ゲスト
(ka0000)
【CF】龍園より愛を込めて~準備編~
マスター:鮎川 渓

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/12 09:00
- 完成日
- 2017/12/24 14:40
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
辺境よりさらに北に位置する北方王国。
国土の大半を雪と氷に覆われ、時折顔を覗かす大地は緑に乏しい荒野ばかり。負のマテリアルに汚染された場所も多く、雑魔の出現は当然のこと、強欲竜の残党も絶えたわけではない。
そんな過酷な環境下で生きる龍園の人々を護るのは、青きワイバーンを駆る勇敢な龍騎士隊だ。龍騎士達を束ねる当代の隊長は弱冠18歳。物腰柔らかだが、いざ戦場に立てば最前線を担い、強大な竜にも臆することなく大剣を振るう。また、歳相応に柔軟な思考の持ち主で、開かれた龍園を目指し西方との交流も精力的に行っている。
その龍騎士隊隊長・シャンカラ(kz0226)は、今――龍園ハンターオフィスにいた。
「サーヴィくーん。もうすぐ『くりすます』なんだってさー」
カウンターに上半身を預けるように突っ伏して(つまりとてもだらけた格好で)、顔だけサヴィトゥール(kz0228)に向けて言う。
この寒さのため、オフィスを訪う者もない。他の職員を休憩に出し、ひとりカウンターの内側で作業していたサヴィトゥールは、幼馴染のだらしない姿にぴくりと眉を動かす。
けれど隊長のシャンカラがこれだけ暇そうにしているということは、今現在龍園一帯が平和な証拠。そう思い直してか、サヴィトゥールは小言を飲み込み、億劫そうに視線を投げて寄越した。
「……は? クリスマス?」
「そう、サヴィ君はクリスマスって知ってる?」
「……確か、リアルブルーの行事だったように思うが……」
幼馴染の返答に、シャンカラは思わず嬉しくなり、
「スゴイ! やっぱり知ってるんだ、サヴィ君!!」
ガバッと身を起こして拍手をする。けれどサヴィトゥールは何故かやや眉を顰めた。それでもシャンカラは構わず声を弾ませる。
「ね、僕達でやろうよ、龍園初のクリスマス!」
「……は?」
「僕がもみの木取りに行ってくるから、サヴィ君は飾りの準備とかお願いね!」
「あ、いや、待て」
「大丈夫、大丈夫! ちゃんと訓練も兼ねて龍騎士達も連れて行くし、ハンターさんのご助力ももらっちゃうつもりだから!!」
現在龍園は、龍鉱石によってお金を得ている。
しかしながら、龍園に住まう人々は今まで通りの質素で、必要な物があれば物々交換で済ませてしまうため、お金を使うという文化がほぼ途絶えている。
そのため、ハンターオフィスを通じ、新しい龍園以外の文化や便利道具などを購入し、取り入れる事で金銭を使い、また生活に潤いを持たせようという動きが出ていた。
その主な使い道の一つが、ハンターとの交流だった。
彼らは新しい風。こちらの文化を理解しようと努め、彼らの文化を少しずつ取り入れて貰おうと歩み寄ってくれる。
多少のいざこざはあったものの、ハンターオフィスが出来てからおおよそ半年。龍園とハンターとの交流は上手く行っているといっていいだろう。
シャンカラが聞きかじった情報では、クリスマスとは雪景色に良く似合う行事らしい。それなら、雪と氷には事欠かないここ龍園で行えば、ハンター達に喜んで貰えるのではないか。そう思ったシャンカラは、矢も盾も堪らない勢いで立ち上がる。
「じゃー、ちょっと行ってくるねー!!」
「おいシャンカラ」
サヴィトゥールは呼び止めようと腕を伸ばしたが、頭の中は既にクリスマスの計画でいっぱいのシャンカラは気付かない。外套を翻し、いそいそと駆け去った。
●
「ようこそお集りくださいました」
そうして集まったハンター達を前に、シャンカラは笑顔で一礼した。その後ろで、5人の新米龍騎士達も揃って頭を下げる。
「全員お揃いですね? では早速、広場に飾るツリー用の木を調達しに行きましょう」
龍園は北方王国の北側にあり、木を調達するにはずっと南下して行かなければならない。けれど、真冬の雪深い北方の大地を長距離移動するのは非常に困難だ。そこで、空を往くことになっていた。ハンター達もそれぞれワイバーンかグリフォンを同行している。
そこでひとりのハンターが、相棒の翼を撫でつつ首を傾げた。
「でも、もみの木をここまで持ち帰るって……伐った木をロープで括って、この子達が協力して引っ張って飛ぶとしても、ちょっと無理があるんじゃ?」
「ご安心ください」
シャンカラが指笛を高く鳴らすと、灰色の空からたちまち6頭の飛龍が舞い降りてきた。その6頭は、ハンター達がソサエティから貸与されるワイバーンよりも一回り大きく、見るからに屈強な身体つきをしている。龍騎士隊の飛龍の中でも、物資や人の輸送に特化した特別な飛龍なのだとシャンカラは説明した。余程の巨木でなければこの6頭で運べるだろうと。
「けれど僕達は、肝心のクリスマスツリーを実際に見たことがなくて……どういった木を選べばいいのかが分からないんです。是非一緒に選んでいただけないでしょうか?」
そういうことならと、ハンター達は首肯した。
ハンター達はそれぞれの相棒に、龍騎士達は6頭の飛龍に跨り、南へ向け飛び立った。
辺境よりさらに北に位置する北方王国。
国土の大半を雪と氷に覆われ、時折顔を覗かす大地は緑に乏しい荒野ばかり。負のマテリアルに汚染された場所も多く、雑魔の出現は当然のこと、強欲竜の残党も絶えたわけではない。
そんな過酷な環境下で生きる龍園の人々を護るのは、青きワイバーンを駆る勇敢な龍騎士隊だ。龍騎士達を束ねる当代の隊長は弱冠18歳。物腰柔らかだが、いざ戦場に立てば最前線を担い、強大な竜にも臆することなく大剣を振るう。また、歳相応に柔軟な思考の持ち主で、開かれた龍園を目指し西方との交流も精力的に行っている。
その龍騎士隊隊長・シャンカラ(kz0226)は、今――龍園ハンターオフィスにいた。
「サーヴィくーん。もうすぐ『くりすます』なんだってさー」
カウンターに上半身を預けるように突っ伏して(つまりとてもだらけた格好で)、顔だけサヴィトゥール(kz0228)に向けて言う。
この寒さのため、オフィスを訪う者もない。他の職員を休憩に出し、ひとりカウンターの内側で作業していたサヴィトゥールは、幼馴染のだらしない姿にぴくりと眉を動かす。
けれど隊長のシャンカラがこれだけ暇そうにしているということは、今現在龍園一帯が平和な証拠。そう思い直してか、サヴィトゥールは小言を飲み込み、億劫そうに視線を投げて寄越した。
「……は? クリスマス?」
「そう、サヴィ君はクリスマスって知ってる?」
「……確か、リアルブルーの行事だったように思うが……」
幼馴染の返答に、シャンカラは思わず嬉しくなり、
「スゴイ! やっぱり知ってるんだ、サヴィ君!!」
ガバッと身を起こして拍手をする。けれどサヴィトゥールは何故かやや眉を顰めた。それでもシャンカラは構わず声を弾ませる。
「ね、僕達でやろうよ、龍園初のクリスマス!」
「……は?」
「僕がもみの木取りに行ってくるから、サヴィ君は飾りの準備とかお願いね!」
「あ、いや、待て」
