【星籤】血塗れの巨人

マスター:鹿野やいと

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/12/26 15:00
完成日
2018/01/12 19:31

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 対VOID戦におけるCAMの有用性はクラスタ攻略戦によって不動の物となった。必要不可欠な装備として増産に次ぐ増産を重ねているCAMだが、絶対数の不足が徐々に解消されるにつれて新たな問題点が議論されるようになった。これまで戦場を支えてきた汎用性を重視した設計が、ここにきて機能の欠如に直結する事態となったのである。例の一つに面制圧火力の不足が上げられる。これまではCAM以外の通常兵器との連携によって補っていたが、クラスタ内部で連携を断たれた状態ではその不具合がクラスタ攻略の難度に直結する。
 CAM「ダインスレイブ」はこのような背景の中でデュミナスを素体として設計が開始された。この機体の開発が優先された経緯には、クラスタ内部での使用回数が圧倒的に多いハンターからの要望も汲んでのものであった。ダインスレイブは腰部へ連結する左右1門の大口径砲と複数種類の砲弾、それらを統括して管理・運用を補助する背部の補助アームなどの新装備を主力とするが、基礎となるデュミナスのデータが膨大な為に設計から試作1号機の完成まで長い時間を要することはなかった。試作1号機の試験終了をもって、ダインスレイブは生産型の設計へと移ることとなる。
 要望通りの機体のテストであると気軽な気持ちでこの試験に臨んだハンター達。月面の崑崙基地で一通りのテストを終えた後、彼らには大きな敵が待ち構えていた。テスト実施の監督を務めたガーゴイル大隊のブラッドリー・ゴーラム中佐は、何時もと変わらない口調で事も無げにハンター達に告げる。
「テストの実施、御苦労だった。ではテストの内容に関して各々所見をレポートにまとめていただきたい」
 役所というのは書類で動く。何人かは忘れていたし、何人かは気にも留めていなかった。適当に済ませて怒られることはないだろうが、適当に済ませては完成品の出来栄えに悪影響があるかもしれない。テスト終了から30分、ハンター達は慣れない作業に悪戦苦闘していた。
 ハンターに要求されている内容は難しくはない。リアルブルー以外でのCAMの運用方法、クラスタでのCAMの運用を踏まえた上での要望を書き綴るだけだ。それ故にほとんどのメンバーが苦悩した。完成した形が見えるからこそ、自分の今後使う道具にまつわる内容に関して質を要求してしまうのだ。原稿が完成した者も完成していない者も、頭を悩ませながらまだ机の前でうなっている。
 ハンター達の苦悩を他所に、作業の終わった軍人達が順番に部屋を去っていく。その中に一人、明らかに年齢の低い青年が紛れ込んでいた。
「それを元の棚に戻したら、今日はそのまま上がりなさい」
「はい、中佐」
 答える青年、カイル・ハンソン准尉に対する最初の印象は「場違い」であった。彼の年の頃は15前後に見えた。側頭部を刈り上げたベリーショートの髪型にやや釣り目の双眸。細身ながらも引き締まった体は、やや痩せているようにも見えた。利発的で活発的にも見えるが、本来の特性を軍服の下に押し込めているような不自然さも感じる。大人びた雰囲気であるので本当はもっと年齢は上かもしれないが、どちらにせよ大人達の組織で働くにはまだ若すぎる。彼はハンター達の視線に気づき小さく会釈すると「失礼します」と定型通りの言葉を残して部屋を辞した。
 ゴーラム中佐はハンター達が言葉にしなかった疑問に答えるようにぽつりと呟いた。
「彼は強化人間だ。私の部隊でも一人預かる事になった」
 ああ、やはり。それで大体の事情を察した。強化人間にはある種の適性が必要と彼らから聞いている。基本的な実験は済んでいるにせよ、運用上では実験的な要素がつきまとうのだろう。何名かの若い強化人間がそうであるように、彼もまた体のいい人体実験の被験者なのだ。その必要が無ければもっと大々的に強化人間を増やしているだろう。
「外交というのは不足を補う事はあっても、依存を深めてはならない。この件でいえばクラスタの存在がそうだ。現在の地球側の戦力で、完成したクラスタへの突入が可能なのは強化人間を乗せたCAMだけだ。VOIDが再びクラスタを作った場合、我々は彼らを送り込むことになるだろう。私は時期が来ればその命令を下すことになる」
 子供を盾に。ゴーラム中佐はそう明言した。クラスタ戦を想定するなら前段階として彼らの部隊こそ犠牲になるだろうが、危険度では内部突入が段違いに危険なのは間違いない。
「いつか君たちの覚悟のほども聞いておきたい。状況に流されるしかなかった身の上であっても、覚悟の有無で価値は変わる」
 熱の無い淡々とした問いかけが静まった室内に妙に響く。全てを拾う事のできない現状を如何に自分で整理してきたのか。いつかまた、大きな戦闘が始まればそれを契機に決断を迫られることになるだろう。
 今の心が果たして価値あるものなのか、その答えだけは来たるべき日までに見定めておく必要があるだろう。



