くず鉄神社の初詣

マスター:植田誠

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/01/08 19:00
完成日
2018/02/26 22:01

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 前線に出ずっぱりかと思ったら帝都の一大決戦では帝都にいない。そんな、どうも間が悪い感の否めない男がいた。
 そう、クロウである。
(どうも厄いな今年は)
 などと思ったクロウ。そんな時どうすればいいのか考え……最終的にクロウは一つの結論に至った。
 それは、リアルブルーは日本におけるある風習だった。


 その理由は様々だっただろう。
 年始の挨拶回りだったり、単に仕事の依頼だったり、たまたま通りがかっただけだったり……
 とにかく、あなたはここにたどり着いた。
 正面に立つのは鳥居。鳥居をくぐって進むと、右方には火が煌々と燃えている。
 左方にあるのは手水舎。拝殿に赴く前にここで手や口を洗うのが習わしだ。
 そして、その奥に進むとあるのが拝殿。賽銭箱に鈴とオーソドックスな形だ。
 そう。知っている者も多いだろう。これは……神社だ。
 昨日までは無かったはずなので、きっと誰かが一晩で建立したのだろう。よくみるとつくりが荒い印象を受ける。
「この俺にかかれば一晩でこんなもんよ! HA! HA! HA!」
 目に隈を作ったクロウがそんなことを言っている。
 クロウが何をしたいのか、もうわかっていただけただろう。つまりこれは、初詣用の神社なのだ。
 一年の感謝を捧げつつ、新年の無事と平安を祈願したりする。
 まぁこの辺りの風習にクロウは詳しくないので、単に厄落としぐらいのつもりかもしれないが。
 
 ところで、ここは何を祀る神社なのか分かるだろうか。 
 ……いや、ここまでの流れで誰もが察しているはずだ。
 この神社に神はいない。あるのは、ただ……くず鉄のみだった。