「大丈夫、大丈夫! ちゃんと訓練も兼ねて龍騎士達も連れて行くし、ハンターさんのご助力ももらっちゃうつもりだから!!」
現在龍園は、龍鉱石によってお金を得ている。
しかしながら、龍園に住まう人々は今まで通りの質素で、必要な物があれば物々交換で済ませてしまうため、お金を使うという文化がほぼ途絶えている。
そのため、ハンターオフィスを通じ、新しい龍園以外の文化や便利道具などを購入し、取り入れる事で金銭を使い、また生活に潤いを持たせようという動きが出ていた。
その主な使い道の一つが、ハンターとの交流だった。
彼らは新しい風。こちらの文化を理解しようと努め、彼らの文化を少しずつ取り入れて貰おうと歩み寄ってくれる。
多少のいざこざはあったものの、ハンターオフィスが出来てからおおよそ半年。龍園とハンターとの交流は上手く行っているといっていいだろう。
シャンカラが聞きかじった情報では、クリスマスとは雪景色に良く似合う行事らしい。それなら、雪と氷には事欠かないここ龍園で行えば、ハンター達に喜んで貰えるのではないか。そう思ったシャンカラは、矢も盾も堪らない勢いで立ち上がる。
「じゃー、ちょっと行ってくるねー!!」
「おいシャンカラ」
サヴィトゥールは呼び止めようと腕を伸ばしたが、頭の中は既にクリスマスの計画でいっぱいのシャンカラは気付かない。外套を翻し、いそいそと駆け去った。
●
「ようこそお集りくださいました」
そうして集まったハンター達を前に、シャンカラは笑顔で一礼した。その後ろで、5人の新米龍騎士達も揃って頭を下げる。
「全員お揃いですね? では早速、広場に飾るツリー用の木を調達しに行きましょう」
龍園は北方王国の北側にあり、木を調達するにはずっと南下して行かなければならない。けれど、真冬の雪深い北方の大地を長距離移動するのは非常に困難だ。そこで、空を往くことになっていた。ハンター達もそれぞれワイバーンかグリフォンを同行している。
そこでひとりのハンターが、相棒の翼を撫でつつ首を傾げた。
「でも、もみの木をここまで持ち帰るって……伐った木をロープで括って、この子達が協力して引っ張って飛ぶとしても、ちょっと無理があるんじゃ?」
「ご安心ください」
シャンカラが指笛を高く鳴らすと、灰色の空からたちまち6頭の飛龍が舞い降りてきた。その6頭は、ハンター達がソサエティから貸与されるワイバーンよりも一回り大きく、見るからに屈強な身体つきをしている。龍騎士隊の飛龍の中でも、物資や人の輸送に特化した特別な飛龍なのだとシャンカラは説明した。余程の巨木でなければこの6頭で運べるだろうと。
「けれど僕達は、肝心のクリスマスツリーを実際に見たことがなくて……どういった木を選べばいいのかが分からないんです。是非一緒に選んでいただけないでしょうか?」
そういうことならと、ハンター達は首肯した。
ハンター達はそれぞれの相棒に、龍騎士達は6頭の飛龍に跨り、南へ向け飛び立った。
リプレイ本文
●Hello, again.
「隊長、出発準備万端っす!」
シャンカラ(kz0226)は双子の少年龍騎士の言葉に頷くと、
「リブ達の方は……」
少女騎士達を振り返る。ところが3人の少女達は身を寄せ合い色を失っていた。視線の先を辿ると――物言いたげにリブを見ている、藍晶石の瞳の少女が。前は人形めいて冷たく整っていた彼女の顔。けれど今は、悔恨と逡巡とがほのかに浮かんでいる。
「少し、良いだろうか」
マリナ アルフェウス(ka6934)だ。
「っ!」
思わず後退ろうとするリブ。双子が庇うように割り込もうとしたが、シャンカラは彼らを目で制し、リブを留まらせるよう背に手を添えた。マリナはリブの前に進み出ると、静かに告げる。
「今更かという声もあるとは思うが。模擬戦闘の件、非常に申し訳なかった。重ねて謝罪する」
それから携えてきた短筒「雀蜂」を差し出した。
「少しでも気が収まるのなら、撃たれる覚悟も、作戦中に後ろから刺される覚悟もある」
「そんな……」
リブは困惑し隊長を仰いだが、彼は黙って見守るだけだった。
マリナが頭を下げると、長い髪が流れるように肩から零れて落ちる。と、彼女の懐からバサリと数枚の紙が地に落ちた。リブは素早くしゃがみ込み1枚を手に取る。紙には几帳面そうな字が並んでおり、内容は全てクリスマスに関する事柄だった。
「コレは」
眼鏡の奥で目を丸くするリブ。マリナは紙に視線を落とし、
「クリスマスは私自身も初なため、クリスマスについて情報収集をしてきた。ハンターオフィスの聖輝節の記録も閲覧し、少しでも役立てればと……」
リブはしばらく紙とマリナを交互に見つめていたが、ややあって決心したように紙を拾い集めると、短筒を持つマリナの手の上へ強引に乗せた。
「これもそれも大事なものでしょう? しまってください」
「しかし、」
戸惑うマリナに、リブはにこりと微笑む。
「こんなに沢山調べてきて下さったマリナさんが、悪い人なわけありませんもん。こないだの事は、私の実力不足で……でももし次の機会があるなら、その時は負けませんよっ。強くなってみせますから!」
拳を握ってみせるリブ。マリナも小さな吐息とともに表情を和らげ、龍騎士達の間に安堵が広がった。
……と。
「めりーっくりすまーす!」
微妙な空気の残滓を吹き飛ばすような、溌剌とした声が響いた。陽光めく眩い金髪のレム・フィバート(ka6552)だ。
「皆さんのたのしー時間まであとちょっととなって参りました 、ぜっ☆」
ぴっと人差し指を立てたレム、同行する龍騎士達が新米だとこの時気付いたようで。
「っとと、新米さんまでいるのかーっ! よろしくねっ♪ へへーなんだか昔のレムさん達を思い出しますなっ! ちょうど1年前は新人だったんだなぁーなんってっ」
「1年?」
新米5人は目を瞬く。レムから感じられる頼もしさは、駆け出しから1年のハンターとは到底思えなかったのだ。そこへ長大な刀を携えた黒髪の少年剣士と、全身鎧姿の銀髪の青年が歩み寄る。
「もうそんなに経つんだね」
「俺も大体その位、だな」
アーク・フォーサイス(ka6568)とクラン・クィールス(ka6605)。3人はおおよそ同期で、彼らももまたレム同様、歴戦の戦士然とした風格があった。
「ハンターさんってすごぉい」
リブの呟きに頷きあう新米達へ、彼らが向き直る。
「聖輝節……と、大元ではクリスマス、だったか」
「リアルブルーの聖輝節だったね。龍園でのはじめてのクリスマス、俺達が手伝えるなら嬉しいよ」
新米達は首を捻る。隊長がクリスマスと呼んでいたので、聖輝節という呼び名を知らなかったのだ。
同じものだと説明してやりながら、クランは幼い頃の聖輝節を思い出していた。今はクールな彼にも、プレゼントを想像して胸躍らせたり、友人達と飾り付けを楽しんだり、子供らしい幼少時代があったのだ。けれど今となっては決して戻れぬ幸福な日々。彼は感傷を振り払い、
「何にせよ、助言ぐらいなら出来るだろう。恐らくは護衛が主な仕事になるだろうが……」
アークもこくり頷く。
「俺達が守るから大丈夫だよ」
「きんきゅーじたいがあっても、任せておくのですっ!」
3人が揃って請け負うと、新米達の顔に笑顔が戻った。
そう、もうすぐ楽しいクリスマス。けれどまだ気まずそうにしている女性がいた。
