ゲスト
(ka0000)
アマリリス~旧ポカラ村の赤波
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/07 19:00
- 完成日
- 2017/12/19 02:16
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは同盟領のどこか。「ポカラ」と呼ばれた村のあった地域。
「あーあ。これでついに残っていた井戸も完全壊滅か」
村のあった中心地にぽっかり空いた大きな穴を縁から見下ろしつつ、キアンがボヤいた。
「井戸だけの話じゃないけどね」
ここを守っていた義勇隊を指揮するモータルもボヤいた。
ここは川から少し遠い。地下水源は村の生命線だ。昨年大型歪虚に襲われたときに地上の井戸はほぼ全滅していた。こういう事態のためだったのか、教会の地下に井戸が残されていたためさらなる大型歪虚の侵攻を見張るべくモータルの義勇隊が常駐することができていた。
それが、予想以上の歪虚の大侵攻にさらされ根こそぎ破壊されたのだ。
理由は、地中に嫉妬の歪虚王、ラルヴァの腕のうちの一本が埋まっていたから。
大樹歪虚が大型昆虫歪虚多数を引き連れ壊滅していた村に着地すると、そのまま根を下ろし地面を地中深くまでかくはん。目当ての腕を掘り当てるとそのまま抱えて飛んで逃げると見せ掛け、別働隊が地中を隠れて運んでいった。
一連の動きは村の足元を文字通り揺るがした。
「地面そのものが掘り返されたんだ。家なんかを立て直すのも地固めから。……空気が入ることで土壌も変わる。村はこれで完全に終わった。再建するならむしろこっちを畑なんかにしたほうがいいんじゃないか?」
「まあ、俺たちも村の跡地を守るために外堀や土塁なんかを築いたがな」
キアンの言う通り、ポカラ住民から託された跡地を守るため駐屯地としてかなり変えていた。
「総力戦だったからね」
それに負けた、とモータル。
村の跡地は中心部だけではなく、周りも方々に土地が掘り返されひどいありさま。
幸い、彼らには工事用の可変魔導アーマー「ビルドムーバー」があったのでとりあえず道路だけは地面を固めるなど復旧作業を完了していた。
「負けたんなら負けたでさっさとこんなところからおさらばしたいもんだが」
「魔術師協会に監視警備の必要性を説いて業務委託の形を取った関係上、勝手はできないな」
投げやりなキアンに生真面目なモータル。
「んなこと言ったって、もう歪虚は目的を果たしたんだろ? ここにいても何もねぇだろ」
キアンがそう毒づいた時だった。
「うわっ!」
仲間から声が上がった。
「どうした? 何があった」
「モータルさん、森に……赤い蟻の姿が……」
声の主は双眼鏡を持った見張りだった。
「まだ遠いですが、木々の上まで登ったりうごめいています」
「どれ。……うわ、黄色い蟻酸も空にまいた……」
双眼鏡を覗いたモータル、顔をしかめる。
「敵の残存勢力ですかね。どうします?」
「一応、大型歪虚のさらなる侵攻を食い止めるっていう役目もあるんだから、報告して殲滅するしかないだろう。おい、キアン」
「分かったよ。ビルドムーバー一台、ちょいと離れるぜ?」
モータルの指示を受けキアンが報告に走る。
というわけで、大型の蟻歪虚を殲滅する戦力が呼び集められた。
「あーあ。これでついに残っていた井戸も完全壊滅か」
村のあった中心地にぽっかり空いた大きな穴を縁から見下ろしつつ、キアンがボヤいた。
「井戸だけの話じゃないけどね」
ここを守っていた義勇隊を指揮するモータルもボヤいた。
ここは川から少し遠い。地下水源は村の生命線だ。昨年大型歪虚に襲われたときに地上の井戸はほぼ全滅していた。こういう事態のためだったのか、教会の地下に井戸が残されていたためさらなる大型歪虚の侵攻を見張るべくモータルの義勇隊が常駐することができていた。
それが、予想以上の歪虚の大侵攻にさらされ根こそぎ破壊されたのだ。
理由は、地中に嫉妬の歪虚王、ラルヴァの腕のうちの一本が埋まっていたから。
大樹歪虚が大型昆虫歪虚多数を引き連れ壊滅していた村に着地すると、そのまま根を下ろし地面を地中深くまでかくはん。目当ての腕を掘り当てるとそのまま抱えて飛んで逃げると見せ掛け、別働隊が地中を隠れて運んでいった。
一連の動きは村の足元を文字通り揺るがした。
「地面そのものが掘り返されたんだ。家なんかを立て直すのも地固めから。……空気が入ることで土壌も変わる。村はこれで完全に終わった。再建するならむしろこっちを畑なんかにしたほうがいいんじゃないか?」
「まあ、俺たちも村の跡地を守るために外堀や土塁なんかを築いたがな」
キアンの言う通り、ポカラ住民から託された跡地を守るため駐屯地としてかなり変えていた。
「総力戦だったからね」
それに負けた、とモータル。
村の跡地は中心部だけではなく、周りも方々に土地が掘り返されひどいありさま。
幸い、彼らには工事用の可変魔導アーマー「ビルドムーバー」があったのでとりあえず道路だけは地面を固めるなど復旧作業を完了していた。
「負けたんなら負けたでさっさとこんなところからおさらばしたいもんだが」
「魔術師協会に監視警備の必要性を説いて業務委託の形を取った関係上、勝手はできないな」
投げやりなキアンに生真面目なモータル。
「んなこと言ったって、もう歪虚は目的を果たしたんだろ? ここにいても何もねぇだろ」
キアンがそう毒づいた時だった。
「うわっ!」
仲間から声が上がった。
「どうした? 何があった」
「モータルさん、森に……赤い蟻の姿が……」
声の主は双眼鏡を持った見張りだった。
「まだ遠いですが、木々の上まで登ったりうごめいています」
「どれ。……うわ、黄色い蟻酸も空にまいた……」
双眼鏡を覗いたモータル、顔をしかめる。
「敵の残存勢力ですかね。どうします?」
「一応、大型歪虚のさらなる侵攻を食い止めるっていう役目もあるんだから、報告して殲滅するしかないだろう。おい、キアン」
「分かったよ。ビルドムーバー一台、ちょいと離れるぜ?」
モータルの指示を受けキアンが報告に走る。
というわけで、大型の蟻歪虚を殲滅する戦力が呼び集められた。
リプレイ本文
●
「あー、いやがるな」
双眼鏡を覗いていたヴァイス(ka0364)がこぼす。
「どれ、貸してくれ……ああ、あれか?」
隣のトリプルJ(ka6653)がその双眼鏡を受け取って森の方を見る。
旧ポカラ村の向こうにある森で、たまに木々の上から赤っぽい何かが見え隠れするときがある。赤い蟻型歪虚の一部だ。わしゃわしゃうごめいているようで。
「そりゃいいがこの双眼鏡、何で花柄なんだ?」
J、改めて手にした双眼鏡への疑問を口にする。
「それは私の愛用品だから。可愛いでしょう?」
その横にいたルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がその疑問に答える。
「なんだ、ヴァイスの趣味かと思った」
「似合うわけねーだろ。それより、出て来んの待つのか?」
Jの呟きに付き合ってから振り向くヴァイス。
「待ってて日が暮れても困ります。あぶり出してもらえれば」
ポカラ防衛隊のモータルが答えた。
