ゲスト
(ka0000)
グレナ村ウマメシ計画っ!
マスター:旅硝子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2014/06/20 09:00
- 完成日
- 2014/06/25 01:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国。厳しい自然環境と歪虚や亜人の脅威に晒され続ける、独裁的軍事国家。
この国を訪れた者の多くは、さらなる1つの問題に直面し、頭を抱え腹を押さえるのである。
すなわち――。
ご飯が!
美味しく!!
ないっ!!!
帝国の僻地、丘陵に抱かれ針葉樹林をその向こうに見つめるグレナ村に、宿屋はない。
けれど気のいい村人達は、あるいは依頼の帰りに、あるいはちょっとした旅の途中に偶然この村に来合わせたハンター達を、喜んで泊めて歓待してくれた。
せがまれるままに冒険譚を話せば、子ども達や青年達が目を輝かせて。
誰かが歌えば、誰かが手拍子をする。離れた地域の、他国の、そして異世界の文化が、村人達の興味を引く。
人口50人にも満たない小さな村の、心のこもった歓待は、ハンター達の心をほっと和ませてくれた。
しかし、胃袋は満足しない。
とりあえず適当に茹でて塩を振った芋。
とりあえず焚き火で適当に焼いて塩を振った羊肉。
とりあえず度数のめちゃ高いアクアヴット。
とりあえず川から汲んできた水。酒飲めない人用。
――が、村人達が心を込めて用意してくれたご馳走の全てだったのである。
そう、いびっているわけでは決してないのだ。
その気持ちが、山盛りにされた芋と羊肉、わざわざ用意してくれた貴重なガラスのグラスに現れている。
針葉樹林の森にはいくらか恵みもあるはずだが、林に入って獣に襲われたり帰って来なかった者が何度も出ている上、村人達は「昔は芋もなかったから、お腹いっぱい食べられるなんて奇跡みたいだ」と今の状態にかなりの満足を抱いているのだ。
とはいえ、やっぱり、美味しいご飯が食べたいっ!
村の人達はハンターの来訪をとても嬉しがり、「ぜひもう一泊していってください」と言ってくれる。
よしっ!
この歓待へのお礼を兼ねて、明日は調達した材料と荷物の中に入っていた調味料を使って、大ご馳走を作ってしまおうじゃないかっ!
この国を訪れた者の多くは、さらなる1つの問題に直面し、頭を抱え腹を押さえるのである。
すなわち――。
ご飯が!
美味しく!!
ないっ!!!
帝国の僻地、丘陵に抱かれ針葉樹林をその向こうに見つめるグレナ村に、宿屋はない。
けれど気のいい村人達は、あるいは依頼の帰りに、あるいはちょっとした旅の途中に偶然この村に来合わせたハンター達を、喜んで泊めて歓待してくれた。
せがまれるままに冒険譚を話せば、子ども達や青年達が目を輝かせて。
誰かが歌えば、誰かが手拍子をする。離れた地域の、他国の、そして異世界の文化が、村人達の興味を引く。
人口50人にも満たない小さな村の、心のこもった歓待は、ハンター達の心をほっと和ませてくれた。
しかし、胃袋は満足しない。
とりあえず適当に茹でて塩を振った芋。
とりあえず焚き火で適当に焼いて塩を振った羊肉。
とりあえず度数のめちゃ高いアクアヴット。
とりあえず川から汲んできた水。酒飲めない人用。
――が、村人達が心を込めて用意してくれたご馳走の全てだったのである。
そう、いびっているわけでは決してないのだ。
その気持ちが、山盛りにされた芋と羊肉、わざわざ用意してくれた貴重なガラスのグラスに現れている。
針葉樹林の森にはいくらか恵みもあるはずだが、林に入って獣に襲われたり帰って来なかった者が何度も出ている上、村人達は「昔は芋もなかったから、お腹いっぱい食べられるなんて奇跡みたいだ」と今の状態にかなりの満足を抱いているのだ。
とはいえ、やっぱり、美味しいご飯が食べたいっ!
村の人達はハンターの来訪をとても嬉しがり、「ぜひもう一泊していってください」と言ってくれる。
よしっ!
この歓待へのお礼を兼ねて、明日は調達した材料と荷物の中に入っていた調味料を使って、大ご馳走を作ってしまおうじゃないかっ!