「やらかした。仕事受けたのはいいけど、私も龍園飛び出してから日が浅いってーの」
少し離れた所でボヤくのは、元龍騎士のトリエステ・ウェスタ(ka6908)。当然彼女も北方育ち。つまり。
「クリスマスの何たるかなんてわからないっ!」
思わず声を大きくしてしまった彼女を、少女達が振り向く。途端、瞳を輝かせ突進してきた。
「お姉様ーッ♪」
「は?」
固まるトリエステ。お姉様って何よと内心困惑する彼女だったが、そこは大人の女性の嗜みで、常通り嫣然と少女達を迎える。
「皆元気そうで何よりだわ。ところでこないだ私が持ち込んだアレ、楽しめてるかしら? ゴミになってたら申し訳な、」
そこまで言った時、彼女は見た。少女達のベルトに下げられたブツを。それは紛れもなく以前贈ったゲーム機だった。少女達はゲームの攻略状況や、男性キャラがいかにイケメンかを熱く語る。恋を知らずにいた少女達は今や二次元のイケメンに首ったけ。トリエステは少女達にとって、恋を教えてくれた『お姉様』というわけなのだった。
「あはは……元気そうで本当、何よりよ」
予想外の状況に、さしもの彼女も乾いた笑い声をたてた。
●What is X'mas?
一行は龍園を飛び立ち南下していく。今回全員がワイバーンを伴っており、大小12頭の飛龍部隊と相成った。寒さは厳しいが、風はなく降雪もない。この時期の北方にしては絶好の飛行日和だ。群れ飛ぶ飛龍達の合間に、各々の通信機から零れるブリジット(ka4843)の声が響き合う。
「クリスマスについては由来はともかく――いえ、私も紅界出身ですので詳しくはわかりませんが、お祭りの様なものです」
ブリジットは龍騎士達へ、クリスマスがどういうものか説明してくれていた。彼女はかじかむ手へ美しい刺繍が施された手袋「花柳」をはめ直し、更に続ける。
「祭りは神事ではありますが、皆が楽しめる事が第一です」
アークに借りたトランシーバーで、リブが尋ねる。
『神事だと、決まり事とかあるんでしょうか?』
「あまり固く考えずとも良いのではないかと。雰囲気を味わってもらえたら充分だと思いますよ。それよりも、」
ブリジッドは長い睫毛を伏せ、先日龍園で行われた宴の様子を思い浮かべた。
「龍圏の方々が交流の為にクリスマスを祝ってくれる、という気持ちが嬉しく大事にしたいです。先日の催しでは大変楽しく演奏をさせて頂きましたし、本番でも演奏ができたら嬉しいですね」
その言葉で新米達はブリジットが作ってきてくれた曲を思い出し、楽しげに口遊み始めた。明るい歌が道行きに色を添える。ハンター達は周囲に気を配りながらも、その様子に頬を綻ばせていた。
『かないませんね』
トランシーバーからは、シャンカラの嬉しそうな、困ったような声。
龍園が外の世界に向け開かれてからというもの、龍園を訪れるハンターは北方の文化に積極的に触れてくれたり、西方に東方、蒼界の事を教えてくれたりと、様々なアプローチで龍園の民と交友を重ねてきた。最初に歩み寄ってきてくれたのは彼らの方だと、シャンカラは思っているのだ。
『クリスマスの催しで、少しでもお返しできたらと思っているのですが……皆さん優しい方ばかりで、お返しが追いつきそうもなくて困ってしまいます』
「真面目だね」
苦笑するアークの横で、レムがぱっと顔をあげる。
「レムさん、またコケモモ酒が飲んでみたいですぞっ!」
「あー良いわね。温めてもイケるのよあれ。寒いし、帰ったら熱いのを頂きたいわね」
『えぇ、そうしましょう』
トリエステの言葉にシャンカラが頷くと、レムは新米達と一緒になって手を叩いた。
するとクランが前方を指差す。
「森が見えてきたぞ。……終わったあとの話も良いが、まずは木を確保しないと、な」
『はーい』
浮かれていた新米達、淡々としながらもやんわり諭すクランの言葉に、照れたように首を縮めた。マリナはモノクル越しに目を眇める。
「……全方位敵影なし。目的地、汚染なし。降下を開始する」
その声を機に、飛龍達は森へ向け滑空していった。
もみの木を中心とした針葉樹の森。白一色の景色に慣れていた一同の目に、常緑樹の緑が鮮やかに映る。
「さて、どれにしましょうか」
立ち並ぶもみの木を見上げ、シャンカラはむむっと眉根を寄せる。レムは待機する大型の飛龍達を見、
「ここってワイバーンくんもいるから、結構夢あるサイズも作れたりするのではっ!?」
期待に瞳を輝かす。大きければ大きいほど、飾り付けた時に華やかになるのは間違いない。トリエステはつと首を傾げる。
「そうねぇ。どうせなら大きい木と言いたいところだけど、クリスマス初心者の集まりの龍園で、いきなり大きな木を持ち込んでも飾り付けが難しそうな気もするのよ」
「おお、そういう問題がっ!? それに、街のけーかん? 的な? ものも大事なんだっけ?」
龍園が神殿都市である事を思い出し、レムも揃って首を傾げた。アークは木々を見渡し、
「飾り付けをすることを前提に選ばないとね……とは言え、あまり小さいものより、広場に置いて見劣りしないような位のものがいいかな」
「となると……7~8mくらい……? あーもう! わかんない!」
潔くギブアップしたトリエステ。けれど彼女が口にした数字に、シャンカラがぽんと手を打った。
「それ、いい線かもしれません。龍園の建物はあまり背が高くないので」
年の大半が冬である北方。寒さと地吹雪から逃れる為、龍園の建築物は上へ伸びず地下を備えている事が多い。実際、龍園ハンターオフィスの建物も地下2階まであり、主たるオフィス機能は地下1階にある。広場周辺も平屋や2階建て程度の建物が多いことから、ツリーにそれ位の高さがあれば見劣りせず、景観を損ねる事もないだろう。そこでレム、元気に挙手。
「2階建てだとー、建物の高さも8mくらい? それよりもうちょっと大きいのにしたら、広場から離れた通りからでもツリーの天辺が見えたりするかなっ、とかとか!」
「それは素敵ですね。本番の時に、会場の目印にもなりそうです」
ブリジットも出立前にいた広場を思い浮かべて賛成した。アークはシャンカラを仰ぐ。
「じゃあ大体10mくらいか。シャンカラ、大丈夫かな?」
「問題なく運べますよ。では、それを目安に探しましょう」
「はい!」
新米5人は元気よく駆け出していく。――だがハンター達はすぐに頭を抱える事になった。
「あのっ、これどうです?」
リブが指し示したのは、ひょろりとした痩せっぽちの木。クラン、思わずきっぱり首を横に振る。
「その木はやめておけ……飾りの重さに耐えそうもない」
と思うと、今度は奥の方で双子が自信あり気に胸を張る。日差しを求めてか、一方ばかりに枝を伸ばした木の前で。
「コイツはどうだぃ!」
「いや……もう少し全体的に枝葉のある方が、飾りが映えると……」
最低限の助言をと思っていたクランでさえ、つい口を出さねばいられないほど、彼らのチョイスは酷かった。何せ龍騎士達は、ツリーがどういうものかまるで分かっていないのだから。
「……まさかこれほどとはな」
世話焼きで苦労性の気があるクラン、方々に散った新米達を追いかけてはアドバイスし、早くも息切れ。ブリジットは苦笑し、彼らが気に入ったらしいリュートをぽろり爪弾くと、音色で彼らを呼び戻す。
