ゲスト
(ka0000)
地表50センチ。蜂型雑魔の恐怖
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/01 12:00
- 完成日
- 2014/12/08 01:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラムヘイズ王国西部の草原で、1頭の牧童犬がひなたぼっこを楽しんでいた。
主である牧童は杖を持って周囲を警戒し、羊の群れは脇目も振らず草を貪り食ってる。
わふんと気の抜けた息を吐き、牧童犬ポチは分厚い筋肉を弛緩させようとしていた。
突然の危機感がポチを覚醒させる。
慌てて首を左右に向ける。
いつの間にか起き上がっている。全身には狼程度なら押しつぶせる力とそれ以上の危機感がみなぎり、野生の本能によって戦闘可能な状態に移行していた。
「ぽちー?」
愛すべき主にして危機感の足りない牧童がこちらを見ている。
羊の群れはポチの変貌に気付いて食事を止めていた。
草原と青い空が交わる地平線に、胡麻粒より小さく見える黒が現れた。
数は2。ほとんど動かないように見えるのは遠いからで、実際には並みの馬の駆け足程度には速い。
ポチが逃げろと吼える。
牧童は杖についた鈴を激しく鳴らし、羊の群れは鮮やかな180度ターンを披露し全力でねぐらに向かって走り出す。
「あわ、わわっ」
牧童犬は主が持っていたリードを引っ張って己の背中に乗せ、主が転げ落ちない絶妙の速度で羊を追う。
「きっ、キノコがっ」
主が指さす。
野生らしいパルムがジャンプ。ポチの背に這いつくばる牧童の頭に飛び乗り、急速に近づいてくる黒い染みを……地表50センチを飛ぶ雑魔を凝視する。
雑魔は己が存在する力をすり潰す勢いで加速していた。パルムと牧童の目には、横に太い鉄製ミツバチに見える姿がはっきりと映っていた。
「ポチ、右!」
疑問を抱くより速く筋肉が躍動する。
斜め右に向かうポチ以下1人と1頭と1キノコを追って雑魔が進路を曲げ、一際濃い茂みにぶつかり真上に跳ね上げられた。
実際にぶつかったのは大部分が地面の下に埋まっていた大岩だ。周囲を覆っていた草と地下50センチまでの半壊と引き替えに雑魔の前半分を大きく凹ませていた。
「ポチ、ジャンプ!」
今度は斜め上に向かって跳躍する。
極太の針を突き出す別の蜂雑魔がポチの股をくぐって天然の落とし穴に消える。
「うわぁぁぁ、もうやだぁっ」
緊張に耐えかね泣き出す牧童。やれやれと撫でて慰めるキノコ。いつものことと割り切り走り続ける牧童犬。
彼等が無事逃げ切ったのは、それから2時間後のことである。
●ハンターギルド本部
パルムが見聞きした全てが3Dディスプレイによって再生された。
「雑魔が強いな」
「ああ」
ハンター達がうなずきあう。
高速飛行、連続使用が出来ないかわりに高威力の針攻撃。お前等本当に雑魔かよといいたくなるほど、強い。
「弱点は知性か」
「明らかに獣未満。ひょっとしたら虫以下だな。罠を用意できれば確実に引っかけることはできるだろうが」
両者同時に肩を落とす。
人口密度が限りなく0に近い草原の詳細地図など存在しない。
唯一地形に詳しそうな牧童も、勘という形で記憶しているので10メートルの距離まで近づかないと穴や岩を思い出せない。
「非覚醒者から情報を引き出して罠を仕掛けてその上での戦闘、か。俺は罠は得意じゃなくてな」
「俺だと聞き取りが尋問になっちまうよ」
複数のハンターが3Dディスプレイの前から去っていく。
依頼票の文章が切り替わり、このままじゃこの地方の牧畜業が終わってしまいます助けて、わん、赤色で表示されていた。
主である牧童は杖を持って周囲を警戒し、羊の群れは脇目も振らず草を貪り食ってる。
わふんと気の抜けた息を吐き、牧童犬ポチは分厚い筋肉を弛緩させようとしていた。
突然の危機感がポチを覚醒させる。
慌てて首を左右に向ける。
いつの間にか起き上がっている。全身には狼程度なら押しつぶせる力とそれ以上の危機感がみなぎり、野生の本能によって戦闘可能な状態に移行していた。
「ぽちー?」
愛すべき主にして危機感の足りない牧童がこちらを見ている。
羊の群れはポチの変貌に気付いて食事を止めていた。
草原と青い空が交わる地平線に、胡麻粒より小さく見える黒が現れた。
数は2。ほとんど動かないように見えるのは遠いからで、実際には並みの馬の駆け足程度には速い。
ポチが逃げろと吼える。
