならない。
「宜しくお願いします」
シルヴィアがドワーフ達に声をかければ「任せろ」とドワーフ達は胸を叩く。
前衛から零れた雑魔達が南下してこちらへ向かっている。
鹿が三体、兎が一体。
再びシルヴィアが二丁のアサルトライフルを構えた。
射程範囲内まで引き付け、先頭を走る鹿を狙う。
鹿はシルヴィアの弾丸に気づいていたかのように跳躍しようとしたが、シルヴィアの弾丸がより早く鹿を捕らえていた。
衝撃を受けた鹿はその場で崩れ落ち、シルヴィアは次の敵へと動く。
もう二体の鹿が前衛のドワーフを蹴倒そうと前足を上げる。
ドワーフ達の斧とハンマーが迎撃し、乱戦状態となっている。ドワーフ達に当たらないようにシルヴィアは牽制射撃を発射した。
牽制銃撃の風圧によろけた鹿の隙を見たドワーフがここぞとばかりに斧を鹿の右前足の付け根に振り上げ、ドワーフの力を持って横へもう一匹を巻き込むようになぎ倒した。
シガレットが狙っているのは兎だ。
兎は鹿の動きを確認し、倒されることを予知したかのようにきびすを返した。
「逃がさねェ!」
シガレットが気づいたと同時に銃を撃つが、兎の上背に弾丸が掠っても一目散に逃げていく。
「シルヴィア!」
「了解です」
シガレットの声に反応し、シルヴィアがアサルトライフルで兎を仕留めた。
前衛たちが戦っているあの雑魔達の他にもまだいるのではとシガレットは推察せざるを得なかった。
前衛ではドワーフのメンターのプロテクションと衝突した狼が空中へ弾き飛ばされるような事態が起きるほど激しいぶつかり合いが起きている。
一瞬の爪立てに真司は本能的に身体を捻り、狼との間合いを取る。
「っきしょ……!」
苦し紛れに自身を鼓舞させるように真司は眼前の狼に弾丸を撃ち込んだ。
ドワーフ達が防いでくれていてもこぼれてくる敵も出てきて射程距離が殆ど取れなくなりつつある。
「真司さん! 下がって下さい!」
ドワーフの治療を終えたシェールが叫ぶ。彼女が叫ぶのも無理はない、真司の肩は狼の前足の爪で流血の怪我をしていた。
「く……っ」
まだ敵は半分削げただけであり、無理に戦闘を続けるよりは一度下がった方が効率がある。
「傷ついているのは真司さんだけではありませんよ」
ヒールの温かい光に包まれた真司の傷から流血が止まり、傷が癒えていくのを見て真司は安堵のため息をつく。
ミリアは汗を弾き、剣を降り、敵を斬り、距離を取らせる為に凪ぐという作業を随分行い、疲労の色が隠せなくなっていた。
それでも動くのをやめないのは遊牧民を守るため。
数体逃してしまった事に気づき、これ以上は抜かせるものかと敵を退けている。
大きな剣を振り上げ、鹿を叩き斬る。
「はぁ……っ」
大きく息を吐いた瞬間、ミリアは敵の気配に気づき体勢を整えようとした瞬間、一条の光が背後からミリアを追い抜き、敵を吹き飛ばした。
「一度、下がってねー」
その光はノアールのものだ。
「頑張ってるのは、わかってるのよ」
微笑むノアールにミリアは一度頷いた。
「替わる」
「たの……みま、す」
真司に言葉にミリアが返そうとすると、声が擦れるほど疲弊している事に気づかされる。
「すぐに終わりますからっ」
シェールがミリアを支えるようにヒールを発動させる。
「敵は三分の一より減ってます。もう少しです」
小さな朗報にミリアはこくりと頷く。
ミリアの休息を少しでも取らせる為、シェールが前に出てプロテクションを発動させ、盾になる。術を発動させても襲い来る敵。シェールの前にカペラが立ちはだかる。
機導砲が間に合わず、カペラは腕を返し、武器を持っている腕を支えてアルケミストタクトの柄で狼の横顔を殴りつける。
「もう大丈夫です」
ミリアが立ち上がり、再び前線へと戻る。十分とはいえないが、それでもミリアは剣を振るう。
最前線にいるハンターの一人であるメンターは仲間をヒールで癒し、プロテクションで守り続けた。
多くの同胞達と戦うという事はとても心強い。
最前線にいるだろうメンターの視界は戦闘で土埃が起きててよく見えない。
それでも敵は減って来ているような気がする。戦いの中の感覚ではあるが……