「そりゃ何より。こっちもその気だ」
ヴァイス、仲間を振り返る。
「気休めですがこれでいいでしょう」
そちらでは魔導型デュミナス「Phobos」(ka0018unit001)の装甲に何やら抗酸加工の作業をしていたクオン・サガラ(ka0018)が手を払っていた。塗装の保護にはなるだろう。
少し離れた場所ではグリフォンたちがいる。
「イケロス、お眠? もうちょっとで出撃だからお仕事終わるまで我慢してね?」
夢路 まよい(ka1328)が、大きくあくびをしているグリフォン「イケロス」(ka1328unit002)をぽふぽふ。
「長い戦いになりそうだ。苦労をかけると思うけど、頼むよ」
隣ではレオン(ka5108)がまだ名前を決めかねているグリフォン(ka5108unit003)の背を撫で声を掛けている。
準備は整ってそうだな、と微笑するヴァイス。
そこへ天竜寺 舞(ka0377)がやって来た。
「あいつら目的は達した筈なのにまだ出てくんの? しつこすぎ!」
「まだ出てきたわけじゃないけどね……あぶり出してもらう予定だけど」
相変わらずの元気の良さにくす、と笑うモータル。
「OK。ラルヴァの腕の時はしてやられたからストレス溜まってるんだよね。来るってんならケチョンケチョンにのしてやるよ。覚悟しな!」
ぱしん、と拳を自らの手の平に打ち付ける。
「よし。じゃ、先に俺たちが出る。あと、よろしくな?」
自らのグリフォン「ホムラ」(ka0364unit004)に向かって歩くヴァイス。
「任せとけって」
「はわわっ……砲撃距離まで近付いておくんだからっ」
双眼鏡を投げ渡すJに受け取るルンルンの声。
「それじゃわたしも森の近くまで近寄っておくんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)も小走りして魔導トラック(ka5484unit001)に乗り込む。アクセルをふかすと待機していた丘から一気に下った。
「行こう」
「うんっ」
レオンとまよいもグリフォンに騎乗し雄々しく羽ばたく。ヴァイスもホムラでいま、テイクオフ。
「グリフォンだと低空からあぶり出しをすると蟻酸を浴びます。低空域は任せてください」
クオンもフォボスで先行。白地に真紅の機体がアクティブスラスターで一気に跳躍した。
「ま、任せといて! じゃ、行くよ。今日もよろしく、相棒!」
舞はモータルにサムズアップすると魔導型デュミナス「弁慶」(ka0377unit001)に乗り込んだ。
「よっ、と」
「大輪牡丹ちゃん、GO!!」
JもR7エクスシア(ka6653unit001)に搭乗。ルンルンも刻令ゴーレム「Volcanius」「ニンタンク『大輪牡丹』」(ka5784unit002)につかまって始動。先行する大空の航空部隊、地上を行く陸戦部隊の背を追った。
●
「……いるね。ちょっかい出したらこっちに向かってくるか、それとも逃げていくか」
森に近付いたところでレオンが空戦部隊に呼び掛けた。
「向かってくるなら誘導すりゃいいだろ?」
「じゃ、奥に逃げられちゃったらヤだから奥からいくよ」
トランシーバー越しに眉を捻じ曲げてる様子がありあり分かる右ヴァイスの通信に、無邪気なまよいの通信。
その直後に、ぐうんと低空に移って加速するまよいとイケロス。これでも昔は古風な洋館で箱入り娘として育てられていたのだが、今ではご覧の通りだったりする。
「あ~、いるいる。……わあっ、蟻酸が飛んで来たよ!」
低空飛行で鋭敏感覚。蟻の方ももちろんすぐに気付いて蟻酸を上に巻いて牽制してくる。隠れている、というつもりはないらしい。ぎゅーん、と一気に森の奥まですっ飛んで蟻酸の雨を小被害でやり過ごすまよい。
一方、残りのグリフォン部隊。
「あ、行っちまった。どうする?」
「奥から仕掛けるなら俺たちはそっちには行かず中間で調整をすればいい」
すかさずレオンに通信するヴァイス。もとよりあぶり出し作戦。無理はしないし急ぎもしない。
「手前側は状況を見て爆撃します。飛行できる間にできるだけ削って地上部隊に合流します」
魔導型デュミナスのクオンも出だしこそスラスターだったが森の手前までは陸上走破で続いていた。ここから再びアクティブスラスターでジャンプする作戦だ。
「分かった。頼むぜ」
ヴァイス、ホムラを右に誘導する。レオンも頷きグリフォンを左に。
が、そのどちらにも蟻は潜伏していた様子。蟻酸の雨が下から飛んでくる。
「ち。進行方向に落ちてくるように狙ってやがる」
「しかも地上を追ってきてる。クオン、こっちの掃討を頼めるか?」
レオンは姿勢制御で回避運動からリカバリー。一瞬のタメを作る。
「了解。左旋回します」
すでにジャンプしているクオン、フォボスの下半身に装着したフライトフレーム「アディード」をフルバースト。前進停止すると深紅の胸部を左にひねって翼のように広げた背中のスラスターが火を噴いた。鋭角に曲がるとレオンのいる空域へ加速した。
「よろしく」
レオン、ばばばっ、と再び大量の蟻酸が放物線を描いたところで飛翔の翼。一気に飛び抜け攻撃の集中する危険空域を離脱する。
そして蟻酸の放物線が森に落ち切ったころ、フォボスが到着!
「高速演算……するまでもないですね。これであぶり出しです」
構えるはツインカノン「リンクレヒトW2」。
コクピット内ではクオンのヘッドマウントディスプレイに森の木々の間を移動する赤い物体が見え隠れしている。ぴぴぴとサーチ音が連続しているのはロックオンしきれないため。それを待たずにシュートした。
――どごっ、どうん……。
「派手に爆破して派手に音がすればいいわけですからね」
「もう一回頼みます」
着弾点を確認する暇もなくレオンからの連絡。次の爆撃現場へと急ぐ。
この頃、まよいは森の奥の方でぐうんと方向転換していた。黒みがかったイケロスの翼が大きく横に開かれ左バンク。びしゃびしゃ、と蟻酸が降り注ぎ食らってしまうがそれは旋回マニューバの初動時期だけ。バンクから加速すると着弾はおいてけぼりだ。
まよいの瞳がきらりと輝く。手綱から放し振り上げた手には錬金杖「ヴァイザースタッフ」。
その視線が森の中から飛んでくる蟻酸の発射地点を捕えた。赤い何かが見える。
「ちょっと遠いけどエクステンドレンジで射程延ばすよ!」
言うと同時に左に振るって、ぴゃーん!
一直線の雷撃が木々の小枝を散らす。がすっ、と歪虚にも当たったような音もする。
「この前ラルヴァの腕をまんまと持ち去られたのも悔しいし!」
今度は右。ぴしゃーん!
「代わりといってはなんだけど、蟻んこたちをやっつけちゃうんだから!」
続けて左。ぴしゃーん!
「ほら、あっちいけ~!」
ぴしゃーん。
なかなかの迫力である。
「無邪気そのものだな……おっと」
その様子を見ていたヴァイス、突然ホムラの深紅の身体に身を伏せた。直後にびしゃびしゃっ、と蟻酸が降り注ぐ。
「翼までは守ってやれないが、背中くらいはな……よし、行くぜ!」
白い首筋を優しく撫でると手綱を引き絞って急降下突撃命令。敵の攻撃をかわしたのではなくグリフォンを守った動きだ。
これを意気に感じたホムラ、猛然と敵がいると思しき地点に一直線……いや、手前に急降下したぞ?
