• 虚動

【虚動】ブリジッタとカオル君

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/11/28 12:00
完成日
2014/12/06 06:24

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「室長! どういうことですか、これは!?」
 ワルプルギス練魔院、機動兵器開発室。その第一室長室の前で白衣をまとった幾人かの研究員が怒声を上げていた。
「仕方ないでしょ? あたしは室長。そして、忌々しいことにあのワカメは院長。だから言われたことには従う義務があるわけ。分かる?」
 科学者たち……魔導アーマー部門に所属する研究員たちから怒りの矛先を向けられているのはヤン・ビットマン。開発室の第一室長を務めている。ちなみに、ピンク色のソフトモヒカンがトレードマーク。心は乙女の男である。男である。
「だからと言って、納得はできません! 我々の研究成果を……魔導アーマーの動力を持ち出して……しかもそれをCAMに転用しようなんて……!」
 魔導アーマーとは、帝国が独自に開発している人型の戦闘兵器である。CAMの登場に危機感を覚えた研究チームが血眼になって開発を進めており、最近ではウェルクマイスター社の協力により生産ラインまで確保。少数ながら量産も行った。
 そんな魔導アーマーの動力を、ナサニエル……ヤンが言うところのワカメは突拍子もなく研究室に現れ「これもらっていきますねぇ」の一言で持ち出し、燃料不足で動かせないCAMの代替動力としようとしているのだ。
「これは、暗に我々の魔導アーマーがCAMに劣ると言っているようなものです! こんな屈辱耐えられません!」
「CAMは実際高い戦闘力を持ってるみたいだしねぇ。そっちが使えるならそっちを使った方が良いってことでしょ? 魔導アーマーはまだまだ実用段階に達しているとは言えない……」
「そんなことはありません!!」
 バンッと室長の机に手を叩きつける魔導アーマー部門のリーダー。ヤンの言葉が相当気に食わなかったようだ。
「現状でも魔導アーマーはCAMに匹敵する性能を発揮できるはずです! ウェルク社でもすでに量産体制に入っており数だって確保できています! CAMはすでに実用段階です!」
「あのねぇ……あんたたち、自信たっぷりなのは結構なことよ? でも、CAMは実際に歪虚を倒すっていう戦果を上げてるの。それに対して魔導アーマーの方はどうなの? 雑魔の一体でも倒したなんて報告、あたしは聞いたことも無いわよ?」
「……戦果を上げれば認めて頂けるんですね? 分かりました」
「ちょっ、待ちなさい! まだ話は……」
「証明して見せますよ。魔導アーマーがCAMよりもすばらしいものだということを」
 そう言ってリーダーは振り返り、室長室から出ていく。取り巻きの開発チームも、多少戸惑いながらもリーダーに着いていった。