メンターの聴覚が危険を訴える。
戦いという危険の中に更なる警戒を感じざるを得ないそれは……。
気づいたメンターがプロテクションで弾こうとするが、先を走っていた狼が跳ね返され、本来の警戒……隠れていたライオンがメンター達、最前衛へ襲いかかる。
ドワーフの一人がメンターを庇い立つ。
ライオンがドワーフに襲いかかる瞬間、ライオンは時を止め、ゆっくりと血に倒れた。
額に弾痕があり、メンターがその方向を見やれば、小さなエルフが銃を構えていた。
「モニカから逃げられると思った……なのよ」
愛らしい容姿と口調と裏腹にハンターの誇りを感じるようにモニカが謳うように誇る。
「もう少しです。あと、少し……!」
叫ぶシェールにハンターとドワーフは心を一つにした。
砂埃が静まると、動く敵の姿はなくなっていた。
敵前逃亡をした敵もいるかもしれない。
近くにいるかもしれないと真司が周辺見回ったが、特に敵は見あたらなく、全て討伐完了と報告しても偽りないだろう。
遊牧民達は程なく移動することになった。
ふらふらとなったメンターをドワーフの一人が抱きとめ、背負って砦まで連れていってくれた。疲労で気を失った彼女は残念ながら気づいていない。
「まだ、何かありそうねー」
「ええ、またお願いすることになると思うわ」
砦を見上げつつ、ノアールが思案すると、カペラが同意する。
「わかったなのよ」
にっこり微笑みつつ、モニカが答えた。
これからここにリアルブルーの兵器がくる。
カペラは技術者としての喜びと辺境を住まう者を守る者の一人としての不安を入り交じりつつその方向を見つめた。
提案したのはシガレット=ウナギパイ(ka2884)だ。
「前衛に四人入れ! メインアタッカーは二人! 殿に遊牧民の護衛として二人だ。俺は遊牧民の護衛に入る!」
それだけ言えば、シガレットは馬を駆けさせて速度を上げた。
追いつく先は先を駆けるカペラ。
「カペラ!」
名を呼べば、カペラは振り向く。早く助けたい焦りはあるようだが、まだ話を聞いてくれそうであった。
「どうかした!?」
「ドワーフを遊牧民護衛に二人借る!」
「分ったわ、後はできる事ある!?」
カペラが問えば、シガレットはハンター達に三つの班に別れて迎撃、護衛する事を伝える。
「ハンターとドワーフの連携でこの危機を乗り越えるンだ!」
「ええ、必ずや、守りましょう!」
シガレットとカペラがそれぞれの意志の強い瞳がぶつかり、それぞれの持ち場へと駆けていく。
遊牧民達は恐怖と混乱と戦いつつも逃げる用意を始める。
地が響き、こちらに向かってくる足音は更なる恐怖を生んでいく。
「助けに来ました!」
先頭を走るドワーフ達を軽やかに追い抜かし、馬上より叫んだのは柊 真司(ka0705)、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)、ミリア・コーネリウス(ka1287)。
敵の先頭もそろそろ近づいてくる。
「長は誰だ!」
「私だ! あんた達は一体……」
真司が叫ぶと壮年の男が応えた。
シルヴィアは頭を覆うヘルメットをしており、年齢も定かでないが、若い者と判断できるし、真司は自分の子供……孫にも見える若さだ。そんな二人が武装をして自分達を守ろうとしている事に戸惑いを隠せない。
「俺達はハンターだ。南の方に逃げろ。俺達が食い止める」
「あ、あんた達二人でか!」
正気かと叫びそうな長に真司は落ち着けと肩をつかむ。
「見えるだろう。味方が」
「ドワーフ?」
真司が促した先にハンターやドワーフ達が駆けてくる。
「南に俺達の仲間二人とドワーフが二人いる。それまでなんとしても逃げ延びてくれ」
「すまない……」
自分達に戦う術はない。長は真司とシルヴィアに詫びる。
「ここはすぐ戦場になります!」
声高にミリアが危機を伝える。
「でも、俺達とは何の関わりもないのに……!」
「誰かの危機を助ける事に理由は要りません。さぁ、早く!」
戸惑う遊牧民達とハンターは確かに関わり合いがない。だが、関わりがなくては助けられないという理由はない。