「まあ、直撃は嫌だし……この方が狙いやすくもある」
ヴァイス、ニヤリとして射程の長いマジックアロー。一匹を狙った。
「ん?」
ただ、点ではなく線の動きで森を間近に観測したところ、新手が合流していた。
「まよいの方からか? だったら……」
上空に離脱しておいて旋回運動。今度は自分の動きはない。
「頼むぜ、ホムラ!」
またも急降下しつつ今度は途中で大きく翼を広げた。蟻酸はこの速度の変化にホムラの下を通過。
が、避けたのではないッ!
「こいつでまとめて!」
深紅の翼にきらりと光る魔羽刃「イサール」。ぶおんとホムラが羽ばたくと小型の竜巻が地上を襲った。まとめて蟻どもにダメージを加えたのだ。
「これで森の外に……何? 向かってくんのか?」
仕方ない、と追うに任せて自ら森の外を目指した。まよいと違い大きく空域を使ってなかった分、しつこく狙われていたのかもしれない。
●
この少し前、森の近くで。
「わ~、蟻酸の雨がすごいんだよ」
トラック中の小鳥が森の上に飛ぶ黄色い酸を見上げていた。
「前は蜘蛛で今度は蟻…。昆虫と縁があるのかな、このトラック」
そう言えば前は蜘蛛の糸だったよね~と汗をたらり。
そこへヴァイスからの連絡。
「もうすぐ敵が森から出る、宜しく頼むぜ!」
「り、了解。いつでも砲撃可能なんだよ♪」
運転席に吊り下げていたトランシーバーに応答。踏み込むアクセル。トラック後方の追加ダクト「ロークペイプ」からぽふんと爆音。ヴァイスのいる空域のへと急ぐ。
「この辺りならいいかな?」
ききき、とハンドルを切って森に向いた時に上空をヴァイスのホムラが通過。
間髪入れずその時だった!
――がさっ、ばきっ。かささささささ……。
「うわ、大きいのが出てきたんだよ」
しかも速い!
「ココから先は立ち入り禁止なんだからね!」
小鳥、トラック後部に積んだ車載砲「パンテレスD7」の大砲門からどすん、と一撃。発射の衝撃で車体が弾む。どすん、どすんと連発する。
――どかっ、どかっ!
大型の赤い蟻が、一匹は吹っ飛んで一匹は消滅。もう一発は外れた。吹っ飛んだ蟻からは装甲のような外殻がぱらぱらと砕けて落ちている。
が、残り数匹がわしゃわしゃと接近してくる。
「ちょっと予定より早いんだよ~」
バックギアに入れた小鳥、下がりながらどこんどこん。蟻酸が飛んでくるが追加装甲板やカバードコーティング「クレーディト」で対策をしている。とにかく敵の侵攻を遅らせるべく射撃に専念する。
「いい感じかな?」
森の上で旋回したレオンは乱れた長髪を手で押さえつつ森の端へ視線を移す。
――どすん。
見遣った方でクオンのフォボスが長いジャンプを終えて地上に着地していた。ロングジャンプで無理をした分、勢いを和らげる着地姿勢も長くなる。
そこへ、ぐばっと枝葉が舞い赤い大型の蟻歪虚が出て来た。目標が地上に降りたこのチャンスを見逃さない構えだ。
はっ、とゴーグル型カバーが特徴的な頭部を上げるフォボス。
「出てきたのなら下がりますよ」
コクピットのクオン、冷静だ。球状のハンドステックを動かし着地姿勢の解除、重心を後ろに下げつつ数歩後退、そしてスラスターオンして再び後背にジャンプする。
もちろん飛び去り際にツインカノン斉射!
派手な炸裂音とともに草や土が舞う。敵侵攻の手前を狙った、逃げるための牽制攻撃だ。
「わざわざ接近戦はしません……どうやら後続隊は旧ポカラ村まで到達したようですね」
爆発で蟻の前進が止まったことを確認しつつ身をひねり後方支援部隊を確認。無事に旧ポカラ村まで一気に詰めて拠点としていることに安堵した。
「計画通りです」
再びの着地と同時に、頭上を大きく越える砲弾が放物線を描いていた。
そのしばらく前。
「来ました来ました。ルンルン忍法とニンタンク『大輪牡丹』ちゃんの力を駆使して、森から襲い来る蟻歪虚を殲滅です!」
花柄双眼鏡を覗き戦況を確認していたルンルンのテンションが上がった。
そしてニンタンク『大輪牡丹』に命令だ!
「炸裂弾装填、たまやー!」
振り上げた右腕を一気に伸ばすと、横にそびえる大きなニンタンクの肩に装備された巨砲、プラズマキャノン「ヴァレリフラッペ」が火を噴いた。魔導型大砲特化型にカスタムした機体でも砲撃で揺れるほどの威力で炸裂弾をぶっ放す!
大きく放物線を描いた弾道は、スラスターでバックジャンプしたクオンのフォボスがいた地点に向かい……どごーん。
「大輪牡丹ちゃん、着弾修正! 次弾装填用~意……確実に狙ったとこに撃ちこんでいっちゃうんだからっ」
先の一発は挨拶とばかりに効果的な着弾点を狙う。
このちょっと前、森の奥。
「え~い、もう面倒なんだから!」
イケロスに乗ったまよい、雷撃を繰り返していた錬金杖を振るうのをやめた。攻撃疲れしても仕方がない勢いだったが、何というかお昼寝好きのイケロスのようにお疲れ……。
「近付いて一気に追い払うよ!」
違った!
もーっと攻勢に出た!
「イケロス、思う存分暴れてね」
グリフォンを一気に加速急降下させて森の直近上空で翼を動かしツイスター。雷で一体ずつの攻撃から竜巻での全体攻撃に切り替えたのだ。
「ほらほら~……あとは、ついてこ~い!」
酸の雨を少し浴びてもものともせずに楽しそう。数発食らわせ混乱させてから攻撃の手を緩めると森の外へと向かった。
これを見た蟻ども、わしゃわしゃと追って行く。やられっぱなしだったのが攻撃が止んで逃げているのだ。そりゃ追うわな。
で、どばっと一気に押し寄せる波のように蟻の大群が森から出て来た。
外に出ると先の二隊とは違い、ひと回り小さな個体の蟻たちだったことが判明。
「いっぺんに出るのはダメ!」
ここでまよい、お休みしていた杖を振り上げた。
頭上に発生する、燃え盛る火球三つ。
「えいっ!」
メテオスウォームだ。
――どどど、どーん!
破壊音と火の手が上がる。蟻どもは森側に吹っ飛ぶ。ぱらぱらと崩れた外殻が下に落ちている。いや、これまでの手数で数体はこれで動きを止めたか。
ただ、一呼吸おいてからの動きは素早い。
あっという間に前進を始め、先の大型蟻歪虚に並ぼうかという勢いだ。
「とと、流石に押しとどめ切れなくなって来ちゃったかな。移動しつつの砲撃に切り替えるんだよー」
右翼の小鳥、敵に詰められ慌ててハンドルを回し反転。ターボブーストで本格的に戦略的撤退をする。
「右がヤバい。誰かポジションチェンジ、できるか?!」
上空のヴァイス、水平射撃で止めることのできる誰かを呼んだ!
「任せといてよ!」
スラスターで颯爽と直線正対位置に入り込んできたのは、舞だった。
手に構えるはCAM用カノン砲、105mmスナイパーライフル。
基本姿勢でがっちり身を固め、しっかりと狙いを定める!