牧童は杖についた鈴を激しく鳴らし、羊の群れは鮮やかな180度ターンを披露し全力でねぐらに向かって走り出す。
「あわ、わわっ」
牧童犬は主が持っていたリードを引っ張って己の背中に乗せ、主が転げ落ちない絶妙の速度で羊を追う。
「きっ、キノコがっ」
主が指さす。
野生らしいパルムがジャンプ。ポチの背に這いつくばる牧童の頭に飛び乗り、急速に近づいてくる黒い染みを……地表50センチを飛ぶ雑魔を凝視する。
雑魔は己が存在する力をすり潰す勢いで加速していた。パルムと牧童の目には、横に太い鉄製ミツバチに見える姿がはっきりと映っていた。
「ポチ、右!」
疑問を抱くより速く筋肉が躍動する。
斜め右に向かうポチ以下1人と1頭と1キノコを追って雑魔が進路を曲げ、一際濃い茂みにぶつかり真上に跳ね上げられた。
実際にぶつかったのは大部分が地面の下に埋まっていた大岩だ。周囲を覆っていた草と地下50センチまでの半壊と引き替えに雑魔の前半分を大きく凹ませていた。
「ポチ、ジャンプ!」
今度は斜め上に向かって跳躍する。
極太の針を突き出す別の蜂雑魔がポチの股をくぐって天然の落とし穴に消える。
「うわぁぁぁ、もうやだぁっ」
緊張に耐えかね泣き出す牧童。やれやれと撫でて慰めるキノコ。いつものことと割り切り走り続ける牧童犬。
彼等が無事逃げ切ったのは、それから2時間後のことである。
●ハンターギルド本部
パルムが見聞きした全てが3Dディスプレイによって再生された。
「雑魔が強いな」
「ああ」
ハンター達がうなずきあう。
高速飛行、連続使用が出来ないかわりに高威力の針攻撃。お前等本当に雑魔かよといいたくなるほど、強い。
「弱点は知性か」
「明らかに獣未満。ひょっとしたら虫以下だな。罠を用意できれば確実に引っかけることはできるだろうが」
両者同時に肩を落とす。
人口密度が限りなく0に近い草原の詳細地図など存在しない。
唯一地形に詳しそうな牧童も、勘という形で記憶しているので10メートルの距離まで近づかないと穴や岩を思い出せない。
「非覚醒者から情報を引き出して罠を仕掛けてその上での戦闘、か。俺は罠は得意じゃなくてな」
「俺だと聞き取りが尋問になっちまうよ」
複数のハンターが3Dディスプレイの前から去っていく。
依頼票の文章が切り替わり、このままじゃこの地方の牧畜業が終わってしまいます助けて、わん、赤色で表示されていた。
リプレイ本文
風が吹いた。
薄い緑の草原がゆるやかに波打つ。
ここは王国西部の片田舎。羊と牧童以外に利用する者もいない僻地だ。
「どこに下ろす」
バルバロス(ka2119)は岩を両手で抱えていた。
全身を覆う、人並み外れて分厚い筋肉からは湯気が上がっている。
抱えているのは成人男性数人分相当の重量物だ。ハンター基準でも飛び抜けて高い筋力を持つ彼だからこの程度で済んでいるが、普通なら落としてしまうか潰されてしまうかのどちらかだろう。
牧童は仰け反るような体勢でバルバロスを見上げ、数秒後にようやく問われたことを理解し高速で首を縦に振る。
バルバロスが岩を下ろす。横から見ると、草原に無骨な岩が飲み込まれ痕跡を残さず消えたように見えた。
「遠くまで……よく見える」
アレン=プレアール(ka1624)が中腰で警戒している。
草原は水平線まで続いていて、強力な雑魔を誘き寄せる役割を背負ったハンターがかなり遠くに見えた。
そうしている間もアレンの手は高速で動いて牧童犬を愛玩している。
わふぅんと妙に切なく鳴いてちらりと主を見る。が、主である牧童は緊張でまわりが見えていない。
「よっ、はっ」
エリス・ブーリャ(ka3419)が地面から、正確には地面に開けた大穴から飛び出した。
艶のある、よく手入れされたツインテールが大きく揺れて定位置へ戻る。
「牧童さん! 土を捨てられる場所教えて欲しいんだけどっ」
スコップの先端を牧童に突きつける。
「は、はいっ?」
牧童は振り返り、目を見開き、日焼けした頬を赤く染めて目をそらす。
地味なコートの上からでもエリスの心身にみなぎる力がはっきりと分かる。
この牧童は異性に慣れていないので、真正面から向かい合うのは難しいのだ。
「あっちとこっちが窪んでいます」
牧童が2カ所を指さす。
ハンターの視力でも、他と一見しただけではどこが違うのか分からない。
「ホントだ。ありがとー」
エリスは一度だけ微笑んでスコップ操りを開始する。湿った重い音が響く度に、彼女の腰まであった土の山が小さくなるのであった。
●
敵の動きが見えなかった。
