【初夢】100tハンマーに愛を込めて?

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/01/09 12:00
完成日
2018/01/15 06:31

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 生と死の狭間に揺蕩う場所がある――と書くと歪虚はいない?
 まあ、深く考えるといけないということで――夢なのだから。

●憧れのあの人
 プエルは見知らぬ城の中にいた。
 とぼとぼ歩くと角を走り抜ける生き物を発見する。追いかけていくと、その生き物がプエル人形だと分かった。
「なんでいるの?」
 追いかけるが意外と追いつかない。見ていると人形たちは肩車をしつつ、ノブを掴もうとしている。
「開けるよ」
 プエルが開けると人形たちは転がりながら中に入っていった。
 そこは整備された庭だった。遠くには城壁が見える為、中庭だろう。庭は高低差があり、先には芝生もある。
 手前の薔薇が茂るところに、テーブルと椅子がある。
 プエルとそこに座っている男の目が合った。プエルは歓喜に包まれる。
「う、ううう、レチタティーヴォ様あああ」
 プエルは男――レチタティーヴォに飛びつくが、寸前で立ち上がられたため、椅子の上に落ちた。
「痛い」
 レチタティーヴォはしゃがむとプエルの顔をまじまじと見つめる。
「ここにいるということは死んだのか」
「ここどこですか?」
「生と死の狭間……たそがれ城だ!」
 立ち上がって、なぜか、背景となる城の壁を手で指す。
「……レチタティーヴォ様……『あの世』ってあるんでしたっけ」
 プエル、意外と冷静に告げた。
「夢の世界だ」
 回答は非常に濁された。
 まあ、深く考えてはいけないということだろう。そう、考えなければレチタティーヴォ様と一緒にいられるのだから。
 プエルがどいたところでレチタティーヴォは椅子に座り直す。
「僕、何をすればいいのかな」
「好きにすればいい。舞台もあるし、歌いたければ歌えばいいし、ここで歌ってもいいし、菓子を食べてもいい」
「抱き着いていいですか?」
「……いや、それは。プエルは珈琲淹れられるか?」
「……レチタティーヴォ様がお飲みになられたいのですか?」
 うなずかれるとプエルは喜び勇んで庭に面した台所に走り込んだ。
 しばらくすると、なぜか執事服を着て、盆にティーポットとカップを載せたプエルが戻ってきた。そして、紅茶を丁寧に淹れる。
 レチタティーヴォがプエルを見ると褒められることを期待する目がまぶしい。
「……プエル様、珈琲とはこういうものですよ」
 銀髪の青年がマグカップをドンとテーブルに置いた。
「で、見た目は珈琲だが、明らかに泥湯だな」
 レチタティーヴォの指摘に、エクエスはいい笑顔で「はい」と言った。