「ツリーにするには、葉を豊富につけて、枝が程よく広がったものが良いと思われます。頂点から平面的には三角形に見える様に末広がりになる形で、飾りが多くつけられて見栄えがすると思うのが理由です」
「スエヒロガリ?」
頭上へ疑問符を浮かべる新米達。マリナは落ちていた枝を拾うと、情報誌で目にしたツリーを思い出しながら、地面にざっくりとツリーの形を描いて見せる。
「ああ、こういう形かぁ!」
「私自身も上空から索敵を兼ね、程よい木を探そう」
言い残し、マリナは相棒に跨り颯爽と飛び去った。全員で手分けしながら良さそうな木を求め歩く。
「木の形はきれーだけど、高さが足りませんなぁ」
「こちらはもう少し緑が欲しいですね」
「ほらほら新米さん達、そんなに走ると転ぶわよ?」
そんな風に吟味しながら森を探索していると、上空のマリナから通信が入った。
『ターゲット確認。高さも枝振りも申し分ないものと思われる。採取を具申する』
旋回するワイバーンを目印に、全員でその木を確認しに向かう。どっしりとした幹に、八方へ万遍なく広がった枝。葉の付きも良く全員がひと目で気に入る立派なもみの木だった。
新米達は伐採準備に取り掛かる。枝にロープを張り、倒す方向の地面に保護布を敷き……それを見たマリナから再度通信が入る。
『根ごと掘り起こすのではないのか』
シャンカラが上空を見上げて応答する。
「龍園は北方王国の中でも北側なので、ここより冷えるんです。植え替えても枯らしてしまいますから」
『成程』
「飾り終えたあとは木材に加工する予定です。龍園では木材も貴重品なんですよ」
このあとスタッフが美味しくいただきます的な説明をしたところで、準備が整った。シャンカラはすらりと大剣を抜き放ち、
「では――」
気合一閃。横薙ぎに払ったかと思うと、太い幹が根本で綺麗に断ち伐られた。
●Bring back.
「道理で斧だの鋸だの持ってないなと思ったのよ」
元上司の強引な力技に、トリエステはフィラートの鞍の上で溜息を吐く。
復路のことである。
龍騎士達が駆る大きな飛龍達は、保護布で包んだ木に結いたロープの先を持ち、6頭で協力しあってもみの木を運んでいた。他の飛龍との間隔を細かく調節せねばならず、新米達は手綱取りに必死だった。大きな作戦では物資の運搬も重要になる。これも必要な訓練なのだ。
「ふぁいとですぞっ!」
「は、はい!」
先導するレムの声援に、返事をするのもやっとといった有様だ。彼らの横につけながら、どこかハラハラと見守っていたクランだったが、そろそろ森の上空を抜けるかという所で異変に気付いた。
「……何だ?」
後方、森の木々が大きく揺れた。木を揺らす何者かは、一行を追いかけるようざわざわと移動したかと思うと、梢の合間から弾丸のように飛び出してくる! 冷静に敵影を見定めたマリナがトランシーバーを掴み言う。
「6時方向に敵影発見。鳥型総数20。早急に排除されたし」
一塊になって森から飛び出してきた鳥雑魔は、飛龍達の下方で大きく散開。一行を包囲するよう大きな輪を描く。
「きゃっ!」
突然の敵襲に、ただでさえ一杯一杯だった新米達の手綱捌きに乱れが生じる。宙吊りの木が大きく揺らいだ。シャンカラは隊長権限で直に飛龍達へ号令し持ち直させたものの、これでは指示出しに注力せざるを得ない。
「くっ……すみませんが皆さん、お願いしま――」
シャンカラは言葉を飲んだ。彼が顔を上げた時には既に、ハンター達による圧倒的な展開が繰り広げられていたのだ。
最初に動いたのは、高い機動力を持つアークのムラクモ、トリエステのフィラートだった。
高めに飛翔していたムラクモ、小鳥3体を眼下に収めるべく駆ける。
「折角の郷帰りだったのに、ゆっくりさせてあげられなくてごめん。頼むよ……!」
主と同じ金眼を煌めかせたムラクモは、大きく咆哮すると同時、眼下の敵へ無数の光線を見舞う! 雨のように降り注ぐ光が、負のマテリアルに侵された鳥達を灼き払った。
普段は後衛に陣取るトリエステも、果敢にフィラートを鳥達に接近させる。
「ちょっと無茶して突っ込んで、木を運ぶ面々から注意を逸らす方向で頑張ってみましょうか。よろしくお願いね、フィラート」
言いながら、銀霊剣「パラケルスス」を媒介にマテリアルを練り上げていく。高い魔法命中力を誇る彼女は、飛行中であっても難なく術を紡いだ。
「巻き込みの危険はナシね。遠慮なく行くわよ!」
現したのは巨大な火球。鳥達は悲鳴代わりにジュッと音を立て炭と化す。
そんな先輩の姿に奮起したリブ、
「流石お姉様! よ、よしっ、私だって」
接近する鳥を認めると弓を構えようとした。しかし手綱を取るのもやっとな有様なのだ、途端にリブの乗る飛龍から伸びたロープがたわんだ。慌てて手綱を取り直すも、迫ってくる敵を前に焦りうまくいなかい。半泣きになったその時だ。リブの眼前に、オーラが描く不完全な翼が広がった。次いで獣機銃の発砲音が耳を劈く。
「……何事もなく終われば御の字、だったんだがな」
クランだ。他の新米達にも聞こえるよう、トランシーバーへ告げる。
「お前達はそちらに専念していろ。浮き足立ってソレを落とされたら苦労が水の泡だろう?」
「でも私達も何か、」
リブの言葉を最後まで聞かず、クランはワイバーンを前進させる。そして敵の囲みの一角へファイアブレスを喰らわせた。言葉少なな彼だが、オーラの翼を負うた背は『任せておけ』と雄弁に語っていた。
「かっけー……」
そんな彼の振る舞いに感激したのは、少女達よりもむしろ同性の双子達だった。クランが龍園で兄貴と呼ばれる日も近いかもしれない。
さておいて。
ロートのブレスで後方の敵に先制したブリジット、なおも迫る個体を見据えた。
「私が相手です」
構えた「虎徹」の刀身が、北方の陽を受け白銀に照る。刃が明るいのは名刀の証。居合で抜刀しようと考えていたのだが、ワイバーンは飛行中、サブ行動・メイン行動いずれかで移動しなければ飛び続ける事ができない。メイン行動で攻撃を試みる以上、サブ行動を移動に当てざるを得なかたのだ。
「交流の為にここまでしてくださった龍圏の皆さんに手は出させません。今度は私達の番ですからね」
剣心一如で呼吸を整え、ロートを加速させる。そして敵とすれ違いざま、電光石火の早業で一刀両断斬り捨てた。
次の瞬間、日差しに一瞬の陰りが生じた。龍騎士達は思わず頭上を振り仰ぐ。太陽を背にし垂直に滑空してくる影がひとつ――マリナだ。肢体に蒼いデータ片を纏わせた彼女は、リアサイトを覗き込む。
「“……アルフェウス、エンゲージ”――護衛対象より7時方向の敵へ狙撃開始をする」
そして重機関銃「ラワーユリッヒNG5」に冷気を込め、素早さだけは侮れない敵を容赦なく凍てつかせていく。
「ドッグファイトは非常に良好。気分が高揚する」
唇がうっすらと笑みを刻んだ。
戦いは一方的だった。当然だ。相手は雑魔化したとは言え鳥、此方は青龍の眷属ワイバーン。それを駆るのは歴戦のハンター達なのだから。だがその数と身体の小ささが厄介だった。的が小さい分当てづらい。
「ちょこまかとぉっ。これでどうだーっ!?」
グレイアのブレスで応戦していたレムだったが、ついに業を煮やした。堅守発動――構えを取り、身体からマテリアルを放出。残っていた鳥達の目が残らずレムに引き寄せられた。てんでに散っていた鳥達が殺到する!