鋼以上の強度を持つ羽が最初に消えて、半秒後には本体も見えなくなっていた。
榊 兵庫(ka0010)は五感から情報を得るのを諦め、消える直前の位置と動きの方向から敵の現在地を推測する。
両膝から力を抜く。勢いはそのままなので速度を増しつつ重心が下がる。
いきなり視界が横にずれた。数秒遅れて猛烈な痛みが首と頭部から伝わってくる。直撃は避けたのに酷い威力だ。
「知性が低くて搦め手が使えそうなのが、唯一の救いと言えば救いだが」
予測進路上に槍を突き出す。
獣並の、あるいは虫並みの知性があるなら圧倒的な速度で避けられそうなのに、雑魔は自分から歩先に当たる形で衝突した。
「予想以上に強い。すまんが時間稼ぎは無理だ」
『了解。穴掘りを切り上げる』
懐のトランシーバーから仲間の声が聞こえる。
兵庫は相づちを打つ時間も惜しんでかわし、防ぎ、受けながす。半分は避け避けられ一撃も分厚い装甲で受けているのに蓄積するのにダメージが大きい。
兵庫から見て南に30メートルの地点で、月架 尊(ka0114)が円を描く形で動き続けていた。
2体目の蜂型雑魔が滞空した状態で針を向けてくる。
針が消える。わずかにかすめただけなのに、尊のボディーアーマーに小さな穴が開けられてしまう。
尊は敵の雑魔離れした強さを実感すると同時に敵の限界も把握する。
一度試して有効だった大きさの円を描く。雑魔は前のときと全く同じ動きと速度と威力で体当たりをしかけ、尊の影に触れるすらできない。
ちらりと兵庫を見る。
「榊さんで押されるっ?」
実戦経験と装備の面で尊を上回るはずの兵庫がほとんど圧倒されている。ここまで強いと小さな不運1つで致命傷になりかねない。
『準備完了』
「助かった!」
トランシーバー越しに応えて円の動きを楕円の動きに変える。
マルチステップ発動直後に雑魔が脇をかすめて通り過ぎる。
尊が全力で駆ける。全く無意味な場所へ移動していた蜂型雑魔が進路を変えて尊を追う。
「そちらへ向かうぞ」
兵庫が敢えて前に出る。
槍にマテリアルを込め、一撃で倒すつもりで蜂の動きに合わせて突き出した。
歩先が蜂の頭部にめり込む。衝撃が穂先から柄を通して腕を襲い、体の内側に複数の傷が出来る。
与えたダメージの割合では分が悪い。だが一定以上のダメージは与えたので、まず間違いなく兵庫を追ってくるはずだ。
じぐざぐに向きを変えながら逃げる。知性がほぼない蜂型が兵庫の背だけを狙って常に狙いを外される。
「おぉっ」
最後はあえて長い直線を走り、落とし穴の半歩横を駆け抜ける。
蜂型雑魔はこの場のハンターが目視できない速度まで加速し、罠の脇を通過しかけたところで罠側の羽が何かに巻き込まれた。
「ワイヤー入りの網だ。貸し出し交渉が厳しかったぞ」
汗にまみれて荒い息をつきながら、兵庫は不敵に笑っていた。
「難易度高いよ……」
尊は泣き言風につぶやく。ただしやっていることはこれ以上ない最適解だ。
蜂型雑魔の知性では追い切れない進路を選んだ上で瞬脚で速度を増しているのだ。雑魔が追いつけるはずがない。
「行くよっ」
一声かけて跳躍する。その動きは直前までと比べると直線的に過ぎ、ついに雑魔に追いつかれるように見えた。
が、草以外なにもない場所で急に雑魔の高度が落ちる。
羽が草を砕く。比較的小さく、けれど凄まじく深い穴が現れ、蜂型雑魔が吸い込まれていった。
止めを刺すため、尊が銃を手に穴に近づく。
「針が来る!」
エリスに声をかけられて足を止める。極悪な威力を誇る針が、穴の底から尊の額の角をかすめて空へ消えた。
「ありがとう」
一瞬目を向けるがエリスが見つからない。別の雑魔に備えるため草に隠れているのだろう。
尊はタイミングを計って銃撃を加え、それまでの苦労が嘘のようにあっさりと蜂型雑魔を仕留めるのだった。
●
片羽を網で封じられた雑魔が悶えている。
その場で回転しながら滑るように地表数センチを移動し、罠からも兵庫からも離れた場所へ、つまりいつでも戦場から離脱できる場所へ向かおうとしていた。
が、草の茂みにしか見えない場所で跳ね返される。
粉微塵に砕かれた草が舞う。羽によって大きくえぐられた岩が見えてくる。
「いつまでも逃げられると思うな」
バルバロスが獰猛に歯をむき出す。
ハンター達の予想を上回って雑魔が迷走した結果、バルバロスは囮の役目は果たせなかった。しかしその分体力にも耐久力にも余裕があり、穴に落ちそびれた蜂1匹を相手にすることができる。
羽の動きが激しさを増す。ワイヤーごと網が砕かれ凶悪な残骸が飛来する。
