反逆のおばちゃん達:収穫祭編

マスター:T谷

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/11/28 19:00
完成日
2014/12/11 09:08

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●芋祭

 ゾンネンシュトラール帝国にも【Ernten Sie Fest】……つまり【収穫祭】は存在している。
 しかし他領土に比べると作物の産出が少ない帝国に置いて、その意味合いは少しばかり違っていた。

 寒い冬を乗り切るための準備期間、帝国に暮らす者達は特に忙しく立ち回る。
 冬を乗り切るために家畜の数を減らしヴルストをしこたま作ったり、芋を備蓄し。
 乾燥食材や保存食を作り、芋を備蓄する。
 アクアヴィットを作ったりカルヴァドスを作り、芋を備蓄するのだ。

 そして冬を越せる量を蓄えた後、その余剰分を使って『ぱぁーっと騒ぐ』のだ。
 それは帝都や師団都市と言った大きな街に限らない。規模の小さな集落においても同じことがいえた。
 これが帝国民にとっての年に一度の『お祭り』と呼べる行事で、人々に【芋祭】として親しまれていた。



「うぃーっす」
 腹をボリボリと掻きながら、タンクトップに短パン姿の第二師団長、シュターク・シュタークスン(kz0075)が長身を屈めて食堂の入口を潜った。ずぼらな性格の割に朝は妙に早いらしく、厨房では食堂のおばちゃん達が朝食の準備を始めたところだった。
 師団本部の一階部分に併設された食堂は、師団員たちの心のオアシスだ。今朝も、まだ早いにも関わらず既に数人の団員が静かな朝のひと時を過ごしていた。
 そんな中に団長が現れるのも、いつものことだ。しかし、そんな慣れ親しんだ光景であっても、彼女が食堂に入った瞬間、大鍋に大量の食事を用意するおばちゃん達に嫌な緊張が走った。
「おはよう団長さん、今日も早いね」
 一直線に厨房に向かって行くシュタークに、おばちゃんの一人が声をかけた。シュタークは応と片手を上げて答える。
「今日は芋と玉ねぎ、人参のスープに、自家製の黒パンを……」
「毎日言ってんだろー」
 有無をいわさず料理の説明を行うおばちゃんだが、呆れたような表情でシュタークは言葉を遮った。
 シュタークはそのままカウンターをひょいと飛び越えると、おばちゃん達が止める間もなく厨房の奥へと向かっていく。その先にあるのは、山と積まれた食材の詰まった木箱だ。
「あたしはこれでじゅーぶん」
 そして躊躇いもなく、生の芋を鷲掴みにし齧りついた。ガリガリと、とても普通の食事では発生しない異音が響く。
「……団長さん、私らもいつも言ってるんだけど。ちゃんと調理したものを食べてくれない?」
 優しそうな雰囲気を纏っていたおばちゃんの額に、青筋が走る。
「だからいらねえっての。スープなんてこれ食って水飲みゃ同じことだろうが」
 そんな事も分からないのかと、呆れ顔でシュタークは二口ほどで芋を一個食べ終え、その横にあった人参にも手を伸ばす。当然それも生で、採れたてなのか僅かに土さえ付いている。だが、気にせずまたガリガリと齧り始めた。
 そうして、みるみるうちに木箱の中身は減っていく。
「……お腹、壊すわよ」
「あっはっは。生まれてこの方、壊したこたねえから心配すんなよ」
 おばちゃんの目に宿っていく剣呑な光に気づかずに、シュタークは豪快に笑った。
 そしてその言葉を聞いた次の瞬間――おばちゃんの怒りが、爆発した。
「心配なんかするかぁ!」
「あん?」
「もうイヤ。何でここには、家の旦那も含めてこんなガサツなのしかいないの! 炊事洗濯家事全般、やってあげても文句ばっかり! 味が濃いだの薄いだの! 自分で作りもしないで偉そうに言うなっての! あんた達の適当さにはうんざりだわ――革命を起こすわよ! 料理がどんなに大変で神経を使うのか、思い知らせてやる!」
「お、おう……」
 あまりの剣幕に、シュタークすら引き気味だ。しかし、厨房に集まるおばちゃん達は、皆が一様に大きく頷いている。
 こうして、おばちゃん達は団に正式な要請を出した。
『師団員を対象にした、料理教室の開催を提案する』と。



 第二師団副団長、老兵ハルクス・クラフトは、上がってきた一枚の書類を手に考え込んでいた。書類の内容は、料理教室の開催要請だ。
 確かに、第二師団員にまともな生活能力がある者は少ない。兵站の重要性を理解している者も、どれだけいるものか。今でこそ大規模な遠征を行うことはないだろうが、それでも、いつ何時そんな状況に陥らんとも限らない。
 糧食の質は、部隊の士気に直結する。実際に戦場で兵達が自ら料理を行う、などということはそう無いだろうが、そういった経験があるかないかではやはり様々な意識に違いが出てくるだろう。
 ちょうど良いことに、第三師団から【芋祭】についての提案が上がってきている。
 絶賛発展途上中のカールスラーエ要塞では、今まで祭りを行う余裕もなかった。しかし今年の初めに都市の隅に農場が完成し、今年はそれなりの量の野菜を収穫出来ている。
 いい機会だ。
 兵の意識の向上。ボランティアで団の手伝いをしてもらっているおばちゃん達の不満の解消。そして、数年の間に急ピッチで行われた都市の再興によって溜まったであろう負のマテリアルを、お祭り騒ぎで浄化する。
 様々なことが、今の団にとって良い方向に働くことだろう。ハルクスは一人頷いて、書類に認可の判を押した。