「大丈夫ですか」
よろけた遊牧民にシルヴィアが声をかける。オーバーヘルメットで顔も分らないが、声で若い女の声と理解した。
「アンタ、女の子なのに……!」
乳飲み子を抱いた母親がシルヴィアを心配する。
「早く逃げてください、私は護衛の為に貴方達の殿を護ります」
「ああ、無事でいるんだよ……」
「善処します」
駆け出す母子を見送り、シルヴィアは前を見据える。
「まだ射程範囲外ですね」
じっと待つシルヴィアが構えるのは二丁のアサルトライフル。
「私達が来たからにはここからは通行止めです。ネズミ雑魔1匹通しませんっ!」
ミリアのブルーの瞳が赤く煌き、全長二メートルのツヴァイハンダーを構える右手の甲に剣を模した紋章が浮かび上がる。
「射程範囲内、来るぞ!」
少しずつ遊牧民が逃れ始め、周囲を窺っていた真司が叫ぶ。
先に威嚇射撃を始めたのはシルヴィアだ。
足元を狙い撃ち、一匹が転げると数匹巻き込まれて転倒した。
ドワーフ達の先導役としてカペラと共に駆けるのはメンター・ハート(ka1966)だ。
今回、同族の依頼ともあり、同行したメンターはイケメン(ドワーフ視点)揃いで心の中で感嘆の声を上げ、親交を深めてとても楽しそうだった。
ドワーフ王国の中でも優秀な調査役にして武官達。逞しく引き締まった筋肉質の体格に顔が埋もれてしまいそうなほど豊かな髭揃いだったのだ。
メンターとて年頃で人間やエルフ同様に素敵な殿方は好きだ。
当然、その美的感覚も様々である。
彼女の赤の髪は黒へと黒い瞳は赤へと変化している。
「往きましょう、戦いの地へ!」
馬上で拳を天へと突き上げて同胞達へ語りかけた。
「我々は土の民! 岩の民! 鋼の民! 土より生まれ、岩の体と、鋼の絆を持つ誇り高き民!」
メンターの声にドワーフ達は「応!」と声を上げる。
「辺境の友の命の灯が消されようとしている。否! 我々によってその灯は守られるのです!
駆けよ! 疾く駆けるのです!」
大地の戦女神の如く、ドワーフの士気を上げるメンターの声にドワーフ達は答えるべく、地響きの如くの雄叫びを上げる。
最前線に立ち、雑魔の動きを鈍らせる盾となる。
ドワーフという岩の盾が遊牧民達を、ハンター達を守る。
「景気よくいくわよ!」
護られるだけではいられないとばかりにアルケミストタクトを掲げるのはカペラ。
一気にマテリアルをタクトに込めて機導砲を発動させる。マテリアルの光を受けた鹿は左角を折られ、首も折れて転倒した。
カペラの機導砲を見た前衛組が遊牧民達がいたところへ合流した。
「お待たせっと」
おっとりとした口調で駆けつけたのはノアール=プレアール(ka1623)。
「モニちゃん、いくわよー」
「了解、なのよっ!」
モニカ(ka1736)が振り向いて返事をする。風が舞い上がり、色とりどりの花びらの幻影がモニカの周囲に舞う。
「一度離脱します」
「気をつけて!」
遊牧民の殿は長だ。
長と共にシルヴィアが護衛の為に前線を離脱する時にシェール・L・アヴァロン(ka1386)がシルヴィアと長を気遣う。
「はい」
シェールの気遣いを受け止め、シルヴィアが頷き、長と共に馬に乗り、南下する。
「さーて、早いところ片付けましょうねー」
マジカルステッキをモニカへと向けると、ノアールの瞳が発光する。モニカへとマテリアルを流入させて命中度を高めたあと、自身にもそれを向ける。
シェールが敵との距離を把握しようとしていた。
射程内に入った敵は鹿とウサギ。次に狼、ライオンの姿が後ろにあった。
「ライオン! あんな獰猛なものまで……皆さん、気をつけてーー!!」
ライオンの姿に気づいた馬上のシェールが注意を呼びかける。
「あらあら、向こうの射程範囲内に入ったら危ないわねー。今どれくらいー?」
ゆったりとした口調でシェールにライオンの位置を尋ねるノアールだがその攻撃の手は的確に雑魔を仕留めている。
「モニカさんの銃なら届きそうです。遠射を含めて」
「わかった……なのよ」