 魔導アーマー開発部門の連中がヤンに文句を言いにきた、その数時間後。開発室を覗いてみると、試作型の魔導アーマーと科学者たちがきれいさっぱりいなくなっていた。
「……まったく、話を聞かない連中ばっかりね……困ったものだわ」
 魔導アーマーを持ち出して何をするのか……まぁ大体見当はついている。CAMの稼働実験が行われる実験場まで魔導アーマーを持っていき、そこで何らかのパフォーマンスをしようというのだろう。それが敵との戦闘か、CAMに模擬戦でも申し込むのか、その辺は分からないが……
 やれやれと溜息を吐きながら、ヤンは人のいなくなった開発室を見回し……開発室の端の方にいた金髪の少女の姿を見つけた。
「……あら、あんたは行かないの? ブリジッタ」
「うっさいのね。オカマにはかんけーないのよね」
 ブリジッタ・ビットマン。
 元々は同盟からやってきた難民であり、帝国領まで両親と一緒だったが途中ではぐれ、そのまま孤児となってしまった。その後錬金術組合の世話になっていたが、様々な事情から最終的にヤンが身元引受人となって練魔院の魔導アーマー部門に落ち着いた。技師だった父の血によるものか、めきめきと頭角を現していく。その技術力と発想力は、天才と呼ぶにふさわしいものだった。
 だが、14才という若さと、その若さゆえのわがままで自分勝手な部分が反感を買い、同じ部門の開発者たちから煙たがられて孤立していた。その結果、仲間たちと一緒に行くこともできずこうして一人寂しく試作機を弄る羽目になっていた。
「あんた……どうせ、またなんか生意気なこと言って仲間外れにされてるんでしょ……いい加減処世術の一つも覚えないと、将来大変よ?」
「うっさいほっとけ! 大体あ~んなポ~ンコツ持っていったって、笑いものになるだけなのよね~!」
「なあに? おいてきぼりでいじけてんの?」
「い、いじけてないし!? 言いがかりはやめろオカマのぶんざいで!」
 ブリジッタがポンコツと言った通り……実のところ魔導アーマーは人型とは名ばかりの、魔導トラックに手足を付けた様なお粗末な代物であった。一応CAMと同様2足歩行が可能……ではあるが、速度は自転車より少し速い程度。重量のバランスが上に偏っている為、ハンドルを急に切ると転ぶ。そして転んだら自力では起きられない、と……問題が目白押しの代物だ。この点をヤンも十分理解していた。
「ただ、あんたの作ったその試作機はいくらかマシだったんじゃないかしら?」
「『カオル君』をあんなポンコツと一緒にして欲しくないのよね! この大天才が作ったんだから……でも、まだ駄目よね。足りないところがたくさんあるのよさ……それに色々調整しないと……」
 試作機のカオル君(正式にはカオルクヴァッペと言うそうだ)をホメられて笑顔を見せたブリジッタだったが、すぐに険しい表情を見せ作業を再開した。
 魔導アーマーは、多少ばらつきがあるが大凡3~4m前後。少女の身で部品の取り付けやら内部機器の調整やらを行うのは大変だろう。だが、チームの面々はすでにおらず、手伝いを頼もうにも頼める人もいない。まぁ性格的に自分から頼むということは出来ないのだろうが。
(仕方ないわね……ちょっと助け船を出してあげるかしら)
「ねぇブリジッタ」
「なによ……邪魔なオカマはどっか行ってほしいのよね」
「いえね。どうせならハンターでも雇ってみたらどう?」
「ハンター? やだ。ハンターってことは覚醒者でしょ。あんな精霊の加護でチートしてるだけの凡人共にカオル君を触らせたくないのよね!」
 そう言って嫌がる素振りを見せたブリジッタだったが、最終的にはヤンの提案を了承する。
 調整の人手が足りないのも事実だったが、それ以上に調整完了後に演習を行う相手が必要。だが、相手に出来そうな魔導アーマーは無く、一般人を相手にするのは論外だ。覚醒者であるハンターを雇うより他に手が無かったのだ。
 こうして『魔導アーマーの調整補助及び模擬戦闘』という名目で、練魔院第一開発室経由で依頼が出されることになったのだった。

リプレイ本文


 練魔院の入り口でハンターたちを出迎えたヤン・ビットマン。彼に連れられて、ハンターたちは第一開発室へと向かう。
「魔導アーマーか……一度見てみたいと思っていたんだ」
 フワ ハヤテ(ka0004)は歩きながらそう呟く。ハヤテの様に魔導アーマーに興味を持っている者は少なくないようだ。
「CAMと比べてどういう作りになっていて、どんな運用ができるかな! そして、操縦したい!」
「面白そうな物が出てきたな。オレは元CAMパイロットだが、別にCAMに固執する必要はねぇと思ってるからな。何より使えるものが一番だろ」
 テンシ・アガート(ka0589)は早くも興味津々といった様子。それはナガレ・コールマン(ka0622)も一緒だ。ただ、ナガレの言葉には、暗に魔導アーマーが真に使えるものなのか、それを見極めようとしているような気配も感じられた。
「それじゃ、よろしく頼むわよ」
 そうこうしているうちに、開発室に到着。扉を開けると、そこは格納庫のような広い空間になっていた。本来は幾体もの魔導アーマーが並べられ、開発者たちが集まって開発を進めているのだろうが……今は端の方に一体だけ。魔導アーマー「カオルクヴァッペ」を残すのみ。
「あ、来たのね」
 そして、その傍らには製作者である金髪の少女がいた。
「私がブリジッタ・ビットマンなのよ。一応手伝いってことで呼んだんだから、邪魔だけはしないように気を付けてほし~のね」
「ああ、初めましてビットマン博士」
「一応、士官学校でCAMなら整備も一通り習ってる。全くの素人よりは役に立つと思うよ」
 ハヤテやサーシャ・V・クリューコファ(ka0723)を始めハンターたちは挨拶を行うと、魔導アーマーの方に目を向ける。
「それで、これが魔導アーマーか……こうれはどういったものなのかな? ご教授願いたいな」
「そ~んなことも知らないの? しょうがないのね~、教えてあげるからよ~く聞くのよ」
 ハヤテの質問に無い胸を張りながら得意げに説明するブリジッタ。
「良い趣味してるじゃないか。嫌いじゃないよ、こういうの」
「これは……いいものだ」
 その間、ジルボ(ka1732)やオウカ・レンヴォルト(ka0301)がその姿を見て感想を述べる。特にオウカは随分興奮しているようだ。ゲームが好きな影響なのか、CAMとは違うロボっぷりに感動しているらしい。
 そんな他のハンターたちと比べ、少し暗い表情を浮かべているのはメトロノーム・ソングライト(ka1267)。
 メトロノームは魔導アーマーもCAMも……控えめに言っても、あまり好きではない。それが正直な気持ちだ。
(堅く冷たく……どうしても馴染めないとしか思えません)
 しかし、依頼を受けた以上はそれに従事するしかない。そうメトロノームは自分に言い聞かせる。
「さて、こいつが剣機やらと比べてどの程度のものなのか……確かめさせて貰おうじゃねえか」
 鳴神 真吾(ka2626)はどこか期待をにじませながら、魔導アーマーを眺めていた。