もちろんこれに気付く蟻どもだが、ライフルの射程は長い。距離はじっくり待つだけの間合いがある。
「あーんと大口開けて喰らいな! 蟻だけに!」
蟻だけに、とコクピットでくだらない冗談を言いつつ時を待つと、予想通り蟻酸を吐くため口を開けた!
――どうっ、ごぱっ!
一直線の狙いすました一撃が蟻の頭部に着弾し、そのまま顔を持っていくように炸裂した!
「マルチロックオンしてるんだよね~」
得意げに次弾。が、転がった先の蟻の死体で後方まで弾が通らない。炸裂弾なので死体は吹っ飛ぶがその間に敵は寄せてきている。
「なかなか面倒くさいじゃない」
舞の方はそれでも効果ありと再び射撃。距離を詰められるわけにはいかないので先頭を叩くがこれまで無傷の個体は最低でも二発は掛かるようだ。
「ま、上からも狙っちゃいるが」
ヴァイスは上から後続狙い。
うまく分担はできているがすぐに数は減らない。
一方、小鳥。
「……さっきより多いし」
中央にポジションチェンジして砲撃するが、前の一匹が潰れると後方に射線が通らないのは先と同じ。
「それじゃ散らすよ! イケロス!」
上空のまよい、今度は騎乗のグリフォンに風を纏わせ急降下。
「それっ。飛んでけーっ! ……あ。そこのはお眠ね?」
ばふーん、と地表近くまで降下して風を解放。衝撃と斬撃の爆風をまき散らし固まっていた蟻歪虚を四方に飛ばした。
きしゃーん、と大迫力の蟻どもの悲鳴。
もちろんこれでくたばった蟻もいる。ついでに吹っ飛びながらも無事そうなのはまよいがえいっと雷撃で止めを刺したり。
「これで狙えるんだよ」
小鳥、砲塔を旋回させて狙う。
が、今度はわらわらと横にも移動。これまでの単純な縦方向の移動ではない。結構かわしてくる。
これは接近戦をした方が確実か?
誰もがそう思った時だった。
●
「よーやく出番が来たようだな!」
ここでアクティブスラスター全開で最前線に突入して来たR7エクスシアは、トリプルJの機体。
「歪虚をこれ以上のさばらせてたまるかよっ」
中央の大型蟻が散った方面に突撃しつつ手にしたハンドガン「トリニティ」をロングバレルに変形させ、プラズマグレネード発射!
どぱーん、と大地でプラズマ爆発をさせて牽制するとそのまま突っ込み、爆風で煽られ体勢を立て直したばかりの蟻に取りついた。
「命中精度は落ちるがまずは外殻がはがれるんだろ? ちょうどいい」
コクピットでにい、と口角を釣り上げるJ。振り上げるエクスシアの脚部に装備した脚爪「モーンストルム」の刃先がギラリと光る。
「本命はこっちだからな!」
足、振り下ろす。
振り下ろす振り下ろす。
ワイルドラッシュでずたずたに切り刻むッ!
「援護するよ……でも、それって格闘向きでしたっけ?」
ここでレオンがグリフォンを降下させツイスターで横からJを狙う敵を蹴散らす。彼がロザリオ「タビアイマーン」を持っているのはヒールしてからアンチボディで攻撃軽減を自らに掛けたから。びしゃっ、と蟻酸が当たるがこのダメージを打ち消した。
「いーんだよ。ベルセルクってのはそーゆーもんだ!」
「Jさん、そっち行ったんだよ?」
「おうよ。任せとけ、小鳥」
J、各方面に答えつつ次の敵に襲い掛かる。
「これは負けてられないね!」
この様子を耳にした舞、ライフルから魔導鋸槍「ドレーウング」に持ち替えた。
「ま、こっちも散ったから各個撃破が必要になってるしな」
上からのヴァイスの見立て。彼の上からの攻撃で、敵が固まって侵攻し前が潰れても乗り越えて来る荒波戦法を打ち破っていた。中央と同じく蟻は左右に散り始めている。
その一つに舞の弁慶がスラスターで突進。
これに気付いた蟻も正面から向かって来たぞ?
「スキルトレース! 行くよ、弁慶。……その顎とこのノコギリ刃、どっちが勝つか勝負だ!」
舞、先手必勝で先の先を取った。敵は後の先とばかりにタメを作るがもう遅い。舞はすでに飛燕でノーモーション攻撃態勢。そこへ部位狙いの鋭い突きが入った!
ぎゅーんと刃が高速回転し、蟻の上あごより上の頭部が下あごと泣き別れ。外れた兜の如く吹っ飛んだ!
ずざざざ……と突撃の勢いのまま通り過ぎて着地する弁慶。
その制御姿勢の背後で頭部を失った大きな蟻がぴくりとのけぞり、倒れた。
見た目は一突きだが、そこに至るまでに三つのスキルを乗せた三段突きである。リアルブルーではどこぞの新撰組の誰かが使っていたとかなんとか。
「舞!」
「おっと!」
上空からヴァイスの声。舞、蟻酸の集中攻撃を食らう前だったがその声に反応しマルチステップで大量に浴びる前に移動するのだった。
こちら、左翼。
「まあ、熱くなる必要はないですね」
クオン、フォボスに念のため帯刀させていた試作CAMブレードに手を掛けそうになったが思いとどまった。
代わりに連絡する。
「ルンルンさん、散らす砲撃はもう必要なさそうです」
こちらもよそと同様、敵は一直線の侵攻から蜘蛛の子を散らしたように逃げ回った後ワイドに展開してきた。
「了解なんだからっ」
ルンルン、これを聞いても砲弾はしばらく止まなかった。
実はかなり前からゴーレムの傍を離れ前線に近いところまで単身上がって来ていたのだ。
で、屈んで何かやっている。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せターンエンドです」
何やら地縛符を仕掛けた模様。
それはともかく、クオン。
「敵は集団から個別に突破を図ってます。撃ち漏らしのないように!」
皆に呼び掛け自身はツインカノンの水平射撃。垂直に降り注ぐニンタンク『大輪牡丹』の攻撃とは違い的確に狙っている。
「ここは通さない」
すたっ、と地に下りたのはレオンのグリフォン。敵の前だが、近寄られる前に星剣「アルマス・ノヴァ」を抜刀。ソウルエッジで輝く刃を掲げると敵も気付いて一直線に向かってきた。いや、蟻酸を吐いた!
「どちらでも構わない!」
叫ぶと同時に羽ばたくグリフォン。蟻酸、もといた場所に着弾。
レオンは振り上げ溜めに溜めた刃を振り下ろした。
「衝撃派!」
ばばばっ、と草原の草を散らしマテリアルの衝撃が走った。
「いまだ、まよい!」
「ちゃんとライトニングボルトは取ってたんだよね」
呼ばれて舞い込むまよいとイケロス。のけぞる蟻の前に突っ込んで手堅く雷撃をかましてぶっ倒した。
「あややや!? この距離じゃ砲撃出来ないんだよ!?」
地上を行く者同士好かれたのか、小鳥の魔導トラックは蟻にしつこく狙われていた。
が、きききと急旋回。
「うぅ、ちょっと距離を取らないと。アクセルフルチャージ、行く手を邪魔する蟻はふっ飛ばすんだよ!」
弱気なこと言ったくせに何だか目つきが鋭くなった!