狙いはライオン。早くし止めるに越した事はない。奴らは自分達の射程内に入った獲物を捕まえる為に倍以上の速度で獲物を追いかけて体格を生かして押し倒してその鋭い牙で獲物の命を奪う。
頑丈なドワーフ達であろうとも、その歯牙にかけさせるわけにいかない。
モニカはマテリアルを自分の身長に近い大きさのライフルに込めて射撃の精度を上げる。
乾いた音が響き、音の速さで弾丸が先を走るライオンの右目に命中し、貫通した。右目から上の頭が破裂し、ライオンは絶命した。
「私の肉眼ではまだ四体確認しました」
「先にライオンから仕留めていく……なのよ」
体勢を崩さずにモニカは再び遠射と強射を連携で発生すべくマテリアルをこめていく。
「前線に入る雑魔を倒していくわ」
さて、一方、長を連れたシルヴィアは無事にシガレットとドワーフ二人、先に逃げた遊牧民達と合流できた。
「泣くと思ったが、寝てやがる。大物になるぜぇ」
母に抱かれた乳飲み子はこの緊急事態時に寝ていてシガレットが呆れつつも大物ぶりについ、笑みがこぼれる。
「……前線より、零れた雑魔が」
シガレットにしか聞こえないようにシルヴィアが声をかける。
「未来の大物が傷つかないようにな」
母子に包まれた光は防御力を高める為、シガレットが発動させたプロテクション。
「あんた、聖導士には見えないが、神々しいもんだな」
あっけらかんと言うドワーフにシガレットは「まァな!」と笑う。
「赤ン坊が泣いてねェのに大人が慌てる訳にはいかないからな、落ち着いていこうぜェ」
遊牧民達を勇気付けるようにシガレットが声をかける。
タバコに火をつけたシガレットに最初、ハンター達へ手を振った子供が声をかける。
「ハンターたち、だいじょうぶ……」
「あいつらは強ェんだぜェ」
ニヤリと笑い、シガレットは紫煙をゆっくり吐きだした。
気流はシガレットの追う流れなのにその煙はシガレットの背後へ羽の様な形を見せた。
これ以上悲劇は繰り返させない。これ以上悲劇を生ませない為に戦わなければならない。
「宜しくお願いします」
シルヴィアがドワーフ達に声をかければ「任せろ」とドワーフ達は胸を叩く。
前衛から零れた雑魔達が南下してこちらへ向かっている。
鹿が三体、兎が一体。
再びシルヴィアが二丁のアサルトライフルを構えた。
射程範囲内まで引き付け、先頭を走る鹿を狙う。
鹿はシルヴィアの弾丸に気づいていたかのように跳躍しようとしたが、シルヴィアの弾丸がより早く鹿を捕らえていた。
衝撃を受けた鹿はその場で崩れ落ち、シルヴィアは次の敵へと動く。
もう二体の鹿が前衛のドワーフを蹴倒そうと前足を上げる。
ドワーフ達の斧とハンマーが迎撃し、乱戦状態となっている。ドワーフ達に当たらないようにシルヴィアは牽制射撃を発射した。
牽制銃撃の風圧によろけた鹿の隙を見たドワーフがここぞとばかりに斧を鹿の右前足の付け根に振り上げ、ドワーフの力を持って横へもう一匹を巻き込むようになぎ倒した。
シガレットが狙っているのは兎だ。
兎は鹿の動きを確認し、倒されることを予知したかのようにきびすを返した。
「逃がさねェ!」
シガレットが気づいたと同時に銃を撃つが、兎の上背に弾丸が掠っても一目散に逃げていく。
「シルヴィア!」
「了解です」
シガレットの声に反応し、シルヴィアがアサルトライフルで兎を仕留めた。
前衛たちが戦っているあの雑魔達の他にもまだいるのではとシガレットは推察せざるを得なかった。
前衛ではドワーフのメンターのプロテクションと衝突した狼が空中へ弾き飛ばされるような事態が起きるほど激しいぶつかり合いが起きている。
一瞬の爪立てに真司は本能的に身体を捻り、狼との間合いを取る。
「っきしょ……!」
苦し紛れに自身を鼓舞させるように真司は眼前の狼に弾丸を撃ち込んだ。
ドワーフ達が防いでくれていてもこぼれてくる敵も出てきて射程距離が殆ど取れなくなりつつある。
「真司さん! 下がって下さい!」
ドワーフの治療を終えたシェールが叫ぶ。彼女が叫ぶのも無理はない、真司の肩は狼の前足の爪で流血の怪我をしていた。
「く……っ」
まだ敵は半分削げただけであり、無理に戦闘を続けるよりは一度下がった方が効率がある。