 その日、師団本部前の広場は大勢の人で賑わっていた。芋祭会場設営のために、団員たちが駆り出されているのだ。
「おーい、ちゃんと持ってろよー」
「……ん、ああ、ごめん」
 その中で第二師団一等兵のヴァルターとオウレルも、食堂から大きな机を運び出す役目を授かっていた。この机で既に五つ目。流石に覚醒者の二人にも疲労の色が見える。特に、端正な顔立ちのオウレルは、どこか虚ろな表情で作業にも身が入っていないようだ。
「にしてもよー、なんだって料理なんてしねえといけねえんだろうな。食うだけの祭りだったら大歓迎なんだけどな」
「……うん」
 ヴァルターがいくら話しかけても、オウレルの目は虚空を見つめるだけだった。
「おら、お前らしっかり働けよー」
 同じく作業に参加していたシュタークから、広場の団員に激が飛ぶ。彼女は他の団員が二人で運ぶ机を、両肩に一つずつ乗せて、軽々と運び出している。
「はー、やっぱ団長すげえわ。あのパワーは憧れるわな、女としちゃどうかと思うが」
 ヴァルターの軽口に、オウレルの反応はない。
「おい、さっきからどうしたよ。……オウレルお前、まさかスザナ副団長派なのか? Mなのか?」
 スザナ。その言葉にオウレルの頬がピクリと動く。
「おお、お前その反応!」
「……いいから、早く終わらせちゃおうよ」
「ちょっとは話に乗れよなー。ま、団長に怒られたくもねえし、ちゃっとやっちまうか」
 そう言ってようやく、ヴァルターは設営に集中し始める。
 オウレルはそんなヴァルターを横目に、机を雑に置いて食堂のおばちゃんに怒られているシュタークを眺めていた。
 その目の奥に、暗い光が灯っていることに気付く者はいない。

リプレイ本文

 師団本部前広場には多くの人が集まっていた。祭りの名に相応しく、賑やかで楽しげな声がそこかしこから響いている。
『えー、本日はー、おひがらもよくー、集まっていただいたみなさまにはー……』
 魔導拡声器を通して聞こえてきたのは、師団長であるシュタークの声だ。辿々しい挨拶は、彼女が嫌々その役を担っていることがよく分かる。
『……なあ、これあたしがやらなきゃ駄目か?』
 挙句の果てには、脇に控えた老兵ハルクスに、拡声器に声が入っていることも気にせず問いかける始末。
 そんなこんなで祭りは始まる。皆で芋を食べまくるのだ。



 祭りの会場は大凡、二つの区画に分けられる。
 一つは本部正面に位置する調理区画。簡易的な調理台が多数設置され、誰でも料理を作り振る舞うことが出来る。
 もう一つが、広場の隅で開催される料理教室だ。ここでは多数のおばちゃん達による料理講座が行われていて、一般の参加も歓迎されている。
「ほんっと、男共って勝手よね! さあ、お姉さん達、思い知らせてやりましょう!」
 その料理教室は、今、熱気に包まれていた。おー!と拳を振り上げて、まるで戦闘前の様相だ。
 陣頭で指揮を執るのはヴィンフリーデ・オルデンブルク(ka2207)。過去の思い出から来る共感により、自ら講師を買って出ていた。
 彼女の熱に浮かされて、おばちゃん達も熱くなる。そのやる気に、受講する師団員達はうんざり顔だ。
 教室が始まれば、熱のこもった講義の前に師団員達の料理のできなさが容赦なく露呈した。殺すために刃物を振るうのは大得意でも、芋の皮一つ剥くのに苦労する。
「ちょっとそこ、さぼってんじゃないわよ! 芽はきちんと取るっ、戦場で食中毒なんか出したらどうするつもりなの!」
 そして少しでもやる気なさげな参加者がいれば、すぐさまヴィンフリーデの喝が飛ぶ。
 指摘を受けた師団員は、渋々と作業に入った。
「へいへい……って、どうすんだこれ」
「お手伝いしましょうか?」
 そう言って、ひょこと調理台を覗きこんだのは、エルバッハ・リオン(ka2434)だ。
 おばちゃん達の気迫に下手な雑魔以上のそれを感じながらも、彼女らの手が回らない部分のフォローを行おうとリオンは教室に参加していた。
「ん、いいのか?」
 問いにリオンは、構いませんよと答える。
 そこから、包丁、材料の持ち方、皮の剥き方……とてきぱきと指導をしていく。
「……!」
 しかし不意に、師団員の手が止まる。
 彼の肘に、何かが当たっていた。柔らかく、布越しながら暖かささえ感じさせて――端的に言えば、リオンの大きな胸が軽く押し付けられていた。
「どうかしました?」
 俄に固くなるその動きに、素知らぬ顔でリオンは微笑みかけた。
「ん、いやぁ」
 しかしそこで、師団員は致命的なミスを犯した。魔が差したのか、バレない程度に自ら肘を動かして、グリグリと感触を楽しみ始めたのだ。
 しばらく指導を続ける中で、しかし師団員の欲望は増していく。そうして、段々と自然体から離れて行くと、
「まあ、多少は構わないのですが……」
 リオンの雰囲気が、一変した。
「おいたがすぎれば、潰しますよ」
 殺気と共にリオンの手の中で握り潰された芋を目の前に、師団員は、ごめんなさいと呟く他に選択肢は残されていない。