リプレイ本文

 その日の朝早くの事だった。
「……精巧な偽物? 太郎と次郎はどう思う?」
 散歩中の柴犬ズとともに、それを見て宵待 サクラ(ka5561)は首を傾げる。
「おお、ほんとにあったニャス!」
 後ろで声を上げたのは鬼……というよりは猫っぽいミア(ka7035)だ。
「神社もどきがあると聞いて馳せ参じたニャスよ! ニャHAHA!」
 そういって進んでいくミア。それにつられ、サクラもしばしの寄り道とついていく。
「神社……なるほどね」
 確かに、見た感じ神社のようではある。ただ、通常木製のものが多いはずなのだが、ここで使われているのは……
「ほとんどがくず鉄ニャスか。くず鉄には困らなかったんニャスネ」
 意味深なことを言うミア。これだけのものを作るのに要したくず鉄。犠牲になったアイテムの数はどれほどだったのか……
 それに続き、サクラも鳥居らしきものをくぐっていく。見ると数人の参拝客もいた。だが、つくりはやはりくず鉄中心とみえる。神社というよりは、それを模した前衛アート的なものなのではとサクラは疑い始めていた。
 そのままミアはまっすぐ本堂に進む。
「おお、おっきい鈴ニャスなぁ!」
 といってミアは吊るしてある鈴を殴打していたような気がするが細かいことを気にしてはいけない。
 さて、辺りを見回してみると……いた。くず鉄といえばこの人、クロウ。そして巫女服を来た夜桜 奏音(ka5754)の姿。神社が一晩で建てられたと聞いてやってきたものの、リアルブルーの神社と比べて足りないものが多く、巫女もいなかったためその枠に収まっていた。
「さぁ、さぼってないで作ってください!」
「休みを……少しの休息を俺に……」
 普段の印象と比べると、やや頬がこけているように見えるクロウ。どうやらキリキリと奏音に働かせているようだ。まぁ放置していてもいいのだが、疑問の解消がてら助け舟を出してやろうとサクラは声をかけた。
「おはようクロウさん。ところで、これってアート? 突然目覚めちゃった神社アートとか、そういう感じ?」
「おはようございます。いえいえ、一応は神社みたいなんですよ。私もリアルブルーの神社に倣って巫女服です」
「そうなの? でも、もっと細部にこだわった方がいいんじゃないかなあ。例えば、屑鉄で梅の木とか樹齢100年越えの御神木とか……」
「一晩でここまで作ったらしいからまだ色々粗があるんですよ。だから今、クロウさんをきりきり働かせているところなんです」
「一晩……なるほど」
 見ると、社務所らしきものを建設している最中らしい。クロウの妙にやつれた様子も納得がいった。哀れな。
「これ先ほど出来たお守りです。おひとつどうぞ」
「あ、どうもありがとう……」
 ご利益は無さそうな気がする。
「でも神社でお詣りでお賽銭って感じじゃないよね、御神体も由来もないから……屑鉄で御神体作って、クロウさんの考えた屑鉄神のご利益も書いとけばよかったのに」
 あとはおみくじでもあればまぁ多少は……と思っていたサクラの元に、良いタイミングでもう一人の巫女、夢路 まよい(ka1328)がやってくる。『神社といえば巫女さんのアルバイトが欠かせないよね!』とは本人の談だ。
「そういってくる人がいるんじゃないかと思って準備してたよ。よかったらおみくじいかがですか?」
「それじゃ……」
 折角だからとサクラが引いてみる。出たのは『故障』
「あー、残念故障だねぇ」
「故障……?」
「そうだよ。普通のおみくじだとらしくないからね。くず鉄神社らしいものにしてみたよ」
 聞くと、普通の神社みたいに大吉とか大凶だとかはらしくないということだ。
「なので、当くず鉄神社は「大成功・成功・失敗・故障・破壊・突然変異」のどれかが出るおみくじを特別に販売してるよ!」
 割としっかり作られているおみくじに半ば呆れた表情を見せたサクラだったが、不意に手元を引っ張られる。見ると、太郎と次郎がまだかといった様子でこちらを見ていた。そういえば散歩の途中であった。
「さぁ、宵待さんと話してる間少し休めましたよね。続きに取り掛かってください!」
「……日本人は割と真面目に初詣だけは行くからなぁ……成仏してね、クロウさん」 クロウの行く末を憂いて合掌すると、サクラはその場を後にした。
「そんな……神はいないのか……」
「クロウちゃん、神様はいるニャスよ? だってクロウちゃんはくず鉄の神様に守られているニャス!」
 その様子を見て励ますようにミアが言った。
「あ、おみくじどうですか~」
「おみくじ! 引きたいニャス!!」
 だが、手伝いなどをしてくれるわけではもちろんなく、まよいの誘いに乗っておみくじの方に行ってしまった。
「初詣! 初めての行事にゃ!」