リプレイ本文
作戦前夜のことである。
「歓迎はとても嬉しい……食事もあるだけ嬉しい……が」
藤堂研司(ka0569)は、満ち足りたお腹をさすって呟く。
お腹は確かにいっぱいだ。だが――物足りない。
「果物とか食いてぇ――!」
そんな魂の叫びが、今回のウマメシ計画の発端になったとか。
「ハンターさん達が美味しいご馳走を作ってくれるんだって!」
子ども達は興味津々にハンター達を取り囲む。その真ん中で、不動 大(ka2136)は木の枝と余った細ロープを使ってせっせと籠を作っていた。
「ハンターの兄ちゃん、それ、何に使うの?」
「近くに川があるのでしたら魚も取る方がいいでしょう。釣る時間がない場合や子どもでも獲れるような仕掛けをお教えします」
その言葉に、わぁ、と歓声と共に、子ども達が騒がしくなる。
「さかなっ!? さかなって、食べれるの?」
「すごーい!」
いつの間にか大人達もきらきら瞳を輝かせて輪に混じる。
籠作りのコツを尋ねる村人達に、丁寧に大が答える。その間に木の籠が5つ、大き目の籠が1つ、あっという間に出来上がって。
「芽の出ていないジャガイモを少し借りて行きます。料理するには良い物がジャガイモから取れますので」
「おお、ジャガイモならいっぱいありますぞ! さぁどうぞどうぞ」
村一番の大男が背負ってきた大袋のジャガイモの中から、5、6個ほどもらっていく。この山ほどのジャガイモも、仲間達が料理に使うだろう。
「ああ、それと木の器を一つお借りできませんか?」
荷物を抱えて丘の向こうへ去っていく大を、村人達は尊敬の眼差しで見送ったのだった。
そしてこちらは、羊を放牧している丘。
「おお、ハンターのお嬢ちゃん、リアルブルーの人なのに手際がいいなぁ」
「あらあんた、リアルブルーにも羊はいるでしょうに」
そんな羊飼いの夫婦のやり取りに、羊の乳搾りをしながらユウカ・ランバート(ka1158)は思わず笑みを浮かべる。
最初はちょっと苦戦したのだが、羊達は大人しく、羊飼い夫婦は親切にやり方を教えてくれる。大きな甕いっぱいに絞った羊乳は、「お嬢ちゃんには重いだろ」と太い腕が危なげなく運んでくれた。
「ありがとう、おじさん、おばさん!」
「おうよ! しかし、こんなにたくさんどうするんだい?」
「それは見てのお楽しみだよ!」
リアルブルーの学校で受けた授業がこんな所で役に立ちそうと、集まった村人達を前にユウカはさっそく腕まくりをするのだった。
さらに、針葉樹林にて。
「さてと、ついにこのジュウベエちゃんの『料理漫画で覚えた究極料理100選』の出番が来たようね!」
――Jyu=Bee(ka1681)はれっきとしたクリムゾンウェスト出身のエルフである。
良質なサブカルチャーというものは世界を越えて素晴らしいのだ。
「美味しいお料理を食べること、それは生きる喜びですわ」
そう嬉しそうだったルフィリア・M・アマレット(ka1544)は、今はちょっと落ち込み気味であった。
なぜか、彼女が覗き込んだ木の下や草むらには。
「なぜ、赤に白い水玉のキノコと、ぱくぱく動く食虫植物しかありませんの……」
そりゃ表情も曇ろうというものである。
「針葉樹か……イチイと、カヤが確か食えたな。ここにもあるといいけど……お、あった」
その間に目的の木を見つけた研司が、「毒とかないかな?」とJyuに尋ねる。リアルブルーの植物と違いがあったら困るからと、念のためだ。
「大丈夫ね、実を食べるなら……こ、これは!!」
研司に答えながら木の根元を探していたJyuが、キノコを手にレアアイテム発見のポーズを取る。
「アレよね。食材を探してて、『こ、これは!!』みたいな叫び声をあげるのも基本よね」
そう、基本は大切である。
「あっ、研司さん! ちょっと、手伝ってほしいんだけど……」
「お、鳥の卵かい?」
少し遠慮がちに声をかけてきた飄 花(ka0205)に、研司は明るく振り向く。
「うん! 花はリアルブルーの奇跡の調味料、マヨネーズを伝授したいから!」