 選択肢は存在しない。身を売る事の罪悪感を持つ前に、僕らには明日を生きる糧が必要だった。世界が残酷とは思わない。人が滅びるかどうかの瀬戸際でも、手を差し伸べてくれる人がいた。身を売るだけで安寧が買えるなら十分妥当な買い物だ。
 大人達は優しい。彼の故郷である街の大人達よりもずっと。第一に大人を殴る子供がいない。それでもその優しさに甘えてしまう心に何度も歯止めがかかる。彼らの優しさの半分は、末期の老人に対する労りに似ている。いつかは死を命じられる関係だ。その事実が壁となっていることは大人達も自分も理解しているが、理解してるがゆえに今の関係を崩すことが出来ないままでいた。距離を崩せば身を守る術さえ失ってしまう
「…………」
 廊下の途上で立ち止まったカイルはディスプレイに移る星空を見上げた。空に広がる暗黒の中では見慣れた星も瞬くことはない。地球の映像に懐かしさを感じたこともあったが、今では遠い記憶のような気がしている。崑崙は寒い。どこかで置き去りにした感情の欠落を自分に突きつける。
 カイルはイングリッド・ヘッグ中尉に見つかるまで、ゆっくりと動くその映像の星空を眺めていた。

リプレイ本文

 学級会をしているわけではないのでハンターの態度をとやかく言う物はいない。いないのだがーー
「ーーーそれで後は自動装填機能が要るな。よし、これで完成だ。じゃあなゴーラム、俺は用があるから先に抜けるぜ!」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)はたたきつけるように報告書を提出すると、風のように部屋を飛び出していった。出された雑な文章を前に流石のゴーラム中佐も言葉がない。あるいは静かに切れている。開始十分で以上のような一幕があったが、それはさておきとする。