そのままマテルアルを纏って火の鳥のようになった車両でついてきた蟻に突っ込む!
「当たれ当たれ~」
砲撃もするがじゃじゃ馬の如く直進。結局体当たりで一掃しかなり余計に進んだところで、止まった。
「すまないが結構固まってるのがいる。追い込むんで頼む!」
上空からの攻撃で敵を追い込んでいたヴァイスの声。
「任せろ。村には行かせねぇ!」
これに反応したのはJ。
視線を向けるとすでにヴァイスが竜巻でこちら方面に固まるよう攻撃していた。
「各個撃破は抜かれるかもしれないぜ?」
「地面ゼロ距離で悪りぃが、その分必ずここで止めて見せるぜ」
上空からだと範囲攻撃にしても敵がどちらに散っていくか分かりにくい難点があることに理解を示すJ、挟み撃ちとばかりに試作型対VOIDミサイル「ブリスクラ」を構えてプラズマバースト発射!
――どうん!
「後ろにも逃げ道はないぜ?」
不敵に微笑するヴァイスが後ろに飛んで衝撃を吸収しようとする蟻を逃がさないよう、背後にツイスター。これでほぼ滅した。
残った蟻は……。
「これで止め、ってな」
スラスターで急速接近したR7の脚部刃でバッサリやった。
残った敵はかなり村まで近寄っているぞ?
「火炎で進路を塞いじゃうのです…タンク忍法大火遁の術」
ルンルン、地縛符に足止めされた敵にニンタンクの火炎弾を撃ち込む。
さらに前に来る敵数匹。
「前に出ちゃいます!」
ついにタンク、発進!
そして接敵すると呪画をばっと広げる。
「ジュゲームリリカル…ルンルン忍法三雷神の術! これ以上先には行かせないんだから」
一瞬『通行止』の文字が浮かんだ!
「今出でよ、めがね、うくれれ、おいーっす」
風雷陣、炸裂!
最後の蟻はこれを食らって動きを止めた。
●
戦い終わって、旧ポカラ村で。
「守り切ったが……」
心に秘めた使命を果たしたレオンだが、心配そうに背後に視線を送った。
「お疲れ、モータル」
舞が皆に炭酸飲料を配る。
「これから、どうすんだ?」
何かありゃ手伝うが、とJ。瓦礫に腰掛けている。
モータルはぷしっ、と炭酸飲料を開ける。瞬間的に泡が立ち、消えていった。
「分かりません。歪虚次第です」
魔術師協会の委託を取り付けた分、自分たちだけで決断できなくなっている。
そこへ偵察に出ていたヴァイスが戻ってきた。
「歪虚はいない。……わかってはいたが、森をかなり傷つけてしまったな」
広範囲に被害が出ている。
「ほんとにもうこれで最後にしてよ」
舞、呟いてごろん。
その視線に、背後で愛機を簡易メンテしているクオンやグリフォンをいたわっているまよいにレオン、そしてトラックのタイヤ確認をしている小鳥の姿が映った。
「何かコツがあるかな?」
「機体の洗浄と除染についてですか? 特にフライトユニットとセンサーはうるさいですから念入りに」
モータルもこれを見た。
「頑張らなくちゃですね」
決心して、立つ。
「あー、いやがるな」
双眼鏡を覗いていたヴァイス(ka0364)がこぼす。
「どれ、貸してくれ……ああ、あれか?」
隣のトリプルJ(ka6653)がその双眼鏡を受け取って森の方を見る。
旧ポカラ村の向こうにある森で、たまに木々の上から赤っぽい何かが見え隠れするときがある。赤い蟻型歪虚の一部だ。わしゃわしゃうごめいているようで。
「そりゃいいがこの双眼鏡、何で花柄なんだ?」
J、改めて手にした双眼鏡への疑問を口にする。
「それは私の愛用品だから。可愛いでしょう?」
その横にいたルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がその疑問に答える。
「なんだ、ヴァイスの趣味かと思った」
「似合うわけねーだろ。それより、出て来んの待つのか?」
Jの呟きに付き合ってから振り向くヴァイス。
「待ってて日が暮れても困ります。あぶり出してもらえれば」
ポカラ防衛隊のモータルが答えた。
「そりゃ何より。こっちもその気だ」
ヴァイス、仲間を振り返る。
「気休めですがこれでいいでしょう」
そちらでは魔導型デュミナス「Phobos」(ka0018unit001)の装甲に何やら抗酸加工の作業をしていたクオン・サガラ(ka0018)が手を払っていた。塗装の保護にはなるだろう。
少し離れた場所ではグリフォンたちがいる。
「イケロス、お眠? もうちょっとで出撃だからお仕事終わるまで我慢してね?」
夢路 まよい(ka1328)が、大きくあくびをしているグリフォン「イケロス」(ka1328unit002)をぽふぽふ。
「長い戦いになりそうだ。苦労をかけると思うけど、頼むよ」
隣ではレオン(ka5108)がまだ名前を決めかねているグリフォン(ka5108unit003)の背を撫で声を掛けている。
準備は整ってそうだな、と微笑するヴァイス。
そこへ天竜寺 舞(ka0377)がやって来た。
「あいつら目的は達した筈なのにまだ出てくんの? しつこすぎ!」
「まだ出てきたわけじゃないけどね……あぶり出してもらう予定だけど」
相変わらずの元気の良さにくす、と笑うモータル。
「OK。ラルヴァの腕の時はしてやられたからストレス溜まってるんだよね。来るってんならケチョンケチョンにのしてやるよ。覚悟しな!」
ぱしん、と拳を自らの手の平に打ち付ける。
「よし。じゃ、先に俺たちが出る。あと、よろしくな?」
自らのグリフォン「ホムラ」(ka0364unit004)に向かって歩くヴァイス。
「任せとけって」
「はわわっ……砲撃距離まで近付いておくんだからっ」
双眼鏡を投げ渡すJに受け取るルンルンの声。
「それじゃわたしも森の近くまで近寄っておくんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)も小走りして魔導トラック(ka5484unit001)に乗り込む。アクセルをふかすと待機していた丘から一気に下った。
「行こう」
「うんっ」
レオンとまよいもグリフォンに騎乗し雄々しく羽ばたく。ヴァイスもホムラでいま、テイクオフ。
「グリフォンだと低空からあぶり出しをすると蟻酸を浴びます。低空域は任せてください」
クオンもフォボスで先行。白地に真紅の機体がアクティブスラスターで一気に跳躍した。
「ま、任せといて! じゃ、行くよ。今日もよろしく、相棒!」
舞はモータルにサムズアップすると魔導型デュミナス「弁慶」(ka0377unit001)に乗り込んだ。
「よっ、と」
「大輪牡丹ちゃん、GO!!」
JもR7エクスシア(ka6653unit001)に搭乗。ルンルンも刻令ゴーレム「Volcanius」「ニンタンク『大輪牡丹』」(ka5784unit002)につかまって始動。先行する大空の航空部隊、地上を行く陸戦部隊の背を追った。
●
「……いるね。ちょっかい出したらこっちに向かってくるか、それとも逃げていくか」
森に近付いたところでレオンが空戦部隊に呼び掛けた。
「向かってくるなら誘導すりゃいいだろ?」
「じゃ、奥に逃げられちゃったらヤだから奥からいくよ」
トランシーバー越しに眉を捻じ曲げてる様子がありあり分かる右ヴァイスの通信に、無邪気なまよいの通信。
その直後に、ぐうんと低空に移って加速するまよいとイケロス。これでも昔は古風な洋館で箱入り娘として育てられていたのだが、今ではご覧の通りだったりする。
「あ~、いるいる。……わあっ、蟻酸が飛んで来たよ!」
低空飛行で鋭敏感覚。蟻の方ももちろんすぐに気付いて蟻酸を上に巻いて牽制してくる。隠れている、というつもりはないらしい。ぎゅーん、と一気に森の奥まですっ飛んで蟻酸の雨を小被害でやり過ごすまよい。
一方、残りのグリフォン部隊。
「あ、行っちまった。どうする?」
「奥から仕掛けるなら俺たちはそっちには行かず中間で調整をすればいい」
すかさずレオンに通信するヴァイス。もとよりあぶり出し作戦。無理はしないし急ぎもしない。
「手前側は状況を見て爆撃します。飛行できる間にできるだけ削って地上部隊に合流します」
魔導型デュミナスのクオンも出だしこそスラスターだったが森の手前までは陸上走破で続いていた。ここから再びアクティブスラスターでジャンプする作戦だ。
「分かった。頼むぜ」
ヴァイス、ホムラを右に誘導する。レオンも頷きグリフォンを左に。
が、そのどちらにも蟻は潜伏していた様子。蟻酸の雨が下から飛んでくる。
「ち。進行方向に落ちてくるように狙ってやがる」
「しかも地上を追ってきてる。クオン、こっちの掃討を頼めるか?」
レオンは姿勢制御で回避運動からリカバリー。一瞬のタメを作る。
「了解。左旋回します」
すでにジャンプしているクオン、フォボスの下半身に装着したフライトフレーム「アディード」をフルバースト。前進停止すると深紅の胸部を左にひねって翼のように広げた背中のスラスターが火を噴いた。鋭角に曲がるとレオンのいる空域へ加速した。
「よろしく」
レオン、ばばばっ、と再び大量の蟻酸が放物線を描いたところで飛翔の翼。一気に飛び抜け攻撃の集中する危険空域を離脱する。
そして蟻酸の放物線が森に落ち切ったころ、フォボスが到着!