「戦闘特化の第二師団……特化しすぎていて呆れるなぁ」
 ヒース・R・ウォーカー(ka0145)は、料理教室で辺りを見渡して呟いた。
 大の大人が、包丁片手に四苦八苦している。芋の皮一つ満足に剥けないらしい。
「……え、と。これ、包丁……と、お芋、野菜……」
 その横で、シェリル・マイヤーズ(ka0509)は調理台の上にある物を眺めていた。大好きな人達のために何か作りたいと参加したが、何をしたらいいのかさっぱり分からない。
「……ん、あ、これお酒だー、おさーけー!」
 そのうち、シェリルは料理酒を手に取り匂いをかぐと、丸い瞳をふにゃりと潤ませ頬を赤くしきゃっきゃと楽しそうに笑い出す。
「駄目だよー、お酒は大人になってからね。ほら、お水飲んで」
「んー……」
 ヒースから渡されたグラスをあおれば、シェリルはすっと調子を取り戻した。
 シェリルは再び調理台に向き直る。
 台の上には、多くの調理器具がひしめいている。横には数種類の食材、その奥には、見た目は殆ど同じの調味料。
「え、と。ん、と……」
 未知の坩堝と化す台の様相に、シェリルはパニックを起こしかける。
「まずシンプルな目玉焼きから、かなぁ。基礎から学んで頑張っていこうか、シェリル」
 そんな彼女の頭に、ヒースは肩を竦めながらポンと手を置いた。

「……ヒース、フライパンが……燃えてる」
 何故だか酒を投入するなどの事件はあったが、目玉焼きは何とか完成した。
「シェリル、出来たかい? こっちでもサンドイッチを作ってみたんだけど」
「……食べる」
 ヒースの作ったサンドイッチを、シェリルは見ている方が幸せになるような笑顔で口にする。
 だが、ふと自分の目玉焼きと比べて思う。こんなものを食べさせられない。シェリルは皿を隠そうとした。
「ボクは、食材を無駄にしない主義でね」
 しかし皿は、ひょいとヒースに取られてしまう。
「あ……」
 ヒースは皿を傾け、さっと目玉焼きを口に入れる。
「うん、ちょっと練習が必要だねぇ。でも最初はこんなものだよ。気持ちを込めて作ったんだろぅ、なら、充分さ」
「もっと……頑張るから」
 ヒースの服をはっしと握り、潤んだ瞳でシェリルは見上げる。
「……また、食べてね」
 ヒースは笑顔で、もちろんと答えた。

 ユーリィ・リッチウェイ(ka3557)は、持参したフリフリのエプロンを揺らしながら、苦戦する師団員達に指導を施していく。
「そうそう、人差し指と親指で刃を挟むように……」
 まずは包丁の持ち方からだ。剣のように強く握っては、微細を必要とする包丁捌きは難しい。
「それで、切るときは猫の手で材料を押さえるんだよ。……ああ、ダメダメそれじゃ。相手は敵じゃないんだから」
 にこりと微笑みかけながら、師団員の手を取って丁寧に教えていく。その小さな手に、師団員達も素直に指導を受け入れざるをえない。彼らも、可憐な子には弱いのだ。
「まずは、皮を剥いて切ったポテトを茹でてみようか」
 煮立った鍋に恐る恐る芋を投入する師団員を、ユーリィは微笑ましく見守っている。
「男の子のボクでも出来るんだから、皆も出来るよ。きっと!」
「……え、男、の子?」
 ぽちゃんと、芋が鍋に落ちる音が響いた。
「まずはマッシュポテトが簡単かなぁ。火が通ったらお湯を切って……」
 魂の抜けた師団員の合間を、虚しくユーリィの指導が流れていく。

「なあ、こっからどうすりゃいいんだ?」
 やはり料理の全くできない師団員が、隣で講師を務めてくれていたエフィルロス・リンド(ka0450)に声を掛けた。しかし、返事はない。そちらに顔を向ければ、エフィルロスは立ったまま、目を半分閉じてうつらうつらとしている。
「お、おい、お嬢ちゃーん?」
「んぁ……んん、そうです。そこにお砂糖を一摘み入れてくださ、い……ぐぅ」
「いや、どこにだ」
「……ん、お芋は蒸すと、甘く、なるのです……」
「ふか……?」
 確かな料理の腕を持って教える気満々な彼女なのだが、いまいち伝わっていないのかもしれない。