 CAM「ダインスレイブ」に求められる機能は「対VOID」「対クラスタ」と要約できる。以上を満たした上で次について回る要求は「予算」と「納期」だろう。そんな基本事項をさっくりと解説し始めるのは試験を通じて顔馴染みになった開発スタッフと整備士達だ。
「以上の理由で4脚案は見送りとする」
「なんと夢の無い!」
 憤慨し始めたのはミグ・ロマイヤー(ka0665)。彼女の顔を知る者達は「ああ、やっぱり」という顔で彼女の抗議を受け流した。夢が無い点に関しては軍人達は甘んじて受けるが、納期と予算となればここを曲げるわけにはいかない。4脚案は付随する内容も含めて実現に時間が掛かりすぎる。ソフトウェアの追加・更新に加えてテストのやり直しになるからだ。これはキャタピラ、ホバークラフト、フライトユニット案も同様となる。無茶ではあるがハンター達もこれらを提案するには十分な理由があった。
「だが2足歩行のままだと砲撃時の安定性が保てないんじゃねえか?」
「積載量でも問題を抱えると思いますの」
 ミグと同じく4脚を推した紫月・海斗(ka0788)、キャタピラを提案した八劒 颯(ka1804)もこれを最大の懸念としていた。予算と納期もわかるが機能不全では意味がない。これらの懸念を踏まえた上で、前提条件の大きな縛りがあった。
「1G環境なら出来なくもないが、0G環境も視野にはいると難しいな」
 火星クラスタでは宇宙での戦闘が発生した。換装無しで1Gと0Gの対応となれば現行の物を使うのが安上がりだ。脚の問題はそれにとどまらず、2足歩行を前提に作られている全ての装備品・全ての周辺機器の規格に影響を及ぼす。
 かように足はともかくとしても、二足歩行の人型を保てばある程度は余地があるという話でもある。八劔の案はそこから更に踏み込んでいた。デュミナスは装備を外せばまだまだ余剰がある。バリエーションの機体が幾らでも作れるという話に移って言った。
「SFロボットアニメ「CATCH THE SKY」ってご存知でしょうか? エクスシアをあれに出てくるディスタンやディアブロとするなら、はやてがイメージするダインスレイブとそのバリエーション機はそれぞれゼカリア・雷電・スレイヤーに相当する的なーーわかります?」
「なるほど、言いたいことはわかった。だがCAMという兵器はまだ開発されて間もない。それにーー」
 整備士の目がひときわ鋭くなる。
「デュミナスはR-01やS-01に相当する。エクスシアはバイパーだな。つまり」
 オタクの喧嘩が始まる。と思われたが、中佐の視線を感じた整備士がわざとらしい咳ばらいをして収束した。八劔の話題は通じたらしいが、今回の案には含まれないだろう。バリエーション機の案は今後必要になるにしても、今回はそれを完成させることに時間を費やす必要がある。
 行き止まりの話は少し巻き戻り、姿勢制御の話へと戻る。脚の話は変更不可能な内容ではあったが、これらの懸念は正当な物であり、アニス・テスタロッサ(ka0141)が別の方向性で言葉を重ねた。
「姿勢制御の話に戻るが、テールスタビライザーも無理か?」
 アニスは魔導アーマーの機能を簡単に解説した。姿勢制御のための第三の足、あるいは尾。変形機構としても容易で実装にも問題はない。「同じ物を実装しても意味が無いのはわかった。ロケットアンカーなんかもあるだろ」
「コストと有用性を考えれば悪くないと思うが……」
 CAMに使える装備として似たような物は既に数種類存在する。開発も実装も容易だが専用装備とするほどの価値があるかどうかという点で関係者を悩ませた。最終的にこれらの案は機体の積載力や砲撃時の姿勢制御の問題点を懸念する声として今後の改修案の一つとして検討に入った。4脚を始めとする案もダインスレイブに合わない・間に合わない内容ではあったが、今後の参考という意味で意見は全て回収することとした。
 これと同様に各種スキルの要望も仕様を理由に採用できない内容が多数あった。ダインスレイブの基礎となる機体はデュミナスを採用している。この1点から機能はそれに準じた物になる。エクスシアの支援機能などはここには含まれなかった。同時に開発の進むコンフェッサーがある程度は不足分を補うため、ひとまずハンターはこの件に納得した。
 雑談を挟みつつ会話は次の議題に移っていく。低下した近接戦闘能力に関してだ。最初に議題を発したのは紫月であった。
「接近戦の能力を補う機能は何がついてるんだ? 無いならスペルステークみたいな……無理か?」
「似たような装備なら可能でしょうが、機体との相性がちょっと……」
 スペルステークをそこそこの精度で使うためには格闘戦の性能を残す必要がある。それでは紫月の意図する特化機との相性は悪い。
それを専用装備にするかどうかという問題もある。通常の武器を付け替える余地は残している為、それを近接用に割り振ったほうが自由度は高い。以上の条件を満たしつつ機能する武器を用意できるか、という点でこの問題は難問であった。これに対してエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)が横から手を挙げる。
「ではプラズマクラッカーなら?」
「なるほど……」
 オファニムのプラズマクラッカー。デュミナスの発展型であるオファニムの兵装でありマテリアル非依存の武器だ。機能に調整の必要が出る可能性はあるが、装備の相性としては申し分ない。誰もが一定の成果を望める射撃武器で、オファニムで実績がある。パイロット達からの推薦もあり、この案は優先順位を高いものとして意見が送られることとなった。
 火力の話が盛り上がるとミグがむくりと起き上がり、覇気に満ちる顔のまま机の上に足をかけていた。
「全兵装を連動させた一斉射撃。これが無くては砲撃機とは呼べまい。そう、これこそロマン!」
 付き添っていたパイロット達からも「わかる」「それな」等の意味を込めた強い相槌が帰ってきた。誰もが望み、誰もが必要とする機能と確信する。しかし現実は非情である。
「微妙に規格の違うクリムゾンウェスト製装備も含めて今から同期取るシステム組むのか? 今から?」
 開発に携わった者の目が諦めに染まり、瞬く間に光を失っていく。盛り上がった気配は静寂に返り、賛同者は皆目を背けた。
「夢の無い連中め!」
 なんともならない事もある。ダインスレイブの完成を急ぐ現場には余裕はないが、ソフトウェアの問題だけでもある。開発コストと有用性が釣り合えば今後実装される目もあるだろう。少なくとも今回ではない。しぶしぶ納得、していない顔でミグは席につき、報告書の続きを書き進めた。
 動じないエラはミグの演説を聞き流し、次の質問に移った。
「砲弾の種類と内容はもう決まっていますか?」
 仕様書の数字と実際の試験結果を見比べながら、その火砲が実際に有用な火力の物なのか。彼女にとってはそこが大きな懸念であった。
「戦車砲などを参考にある程度は」
 エラは渡された仕様書を確認する。同じく砲弾の種別を気にしてたアニスも横から覗き込んでいた。予定された砲弾には順当に必要そうな物が列挙されていた。無ければ意見を出そうと考えていた物が一通りそろっていた。種類と言っても限度があることもわきまえている。砲弾の種別に関しては意見は出しつつも、特に議論とはならなかった。
 ここまで各自のハンターは大筋で案は違えど懸念や見解は同じという内容ばかりではあったが、一部は議論となる場面もあった。ルベーノ・バルバライン(ka6752)の発案した自爆装置があがる。重装甲の機体であれば敵陣の中央まで侵入が可能で、爆薬を上手く使えば多大な戦果につながるだろうという意見だ。その一環として彼は自爆装置を提案した。
「戦う以上強制射出装置はあった方が良い。自爆装置がある方が取り付ける名目は立とう? 戦う以上どこかで自分の命を賭けねばならんのだ…賭けられる機体にせんでどうする」
 これにはすかさずキヅカ・リク(ka0038)が反論する。
「嫉妬のカテゴリーのVOIDの存在を考慮すれば危険だ。それに……」
 それ以上は口をつぐむ。誰かを傷つける機体にしたくない。だがそれは運用上の話だ。目の前の彼の言葉を批判する内容ではない。最終的にはどちらの意見も決め手とはならなかった。
「自爆の有用性や倫理的な問題に関しては棚上げするとして、ダインスレイブだけにつけるという理由は薄い。
 実装するのは簡単だが従来通りのハードポイントを使用しての外付けが適切だろう」
 開発スタッフは選択肢を殺すことはなかった。しかし、それで実装されないのは軍や政府の都合なども含むと言外に伝えてきていた。
 それはそれとして嫉妬系カテゴリーの話はデータ以上の内容ではリアルブルー側には伝わっていない。レポート作成が終盤に差し掛かると、この会話を契機として狂気以外のカテゴリーのVOIDの話へと話題は移った。実戦を経た者の意見は、開発スタッフには何より重要だった。