 去っていったサクラと入れ替わるようにやってきたのはハヒヤ・ベリモル(ka6620)だ。寝ぐせによりはねた髪が猫耳のようになっており、口調もあいまって猫的な印象を強く受ける。
「神社ってこういう建物にゃんだにゃ! 武骨にゃ感じにゃー……神聖にゃ物って友人に教えて貰ったけど、気のせいだったのかにゃー……?」
 気のせいではない。本来は木製なのだろうが、くず鉄製になっているためそう見えるのだろう。
「よし、最初は手洗い!」
 まず手水舎に向かうと、左手にかけ、口をゆすいで、右手と道具を洗って、終了。まるでお手本のような所作であった。
 そのまま本殿へすすんでいくハヒヤ。
「鈴をにゃらしてーにゃらしてー……? にゃんかいにゃらすのかにゃ? にゃにゃ!?」
 基本は1回で問題はない。
「よくわからにゃいから、神様にお願いごとにゃー。むむむー」
 ハヒヤの願い事。それは友達がたくさんできるようにというものだった。
「よし! 終わりだにゃ! 神様ありがとにゃー!」
 だが、果たして神ならぬくず鉄にその願いを叶える能力があるかは疑問ではあった。尤も、やり方的には問題なかったようなので、出来るならば今後できるかもしれない誰かとまともな神社に行ってもらいたいものだ。
「ん? ……火の傍でくず鉄いれている人いるにゃー。きににゃるから行ってみるにゃー!」
 そのまま、くず鉄を放り込む竈へと向かっていった。本来はお焚き上げの場で、前年の破魔矢やお守りやらを焼く場所なのだが、このあたりも間違った知識を蓄えないでおいてもらえたらありがたい。
「はーい、射的だよ~。景品は無いけど無料だから暇つぶしにどうぞ~」
「ニャっふーん!」
 そのころ参道ではいつの間にやらミク・ノイズ(ka6671)が射的場ならぬ投擲場を設営していた。的はやたらとどや顔をした等身大クロウのパネル1枚のみ。投げるのは当然くず鉄。くず鉄神社にふさわしい出店といえよう。
 そこで、ミアが全力でそのくず鉄をパネルに投擲していた。その結果、哀れ等身大クロウパネルは無残に砕け散る。
「お見事~。まぁさっきも言ったけど景品は無いんだけどねぇ」
 そういって、そそくさとミクは新たなパネルを用意している。
 ところで、なぜ無料なのだろうか。
「これで儲ける気は無いよ。逆に祟られそうじゃないか」
 何に祟られるのか。ネタにしたクロウか、それともくず鉄か。
 だが、ある意味恨み辛みをうまい具合に発散しているような気もするので、お祓い的な役割は果たせているような気がする。盛り上げ要員としても機能しているようだし、きっと後でミクにはお駄賃が支払われるであろう。支払うのはクロウだが。
 投擲場を横目にやってきたのはキヅカ・リク(ka0038)と羊谷 めい(ka0669)だ。
「おう、Sランク屑鉄にされたこと忘れてないからな??」
「ん? おいおい、初詣でそれは言いっこ無しじゃねぇの?」
 再度小休止の時間を与えられたクロウを見つけたキヅカはそう言ってはいるものの、帝国の危機を凌げたのはクロウの強化のお陰であることも知っていた。
「いつもありがとう、クロウさん」
 たまには感謝する人が居てもいい。そんな気持ちでキヅカは軽く手を振り、そのままめいと共に本堂へと向かう。
 願うのは少しでも強化が成功し、それが生還へとつながるように。そして仲間や……隣の子がその望みをなせるように。
 その隣の子であるめいも同じようなことを願っていた。強くなれたら、それだけ誰かの命が助かり、明日へつながるから、と。
 果たしてこんな真面目な願いを叶えてくれるのかは疑問ではあるが、そこは期待しておく他ない。
「それじゃ行こうか……それにしても、これを一晩で作るとはさすがだな……」
「ほえ、クロウさん、一晩でつくったのですか……すごいです」
 身長差ゆえにキヅカを見上げるめい。その視線に込められているのは感謝と親愛。それに仄かな憧れ……
「……っと」
 人に押されよろめくめい。それをキヅカが支える。
 突拍子もなく現れたくず鉄神社だが、意外と冷やかしがてら人が来始めているようだ。
「クロウふざけんな!」
「この間くず鉄にされたあれ返しやがれ!」
 これは投擲屋からの声だろうか。あそこも人が集まってきているようだ。横にはきっと無残に砕かれた等身大クロウプレートがうずたかく積まれていることだろう。
(はぐれないようにしないと……)
 そう思いつつ、キヅカの手……を取るのは恥ずかしくて、袖を掴もうとするめい。
 だが、ふとその手に服の袖からでは伝わりようの無い温かさを感じた。見上げると、目が合った。めいの知る、かっこいい人の目が。
「はぐれないように、ね」
「……はい」
 頬を染めながら、二人は手をつなぎ歩いていく。
 その様子を遠目で見ていたクロウは、声をかけることなくその背を見送った。
「うむ……」
