ゲスト
(ka0000)
コボルドとキノコ
マスター:ザント

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/19 15:00
- 完成日
- 2017/12/25 06:00
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「どこに行ったんだ……?」
冒険都市リゼリオ付近の森で歩きながらぼやくのは、普段は森で狩猟を行っている猟師のマリオだ。
マリオはハンターというわけではなく、猟師として狩猟できるちょっとした四足獣を狩って生活していた。
そんな彼が森でぼやいている理由は、ちょっとしたミスで獲物を逃し、それを追って普段は危険なので足を踏み入れない森の奥まで来ていたからだ。
(早く見つけて帰ろう……ん?)
マリオがそう思ったのを合図にしていたかのように短い動物の悲鳴が森に響いた。
「なんだ?」
悲鳴が聞こえた方へ歩いていくと、横は二人がギリギリ並べる程度の入口の洞窟を見つけた。
(こんな所に洞窟があったのか……何かの巣穴か?)
マリオは、見つけた洞窟を覗いてみる。
中は奥に行くほど幅が広くなっており、天井からは細かな光が幾つも入っていて薄暗い程度だ。
マリオは狩りの休憩場所になりそうだなと思いながら洞窟の奥を見て目を見開いた。
「嘘だろ。コボルド……!?」
マリオは、たまに知り合いのハンターと飲みに行くのだが、その際にハンター稼業について色々と聞いており、その中でコボルドの危険性についても聞いていた。
この森にコボルドがいるとは聞いたことはあったが、見たことはなかった。
マリオは遭遇した己の不運を呪うが、今はそんなことをしている場合ではない。
コボルドがいる洞窟の入口にいるのだから見つかってしまうかもしれない。
マリオはコボルドたちの様子を知るためにじっと洞窟の奥を見つめると、見えるだけでも六匹のコボルドが洞窟の中で、マリオが追っていた獲物を爪や牙を血で汚しながら夢中で食べているようだった。
奥からも咀嚼する音が聞こえるから、確認できる六匹だけではないのでだろう。
(こっちには気づいてないみたいだな。ならこのまま……ん?)
マリオはコボルドの近くにシイタケに似た薄紫色のキノコが生えた丸太があることに気づいた。
(なんだあのキノコ……シイタケにしては色が変だ。それに生えている丸太も使い古しのようだが、それにしては洞窟の中が綺麗すぎる。もしかしてコボルドが丸太を持ち込んであの変なキノコを栽培して……いや、今はそんなことはどうでもいい)
マリオはキノコと丸太に意識を奪われたが、我に返ると再度コボルドの様子を伺う。
そして六匹共こちらに気づいていないのを確認すると、そのまま気づかれないように細心の注意を払いながら洞窟を離れる。
洞窟から十分距離を取ると、大急ぎでリゼリオへ走っていった。
「リゼリオにほど近い森でコボルドが発見されました」
ハンターズ・ソサエティの職員である元ハンターの女性は緊張した面持ちで説明を始めた。
「見つけたのはその森で猟師をしているマリオさん。彼の話では森の奥にある洞窟に住み着いているとの事です。確認できているだけでも六匹。最低でも追い出し、可能であれば数が増えない内に殲滅をお願いします。それと、これはついでですが……」
そう言い、職員はもう一つの依頼の話をした。
「マリオさんのお話で、コボルドがキノコを栽培している可能性が出てきました。この話を聞いたグルメで有名な貴族の方がぜひそのキノコを味わってみたいと仰り、その貴族の方からキノコ採取の依頼が来ました。なので、可能であればコボルドが栽培しているというキノコを採取してきてください。キノコの特徴はかさ部分が薄紫色で、柄の部分は白。大きさはシイタケより少し大きめという事です。それとですね」
職員はマリオから聞いたコボルドが栽培しているというキノコの特徴を説明した後に。
「貴族の方からの依頼はそのキノコを持ち帰った場合のみ成功とさせていただきます。もちろん、その際は本物かどうかを確認した上で、ですけどね」
と、職員は悪戯っぽく笑った。
冒険都市リゼリオ付近の森で歩きながらぼやくのは、普段は森で狩猟を行っている猟師のマリオだ。
マリオはハンターというわけではなく、猟師として狩猟できるちょっとした四足獣を狩って生活していた。
そんな彼が森でぼやいている理由は、ちょっとしたミスで獲物を逃し、それを追って普段は危険なので足を踏み入れない森の奥まで来ていたからだ。
(早く見つけて帰ろう……ん?)