●少し前
 大江 紅葉は見知らぬ城にいた。そして、イノア・クリシスとウィリアム・クリシス、護衛のジョージ・モースと合流した。
 しばらく歩いていると、見覚えがないのに見覚えのある人形を発見した。
「レチタさん人形!」
 人形は立ち止まると大楊に一行を見上げる。
『おお、知追う者ではないか!』
 人形がしゃべったことに紅葉以外が驚く。動いているけれどしゃべるのはより一層不思議さが増すようだった。刺繍糸で描かれた口は動かないから。
「ここはどこなのです」
『挨拶もないのか』
「こんばんは。ここはどこですか」
『ごきげんよう! ああ、ここは、夢の世界だ。あの世かもしれないがそんなこと知らない。ともかく、私がこうして動き回れる場所だ!』
 楽しそうにレチタティーヴォ人形は動き回る。
 レチタティーヴォ人形は城には結構ヒトが住んでいること、時々生者も来ること、楽しいことなどを問われていなくとも説明してくれた。
『あと、プエル人形が大量にいる』
「それは良かったです」
『いいのかわからないが……まあ、可愛い……ぞ』
 扉を開けると、そこは薔薇園だった。
 レチタティーヴォがテーブルの上のカップ二つを見比べて沈黙を守っているところだ。
 そして、入ってきた一行に気づいた。
 庭にいたらしいプエル人形が二十体くらいがレチタティーヴォ人形に向かってやってくる。
「千客万来と言うのはこういうことか」
 レチタティーヴォがつぶやく。プエルは父と妹を見て困惑し、エクエスは兄を見て頬を引きつらせている。
 紅葉が妙ににこやかなのがレチタティーヴォは気になった。
「……レチタさん人形……夢、ということならば、歪虚の強さとか私の弱さとか関係ないですね?」
 レチタティーヴォは何か察し椅子から立ち上がる。
『まあ、関係すると「めんどー」とどこから声が聞こえたぞ』
 レチティーヴォ人形はプエル人形にもみくちゃにされながら答える。
「レチタさん、初めまして! 一発、殴らせてください!」
「断る!」
「私の腕力は大したことありませんから、是非一発殴られてください!」
「なぜ殴られねばならない!」
「分かっているくせにーです!」
「ああ、筋書きを考えれば理解する。だから、全力で断る!」
 紅葉はじりじり近づく。
「この方の腕力では……素手?」
 エクエスが見ると紅葉は手になぜか、木製で側面に100tと書かれた巨大なハンマーを持っていた。
「待て、なぜ、そのようなものを」
「殴りますー」
 どっこーん。
「落ち着け!」
「落ち着いています」
 レチタティーヴォも理解する、力関係考えれば紅葉が向かってくるわけはない。レチタティーヴォ逃げた。
「……え、ええ?」
 プエルはおろおろする。
 一行は沈黙した。
「お兄様」
「イノア」
 イノアは悲しそうな表情から、吹っ切れたような表情になる。
「夢、なのですよね?」
「……え? ちょ」
 イノアの手には100tと書かれた花柄のハンマーがある。
「イ、イノア、そんなの持っていると危ないよ? ね? うわあああ」
 イノアが追いかけ始めた為、プエルは逃げ始めた。
「……弟よ……色々言いたいことがあるんだが……」
「まさか、兄貴……」
 ジョージは笑顔で金属ぽい100tハンマーを構えた。
「ぐっ」
 逃げていくエクエス。
「……あ」
 ウィリアムは取り残された。
『どうだね、我々とお茶会をしようか? ぜひ、茶を淹れてくれ』
 レチタティーヴォ人形とどこからか増えて三十体くらいいるプエル人形に群がられたのだった。キラキラ目ではなくボタンの目で見上げられる。
「この目を変えたらニコラスになるのかな?」
 ウィリアムはしゃがむとプエル人形を一つつまみ上げたのだった。

リプレイ本文

●ぐだぐだ
 大江 紅葉(kz0163)が走っていく先を見て、メイム(ka2290)はレチタティーヴォに対して先回りするルートを選び走った。なぜか低音のチェンバロのBGMが舞台がある方から聞こえてきた。
「くれはさんを手伝うよー。待てー♪ これからくれはさんに一発殴られろー♪」
「断る!」
 即答するレチタティーヴォ、帽子はしっかり頭の上。
 ミオレスカ(ka3496)は庭に面した眺めの良いところに座っていた。手には東方土産の固焼き醤油せんべいと煎茶。
「あ、紅葉さんがれちたんを追いかけていますね。ということは、年始の行事なのでしょう。ハンマーできれいに割れると一年縁起よく過ごせるに違いありません」
 紅葉が追いかけるのが歪虚とはいえ、この場所では策を弄することもできないに違いないと感じ取り、平和な光景として微笑ましく眺める。
 ステラ・レッドキャップ(ka5434)は中庭に入ろうとしたとき、プエル(kz0127)とイノア・クリシスと鉢合わせた。
「おっと危ないな。騒がしいというより、元気でいいな」
 久々に見たプエルと見知らぬ少女イノアの追いかけっこを微笑ましく見送る。
 ルベーノ・バルバライン(ka6752)はイノアの心配をして追いかけていく。
(たとえ夢でも、これを見逃してプエルを殴らせたら、イノアが後で泣いて後悔する気がしたのでな)
 適度な距離を保ち追いかけた。
 ウィリアム・クリシスに紅茶を所望していたレチタティーヴォ人形(以下レチ人形)は不穏な空気を感じ取る。
「あれぇ、また棒ブッ刺しし人形に遭遇ですぅ。紅茶を飲むならストローくらいは必要ですよねぇ」
 星野 ハナ(ka5852)はにっこりと笑いながら手に持つストローを持ってレチ人形に近づく。すると、プエル人形たちが果敢にもハナとレチ人形の間に割って入った。
「なぜ逃げるのですぅ」
「逃げるに決まっている!」
 レチ人形を追いかけ始めたハナに蹴散らされ、プエル人形約30体は飛ばされ倒れた。
 マリィア・バルデス(ka5848)は嵐が去った庭で、テーブルセットの椅子に着く。
「ニコラス……ではなくプエルなのね。それでも楽しそうで良かったわ」
 城の雰囲気も暗いものではなく、明るい雰囲気がするのが良かった。平和な雰囲気にほっと息を吐いた。