 動作テストや模擬戦闘。やるべきことは盛り沢山だったが、それには残った調整作業を終わらせる必要があった。
「そ~ゆ~わけだから、とりあえず機材とかをこっちに運んで欲しいのよね」
 ブリジッタの指示に従って、ハンターたちは行動を開始する。
「分かりました。私は機械関係のことはさっぱり、ですので……」
 メトロノームは邪魔をしないように気をつけつつ片付けや荷運び等の雑用を中心に行っていく。
「こういう重そうなのは俺が運ぶよ」
「そうですか? ありがとうございます」
 ジルボもメトロノーム同様雑用。ただし、男の哀しいところか、力仕事が多く回ってきてはいるようだが。
「俺はバイクの整備位しか経験が無いからな。指示出してくれればその通り動くぜ……で、何をする?」
「こっちもだ。良くわかってない物を勝手に触るのは怖いからな。指示を出してくれ」 
 一方、真吾やナガレなどはそこそこ機械には詳しい……もののやはり未知の兵器である魔導アーマー。下手に手を出して問題が起こってはまずいと慎重だ。
「あ、それもそうなのね……それじゃそこのパーツの取り付けを……」
「こっちはどうする?」
 矢継ぎ早に、今度はオウカから質問が飛ぶ。
「あ、そこはそのまま装甲板を被せちゃっていい……違うの! そこではなくそっち!」
 普段一人で作業をしているせいか。はたまた年齢故に指揮する立場に慣れていないためか、指示は遅くたどたどしい。その上、なかなか意図が伝わらないためか、ブリジッタはイライラしてきた様子だ。
「俺は、力は無いけど機械は分かるからさ。ここは一つ内部機器の調整は俺に……」
「……結構なのよ!」
 テンシの提案はイライラがピークに達したブリジッタに、あっさりと退けられる。
「ていうか、もう私が一人でやるからいーのね!」
「そんな、一人じゃさすがに……」
「そもそも! 本当は、カオル君をあんた達みたいな精霊の加護でズルしてる凡人に触らせるのも嫌なのね。それでもオカマが言ったから仕方なく……」
「おいおい、聞き捨てならねえな」
 そう言って覚醒者に対する嫌悪感を露わにするブリジッタに、真吾が静かに詰め寄る。
「な、何なのよ……」
「確かに、俺達覚醒者は自分たち以外の力を借りて凄い能力を発揮してるわけだからズルって言われてもしょうがねえが……そのズルでも歪虚と戦うには一人の力じゃ足りねえ」
 真吾の言う通り、覚醒者だけの力で事足りるなら、そもそもこうやって魔導アーマーなど作る必要もないのだ。
「だからこそ、出来ることをしながら努力するしかないんだよ、俺達もな」
 そう言って言葉を締める真吾。子供故にこらえが無いということも分かっていたからか、ハンターたちの対応も落ち着いたもので、すぐに自分の作業を再開する。
「な。そういうことだから、ここは俺に任せて……」
「……まぁいいのよ。それじゃ、私はコクピットに行くから」
「了解だぜ! ……本当は逆でもいいんだけど……」
「何なのね?」
「いや、なんでも」
 怪訝な表情を浮かべながらカオル君のコクピットに登るブリジッタ。そこからコクピットの計器を見ながら指示を出す。
「……左脚部の圧がちょっと高いのね。調整してほしいのね」
「了解だ」
 足元で返事をしたのはサーシャ。
「君の言うところのズル……チートのおかげで、バルブ締めとか軽い力で済むから。面倒事は任せてくれ」
 そんなやり取りをどこか達観した様子で眺めるハヤテ。
「やはりこういった機械は良くわからないな……」
 魔術が専門故しかたない部分もあるが、かといって見てるだけというわけにもいかないので、ジルボを手伝うことに。
 こうして、調整は万事順調に進んだ。 
「……良し! 準備お~け~なのよ!」
 レンチを片手に汗を拭うブリジッタ。これで一通りの調整は終わった。
 次は、テストと模擬戦だ。早速ブリジッタとハンターたちは地下にある性能試験場へ移動した。