 一方。いち早く抜け出したボルディアはカイルを捕まえて月面の街に繰り出していた。理由は彼女なりの優しさとお節介。お互いまともな会話をした仲ではないが、ボルディアにはカイルの所作に我慢が出来なかった。そういうわけで「お姉さん」に全部任せろ、とカイルを引っ張りまわして料理の旨いレストランに案内させたわけだがーー。
「自分に都合の良い話をいきなり信じるようなバカじゃありませんよ」
 雑然とした喧噪のある店内でのこと。料理が運ばれてきた頃にはこの憎まれ口であった。カイルは切り分けたチキンソテーをもくもくと頬張りながら、不信感を露わにした目でボルディアを眺めている。
(このクソガキ……)
 ボルディアの頬がひくりと動くが少しばかりは我慢する。ここまで連れてくる際に頭をヘッドロック気味に抱え込み、わざと胸をぶつけていた事を根に持っているのだろう。とはいえ失敗ばかりでも無かった。目の前の少年がお行儀が良いばかりの相手でない事もわかった。胸を押し付けて引っ張り回した折の事、上目遣いで睨みつけてくるカイルの視線は隙あらば噛みつこうとする狼さながらであった。歴戦の戦士であるボルディアにしてみればキャンキャン吠え立てる子犬にしか見えないのが残念なところだ。
「そんだけ悪態がつければ心配ないな?」
 コーラを飲んでいたカイルの手が止まる。視線は下がった手元を見たままだ。ボルディアもそれを真実そのままと思ったわけではない。カイルの反応を見て自分の感じた物が事実であったことを確かめた。
「お前が壁作ってることなんか、他人の俺が見てもすぐわかンだよ。迷惑かけてる気分になってんなら、もっと甘えろ」
 周囲が優しいのはそういうことだ。子供を抑圧するような大人でなければ、子供には寄りかかってほしいと思うだろう。見ず知らずの彼女がそうしたように、周囲の大人なら余計にそう思うはずだ。
「…………」
 考え込むカイルの顔を覗き込む。すぐに行動を起こせるとも思わないがけつは叩いた。悩み始めた結果に満足し、ボルディアはにやけた顔のままカイルの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。またそこでカイルが抵抗したが、反抗期と甘えの意味合いは同じものとはカイルは気づいていないようだった。