「高速演算……するまでもないですね。これであぶり出しです」
構えるはツインカノン「リンクレヒトW2」。
コクピット内ではクオンのヘッドマウントディスプレイに森の木々の間を移動する赤い物体が見え隠れしている。ぴぴぴとサーチ音が連続しているのはロックオンしきれないため。それを待たずにシュートした。
――どごっ、どうん……。
「派手に爆破して派手に音がすればいいわけですからね」
「もう一回頼みます」
着弾点を確認する暇もなくレオンからの連絡。次の爆撃現場へと急ぐ。
この頃、まよいは森の奥の方でぐうんと方向転換していた。黒みがかったイケロスの翼が大きく横に開かれ左バンク。びしゃびしゃ、と蟻酸が降り注ぎ食らってしまうがそれは旋回マニューバの初動時期だけ。バンクから加速すると着弾はおいてけぼりだ。
まよいの瞳がきらりと輝く。手綱から放し振り上げた手には錬金杖「ヴァイザースタッフ」。
その視線が森の中から飛んでくる蟻酸の発射地点を捕えた。赤い何かが見える。
「ちょっと遠いけどエクステンドレンジで射程延ばすよ!」
言うと同時に左に振るって、ぴゃーん!
一直線の雷撃が木々の小枝を散らす。がすっ、と歪虚にも当たったような音もする。
「この前ラルヴァの腕をまんまと持ち去られたのも悔しいし!」
今度は右。ぴしゃーん!
「代わりといってはなんだけど、蟻んこたちをやっつけちゃうんだから!」
続けて左。ぴしゃーん!
「ほら、あっちいけ~!」
ぴしゃーん。
なかなかの迫力である。
「無邪気そのものだな……おっと」
その様子を見ていたヴァイス、突然ホムラの深紅の身体に身を伏せた。直後にびしゃびしゃっ、と蟻酸が降り注ぐ。
「翼までは守ってやれないが、背中くらいはな……よし、行くぜ!」
白い首筋を優しく撫でると手綱を引き絞って急降下突撃命令。敵の攻撃をかわしたのではなくグリフォンを守った動きだ。
これを意気に感じたホムラ、猛然と敵がいると思しき地点に一直線……いや、手前に急降下したぞ?
「まあ、直撃は嫌だし……この方が狙いやすくもある」
ヴァイス、ニヤリとして射程の長いマジックアロー。一匹を狙った。
「ん?」
ただ、点ではなく線の動きで森を間近に観測したところ、新手が合流していた。
「まよいの方からか? だったら……」
上空に離脱しておいて旋回運動。今度は自分の動きはない。
「頼むぜ、ホムラ!」
またも急降下しつつ今度は途中で大きく翼を広げた。蟻酸はこの速度の変化にホムラの下を通過。
が、避けたのではないッ!
「こいつでまとめて!」
深紅の翼にきらりと光る魔羽刃「イサール」。ぶおんとホムラが羽ばたくと小型の竜巻が地上を襲った。まとめて蟻どもにダメージを加えたのだ。
「これで森の外に……何? 向かってくんのか?」
仕方ない、と追うに任せて自ら森の外を目指した。まよいと違い大きく空域を使ってなかった分、しつこく狙われていたのかもしれない。
●
この少し前、森の近くで。
「わ~、蟻酸の雨がすごいんだよ」
トラック中の小鳥が森の上に飛ぶ黄色い酸を見上げていた。
「前は蜘蛛で今度は蟻…。昆虫と縁があるのかな、このトラック」
そう言えば前は蜘蛛の糸だったよね~と汗をたらり。
そこへヴァイスからの連絡。
「もうすぐ敵が森から出る、宜しく頼むぜ!」
「り、了解。いつでも砲撃可能なんだよ♪」
運転席に吊り下げていたトランシーバーに応答。踏み込むアクセル。トラック後方の追加ダクト「ロークペイプ」からぽふんと爆音。ヴァイスのいる空域のへと急ぐ。
「この辺りならいいかな?」
ききき、とハンドルを切って森に向いた時に上空をヴァイスのホムラが通過。
間髪入れずその時だった!
――がさっ、ばきっ。かささささささ……。
「うわ、大きいのが出てきたんだよ」
しかも速い!
「ココから先は立ち入り禁止なんだからね!」
小鳥、トラック後部に積んだ車載砲「パンテレスD7」の大砲門からどすん、と一撃。発射の衝撃で車体が弾む。どすん、どすんと連発する。
――どかっ、どかっ!
大型の赤い蟻が、一匹は吹っ飛んで一匹は消滅。もう一発は外れた。吹っ飛んだ蟻からは装甲のような外殻がぱらぱらと砕けて落ちている。
が、残り数匹がわしゃわしゃと接近してくる。
「ちょっと予定より早いんだよ~」
バックギアに入れた小鳥、下がりながらどこんどこん。蟻酸が飛んでくるが追加装甲板やカバードコーティング「クレーディト」で対策をしている。とにかく敵の侵攻を遅らせるべく射撃に専念する。
「いい感じかな?」
森の上で旋回したレオンは乱れた長髪を手で押さえつつ森の端へ視線を移す。
――どすん。
見遣った方でクオンのフォボスが長いジャンプを終えて地上に着地していた。ロングジャンプで無理をした分、勢いを和らげる着地姿勢も長くなる。
そこへ、ぐばっと枝葉が舞い赤い大型の蟻歪虚が出て来た。目標が地上に降りたこのチャンスを見逃さない構えだ。
はっ、とゴーグル型カバーが特徴的な頭部を上げるフォボス。
「出てきたのなら下がりますよ」
コクピットのクオン、冷静だ。球状のハンドステックを動かし着地姿勢の解除、重心を後ろに下げつつ数歩後退、そしてスラスターオンして再び後背にジャンプする。
もちろん飛び去り際にツインカノン斉射!