「アーくん、皆っ、ご準備よろしーっ? 狙って狙ってー!」
全員群がる敵を射程に収めるべく動く。そして――
「3,2,1……グレイアくん急降下ーっ!」
レム、接敵直前一気に降下! レムを巻き込む危険がなくなり、全員一斉にブレスや火球、弾丸をぶちまける! そして降下を終えたレム、拳にマテリアルを漲らせ真上へ拳を繰り出した!
「いっくぞぉー、せーりゅー翔咬波ぁ!」
水の気の渦が、天を指し駆け上った。
●To be continued.
圧倒的勝利を収めた一行は、無事にもみの木を持ち帰った。トリエステはホットコケモモ酒片手に、もみの木を見上げほっと一息。
「龍園にクリスマスがくるのねぇ」
そこへリブ達が駆けて来る。
「お姉様ぁ、お聞きしたい事がぁ」
「はい? ゲームの攻略法? それはちょっと」
一転、少女達から逃げ回るはめになった。そこへ意外な助け舟が入る。マリナがリブを呼び止めたのだ。
「リアルブルーにおけるクリスマスでは、プレゼントを贈るのが通例と聞く。受け取ってもらえると幸いである」
そう言って彼女が差し出したのは、スペルボウ「フェリメント」と破魔矢の一揃え。
「こっ、こんな立派な物……!」
リブは戸惑ったが、マリナの強い意志の篭った眼差しに頷くと、両手で恭しく受け取った。
「きっとずっと、大事にします!」
顔を真っ赤にして涙目になるリブに、マリナの頬が綻んだ。
一方、レムは木の幹に触れ、亡き師に思いを馳せる。
「ししょーもこっちに来て初めてクリスマス知ったのかなー……」
「そうかもしれないね」
頷くのは、共に教えを受けたアークだ。その横顔を盗み見ながらレム、
(去年はアーくんとお散歩に行ったんだっけなー……って、そういうのは今はいいかっ)
「アーくんはシャンカラさんとお話しておきなよっ。こーいう時しか中々時間取れないですしな!」
「? そう?」
不思議そうに、それでも素直に離れていく幼馴染の背中に、レムは去年の思い出を重ね見て小さく息をついた。
アークはシャンカラに歩み寄ると、持ってきたお守りをその手に乗せる。
「えっと?」
「確かこの時期が君の誕生日だったよね。気休め程度だけれど、厄除けのお守り。よければ」
「あっ!」
シャンカラはすっかり自分の誕生日を忘れていた。
「……忙しいんだろうけれど。無理はだめだよ?」
「ありがとうございます、頂いたお守りで百人力です! もっと頑張れそうです!」
「いや、無理は……」
嬉しそうにお守りを眺める横顔に何も言えなくなって、アークは苦笑いを浮かべた。
ブリジットとクランは、突如広場に現れたもみの木にはしゃぐ、龍園の子供達を眺めていた。
「ふふ。喜んでもらえたようですね」
「そうだな……飾り付けは別の班の担当だったか」
「えぇ、きっと素敵になるでしょうね」
今頃別のハンター達が、龍園の民にクリスマスの飾りや料理についてレクチャーしているはずだ。
いよいよ龍園に初のクリスマスがやって来る。
それはまた、次のお話〈依頼〉。
「隊長、出発準備万端っす!」
シャンカラ(kz0226)は双子の少年龍騎士の言葉に頷くと、
「リブ達の方は……」
少女騎士達を振り返る。ところが3人の少女達は身を寄せ合い色を失っていた。視線の先を辿ると――物言いたげにリブを見ている、藍晶石の瞳の少女が。前は人形めいて冷たく整っていた彼女の顔。けれど今は、悔恨と逡巡とがほのかに浮かんでいる。
「少し、良いだろうか」
マリナ アルフェウス(ka6934)だ。
「っ!」
思わず後退ろうとするリブ。双子が庇うように割り込もうとしたが、シャンカラは彼らを目で制し、リブを留まらせるよう背に手を添えた。マリナはリブの前に進み出ると、静かに告げる。
「今更かという声もあるとは思うが。模擬戦闘の件、非常に申し訳なかった。重ねて謝罪する」
それから携えてきた短筒「雀蜂」を差し出した。
「少しでも気が収まるのなら、撃たれる覚悟も、作戦中に後ろから刺される覚悟もある」
「そんな……」
リブは困惑し隊長を仰いだが、彼は黙って見守るだけだった。
マリナが頭を下げると、長い髪が流れるように肩から零れて落ちる。と、彼女の懐からバサリと数枚の紙が地に落ちた。リブは素早くしゃがみ込み1枚を手に取る。紙には几帳面そうな字が並んでおり、内容は全てクリスマスに関する事柄だった。
「コレは」
眼鏡の奥で目を丸くするリブ。マリナは紙に視線を落とし、
「クリスマスは私自身も初なため、クリスマスについて情報収集をしてきた。ハンターオフィスの聖輝節の記録も閲覧し、少しでも役立てればと……」
リブはしばらく紙とマリナを交互に見つめていたが、ややあって決心したように紙を拾い集めると、短筒を持つマリナの手の上へ強引に乗せた。
「これもそれも大事なものでしょう? しまってください」
「しかし、」
戸惑うマリナに、リブはにこりと微笑む。
「こんなに沢山調べてきて下さったマリナさんが、悪い人なわけありませんもん。こないだの事は、私の実力不足で……でももし次の機会があるなら、その時は負けませんよっ。強くなってみせますから!」
拳を握ってみせるリブ。マリナも小さな吐息とともに表情を和らげ、龍騎士達の間に安堵が広がった。
……と。
「めりーっくりすまーす!」
微妙な空気の残滓を吹き飛ばすような、溌剌とした声が響いた。陽光めく眩い金髪のレム・フィバート(ka6552)だ。
「皆さんのたのしー時間まであとちょっととなって参りました 、ぜっ☆」