「いいねぇ。巣はどこかな?」
「あっちと、こっちと……それから、向こうの方にも。1つの巣からいっぱい取っちゃったら、鳥が困っちゃうもんね」
了解、と素早く研司が木に登る。その間に、ルフィリアが小さく声を上げた。
「あ……! この茶色いキノコと緑の野草は、市場で見たことがありますわ。あの……これなら大丈夫でしょうか?」
確かめるように差し出されたキノコと野草をじっと見てから、Jyuがぐっと親指を立てる。
「OK! これであなたも初級食材ハンターよ!」
「はい! ……あ、あれ? しょきゅう?」
勢い良く返事をしたものの、良く考えて思わず首を傾げるルフィリアであった。
ひゅん、と釣竿が唸り、魚がぴちぴちと銀色の体を躍らせる。
「こんなものかな。なかなかの釣果だ」
針を外し、魚を大きな籠へ。仕掛け籠の罠を覗くと、そこにも手頃サイズの魚がたくさん入っていた。
ジャガイモをすりおろし、綺麗な布と水を使って抽出した天日干しの片栗粉も、そろそろ乾いていい感じ。
そっと目を細めて、大は荷物をまとめて村への道を歩き出す。
足くくりの罠にかかっていた大きな鹿は、手早くしめてしばらく置いてから、研司が手際よく捌いていく。
「こうして命を頂いて生きていることを忘れてはいけませんわね……」
ルフィリアがじっとそれを見つめながら、静かに手を組み合わせる。森の獣も、羊も、そして植物やキノコも。食事とは、命をいただく行為なのだと、静かな実感と感謝が胸に宿る。
そして、決意を新たにするのだ。
「美味しいお料理を食べること、それは生きる喜びですわ。グレナ村の皆さんの笑顔が見られるように頑張りましょう! それに今日はどんな美味しいお料理が食べられるのでしょうか……想像しただけで……はぁ……」
涎を慌てて拭ったのは見なかったことにするのが紳士の嗜み。
そんな2人の反対側では、ユウカと花が早速調理を始めていた。
「学校の授業ではミルクを入れた容器を振ってバターが出来たから……お鍋に羊のミルク入れて棒でかき混ぜても出来るかも?」
ユウカが大きな鍋とかき混ぜるための棒を借りて、ミルクの中の脂肪分がしっかりぶつかり合うように、右に左に交互に混ぜて。
「袋に羊乳を入れて、いっぱいいっぱい振り続けてもいいかもね!」
「あ、なるほど! いろいろ工夫できるねっ」
花の言葉に、ユウカも大きく頷いて。根気のいる作業だけれど、料理の美味しさを思えば楽しい苦労だ。
「えっとね、この油は植物から取れるんだけど……」
花が卵と塩をよくよくかき混ぜて、酢を入れてさらに混ぜる。しっかり混ざったら、油を少しずつ足していく。
「へぇー、手間がかかるんだなぁ……」
「油だったらいくらか行商人さんから買ったのがあるけど、いっぱい使うんだねぇ。今度多めに買ってみようか」
わいわいと村人達が言い合う中、トンと花が泡立て器を置く。
「塩加減は後からでも調節できるからね! これで出来上がり!」
「おー!」
大拍手が巻き起こる中、ユウカはにっこり笑って。
「この調味料があれば結構お料理の味も広がると思うよ! それと、卵を採りに行くのに危険な針葉樹林に行くのも大変だから、卵をよく産みそうな鳥さんを村で飼うってどうかな?」
花の提案に、ふむふむと村人達は頷き合い、相談を始める。
確かに卵があれば、料理のバリエーションは格段に広がるだろう。
「はー! できたー!」
鍋の中で、ようやくバターとミルクが分離する。布を使って漉せば、美味しいバターの出来上がり。
「これに塩を入れて料理に使ったり、ジャガイモと一緒に食べたり、塩を入れないでお菓子に使ったり! ……舐めてみる?」
一番前でじぃっとユウカの手元を見ていた少年に声を掛ければ、こくんと頷く。バターを掬ったスプーンを、ぱくりと頬張った少年の顔がみるみる笑顔に。
「とろっとしてて、おいしいね!」
「あ、あの……わたしも、いい?」
我も我もと手を伸ばす村人達がみんなで一口ずつ食べても、まだまだバターの量は充分!