派手な炸裂音とともに草や土が舞う。敵侵攻の手前を狙った、逃げるための牽制攻撃だ。
「わざわざ接近戦はしません……どうやら後続隊は旧ポカラ村まで到達したようですね」
爆発で蟻の前進が止まったことを確認しつつ身をひねり後方支援部隊を確認。無事に旧ポカラ村まで一気に詰めて拠点としていることに安堵した。
「計画通りです」
再びの着地と同時に、頭上を大きく越える砲弾が放物線を描いていた。
そのしばらく前。
「来ました来ました。ルンルン忍法とニンタンク『大輪牡丹』ちゃんの力を駆使して、森から襲い来る蟻歪虚を殲滅です!」
花柄双眼鏡を覗き戦況を確認していたルンルンのテンションが上がった。
そしてニンタンク『大輪牡丹』に命令だ!
「炸裂弾装填、たまやー!」
振り上げた右腕を一気に伸ばすと、横にそびえる大きなニンタンクの肩に装備された巨砲、プラズマキャノン「ヴァレリフラッペ」が火を噴いた。魔導型大砲特化型にカスタムした機体でも砲撃で揺れるほどの威力で炸裂弾をぶっ放す!
大きく放物線を描いた弾道は、スラスターでバックジャンプしたクオンのフォボスがいた地点に向かい……どごーん。
「大輪牡丹ちゃん、着弾修正! 次弾装填用~意……確実に狙ったとこに撃ちこんでいっちゃうんだからっ」
先の一発は挨拶とばかりに効果的な着弾点を狙う。
このちょっと前、森の奥。
「え~い、もう面倒なんだから!」
イケロスに乗ったまよい、雷撃を繰り返していた錬金杖を振るうのをやめた。攻撃疲れしても仕方がない勢いだったが、何というかお昼寝好きのイケロスのようにお疲れ……。
「近付いて一気に追い払うよ!」
違った!
もーっと攻勢に出た!
「イケロス、思う存分暴れてね」
グリフォンを一気に加速急降下させて森の直近上空で翼を動かしツイスター。雷で一体ずつの攻撃から竜巻での全体攻撃に切り替えたのだ。
「ほらほら~……あとは、ついてこ~い!」
酸の雨を少し浴びてもものともせずに楽しそう。数発食らわせ混乱させてから攻撃の手を緩めると森の外へと向かった。
これを見た蟻ども、わしゃわしゃと追って行く。やられっぱなしだったのが攻撃が止んで逃げているのだ。そりゃ追うわな。
で、どばっと一気に押し寄せる波のように蟻の大群が森から出て来た。
外に出ると先の二隊とは違い、ひと回り小さな個体の蟻たちだったことが判明。
「いっぺんに出るのはダメ!」
ここでまよい、お休みしていた杖を振り上げた。
頭上に発生する、燃え盛る火球三つ。
「えいっ!」
メテオスウォームだ。
――どどど、どーん!
破壊音と火の手が上がる。蟻どもは森側に吹っ飛ぶ。ぱらぱらと崩れた外殻が下に落ちている。いや、これまでの手数で数体はこれで動きを止めたか。
ただ、一呼吸おいてからの動きは素早い。
あっという間に前進を始め、先の大型蟻歪虚に並ぼうかという勢いだ。
「とと、流石に押しとどめ切れなくなって来ちゃったかな。移動しつつの砲撃に切り替えるんだよー」
右翼の小鳥、敵に詰められ慌ててハンドルを回し反転。ターボブーストで本格的に戦略的撤退をする。
「右がヤバい。誰かポジションチェンジ、できるか?!」
上空のヴァイス、水平射撃で止めることのできる誰かを呼んだ!
「任せといてよ!」
スラスターで颯爽と直線正対位置に入り込んできたのは、舞だった。
手に構えるはCAM用カノン砲、105mmスナイパーライフル。
基本姿勢でがっちり身を固め、しっかりと狙いを定める!
もちろんこれに気付く蟻どもだが、ライフルの射程は長い。距離はじっくり待つだけの間合いがある。
「あーんと大口開けて喰らいな! 蟻だけに!」
蟻だけに、とコクピットでくだらない冗談を言いつつ時を待つと、予想通り蟻酸を吐くため口を開けた!
――どうっ、ごぱっ!
一直線の狙いすました一撃が蟻の頭部に着弾し、そのまま顔を持っていくように炸裂した!
「マルチロックオンしてるんだよね~」
得意げに次弾。が、転がった先の蟻の死体で後方まで弾が通らない。炸裂弾なので死体は吹っ飛ぶがその間に敵は寄せてきている。
「なかなか面倒くさいじゃない」
舞の方はそれでも効果ありと再び射撃。距離を詰められるわけにはいかないので先頭を叩くがこれまで無傷の個体は最低でも二発は掛かるようだ。
「ま、上からも狙っちゃいるが」
ヴァイスは上から後続狙い。
うまく分担はできているがすぐに数は減らない。
一方、小鳥。
「……さっきより多いし」
中央にポジションチェンジして砲撃するが、前の一匹が潰れると後方に射線が通らないのは先と同じ。
「それじゃ散らすよ! イケロス!」
上空のまよい、今度は騎乗のグリフォンに風を纏わせ急降下。
「それっ。飛んでけーっ! ……あ。そこのはお眠ね?」
ばふーん、と地表近くまで降下して風を解放。衝撃と斬撃の爆風をまき散らし固まっていた蟻歪虚を四方に飛ばした。
きしゃーん、と大迫力の蟻どもの悲鳴。
もちろんこれでくたばった蟻もいる。ついでに吹っ飛びながらも無事そうなのはまよいがえいっと雷撃で止めを刺したり。
「これで狙えるんだよ」
小鳥、砲塔を旋回させて狙う。
が、今度はわらわらと横にも移動。これまでの単純な縦方向の移動ではない。結構かわしてくる。
これは接近戦をした方が確実か?
誰もがそう思った時だった。
●
「よーやく出番が来たようだな!」
ここでアクティブスラスター全開で最前線に突入して来たR7エクスシアは、トリプルJの機体。
「歪虚をこれ以上のさばらせてたまるかよっ」
中央の大型蟻が散った方面に突撃しつつ手にしたハンドガン「トリニティ」をロングバレルに変形させ、プラズマグレネード発射!
どぱーん、と大地でプラズマ爆発をさせて牽制するとそのまま突っ込み、爆風で煽られ体勢を立て直したばかりの蟻に取りついた。
「命中精度は落ちるがまずは外殻がはがれるんだろ? ちょうどいい」
コクピットでにい、と口角を釣り上げるJ。振り上げるエクスシアの脚部に装備した脚爪「モーンストルム」の刃先がギラリと光る。
「本命はこっちだからな!」
足、振り下ろす。
振り下ろす振り下ろす。
ワイルドラッシュでずたずたに切り刻むッ!