バルバロスの頬に複数の赤線が引かれ、赤黒い血が滲んで垂れる。
口角が楽しげに吊り上がる。
一見無造作に、実際には敵の動きを見切って近づいた。
傷ついた羽を高速で震わせ雑魔が浮かぶ。
しかし連続して飛来した矢が羽を貫き大地に縫い止めた。
「遠距離武器も、扱えない訳ではない、ぞ……」
アレンが次の矢を用意しながらつぶやく。
羽の一部破損と引き替えに雑魔が自由を取り戻す。
蜂雑魔が強引に動いてアレンの次の矢を回避する。しかしその動きはアレンの狙い通りであり、回避した先にはドリルを振りかぶったバルバロスがいた。
健康な歯の間から獰猛な気配が漏れる。実体を感じられるほど重く熱く、そして鋭い。
「落ちろ」
ドリルがうなる。
強靱な蜂の頭部に小さな穴を開け、穴の周りに数え切れない亀裂をつくる。
バルバロスの筋に血管が浮かぶ。回転するドリルに力をかけ続ける。
亀裂が増え、けれど雑魔は羽を高速で震わせその場に止まる。
剣が鞘から引き抜く音が響いた。
アレンが駆ける。防御を考えずに力と速度を配分し、雑魔の頭部目がけて振り下ろす。鉄と鉄並みに硬い物が打ち合うのに似た音が響いた。
蜂型の頭部が凹んで力が弱まり、バルバロスとの均衡が崩れ、落とし穴へと押し込まれ落下していく。
バルバロスが岩を持ち上げ穴に叩き込む。雑魔は即座に動いて直撃を回避しようとしたが、アレンが次の攻撃に移る方が速い。コンポジットボウに矢をつがえ、出来る限りの速度で狙いをつけて、放った。
矢は羽の端へ当たる。網や岩にぶつかり脆くなっていたらしく、綺麗に砕けて岩の残骸に混じって見えなくなる。
移動手段を無くした雑魔を安全に処理するまで、分もかからなかった。
●
雑魔との開戦の1分前、穴の底から一定のリズムで土が放り出されていた。
「時間に追われて穴を掘ってると、会社に居た頃を思い出すなぁ……」
汗と土埃にまみれ、陽野 光(ka3494)が溜息混じりの息を吐き出す。愚痴ではなく単なる気分転換だ。十数分全力で穴掘りしているのに動きに鈍さはない。
『残り100メートル』
トランシーバー越しにフランシスカ(ka3590)の声が聞こえた。
「了解」
スコップを脇に置く。
穴の壁に立てかけていた槍っぽい何かを底へ突き立て、スコップを足場にして穴の卯へ経飛び出した。
地上では激しい移動と戦闘が同時進行で行われている。
フランシスカが巨大蜂を防ぎながら後退する。
重量と単純な力は技だけで埋め合わせることができず、真新しい赤が修道服と白い肌を汚していく。
矢がフランシスカの頭上を越えていく。射たのはエリスだ。
フランシスカの死角から迫るもう1つの蜂に的確に命中させ、その勢いをわずかではあるが弱める。
それが2度3度と繰り返されると、いくら虫以下の知性でも現実に対応する。
蜂が地表50センチで停止し、90度以上回転し、エリスが隠れていた場所目がけて急加速した。
「まずっ」
エリスが思い切り良く遮蔽物を捨て駆け出す。ツインテールが草原と水平に伸びる。素晴らしい速度なのだがこの場では雑魔の方が速い。
白い額に汗が浮かぶ。エリスの表情が引き攣っていく。
「こんにちはっ」
蜂の針がエリスに触れることはなかった。側面からの銃弾が蜂の急所を捕らえて動きを鈍らせたのだ。
アンフィス(ka3134)はカービンの弾を撃つ尽くすと再装填せずに放棄。
じゃーんと効果音を自分の口から出す。
「取りい出したる釘バットー」
日の光を凶悪に照り返す凶器を見事なフォームで構える。
機導師である光が攻性強化を発動。短時間ではあるがアンフィスの力をさらに引き出す。
「8番バッター、ぼく!」
マテリアルが体内でうずまき、バッドの柄がみしりときしんだ。
エリスを追っていた雑魔が進路を変えてアンフィスに迫る。
「打ったー!」
固く分厚い装甲ごと、中身が砕ける音が響いた。
雑魔が不規則に回転しながら左右にふらつく。アンフィスは手の痛みを気合で無視して再度バットを構え、回転中の巨大蜂をバッドの芯で捉えた。
これまでの凶悪さからは想像できないほどあっさりと、蜂型雑魔が地表を滑って落とし穴へ消える。
消えてから秒も待たずに、断末魔じみた音が響いた。
アンフィスはひょいと銃を回収し落とし穴へ近づく。穴の底では、5本の鉄製槍をひしゃげさせ、3本の罠用鉄製槍に腹と胸を貫かれた雑魔の姿があった。
「凄い罠考えるね」
罠をしかけたリアルブルー人をちらりと見る。光はフランシスカの援護のため走り出しており、この場にいるのはアンフィス1人だ。
「ま、いっか」