●早々に
 紅葉はレチタティーヴォに追いつけず、肩で息をしている。その時、メイムがレチタティーヴォの前に割り込んだ。
「殴られろ、さあ、くれはさん、ガツンと!」
 逃げられる前に【鉄鎖ドローミ】をかけ、足止めをするが――。
「なんかよくわからない人形になっているんだけど! っていうか、なにその、抱き枕みたいなの!」
 人形は等身大サイズの抱き枕風というより、ただの棒クッションで顔と目は申し訳程度にボタンである。困惑するメイムを知らず、クッションを紅葉がフルスイングで叩いた。
「あっ」
 それは窓の外に飛び出す。逃げたレチタティーヴォにクッションが激突していた。
「やりました。これもメイムさんのおかげです」
「いやいやー、これは運だね」
 レチタティーヴォは視界から外れた。嵐が去るまでどこかに隠れるのだろうと思われる。
「これで任務完了です」
 すがすがしい顔の紅葉の手にはもう100tハンマーはない。
「戻ろう」
 メイムは中庭の方に向かおうとしたが、紅葉は近くの扉を開けて目を輝かせた。そして、その中に消えていく。
 メイムは中を見て図書室だと知り、中庭に向かった。

 中庭に再び入ったプエルを追ってイノアはハンマーを振るう。
「やめておけ」
 ルベーノが割って入る。
「なぜ止めるのです!」
「今まで本格的な兄妹けんかをしたことがないのだろう?」
 イノアとプエルは顔を見合わせてうなずく。
「なあ、プエル。おまえとイノアは年が離れていて、対等なけんかをしたことがなかったのだろう? イノアも成長して対等にけんかできる年になったんだ。可愛い妹に逃げずに向かい合って見てくれないか」
「ない!」
「大体、お兄様がけんかできる性質でしたら、ジョルジュに文句言っていますわ!」
 プエルとイノアがすぐに反論した。
 ルベーノは名前を聞いて首を傾げていると、プエルとイノアが視界の片隅を走り抜けた青年の兄弟を見送った。
「せめて素手で殴られ……」
 プエルが即答で「ない」と言う。
 ルベーノはまじめな顔で話しているが、笑いをこらえている。なぜなら、プエルの頭の上にプエル人形がおり、プエルと同じ行動をとっているためだ。
 なお、イノアはそれを見ないようにしていた。

 レチ人形は必死に逃げるが、ハナとのコンパスの差は大きすぎた。
「待つのですう」
「嫌だー、ああ、プエル、助けてくれー」
 目の前にいるプエルに向かって走る。

 レチタティーヴォが建物から飛び出したのを見たとき、ミオレスカは【リトリビューション】で足止めしようとした。しかし発動している最中に、建物から飛んできた抱き枕がレチタティーヴォを吹き飛ばした。
「こ、これは……なんか多量の小さなハンマーが降り注いできました!」
 技の特性として、範囲は敵なので下にいるハンターと一般人は攻撃はされないとミオレスカは信じることにした。
 ちらりと下を見ると騒動になっているが怪我をしている様子は見られない。
「もち米と醤油がなせる奇跡の味わいですね」
 パリンと煎餅をかみ砕いた。

「ふえええ」
「きゃああ」
 イノアはハンマーで落ちてくるハンマーを振り払おうとした。ハンマーはプエルに当たり、プエルが吹き飛ばされ、頭の上に載っていた人形は飛ばされ噴水に落ちた。
「おいっ! 俺の配慮はどうなった!」
 ルベーノの努力は水の泡と化す。まあ、事故であり、はずみである。
 レチ人形はプエルが消えておろおろどころか「おろ」としたときにはハナに捕まっていた。
 ハナはストローを構え、レチ人形の口を鋭く突いた。
「ぎゃああああああああ」
 レチ人形の悲鳴の後、ぐったりとした。地面におろされたレチ人形、ぴくぴくしているが動き回らない。
 ハナはやり切った顔で中庭に戻ろうとした。そこにプエル人形たちがレチ人形の様子を見た後、ハナに体当たりを始めた。
 ポフ、ポフ……。
 ハナは布と綿や毛糸、ボタンでできているそれらにぶつかられていたくはないが何かは感じる。
 プエル人形はしゃべる力はないらしいが、数で物を言う。プエル人形が何を思っているのかを考えるならば、「お礼を述べている」または「敵を取ろうとしている」だろう。
「さて……コーヒーが何かを知りたい人もいるでしょうし、軽食も作りましょうね。さて、台所に案内をしてくださいね」
 ハナによってプエル人形の心情はスルーされた。
 そんな中、敵に捕まり震える一体のプエル人形は台所を指した。