マリオがそう思ったのを合図にしていたかのように短い動物の悲鳴が森に響いた。
「なんだ?」
悲鳴が聞こえた方へ歩いていくと、横は二人がギリギリ並べる程度の入口の洞窟を見つけた。
(こんな所に洞窟があったのか……何かの巣穴か?)
マリオは、見つけた洞窟を覗いてみる。
中は奥に行くほど幅が広くなっており、天井からは細かな光が幾つも入っていて薄暗い程度だ。
マリオは狩りの休憩場所になりそうだなと思いながら洞窟の奥を見て目を見開いた。
「嘘だろ。コボルド……!?」
マリオは、たまに知り合いのハンターと飲みに行くのだが、その際にハンター稼業について色々と聞いており、その中でコボルドの危険性についても聞いていた。
この森にコボルドがいるとは聞いたことはあったが、見たことはなかった。
マリオは遭遇した己の不運を呪うが、今はそんなことをしている場合ではない。
コボルドがいる洞窟の入口にいるのだから見つかってしまうかもしれない。
マリオはコボルドたちの様子を知るためにじっと洞窟の奥を見つめると、見えるだけでも六匹のコボルドが洞窟の中で、マリオが追っていた獲物を爪や牙を血で汚しながら夢中で食べているようだった。
奥からも咀嚼する音が聞こえるから、確認できる六匹だけではないのでだろう。
(こっちには気づいてないみたいだな。ならこのまま……ん?)
マリオはコボルドの近くにシイタケに似た薄紫色のキノコが生えた丸太があることに気づいた。
(なんだあのキノコ……シイタケにしては色が変だ。それに生えている丸太も使い古しのようだが、それにしては洞窟の中が綺麗すぎる。もしかしてコボルドが丸太を持ち込んであの変なキノコを栽培して……いや、今はそんなことはどうでもいい)
マリオはキノコと丸太に意識を奪われたが、我に返ると再度コボルドの様子を伺う。
そして六匹共こちらに気づいていないのを確認すると、そのまま気づかれないように細心の注意を払いながら洞窟を離れる。
洞窟から十分距離を取ると、大急ぎでリゼリオへ走っていった。
「リゼリオにほど近い森でコボルドが発見されました」
ハンターズ・ソサエティの職員である元ハンターの女性は緊張した面持ちで説明を始めた。
「見つけたのはその森で猟師をしているマリオさん。彼の話では森の奥にある洞窟に住み着いているとの事です。確認できているだけでも六匹。最低でも追い出し、可能であれば数が増えない内に殲滅をお願いします。それと、これはついでですが……」
そう言い、職員はもう一つの依頼の話をした。
「マリオさんのお話で、コボルドがキノコを栽培している可能性が出てきました。この話を聞いたグルメで有名な貴族の方がぜひそのキノコを味わってみたいと仰り、その貴族の方からキノコ採取の依頼が来ました。なので、可能であればコボルドが栽培しているというキノコを採取してきてください。キノコの特徴はかさ部分が薄紫色で、柄の部分は白。大きさはシイタケより少し大きめという事です。それとですね」
職員はマリオから聞いたコボルドが栽培しているというキノコの特徴を説明した後に。
「貴族の方からの依頼はそのキノコを持ち帰った場合のみ成功とさせていただきます。もちろん、その際は本物かどうかを確認した上で、ですけどね」
と、職員は悪戯っぽく笑った。
リプレイ本文
●
冒険都市リゼリオ付近の森の奥。
危険な為、ほとんど人が立ち入らない場所をさらに奥へと進んでいく四人の少女達がいた。
「結構奥まで来ましたけど、見つかりませんね」
周りを見回しながら、アシェ-ル(ka2983)が言うとT-Sein(ka6936)が同意するように頷く。
「発見者が男性だと考えても到着まで時間がかかり過ぎていると思います」
「そうね。早く見つけないと被害が出てしまうかもしれないもの」