 サクラ・エルフリード(ka2598)は、振る舞われている料理をもくもくと食べながら辺りを見て回っていた。
「お祭りということで来て見ましたけど……芋祭り……? ん、あっちで何かやって……ああ、料理教室なんでしょうかね」
 しかし、それにしては物々しい雰囲気だ。ざわめきや喧騒、そして、
「作らざる者食べるべからずよ!」
 時折怒声すら響いていてる。
「ついでなので私も参加してみましょうか……」
 余り得意ではない料理を鍛えるには丁度いい。サクラは早速と、空いている調理台へと足を向けた。

「包丁、か。握るのも初めてだ」
 物珍しそうに、リズレット・ウォルター(ka3580)は包丁を手にとった。
「……で、これは如何使うのだ?」
「はぁ、どこでも同じようなのはいるもんだねえ」
 真顔で尋ねるウォルターに、対するおばちゃんも呆れ気味だ。しかし、呆れながらもどこか楽しそうなのは気のせいだろうか。
 ともかく、リズレットは包丁の扱い方から学んでいく。
「何だ、切るのか。それなら出来そうだな。ん、皮を剥くのか? ……それは、難しいな」
 おばちゃんの実演を見ながら試してみるが、細かい切れ端が積み上がるだけだ。
「あら、お嬢ちゃん上手いね」
 すると、その横手でひたすら刃物を巧みに扱い皮を剥いていたサクラが、おばちゃんの目に留まった。
「う、これだけは得意なんです、けどそれ以外は……」
「そうなの? じゃ、こっち来て、一緒に教えたげるからね」
「む……」
 おばちゃんに呼ばれ、とことことサクラが近づけば、リズレットは僅かに及び腰を見せた。
 とはいえ二人は並んで、料理を習うことにする。
「刃物は、こう持つといいですよ」
「ん、習ったものと違うが……」
「あなた、それ突く時の持ち方よ?」
「え、駄目なんですか……?」
「結果が同じなら、良いのではないか?」
 そんな風にしばらく、二人は黙々と料理を続けた。



 芋の茹で上がった鍋から茹で汁を捨てると、ようやく次の工程だ。水を吸い汁気たっぷりの芋を乾煎りし、水分を飛ばしていく。
「よーし、後は味付け!」
 そして塩と胡椒を一摘み、それとパセリをぱっと振れば、リアルブルー由来の芋料理、超級まりお(ka0824)特製粉吹き芋の完成だ。
 完成した粉吹き芋を皿に盛りつけ調理台に並べれば、
「おお! なんじゃこれは!」
 その素朴な香りに、小柄なドワーフ、アルマ(ka3330)が引き寄せられてきた。
「これはね、粉吹き芋って言うんだよー」
「食べても良いのかっ?」
 アルマは、今にもヨダレを垂らしそうな顔で皿を覗きこんでいる。
「うん、まだまだ出来上がるから、遠慮なく食べてってねー♪」
 鼻歌交じりに、まりおは次々に芋を茹で上げていく。
 目の前で湯気の上がる芋に向けて、アルマは相好を崩して手を伸ばした。
「おお、美味いぞ!」
「すごい食べっぷりだねー」
 バクバクと次々に芋を胃に収めていくアルマ。それを前に、まりおは嬉しそうに次の粉吹き芋を仕上げていく。
「ぬっ?」
 不意に、アルマが鼻を鳴らした。
「また美味そうな匂いがアルマを呼んでいる……! 赤と青のお主、非常に美味じゃったぞ!」
 そう言って、アルマは手を振って走り去っていく。
「あはは、元気な子だなー。……うん、次のお皿も完成!」
 まりおは鍋の中身を皿に開けていく。
「これ、頂いちゃってもいいの?」
「はいはーい、大丈夫だよー。どんどん食べてってね!」
 空になっていく皿を横目に、まりおは鼻歌交じりに料理を続ける。



 喫茶店を預かるその腕を存分に発揮し、イーディス・ノースハイド(ka2106)はリアルブルー風の軽食を作っていく。
「それにしても、帝国の食事は芋と羊ばかりだというのは本当なんだね」
 イーディスが調理台に目をやれば、見事に茶色が主役を務めている。
 とはいえ、食材の種類は問題ではない。ポテトチップスとフライドポテトの香ばしい匂いにつられ、多くの人々が集まっていた。
「さあ、好きに食べていってくれ。飲み物が欲しくなる食べ物だから、別の屋台で仕入れて来るといい」
「好きに食べてよいのじゃなっ!」
 そして集まる人の中に、一際小さな影があった。片端から料理を食べまくっているアルマが、イーディスの元へも辿り着いたようだ。
「ああ、急いで食べて、喉に詰まらせないようにね」
「――おお! リアルブルーの料理はどれも美味じゃな!」
 満面の笑みを浮かべ、食べ進めていく。
「うん、こちらの世界とは違った発想で面白いよね」
 イーディスは華麗な手捌きで芋を刻みながら、人々から出る嬉しい感想を耳に、軽く顔を綻ばせた。
「うむ、堪能した!」
 五人前の大皿を一人で平らげてポンと腹を叩き、アルマは満足気だ。
「喜んでくれたら良かったよ。しかし、よく食べるね」
「ふっふっふ、この鉄の胃袋、侮って貰っては困るのじゃ! ともかく美味かったぞ、アルマは次の料理に向かうのじゃ!」
「ああ、楽しんでおいで」
 走り去っていくアルマの後ろ姿に微笑ましいものを感じながら、イーディスは次の料理を作っていく。そうしている内に人が更に集まり、列をなし始めた。
「慌てずとも、沢山あるからね」
 イーディスは油で揚げる時間を利用して、新たに芋を刻んでいく。



