王都第七街区 調査官、救出─籠城事件─

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/12/15 19:00
完成日
2017/12/22 03:48

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 王都『第七街区・ドゥブレー地区』の祭りの会場で発生した『刻令ゴーレム暴走事件』は、ハンターたちの活躍によって誰にも知られることなく終息した。
 祭りの出し物として行われた劇の『登場人物』として役をこなしていたその暴走ゴーレムは、ハンターたちの機転によって舞台上で、劇中のこととして倒されたのだ。
「これはいったいどういうことだ!?」
 終幕後、地域の復興担当官ルパート・J・グローヴァーが気色ばんで、地区の『自治』を任されている『地域の実力者』ドニ・ドゥブレーに詰め寄った。
 貴族の子弟で王都の役人でもあるルパートはこの地域で多くの権限を有していた。『ゴーレムを用いた演劇』も彼がねじ込んできたパフォーマンスであり…… 今回のゴーレム暴走事件も、王都第七城壁の建設および上水道整備計画──第七街区の難民たちの為に行われている公共事業への刻令ゴーレム『Gnome』導入を巡る利権が絡んでいると思われた。
「まさか、ドニ。お前が手引きしたわけではあるまいな?」
「冗談じゃありません。うちの縄張りでこんな、堅気の連中に危害が及ぶような真似…… 俺らの面子に関わります」
 答えたドニのその声音にルパートは声を詰まらせた。確かにドニは「難民たちの職が奪われる」とゴーレムの導入には反対する立場ではあるが、だからといってこのような事件を画策するほど悪辣ではない。そも事件を解決したハンターたちも、万一の際に備えて彼が事前に配置していたものである。
「……ともかく、ケジメはきっちりつけさせてもらいますよ。しでかした輩には」
 宣言しながら、ドニはうんざりしたような視線をジャック・ウェラーに向けた。
 ジャックは、この地区に進出する新興商人たちの『商人連合』を束ねる『ノーサム商会』の『番頭』である。ノーサム商会は新興商人たちの中では比較的大資本であり、証拠こそないものの、この地区における商売の独占を狙って裏で色々とアコギなことをやっているとの噂もある。

 後日、正式に暴走ゴーレム事件に対する調査が開始された。
 最も調査に熱心だったのは復興担当官のルパートだった。Gnomeが導入されれば莫大な利権がもたらされる彼にとって、それをぶち壊しにし兼ねない今回の事件はなんとしても解決されねばならないものだった。
 その調査に際し、ルパートは刻令術の専門家を調査チームの一員に加えた。ハルトフォートからグラズヘイム王立学校へ臨時講師(工兵科・砲兵科兼任)として出向してる刻令術師エレン・ブラッドリー。そして、随伴を申し出たジョアン・R・パラディールの二人である。
「そもそも、ゴーレムを『暴走』させるなんて可能だっけ?」
「無理。GnomeやVolcaniusといった機体は確かに、運動系や感覚系といった部分では元となったゴーレムの刻令術を流用してはいるけれど、自律行動に関する部分は最低限の機能だけを残してオミットしてあるから。移動、攻撃、防御、反撃等のコマンド化された単純な戦闘行為ならともかく、『暴走』と呼ばれるような自律的な戦闘鼓動は不可能なはずだよ」
 王都郊外の練兵場から第七街区へ向かう馬車の中── 事件の概要が記された書類を捲りながら尋ねるジョアンにエレンが答える。
「じゃあ、今回の『暴走ゴーレム』の挙動はいったいどういったわけだろう?」
「おそらく刻令術の『外付けのコマンド群』が原因だろうと私は踏んでいるんだけど……」
「『外付けのコマンド群』?」
「そう。歩く、走る、動く、知覚する、といったマクロな基本動作は元となったゴーレムの刻令術を利用しているんだけど、『穴を掘る』とか『大砲を照準する』とか言ったより細かくて専門的な動作は、その動作に最適化した刻令術を外付けで追加しているの。GnomeとVolcaniusで出来ることが違うのは、この外付け部分が違っているから。……で、今回の『暴走』したっていうゴーレムは『演劇』をしていたんでしょ? つまり、芝居の演出に合わせた動作がパッケージ化されていたはずだから」
「……ゴーレムで『演劇』ねぇ。今はそんなことまで出来るんだ……」
 感心したのか、呆れたのか──ジョアンはそんな感じの息を吐いた。砲戦ゴーレムの開発の際には、その動きを砲戦に最適化するだけでも随分と苦労したというのに……
「そうやって先人の苦労を敷いて物事は進歩していくんだよ。あの頃と比べて今は開発環境も随分楽になったし…… 王女殿下の肝入りでだいぶ刻令術師も増えたしね。これからの刻令術師はそういった仕事も増えていくんじゃないかな」
 エレンの言葉に、ジョアンは「たいしたものだなぁ」と感慨深く呟いた。外付けのコマンド群── これの拡充次第でゴーレムに出来ることは確実に広がり、向上していく。
「ん……? 待てよ? 外付けのコマンド群が原因ってことは……」
「そう。ゴーレムは最初から『暴走』なんてしていない。事前に組み込まれたコマンドに従って動いていただけ──つまり、そこには人の意志が介在している」
 それも実際に調べてみれば分かること── 第七街区に辿り着いた調査隊は、早速、事件を起こした機体の保管場所へと向かった。
 だが、エレンたちは証拠のゴーレムの刻令術を調べることはできなかった。前日深夜、謎の武装集団の襲撃を受け、機体は完膚なきまでに破壊されてしまったからだ。見張りについていた役人たちの数人が犠牲となった。
「こいつは……」
 いよいよきな臭くなってきた──戦慄するジョアンに対して、エレンは「まだよ」と呟いた。──ゴーレムに芝居の『振付』をした刻令術師が存在するはず。その身柄を抑えられれば……
 すぐに劇団員の聴取が行われ、ゴーレムの振り付けを依頼した刻令術師が判明した。ジャック・ロブソン──エレンの同期の若い刻令術師だった。
 第七街区に仮住まいをしているというジャックを訪ねて、安いアパートメント(集合住宅)へと向かう。
「ちょっと、ジャック! あなた、いったいどんな仕事をしているのよ!?」
 同期の気安さでノックもせずに室内に踏み込んでいったエレンは、後ろ手に縛られて床に転がった昔馴染みのジャックの姿と。突然の乱入に目を丸くしている複数の武装した男たちを目の当たりにして…… 「え?」と小さく呟いた。