ぴっと人差し指を立てたレム、同行する龍騎士達が新米だとこの時気付いたようで。
「っとと、新米さんまでいるのかーっ! よろしくねっ♪ へへーなんだか昔のレムさん達を思い出しますなっ! ちょうど1年前は新人だったんだなぁーなんってっ」
「1年?」
新米5人は目を瞬く。レムから感じられる頼もしさは、駆け出しから1年のハンターとは到底思えなかったのだ。そこへ長大な刀を携えた黒髪の少年剣士と、全身鎧姿の銀髪の青年が歩み寄る。
「もうそんなに経つんだね」
「俺も大体その位、だな」
アーク・フォーサイス(ka6568)とクラン・クィールス(ka6605)。3人はおおよそ同期で、彼らももまたレム同様、歴戦の戦士然とした風格があった。
「ハンターさんってすごぉい」
リブの呟きに頷きあう新米達へ、彼らが向き直る。
「聖輝節……と、大元ではクリスマス、だったか」
「リアルブルーの聖輝節だったね。龍園でのはじめてのクリスマス、俺達が手伝えるなら嬉しいよ」
新米達は首を捻る。隊長がクリスマスと呼んでいたので、聖輝節という呼び名を知らなかったのだ。
同じものだと説明してやりながら、クランは幼い頃の聖輝節を思い出していた。今はクールな彼にも、プレゼントを想像して胸躍らせたり、友人達と飾り付けを楽しんだり、子供らしい幼少時代があったのだ。けれど今となっては決して戻れぬ幸福な日々。彼は感傷を振り払い、
「何にせよ、助言ぐらいなら出来るだろう。恐らくは護衛が主な仕事になるだろうが……」
アークもこくり頷く。
「俺達が守るから大丈夫だよ」
「きんきゅーじたいがあっても、任せておくのですっ!」
3人が揃って請け負うと、新米達の顔に笑顔が戻った。
そう、もうすぐ楽しいクリスマス。けれどまだ気まずそうにしている女性がいた。
「やらかした。仕事受けたのはいいけど、私も龍園飛び出してから日が浅いってーの」
少し離れた所でボヤくのは、元龍騎士のトリエステ・ウェスタ(ka6908)。当然彼女も北方育ち。つまり。
「クリスマスの何たるかなんてわからないっ!」
思わず声を大きくしてしまった彼女を、少女達が振り向く。途端、瞳を輝かせ突進してきた。
「お姉様ーッ♪」
「は?」
固まるトリエステ。お姉様って何よと内心困惑する彼女だったが、そこは大人の女性の嗜みで、常通り嫣然と少女達を迎える。
「皆元気そうで何よりだわ。ところでこないだ私が持ち込んだアレ、楽しめてるかしら? ゴミになってたら申し訳な、」
そこまで言った時、彼女は見た。少女達のベルトに下げられたブツを。それは紛れもなく以前贈ったゲーム機だった。少女達はゲームの攻略状況や、男性キャラがいかにイケメンかを熱く語る。恋を知らずにいた少女達は今や二次元のイケメンに首ったけ。トリエステは少女達にとって、恋を教えてくれた『お姉様』というわけなのだった。
「あはは……元気そうで本当、何よりよ」
予想外の状況に、さしもの彼女も乾いた笑い声をたてた。
●What is X'mas?
一行は龍園を飛び立ち南下していく。今回全員がワイバーンを伴っており、大小12頭の飛龍部隊と相成った。寒さは厳しいが、風はなく降雪もない。この時期の北方にしては絶好の飛行日和だ。群れ飛ぶ飛龍達の合間に、各々の通信機から零れるブリジット(ka4843)の声が響き合う。
「クリスマスについては由来はともかく――いえ、私も紅界出身ですので詳しくはわかりませんが、お祭りの様なものです」
ブリジットは龍騎士達へ、クリスマスがどういうものか説明してくれていた。彼女はかじかむ手へ美しい刺繍が施された手袋「花柳」をはめ直し、更に続ける。
「祭りは神事ではありますが、皆が楽しめる事が第一です」
アークに借りたトランシーバーで、リブが尋ねる。
『神事だと、決まり事とかあるんでしょうか?』
「あまり固く考えずとも良いのではないかと。雰囲気を味わってもらえたら充分だと思いますよ。それよりも、」
ブリジッドは長い睫毛を伏せ、先日龍園で行われた宴の様子を思い浮かべた。
「龍圏の方々が交流の為にクリスマスを祝ってくれる、という気持ちが嬉しく大事にしたいです。先日の催しでは大変楽しく演奏をさせて頂きましたし、本番でも演奏ができたら嬉しいですね」
その言葉で新米達はブリジットが作ってきてくれた曲を思い出し、楽しげに口遊み始めた。明るい歌が道行きに色を添える。ハンター達は周囲に気を配りながらも、その様子に頬を綻ばせていた。
『かないませんね』
トランシーバーからは、シャンカラの嬉しそうな、困ったような声。
龍園が外の世界に向け開かれてからというもの、龍園を訪れるハンターは北方の文化に積極的に触れてくれたり、西方に東方、蒼界の事を教えてくれたりと、様々なアプローチで龍園の民と交友を重ねてきた。最初に歩み寄ってきてくれたのは彼らの方だと、シャンカラは思っているのだ。
『クリスマスの催しで、少しでもお返しできたらと思っているのですが……皆さん優しい方ばかりで、お返しが追いつきそうもなくて困ってしまいます』
「真面目だね」
苦笑するアークの横で、レムがぱっと顔をあげる。
「レムさん、またコケモモ酒が飲んでみたいですぞっ!」
「あー良いわね。温めてもイケるのよあれ。寒いし、帰ったら熱いのを頂きたいわね」
『えぇ、そうしましょう』
トリエステの言葉にシャンカラが頷くと、レムは新米達と一緒になって手を叩いた。
するとクランが前方を指差す。