蜂が無理矢理動いて刺さっている槍を砕く。アンフィスが銃撃を浴びせ、槍が開けた穴を銃弾で以て押し広げる。
雑魔は体積の3分の1が失われても動きを止めない。アンフィスが容赦なく銃弾を浴びせて2分の1になると、とうとう限界を超えて急速に崩壊し消滅していくのだった。
●
視界が徐々に薄れていく。
蓄積するダメージは癒しの業を連発しても癒しきれない。
けれどフランシスカは冷静に己の限界と敵の能力を見極め、最後に残った雑魔を同じく最後の罠に導こうとしていた。
「フランシスカさんこっち!」
光の声と銃声が届く。
光は両手でピストルを構え、教科書通りに、つまり最も当たり易い構えと動きで雑魔に鉛玉を送り込む。
フランシスカが待避。一撃よいのを食らっても即死しない程度までマテリアルヒールで回復。
雑魔は最も狙いやすい光目指して後先考えない加速を開始した。
光は逃げない。冷静に狙いをつけ、引き金を引き、雑魔が到着する半秒前に茂みの中に伏せた。
蜂が草の茂みと接触する。羽によって茂みの一部が削られる。蜂の頭は硬く、十分に勢いがついたそれは光を背骨ごと砕く可能性があった。
だが接触する前に蜂型雑魔の速度が激減する。良く見てみると、光が茂みに仕込んでいた槍が大きくたわみつつ雑魔の頭部を刺し貫いていた。
たわみが限界を超えて槍が折れる。残骸が光に当たり血がしぶく。
「逃がしません。絶対に」
フランシスカからバスタードソードを持って雑魔に迫る。体も防具も自身の血で塗れてはいても、闘志に陰りは一切無い。
細腕で分厚い剣で叩く。致命傷には遠い。それでもフランシスカに注意を引きつける程度の効果はあった。
そこへ、雑魔が全く警戒していなかった方向から釘バットが振ってきた。
「1ストライク、2ストライク」
2発決められてようやく気付くが遅すぎる。
「ひーっと!」
光の罠で半死半生の蜂が、アンフィスのノックバックで大きく動く。動いた先は当然のように落とし穴で、水平方向の飛行能力しか持たない雑魔は逃げ場の無い空間にはまり込んでしまった。
エリスと光が穴のすぐ側まで駆け寄る。
後はひたすら引き金を引きときたまリロードするだけだった。
数分後、雑魔がたてた土煙が晴れると、既にそこには雑魔の痕跡すら残っていなかった。
「あー、一年分は働いたかな」
エリスが汚れていない草の上に腰を下ろす。
光は大きく伸びをしようとして、体のあちこちから伝わる痛みに悲鳴をあげかける。
そして、暖かな癒しの力が光を包んだ。
「ありがとうございますフランシスカさん」
笑顔で頭を下げる。
フランシスカは無言でうなずき、4つの落とし穴を順々に見た。
草が消えている。羽によって粉微塵になったり押しつぶされたのだ。網や槍の残骸も散らばっていて、戦場跡にしか見えない。
彼女は無言のまま予備のスコップを手に取り、穴の底へ降りて危険物を上に上げていく。
「みなさーん!」
牧童犬に乗った牧童が近づいてくる。雑魔接近前に光によって逃がされていたので当然のように傷はない。
「良かった。ご無事で……私も手伝いますっ」
牧童も他のハンターも加わって9人がかりで危険物の除去と穴の埋め戻しを行い、ようやく草原に平和が戻ったのであった。
薄い緑の草原がゆるやかに波打つ。
ここは王国西部の片田舎。羊と牧童以外に利用する者もいない僻地だ。
「どこに下ろす」
バルバロス(ka2119)は岩を両手で抱えていた。
全身を覆う、人並み外れて分厚い筋肉からは湯気が上がっている。
抱えているのは成人男性数人分相当の重量物だ。ハンター基準でも飛び抜けて高い筋力を持つ彼だからこの程度で済んでいるが、普通なら落としてしまうか潰されてしまうかのどちらかだろう。
牧童は仰け反るような体勢でバルバロスを見上げ、数秒後にようやく問われたことを理解し高速で首を縦に振る。
バルバロスが岩を下ろす。横から見ると、草原に無骨な岩が飲み込まれ痕跡を残さず消えたように見えた。
「遠くまで……よく見える」
アレン=プレアール(ka1624)が中腰で警戒している。
草原は水平線まで続いていて、強力な雑魔を誘き寄せる役割を背負ったハンターがかなり遠くに見えた。
そうしている間もアレンの手は高速で動いて牧童犬を愛玩している。
わふぅんと妙に切なく鳴いてちらりと主を見る。が、主である牧童は緊張でまわりが見えていない。
「よっ、はっ」
エリス・ブーリャ(ka3419)が地面から、正確には地面に開けた大穴から飛び出した。
艶のある、よく手入れされたツインテールが大きく揺れて定位置へ戻る。