「何だか、おばさん達張り切ってますね」
 料理教室を眺めるユキヤ・S・ディールス(ka0382)の表情は楽しげだ。
 しかしふと、広場の隅の隅に座っている一人の師団員の青年が、ユキヤの目に留まった。広場を見つめる端正なその顔立ちに、暗く影が落ちている。
 ユキヤは振る舞われている料理を手に、何となく気になってそちらへ向かった。

「……宜しければ、ご一緒に如何ですか?」
「……うん?」
 青年は、声を掛けられてやっとユキヤに気付いたようだ。
「随分、不機嫌そう窺えまして……」
「ああ、すみません、気を遣わせてしまって」
 バツが悪そうな青年に、ユキヤは大丈夫ですよと微笑み、隣に座る。お互いに自己紹介を済ますと、気が紛れたのか青年も若干の明るさを取り戻した。
「この催し、気が乗らないのですか?」
「いえ、そういう訳では。少し個人的な……何と言ったらいいのか……」
 話しづらそうなその様子に、ユキヤは話題を変えることにする。
「オウレルさんも、師団長さんと同じく、料理は余りされないのですか?」
「……いえ、ここでは、僕は出来る方ですね。実家で、色々と習っていたもので」
 オウレルは穏やかに語る。しかしユキヤは、師団長という言葉に一瞬、オウレルが反応を見せたことに気付いていた。
 触れて欲しくはないのだろう話題に、態々触れることもない。ユキヤとオウレルは、遠くから聞こえる喧騒を感じながら、ゆったりとした時間に浸るのだった。



 参加者を増やし、更に熱を帯びていく料理教室。祭りの中で異質なその光景を、ライナス・ブラッドリー(ka0360)は一人、遠巻きに困惑混じりで眺めていた。
「……収穫祭ってことなら分かるが、あの料理指南集団は何だ?」
 どうやら一人のハンターが陣頭に立っているようだが、ライナスは何故だかそこに戦の匂いを感じた。
 その雰囲気に戦慄を覚えつつ、ライナスが広場を一通り見て回っていると、
「と、其処に居るのはnil(ka2654)……か?」
 見知った横顔が、不思議そうに目の前を眺めている。
「あ、ライナス……ライナスも生の食材を食べに来たの……?」
「生? いや、違うが」
 ライナスの答えに、nilは首を傾げる。
「……生で食材を食べるお祭り、ではないの? そういえば、料理しようとしてる人、してる人、沢山……」
 そして再び不思議そうにその光景に目を向ける儚げなnilの姿に、ライナスはふと気付く。
「お前さんも、料理を作りたい、のか?」
「料理を作りたい……そう、かもしれない」
「ふむ、サバイバル料理なら教えられん事も無い、が……作ってみる、か?」
「……教えてくれるの? その……包丁というのも、持った事ない」
「なら、そこから教えるさ」
 ライナスは、ニヒルに笑みを浮かべた。

 nilはライナスに教わりながら、ゆっくりと調理を進めていった。
 最後に蓋を閉じ、蒸し焼きにすれば――香ばしい香り漂うイタリアンオムレツの完成だ。
「出来た、かな……これで良いの……?」
「ああ、上手く出来るじゃないか」
 出来上がったオムレツは、若干焦げ付いているものの、口にしたライナスの頬が緩む出来栄えだ。
 nilも、無言でそれを口にする。しかし、その姿がどこか嬉しさを滲ませているようで、思わず、ライナスはnilの頭に手を乗せていた。
「やっぱり、nilはちゃんと無から有を創り出せる存在、だよ」
「……何だか……ライナスは面白いのね……」
 わしわしと頭を撫でられる初めての感触に、nilは、小さく目を細めた。



 メイ=ロザリンド(ka3394)は、調理台の一つを借りて、共に祭りにやって来た義兄、真田 八代(ka1751)のために彼の故郷であるリアルブルーの料理、肉じゃがを再現することにした。
「メイちゃんの料理、楽しみだなー」
 当の八代は、メイの頭を撫でたり、頬をつついたりとちょっかいを出している。口のきけないメイが筆談を行えないのをいいことに、割りとやりたい放題だ。
 メイが野菜を刻む間にも、八代のちょっかいは続く。もちろん、調理に支障のでない程度で、だが。
「賑やかなのもいいけど、こうしてるのも悪くないな」
 こうしてる、というのは、ちょっかいのことだろうか。メイも内心嫌ではないのだが、支障は出ずとも邪魔でないとは言い難い。義兄のために美味しい料理を作ろうと、集中したい気持ちもある。
「……」
 メイは心を鬼にして、笑顔という名の無言の圧力を八代に向けた。