焚き火のそばでは大がまな板を借りて、せっせと魚を捌いている。
「すごーい、私、お魚食べるの初めて!」
「そうかそうか、実はお父さんも初めてなんだ!」
こちらにもわくわくと目を輝かせるギャラリーが出来ていた。
「こちらは針葉樹林の中の川で獲ったものです。これの仕掛け方もお教えしますね」
そう大が仕掛け罠を指して言えば、おお、とギャラリーがどよめく。
「大さん、バターいる?」
「あ、ユウカさん。ありがとうございます」
ユウカからバターをもらって、熱したフライパンに広げる。捌いて片栗粉をつけた魚を次々に入れて行けば、じゅわぁ、と油の弾ける音。
焚き火の周りでは、内臓を取って塩をまぶした魚が、木の枝に刺さってパチパチと順調に焼けている。ムニエルが出来上がったら、今度はたっぷりの油を使ってフライを揚げる。
「よしっ! ミンチ完了、ここに――卵とパン粉を投入する!」
「わあー!」
傍らではJyuが料理漫画の勢いと動作で、見事な下ごしらえを繰り広げていた。
両手で1つずつの卵を持って割る高度な技法に、村人達がわぁっと盛り上がる。
「さぁ、料理に炎の洗礼を!」
さらにアクアビットを使って料理漫画格好いいシーンのベスト3を(多分)飾るフランベ!
大歓声!
完全にやり遂げた料理人の顔で出来上がった料理を皿に移し、優雅にJyuは一礼した。
「リアルブルーの大人気肉料理、ハンバーグでございます」
さらに、喝采。拍手が巻き起こる。
イチイの種を丁寧に取り除き、砂糖と酒で煮詰めて甘いフルーツソースの出来上がり。
焚き火の左右に鹿の角を使って支えを作り、そこに大きな鹿肉と羊肉の塊を刺した木の枝を引っ掛けて、焼けたところから皿に盛っていく。そしてそこに、イチイのソースをかけるのだ。
「羊肉にも、鹿肉にも合いそうだ。芋にも合うかもしれないな」
興味津々といった様子で覗き込む少女に、ひょいと皿を差し出す研司。
「すごい、こんなの食べたことないよ!」
「おう、腹いっぱい食べさせてあげるからな」
「ありがとうお兄ちゃん!」
少女に笑いかけて、あく抜きしたカヤをローストする。酒のつまみにもいいし、蒸した芋を裏ごししてカヤを入れてクッキー風に焼いても美味しいかと研司はまた調理に取り掛かる。
酒の方はアクアビットもあれば、それをジュースで割ったカクテルもJyuが用意している。
その隣の焚き火では、ことこととスープが煮えていた。ルフィリアが木のおたまでアクを取る。
ジャガイモやキノコ、肉を一口大に切り、肉を下茹でして粉末ハーブで臭みを取った、丁寧な仕事ぶりが効を奏して、ふんわりといい香りが漂う。
一度おたまを置いて、今度は森で採った果物を絞る。ルフィリアに誘われた村人達もお喋りしながら、ジュース作りを楽しんでいた。
「えーっと……お酢を入れて沸騰しない程度に温めるんだったかな?」
ユウカがバターを作った後のミルクを使い、温度に気を付けながら酢を混ぜれば美味しいチーズが出来上がる。
「わぁすごい、同じお乳からバターもチーズも出来るなんて!」
「ねぇ、どうやってるの?」
村人達に言われて、ユウカはふと思い出す。
「ねぇ、こういう風に酸っぱくなったお酒ってないかな?」
「ひゃあ酸っぱい! あ、確かに古くなったうちのお酒と同じ! 捨てようと思ってたんだけど」
「そうそう! こうなったらお酢って言って、料理に使えるんだよ!」
ほう、と感心の声が上がる隣で、Jyuのハンバーグもバリエーション豊かに出来上がっていた。
赤ワインとキノコの煮込みハンバーグや、削ったチーズを温めてかけたチーズハンバーグなどなど。
付け合わせのマッシュポテトもほっこりと湯気を立て、煮詰めたジュースとマッシュポテトを混ぜて焼いた焼きマッシュポテトも甘い香りを漂わせて。
その隣に大の魚料理各種が並び、研司のイチイソース焼肉とカヤの料理も並ぶ。クッキー風に焼いたカヤ入り芋に付けたら美味しそうと、ユウカがバターとチーズを置いて。
「まぁ……美味しそうなお料理がたくさん……ここは天国ですわ……!」
大きなお盆にスープの器を乗せて運んできたルフィリアが、ずらりと並んだ料理に目をきらきら輝かせる。もちろん、周りの村人達もだ。
「皆のアイディアいっぱいのお料理、すごいよね!」