 ステラはレチ人形の悲鳴を聞き、何かあったかと見に行こうとするが、目の前で起こることに反応を示した。
「ちょ、おっさん、何やってんだよ!」
 ウィリアムがどこからか出てきた裁縫箱から鋏を取り出し、プエル人形のボタンの目に向けている。
 プエル人形はプルプル震えて怯えているようである。
「紫のボタンだからプエル人形なんだ。ならば、青いボタンにしたらニコラス人形になるんじゃないかと」
「いやいやいやいや……嫌がってる、こいつ。じたばたするのに取るのって、どうだ! 大体、その発想怖ぇし。付け替えたからってニコラスが戻ってくるわけでもねーぞ? むしろ、プエルに言え」
 ウィリアムは名案と思っていたがしょんぼりした。
「……ウィリアム様、彼が言う通り、意識を持って動いている物の目を、ボタンとはいえむしり取るのは可哀想ではありませんか?」
 マリィアは諭す。彼の気持ちもわかるし、プエル人形の気持ちも察する。
「私も手伝いますので、最初から作られてはいかがでしょうか?」
 ステラがほっとしてうなずく。
「裁縫箱はありますし、あとは布と毛糸があれば……モデルはいっぱいいますし」
 ウィリアムはマリィアに諭され、プエル人形を撫でると下した。
「すまなかったな」
 プエル人形は一目散に仲間のところに走った。

●水の精?
 メイムやミオレスカが中庭に行ったときには、混乱は収まっているように見えた。
「ああ、れちたん人形……なんとなく、以前もこんなことありませんでしたっけ……」
 ミオレスカはしゃがむと、ストローを口に刺されているレチ人形を持ち上げた。プエル人形たちは彼女を観察している。
「ああ、やはり……」
 レチ人形の口からストローは押し出され、徐々に口の傷がふさがっていく。
「皆さんは心配しているのですね?」
 プエル人形たちは互いに顔を見合わせた後、コクンとうなずいた。
「きっと、れちたん人形は元に戻ります、自力で」
 プエル人形が周りで欣喜雀躍していた。

 噴水の水が揺れ、流動する水の彫刻のような少女が沸き上がる。
「リオ(仮)さん?」
「う、うわー」
 イノアは住む地域にいる水の精霊の名前を問いかける。プエルはじりじりと後退し、ルベーノの後ろに入る。
「これは、あれだね! 正直者だといいものが出る! ニコラスが、成長した姿で現れるかも!」
 メイムが何かの物語を思い出したように、ワクワクして様子を見ている。
「あなたが落としたのは金のプエル人形ですか? 銀のプエル人形ですか?」
 イノアの方を見て、色々あってすらすらしゃべる。
「えっと、ただのプエル人形です」
「あなたは正直です。この銀のプエル人形と金のプエル人形、おまけにニコラス人形も差し上げましょう」
 イノアに合計四体の人形を手渡した後、精霊は水の中に消えた。
「……」
 沈黙が下りる。プエル人形とニコラス人形は動き始め、イノアから下りようともがく。
「増えて良かったな」
 ルベーノが沈黙を破るが、すぐに誰もしゃべらない。
 金と銀のプエル人形は素材は別に普通の人形と変わらないのに、全身と服が金や銀。
「微妙に気持ち悪いですわね」
「うん」
 イノアにプエルが同意し、おろおろするニコラス人形を拾い上げる。
「……二十歳のニコラスが出ると期待したのに!」
 メイムがうめいた。

●茶の準備
 ステラはウィリアムも落ち着いたし、マリィアに任せて向こうにいるハンターたちを見てこようとした。
「さっき悲鳴あったし、武器はいるか?」
「用心はしてもいいとは思うわ」
「そうだな」
 ステラは100tハンマーを担いで走って行った。
「なんで!」
 マリィアが突っ込む。試しにホルスターから銃を抜いてみた。なんと、100tハンマーになったのだ。
「この世界は何!?」
「裁縫箱があるといいと思ったらそこにあった」
 ウィリアムがポンと手をたたいた。
「じゃ、布も出てくるかしら? プエル人形をもとにニコラス人形を作るならば――強い念が必要とかそういう話かしら? 漫画じゃあるまいし」
 出てこないし、もっと願わないといけないのか、という気もした。