前を歩くアリア・セリウス(ka6424)が焦りを滲ませながら呟く。
出発してからかれこれ数時間。疲労の色は見えないが緊張感が薄れ出していた。
「もうそろそろ見つかってもいい頃……」
先頭の玉兎 小夜(ka6009)が言葉を途中で止めて立ち止まった。
「どうしましたか?」
「静かに」
小夜はザインに鋭く言うと、全員が察して静かになる。
「あっち」
小夜はそれを確認すると自分の目線の先を指差した。
三人は小夜が指さした先を見て小夜の言動に納得する。
「洞窟とコボルドを発見です」
ザインの言葉通り、コボルドの住処であろう洞窟と見張りらしきコボルドが三匹、そこにいた。
目標を見つけたので、茂みに隠れて小声で作戦会議を行う。
「どうしよっか?」
「わたくしがワイヤーで物音を立てて離れた場所に誘き寄せますので、倒すのをお願いしてもいいですか?」
「分かりました」
「分かったわ」
「ん、りょーかい」
アシェールのお願いにアリア、ザイン、小夜の三人が頷く。
「では、見張りを倒した後、ワイヤートラップを仕掛けて魔法でダメ押しして出入口を封鎖して退路を断とうと思います」
「あ、私は封鎖後に奥をドーンッとやろうと思ってるんだけど、いいかな?」
「小夜さんに合わせて私も先制攻撃を仕掛けます」
アシェールが誘導と封鎖を提案すると、続いてザインと小夜が自分の考えを言う。
「私は二人の攻撃の後に数を減らす事を前提に動くわ」
「分かりました。じゃあ、見張りを倒した後で小夜さんとザインさんが……」
アリアの考えを聞いた後、アシェールが再確認をする。
その間にアリアはザイン、小夜、アシェールの三人の顔を見る。
(質はこっちでも数はコボルドの方が上。数の有利を活かされないように味方に背を預けるか、護るように立ち回りましょう。可能ならリーダーを捜す事も視野に入れて置こうかしら)
アリアは心の中でそう決めるのとアシェールがワイヤー仕掛けに行ったのは同時だった。
●
ガサガサッと離れた場所の茂みが動き、見張りのコボルドたちがそちらへと誘き寄せられる。
「今ですっ」
アシェールの呟きとほぼ同時にワイヤーがコボルド達に絡みつく。
「ギッ?」
「ギギッ」
「ギィ?」
ザイン、アリア、小夜が茂みから飛び出してワイヤーに絡まって動き辛くなったコボルド達に向かう。
「ふっ!」
「っは!」
「サイレント首狩り失礼っ」
ザインがコボルドの首の骨を砕く。それに続いてアリアがコボルドを斬り裂き、最後に小夜がコボルドの首を狩った。
まさに一瞬。
見張りのコボルド達は自分に何が起こったのかも分からずに地面に倒れ伏した。
「洞窟内のコボルド達にはまだバレてないみたいです」
「スキルで強化してっと。バレてないなら今の内に行っちゃう?」
「はい」
「ええ」
ザイン、アリア、アシェール、小夜は洞窟の出入り口に立つ。
中は薄暗く、灯りはアリアが腰に吊るしている魔導スマホのみだ。
アシェールはその場で振り返るとそのままワイヤーで罠を仕掛け、アイテムで魔法を強化した。
洞窟の入口に不可視の境界が出現し、コボルドの退路を断つ。
それを確認した小夜とザインが攻撃準備に入る。
ザインの肌が褐色へと変化し、銀色の気が煌めきながら全身を包み込む。
「吹き飛びやがれ狼モドキ共! ガァアアアアアアアアア!」
ザインの手に気で出来た巨大な鉤爪を作り攻撃を振り放つ瞬間、両目が橙色になり獣のような動向に変化する。
直線上に衝撃が放たれ、ザインの怒鳴り声に反応して様子を見に行こうとした五体のコボルド達が衝撃音と共に直撃を受けて吹き飛ぶ。
「これは喰らいつく顎。龍からは命を、勇士へは首を」
比べて、小夜の攻撃は静かだった。
小夜はスキルで自分を強化してから剣を薙ぐと、奥から四つ程の何かが落ちる音と共に液体が吹き出す音が洞窟内を反響する。