 性能試験場まではカオル君を実際に歩かせて移動した。歩行試験も兼ねている為だが……
「すっごい揺れてるな……サスペンションが酷いな……」
「サスペンション?」
「あー……揺れを抑える機能ぐらいに思っておけばいい」
「なるほど……なんにせよ、機動性はネックになっているようだね」
 カオル君の姿を後ろから眺めるオウカとハヤテ。確かに揺れは酷い。恐らく他の魔導アーマーも似たような感じなのだろう。
 移動速度は……まぁ遅くは無い。自転車の倍ぐらいは出ているだろう。それが乗り物として速いと言えるかどうかはまた別だが。それに……方向変換にも随分手間取っているようだ。
「……まぁ今は性能について意見するよりも、ちゃんと動くかどうかのテストを優先しようや」
 ナガレの言葉に従い、他のハンターたちもその後について試験場へ移動した。
 性能試験場は地下にある割には高さ、広さも十分確保されていた。外に漏らしたくない兵器の実験などを行うためなのだろう。
「で、とりあえず動作テストだが……」
 ジルボが提案したボールを投げ腕の鉄球で打ち落とす、反応や足回りの動作を確認するテストを始め、いくつかのテストをこなす。
「……とりあえず動作自体は問題無さそうなのね」
 揺れが激しいためか、若干青い顔をしたブリジッタ。
「大丈夫? 本当に変わらなくて……」
「平気なのね……それに、カオル君は私が……普通の人間が乗れなきゃ意味がないのね」
 テンシの意見をそう言って拒絶するブリジッタ。
 覚醒者でない一般人にも歪虚と戦える力を与えたい……この思いが、ブリジッタの言葉には込められていた。
「さぁ……模擬戦を始めるのよさ」
 そう言ったブリジッタに答えるように、模擬戦の相手メンバー……テンシ、メトロノーム、ジルボ、真吾がカオル君の前に立つ。
 他の者はとりあえず戦闘に参加せずデータ収集に回る。
「ブリジッタ、これを持っといてくれ」
 サーシャは模擬戦前にそう言ってトランシーバーを渡す。カオル君がフル稼働すれば当然ながら結構な音がする。それを見越した対策だろう。
 こうして模擬戦が開始された。
「さぁ行くのね、カオル君!」
 どデカい駆動音を響かせながら前進してくるカオル君。突きだされた鉄球パンチを回避するのは簡単だが……前衛にいた真吾はあえて盾で受け止める。
「確かにそこそこ威力はあるみたいだが……悪いが剣機とは現状比べようもねぇ」
 メトロノームのストーンアーマーも合わさり攻撃をしっかり防いだ真吾。その受け止めた横合いからテンシ、ジルボが飛び出しカオル君を攻撃。
「カオル君の事を、舐めないで欲しいのね!」
 テンシの鞭が、ジルボの銃がカオル君を打つも、ビクともしない。
「結構堅い……だけじゃないな」
 外から観察していた者達には分かった。カオル君の背部から杭のようなものが伸び、それが第3の足として機体を支え攻撃に耐えたのだ。
「カオル君は普通の魔導アーマーとは一味違うのよさ!」
 そう言ったブリジッタ。同時に、カオル君が……跳ぶ。
「あの巨体でジャンプ!?」
 これも、後部の支えと同様に通常の魔導アーマーには搭載されていない機能だ。ハンターたちを飛び越え、その後ろを取る。
「……といっても、前にしか跳べないみたいだな」
 様子を観察するサーシャの言葉通り、一回跳んでは向きを調整して、を繰り返している。これでは戦闘に使えるかというと……
「微妙かもなぁ……」
 ただ、模擬戦の相手は微妙とばかりも言っていられない。
「ちょっと驚かされたけど……」
 呟きながら、テンシは懐から何かを取り出す。
「……! 3時方向、何か仕掛けてくるぞ!」
 サーシャがトランシーバーで注意を促す。それを聞いたブリジッタは思わずカオル君をジャンプさせる……と共にサーシャの言った方向……テンシの持つペンライトへ目を向けてしまった。
「キャッ!?」
 小さな悲鳴はバキッという機械の壊れる音でかき消される。そのまま、カオル君は態勢を崩し横倒しになってしまった。
「……っと、危ない」
 投げ出されたブリジッタを受け止めるオウカ。カオル君の方はというと、横転した状態。遠目からだが、どうも片足のシャフトが何本か折れているようだ。
「……カオル……君……」
 その様子を呆然自失と言った様子で見ていたブリジッタだったが……
「……ウェーーーンッ!!」
 状況を認識できるや否や、大きな声を上げて泣き始めた。
「カオル君が……カオル君が壊れちゃったぁァッ!」
 性能試験場では、横たわるカオル君の傍らで泣きじゃくるブリジッタの声が響いていた。