「森が見えてきたぞ。……終わったあとの話も良いが、まずは木を確保しないと、な」
『はーい』
浮かれていた新米達、淡々としながらもやんわり諭すクランの言葉に、照れたように首を縮めた。マリナはモノクル越しに目を眇める。
「……全方位敵影なし。目的地、汚染なし。降下を開始する」
その声を機に、飛龍達は森へ向け滑空していった。
もみの木を中心とした針葉樹の森。白一色の景色に慣れていた一同の目に、常緑樹の緑が鮮やかに映る。
「さて、どれにしましょうか」
立ち並ぶもみの木を見上げ、シャンカラはむむっと眉根を寄せる。レムは待機する大型の飛龍達を見、
「ここってワイバーンくんもいるから、結構夢あるサイズも作れたりするのではっ!?」
期待に瞳を輝かす。大きければ大きいほど、飾り付けた時に華やかになるのは間違いない。トリエステはつと首を傾げる。
「そうねぇ。どうせなら大きい木と言いたいところだけど、クリスマス初心者の集まりの龍園で、いきなり大きな木を持ち込んでも飾り付けが難しそうな気もするのよ」
「おお、そういう問題がっ!? それに、街のけーかん? 的な? ものも大事なんだっけ?」
龍園が神殿都市である事を思い出し、レムも揃って首を傾げた。アークは木々を見渡し、
「飾り付けをすることを前提に選ばないとね……とは言え、あまり小さいものより、広場に置いて見劣りしないような位のものがいいかな」
「となると……7~8mくらい……? あーもう! わかんない!」
潔くギブアップしたトリエステ。けれど彼女が口にした数字に、シャンカラがぽんと手を打った。
「それ、いい線かもしれません。龍園の建物はあまり背が高くないので」
年の大半が冬である北方。寒さと地吹雪から逃れる為、龍園の建築物は上へ伸びず地下を備えている事が多い。実際、龍園ハンターオフィスの建物も地下2階まであり、主たるオフィス機能は地下1階にある。広場周辺も平屋や2階建て程度の建物が多いことから、ツリーにそれ位の高さがあれば見劣りせず、景観を損ねる事もないだろう。そこでレム、元気に挙手。
「2階建てだとー、建物の高さも8mくらい? それよりもうちょっと大きいのにしたら、広場から離れた通りからでもツリーの天辺が見えたりするかなっ、とかとか!」
「それは素敵ですね。本番の時に、会場の目印にもなりそうです」
ブリジットも出立前にいた広場を思い浮かべて賛成した。アークはシャンカラを仰ぐ。
「じゃあ大体10mくらいか。シャンカラ、大丈夫かな?」
「問題なく運べますよ。では、それを目安に探しましょう」
「はい!」
新米5人は元気よく駆け出していく。――だがハンター達はすぐに頭を抱える事になった。
「あのっ、これどうです?」
リブが指し示したのは、ひょろりとした痩せっぽちの木。クラン、思わずきっぱり首を横に振る。
「その木はやめておけ……飾りの重さに耐えそうもない」
と思うと、今度は奥の方で双子が自信あり気に胸を張る。日差しを求めてか、一方ばかりに枝を伸ばした木の前で。
「コイツはどうだぃ!」
「いや……もう少し全体的に枝葉のある方が、飾りが映えると……」
最低限の助言をと思っていたクランでさえ、つい口を出さねばいられないほど、彼らのチョイスは酷かった。何せ龍騎士達は、ツリーがどういうものかまるで分かっていないのだから。
「……まさかこれほどとはな」
世話焼きで苦労性の気があるクラン、方々に散った新米達を追いかけてはアドバイスし、早くも息切れ。ブリジットは苦笑し、彼らが気に入ったらしいリュートをぽろり爪弾くと、音色で彼らを呼び戻す。
「ツリーにするには、葉を豊富につけて、枝が程よく広がったものが良いと思われます。頂点から平面的には三角形に見える様に末広がりになる形で、飾りが多くつけられて見栄えがすると思うのが理由です」
「スエヒロガリ?」
頭上へ疑問符を浮かべる新米達。マリナは落ちていた枝を拾うと、情報誌で目にしたツリーを思い出しながら、地面にざっくりとツリーの形を描いて見せる。
「ああ、こういう形かぁ!」
「私自身も上空から索敵を兼ね、程よい木を探そう」
言い残し、マリナは相棒に跨り颯爽と飛び去った。全員で手分けしながら良さそうな木を求め歩く。
「木の形はきれーだけど、高さが足りませんなぁ」
「こちらはもう少し緑が欲しいですね」
「ほらほら新米さん達、そんなに走ると転ぶわよ?」
そんな風に吟味しながら森を探索していると、上空のマリナから通信が入った。
『ターゲット確認。高さも枝振りも申し分ないものと思われる。採取を具申する』
旋回するワイバーンを目印に、全員でその木を確認しに向かう。どっしりとした幹に、八方へ万遍なく広がった枝。葉の付きも良く全員がひと目で気に入る立派なもみの木だった。
新米達は伐採準備に取り掛かる。枝にロープを張り、倒す方向の地面に保護布を敷き……それを見たマリナから再度通信が入る。
『根ごと掘り起こすのではないのか』
シャンカラが上空を見上げて応答する。
「龍園は北方王国の中でも北側なので、ここより冷えるんです。植え替えても枯らしてしまいますから」
『成程』
「飾り終えたあとは木材に加工する予定です。龍園では木材も貴重品なんですよ」
このあとスタッフが美味しくいただきます的な説明をしたところで、準備が整った。シャンカラはすらりと大剣を抜き放ち、
「では――」
気合一閃。横薙ぎに払ったかと思うと、太い幹が根本で綺麗に断ち伐られた。
●Bring back.