 蓋を取ると、ふわりと醤油のような香りが広がる。
「おー、流石メイちゃん!」
 完成した肉じゃがのその芳しい匂いに、八代も食べる前からべた褒め状態だ。
「それじゃあ、頂きます!」
 そして一摘み、芋を口に運べば、
「うん、美味しいぞー」
 八代の顔が綻んだ。ついでに、それを見たメイの顔もホッと笑顔になる。
 それから箸を止めることなく、八代は皿に盛られた肉じゃがを完食した。
「ごちそうさまでした。美味しかったぞー、メイちゃん」
 満面の笑みで、八代はメイの頭を撫でる。メイも満更ではなく、大人しくそれを受け入れる。
 二人の絆は、より深いものになったと、それを感じさせる祭りのひと時だった。

 ちなみに、大鍋に余った肉じゃが参加者に振る舞われ……一人の小柄なドワーフの胃袋に、吸い込まれていったらしい。



 ウル=ガ(ka3593)とウィ=ガ(ka3596)は、兄弟で祭りに赴いていた。
「兄さん、芋の祭りって面白いね。兄さんは如何?」
「……芋。態々祭らんでもいいだろうに。まぁ、良いが」
 呆れたように言うウルだったが、近くに芋の箱を見つけると芋を一つ取り出して……がりっといい音をさせて一口齧る。
「あ、兄さんまで生のままで食べないでよ」
「ん。案外イケるモンだぞ、お前もどうだ?」
「遠慮しとくよ。折角料理もあんなにあるんだし、そっち食べよ?」
「……料理だ、と!?」
 その言葉に、ばっとウルが振り返る。
 ウィの示すその先には、調理台の群れが並んでいた。よく見ればその合間には、見事に調理された料理があるではないか。
「皆、料理上手いんだね。僕には出来ないから、一寸尊敬」
「適材適所、だ。出来る奴がやればいい」
「食べる方がいいもんね、作った人の真心が詰まってるみたいでさ」
 二人は早速と、調理台の並ぶ区画へと向かった。

「芋料理って言っても、色々あるモノだね。兄さんはどれが好き?」
「俺は、この甘いのが好きだ。この、芋が揚げてあって、甘いタレとゴマの……」
 先ほどの生芋は何処へやら、黄色く照る芋料理を手に感銘を受ける兄に、ウィは微笑む。
「折角だから、兄さんもあそこの料理教室に参加してみれば? その甘いのも、作れるようになるかもよ?」
「……確かに、この料理が覚えられれば、家でも食える……か。それは、良いかもしれん」
 なるほどと頷いて真剣に悩む兄を前に、ウィは思わず吹き出した。
「兄さんが料理作ってる姿は、想像するだけでも面白いね」
 堪え切れずに、くすくすと笑う。
「何故、俺が料理している想像で笑うんだ……? ちゃんと、お前の言う真心とやらは込める、ぞ?」
「いや、ごめん。楽しみにしてるよ」
 笑い浮かんだ涙を拭うウィを前に、ウルは首を傾げる。弟の心、兄知らず、という事なのだろうか。



 祭りは続く。しかし、師団長のシュタークは、本部前の長机にどかと足を乗せ、ぼけーとガリガリ芋を齧っていた。
「……やはり、料理は生に限るのですか?」
 セレナ・デュヴァル(ka0206)は、共に祭りを訪れたロジー・ビィ(ka0296)が張り切って作る料理が出来上がるまで、シュタークの横で芋を齧る。
「いや? 腹が膨れりゃ何でもいんだよ」
「生の食材が好きな訳ではないんですか?」
「好きなのは、すぐ大量に食えるやつだ。最近のお気に入りは草だな、何処にでもあるしいくら食っても減りゃしねえ」
「なるほど、栄養価も高そうですね。目から鱗です」
 今度やってみますと、セレナは呟いた。
「でも、ロジーさんの料理も一級品ですよ。出来上がったら、一緒に食べましょう」
 誘えばシュタークは、食えるなら大歓迎だと快活に笑った。

「シュターク団長サンとセレナ、芋は旨いかね?」
 そんな二人の元に、ロラン・ラコート(ka0363)がやって来た。その手には、銀のトレイが乗っている。
「あ、ロランさん」
「知り合いか?」
「ああ、腐れ縁ってやつさ。ま、それはともかく、俺の料理も食べてみてはくれんかね。スイートポテトってヤツなんだが」
 そう言って、ロランはトレイに乗った菓子を差し出した。まだ暖かいそれに、セレナの瞳が輝く。
「おう、食えるなら何でも歓迎だ」
 シュタークはひょいと一つ摘んで、口に放り込んだ。
「……ああ、セレナも食べるといい、そんな物欲しげな目で見るな」
 お預けを食らった犬のようにロランを見上げていたセレナも、その言葉でバッと菓子に飛びつく。
「どうかな、団長サン」
「生よりは柔らけえな」
 シュタークのあっけらかんと率直な返答に、ロランは苦笑を浮かべる。
「作り甲斐がないな、全く。……何でも生ってのは、ちょっと味気なくはないかね? たまにはおばちゃんの料理も食べてやったらどうだ?」
 ロランの言葉に、シュタークは唸る。
「まあ……味も分からんあたしは適当に食えば済むからな、その分を別の奴に分けてやれってな話だ」
「それを、おばちゃん達に一度説明してやったらいい。考えての行動なら、少しは認めてもらえるんじゃないか?」
「そんなもんかねえ……」
「そんなもんだよ」
 首を傾げるシュタークに、ロランはまた苦笑を浮かべた。