「捜査の為、王都より派遣されてきた調査官が2人、謎の武装集団によって拘束されました。犯人たちは重要参考人たる刻令術師と調査官たちを人質に、現場のアパートに立てこもっています」
 事件の第一報を知らされたドニは、嘆息しながら頭を押さえた。
 そして、近場にいるハンターたちを呼ぶように指示を出した。
「彼らに人質たちの救出を依頼しろ。決して役人たちには突入させるな」

リプレイ本文

 ゴーレム暴走事件から引き続きドニの依頼で調査に当たっていたハンターたち──エルバッハ・リオン(ka2434)、サクラ・エルフリード(ka2598)、J・D(ka3351)の3人もまた、エレンたちと同様に刻令術師ジャック・ロブソンの存在へ辿り着いていた。
 そして、事情を聴取しようと訪れたアパートにて人だかりを発見し…… そのジャックを人質にした籠城事件の発生に、同様に頭を抱えていた。
「王都の役人たち、ですか。薄々予感はしていましたが、面倒なことになりましたね。対処を間違えたら色々な所から余計な介入を招きそうです」
「旦那(ドニ)の面子としても、シマのイザコザは手前でシメるのが筋だと考えているだろうが……籠城事件ともなると、俺ら3人だけでは手が足りねぇ」
 野次馬たちの後ろの方でこそこそと会話を交わすエルとJ・D。エルフリードが少し考える素振りで小首を傾げ……「一人なら近所に伝手があるのですが」と友人の予定を思い出しつつ、2人に告げた。
「呼び出せ、呼び出せ。今は猫の手も借りてぇ。俺も一人心当たりがある。エル、あんたの方はどうだ?」
「私ですか? メイムさん以外で他にこの辺りに来ているハンターとなると……」
 悩ましく眉根を寄せたエルの視線が何となく野次馬たちに流れ…… ふと見知った顔を見つけてピタッと止まった。
 人込みの中をぴょんこぴょんこ跳ねてアパートの様子を伺っていたアシェ-ル(ka2983)が、気づいてそちらを振り返る。
「え? なんです? 事件ですか? ……って、エルさんじゃないですかぁ!」
 瞬間、笑顔を輝かせながら、ダッシュでエルへと駆け寄り、その腕に抱きつくアシェール。「……探せば案外、近くにぞろぞろいるかもな……」とJ・Dが呆れたように呟いて…… 3人と1人はハンターたちを探して周囲をグルリと一回りしてみることにした。
 その結果──流石は第七街区。ゴタゴタに事欠くことはなく、ちょっと探しただけで依頼終わりやボランティアのハンターたちが結構いた。
「なんというナイスなタイミング! 『ナイトカーテン』を習得したばかりだから、ちょうど使ってみたかったんだよね!」
「人質事件たぁ穏やかじゃねーですねぇ。きなくせーことになってやがるみてーですし、ここは聖職者として一肌脱がねぇと」
 宵待 サクラ(ka5561)とシレークス(ka0752)の2人は二つ返事で協力を約束してくれた。
 元海軍大尉、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は難しい顔をした。
「……人間の悪事にわざわざ首を突っ込む義理はないんだがな」
「仕事よ。お願い、コーネリアさん」