ようやく異変を察知したコボルド達が侵入者……もとい襲撃者を迎え撃つ。
「ギィイイイイ!」
「さて、吠えるだけではなく、相手をしてくださるかしら?」
アリアはスキルで自分を強化して、手に持つ二振りの剣でコボルドを一体ずつ斬り伏せるだけでなく、もう一撃。
「はぁっ!」
斬撃がオーラとなり、三体ものコボルドの命を絶つ。
「ギシャァアア!」
ザインとアリアに二体ずつコボルドが鋭い爪と牙を剥き出しにして襲い掛かるが、動揺しているのか、それとも入り口から差し込む光で目が眩んだのか、地面や空をかくに終わる。
奥から多くのコボルド達が入口へと向かってくる。
「吹き飛ぶがいい」
「あなたの相手は私。さぁ、踊りましょう?」
移動後にザインがコボルドを殴り飛ばし、ザインの後ろに続くように移動していたアリアの剣が煌めき、ザインのすぐ近くにいる二体のコボルドを斬り裂く。
「これは引き掴む鉤爪。努、燻り狂える者の傍に寄るべからず」
コボルドがまとまっている場所へ移動すると、小夜は怪しげな包帯を付けた右腕を突き出した。
それと同時に鮮血色の鉤爪の様な巨大な腕が直進して五体のコボルドをその手中に収める。
「はい、ぐちゃーっ」
「ギ、ギギッ」
「ギギャァァァッ」
小夜が掌を握る動作と同期するように、たっぷりと、見せつけるように巨大な腕がコボルド達を握り潰した。
それを見てコボルド達の顔に恐怖が浮かんだ直後、入り口近くのコボルドが宙を舞った。
「痛いですかぁ?」
ダメ押しとでも言わんばかりにアシェールの殴打で軽々と舞うコボルド。
殴られたコボルドは地面に落ちたが、殴られたからか、それとも頭から落ちたからか……理由はどうであれピクリとも動かない。
それを見てコボルド達の動きが目に見えて悪くなる。
「ギキャァキャッ!」
その時、洞窟内にコボルドの鳴き声が響いた。
「ギィギギッキャァ!」
「ギィ!」
「ギィ!」
その鳴き声に呼応するかのようにコボルド達が統率された動きをし出す。
「見つけたわよ」
その様子を見て、アリアは鳴き声を出し続けるコボルドを見据える。
「ギ、ギィ!」
「ギャァ!」
「キシャァ!」
三匹のコボルドが一斉に小夜に襲い掛かるが、先ほどの事がよぎったのか小夜の目の前の空や地面に爪を突き立てた。
「え、えぇー……」
それを見て小夜は表情は変わっていないが困惑の声を上げる。
「ギャキャッ……」
「あら」
アリアに襲い掛かった三匹も、小夜を襲い掛かった三匹と同じように爪が空を切った。
「ギャギィ!」
「ギギャァ!」
「所詮は犬畜生だな」
「っとぉ、危ないですぅ」
ザインとアシェールにも三匹ずつコボルドが襲いかかる。
ザインは手甲にあるブースターを使用して回避し、アシェールは回避には失敗したが、全ての攻撃に受け止めることに成功し無傷で切り抜ける。
「隙だらけだ」
ザインが高速移動で近くにいたコボルド達から距離を取るのと同時に、アリアの目の前のコボルドをブースターの力も加えて殴り飛ばした。
「踊っている最中に、足を止めるのは厳禁よ」
突然仲間を殴り飛ばされ、驚きで膠着した二体のコボルドが隙を突かれてアリアが斬り伏せられる。
小夜は剣に持ち替えると素早く動き、周囲のコボルド三匹を何度も斬りつけて全員を血の海に沈める。
「兎の天敵に近いのなら徹底的に、だよ」
「たぁっ」
アシェールの可愛らしい声と共に命を狩る拳がコボルドを吹っ飛ばす。
「ギギギャァ!」
「あっ」
一匹のコボルドが逃げ出すと、他のコボルド達も一斉に出口を目指し出す。
「ギィ!?」
だが、アシェールの作り上げた境界に阻まれて洞窟の外へと出られない。
「逃がさんぞ、狼モドキ共」
高速移動したザインがブースターと勢いをそのままに叩き潰すようにコボルドを殴り倒す。
「途中退場は許されないわよ。特にあなたはね」