「傷ついているのは真司さんだけではありませんよ」
ヒールの温かい光に包まれた真司の傷から流血が止まり、傷が癒えていくのを見て真司は安堵のため息をつく。
ミリアは汗を弾き、剣を降り、敵を斬り、距離を取らせる為に凪ぐという作業を随分行い、疲労の色が隠せなくなっていた。
それでも動くのをやめないのは遊牧民を守るため。
数体逃してしまった事に気づき、これ以上は抜かせるものかと敵を退けている。
大きな剣を振り上げ、鹿を叩き斬る。
「はぁ……っ」
大きく息を吐いた瞬間、ミリアは敵の気配に気づき体勢を整えようとした瞬間、一条の光が背後からミリアを追い抜き、敵を吹き飛ばした。
「一度、下がってねー」
その光はノアールのものだ。
「頑張ってるのは、わかってるのよ」
微笑むノアールにミリアは一度頷いた。
「替わる」
「たの……みま、す」
真司に言葉にミリアが返そうとすると、声が擦れるほど疲弊している事に気づかされる。
「すぐに終わりますからっ」
シェールがミリアを支えるようにヒールを発動させる。
「敵は三分の一より減ってます。もう少しです」
小さな朗報にミリアはこくりと頷く。
ミリアの休息を少しでも取らせる為、シェールが前に出てプロテクションを発動させ、盾になる。術を発動させても襲い来る敵。シェールの前にカペラが立ちはだかる。
機導砲が間に合わず、カペラは腕を返し、武器を持っている腕を支えてアルケミストタクトの柄で狼の横顔を殴りつける。
「もう大丈夫です」
ミリアが立ち上がり、再び前線へと戻る。十分とはいえないが、それでもミリアは剣を振るう。
最前線にいるハンターの一人であるメンターは仲間をヒールで癒し、プロテクションで守り続けた。
多くの同胞達と戦うという事はとても心強い。
最前線にいるだろうメンターの視界は戦闘で土埃が起きててよく見えない。
それでも敵は減って来ているような気がする。戦いの中の感覚ではあるが……
メンターの聴覚が危険を訴える。
戦いという危険の中に更なる警戒を感じざるを得ないそれは……。
気づいたメンターがプロテクションで弾こうとするが、先を走っていた狼が跳ね返され、本来の警戒……隠れていたライオンがメンター達、最前衛へ襲いかかる。
ドワーフの一人がメンターを庇い立つ。
ライオンがドワーフに襲いかかる瞬間、ライオンは時を止め、ゆっくりと血に倒れた。
額に弾痕があり、メンターがその方向を見やれば、小さなエルフが銃を構えていた。
「モニカから逃げられると思った……なのよ」
愛らしい容姿と口調と裏腹にハンターの誇りを感じるようにモニカが謳うように誇る。
「もう少しです。あと、少し……!」
叫ぶシェールにハンターとドワーフは心を一つにした。
砂埃が静まると、動く敵の姿はなくなっていた。
敵前逃亡をした敵もいるかもしれない。
近くにいるかもしれないと真司が周辺見回ったが、特に敵は見あたらなく、全て討伐完了と報告しても偽りないだろう。
遊牧民達は程なく移動することになった。
ふらふらとなったメンターをドワーフの一人が抱きとめ、背負って砦まで連れていってくれた。疲労で気を失った彼女は残念ながら気づいていない。
「まだ、何かありそうねー」
「ええ、またお願いすることになると思うわ」
砦を見上げつつ、ノアールが思案すると、カペラが同意する。
「わかったなのよ」
にっこり微笑みつつ、モニカが答えた。
これからここにリアルブルーの兵器がくる。
カペラは技術者としての喜びと辺境を住まう者を守る者の一人としての不安を入り交じりつつその方向を見つめた。
依頼結果
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相談卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/11/28 08:57:41 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/24 22:27:17 |