 J・Dから事件のあらましを聞いたメイム(ka2290)が、真剣な表情で頼み込んだ。……人質たちの中にはジョアンもいるという。メイムにとっては砲戦ゴーレム開発を共にした仲だ。
「……仕事か。ならしょうがないな。……ただ、ひとつ忠告だ、『参謀』殿。必要以上に他人に肩入れすると、いざという時に判断を誤るぞ」
 そう言うやすぐに情報を収集するべくクルリと背を向けるコーネリア。メイムの方にその態度を気にした様子はなかった。むしろ礼を言って皆を振り返る。
「襲撃犯は全員生け捕りにして、雇い主のことをはかせたいところよね。じゃないとトカゲの尻尾切りで終わるわ」
 事件解決の為の方針について、メイムが真っ先にそう言った。J・Dもまたニヒルな笑みを浮かべて賛意を示す。
「捕まえたら俺たちで取り調べをしちまおう。役人どもに引き渡すのはその後だ」
「え……? 大丈夫なんですか……?」
 エルの後ろからおずおずとアシェールが尋ねた。
「なに、この辺りの治安を『委任』されているのはドニの旦那だ。旦那の依頼を受けた俺たちが恙無くコトを収められりゃァ難癖も付けられめえ」
 そう答えると、J・Dはさっそく役人たちを訪れ、まずは自分たちが事に当たることを本当に飲み込ませてしまった。
「では、次は実際の対応策についてですね。私は『スリープクラウド』が使えます。その成功率は『集中』で強度を上げて……ゴブリン相手なら8割ってところでしょうか」

 ………
 ……
 …

 方針を定めたハンターたちが、行動を開始する。
 最初に動き出したのはシレークスとエルフリードだった。彼女らは教会から普通の修道服を持ってくると、完全非武装の修道女として交渉役を買って出たのだ。
「どぉれ。やってやがりますか」
「さて、上手いこと中に入れてもらえると良いのですが……」
 戦闘の意志はないことを示しながら、真正面から堂々と近づいていくシレークスとエルフリード。それを野次馬たちの中にまぎれたアシェールが側方からワクワク見守り。その傍らで宵待が、北側の小さい窓が、自分が飛び込める大きさであるかを、見張り役の犯人との対比で慎重に目測する。
(……狭いけど何とか通る、よね? お尻がつっかえなければ良いんだけど……!)
 銃声が鳴り響き、野次馬たちから悲鳴が上がった。足元への威嚇射撃に、修道女2人が足を止める。
「何をしに来た? 用件を言え!」
「役人の方たちに事情を伺い、交渉役としてやってまいりました。聖堂教会のシレークスと申します」
 磨きをかけたシスタースマイルでにっこり微笑み返す修道女。その内心では「さぁ、自分たちを人質の傍まで招き入れるのです……!」と手ぐすね引いている。
「……。私はサクラ・エルフリード。まずは中に入れてもらえませんか? 人質の方々の無事を確認したいのです」
「ダメだ。交渉ならその場でしろ」
 シレークスとエルフリードは顔を見合わせた。何よりも優先するべきは人質たちの身の安全──このままでは突入時に危険が残る。
「……私たちと人質を交換するというのはどうでしょう? 私たちは聖職者です。人質としての価値は私たちの方が高いと思うのですが……」
 両手の指を組んだ腕で修道服の下の豊かな双丘を強調しつつ、何重にも猫を被って懇願するシレークス。しかし、立てこもり犯は彼女らが中に入ることを頑として認めない……