 一方様子を見に行ったステラはプエル人形をぶら下げたハナに会う。
「無事ってことは大したことがないな?」
「そうです。あなたは暇ですぅ?」
「え?」
「これから、軽食作ったり……式神より力はありそうですねぇ……手伝ってもらえますぅ?」
 中ほどでハナの声は小さくなったが、ステラは聞いていた。
「……つまり、式神がやれるような簡単な手伝いだな」
「そうですう。皆さんすぐに来るでしょうから、パパッと作るですう」
 プエル人形を揺さぶるハナ。
「わかった」
 台所に行くと解放されたプエル人形が一目散に逃げた。
「もう捕まるなよー」
 プエル人形は一瞬ステラを見て再び走りだす。その間に、調理開始したハナにより、生クリームとボウルと泡だて器がステラ用に準備されていた。
「材料がきちんとあるのが不思議だな」
「そういえば、珈琲というオーダーがあったのです?」
「レチタティーヴォ本人だ」
「……今、いませんねぇ?」
「ああ」
「豆は挽いておいて、人形にでも教えておけばいいですねぇ」
 ステラはうなずくが「違う、プエルに言え!」と的確な助言をした。

●茶会
 ストローを排除し、穴がふさがったレチ人形はプエル人形たちにもみくちゃにされる。
「なんとなく『良かった』と言われているのでしょうか?」
 ミオレスカは呟いた。
「……レチタティーヴォ様、どっか行っちゃうし」
 プエルはルベーノの後ろから出て、イノアからすっとハンマーを取り上げ消す。
 ルベーノは見ていると不思議な気持ちになる。
(さっきから息が合っているんだな。兄は妹を心配し……さっきのやり取りからすると、固かった兄が柔軟性を帯びたということだろうか)
 それで兄妹がわだかまりもなく話せるならば良い状況だった。
「ニコラス人形って目の色と服が違うだけ?」
 メイムはプエルが持つニコラス人形を見る。
「服は着せ替えられる」
「あるんだ……」
「たぶん、人形用服コレクションがどこかに」
「へえ……」
 メイムは人形何体いるんだっけということも思ったがひとまず脇に置いた。
「みんなー、お茶の準備中よ。プエルとイノアもいらっしゃい」
 マリィアが声を張り上げる。
 一行が行くと、テーブルに裁縫箱を広げたウィリアムがいた。
「何を作っているのですか、お父様」
「ニコラス人形」
 きっぱり言う。
 プエルはニコラス人形をウィリアムの前に置いた。
「それ、水の中から湧いて出た……で、父上は僕よりそっちがいいんだ」
 ニコラス人形がおろおろし始める。
「そういうわけではない!」
「でもなぜ作ろうとしたんだ」
「……寂しかったから……イノアもジョージもとっとと走って行ってしまったから……」
 ウィリアムがしょんぼりする。
 マリィアはプエルをぎゅっと抱きしめる。
「う、うわあ」
「あなたが一人で寂しくて泣いていなくて良かった」
 プエルは黙った。
「うん、泣いてない。むしろ、レ……」
 ポンと押され、ウィリアムの腕の中にプエルは収まる。
「少し、そこでおとなしくしていなさい」
「うん?」
 ウィリアムは一度プエルに抱き着かれていたことはあったが、自主的に抱きしめたのは何年ぶりだろうかと考えた。
「おーい、手伝ってくれ」
「はいはい、運ぶんです。通りすがりの人形と式神だけでは足りません!」
 ステラとハナがやってくる。式神も運ぶのを手伝い、プエル人形が二体一組で皿を持たされている。
 人形はステンと転ぶ。宙に舞う皿とミルクレープ。別の人形が滑り込む!
 ミオレスカは「チームプレーです」と微笑む。
「そうです、教訓としてれちたんとプエルの銅像を作ってはいかがでしょう? それより、れちたんの帽子は必須なのでしょうか……」
 確かに忘れてはいけない問題も含んではいる。帽子については再発防止のために必要かと――。
「お茶!」
 レチ人形が喜んでいた。

 朝起きたハンターは人形に群がられたり夢を見たような、節々が痛かったり……するかもしれない。

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参加者一覧

  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
メイム(ka2290
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/01/09 01:11:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/08 22:58:12