 カオル君の損傷により、複数対複数の演習はお流れとなった。
 その後は泣き叫ぶブリジッタを宥めた後今後のカオル君について意見交換が行われた。
「ジャンプすれば足に負担がかかるのは考えれば当然なのね……天才の私としたことが迂闊だったのよさ」
「そうだな。あぁいう動きをするならやっぱり下半身をもっと屈強にしないと駄目……あぁ、ごめんごめん!」
 意見を言ったところでまたブリジッタが涙ぐみ、慌てて慰めるテンシ。ただ、意見は至極尤もである。
「脚部の重量化で安定性を持たせてはどうだろう」
「それも良いけど……移動するのに……なんだっけ? キャタピラとかいうのを使うと、どんな悪路も踏破するらしい。どうだろう」
 オウカに続いてハヤテも、足回りの改善案を挙げる。
「そんなのは知ってるのね。でも、そんなの車輪を付け替えた魔導トラックなのね」
「……でもさぁ、二足歩行のメリットって何だろうな?」
「む……」
 ジルボにそう言われると口をつぐんでしまうブリジッタ。確かに、あえて人型にすることによるメリットは……あるのだろうか。
「まぁ人型に関しては置いとくとしても、通常は車輪走行でもいいんじゃないか?」
「……考えておくのね」
「ま、皆お前やこいつに期待してるんだよ。俺もこいつが完成した時に俺達の意見も役立ってりゃ嬉しいしな」
 難しい顔をしているブリジッタに、真吾がそうフォローを入れる。
 その他にもサーシャからバリエーションとして電子戦型の機体が欲しいとの要望があった。
「レーダー類だろ、それから通信中継用のアンテナと、搭載する通信機も大出力のものにして……」
 ふっふっふ、と笑いながら欲望を垂れ流すサーシャ。だが、電子戦も戦闘が激化してくれば必要になってくるかもしれないし、全くおかしいことを言っているわけではない。
「……まぁ、これも魔導アーマーがより前線で戦うのに適した機体となってからの話だがな」
「その通りだな……CAMとは違った物になると面白いんだがな」
 CAMはある意味で完成していると考える、先という意味では魔導アーマーはまだまだあるだろう、と……サーシャに続いたナガレの言葉で意見交換は終了となった。
 ハンターたちが帰り支度をする中……
「ブリジッタさん……私、CAMもそうですけど……魔導アーマーもあまり好きではなかったんです」
「そ、そんなの……私だって覚醒者なんて好きじゃないから同じよーなもの……」
「でも、今日ブリジッタさんにお会いして、少し考えが変わりました」
「え?」
「たとえ血の通わない機械であっても……作り手の思いや感情が込められているのですね」
 そう、今日という日をメトロノームは振り返る。
「そんな事にも気付けなかった自分が恥ずかしいです。ですから、お礼を言わせてください……ありがとうございます」
「こ、こちらこそ……なのよさ」
 あまりに恐縮してしまったのか、照れからか、強気に出ることも出来ず頭を下げるブリジッタ。
 こうして、魔導アーマー「カオルクヴァッペ」の調整、テストは完了した。
 多数の問題が発見されたが、魔導アーマーという代物はまだまだ成長の余地がある。ブリジッタにもやる気がある以上、その成長を期待してもいいだろう。

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参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 遥かなる未来
    テンシ・アガート(ka0589
    人間(蒼)|18才|男性|霊闘士

  • ナガレ・コールマン(ka0622
    人間(蒼)|27才|男性|機導師
  • まないた(ほろり)
    サーシャ・V・クリューコファ(ka0723
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
サーシャ・V・クリューコファ(ka0723
人間(リアルブルー)|15才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/11/27 21:17:01
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/23 11:29:31