 その頃、コーネリアは住民の許可を取った後、北側の見張りの死角からアパートの東隣りの部屋へと侵入を果たしていた。
 足音のし難いサンダルへと履き替え、床の軋みも最小限に部屋の間取りを確認する。
「……扉の中はエントランスとキッチン。中央にリビングがあり、南側は大きな窓付きの寝室となっている。一間でそれぞれの間に敷居は無い。隣りの部屋との間の壁は木製で脆そうだが、人ひとりが通れるだけの穴を瞬時に開けられる手段がな……」
 無線越しに小声で皆に報告し、コーネリアは南側の窓から外を見た。
 アパートの南側には小川が流れ、川べりからアパートへせり上がるように土手の斜面が続いていた。
 そして、その土手の下側を、メイム、J・D、エルの3人が、南側窓の見張りに見つからぬよう慎重に、西側から匍匐で近づいていた。
(あんず、行って……!)
 頬まで土塗れにしたメイムの指示に、桜型妖精のあんずがエルの式神を両手に抱えて土手の上へと飛びだした。見張りのいる南の窓の下を通り過ぎ、東側の窓から隣室に入ると、コーネリアの頭の上に止まってホッと大きく息を吐く。
 コーネリアはそのまま椅子の上に立つと、天井の板を持ち上げた。あんずはそこから屋根裏へと侵入すると犯人たちが立て籠もる部屋の真上へ移動して、造りの粗い天井の板と板の隙間にそっとエルの式神を差し入れて『空挺作戦』を完遂させた。
「……確認しました。北側と南側の窓に魔導銃を持った見張りが1人ずつ。人質の3人は中央のリビングに。そのすぐ傍に抜き身の剣を手にした男が2人います」
 式神と視覚を共有して確認した中の様子を、エルは無線で皆に伝えた。
「了解。……コーネリアさん。窓の奥の見張りを引き出すから、中の犯人の制圧をお願い」
 メイムは無線に囁くようにそう伝達すると、コーネリアが隣室の南の窓から外に出たことを確認した後、J・Dに一つ頷いた。
 応じて、J・Dは拾った石を川面に向けて投げ入れた。蛙が飛び込んだようなポチャリという音が鳴り、その物音に南の見張りが窓から顔をのぞかせた瞬間。カッと目を見開いたメイムがその手にマテリアルの鎖を出現させる。
「伸びろ、ドローミ!」
 放たれた鈍色の鎖が、敵に対応する間も与えずその身へ絡みついた。メイムがグイと鎖を引き、マテリアルの力によって窓から引き出された見張りが宙を舞い、強かにその背を地面へと打ち付けた。
「おっと、動くなよ? こんな季節に身体に穴なんざ開いたら、風通し良すぎて風邪ひいちまうぜ?」
 すかさず見張りに銃を突きつけ、敵の得物を投げ捨てながらロープで拘束作業に入るJ・D。その時にはもう身を起こしたエルが舞い上がった枯草と共に土手を駆け上がっていた。一足早く南の窓に取りついたコーネリアが「Freeze!」と叫びながら、室内の賊へ向かって威嚇射撃を撃ち放つ……

 一方、北側──
 南の見張りが上げた悲鳴とその後の銃声に北側の見張りが慌てて背後を振り返った時。北側のハンターたちもまた同時に行動を開始した。
「人質には手は出させません。こちらを見なさい……!」
 修道服の袖を捲って筋肉を盛り上げながらのエルフリードのマッスルポーズ。そこから溢れ出したマテリアル光が見た者に精神汚せn……もとい、作用を及ぼし、その視線を釘付けにする。
「なんという美しいマッソォ!」
「まだちびっこい娘さんだというのに……!」
 ざわつく野次馬たち。北の見張りが悲鳴を上げながらエルフリードへ発砲し……
「ふんッ!」
 だが、その銃撃は盛り上がった筋肉と『ホーリーヴェール』の合わせ技により弾き返された。
「そんな柔な攻撃…… 鍛え上げた筋肉の前には効きません!」
「バカな……!」
 そんなやり取りをよそに扉へ走るシレークス。そちらへ銃口を向けた立て籠もり犯は、しかし、野次馬たちの中から飛び出してきたアシェールによって阻まれた。
「いきますよー? 『エクステンドレンジ』からの……『アースウォール』!」
 魔術具たる漆黒の傘をクルクル回しながらその周囲に桃色の幾何学模様を浮かび上がらせたアシェールが、なぜか何もない地面に蹴躓きながらも魔法を発動。見張りとシレークスの間に地面から土壁を出現させる。
「なにぃ!?」
 眼前に聳え立った土壁に、見張りは驚愕の叫びを上げた。……どちらから来る!? 右か、左か?! ……結論から言えば、下から来た。
 今から10秒前、Goサイン直後に『ナイトカーテン』を発動させた宵待がスタタタタ、と窓の下へと走り込んでいたのだ。その姿は見張りの視界に捉えられていたはずなのだが、マテリアルオーラですっぽりとその身を覆った宵待のことを認識することができなかった。
 窓の下から伸びてきた2本の腕が、男の銃を持つ腕と襟首を掴み上げ。直後、宵町は一本背負いの要領で見張りを窓から引っ張り出し、その背を地面へ叩きつけた。
 そこへ土壁をぶち破ってきたエルフリードが倒れた男の金的を蹴り上げ、無力化し。慌てて身を起こしたアシェール(←鼻が赤い)が「この私が通りかかったのが運の尽きですよ!」と高笑いする。