アリアも追撃に参加し、最初に逃げ出したコボルドを含めた二体を斬り伏せる。
「届けっ」
包帯へと持ち替えた右手を突き出し、鮮血色の巨大な腕を放ち二匹のコボルドを捕らえると、小夜はそのまま握り潰した。
「最後ですぅ。これでまとめて吹き飛んでくださいねぇ」
アシェールはコボルドに向けて手を翳す。
「極弩重雷撃砲ぉ!」
アシェールからコボルドへ、一瞬だけ洞窟内を真っ白に染め上げて一直線に雷撃が放たれた。
雷撃が消えた後には、二匹のコボルド達の痕跡は真っ黒な炭の塊が一つだった。
「ふぅ……私の極弩重雷撃砲、どうでしたか? 凄いでしょう!」
「……やり過ぎなのでは」
「確かに……」
「二人に同意ね」
「えっ!」
胸を張るアシェールだが、ザインの率直な感想とそれに同意した小夜とアリアを見て、ガーンッと言う擬音が似合いそうな表情を浮かべて驚く。
「では、コボルドが育てていると言うキノコを探しましょう」
「灯りはアリアさんのスマホだけじゃ足りないし、たいまつ作るね」
「えぇ、お願いするわ」
ショックを受けているとアシェールを置き、小夜が携帯品のたいまつに着火の指輪で着火してザインとアリアに渡していく。
「わ、わたくしも探します!」
我に返ったアシェールは携帯していた魔導スマホを取り出すと、キノコ捜索に加わった。
●
「これは……」
唖然とするアシェール。
「いやー、残念だったな。残念残念」
棒読みのザイン。
「あちゃー……」
頭を抑える小夜。
「諦めるしかないわね」
ため息をつくアリア。
彼女達の前には、この洞窟を見つけた猟師が見たであろうキノコが生えていた丸太があった。
洞窟内を捜索した結果、この丸太を見つけたのだが……なんと、丸太にはキノコなど一つも残っていなかった。
「コボルドの胃の中に納まったのか、それとも何かに使ったのか……とにかく、グルメ貴族の依頼は失敗だね」
小夜はそう言いながら丸太にウィスキーをかける。
「コボルドの死体も一緒に燃やしましょう。毒キノコで、しかも死体からも生えるキノコだったら大変なことになるわ」
「そうですね。キノコを採取出来なかったから失敗で、それ以外の事は現場の判断ですよね」
「外のコボルド達の死体も持ってきます」
「お願いします」
全員で手分けしてコボルド達の死体を一箇所に集めると、アシェール、ザイン、アリアは先に洞窟の外に出て、小夜が後始末をする。
小夜は出来る限り満遍なくコボルド達の死体にもウィスキーをかける。
「流石に四十体をカバーするには足りないけど、無いよりはマシだよねー」
飄々としながら、小夜はわざと手を滑らせてたいまつを死体の山に落とす。
アルコール度数の高いウィスキーは、すぐさま燃え上がって丸太とコボルド達の死体を焼き始める。
火が消えないのを確認すると、小夜は洞窟の外に出て三人と合流する。
「お待たせー」
「お仕事完了ですね」
「皆さん、ご苦労様でした」
「えぇ、お疲れ様」
「お疲れー」
アシェールはにっこりと微笑みながら、ザインは背丈に似合わず違和感の無い雰囲気でタバコを吸いながら、アリアは天へと上がる黒煙を見上げながら、小夜は表情を変えずに、味方に労いの言葉を送った。
冒険都市リゼリオ付近の森の奥。
危険な為、ほとんど人が立ち入らない場所をさらに奥へと進んでいく四人の少女達がいた。
「結構奥まで来ましたけど、見つかりませんね」
周りを見回しながら、アシェ-ル(ka2983)が言うとT-Sein(ka6936)が同意するように頷く。
「発見者が男性だと考えても到着まで時間がかかり過ぎていると思います」
「そうね。早く見つけないと被害が出てしまうかもしれないもの」
前を歩くアリア・セリウス(ka6424)が焦りを滲ませながら呟く。
出発してからかれこれ数時間。疲労の色は見えないが緊張感が薄れ出していた。