「牧童さん! 土を捨てられる場所教えて欲しいんだけどっ」
スコップの先端を牧童に突きつける。
「は、はいっ?」
牧童は振り返り、目を見開き、日焼けした頬を赤く染めて目をそらす。
地味なコートの上からでもエリスの心身にみなぎる力がはっきりと分かる。
この牧童は異性に慣れていないので、真正面から向かい合うのは難しいのだ。
「あっちとこっちが窪んでいます」
牧童が2カ所を指さす。
ハンターの視力でも、他と一見しただけではどこが違うのか分からない。
「ホントだ。ありがとー」
エリスは一度だけ微笑んでスコップ操りを開始する。湿った重い音が響く度に、彼女の腰まであった土の山が小さくなるのであった。
●
敵の動きが見えなかった。
鋼以上の強度を持つ羽が最初に消えて、半秒後には本体も見えなくなっていた。
榊 兵庫(ka0010)は五感から情報を得るのを諦め、消える直前の位置と動きの方向から敵の現在地を推測する。
両膝から力を抜く。勢いはそのままなので速度を増しつつ重心が下がる。
いきなり視界が横にずれた。数秒遅れて猛烈な痛みが首と頭部から伝わってくる。直撃は避けたのに酷い威力だ。
「知性が低くて搦め手が使えそうなのが、唯一の救いと言えば救いだが」
予測進路上に槍を突き出す。
獣並の、あるいは虫並みの知性があるなら圧倒的な速度で避けられそうなのに、雑魔は自分から歩先に当たる形で衝突した。
「予想以上に強い。すまんが時間稼ぎは無理だ」
『了解。穴掘りを切り上げる』
懐のトランシーバーから仲間の声が聞こえる。
兵庫は相づちを打つ時間も惜しんでかわし、防ぎ、受けながす。半分は避け避けられ一撃も分厚い装甲で受けているのに蓄積するのにダメージが大きい。
兵庫から見て南に30メートルの地点で、月架 尊(ka0114)が円を描く形で動き続けていた。
2体目の蜂型雑魔が滞空した状態で針を向けてくる。
針が消える。わずかにかすめただけなのに、尊のボディーアーマーに小さな穴が開けられてしまう。
尊は敵の雑魔離れした強さを実感すると同時に敵の限界も把握する。
一度試して有効だった大きさの円を描く。雑魔は前のときと全く同じ動きと速度と威力で体当たりをしかけ、尊の影に触れるすらできない。
ちらりと兵庫を見る。
「榊さんで押されるっ?」
実戦経験と装備の面で尊を上回るはずの兵庫がほとんど圧倒されている。ここまで強いと小さな不運1つで致命傷になりかねない。
『準備完了』
「助かった!」
トランシーバー越しに応えて円の動きを楕円の動きに変える。
マルチステップ発動直後に雑魔が脇をかすめて通り過ぎる。
尊が全力で駆ける。全く無意味な場所へ移動していた蜂型雑魔が進路を変えて尊を追う。
「そちらへ向かうぞ」
兵庫が敢えて前に出る。
槍にマテリアルを込め、一撃で倒すつもりで蜂の動きに合わせて突き出した。
歩先が蜂の頭部にめり込む。衝撃が穂先から柄を通して腕を襲い、体の内側に複数の傷が出来る。
与えたダメージの割合では分が悪い。だが一定以上のダメージは与えたので、まず間違いなく兵庫を追ってくるはずだ。
じぐざぐに向きを変えながら逃げる。知性がほぼない蜂型が兵庫の背だけを狙って常に狙いを外される。
「おぉっ」
最後はあえて長い直線を走り、落とし穴の半歩横を駆け抜ける。
蜂型雑魔はこの場のハンターが目視できない速度まで加速し、罠の脇を通過しかけたところで罠側の羽が何かに巻き込まれた。
「ワイヤー入りの網だ。貸し出し交渉が厳しかったぞ」
汗にまみれて荒い息をつきながら、兵庫は不敵に笑っていた。
「難易度高いよ……」
尊は泣き言風につぶやく。ただしやっていることはこれ以上ない最適解だ。
蜂型雑魔の知性では追い切れない進路を選んだ上で瞬脚で速度を増しているのだ。雑魔が追いつけるはずがない。
「行くよっ」
一声かけて跳躍する。その動きは直前までと比べると直線的に過ぎ、ついに雑魔に追いつかれるように見えた。
が、草以外なにもない場所で急に雑魔の高度が落ちる。
羽が草を砕く。比較的小さく、けれど凄まじく深い穴が現れ、蜂型雑魔が吸い込まれていった。
止めを刺すため、尊が銃を手に穴に近づく。
「針が来る!」
エリスに声をかけられて足を止める。極悪な威力を誇る針が、穴の底から尊の額の角をかすめて空へ消えた。
「ありがとう」
一瞬目を向けるがエリスが見つからない。別の雑魔に備えるため草に隠れているのだろう。
尊はタイミングを計って銃撃を加え、それまでの苦労が嘘のようにあっさりと蜂型雑魔を仕留めるのだった。