大きな鉢いっぱいのポテトサラダを持ってきた花が、テーブルいっぱいの料理を見渡してにっこり笑う。もちろんポテトサラダも、マヨネーズをたっぷり使い、芋と野菜を丁寧に混ぜた自慢の一品だ。
わいわいと村人達と、ハンター達が集まって、一斉に手を合わせて。
「いただきます!」
一度静かになって、食べる音だけが聞こえた後。
一斉に、歓声と笑顔が弾けた。
「おいしい!」
「魚ってこんなに美味しいのか! 教えてもらった罠で獲りに行こう!」
「芋もこうしたらもっと美味しいのね! まよねーず、すごい!」
「この甘いソースで食べるお肉、溶けちゃいそう……」
「ああ……バターとこのクッキーがたまらない……チーズも試そうっと!」
「んー、このスープ、いつもの煮込みよりずっと美味しいね!」
「じゅーす……お代わり……」
「美味いぞーーー!!」
ハンター達の顔も、笑顔に輝く。村人達の喜びが嬉しくて、誇らしくて。
「皆様、幸せそうな笑顔ですわね。お料理は幸せの魔法ですわ」
ルフィリアが微笑んで、自分もいただきますわ、と手を合わせて。
「マ、マヨネーズがこんなに美味しいなんて! このお料理も……このお料理もとってもとっても美味しいですっ!」
「皆で作った料理を食べるのって楽しいね!」
花がにっこり笑い、ユウカが大きく頷く。
「はぁ……ルフィは幸せですわ~♪」
ルフィリアはほんにゃりと表情を緩めてひたすら食べる。食べる。食べる。
もちろん村人達も、ハンター達もたっぷりと料理を頬張って。
「あとは、この獣肉を塩漬けにして、熟成させて……こうしてもとても美味いんだ!」
「そうそう、そしてこの片栗粉なのですが、簡単に作れまして……」
食べながら話のタネにと大や研司が、自分の知識を惜しみなく村人達に伝えていく。
さらにJyu主導で、レシピとしても書き残して。
「これできっと美味しいお料理のある村ってことで有名になっちゃうかもね!」
「次は、あなた達の美味しい料理を振る舞ってもらえるのを期待しているわ」
花とJyuの言葉に、村人達が頷く。
「楽しみにしていてくだされ!」
「きっと、これ作れるようになるよ!」
グラスが何十度目の乾杯を刻み、大人も子どもも村人もハンターもたっぷり宴を楽しんで。
さぁ、村を美味しく彩った、これからも彩るだろう恵みに、感謝を!
「ご馳走様でした!」
「歓迎はとても嬉しい……食事もあるだけ嬉しい……が」
藤堂研司(ka0569)は、満ち足りたお腹をさすって呟く。
お腹は確かにいっぱいだ。だが――物足りない。
「果物とか食いてぇ――!」
そんな魂の叫びが、今回のウマメシ計画の発端になったとか。
「ハンターさん達が美味しいご馳走を作ってくれるんだって!」
子ども達は興味津々にハンター達を取り囲む。その真ん中で、不動 大(ka2136)は木の枝と余った細ロープを使ってせっせと籠を作っていた。
「ハンターの兄ちゃん、それ、何に使うの?」
「近くに川があるのでしたら魚も取る方がいいでしょう。釣る時間がない場合や子どもでも獲れるような仕掛けをお教えします」
その言葉に、わぁ、と歓声と共に、子ども達が騒がしくなる。
「さかなっ!? さかなって、食べれるの?」
「すごーい!」
いつの間にか大人達もきらきら瞳を輝かせて輪に混じる。
籠作りのコツを尋ねる村人達に、丁寧に大が答える。その間に木の籠が5つ、大き目の籠が1つ、あっという間に出来上がって。
「芽の出ていないジャガイモを少し借りて行きます。料理するには良い物がジャガイモから取れますので」
「おお、ジャガイモならいっぱいありますぞ! さぁどうぞどうぞ」
村一番の大男が背負ってきた大袋のジャガイモの中から、5、6個ほどもらっていく。この山ほどのジャガイモも、仲間達が料理に使うだろう。
「ああ、それと木の器を一つお借りできませんか?」
荷物を抱えて丘の向こうへ去っていく大を、村人達は尊敬の眼差しで見送ったのだった。
そしてこちらは、羊を放牧している丘。
「おお、ハンターのお嬢ちゃん、リアルブルーの人なのに手際がいいなぁ」
「あらあんた、リアルブルーにも羊はいるでしょうに」
そんな羊飼いの夫婦のやり取りに、羊の乳搾りをしながらユウカ・ランバート(ka1158)は思わず笑みを浮かべる。
最初はちょっと苦戦したのだが、羊達は大人しく、羊飼い夫婦は親切にやり方を教えてくれる。大きな甕いっぱいに絞った羊乳は、「お嬢ちゃんには重いだろ」と太い腕が危なげなく運んでくれた。