「もうそろそろ見つかってもいい頃……」
先頭の玉兎 小夜(ka6009)が言葉を途中で止めて立ち止まった。
「どうしましたか?」
「静かに」
小夜はザインに鋭く言うと、全員が察して静かになる。
「あっち」
小夜はそれを確認すると自分の目線の先を指差した。
三人は小夜が指さした先を見て小夜の言動に納得する。
「洞窟とコボルドを発見です」
ザインの言葉通り、コボルドの住処であろう洞窟と見張りらしきコボルドが三匹、そこにいた。
目標を見つけたので、茂みに隠れて小声で作戦会議を行う。
「どうしよっか?」
「わたくしがワイヤーで物音を立てて離れた場所に誘き寄せますので、倒すのをお願いしてもいいですか?」
「分かりました」
「分かったわ」
「ん、りょーかい」
アシェールのお願いにアリア、ザイン、小夜の三人が頷く。
「では、見張りを倒した後、ワイヤートラップを仕掛けて魔法でダメ押しして出入口を封鎖して退路を断とうと思います」
「あ、私は封鎖後に奥をドーンッとやろうと思ってるんだけど、いいかな?」
「小夜さんに合わせて私も先制攻撃を仕掛けます」
アシェールが誘導と封鎖を提案すると、続いてザインと小夜が自分の考えを言う。
「私は二人の攻撃の後に数を減らす事を前提に動くわ」
「分かりました。じゃあ、見張りを倒した後で小夜さんとザインさんが……」
アリアの考えを聞いた後、アシェールが再確認をする。
その間にアリアはザイン、小夜、アシェールの三人の顔を見る。
(質はこっちでも数はコボルドの方が上。数の有利を活かされないように味方に背を預けるか、護るように立ち回りましょう。可能ならリーダーを捜す事も視野に入れて置こうかしら)
アリアは心の中でそう決めるのとアシェールがワイヤー仕掛けに行ったのは同時だった。
●
ガサガサッと離れた場所の茂みが動き、見張りのコボルドたちがそちらへと誘き寄せられる。
「今ですっ」
アシェールの呟きとほぼ同時にワイヤーがコボルド達に絡みつく。
「ギッ?」
「ギギッ」
「ギィ?」
ザイン、アリア、小夜が茂みから飛び出してワイヤーに絡まって動き辛くなったコボルド達に向かう。
「ふっ!」
「っは!」
「サイレント首狩り失礼っ」
ザインがコボルドの首の骨を砕く。それに続いてアリアがコボルドを斬り裂き、最後に小夜がコボルドの首を狩った。
まさに一瞬。
見張りのコボルド達は自分に何が起こったのかも分からずに地面に倒れ伏した。
「洞窟内のコボルド達にはまだバレてないみたいです」
「スキルで強化してっと。バレてないなら今の内に行っちゃう?」
「はい」
「ええ」
ザイン、アリア、アシェール、小夜は洞窟の出入り口に立つ。
中は薄暗く、灯りはアリアが腰に吊るしている魔導スマホのみだ。
アシェールはその場で振り返るとそのままワイヤーで罠を仕掛け、アイテムで魔法を強化した。
洞窟の入口に不可視の境界が出現し、コボルドの退路を断つ。
それを確認した小夜とザインが攻撃準備に入る。
ザインの肌が褐色へと変化し、銀色の気が煌めきながら全身を包み込む。
「吹き飛びやがれ狼モドキ共! ガァアアアアアアアアア!」
ザインの手に気で出来た巨大な鉤爪を作り攻撃を振り放つ瞬間、両目が橙色になり獣のような動向に変化する。
直線上に衝撃が放たれ、ザインの怒鳴り声に反応して様子を見に行こうとした五体のコボルド達が衝撃音と共に直撃を受けて吹き飛ぶ。
「これは喰らいつく顎。龍からは命を、勇士へは首を」
比べて、小夜の攻撃は静かだった。
小夜はスキルで自分を強化してから剣を薙ぐと、奥から四つ程の何かが落ちる音と共に液体が吹き出す音が洞窟内を反響する。
ようやく異変を察知したコボルド達が侵入者……もとい襲撃者を迎え撃つ。
「ギィイイイイ!」
「さて、吠えるだけではなく、相手をしてくださるかしら?」