 作ったのは自分のはずなのに、気づけば奏音とまよいに牛耳られ馬車馬のように働かされているが、あぁいう光景を見ていると良いことをしたという実感がわくというものだ。
「ん?」
 不意に、肩をちょんちょんとつつかれる。振り向くと、そこには笑顔を見せる星野 ハナ(ka5852)の姿が。
 ……あれ? なんか怒りマークも見えるぞ?
「八百万の神様に謝れぇ~~~!」
「ぐわーーー!!」
 クロウを、唐突な全力ウェスタンラリアットが襲った。実際強い。そして痛い。
 ハナは日本人らしくお詣りしようと立ち寄ったところだったのだ。
「でも、御神体もなく司る権能もなく賽銭箱だけあるってどういうことですぅ?」
「い、いや、御神体? ならあるぞ!」
 そういって、クロウは奥にあるデカいくず鉄を指さした。
「初詣大好き日本人を舐めんなですぅ!!」
 K! O!
 唐突な全力バックドロップがクロウの脳天を地面にめり込ませた。
「というわけで、クロウさんは伸びちゃったからここは巫女の私が話を聞くよ」
 というまよい。まぁ出来が粗いのはしょうがない。1日で作ったのだから。だが、やはり日本人的には許しがたい出来だったようだ。最初の方で合掌していたサクラのことが思い起こされる。
 烈火のごとく怒るハナ。それをまぁまぁとなだめるまよい。
 その間に、倒れたクロウに近づいてくる影があった。
「ぐ……俺は一体何を……」
「クロウさん!」
 そこにいたのはディーナ・フェルミ(ka5843)だった。
「いつの間にエクラ様の商売敵になったの!」
「!?」
「クロウさんクロウさん、クロウさんはいつ信仰に目覚めちゃったのー」
「は? 信仰って俺は元々無宗教……」
「だって聖導士になるのは簡単でも、新たな神の信徒に目覚めるのは別物なの。ここでお祀りしてるのは…もしかしてくず鉄神なの!?」
「いや、くず鉄は他に適当なのがなかったから……」
「いーやー! 世界をくず鉄に、ジークくず鉄ハイルくず鉄とか叫ぶ人になっちゃったの!?」
 どうにも聞き分けてくれない。嫌な予感がして離れようとしたクロウだったが……
「くぅぅ、夢じゃなかったら本気でお焚き上げして厄介ばら……厄払いするところですぅ。何せもう竈も準備万端のようですしぃ?」
 だが、見上げると本気の目をしたハナが見える。まよいの方は「まぁアルバイトだから多少は説得を試みたけどまぁこうなるのも仕方ないよね」みたいな目をしていた。逃げ道は無い。
「これは夢じゃないの現実なの、目を覚ましてほしいのクロウさん!」
 ディーナの方は、全力でばぶばぶとクロウさんの両頬を引っ叩く。
「ちょ、やめ、待って、マジ、結構痛い!」
「邪教退散悪心退散、いつものただのうっかりクロウさんに戻ってくださいなの~!」
「クロウさん、何遊んでるんですか! 仕事してください!!」
 様子を見かねて奏音もやってきた。こうしてくず鉄神社の騒ぎは大きくなっていった。
 このままでは本当にクロウがお焚き上げられそうになるところだったが、すんでのところで警邏中だったグリフォンライダーの目に留まり、仲裁に入られた。
 結局、ハナとディーナをなだめるために一晩で神社を片付けることで話しは決着したのだった。
「厄払いのつもりだったのに、結局こんなことになっちまった……」
 溜息をつくクロウ。極めつけはハナの「得た浄財はきちんとエクラさまかどこかに寄付するんですよねぇ」の言葉。お陰で大赤字である。尤も、設けるつもりではなかったし、材料も工房にあったくず鉄だったので大したことは無いのだが。
「で、本当に一人でやるの?」
「一応はアルバイトですし、手伝いましょうか」
「いーいー。一人でやったことだ、一人で片付けるさ」
 まよいと奏音の申し出をそう断りつつ、クロウは二人に封筒を手渡す。
「バイト代と、余ったお守りだ。持ってってくれ。エクラ様に寄付するのも、巫女さんに渡すのも大して変わらんだろうさ」
 こうして、慌ただしいくず鉄神社の一日は終わりを告げた。
 次の日、例によって散歩をしていたサクラが見たのは、すっかり片付けられた神社跡地と、そこに大の字になって眠るクロウの姿だった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • Sanctuary
    羊谷 めい(ka0669
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • はんたあ倶楽部
    ハヒヤ・ベリモル(ka6620
    人間(紅)|14才|女性|霊闘士

  • ミク・ノイズ(ka6671
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/07 22:38:41