 ミィナ・アレグトーリア(ka0317)は、風に聞いたおばちゃん達の心境を何となく察し、自らの作った料理で以って彼女らの本懐を遂げさせようと様々な芋料理を手にシュタークの元へ訪れていた。
「団長さんに差し入れなのんー」
 ミィナにより、机の上に蒸かし芋や焼き芋、芋を潰し固めて焼いたものなどが並べられていく。どれも湯気を立て、素朴な香りが食欲をそそる。
「……祭りっつーのが何するもんか知らなかったけど、黙ってても食いもんが出てくんだな。……毎週開催すっか」
「あはは、こういうのは、たまにだからええんよ」
 それはともかくと、ミィナはシュタークに料理を勧める。シュタークも特に遠慮することなく、バクバクと片端から食べていく。
「どう? 味は分かんなくても、腹持ちの違いはあると思うんよー。生よりも、お腹にたまると思えへん?」
「腹持ち……考えたこともねえな。いっつも、腹が減る前に食いまくってるからなー」
「でも、お腹を空かせてから食べたほうが、料理は美味しいんよ?」
「うーん……その辺はよく分かんねえ」
 ミィナの芋を食べながら、シュタークは肩を竦めた。

「……この焼き芋も、食べてみて、下さい。あと、団員さんの作った、お菓子も」
 そこに、料理教室での指導を終えたエフィルロスも赴いた。
「おい、ホントに毎日やらねえか、祭り」
 勝手に料理が湧く魔法のクロスでも敷いてあるんじゃないかという勢いに、シュタークもご満悦だ。
「生の野菜も新鮮でいいですけど、こうして一手間加えるだけでも味は変わるの……で、す……ぐぅ」
 机に突っ伏して寝落ちしてしまったエフィルロスを横目に、満腹度という尺度ではあるが、シュタークは豪快に芋を堪能していく。

「じゃ、あたしの料理はどうかな? あんまり味に興味無いみたいだけど、食感と見た目でも楽しめるの作ってみたよー」
「おお、なんじゃこりゃ」
 天竜寺 舞(ka0377)の料理は、蜂の巣のような見た目の芋料理、蜂巣芋角だった。リアルブルーで言うタロイモのような芋で作った生地で野菜餡を包み、油で揚げたものだ。
 高温によって、生地に混ぜ込まれたアンモニアパウダーとラードが反応し、膨らんで蜂の巣のような外見になる。当然の如く、第二師団都市では見ることの出来ない手の込んだ料理だ。
「コロッケみたいなものかな、中に野菜が沢山入ってるんだよ」
「へえ、変わったもん考えるなー」
 手にとって、シュタークはそれをしばらく珍しそうに眺めていたが、やがて大口を開けてその中に放り込んだ。バリバリと、気持ちのいい音が響く。
「うん、バリバリしてんな!」
「そのまんまだね~。不味くはなかった?」
「ああ、不味くはねえぞ。強いて言や、面白かっただな」
 なら良かったと、舞は相好を崩す。難しい温度管理の中で作る料理は楽しく、それだけで彼女が祭りにやって来た理由を満たすものだった。

「あ、ロジーさん」
 黙々と運ばれてくる料理をシュタークと共に食べていたセレナが、大皿を抱えたロジーの姿に気付く。
「はーい、特製クロカンブッシュですわ♪」
 皿の上にあるのは、こんもりと積まれたコロッケの山だった。頂点には花火が突き立てられ、パチパチと火花を散らしている。
「コロッケの中に、色んな物を入れましたの。自信作ですわ!」
 召し上がれ、とロジーが微笑みを向ければ、セレナは早速とその山に手を伸ばした。
「流石ロジーさん、凄く美味しいです」
 一口齧れば、セレナは瞳を輝かせた。
「私だけで楽しむのも何ですし、皆様も如何ですか?」
「そうね、お祭りですもの!」
 一際目立つ料理とセレナの絶賛に、興味を持った人間は多かった。次々に手が伸びて、山はあっという間に小さくなっていく。
 ロジーも、その人気ぶりに満足気だ。
 しかし、
「……何か、嫌な予感すんだけど」
 天性の勘で何かを悟ったシュタークだけが、躊躇っていた。
「おい、そこの大きなおなご! 早う天辺のを取るのじゃ!」
「ああ? 何だチビ助、届かねえのか」
 聡く香ばしい匂いを嗅ぎつけたアルマも、興味津々だ。仕方ねえなとシュタークにコロッケを取ってもらえば、表情を綻ばせる。
「誰がチビじゃ! と言いたいが、礼を言うぞ大きなおなご!」
 そして人々はそれぞれに、熱々のコロッケを口に運び――
「か、辛いのじゃ!」
 平然とする者、嗚咽を堪える者、喉を押さえて水を探す者……その場は阿鼻叫喚と化した。
「あ、アルマの鉄の胃袋の前には、どんな味付けも無意味……!」
「あら、皆様、喜んでもらえたようで何よりですわ」
 当のロジーは、ニコニコとそれを楽しげに眺めている。
「のう、これは、何が入っておるのじゃ」
 少し涙目で一生懸命に食べるアルマのコロッケは、断面が真っ赤に染まっていた。
「お芋のコロッケだけでは面白くありませんでしょう? 代わりに、唐辛子を使ってみましたの。他に、チーズや南瓜ペースト、バナナ、レバー、ドリアン……」
 ロジーの無邪気な説明に、セレナ以外の人々は、ゲンナリと肩を落とした。



 ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)の作る故郷ドイツの味、チーズを乗せたクヌーデルは、似たような風土を持つおかげだろうか、参加者に非常に好評だった。
 作る端から捌けていき、早々に材料を使い切ってしまう。
「さてと……」
 料理を終えたケイは、広場の中央へと向かった。魔導拡声器は、先ほど借りてきている。
「お祭りらしく、楽しい歌なんてどうかしらね」
 開けたスペースに陣取り、辺りを見渡す。笑い声、怒声、苦悶の声……様々な感情が入り混じって広場に充満している。
 一つ息をし、心を鎮めると、ケイはゆっくりと口を開く。
 人々の一年を讃え、楽しく、収穫を祝う。祭りという場は、歌姫と呼ばれた彼女のステージに相応しい。

 ――さぁ祝え。

 ――さぁ踊れ。

 ――この時を皆が待っていた。

 ――長き刻(とき)を経て。

 ――この魂 何処までも。

 朗々とした歌声が、祭りの会場を席巻する。その瞬間だけは、確かに誰もが息をするのも忘れその声に聞き入っていた。



「ほら、料理もマンネリはいけないわ。色々なこと試してみましょ!」
 歌声響く祭りは、今日一番の盛り上がりを見せていた。
 その中でエーミ・エーテルクラフト(ka2225)は、自分の持つレシピを、おばちゃん達と交換して回る。
 エーミの多種多様な地域のレシピに、驚きの声が上がる。おばちゃん達も経験は長いが、この地方から離れたことのない人も多い。エーミの知識は、新鮮なものだった。
「料理って、人を笑顔にするものだと思うの」
 だからエーミは、今の鬼気迫るおばちゃん達の様子に違和感を抱く。
「食べてもらった人の感謝で、作った人も嬉しくなる。そうやって、もっと美味しいものを作ってあげようって思うんじゃないかしら」
 きっと彼女らも、初めは誰かのために料理を作ったはずだ。その時の気持ちを思い出して欲しいと、エーミは笑顔と共に訴えかけた。
 誰かを笑顔にする。
 それはとても大きなことで、エーミにとって料理とはそういうものだ。
「さ、楽しんで料理しましょ!」
 エーミは、早速交換したレシピを再現していく。その表情には、一点の曇りもない。



 祭りは想像以上の盛り上がりを見せ、日は傾いていく。きっと今日の出来事で、師団員の意識も変わっていくことだろう。
 悲喜交交な感情を乗せたまま、祭りは終わる。

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参加者一覧

  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士

  • セレナ・デュヴァル(ka0206
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 夢を魅せる歌姫
    ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • もふもふ もふもふ!
    ロジー・ビィ(ka0296
    エルフ|25才|女性|闘狩人
  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • いつか、本当の親子に。
    ライナス・ブラッドリー(ka0360
    人間(蒼)|37才|男性|猟撃士
  • お茶会の魔法使い
    ロラン・ラコート(ka0363
    人間(紅)|23才|男性|闘狩人
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 完全少女
    エフィルロス・リンド(ka0450
    エルフ|15才|女性|聖導士
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • ファランクス
    真田 八代(ka1751
    人間(蒼)|17才|男性|機導師
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 金の旗
    ヴィンフリーデ・オルデンブルク(ka2207
    人間(紅)|14才|女性|闘狩人
  • 解を導きし者
    エーミ・エーテルクラフト(ka2225
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士

  • nil(ka2654
    エルフ|16才|女性|猟撃士
  • 祭りの小さな大食い王
    アルマ(ka3330
    ドワーフ|10才|女性|闘狩人
  • いつか、その隣へと
    ティアンシェ=ロゼアマネル(ka3394
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 男の子なはずがない
    ユーリィ・リッチウェイ(ka3557
    人間(紅)|13才|男性|霊闘士

  • リズレット・ウォルター(ka3580
    人間(紅)|16才|男性|魔術師
  • エルブン家の知人
    ウル=ガ(ka3593
    エルフ|25才|男性|疾影士
  • 木漏れ日の人
    ウィ=ガ(ka3596
    エルフ|22才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
イーディス・ノースハイド(ka2106
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/11/27 23:51:06
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/28 08:05:17