●
片羽を網で封じられた雑魔が悶えている。
その場で回転しながら滑るように地表数センチを移動し、罠からも兵庫からも離れた場所へ、つまりいつでも戦場から離脱できる場所へ向かおうとしていた。
が、草の茂みにしか見えない場所で跳ね返される。
粉微塵に砕かれた草が舞う。羽によって大きくえぐられた岩が見えてくる。
「いつまでも逃げられると思うな」
バルバロスが獰猛に歯をむき出す。
ハンター達の予想を上回って雑魔が迷走した結果、バルバロスは囮の役目は果たせなかった。しかしその分体力にも耐久力にも余裕があり、穴に落ちそびれた蜂1匹を相手にすることができる。
羽の動きが激しさを増す。ワイヤーごと網が砕かれ凶悪な残骸が飛来する。
バルバロスの頬に複数の赤線が引かれ、赤黒い血が滲んで垂れる。
口角が楽しげに吊り上がる。
一見無造作に、実際には敵の動きを見切って近づいた。
傷ついた羽を高速で震わせ雑魔が浮かぶ。
しかし連続して飛来した矢が羽を貫き大地に縫い止めた。
「遠距離武器も、扱えない訳ではない、ぞ……」
アレンが次の矢を用意しながらつぶやく。
羽の一部破損と引き替えに雑魔が自由を取り戻す。
蜂雑魔が強引に動いてアレンの次の矢を回避する。しかしその動きはアレンの狙い通りであり、回避した先にはドリルを振りかぶったバルバロスがいた。
健康な歯の間から獰猛な気配が漏れる。実体を感じられるほど重く熱く、そして鋭い。
「落ちろ」
ドリルがうなる。
強靱な蜂の頭部に小さな穴を開け、穴の周りに数え切れない亀裂をつくる。
バルバロスの筋に血管が浮かぶ。回転するドリルに力をかけ続ける。
亀裂が増え、けれど雑魔は羽を高速で震わせその場に止まる。
剣が鞘から引き抜く音が響いた。
アレンが駆ける。防御を考えずに力と速度を配分し、雑魔の頭部目がけて振り下ろす。鉄と鉄並みに硬い物が打ち合うのに似た音が響いた。
蜂型の頭部が凹んで力が弱まり、バルバロスとの均衡が崩れ、落とし穴へと押し込まれ落下していく。
バルバロスが岩を持ち上げ穴に叩き込む。雑魔は即座に動いて直撃を回避しようとしたが、アレンが次の攻撃に移る方が速い。コンポジットボウに矢をつがえ、出来る限りの速度で狙いをつけて、放った。
矢は羽の端へ当たる。網や岩にぶつかり脆くなっていたらしく、綺麗に砕けて岩の残骸に混じって見えなくなる。
移動手段を無くした雑魔を安全に処理するまで、分もかからなかった。
●
雑魔との開戦の1分前、穴の底から一定のリズムで土が放り出されていた。
「時間に追われて穴を掘ってると、会社に居た頃を思い出すなぁ……」
汗と土埃にまみれ、陽野 光(ka3494)が溜息混じりの息を吐き出す。愚痴ではなく単なる気分転換だ。十数分全力で穴掘りしているのに動きに鈍さはない。
『残り100メートル』
トランシーバー越しにフランシスカ(ka3590)の声が聞こえた。
「了解」
スコップを脇に置く。
穴の壁に立てかけていた槍っぽい何かを底へ突き立て、スコップを足場にして穴の卯へ経飛び出した。
地上では激しい移動と戦闘が同時進行で行われている。
フランシスカが巨大蜂を防ぎながら後退する。
重量と単純な力は技だけで埋め合わせることができず、真新しい赤が修道服と白い肌を汚していく。
矢がフランシスカの頭上を越えていく。射たのはエリスだ。
フランシスカの死角から迫るもう1つの蜂に的確に命中させ、その勢いをわずかではあるが弱める。
それが2度3度と繰り返されると、いくら虫以下の知性でも現実に対応する。
蜂が地表50センチで停止し、90度以上回転し、エリスが隠れていた場所目がけて急加速した。
「まずっ」
エリスが思い切り良く遮蔽物を捨て駆け出す。ツインテールが草原と水平に伸びる。素晴らしい速度なのだがこの場では雑魔の方が速い。
白い額に汗が浮かぶ。エリスの表情が引き攣っていく。
「こんにちはっ」
蜂の針がエリスに触れることはなかった。側面からの銃弾が蜂の急所を捕らえて動きを鈍らせたのだ。
アンフィス(ka3134)はカービンの弾を撃つ尽くすと再装填せずに放棄。
じゃーんと効果音を自分の口から出す。
「取りい出したる釘バットー」
日の光を凶悪に照り返す凶器を見事なフォームで構える。
機導師である光が攻性強化を発動。短時間ではあるがアンフィスの力をさらに引き出す。
「8番バッター、ぼく!」
マテリアルが体内でうずまき、バッドの柄がみしりときしんだ。