アリアはスキルで自分を強化して、手に持つ二振りの剣でコボルドを一体ずつ斬り伏せるだけでなく、もう一撃。
「はぁっ!」
斬撃がオーラとなり、三体ものコボルドの命を絶つ。
「ギシャァアア!」
ザインとアリアに二体ずつコボルドが鋭い爪と牙を剥き出しにして襲い掛かるが、動揺しているのか、それとも入り口から差し込む光で目が眩んだのか、地面や空をかくに終わる。
奥から多くのコボルド達が入口へと向かってくる。
「吹き飛ぶがいい」
「あなたの相手は私。さぁ、踊りましょう?」
移動後にザインがコボルドを殴り飛ばし、ザインの後ろに続くように移動していたアリアの剣が煌めき、ザインのすぐ近くにいる二体のコボルドを斬り裂く。
「これは引き掴む鉤爪。努、燻り狂える者の傍に寄るべからず」
コボルドがまとまっている場所へ移動すると、小夜は怪しげな包帯を付けた右腕を突き出した。
それと同時に鮮血色の鉤爪の様な巨大な腕が直進して五体のコボルドをその手中に収める。
「はい、ぐちゃーっ」
「ギ、ギギッ」
「ギギャァァァッ」
小夜が掌を握る動作と同期するように、たっぷりと、見せつけるように巨大な腕がコボルド達を握り潰した。
それを見てコボルド達の顔に恐怖が浮かんだ直後、入り口近くのコボルドが宙を舞った。
「痛いですかぁ?」
ダメ押しとでも言わんばかりにアシェールの殴打で軽々と舞うコボルド。
殴られたコボルドは地面に落ちたが、殴られたからか、それとも頭から落ちたからか……理由はどうであれピクリとも動かない。
それを見てコボルド達の動きが目に見えて悪くなる。
「ギキャァキャッ!」
その時、洞窟内にコボルドの鳴き声が響いた。
「ギィギギッキャァ!」
「ギィ!」
「ギィ!」
その鳴き声に呼応するかのようにコボルド達が統率された動きをし出す。
「見つけたわよ」
その様子を見て、アリアは鳴き声を出し続けるコボルドを見据える。
「ギ、ギィ!」
「ギャァ!」
「キシャァ!」
三匹のコボルドが一斉に小夜に襲い掛かるが、先ほどの事がよぎったのか小夜の目の前の空や地面に爪を突き立てた。
「え、えぇー……」
それを見て小夜は表情は変わっていないが困惑の声を上げる。
「ギャキャッ……」
「あら」
アリアに襲い掛かった三匹も、小夜を襲い掛かった三匹と同じように爪が空を切った。
「ギャギィ!」
「ギギャァ!」
「所詮は犬畜生だな」
「っとぉ、危ないですぅ」
ザインとアシェールにも三匹ずつコボルドが襲いかかる。
ザインは手甲にあるブースターを使用して回避し、アシェールは回避には失敗したが、全ての攻撃に受け止めることに成功し無傷で切り抜ける。
「隙だらけだ」
ザインが高速移動で近くにいたコボルド達から距離を取るのと同時に、アリアの目の前のコボルドをブースターの力も加えて殴り飛ばした。
「踊っている最中に、足を止めるのは厳禁よ」
突然仲間を殴り飛ばされ、驚きで膠着した二体のコボルドが隙を突かれてアリアが斬り伏せられる。
小夜は剣に持ち替えると素早く動き、周囲のコボルド三匹を何度も斬りつけて全員を血の海に沈める。
「兎の天敵に近いのなら徹底的に、だよ」
「たぁっ」
アシェールの可愛らしい声と共に命を狩る拳がコボルドを吹っ飛ばす。
「ギギギャァ!」
「あっ」
一匹のコボルドが逃げ出すと、他のコボルド達も一斉に出口を目指し出す。
「ギィ!?」
だが、アシェールの作り上げた境界に阻まれて洞窟の外へと出られない。
「逃がさんぞ、狼モドキ共」
高速移動したザインがブースターと勢いをそのままに叩き潰すようにコボルドを殴り倒す。
「途中退場は許されないわよ。特にあなたはね」
アリアも追撃に参加し、最初に逃げ出したコボルドを含めた二体を斬り伏せる。
「届けっ」