「ありがとう、おじさん、おばさん!」
「おうよ! しかし、こんなにたくさんどうするんだい?」
「それは見てのお楽しみだよ!」
リアルブルーの学校で受けた授業がこんな所で役に立ちそうと、集まった村人達を前にユウカはさっそく腕まくりをするのだった。
さらに、針葉樹林にて。
「さてと、ついにこのジュウベエちゃんの『料理漫画で覚えた究極料理100選』の出番が来たようね!」
――Jyu=Bee(ka1681)はれっきとしたクリムゾンウェスト出身のエルフである。
良質なサブカルチャーというものは世界を越えて素晴らしいのだ。
「美味しいお料理を食べること、それは生きる喜びですわ」
そう嬉しそうだったルフィリア・M・アマレット(ka1544)は、今はちょっと落ち込み気味であった。
なぜか、彼女が覗き込んだ木の下や草むらには。
「なぜ、赤に白い水玉のキノコと、ぱくぱく動く食虫植物しかありませんの……」
そりゃ表情も曇ろうというものである。
「針葉樹か……イチイと、カヤが確か食えたな。ここにもあるといいけど……お、あった」
その間に目的の木を見つけた研司が、「毒とかないかな?」とJyuに尋ねる。リアルブルーの植物と違いがあったら困るからと、念のためだ。
「大丈夫ね、実を食べるなら……こ、これは!!」
研司に答えながら木の根元を探していたJyuが、キノコを手にレアアイテム発見のポーズを取る。
「アレよね。食材を探してて、『こ、これは!!』みたいな叫び声をあげるのも基本よね」
そう、基本は大切である。
「あっ、研司さん! ちょっと、手伝ってほしいんだけど……」
「お、鳥の卵かい?」
少し遠慮がちに声をかけてきた飄 花(ka0205)に、研司は明るく振り向く。
「うん! 花はリアルブルーの奇跡の調味料、マヨネーズを伝授したいから!」
「いいねぇ。巣はどこかな?」
「あっちと、こっちと……それから、向こうの方にも。1つの巣からいっぱい取っちゃったら、鳥が困っちゃうもんね」
了解、と素早く研司が木に登る。その間に、ルフィリアが小さく声を上げた。
「あ……! この茶色いキノコと緑の野草は、市場で見たことがありますわ。あの……これなら大丈夫でしょうか?」
確かめるように差し出されたキノコと野草をじっと見てから、Jyuがぐっと親指を立てる。
「OK! これであなたも初級食材ハンターよ!」
「はい! ……あ、あれ? しょきゅう?」
勢い良く返事をしたものの、良く考えて思わず首を傾げるルフィリアであった。
ひゅん、と釣竿が唸り、魚がぴちぴちと銀色の体を躍らせる。
「こんなものかな。なかなかの釣果だ」
針を外し、魚を大きな籠へ。仕掛け籠の罠を覗くと、そこにも手頃サイズの魚がたくさん入っていた。
ジャガイモをすりおろし、綺麗な布と水を使って抽出した天日干しの片栗粉も、そろそろ乾いていい感じ。
そっと目を細めて、大は荷物をまとめて村への道を歩き出す。
足くくりの罠にかかっていた大きな鹿は、手早くしめてしばらく置いてから、研司が手際よく捌いていく。
「こうして命を頂いて生きていることを忘れてはいけませんわね……」
ルフィリアがじっとそれを見つめながら、静かに手を組み合わせる。森の獣も、羊も、そして植物やキノコも。食事とは、命をいただく行為なのだと、静かな実感と感謝が胸に宿る。
そして、決意を新たにするのだ。
「美味しいお料理を食べること、それは生きる喜びですわ。グレナ村の皆さんの笑顔が見られるように頑張りましょう! それに今日はどんな美味しいお料理が食べられるのでしょうか……想像しただけで……はぁ……」
涎を慌てて拭ったのは見なかったことにするのが紳士の嗜み。
そんな2人の反対側では、ユウカと花が早速調理を始めていた。
「学校の授業ではミルクを入れた容器を振ってバターが出来たから……お鍋に羊のミルク入れて棒でかき混ぜても出来るかも?」
ユウカが大きな鍋とかき混ぜるための棒を借りて、ミルクの中の脂肪分がしっかりぶつかり合うように、右に左に交互に混ぜて。
「袋に羊乳を入れて、いっぱいいっぱい振り続けてもいいかもね!」
「あ、なるほど! いろいろ工夫できるねっ」
花の言葉に、ユウカも大きく頷いて。根気のいる作業だけれど、料理の美味しさを思えば楽しい苦労だ。