 全てのレポートは無事完成して提出された。誰もが仕事の後片付けを始め、弛緩した空気が広がっていく。中には既に退出した者も居た。
雑談をする性格でも無いゴーラム中佐もそそくさと資料をまとめて立ち上がったが、その背中に声をかけた者がいた。
「中佐。一つ質問をよろしいですか?」
 立ち止まり振り返った先に立つのはキヅカ・リク。先程までとは違う種の生真面目な視線を受け、ゴーラム中佐は目を細めた。
「許可する。手短にな」
「はい。では、強化人間の出元はどこなのか、教えて頂いても構いませんか」
 質問は中佐にとっては平易な内容であった。意図を理解できず、中佐は平然としたまま教えて良い範囲の答えを返す。
「強化人間の施術は統一地球連合政府及び統一地球連合宇宙軍で、あるいは技術供与を受けた企業等で行っている。それがどうした?」
「中佐はご存知無いのかもしれませんが、強化人間はイレギュラーな存在です」
 キヅカは手短に覚醒者のシステムの概略を語った。何らかの上位存在との契約の必要性、負のマテリアルの検出という異常。それが覚醒者という機構を知る者にとって警戒すべき存在であること。一息に語った後、キヅカは質問の意図をもって話を締めくくる。
「強化人間の技術を作り上げた組織、そこが危険だと僕は思っています」
 ゴーラム中佐は言葉を発さない。視線はキヅカの顔を捉えたまま、思考しているのかすら不明瞭だ。
「話は理解した。だが核となる技術の出元に関しては軍事機密だ。答えられない」
 半ば予想された答えでもあった。技術の是非はともかく連合政府が頼りにする技術である以上、そう簡単に情報は開示されない。個人から敵を捉えるには相手の規模が大きすぎる。
「悪意を前提とするなら、私の立場で出来る事には限りがある。何も期待するな。善処しろ」
 話は終わりとばかりにゴーラム中佐はキヅカに背を向ける。呼び止めようとしたキヅカだが、すんでのところで思いとどまった。悪意の前提、中佐の立場、ハンターの善処。まだ正確に意味を把握しきれてはいないが、この言葉が中佐の出来る最大限の協力なのだろう。キヅカは振り返ることもなく進む中佐の背に一礼すると、待っていた他のハンターと共にその場を後にした。

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重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/12/24 20:05:14
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/12/23 09:29:15