 抜き身の剣を提げたまま人質を確保するべく駆け寄らんとしていた1人の籠城犯は、コーネリアが放った威嚇射撃によって慌てて遮蔽物に身を隠した。
 その頭を抑えるべく立て続けに銃を発砲するコーネリア。そこへ南の窓へと辿り着いたエルが窓枠から顔を出し、素早く視線を振って室内の様子を確認すると、逸る鼓動と対照的に水面の如く意識を『集中』し。犯人たちを無力化するべく『スリープクラウド』を発動させた。
 瞬間、リビングを中心に青白いガスが雲状に広がり、その魔力に捉われた人質たちと犯人が一瞬で眠りの世界へと誘われる。
 犯人の一人は抵抗した。瞬間、北側のドアがシレークスによって「どりゃあ!」と蹴破られた。
 慌てて振り返った犯人を無視して駆け寄り、人質たちの上に覆い被さるシレークス。その背に切りつけようと剣を振り上げた犯人は、しかし、眼前を通り過ぎた苦無にその身を仰け反らせ…… 直後、北側の窓を水泳選手の如くスルリと跳び抜けてきた宵待がそのまま苦無に紐づけしたマテリアルを手繰って宙を飛び。空中をすれ違いざま、剣の鞘で犯人の顔面を殴打する。
「ガッ……!?」
 思わず目を閉じ、鼻血を出した犯人を、南の窓枠を飛び越えたコーネリアがベッドを踏み台にリビングへと侵入。後ろから襟首を掴んで犯人を床へと引きずり倒した。
「チェックメイトだな。格の違いを思い知ったか、小悪党ども? 普通の相手なら有効な策だったかもしれんが、ハンター相手にはそうはいかんぞ?」
 犯人に銃口を突きつけ制圧しながら教導するように告げるコーネリア。もう一人の犯人は目を覚ました瞬間、顔面に宵待の膝を受け…… 直後、和服の裾から健康的な生足を伸ばしてマウントを取った宵待に、自殺防止の布切れを口へと突っ込まれた。
「1人確保ー。……でいいんだよね?」
 その暢気な声に、エルは引き抜いていた『風雷陣』の符を下ろしてフゥ、と一息吐くと、犯人たちを捕縛するべくロープを手によいしょと窓を乗り越えた。
「安心してください。この私がいる限り、あなたたちには指一本ふれさせねぇです」
 眠ったままの人質たちに、シレークスがホッと呟いた。


 どうやらハンターたちは無事、作戦を成功させたらしい── 次々と部屋へ侵入していくハンターたちを見やってそう判断した役人たちが、事件関係者の身柄を押さえるべく一拍遅れで一斉に突入を開始した。
 北の出入口から室内に入り込もうとした彼らは、しかし、部屋の中から出てきたアシェールが張った不入の結界──『ディバインウィル』の見えざる壁に阻まれた。
「おい、何をしている! 道を開けろ!」
「今、ハンターたちが立て籠もり犯と戦闘中です! 逃がさないように結界を張りました! 褒めてください!」
「いいから、そこを……」
「いやー、私たちハンターがたまたまこの場に居合わせてよかったです! 良かったですよね? そして、その私たちに協力を要請したドニさん? の素晴らしい決断!」(←聞いてない)
 役人たちの前で偉そうに胸を張るアシェールの後ろの死角で、ハンターたちが室内に引き込んだ犯人たちを尋問する。
「ふふ……覚悟はいいですかねぇ?」
「言いなさい。あなたたちの目的は? この仕事を頼んだのは誰?」
 犯人たちは顔を見合わせ、観念したように呟いた。依頼は刻令術師ジャック・ロブソンの拉致。依頼人については聞かされていない。
 そのJ・ロブソンは寝ていたところを叩き起こされ、依頼人について尋ねられて、眠気眼でこう言った。
「ん……確か僕と同じ名前の男だったような……」

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 7
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/14 19:43:29
アイコン 相談です・・・
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/12/15 18:12:45