「えっとね、この油は植物から取れるんだけど……」
花が卵と塩をよくよくかき混ぜて、酢を入れてさらに混ぜる。しっかり混ざったら、油を少しずつ足していく。
「へぇー、手間がかかるんだなぁ……」
「油だったらいくらか行商人さんから買ったのがあるけど、いっぱい使うんだねぇ。今度多めに買ってみようか」
わいわいと村人達が言い合う中、トンと花が泡立て器を置く。
「塩加減は後からでも調節できるからね! これで出来上がり!」
「おー!」
大拍手が巻き起こる中、ユウカはにっこり笑って。
「この調味料があれば結構お料理の味も広がると思うよ! それと、卵を採りに行くのに危険な針葉樹林に行くのも大変だから、卵をよく産みそうな鳥さんを村で飼うってどうかな?」
花の提案に、ふむふむと村人達は頷き合い、相談を始める。
確かに卵があれば、料理のバリエーションは格段に広がるだろう。
「はー! できたー!」
鍋の中で、ようやくバターとミルクが分離する。布を使って漉せば、美味しいバターの出来上がり。
「これに塩を入れて料理に使ったり、ジャガイモと一緒に食べたり、塩を入れないでお菓子に使ったり! ……舐めてみる?」
一番前でじぃっとユウカの手元を見ていた少年に声を掛ければ、こくんと頷く。バターを掬ったスプーンを、ぱくりと頬張った少年の顔がみるみる笑顔に。
「とろっとしてて、おいしいね!」
「あ、あの……わたしも、いい?」
我も我もと手を伸ばす村人達がみんなで一口ずつ食べても、まだまだバターの量は充分!
焚き火のそばでは大がまな板を借りて、せっせと魚を捌いている。
「すごーい、私、お魚食べるの初めて!」
「そうかそうか、実はお父さんも初めてなんだ!」
こちらにもわくわくと目を輝かせるギャラリーが出来ていた。
「こちらは針葉樹林の中の川で獲ったものです。これの仕掛け方もお教えしますね」
そう大が仕掛け罠を指して言えば、おお、とギャラリーがどよめく。
「大さん、バターいる?」
「あ、ユウカさん。ありがとうございます」
ユウカからバターをもらって、熱したフライパンに広げる。捌いて片栗粉をつけた魚を次々に入れて行けば、じゅわぁ、と油の弾ける音。
焚き火の周りでは、内臓を取って塩をまぶした魚が、木の枝に刺さってパチパチと順調に焼けている。ムニエルが出来上がったら、今度はたっぷりの油を使ってフライを揚げる。
「よしっ! ミンチ完了、ここに――卵とパン粉を投入する!」
「わあー!」
傍らではJyuが料理漫画の勢いと動作で、見事な下ごしらえを繰り広げていた。
両手で1つずつの卵を持って割る高度な技法に、村人達がわぁっと盛り上がる。
「さぁ、料理に炎の洗礼を!」
さらにアクアビットを使って料理漫画格好いいシーンのベスト3を(多分)飾るフランベ!
大歓声!
完全にやり遂げた料理人の顔で出来上がった料理を皿に移し、優雅にJyuは一礼した。
「リアルブルーの大人気肉料理、ハンバーグでございます」
さらに、喝采。拍手が巻き起こる。
イチイの種を丁寧に取り除き、砂糖と酒で煮詰めて甘いフルーツソースの出来上がり。
焚き火の左右に鹿の角を使って支えを作り、そこに大きな鹿肉と羊肉の塊を刺した木の枝を引っ掛けて、焼けたところから皿に盛っていく。そしてそこに、イチイのソースをかけるのだ。
「羊肉にも、鹿肉にも合いそうだ。芋にも合うかもしれないな」
興味津々といった様子で覗き込む少女に、ひょいと皿を差し出す研司。
「すごい、こんなの食べたことないよ!」
「おう、腹いっぱい食べさせてあげるからな」
「ありがとうお兄ちゃん!」
少女に笑いかけて、あく抜きしたカヤをローストする。酒のつまみにもいいし、蒸した芋を裏ごししてカヤを入れてクッキー風に焼いても美味しいかと研司はまた調理に取り掛かる。
酒の方はアクアビットもあれば、それをジュースで割ったカクテルもJyuが用意している。
その隣の焚き火では、ことこととスープが煮えていた。ルフィリアが木のおたまでアクを取る。
ジャガイモやキノコ、肉を一口大に切り、肉を下茹でして粉末ハーブで臭みを取った、丁寧な仕事ぶりが効を奏して、ふんわりといい香りが漂う。
一度おたまを置いて、今度は森で採った果物を絞る。ルフィリアに誘われた村人達もお喋りしながら、ジュース作りを楽しんでいた。