エリスを追っていた雑魔が進路を変えてアンフィスに迫る。
「打ったー!」
固く分厚い装甲ごと、中身が砕ける音が響いた。
雑魔が不規則に回転しながら左右にふらつく。アンフィスは手の痛みを気合で無視して再度バットを構え、回転中の巨大蜂をバッドの芯で捉えた。
これまでの凶悪さからは想像できないほどあっさりと、蜂型雑魔が地表を滑って落とし穴へ消える。
消えてから秒も待たずに、断末魔じみた音が響いた。
アンフィスはひょいと銃を回収し落とし穴へ近づく。穴の底では、5本の鉄製槍をひしゃげさせ、3本の罠用鉄製槍に腹と胸を貫かれた雑魔の姿があった。
「凄い罠考えるね」
罠をしかけたリアルブルー人をちらりと見る。光はフランシスカの援護のため走り出しており、この場にいるのはアンフィス1人だ。
「ま、いっか」
蜂が無理矢理動いて刺さっている槍を砕く。アンフィスが銃撃を浴びせ、槍が開けた穴を銃弾で以て押し広げる。
雑魔は体積の3分の1が失われても動きを止めない。アンフィスが容赦なく銃弾を浴びせて2分の1になると、とうとう限界を超えて急速に崩壊し消滅していくのだった。
●
視界が徐々に薄れていく。
蓄積するダメージは癒しの業を連発しても癒しきれない。
けれどフランシスカは冷静に己の限界と敵の能力を見極め、最後に残った雑魔を同じく最後の罠に導こうとしていた。
「フランシスカさんこっち!」
光の声と銃声が届く。
光は両手でピストルを構え、教科書通りに、つまり最も当たり易い構えと動きで雑魔に鉛玉を送り込む。
フランシスカが待避。一撃よいのを食らっても即死しない程度までマテリアルヒールで回復。
雑魔は最も狙いやすい光目指して後先考えない加速を開始した。
光は逃げない。冷静に狙いをつけ、引き金を引き、雑魔が到着する半秒前に茂みの中に伏せた。
蜂が草の茂みと接触する。羽によって茂みの一部が削られる。蜂の頭は硬く、十分に勢いがついたそれは光を背骨ごと砕く可能性があった。
だが接触する前に蜂型雑魔の速度が激減する。良く見てみると、光が茂みに仕込んでいた槍が大きくたわみつつ雑魔の頭部を刺し貫いていた。
たわみが限界を超えて槍が折れる。残骸が光に当たり血がしぶく。
「逃がしません。絶対に」
フランシスカからバスタードソードを持って雑魔に迫る。体も防具も自身の血で塗れてはいても、闘志に陰りは一切無い。
細腕で分厚い剣で叩く。致命傷には遠い。それでもフランシスカに注意を引きつける程度の効果はあった。
そこへ、雑魔が全く警戒していなかった方向から釘バットが振ってきた。
「1ストライク、2ストライク」
2発決められてようやく気付くが遅すぎる。
「ひーっと!」
光の罠で半死半生の蜂が、アンフィスのノックバックで大きく動く。動いた先は当然のように落とし穴で、水平方向の飛行能力しか持たない雑魔は逃げ場の無い空間にはまり込んでしまった。
エリスと光が穴のすぐ側まで駆け寄る。
後はひたすら引き金を引きときたまリロードするだけだった。
数分後、雑魔がたてた土煙が晴れると、既にそこには雑魔の痕跡すら残っていなかった。
「あー、一年分は働いたかな」
エリスが汚れていない草の上に腰を下ろす。
光は大きく伸びをしようとして、体のあちこちから伝わる痛みに悲鳴をあげかける。
そして、暖かな癒しの力が光を包んだ。
「ありがとうございますフランシスカさん」
笑顔で頭を下げる。
フランシスカは無言でうなずき、4つの落とし穴を順々に見た。
草が消えている。羽によって粉微塵になったり押しつぶされたのだ。網や槍の残骸も散らばっていて、戦場跡にしか見えない。
彼女は無言のまま予備のスコップを手に取り、穴の底へ降りて危険物を上に上げていく。
「みなさーん!」
牧童犬に乗った牧童が近づいてくる。雑魔接近前に光によって逃がされていたので当然のように傷はない。
「良かった。ご無事で……私も手伝いますっ」
牧童も他のハンターも加わって9人がかりで危険物の除去と穴の埋め戻しを行い、ようやく草原に平和が戻ったのであった。
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依頼相談卓 エリス・ブーリャ(ka3419) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/12/01 00:01:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/25 22:26:45 |