包帯へと持ち替えた右手を突き出し、鮮血色の巨大な腕を放ち二匹のコボルドを捕らえると、小夜はそのまま握り潰した。
「最後ですぅ。これでまとめて吹き飛んでくださいねぇ」
アシェールはコボルドに向けて手を翳す。
「極弩重雷撃砲ぉ!」
アシェールからコボルドへ、一瞬だけ洞窟内を真っ白に染め上げて一直線に雷撃が放たれた。
雷撃が消えた後には、二匹のコボルド達の痕跡は真っ黒な炭の塊が一つだった。
「ふぅ……私の極弩重雷撃砲、どうでしたか? 凄いでしょう!」
「……やり過ぎなのでは」
「確かに……」
「二人に同意ね」
「えっ!」
胸を張るアシェールだが、ザインの率直な感想とそれに同意した小夜とアリアを見て、ガーンッと言う擬音が似合いそうな表情を浮かべて驚く。
「では、コボルドが育てていると言うキノコを探しましょう」
「灯りはアリアさんのスマホだけじゃ足りないし、たいまつ作るね」
「えぇ、お願いするわ」
ショックを受けているとアシェールを置き、小夜が携帯品のたいまつに着火の指輪で着火してザインとアリアに渡していく。
「わ、わたくしも探します!」
我に返ったアシェールは携帯していた魔導スマホを取り出すと、キノコ捜索に加わった。
●
「これは……」
唖然とするアシェール。
「いやー、残念だったな。残念残念」
棒読みのザイン。
「あちゃー……」
頭を抑える小夜。
「諦めるしかないわね」
ため息をつくアリア。
彼女達の前には、この洞窟を見つけた猟師が見たであろうキノコが生えていた丸太があった。
洞窟内を捜索した結果、この丸太を見つけたのだが……なんと、丸太にはキノコなど一つも残っていなかった。
「コボルドの胃の中に納まったのか、それとも何かに使ったのか……とにかく、グルメ貴族の依頼は失敗だね」
小夜はそう言いながら丸太にウィスキーをかける。
「コボルドの死体も一緒に燃やしましょう。毒キノコで、しかも死体からも生えるキノコだったら大変なことになるわ」
「そうですね。キノコを採取出来なかったから失敗で、それ以外の事は現場の判断ですよね」
「外のコボルド達の死体も持ってきます」
「お願いします」
全員で手分けしてコボルド達の死体を一箇所に集めると、アシェール、ザイン、アリアは先に洞窟の外に出て、小夜が後始末をする。
小夜は出来る限り満遍なくコボルド達の死体にもウィスキーをかける。
「流石に四十体をカバーするには足りないけど、無いよりはマシだよねー」
飄々としながら、小夜はわざと手を滑らせてたいまつを死体の山に落とす。
アルコール度数の高いウィスキーは、すぐさま燃え上がって丸太とコボルド達の死体を焼き始める。
火が消えないのを確認すると、小夜は洞窟の外に出て三人と合流する。
「お待たせー」
「お仕事完了ですね」
「皆さん、ご苦労様でした」
「えぇ、お疲れ様」
「お疲れー」
アシェールはにっこりと微笑みながら、ザインは背丈に似合わず違和感の無い雰囲気でタバコを吸いながら、アリアは天へと上がる黒煙を見上げながら、小夜は表情を変えずに、味方に労いの言葉を送った。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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- 兎は今日も首を狩る
玉兎 小夜(ka6009)
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/16 09:10:55 |
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相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2017/12/16 09:17:49 |