「援護するよ……でも、それって格闘向きでしたっけ?」
ここでレオンがグリフォンを降下させツイスターで横からJを狙う敵を蹴散らす。彼がロザリオ「タビアイマーン」を持っているのはヒールしてからアンチボディで攻撃軽減を自らに掛けたから。びしゃっ、と蟻酸が当たるがこのダメージを打ち消した。
「いーんだよ。ベルセルクってのはそーゆーもんだ!」
「Jさん、そっち行ったんだよ?」
「おうよ。任せとけ、小鳥」
J、各方面に答えつつ次の敵に襲い掛かる。
「これは負けてられないね!」
この様子を耳にした舞、ライフルから魔導鋸槍「ドレーウング」に持ち替えた。
「ま、こっちも散ったから各個撃破が必要になってるしな」
上からのヴァイスの見立て。彼の上からの攻撃で、敵が固まって侵攻し前が潰れても乗り越えて来る荒波戦法を打ち破っていた。中央と同じく蟻は左右に散り始めている。
その一つに舞の弁慶がスラスターで突進。
これに気付いた蟻も正面から向かって来たぞ?
「スキルトレース! 行くよ、弁慶。……その顎とこのノコギリ刃、どっちが勝つか勝負だ!」
舞、先手必勝で先の先を取った。敵は後の先とばかりにタメを作るがもう遅い。舞はすでに飛燕でノーモーション攻撃態勢。そこへ部位狙いの鋭い突きが入った!
ぎゅーんと刃が高速回転し、蟻の上あごより上の頭部が下あごと泣き別れ。外れた兜の如く吹っ飛んだ!
ずざざざ……と突撃の勢いのまま通り過ぎて着地する弁慶。
その制御姿勢の背後で頭部を失った大きな蟻がぴくりとのけぞり、倒れた。
見た目は一突きだが、そこに至るまでに三つのスキルを乗せた三段突きである。リアルブルーではどこぞの新撰組の誰かが使っていたとかなんとか。
「舞!」
「おっと!」
上空からヴァイスの声。舞、蟻酸の集中攻撃を食らう前だったがその声に反応しマルチステップで大量に浴びる前に移動するのだった。
こちら、左翼。
「まあ、熱くなる必要はないですね」
クオン、フォボスに念のため帯刀させていた試作CAMブレードに手を掛けそうになったが思いとどまった。
代わりに連絡する。
「ルンルンさん、散らす砲撃はもう必要なさそうです」
こちらもよそと同様、敵は一直線の侵攻から蜘蛛の子を散らしたように逃げ回った後ワイドに展開してきた。
「了解なんだからっ」
ルンルン、これを聞いても砲弾はしばらく止まなかった。
実はかなり前からゴーレムの傍を離れ前線に近いところまで単身上がって来ていたのだ。
で、屈んで何かやっている。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せターンエンドです」
何やら地縛符を仕掛けた模様。
それはともかく、クオン。
「敵は集団から個別に突破を図ってます。撃ち漏らしのないように!」
皆に呼び掛け自身はツインカノンの水平射撃。垂直に降り注ぐニンタンク『大輪牡丹』の攻撃とは違い的確に狙っている。
「ここは通さない」
すたっ、と地に下りたのはレオンのグリフォン。敵の前だが、近寄られる前に星剣「アルマス・ノヴァ」を抜刀。ソウルエッジで輝く刃を掲げると敵も気付いて一直線に向かってきた。いや、蟻酸を吐いた!
「どちらでも構わない!」
叫ぶと同時に羽ばたくグリフォン。蟻酸、もといた場所に着弾。
レオンは振り上げ溜めに溜めた刃を振り下ろした。
「衝撃派!」
ばばばっ、と草原の草を散らしマテリアルの衝撃が走った。
「いまだ、まよい!」
「ちゃんとライトニングボルトは取ってたんだよね」
呼ばれて舞い込むまよいとイケロス。のけぞる蟻の前に突っ込んで手堅く雷撃をかましてぶっ倒した。
「あややや!? この距離じゃ砲撃出来ないんだよ!?」
地上を行く者同士好かれたのか、小鳥の魔導トラックは蟻にしつこく狙われていた。
が、きききと急旋回。
「うぅ、ちょっと距離を取らないと。アクセルフルチャージ、行く手を邪魔する蟻はふっ飛ばすんだよ!」
弱気なこと言ったくせに何だか目つきが鋭くなった!
そのままマテルアルを纏って火の鳥のようになった車両でついてきた蟻に突っ込む!
「当たれ当たれ~」
砲撃もするがじゃじゃ馬の如く直進。結局体当たりで一掃しかなり余計に進んだところで、止まった。
「すまないが結構固まってるのがいる。追い込むんで頼む!」
上空からの攻撃で敵を追い込んでいたヴァイスの声。
「任せろ。村には行かせねぇ!」
これに反応したのはJ。
視線を向けるとすでにヴァイスが竜巻でこちら方面に固まるよう攻撃していた。
「各個撃破は抜かれるかもしれないぜ?」
「地面ゼロ距離で悪りぃが、その分必ずここで止めて見せるぜ」
上空からだと範囲攻撃にしても敵がどちらに散っていくか分かりにくい難点があることに理解を示すJ、挟み撃ちとばかりに試作型対VOIDミサイル「ブリスクラ」を構えてプラズマバースト発射!
――どうん!
「後ろにも逃げ道はないぜ?」
不敵に微笑するヴァイスが後ろに飛んで衝撃を吸収しようとする蟻を逃がさないよう、背後にツイスター。これでほぼ滅した。
残った蟻は……。
「これで止め、ってな」
スラスターで急速接近したR7の脚部刃でバッサリやった。
残った敵はかなり村まで近寄っているぞ?
「火炎で進路を塞いじゃうのです…タンク忍法大火遁の術」
ルンルン、地縛符に足止めされた敵にニンタンクの火炎弾を撃ち込む。
さらに前に来る敵数匹。
「前に出ちゃいます!」
ついにタンク、発進!
そして接敵すると呪画をばっと広げる。
「ジュゲームリリカル…ルンルン忍法三雷神の術! これ以上先には行かせないんだから」
一瞬『通行止』の文字が浮かんだ!
「今出でよ、めがね、うくれれ、おいーっす」
風雷陣、炸裂!
最後の蟻はこれを食らって動きを止めた。
●
戦い終わって、旧ポカラ村で。
「守り切ったが……」
心に秘めた使命を果たしたレオンだが、心配そうに背後に視線を送った。
「お疲れ、モータル」
舞が皆に炭酸飲料を配る。
「これから、どうすんだ?」
何かありゃ手伝うが、とJ。瓦礫に腰掛けている。
モータルはぷしっ、と炭酸飲料を開ける。瞬間的に泡が立ち、消えていった。
「分かりません。歪虚次第です」
魔術師協会の委託を取り付けた分、自分たちだけで決断できなくなっている。
そこへ偵察に出ていたヴァイスが戻ってきた。
「歪虚はいない。……わかってはいたが、森をかなり傷つけてしまったな」
広範囲に被害が出ている。
「ほんとにもうこれで最後にしてよ」
舞、呟いてごろん。
その視線に、背後で愛機を簡易メンテしているクオンやグリフォンをいたわっているまよいにレオン、そしてトラックのタイヤ確認をしている小鳥の姿が映った。
「何かコツがあるかな?」
「機体の洗浄と除染についてですか? 特にフライトユニットとセンサーはうるさいですから念入りに」
モータルもこれを見た。
「頑張らなくちゃですね」
決心して、立つ。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/12/07 12:11:40 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/06 21:15:43 |