「道理で斧だの鋸だの持ってないなと思ったのよ」
元上司の強引な力技に、トリエステはフィラートの鞍の上で溜息を吐く。
復路のことである。
龍騎士達が駆る大きな飛龍達は、保護布で包んだ木に結いたロープの先を持ち、6頭で協力しあってもみの木を運んでいた。他の飛龍との間隔を細かく調節せねばならず、新米達は手綱取りに必死だった。大きな作戦では物資の運搬も重要になる。これも必要な訓練なのだ。
「ふぁいとですぞっ!」
「は、はい!」
先導するレムの声援に、返事をするのもやっとといった有様だ。彼らの横につけながら、どこかハラハラと見守っていたクランだったが、そろそろ森の上空を抜けるかという所で異変に気付いた。
「……何だ?」
後方、森の木々が大きく揺れた。木を揺らす何者かは、一行を追いかけるようざわざわと移動したかと思うと、梢の合間から弾丸のように飛び出してくる! 冷静に敵影を見定めたマリナがトランシーバーを掴み言う。
「6時方向に敵影発見。鳥型総数20。早急に排除されたし」
一塊になって森から飛び出してきた鳥雑魔は、飛龍達の下方で大きく散開。一行を包囲するよう大きな輪を描く。
「きゃっ!」
突然の敵襲に、ただでさえ一杯一杯だった新米達の手綱捌きに乱れが生じる。宙吊りの木が大きく揺らいだ。シャンカラは隊長権限で直に飛龍達へ号令し持ち直させたものの、これでは指示出しに注力せざるを得ない。
「くっ……すみませんが皆さん、お願いしま――」
シャンカラは言葉を飲んだ。彼が顔を上げた時には既に、ハンター達による圧倒的な展開が繰り広げられていたのだ。
最初に動いたのは、高い機動力を持つアークのムラクモ、トリエステのフィラートだった。
高めに飛翔していたムラクモ、小鳥3体を眼下に収めるべく駆ける。
「折角の郷帰りだったのに、ゆっくりさせてあげられなくてごめん。頼むよ……!」
主と同じ金眼を煌めかせたムラクモは、大きく咆哮すると同時、眼下の敵へ無数の光線を見舞う! 雨のように降り注ぐ光が、負のマテリアルに侵された鳥達を灼き払った。
普段は後衛に陣取るトリエステも、果敢にフィラートを鳥達に接近させる。
「ちょっと無茶して突っ込んで、木を運ぶ面々から注意を逸らす方向で頑張ってみましょうか。よろしくお願いね、フィラート」
言いながら、銀霊剣「パラケルスス」を媒介にマテリアルを練り上げていく。高い魔法命中力を誇る彼女は、飛行中であっても難なく術を紡いだ。
「巻き込みの危険はナシね。遠慮なく行くわよ!」
現したのは巨大な火球。鳥達は悲鳴代わりにジュッと音を立て炭と化す。
そんな先輩の姿に奮起したリブ、
「流石お姉様! よ、よしっ、私だって」
接近する鳥を認めると弓を構えようとした。しかし手綱を取るのもやっとな有様なのだ、途端にリブの乗る飛龍から伸びたロープがたわんだ。慌てて手綱を取り直すも、迫ってくる敵を前に焦りうまくいなかい。半泣きになったその時だ。リブの眼前に、オーラが描く不完全な翼が広がった。次いで獣機銃の発砲音が耳を劈く。
「……何事もなく終われば御の字、だったんだがな」
クランだ。他の新米達にも聞こえるよう、トランシーバーへ告げる。
「お前達はそちらに専念していろ。浮き足立ってソレを落とされたら苦労が水の泡だろう?」
「でも私達も何か、」
リブの言葉を最後まで聞かず、クランはワイバーンを前進させる。そして敵の囲みの一角へファイアブレスを喰らわせた。言葉少なな彼だが、オーラの翼を負うた背は『任せておけ』と雄弁に語っていた。
「かっけー……」
そんな彼の振る舞いに感激したのは、少女達よりもむしろ同性の双子達だった。クランが龍園で兄貴と呼ばれる日も近いかもしれない。
さておいて。
ロートのブレスで後方の敵に先制したブリジット、なおも迫る個体を見据えた。
「私が相手です」
構えた「虎徹」の刀身が、北方の陽を受け白銀に照る。刃が明るいのは名刀の証。居合で抜刀しようと考えていたのだが、ワイバーンは飛行中、サブ行動・メイン行動いずれかで移動しなければ飛び続ける事ができない。メイン行動で攻撃を試みる以上、サブ行動を移動に当てざるを得なかたのだ。
「交流の為にここまでしてくださった龍圏の皆さんに手は出させません。今度は私達の番ですからね」
剣心一如で呼吸を整え、ロートを加速させる。そして敵とすれ違いざま、電光石火の早業で一刀両断斬り捨てた。
次の瞬間、日差しに一瞬の陰りが生じた。龍騎士達は思わず頭上を振り仰ぐ。太陽を背にし垂直に滑空してくる影がひとつ――マリナだ。肢体に蒼いデータ片を纏わせた彼女は、リアサイトを覗き込む。
「“……アルフェウス、エンゲージ”――護衛対象より7時方向の敵へ狙撃開始をする」
そして重機関銃「ラワーユリッヒNG5」に冷気を込め、素早さだけは侮れない敵を容赦なく凍てつかせていく。
「ドッグファイトは非常に良好。気分が高揚する」
唇がうっすらと笑みを刻んだ。
戦いは一方的だった。当然だ。相手は雑魔化したとは言え鳥、此方は青龍の眷属ワイバーン。それを駆るのは歴戦のハンター達なのだから。だがその数と身体の小ささが厄介だった。的が小さい分当てづらい。
「ちょこまかとぉっ。これでどうだーっ!?」
グレイアのブレスで応戦していたレムだったが、ついに業を煮やした。堅守発動――構えを取り、身体からマテリアルを放出。残っていた鳥達の目が残らずレムに引き寄せられた。てんでに散っていた鳥達が殺到する!
「アーくん、皆っ、ご準備よろしーっ? 狙って狙ってー!」
全員群がる敵を射程に収めるべく動く。そして――
「3,2,1……グレイアくん急降下ーっ!」
レム、接敵直前一気に降下! レムを巻き込む危険がなくなり、全員一斉にブレスや火球、弾丸をぶちまける! そして降下を終えたレム、拳にマテリアルを漲らせ真上へ拳を繰り出した!
「いっくぞぉー、せーりゅー翔咬波ぁ!」
水の気の渦が、天を指し駆け上った。
●To be continued.
圧倒的勝利を収めた一行は、無事にもみの木を持ち帰った。トリエステはホットコケモモ酒片手に、もみの木を見上げほっと一息。
「龍園にクリスマスがくるのねぇ」
そこへリブ達が駆けて来る。
「お姉様ぁ、お聞きしたい事がぁ」
「はい? ゲームの攻略法? それはちょっと」
一転、少女達から逃げ回るはめになった。そこへ意外な助け舟が入る。マリナがリブを呼び止めたのだ。
「リアルブルーにおけるクリスマスでは、プレゼントを贈るのが通例と聞く。受け取ってもらえると幸いである」
そう言って彼女が差し出したのは、スペルボウ「フェリメント」と破魔矢の一揃え。
「こっ、こんな立派な物……!」
リブは戸惑ったが、マリナの強い意志の篭った眼差しに頷くと、両手で恭しく受け取った。
「きっとずっと、大事にします!」
顔を真っ赤にして涙目になるリブに、マリナの頬が綻んだ。
一方、レムは木の幹に触れ、亡き師に思いを馳せる。
「ししょーもこっちに来て初めてクリスマス知ったのかなー……」
「そうかもしれないね」
頷くのは、共に教えを受けたアークだ。その横顔を盗み見ながらレム、
(去年はアーくんとお散歩に行ったんだっけなー……って、そういうのは今はいいかっ)
「アーくんはシャンカラさんとお話しておきなよっ。こーいう時しか中々時間取れないですしな!」
「? そう?」
不思議そうに、それでも素直に離れていく幼馴染の背中に、レムは去年の思い出を重ね見て小さく息をついた。
アークはシャンカラに歩み寄ると、持ってきたお守りをその手に乗せる。
「えっと?」
「確かこの時期が君の誕生日だったよね。気休め程度だけれど、厄除けのお守り。よければ」
「あっ!」
シャンカラはすっかり自分の誕生日を忘れていた。
「……忙しいんだろうけれど。無理はだめだよ?」
「ありがとうございます、頂いたお守りで百人力です! もっと頑張れそうです!」
「いや、無理は……」
嬉しそうにお守りを眺める横顔に何も言えなくなって、アークは苦笑いを浮かべた。
ブリジットとクランは、突如広場に現れたもみの木にはしゃぐ、龍園の子供達を眺めていた。
「ふふ。喜んでもらえたようですね」
「そうだな……飾り付けは別の班の担当だったか」
「えぇ、きっと素敵になるでしょうね」
今頃別のハンター達が、龍園の民にクリスマスの飾りや料理についてレクチャーしているはずだ。
いよいよ龍園に初のクリスマスがやって来る。
それはまた、次のお話〈依頼〉。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 トリエステ・ウェスタ(ka6908) ドラグーン|21才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/12/12 00:12:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/08 00:48:45 |