「えーっと……お酢を入れて沸騰しない程度に温めるんだったかな?」
ユウカがバターを作った後のミルクを使い、温度に気を付けながら酢を混ぜれば美味しいチーズが出来上がる。
「わぁすごい、同じお乳からバターもチーズも出来るなんて!」
「ねぇ、どうやってるの?」
村人達に言われて、ユウカはふと思い出す。
「ねぇ、こういう風に酸っぱくなったお酒ってないかな?」
「ひゃあ酸っぱい! あ、確かに古くなったうちのお酒と同じ! 捨てようと思ってたんだけど」
「そうそう! こうなったらお酢って言って、料理に使えるんだよ!」
ほう、と感心の声が上がる隣で、Jyuのハンバーグもバリエーション豊かに出来上がっていた。
赤ワインとキノコの煮込みハンバーグや、削ったチーズを温めてかけたチーズハンバーグなどなど。
付け合わせのマッシュポテトもほっこりと湯気を立て、煮詰めたジュースとマッシュポテトを混ぜて焼いた焼きマッシュポテトも甘い香りを漂わせて。
その隣に大の魚料理各種が並び、研司のイチイソース焼肉とカヤの料理も並ぶ。クッキー風に焼いたカヤ入り芋に付けたら美味しそうと、ユウカがバターとチーズを置いて。
「まぁ……美味しそうなお料理がたくさん……ここは天国ですわ……!」
大きなお盆にスープの器を乗せて運んできたルフィリアが、ずらりと並んだ料理に目をきらきら輝かせる。もちろん、周りの村人達もだ。
「皆のアイディアいっぱいのお料理、すごいよね!」
大きな鉢いっぱいのポテトサラダを持ってきた花が、テーブルいっぱいの料理を見渡してにっこり笑う。もちろんポテトサラダも、マヨネーズをたっぷり使い、芋と野菜を丁寧に混ぜた自慢の一品だ。
わいわいと村人達と、ハンター達が集まって、一斉に手を合わせて。
「いただきます!」
一度静かになって、食べる音だけが聞こえた後。
一斉に、歓声と笑顔が弾けた。
「おいしい!」
「魚ってこんなに美味しいのか! 教えてもらった罠で獲りに行こう!」
「芋もこうしたらもっと美味しいのね! まよねーず、すごい!」
「この甘いソースで食べるお肉、溶けちゃいそう……」
「ああ……バターとこのクッキーがたまらない……チーズも試そうっと!」
「んー、このスープ、いつもの煮込みよりずっと美味しいね!」
「じゅーす……お代わり……」
「美味いぞーーー!!」
ハンター達の顔も、笑顔に輝く。村人達の喜びが嬉しくて、誇らしくて。
「皆様、幸せそうな笑顔ですわね。お料理は幸せの魔法ですわ」
ルフィリアが微笑んで、自分もいただきますわ、と手を合わせて。
「マ、マヨネーズがこんなに美味しいなんて! このお料理も……このお料理もとってもとっても美味しいですっ!」
「皆で作った料理を食べるのって楽しいね!」
花がにっこり笑い、ユウカが大きく頷く。
「はぁ……ルフィは幸せですわ~♪」
ルフィリアはほんにゃりと表情を緩めてひたすら食べる。食べる。食べる。
もちろん村人達も、ハンター達もたっぷりと料理を頬張って。
「あとは、この獣肉を塩漬けにして、熟成させて……こうしてもとても美味いんだ!」
「そうそう、そしてこの片栗粉なのですが、簡単に作れまして……」
食べながら話のタネにと大や研司が、自分の知識を惜しみなく村人達に伝えていく。
さらにJyu主導で、レシピとしても書き残して。
「これできっと美味しいお料理のある村ってことで有名になっちゃうかもね!」
「次は、あなた達の美味しい料理を振る舞ってもらえるのを期待しているわ」
花とJyuの言葉に、村人達が頷く。
「楽しみにしていてくだされ!」
「きっと、これ作れるようになるよ!」
グラスが何十度目の乾杯を刻み、大人も子どもも村人もハンターもたっぷり宴を楽しんで。
さぁ、村を美味しく彩った、これからも彩るだろう恵みに、感謝を!
「ご馳走様でした!」
依頼結果
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ウマメシクッキング! 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/06/20 08:49:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/16 20:09:50 |